これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「わかってる。レンは春儚じゃない。わかってるんだ……」
「わかりました。ですが簡単なテストを受けてもらいますよ」
「単刀直入に言うけど、俺は君を守ることに決めたから」
「僕はもう一度誰かに出会う為に旅を続けてきたんだ。それがレンだと思う」


 ドライバーを奪われ呆然とする太助。
 そんな彼に、必殺の斬撃が襲いかかるが……。

「太助君ッ!」

 咄嗟に真弥が太助に飛びかかって地面に引き倒した為、太助は助かった。

「悪いな。太助を狙った訳じゃなかったんだけど」

 剣が、悪気という物を全く感じさせない謝罪をする。

「全く……。それ、返してくれないか?」

 ドライバーを返してもらうようクードに頼む太助。
 だが次の瞬間、太助は近くの屋根の上に、人影を見た。
 蒼い甲冑で全身を覆い、闇色の刀身を持つ槍にも剣にも見える武器を持った存在。

「弱き者よ、貴様に七煌宝樹は相応しくない」

 そう言って左手を掲げ、エネルギー球を作り出す蒼鎧。
 それぞれ身構える一同。
 だが、思いがけない声が響いた。

「クー!?」

 その声に反応し振り向いたクードは見た。
 自分にとっての始まりとなった少女の姿を。

「レン! 危ない!!」

 クードが叫んだその瞬間、蒼鎧のエネルギー球が放たれた。
 起こった爆発に、レンは思わず目をつぶってしまい……。
 爆発が治まったとき、クードと太助はその場から消えていた。

「クー……。どうして……?」


ガンガンヴァーサスD
第十三話「紅と翠」


「こいつを返して欲しいのか? コレが無くちゃあお前も偉そうなこと言えないだろ」

 蒼鎧の攻撃のドサクサに紛れてあの場から逃げ出してきたクードは
 ディケイドライバーを弄びながら太助に言う。
 ここまでやればもう自分に係わろうとはしないだろう。
 そう思っていた。

「非力であることも不幸であることも、何もしないことの言い訳にはならない。……らしい。
 俺は君を守る。そう俺自身に約束したから」

 思っていたのに太助はそれでも自分を守ると言った。
 それを聞いた途端、思わずクードは太助を殴り倒していた。


「フィロと謎の男……。間違いありませんね。その男はオルガナイトでしょう」

 真弥と剣の報告を聞いて、シスカが出した結論がそれだった。

「オルガナイト……?」
「各地から優れたエディルレイドを集め、人造エディルレイドまでも作り出す技術を
 持った闇の組織……。私達もそれ以上のことは掴んでいません」
「なるほど……。道理で強そうなわけですね」

 剣が言うのはあの鎧男のことだろう。

「せめてこちらにも、強力なエディルレイドが戦力としていればいいんですけどね」
「……無い物ねだりをしても仕方がありません……」

 苦々しく話すシスカ。
 取り敢えず、それでその場はお開きとなった。


 ロッカールーム。
 荷物を取りにここにきた真弥は、見てしまった。
 使わないでと自分に頼んだロッカーの前で、レンが泣いているのを。

「クー………」

 真弥は、声をかけられなかった。
 彼女を励まさなくてはと思っているのにできなかった。
 彼女の大切な人には、絶対になれないのだと思い知らされてしまったから……。

「…………」

 そうやって思い悩んでいると、ロッカールームの中から、何かが倒れるような音が聞こえた。
 何事かと覗き込むと、そこにあったのは床に倒れたレンと、
 彼女に帯のような物を巻き付ける剣の姿だった。

