これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「邪進化イーデア!?」
「ザイン……?」
「あいつがこの世界の英雄……なのか?」
「ちょうどザインのことが話題になり始めたころに……いなくなっちまった」
ヤティマを助けて七梨家に帰ってきた太助は自分の見たことをみんなに話していた。
「じゃあ、ザインはヤティマさんの言っているナナシさんなんですか?」
「そうだとしたら、なんでその人のところに帰ってこないんだ?」
「それはまだわからない……。でもきっと理由があるはずだ」
そういった太助の脳裏には、気絶したヤティマをじっと見つめるザイン……いやナナシの姿が浮かんでいた。
ガンガンヴァーサスD
第17話「ゼロ=無限」
一方、どことも知れぬ地下室で、オズはある報告を見ていた。
「フフフ……そうか。ザイン……そんなにこの人間が大事なのかい」
そういってオズが浮かべた笑みはとても邪悪なものだった。
翌日、真弥と翔子はヤティマに付き添っていた。
情報収集のために二組に分かれることになったのだが、翔子は浮かない顔をしていた。
しかたがないとはいえ、「ザイン=ナナシ」であることはヤティマには秘密にすることになったからだ。
そんな三人の前に……。
「よう」
「…! あんた、確か……剣……」
翔子は少しだけ距離をとり、真弥も身構える。
「おいおい、別に二人をどうこうしようってつもりはないぜ?」
「だったら、少しは胡散臭さを隠す努力をしろよな」
「考えとくよ。ところで、分かったことが二つある。
まず一つ目は、その女の子が何故か邪進化イーデアどもに、しょっちゅう狙われていること」
剣が言うなり、三人の背後に邪進化イーデアが二体現れる。
「そして二つ目は、ザインがその女の子を守っていることだ」
そしてすぐに、ザインによって倒された。
去っていくザインを剣はすぐに追いかける。
そして、廃工場で追いついた。
「いろいろ調べてみたが、あんたはあらゆる意味で特別みたいだな。
決めたぜ。あんたのバイオコアをいただく!」
『HERO RIDE DI-END!』
ディエンドに変身すると、早速カードを二枚取り出す。
『HERO RIDE RANFAN QUEEN』
剣が喚んだのは、黒ずくめに仮面の少女と、怖そうな女性型ロボットだ。
「その命、天に返すがいい!」
「さあ、あたしを楽しませなさいよ!」
ここに、剣とザインの戦いが始まった。
太助とシャオはガンダー食堂を訪れていた。
「お、どうしたんだ少年少女」
「こんにちは、ガンダーさん」
「今日はあなたに質問があるんです。ただし」
そこで、太助は一度言葉を切った。
「ガンダー食堂の親父さんじゃなく、六芒聖神リボル・G・ガンダーにです」
太助の言葉を聞いて、ガンダーは表情を消した。
「……何が聞きたい?」
「貴方は知っていたんじゃないんですか? ナナシさんがザインだってことを」
ガンダーは、葉巻を口にしながら答えた。
「お前ら……Zの意味を知ってるか?」
「Zの意味?」
「ああ……。Zの文字は終わり(過去)と始まり(現在)と無限(未来)を意味してんだ。
過去を礎に現在を走り未来に飛び立つ者……それがザインだ」
「終わりは始まり……そして未来は無限か……」
「けどな……ナナシと嬢ちゃんを見てきて俺は分かったんだ。あいつはもうザインじゃねえ。
あえて言うなら未来の子……そう「Z MAN」だ」
太助はその言葉を聞くと笑顔を浮かべて言った。
「それで十分ですよ、ガンダーさん」
ガンダーも気持ちのいい笑顔を見せる。
その時、シャオの携帯が鳴った。
「はい、もしもし……翔子さん?」
『シャオ……ごめん……ごめんよ……』
「翔子さん、どうしたんです? …………ええっ! ヤティマさんがさらわれた!?」
太助もガンダーも顔色を変えた。
自信満々で戦闘を始めた剣だが、今は完全に押されていた。
呼び出した英雄二人は既に倒されている。
「Zイレイザー……。これほどとは……!」
ザインのキックを受けて倒される剣。
だが、ザインは剣に攻撃を加えることなくそのまま姿をくらませてしまった。
「…………ッ!」
悔しさのあまり、剣は地面を殴りつけた。
地下室にて。
気絶したヤティマを柱に縛り付けたオズは笑みを浮かべる。
「ザインをおびき寄せる道具がやっと手に入ったよ……」
だがアジャンタはオズに食って掛かる。
「オズ! こんなやり方間違ってるわ! 人間を使うなんて……」
「……ウルサイ」
そんなアジャンタを、オズは殴り倒した。
