これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「俺も、変わらなくちゃいけないって事」
「あんたは春儚さんにとって……間違いなく救世主だったよ」
「世界を救えばきっと君が喜んでくれると思ったから……」
「私は、大好きな貴方に出会えて、とても、幸せでした」
「戦乙女の世界……、ねえ?」
本に浮かび上がった絵を見ながら翔子は言った。
「そういえば、前の世界でも外に出たとたん何の世界なのかわかってたよなお前」
「ああ。頭の中をフッと浮かんできたんだ。ディケイドになった影響なのかもしれないな」
ディケイドライバーとライドブッカー。二つのディケイドの装備に、ディケイドの
記憶や知識が宿っていて、太助は変身したあの時に、それらを得た。
確かに、あり得そうな話だ。
「だとしたら、ディケイドは太助君が一人目じゃないのかもしれませんね」
「まあ、話はここまでにして、そろそろこの世界に足を踏み入れねえか?」
翔子が提案し、三人は玄関に向かい扉を開けた。
世界を葬る者、ディケイド。彼と友はこの世界で、その瞳に何を見るのか……。
ガンガンヴァーサスD
第四話「戦乙女の物語」
「さっそくですけど、今回の太助君の役割はなんでしょうね?」
「うーん……。ちょっと服装からはわかんねえなあ」
太助の服装は、腰に剣を差し、赤い鎧で身を包んだもの。
「まあ、傭兵か旅の剣士ってところだろうな。この世界の雰囲気からして」
中世のヨーロッパとでも言うのか。騎士や王がごく普通に存在していた時代。
だがセレスティアとは違い、人も世界も「生きている」と感じられる世界だった。
「ん?」
この世界でディケイドが成すべき事。
その手がかりを求めて、取り敢えず歩き回っていた時、シャオはそれに気がついた。
「ちょっと太助君」
と太助の短い尻尾頭をふん捕まえて、無理矢理呼び止める。
「痛ッ! シャオ、呼び止めるならもっと穏便にしてくれないか?」
「そんなことより太助君。あっちのほうに女の子がいましたよ」
街から少し離れた森の中。
そこには、家があった。
といっても荒れ果てており、人が住んでいたのは何年も前のことだろう。
その前に一人の少女が立っていた。
その身なりは、普通の人と比べると上等な物で少女の生まれの良さが伺えた。
「……………」
少女は家を見上げて何かを堪えるようなそんな顔をしていた。
「こんな所に家があるなんて……」
「ッ!?」
いきなり聞こえてきた声に、少女は驚き振り返る。
「はじめまして。私、月小燐といいます。貴方はこの家に住んでいたんですか?」
声の主はシャオだった。
木や草をかき分けてきた為に、あちこち汚れているが。
「わ、私は……」
だが少女はシャオの質問には答えずに、その場から逃げ去ってしまった。
「あの子とは、また会うことになるかもな……」
あの少女とは長い付き合いになる。太助はそう感じていた。
少女と別れてからも、太助達は手がかりを求めて街を歩いていたが、特におかしな所は見つからない。
「結構歩いているけど、何もおかしな事はないよな」
「おかしな事を歓迎するのも、何か間違ってる気がしますけどね」
そろそろ休憩しようかと太助が提案しようとしたその時である。
後ろからすごい勢いで女性が走ってきたのだ。
そして、その女性を追いかけて全身を甲冑で包んだ人物もやってきた。
「必死に逃げる女性と、それを追いかける怪人物………。ここは取り敢えず」
『HERO RIDE DECADE』
ディケイドに変身した太助は、鎧男(仮)の足元にブッカーガンを撃つ。
撃ち込まれた弾丸に反応して、太助の方を向く鎧男。
「邪魔をしないでくれないか? 俺の役目なんだ」
「邪魔して欲しくないなら、まず鏡を見た方がいいぜ」
話しても無駄だと悟ったのか、鎧男は大剣で斬りかかってきた。
鎧男の攻撃をかわして距離をとると、太助はカードを使う。
『ATTACK RIDE BLAST』
「力には技、ってね!」
強化されたブッカーガンの連射を受け、鎧男は膝をつく。
「お前は、何者だ……?」