「剣君、何を!?」
「七煌宝樹と呼ばれる最高のエディルレイドの一つ。風を司るメザーランスの一属、
 その最後の一人。文句なしに最高のお宝だ」

 まあ、欲を言えばプレジャーがいないフリーの状態がよかったんだけど。などと
 剣が言っているが、そんなことはどうでもいい。

「君は……最初からレンを狙っていたのか……!」
「ああそうさ。これでも結構時間かけて調べたんだぜ?」

 怒りにまかせて剣に掴みかかる真弥。
 だが、それより一瞬早く、ディエンドライバーを突き付けられた。

「よくも……レンを……!!」
「あんたも弱い奴だな。「あんたの春儚」は死んだんだぜ?」

 そんなことは解っている。
 僕の春儚は、あの時、僕を信じて、僕と出会えたことを幸せだと。
 僕を大好きだと言って、死んだ。
 だから、僕は。

「僕は、誰にも悲しい思いをして欲しくない。それだけだ!」

 春儚は、いつでも誰かの笑顔の為に身を削り続けた。
 自分は、大好きな人を守れなかった。
 だから、大好きな人の守ろうとしていた物を守ると決めた。

「そこまでですッ!!」

 叫びと共に、銃を構えたシスカが駆け付けた。

「まさか、こんな手を使う泥棒さんがいるとは思いませんでしたよ」
「物事はスマートに、が俺のポリシーでね」

 剣は、チラリとシスカに視線を向ける。

「なあ。お互いに得意なことが重なるのって、凄く気にならないか?」
「確かに、気になりますけど……」

 だが、剣の挑発に、シスカはニコリと微笑むと。

「いちいち気にしていたら、国家公務員はやってられませんよッ!!」

 仕込んでいたミサイルをぶっ放した。
 さすがにこれには剣も驚くが、咄嗟に前方に転がる。
 そこにシスカが踏み込んでくる。

「それに……、私はこっちのほうが自信有りなんですよッ!」
「そう来ると思っ……!?」

 思ってた。とは言えなかった。
 シスカの拳を受けるよりも早く、真弥の拳が、剣を殴り飛ばしたからだ。

「……お前……ッ!」

 なおも殴りかかろうとする真弥。
 だが、剣はそのまま逃げてしまった。

「真弥さん……」



 一方、太助は。
 クードに殴り飛ばされて、気絶してしまった後シャオと翔子に見つかって、家に運ばれた。

「太助君、大丈夫ですか?」
「お前にしては珍しく無茶苦茶やったな」

 覗き込んでくるシャオに、あの封筒を渡すと太助は起き上がって出ていった。
 二人は封筒の中にあった手紙を読んで……、全てを理解した。


 手紙を読んだ二人は真弥に会うために、アークエイルに足を運んだ。
 すると、ちょうど外に出てきた真弥に会うことが出来た。

「シャオさん。山野辺さん」
「真弥さん。お願いします、太助君を手伝ってください」
「どういうこと?」
「あいつ、クードって人を守るって言いだしたんだけど、てこずってるみたいでさ」

 シャオは持っていた封筒を真弥に差し出す。
 差出人の名前は……『Reverie Metherlence』

「多分、レンさんの事だと思います。
 クードさんのエディルレイドで、きっと…………」

 真弥は手紙を読んだ。


“クーがいなくなってから大分たったね。
 今クーがどこにいるのかは解らないけど、どうしても伝えたいことがあったから
 手紙を出すことにしました。
 初めてリアクトしたあの時から、私とクーは二人三脚なんだよ。
 クー一人で勝てない敵でも、二人一緒ならきっと勝つことが出来る。
 だから、また一緒に歩こうよ”


 手紙を読み終えた真弥は、通信機のスイッチを入れた。

「シスカさん。僕、今から出動します」
『何の為の出動ですか?』
「レンのプレジャーを連れ戻す為のです!」


 再び、クードの元に戻った太助だったが、一緒にフィロに追い立てられていた。
 クードがドライバーを返してくれないので、逃げるしかないのだ。
 そんな中で、クードは事情をポツリポツリと話してくれた。

「レンと出会ったのは本当に偶然だった」

 どこかの好事家が美術品として手にしようとしていたのを事故でクーが封印を解いて
 リアクトまでしてしまったのだという。
 その後、レンを保護するためにやってきたシスカ達と出会い、一緒に戦うことになった。
 だが、オルガナイトはレンを手に入れるために襲い掛かり続けた。
 元々全てが成り行きだったクードは度重なる襲撃に心が折れてしまい……。