「人間がどうしたっていうんだ……。僕たちより弱くてちっぽけな奴らが僕たちのために役立つんだ……。
むしろ光栄に思うべきだろう……。アジャンタ……、僕は君みたいな良い子が大嫌いなんだよ!!」
倒れたアジャンタを踏みにじるオズ。
その瞳には狂気が浮かんでいた。
太助とシャオは、家で翔子と真弥の傷の手当てをしていた。
「大丈夫ですか? 翔子さん」
「ああ、大丈夫だよ……」
「それにしても……いったい何があったんですか?」
真弥は強い。
邪進化イーデアが、いかに多様な能力を持っていてもそうそう負けるとは思えない。
「それがな、相手は空間を割って現れたんだよ。完全に不意打ちだったんで、真弥さんもあたしも
何もできなかったんだ。……ほんとにすまねえ」
そういって頭を下げる翔子。
「気にすることないさ山野辺。話を聞く限り、相手は六芒聖神の筆頭オズだ。
無理をしてたら本当に殺されていたかもしれない」
「でも、あいつはヤティマさんをさらって何をする気なのかな?」
真弥の疑問に太助は答えた。
「分からないけど、オズはナナシに異常なほどの感情を見せていた。
だからたぶんヤティマさんを使って……」
太助がそこまで話した時、玄関のほうから何かが倒れるような音がした。
行ってみるとそこには、ボロボロになったアジャンタが倒れているではないか。
「アジャンタさん! どうしたんです!?」
「……ディケイド……。オズを……止めて……」
ボロボロの体でオズを止めてくれと懇願するアジャンタ。
「ヤティマさんを餌にザインをおびき出して破壊する……。やっぱり」
「信じられなかったけど間違いないわ……。オズは邪進化してしまっているの……」
「ちょ、ちょっと待てよ! そのオズってのは六芒聖神なんだろ? それが邪進化なんて……」
翔子の疑問に太助は冷静に答える。
「どうかな? おれたちだって良い心と悪い心があるんだ。
イーデアにも心があるなら、ありえないことじゃない」
太助の言葉にアジャンタはうなずき、話す。
「オズはザインのプロトタイプとして作られた……。
ザインを倒せば自分が唯一無二の存在になれると考えていたのかもしれないわ……」
アジャンタを介抱しながら真弥は疑問を口にする。
「でも、なんでオズはヤティマさんを使えば、ザインをおびき寄せられると思ったのかな?」
「たぶん心があるからだ。心があればいくらでも思いつける。
心を傷つける方法も、利用する方法も……」
「……ここは……?」
目覚めたヤティマは自分が見知らぬ場所にいることに気付いた。
そこは、巨大なコロシアムの中心だった。
「目が覚めたかい?」
「貴方は!? 私をどうするつもりなの!?」
その言葉にオズは、感情のこもらぬ声で答えた。
「お前はザインをおびき出すための道具さ」
「ザイン……?」
その時、に備え付けられていた機械が反応した。
「この部屋に接近する反応あり! ザインです!」
「来たか……」
一つの影が、走りこんできた。
中心の柱に縛り付けられたヤティマに向かって真っすぐに。
ヤティマを縛り付けられている柱を影が砕こうとした、その瞬間!
「今だ! アンチZシステム作動!」
強烈な衝撃に襲われ影は叫んだ。
「うわぁぁぁぁッ!!」
そして、影はその場に座り込んでしまう。
ヤティマは見た。
その少年を、その少年の顔を。
「ナナシ……さん……?」
「ヤ……ティマ」
ナナシがそれでも立ち上がろうとしたその瞬間、オズがその頭を踏みつけた。
「久しぶりだねぇ、ザイン」
「オズゥ……」
「待っていたよ……。あの時からずっと……、お前を壊せるこの時を!」
「やめてぇ!!」
叫ぶヤティマ。
その叫びに答えるものはこの場にはいない……。
否。現れた。
「世の中には、二種類の人物がいる」
ゆっくりと歩いてくる人物。
それは、オズに戸惑う暇を与えず言葉を続ける。
「人を愛する喜びを知っている人間と、愛されようとばかりする空しさを知らない人間だ」
それは、この世で唯一の誰も代われない葬世者。
七梨太助。
「ヤティマさん。貴方の愛が、空っぽだったザインをナナシにしたんだよ」
太助の言葉を肯定するようにナナシが続ける。
「ヤティマ。ヤティマがくれた愛が、おれを強くしてくれた。
ムカシのなかった俺に、俺をくれたんだ」
「ナナシさん……」
だが、オズはそれを認めようとしない。
「何が愛だ……! そんなもの何の価値もない……!」
「黙れ!!」
太助はオズを一喝する。
「この世界にただ一か所。この人のいつか帰れる場所がある。
そこにこの世界が否定しようとも、この人を受け入れる人たちがいるッ!!