「超戦士、ディケイド」
鎧男の問いにそう答える太助。
だが、これで終わりではなかった。
「やああぁぁッ!!」
いきなり後ろから何者かが斬りかかってきた。
攻撃をよけた太助は、相手を見て驚く。
あの廃屋の前で出逢った少女だったのだ。
「君は……!?」
「アリーシャ様!!」
「グレイさん。大丈夫ですか!?」
少女アリーシャはグレイと呼ばれた鎧男を気遣うと、太助を睨み付けた。
「貴方がディケイド……」
「君が……この世界の英雄なのか?」
だが、太助の質問には答えずにアリーシャは続けた。
「この世界を埋葬する悪魔なのですね!」
「ディケイド……。この世界に埋葬されるがいい……!」
離れた場所から二人を見ながら、レザードは呟いた。
「また、それか……。昔の山野辺もこんな想いをしてたのかな……?」
友達の少女が、シャオと出会う前「自分を知ろうともしないで自分がどういう人間かを決めつける」
周囲の人間に反発して、不良をやっていたことを思い出す太助。
「この世界を終わらせはしません!!」
再び斬りかかってくるアリーシャ。
真弥と比べれば、早さも重さもたいしたことはない。
だが、真弥とは違いアリーシャは自分を本気で倒そうとしている。
だからこそ、太助も本気で戦う。
「俺だって、終わるわけにはいかないんだッ!」
『HERO RIDE SINYA』
太助の甲冑が変化する。
胸は黒くなり十字の模様が浮き出て、両肩と下半身は白に染まる。
救世主の力を纏った太助を見て、アリーシャも力を使うことを決意する。
「シルメリア! お願い!」
その言葉と共に、アリーシャが変わった。
服装や外見ではなく、精神、魂、そういった見ることのできないものが。
「仕方ないわね……」
シルメリア=アリーシャは、剣をしまうと左手をかざす。
すると、光と共に手に弓が握られていた。
「マテリアライズ……。あんた、ヴァルキリーか」
「あら、解ったの? でも、加減はしないわ」
連射、束ね撃ち、速射。
避ければ避けた場所にすでに撃たれている。
本当に手加減していなかった。だが。
『ATTACK RIDE RAITEI』
雷帝。真弥が最初に目覚めさせた十三騎士。
優しき破壊神とも称される。
「技には、魔法だッ!」
太助の放った雷は、Sアリーシャの放った矢を全て打ち落とし、彼女にも襲いかかる。
「(シルメリア、私が行くわ)」
「レナス? そうね、頼むわ」
また変わった。
先程までとは違い、青空のような慈愛を感じる。
「ここからは、私が相手をしよう」
そう言って弓矢を消し、再び剣を抜くレナス=アリーシャ。
「だったら、こっちも剣で戦うか」
『ATTACK RIDE KEN−O』
新たなカードをスキャンし、剣を手に取る太助。
「はあッ!」
「うおおッ!」
Rアリーシャが跳躍斬りから足払いを狙えば、太助は剣を突き立てそれを防ぐ。
太助が鍔迫り合いに持ち込めば、Rアリーシャはこれを受け流す。
一進一退の攻防を崩したのは、意外な人物だった。
「(ええい! 変われレナス! 私が決着を付けてやる!!)」
「ちょ、ちょっとアーリィ!?」
再び変わる。
今度は、冷徹な黒の印象だ。
剣を納めて、再びマテリアライズしたのは、ハルバードだ。
「私は二人のように甘くはないぞ!」
「確かに。でも、厳しいばかりじゃ人の印象には残らないぜ」
「よ、よけいなお世話だぁぁぁぁッ!!!」
実は自覚していたのか、猛烈な勢いで襲いかかるアーリィ=アリーシャ。
え、地雷だった!? と慌てつつもカードを使う。
『ATTACK RIDE SOU−O』
剣を槍に変えて、Aアリーシャと戦う太助。
だが、これも双方互角だった。
「ええい! 埒が明かん! こうなれば……!」
背に翼を広げ、右手に巨大な槍をマテリアライズするAアリーシャ。
決着を付けるつもりだと悟った太助も、必殺技の態勢に入る。
『FINAL ATTACK RIDE SISISISINYA』
「その身に刻むがいい! 神技、ニーベルンヴァレスティ!!」
「クロスクルセイドリバースデリンジャーッ!!」
鳳のオーラを纏った槍と、雷の鳳が激突する!