「力も自信も無かった。だから逃げ出した」

 シスカ達アークエイルにレンを任せても、自分は「メザーランスの持ち主」として
 命を狙われ続けている。
 それがクードの選択の結果だった。

「……だから、もういいんだよ!」

 そう叫ぶと、クードはドライバーを太助に投げつけて飛び出した。
 フィロもクードの後を追っていく。

「太助君!」

 そこに真弥がやってきた。

「バイトのやりがいはどうですか?」
「……手紙、読んだよ」
「そう、ですか」

 クードとレンの関係はよくわかった。
 だが、真弥にはわからないことが一つだけあった。

「なんで、太助君はクードを守ることにしたの?」

 その質問に、ドライバーを拾いながら太助は答える。

「クードがいなくなったら、レンが悲しむ。
 そうなったら、レンの笑顔の為に頑張ってる友達が報われないでしょう?」

 友達?
 つまり、それは。

「僕の為……?」
「急いだほうがいいですよ。フィロ達はクードを追っていきましたから」



「クード、君の居場所はレンの側なんだ。帰ろう」

 クードに追いついた真弥は、クードを説得する。

「俺は……戻らない!」
「レンは君を待ってるんだ!」

 クードは真弥に掴みかかるが、真弥も負けじとクードを引き倒す。
 そのまま地面を転がる二人。

「君とレンは、狙われてるから! レンを守る為に君はレンの側から離れたんだろ!?」
「俺には、力なんてない! そうするしかなかった!」
「そんなこと関係ないんだよ!」

 いつのまにか、二人はフィロに囲まれてしまっていた。
 だが、立ち上がった真弥の身体から稲妻があふれ……。

ピシャァァァッ!!

 降り注いだ雷光が、一瞬でフィロを焼き尽くした。

「お前…………」

 あまりの強さに、呆然とクードが問い掛ける。

「力があっても、守れないことだってある。僕はそうだった」

 真弥の声は、震えていた。

「君はまだ僕になっちゃいけない……。まだ君にはレンがいるじゃないか」

 振り向く真弥。
 だが、その後ろに蒼鎧が現れる。
 二人は慌てて飛び退くが、完全には暗黒の虹をかわすことはできなかった。


「人は強き力を手にすれば、必ず心を歪ませる。何故なら」
「何故なら、人は愚かでひ弱な生き物だから。か?」

 地面に倒れた二人に言い放つ蒼鎧。
 だが、そこに声が聞こえた。
 世界を葬る者の声が。

「確かに、人間は愚かだよ」

 二人の前に立ち、蒼鎧に向けて、言い放つ。

「死んだ人の願いに縛られて、全てを捨てようとしてみたり」

 真弥が、どうにか立ち上がる。

「大切な人を守る為に、繋いだ手を振り解いて、一人逃げ続けてみたり」

 立ち上がろうとしたクードは、自分に差し伸べられた手に気付く。
 クードは、その手を取って立ち上がった。

「友達の為に、体を張って頑張ってみたりもするよね?」

 真弥の言葉に、太助もフッと笑う。

「愚かだから、一度無くさないとどれだけ大切なのかも気づけない。
 だから人は自分の足で旅をして、自分の意志で行き先を決めるんだッ!
 それを許さない道標(おまえたち)なんていらないんだよッ!!」

 クードとレンは謳を謳う。
 それは同啓の謳。
 力を発揮するために、繋がる為の謳。
 真弥も、力を解放する。

「貴様は何者だ……?」
「通りすがりの超戦士だ、覚えておけ! 変身!!」
『HERO RIDE DECADE』

 太助の変身と同時に謳が終わる。
 そして、クードの右手には翠風の刃が握られていた。

 今、ここに。
 翠風の戦士、葬世者、救世主。
 三人の英雄が一同に揃った!

「クード、レン、露払いは俺達がやってやる」
「あいつの相手は任せたよ、二人とも」

 蒼鎧の周りに現れた、今までとは雰囲気の異なるフィロ。
 太助と真弥はこの世界の英雄の為に露払いを決意する。

「ああ、わかった……!」
『ありがとう……』

 二人に礼を言うとクードは蒼鎧に斬りかかる。
 だが、その一撃を蒼鎧は受け止める。

「貴様ではメザーランスと共に歩むことなど出来ぬ!!」
「そんなことやってみなくちゃわかんねえッ!!」

 相手の攻撃を風の鎧でいなし、共に謳を謳う。

“エウロスループ!!”
“極大ッ! ネガティブレインボウッ!!”