同じ役目を望まれて造られても、お前はこの人の足元にもおよばない。甘ったれのクソガキだッ!!」
「全ての支配者である僕に、お前なんかが勝てるはずはないんだ!」
オズの言葉に太助はニヤリと笑う。
「なら俺は、お前の歪んだ世界を葬るまでだ」
「……ッ! お前はなんなんだようっ!!」
「通りすがりの超戦士だ、覚えておけ!!」
「変身!!」
『HERO RIDE DECADE』
太助がディケイドに変身するのと同時に、周りにいたイーデアたちが襲い掛かってくる。
オズの部下らしい彼らもやはり邪進化しているのだろう。
「俺も……ぐあっ!」
立ち上がって戦おうとするナナシだが、ダメージが大きいのかすぐに倒れてしまう。
「ナナシさん、無理しないで!」
「ヤティマ……」
「……ナナシさん。どうしていなくなってしまったの? どうして帰ってきてくれなかったの?」
涙ながらのヤティマの問いに、ナナシは話し始めた。
オズに襲われたことをきっかけに、自分がイーデアであると知ったこと。
自分のムカシを知るために、旅に出て、その中でたくさんの人と出会い、愛をもらったこと。
そして、邪進化イーデアと闘い続けていたこと。
「オズからみんなを守るために、俺はあまり人とは関われなかった。
でも……。俺、ヤティマに会いたかった!!」
そう言って、ヤティマに抱き着くナナシ。
ヤティマもナナシを抱きしめる。
しばらくそうしていたが、やがて二人は体を離す。
「ヤティマ……、いってくる!」
「ナナシさん……、頑張って!」
太助とオズの戦いは激しさを増していた。
「僕はOZ! すべてを消してしまう力を持ち、空間のすべてを支配できる、
六芒聖神の頂点に立つ最強のイーデアだ!」
「そうかい! けどな、お前がどんな力を持っていても、何を支配できても、
それが他人を踏みにじっていい理由にはならないんだよッ!!」
言いながら拳と拳を、脚と脚をぶつけ合う。
「うるさい! お前こそなんでザインに手を貸すんだっ!」
「それは単純さ。あいつが頑張っているからだ」
その言葉にオズが手を止める。
「何?」
「人間ってのは不思議なものでな。頑張ってるやつを見てると、応援したくなる! 手を貸してやりたくなる!
そうやって力を束ねて大きくしていける! そして今度はその分だけ……、いやそれ以上に誰かを応援してやれる。
そうやってできた繋がりを、友情や愛って言うんだよ!!」
「愛だと……? 繋がりだと……? ちきしょう、ディケイドオオ……」
オズの雰囲気が変わった。
握りしめた拳から血がしたたり落ち、目からも血涙が流れ落ちる。
「ちきしょうう!! ディケイドオオ!! ザインと一緒にお前を力いっぱい殺してやるう!!」
膨大なエネルギーを放ちながら、オズは飛び上がった。
そして、何かを掴むように手を掲げる。
「全力でお前たちを殺してやるう!!」
オズの手に巨大な光の針が握られる。
「あれは!?」
「必殺! 時空波動針!!」
オズが握りしめた針が空間に突き立てられると、なんと突き立てられた部分を中心として
空間がひび割れ、砕けていく!!