その直前に、もう一つの雷の鳳によって二つの技は相殺された。
それを放ったのは……。
「「真弥さん!?」」
異なる世界の住人であるはずの、弓樹真弥であった。
「久しぶり……。でもないかな? 太助君」
にこやかに挨拶してくる真弥に、変身をといた太助も質問をする。
「真弥さん……。どうして貴方がこの世界に?」
「それは……、ちょっと待って。仕事をするから」
「仕事?」
そういうと、真弥はアリーシャの前に跪き、言った。
「アリーシャ様。反逆者は捕らえました。城にお戻り下さい」
「…………わかりました」
アリーシャは弱々しく答えると、どこかへ歩いていった。
七梨家にて。
この家の住人二人と、その友達、そして一人の客人が食卓を囲んでいた。
「で、なんで真弥さんがこの世界にいるんですか?」
チャーハンを食べながら改めて質問する太助。
「実は、地球に帰った後で一人の女の子に出会ったんだ。そして気がついたらこの世界にいたんだ」
「女の子にあったら異世界に行くことになった? どっかで聞いた話なんだけど」
翔子が言うのも無理はない。真弥が春儚と出会った時の話と同じだからだ。
「最初は、なんでこの世界に来たのか解らなかった。でも、最近思うようになったんだ。
僕がこの世界に来たのは、アリーシャさんを助ける為なんだって。
神と人の狭間にいたあの人なら、この世界をより良くできるはずなんだ」
「神と人の狭間? あの人、ハーフなんですか?」
シャオの質問に真弥は答えた。
かつてこの世界は神々が人を支配し、自らの存続の為に地上を闘争の耐えない世界にしようとしていたこと。
アリーシャはれっきとした人間だが、かつてその身体には神であるシルメリアの魂が宿っていたこと。
そして二人を筆頭とする、人と神の連合軍によってそんな時代が終わりを告げたこと。
「ちょっと待った。じゃあ、今日俺がかばった女の人ってまさか……?」
「うん、今でも人を支配しようとする神族の生き残りさ」
自分が悪党をかばっていたことを知って冷や汗をかく太助。
だが同時にあることに気がついた。
「ひょっとして今この世界には、指導者がいないんですか?」
「うん……。僕やシルメリアさん達はアリーシャさんを推しているんだけど……」
「気が進まない様子でしたね……」
ふと思い出したように手を叩くと、シャオは写真を持ってきた。
「太助君、これを見てください!」
「これって……。俺が救世主の世界で撮った写真?」
それらのほとんどはいつものように写っていなかったが、一枚例外があった。
そこに写っていたのは、春儚の笑顔。
「こうして旅を続けていけば、太助君も思い出を残せるようになるかもしれませんね!」
「どうだろう……。でも悪くないな……」
シャオには解った。太助がほんの少し笑っていることを……。
ヴァルハラ宮殿、玉座の間にて。
「私は王にはなりません……」
アリーシャはシルメリア達に向かって、やはり弱々しく答える。
「貴方は今日だって、私達と一緒に立派に戦っていたわ」
「あの戦いが終わった今、新たな秩序を築く為にも指導者が必要なのだ」
レナスは励まし、アーリィは現実を語る。
正反対の二人だが、指導者にはアリーシャがふさわしいと思っているらしい。
だが、それにも何も言わず、アリーシャは部屋を去ってしまう。
「やはり、彼女には早すぎるのではないか?」
「かと言って、私達ではその役目を変わってやることはできない……。
いえ、変わってはならないわ」
「そうね。私達は人間達にとっては……」
戦乙女。優れた力を持った人間の魂を神々の兵士ーエインフェリアとして神界へとして導く者。
アーリィ、レナス、シルメリアの三人はその役目故に「魂を選定する者」と呼ばれる。
だが、死を迎えた者の元に現れる彼女たちを、死者と関わりの深い者達はこう呼んで憎んだ。
即ち「死神」と……。
特にレナスは、自分への復讐の為に闇に魂を売り渡した者と刃を交えたことさえあったのだから……。
「どこに行くつもりなの?」
その日の夜。
宮殿から出ていこうとするアリーシャを見かけた真弥は声をかけた。
「言ったら……、連れて行ってくれますか?」
「約束する。それが本当に行きたい場所なら……、僕が必ず」
アリーシャは何も言わなかった。
彼女自身も理解していたのかも知れない。
自分が逃げているだけなのだということを。
少し時間を戻して、夕方。
太助はアリーシャと初めてであった廃屋を訪れていた。
ディケイドとしての勘なのか、ここに何かあると思えてならなかったのだ。
入ってみると、足跡が一つ残っていた。
その足跡を辿ると、一つの部屋に行き着いた。
「貴方は……?」
その部屋には一人の青年がいた。
背中と腰に剣を持ち、灰色の髪、どこか擦り切れた印象を持つ青年だった。
「昼間の騒ぎを見たか……? あれが神の本性だ」
「人を傷つけるのが、ですか?」