 疾風の刃とさらに力を増した暗黒の虹が真っ向からぶつかり合い、共に消滅する。
 相手も消耗している為、後一押しなのだが……。

『FINAL FORM RIDE CCCCOUD』

 その一押しの為に、太助は切り札を切る。

「な、何してんだよ?」

 急に後ろを取った太助を怪しむクード。
 だがそれにかまわず、前を向かせると。

「ちょっとくすぐったいぞ」

 いつもの台詞とともに、クードの背中を叩く。
 すると、クードの身体がレンとよく似た紅の剣に変形する。
 これこそが、クードメザーランスだ!

「真弥さん!」

 太助の声に真弥もうなずき、二人は突進する。
 蒼鎧の攻撃を太助はジャンプで、真弥は前転でかわして、すれ違いざまに斬りつける。

『FINAL ATTACK RIDE CCCCOUD』

 切り札を使った太助は、右にクードを、左にレンを構えて突進する。
 残像すら伴った二刀流で切り刻まれた蒼鎧は、あえなく爆散した。


「辞める? どうしてですか?」

 アークエイル本部にて。
 シスカが真弥に聞き返す。

「上手く言えないんですけど……。僕、まだ旅の途中だったんです。
 旅を辞めるのも、立ち止まって振り返るのもまだ早い……。
 あの子は、そうしてもらうために僕を送り出したんじゃない。そう思うんです」
「そうですか……。でしたら、私は止めません。
 それにしても残念ですねぇ。真弥さんにはレンさんの分まで働いてほしかったんですけど」

 愚痴るシスカに、心配無用とばかりに太助が部屋に入ってくる。

「この世界の物語は、この世界の英雄が紡ぎ続けるから」

 そしてレンと、続けてクードが入ってくる。
 まだバツが悪そうなクードだが、真弥は彼と、レンの手を取り、繋ぎ合わせる。

「シンヤ……、また会えるかな……?」
「……うん、いつか必ず」



 そして、七梨家にて。

「弓樹真弥、またここでお世話になります」
「お帰り真弥〜! やっぱり真弥がいないと駄目よね!」

 帰ってきた真弥をこれ以上ないくらい嬉しそうに歓迎する璃瑠。

「この世に偶然なんかない。あるのは必然だけ、か」
「何ですか、それ?」

 そんな風景を見ながら、太助が呟く。

「真弥さんと春儚さん。クードとレン。四人ともいつかどこかで
 出会っていたのかもしれない……」
「ひょっとして、そのいつかっていうのは前世とか……ですか?」
「おいおい。いきなり何言ってるんだよ、似合わねえぞ?」

 急に似合わないことを言い出した太助をからかう翔子。

「別にいいだろ。ロマンや夢は心の栄養なんだからさ」
「そうですね……」

 そう言って、シャオは一枚の写真を見て微笑む。
 その写真には、輝く笑顔の真弥。
 そしてレンに重なるようにして、彼の大切な人が写っていた……。


 またしても、新しい絵が浮かび上がる。
 黄色い星、若葉マーク、赤いドクロ、渦巻き、青い手裏剣。
 五つのマークが五色の戦士のような配置で描かれた絵……。



データファイル

蒼鎧
全身を鎧に包んだ戦士。
フィロを多数従えていたことからオルガナイトの幹部だと思われる。
自身にはジーク。武器にはグラムザンバーという名前が有るのだが
太助達は知らないままだった。

クードメザーランス
クードのファイナルフォームライド。
レンと同じ外観の、紅の剣に変形させる。
この状態ではレンもディケイドの武器になるが、
クードとリアクトしている状態のようだ。
必殺技は、二刀流の斬撃「ディケイドクラッシュ」


後書き
クオリフィに続いて二人目のオリジナルボスが登場しました。
オルガナイトって「記憶に残る強敵」がいないんですよね(俺にとって。

ファイナルフォームライドは二人を一つにしてシャイニングカリバーとか
考えてましたがどうせならこっちの方が面白いかもと思って
クーには武器になってもらいました。

説教のフレーズには「超電王トリロジー・NEW電王編」の台詞をさっそく
使ってみました。


管理人感想

 ダークレザードさんからいただきました!

 レンを守るため、自ら姿を消すことを選んだクー。
 けれど、レンは身に降りかかる危険よりもクーと共に生きることを選ぶ。
 原作から変わらぬ絆を魅せてくれますなー。そして剣は馬に蹴られて地獄に落ちろ(笑)。