「子供の駄々にしてはやり過ぎだぜ、こいつは!」
そこにナナシも駆け付けた。
「このままじゃオズは、俺たちごとこの星を壊してしまう!」
「でも、そんなことさせやしない! だろ?」
「ああ!!」
力いっぱいうなずくナナシ。
それに答えるようにカードも力を取り戻す。
「じゃあ、行くか!」
『FINAL FORM RIDE NNNNANASI』
「ちょっとくすぐったいぞ!」
そういってナナシの背中をさわる太助。
変形したその姿は、巨大な竜の頭。その名もナナシイースター。
太助はナナシイースターに乗ると、ともにオズに向かっていく。
「いい加減死んじゃえよぉぉッ!!」
「悲劇を生み出す力、俺たちが葬り去る!!」
『FINAL ATTACK RIDE NNNNANASI』
オズにキックを打ち込む太助。
そしてナナシイースターは反対側からバーニングプラズマを放ちながら突撃していく。
そして、交差地点でギリギリですれ違い、お互い地上に降り立つ。
「光を抱いて……逝けッ!」
「そうですか……、ナナシさんはまだ帰れないんですね」
戦いが終わって、太助はヤティマにナナシがまた姿を消してしまったことを話していた。
「俺も、またねぐらい言ってからでもいいんじゃないかって言ったんだけど……」
ナナシは、太助にヤティマへの伝言を託して姿を消したのだ。
「伝言?」
「「ヤティマはいつでも俺のここにいる」ってさ」
そう言ってヤティマの胸の中心……心を示す太助。
「君の中にもナナシはいる。心が繋がっていれば、ナナシは必ず君の所に帰ってくるさ」
「……はい!」
ヤティマはこれからもあのガンダー食堂でナナシを待つのだろう。
彼が帰ってくるその日まで。
彼に「お帰りなさい」を言うために……。
「はあ〜」
剣は、七梨家に上り込んで落ち込んでいた。
「まだ落ち込んでいるのか? いい加減元気出せ」
と、シャオと写真を整理しながら太助が声をかける。
「今回は骨折り損のくたびれもうけだったんだ……。ほっといてくれ」
お宝を逃してしまったのが悔しいようで、太助が帰ってくる前からずっとこうだったらしい。
「そんなにお宝がほしいなら、これでどうだ? 六芒聖神リボル・G・ガンダーが作り上げた特注品だ」
そういって太助は台所のほうから持ってきた箱を剣の目の前に置いた。
「あの銃神ガンダーの? ほんとにいいのか?」
「ああ。お宝は価値の解るやつの手にあってこそお宝だからな」
その言葉を聞いた剣は、箱を持ってリビングから出ていく。
……出ていく瞬間こっそりガッツポーズをしながら。
「太助君。そんなお宝いつ手に入れたの?」
そう聞いてくる真弥を適当にあしらいながら太助は再び写真整理に戻る。
「太助君。あれって……」
「ああ、ガンダーさん特製の『焼肉』さ。嘘は言ってないよ?」
確かに太助は嘘は言っていない。勘違いをするような言い方をしただけだ。
旅をするようになってから太助君、那奈さんに似てきました……。
そう思いながらシャオは一枚の写真を手に取る。
そこにはヤティマと、それを見守るようにぼやけて映るナナシの姿がうつっていた……。
そんな彼らの傍らで、本に新たな絵が浮かび上がる。
そこに描かれていたのは、荒野と青空。
そして、青空を行く鳥たち……。
「残る世界はあと一つ……。ディケイド……そこが貴様の死に場所となるのだ!」
機械の虫を従えながら、レザードは薄笑いを浮かべるのであった……。
データファイル
ナナシ
記憶をなくしてヤティマ、ガンダーと暮らしていたが、オズに襲われたのをきっかけとして
Zイレイザーザインとしてのデータを取り戻す。
それからはオズから逃げ回りながら邪進化イーデアから人々を守っていた。
ガンダーは愛を知り愛を力とする彼を、未来の子「Z MAN」と呼んだ。
ナナシイースター
ナナシのファイナルフォームライド。
従属神イースターを模した形態となる。
必殺技は、バーニングプラズマを放ちながら敵を蹴り込んでくるディケイドと交差する
「ディケイドランページ」
後書き
オズ対太助のシーンは軽く流すつもりだったのに、原作読みながら書いていたら
あら不思議、めちゃ気合い入れて書いてました。
やっぱりストレートど真ん中の熱血はいいものです。
もっとも、その反動でその後はあっさり目になっちゃいましたけど。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
囚われたヤティマを救うために駆けつけたナナシ。定番のお約束ではありますが……否! お約束だからこそイイ!
今回は素直に燃えさせていただきました。
太助。あの剣を手玉に取るとは“イイ”性格になってきましたな。
原作でのシャオとのデート話で妨害要員たるルーアンを排除していた小ずるさが思い出されます(苦笑)。