これまでの『ガンガンヴァーサスD』は!
「君は九つの世界を旅しなくちゃいけないんだ」
「なんで、俺がやらなくちゃいけないんだ?」
「太助君が………ディケイド……!?」
「もしかすると、世界が俺に撮られたがっていないのかもな……」
「九つの世界に物語を紡ぐ英雄達が生まれたんだ。だけど今、
物語は引き合い、世界を一つにしようとしているんだ」
異世界セレスティア。
神によって作られたこの世界は、今滅びようとしていた。
この世界を救う方法は一つ。
『救世主』と『支配者』が殺し合い、その勝者が敗者の力を使い世界を癒すこと……。
そして『救世主』と『支配者』は共に、それぞれの『巫女』によって選ばれる。
セレスティアではない、異世界の住人がそれに選ばれるのだ……。
「ちくしょう! 魔獣共め!」
「助けてくれッ! 助けてくれーッ!」
力無き者が力有る物に蹂躙される。
それが、死に瀕したセレスティアの現実であった。
「いくよ……、雷帝」
だからこそ、人は『救世主』を求める。
『救世主』もまた、一人の人間であるという事実を忘れて。
「救世主さまだ……!」
「救世主さまが来てくださった……!」
彼は……。
『弓樹真弥』は自分が『救世主』だと名乗ることはなかった。
だが、ただ一人の少女にとっては、彼はまぎれもなく……。
ガンガンヴァーサスD
第二話「救世主の物語」
「『救世主』……。あれがこの世界の英雄か………」
戦場から少し離れた場所で、その戦いをカメラに納めながら太助は呟く。
「古の英雄『十三騎士』の力を借りて戦う存在、か」
「それにしても、強いなんてもんじゃねえな。あの戦いぶりは」
翔子の感想ももっともだ。なにしろ数も身体の大きさも関係なく、魔物達は
真弥の繰り出す剣で、雷で、一方的に倒されていくのだから。
「まあ、それぐらいできなきゃ救世主なんて名乗れないんだろうけどな」
「あの……。さっきから気になっていたんですけど……」
シャオがおずおずと尋ねる。
「太助君……。なんでそんな格好しているんですか?」
その言葉通り、太助の格好は先程までの鶴ヶ丘中学の学生服ではなく、簡素な鎧兜に身を包んでいた。
「どうやら、七梨太助はこの世界では兵士として生きているらしい。もちろん本当にいたらの話だけどさ」
その時、三人は自分達の後ろから、逃げてくる人がいるのに気付いた。
「太助君……!」
「ああ。ディケイドの異世界デビューといくか……!」
真弥が魔物と戦っている間、負傷者の治療をしていた少女ーー春儚は、逃げてきた人々から
別の場所にも魔物が出たという話を聞いていた。
春儚は真弥の方に目を向けるが、魔物は次々に現れて真弥に襲いかかっている。
春儚は消耗した身体を押して、その場所へと向かった……。
「救世主か? って聞いてくれなさそうだから言っておくけど、俺は救世主なんかじゃない。
通りすがりの戦士……、いや超戦士だ」
太助はディケイドライバーを装着、カードを構え、叫ぶ!
「変身!!」
『HERO RIDE DECADE』
辿り着いた春儚が見たのは、暴れ回る魔物……ではなかった。
それどころか全く逆の光景。痛め付けられ傷を負った魔物だったのだ。
「いったいどうして……?」
『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』
魔物の背後から、響いた声と共に何物かが跳躍する。
跳び蹴りの体勢をとった影は、自分と魔物の間に出現した十枚のレリーフを通過しながら右足の輝きを高めていく!
そして、放たれた一撃は魔物を跡形もなく滅ぼした!!