「それだけじゃない。結局神は人から全てを奪い、人は神を憎む。それが全てだ。
お前だって、そんな奴等と暮らしたいなどと思わないだろう?」
太助は、何故この青年がそこまで神を憎むのか解らなかった。
「貴方は一体……」
「昔、この家にも家族が住んでいた。だが、戦士の父が戦乙女に選定されたことをきっかけに
全てが狂った。母は精神を病み、娘は病死。息子に残ったのは神への憎しみだ」
廃屋を去り帰路につく太助。
「やっと見つけたわ」
その前に一人の少女が現れた。
団子状に纏めても、首まで届く金髪。
何故か、太助は彼女が春儚に似ていると思った。
もっとも、春儚が水なら、彼女は炎だろうか。
「あんたが、真弥さんをこの世界に連れてきた人か?」
「璃瑠よ。「あんた」じゃないわ」
璃瑠はそう言うと太助に歩み寄る。
「あんた、自分が存在する理由、知りたくない? 教えてあげてもいいわよ」
「俺もあんたじゃなくて七梨太助だ。あいにくだけど、そういうのは自分で探すことにしてる」
そう言って、太助は璃瑠から離れようとする。だが。
「立派な心がけね。でも、あたしは話したいから、聞いてもらうわよ」
その言葉とともに、太助の周りに次元壁が現れる。
「あんたはね、この世界を破壊しにきたのよ」
次元壁が消えると、そこは見たこともない場所だった。
「やっぱり、次元を超える力を……」
そこは戦場の跡だった。
動くものはなく、ただ、死と静寂に満ちた空間。そこに、彼女はいた。
赤い甲冑に、金の髪。純白の翼と類まれな美貌。
だが、手に握られた大鎌が彼女を「戦乙女」と呼ばせるのを妨げていた。
「フン……。ディケイド、ここがお前の死に場所だ」
データファイル
アリーシャ
「戦乙女の物語」の英雄。
もとはある国の王女だったが、幼い頃彼女の中でシルメリアが目覚めてしまい、その為に
城を追放され存在しない者として扱われてきた為に気弱で引っ込み思案な性格に育ってしまう。
この物語では、運命の三女神を憑依させることによって彼女たちの力を借りて戦う。
彼女本人もその影響でかなりの強さを持っているのだが、性格が災いして実力を発揮できないでいる。
シルメリア=ヴァルキュリア
運命の三女神の三女で未来を司る。
弓闘士。ウェーブのかかった金髪と、浅黄色の甲冑が特徴。
三人の中では最も人間に近い思考の持ち主で、アリーシャと共に神と戦った。
アリーシャにとっては厳しくも優しい姉のような存在。
レナス=ヴァルキュリア
運命の三女神の次女で現在を司る。
剣士。三つ編みにした銀髪と、蒼穹の甲冑が特徴。
戦乙女としては優秀だが、人間に肩入れしすぎるという理由で問題視する神族もいた。
「悲しむ人を助けたい」という理由からアリーシャ、シルメリアに協力した。
アーリィ=ヴァルキュリア
運命の三女神の長女で過去を司る。
槍闘士。ヘアースタイルはレナスと同じだが、髪の色と甲冑は黒。
三人の中では最も神に近い思考の持ち主で、戦士を自分で殺して強制的にエインフェリア
にすることにも全く戸惑わない。
アリーシャ達の足掻きに「神あっての世界」という思考に迷いが生じる。
実は、妹二人と比べて自分の影が薄いことを気にしている。
グレイ
エインフェリアの一人。
全身を甲冑に包んでいるため、取り敢えずで太助にボコされた可哀想な人。
璃瑠
真弥を「救世主の物語」から「戦乙女の物語」につれてきた少女。「りる」と読む。
レザードと組んで、ディケイドを抹殺しようとしている。
サイザー
ディケイド抹殺の為に璃瑠が選んだ戦士。
謎の青年
廃屋で太助が出会った青年。
神。なかでも戦乙女を強く憎んでいるようだ。
後書き
第二の世界はゲーム「ヴァルキリープロファイル」より戦乙女の世界です。
レナス、シルメリア両作品ともコミカライズされています。レナスの方は打ち切りでしたが……。
フォームチェンジ対決を再現しようと思ったら、アリーシャが電王みたいになってしまいました。
グレイを選んだのは「一番怪しそうに見える外見だから」という理由です。
グレイを使ってた人。ごめんなさい。
アーリィの影が薄いのは公式のネタ。
「咎を背負う者」での魂の叫びには涙と笑いが……。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
次なる世界は「ヴァルプロ」の世界。
うん、モリビト、見事に原作知識なし。RPGはあまりやらない人間ですからねぇ。
まぁ、おかげで先入観なく素直に読めましたが。
キバーラ役は璃瑠ですか。
確かにお似合いかもですね、小悪魔的な性格もそっくりですし、『ディケイド』原作でのユウスケとキバーラの仲の良さを考えると普通にユウスケ=真弥、キバーラ=璃瑠に置き換えられますし。
>力には技
>技には魔法
惜しいっ! “魔法には力”までいかなかった!(どこのアルガス騎士団だ)