「春儚! 大丈夫!?」
「真弥さん………」
それからしばらくして、真弥が到着したときそこにいたのは春儚だけだった。
「魔物はどうしたの……? まさか春儚!?」
「! ち、違います! 私じゃありません!! 通りすがりの方が……」
「通りすがり?」
「はい。それで……、こんな物を渡されたんですけど……」
そう言って、春儚は紙切れを差し出した。
そこには……。
「……で。お前は何をしてきたのか、もう一度! 説明してくれねえ?」
七梨家にて。翔子は酷くイライラした様子で、太助に問い掛ける。
「だから、魔物を倒して、『救世の巫女』さんに家への地図を渡して、帰ってきた」
シャオの淹れてくれたお茶を飲みながら、太助は説明する。
翔子は太助の説明を聞いて、お茶を一口啜って口を開く。
「あー、そっかそっか。その人から、この世界のことについて情報を入手しようってことかー。
って、お前アホかー!!」
翔子大爆発。シャオのお茶も効果はなかったようだ。
「お前よく考えろよッ! 初対面でしかも魔物を倒すほどの力を持った奴のことを
いきなり信用すると思うかッ!? そんな奴の家に来てくれなんて言われて来ると思うかッ!?」
「心配するな山野辺。ちゃんと『お互い話し合う必要がありますから救世主さんと一緒に来てください』
そう前置きしてから渡したから」
「そういう問題じゃねえーッ!」
冷静な太助の態度にますますヒートアップする翔子。
そこにシャオが。
「太助君。お客様ですよ」
お客様ーー『救世主』弓樹真弥と『救世の巫女』春儚を案内してきた。
翔子はズッコケながら思った。
ー天然ってやっぱりわからねえ。
自己紹介が終わり、お茶を飲みながら太助、シャオ、翔子、真弥、春儚の五人は話し合っていた。
「……というわけなんですけど、解りましたか?」
「えっと、真弥さんは地球の人間だったけど、春儚さんと出逢ってセレスティアに来て」
「救世主としてセレスティアを救うために戦っている。か」
「………うん。そうなるのかな」
シャオと翔子の言葉に真弥は消極的な態度で肯定する。
「あ。僕からもいいかな?」
「なんですか? 真弥さん」
「ずっと気になってたんだけど………。この家、地球の家だよね?」
真弥の質問に、太助達は固まった。
世界を旅するにあたって不都合がないようにするためか、太助の役割だけでなく、七梨家の外観も
セレスティア風に変化していたが、内装はそうではなかった。
二人ともセレスティアの人間だったら「変わった内装」で押し通すつもりだったのだが、真弥が
地球の人間だったことは完全に予想外だった。
それどころか、さっきの話の中で春儚が真弥を捜して地球に来ていることも解って、三人とも
いつその事について聞かれるかヒヤヒヤしていたのだ。
「(おいどうするんだよ)」
「(正直に言いましょうよ。世界を救うために別の世界から来ましたって)」
「(でも俺達この世界の人間じゃないんだ。話さなくてすむなら話さないほうがいいだろ)」
「(じゃあお前は、良い言い訳思いつくのかよ!?)」
「(ああ、まかせとけ)」
太助は二人に向き直ると、咳払いをして話を切りだした。
「その事も含めて、二人にお話ししたいことがあるんです。明日、俺についてきて貰えませんか?」
翌日、五人は太助に連れられて、町はずれの朽ち果てた神殿の前にいた。
「で、ここに何があるんだ?」
「この神殿に『古の支配者』とかいうのが封印されているらしい。あいつらはそいつを復活させて
自分達の都合の良い世界を作るつもりなんだって」
「なんで太助さんはそんなこと知ってるんですか!?」
春儚の疑問に太助は実にあっさりと答えた。
「倒した魔物に聞いたから」
「あいつらそんな知識あったの!?」
だが、その答えは全員の思いも寄らぬものだった。
「とにかく、ここにいる奴らを倒せば『古の支配者』の復活を止められるってことだ!」
「変身!!」
『HERO RIDE DECADE』
太助はディケイドに変身。ライドブッカーをソードモードに変形させ、魔物達につっこんでいく!
「ディケイド……?」
発せられた電子音声に、真弥が反応したことは誰も気付かなかった。
戦いの場は神殿の中に移り、決着が付こうとしていた。
『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』
ブッカーソードを構えて十枚のレリーフを通過していき、最後の一枚をくぐると同時に斬りつける!
必殺の一撃は、最後の魔物を滅ぼした。
だが、それで終わりではなかった。
太助の周りに、突如として雷が降り注いだのだ!!
「えっ……!?」
太助は見た。
その雷を放った相手は彼もよく知っている人間だった。
「君が……、ディケイドだったんだね。太助君………」
『救世主』弓樹真弥。この世界の物語を紡ぐ者。
「真弥さん…。何を!?」
三人も駆け付けてくるが想像を超えた光景にとまどいを隠せない。
特に春儚の驚きは大きかった。
「ディケイド……。全ての世界を葬る悪魔……!」
「!?」
どういうことだ。何故この世界の住人である真弥が『ディケイド』を知っている?
まさか……。
「知っているんですか……? ディケイドのことを……」
「…………」
真弥は何も答えない。
「そうですか。だったら、知る権利を勝ち取るまでだ!」
太助もブッカーソードを構え、真弥に斬りかかったッ!
「何やってるんだよ七梨!」
「やめてください真弥さん!」
翔子と真弥が二人に戦いを止めるよう叫んでいる。
だがそんな声を無視して二人は戦い続ける。
真弥が放った雷撃を、ブッカーガンで相殺する。
剣と剣が火花を散らす。
拳を、蹴りを受ける。避ける。
熾烈に、苛烈に激しく戦い合う。
ディケイドがこちらに向かって歩いてくる。
誰かが、戦士達の屍の中から立ち上がる。
学生服に身を包んだその少年は、自分の身体一つでディケイドに殴りかかる。
ディケイドは、少年の攻撃全てを防ぐ。
やがて、少年は右腕に力を集め始め、背に光り輝く翼が生まれる。
それに対抗するためディケイドも右腕に力を集め始める。
そして二人の拳と拳がぶつかり合い………。
全てが光に包まれた………。
「思い出した……」
何度も見ていた夢の続き。
そうだ、最後にディケイドに一人立ち向かった戦士。
それは、今目の前で太助ーディケイドと戦っている少年ー真弥だった。
ならば、この戦いの決着もまた夢と同じ……。
「………ッ!」
シャオが叫ぼうとしたその瞬間。
太助と真弥を三人から隔離するように、オーロラーー次元の壁が現れた。
そしてその中から、一人の人間が現れた。
「貴様……。『ディケイド』だな? ならば、俺に殺されろぉぉ!!」
ディケイドの旅はまだ、始まったばかりである……。
「ディケイド……。貴方はこの世界に存在してはならぬ存在なのです……」
通路の影に隠れ、その光景を見ながら予言者レザード=ヴァレスは呟いた……。
データファイル
弓樹真弥
『救世主の物語』の主人公。高校生。
自分のことを、弱くて誰かに守られてばかりの最低な人間だと思いこんで、そんな自分を嫌悪している。
だが、一度決心したことや納得いかないことに立ち向かう時は決して自分を曲げない強さも持っている。
本人は『救世主』として扱われることに思うところがあるようだが……。
春儚
『救世の巫女』『救世主の盾』と呼ばれる少女。「はるな」と読む。
真弥を『救世主』として選び出した。かなり天然。
身体にある重大な欠陥を抱えている。
バルバトス
ディケイド抹殺のためにレザード=ヴァレスが送り込んだ異世界の狂戦士。
その『最強』への執念はある意味で人間を超えている。
レザード=ヴァレス
預言者を自称する男。
世界を渡り歩き、そこの住人に「ディケイドは世界を葬る悪魔」だと吹き込んでいる。
後書き
第二話お送りいたしました。
水無月すう先生作『私の救世主さま』をクウガの世界に持ってきました。
新装版を本屋で見かけた人も多いのではないでしょうか。
この世界では、春儚以外の四法聖、及び支配者側の皆さんはラスボスである『彼』
を除いて登場しません。
ファンの人達。ごめんなさい。
最後に、今回、地獄兄弟のポジションにバルバトスが配置されましたが、これは私の力量不足故です。
カブトの世界が「デスティニー2の世界」になったというわけではありません。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
いきなり家への案内を春儚に言付ける。なんてフリーダムな太助だ(苦笑)。
そしてディケイドはやっぱり悪魔扱い。まぁ、それでこそディケイドなんですが。
バルバトス=デスティニー2……うん、未プレイ故に予備知識はありません。
というか……デスティニー2が出るまで続いてたっけ? GVって(マテ