これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「やっと世界が向き合ってくれるようになったのに、自分から世界を捨てるんですか!?」
「この世界は人間が生きることが許されない世界……」
「さあ、受け取りな。最強の反英雄として、この世界に永遠に君臨するんだ」
「俺が世界に求めるものはたった一つ」
「これからも俺は……通りすがりの超戦士だ」



「そういやあ、9つの世界の中にはこんな世界はなかったよな」
「そういえばそうですね」

 新たにたどり着いた世界は、和風の世界。
 それも、太助たちが歴史の教科書でよく知る、江戸時代の風景だった。

「僕としてはそれよりも……さっきから目についているあれが気になるんだけど」

 そう言って真弥が指差したのは、手配書だった。
 内容はどれも同じで

 石川夢幻斎の情報を提供したものには褒賞を与える――

 とある。

「あの絵のことを考えると、ここは剣さんの世界なんでしょうか?」
「まあ、前科があっても不思議じゃないやつだけどな」

 何気にひどいことを言う太助だが、真弥は目の前で剣が誘拐(未遂)を行おうとしたのを見たので
 心の中では同意していたりする。

「気は進まないが、この世界にも俺の役割があるんだろうしな」

 そういうと、太助は町の中へと歩いて行った。


「戻ってきちまったんだな……。俺の世界に……」

 剣は、町はずれにある桜の木を見上げながら呟いた。
 そこに、風に乗って、一枚の紙が飛んでくる。
 それに目を通した剣は、顔をしかめた。

「相変わらず仕事熱心だねぇ。あいつは……」

 そう言って剣は紙……手配書を捨てて……ディエンドライバーを構えた。
 いつの間にかあたりには、鍬や棒を持った人々が集まってきている。
 そして、人々の目は、自分の意思が見えない、濁った眼をしていた。

「まったく、胸糞悪いな……ッ!」


「明らかにおかしいな」

 しばらく歩いただけだが、太助はこの世界のおかしさに気付き始めた。
 人々がみな親切すぎるのだ。それも異常なまでに。
 お腹がすいたと言えば、近くの団子屋さんが山盛りの団子を奢ってくれるし、
 疲れたと口にすれば、殿様もかくやというほどもてなしてくれる。

「しかも、剣のことを聞こうとするとみんな黙り込む……」

 夢幻斎とやらと剣が同一人物……かどうかは解らないが、少なくとも剣個人も
 この世界では歓迎されない存在らしい。
 そんなことを考えながら歩いていると、後ろから、少年が駆けてきた。

「おっと」
「兄ちゃん、ごめんよー!」

 どうやら、友達との待ち合わせに遅れまいと急いでるらしい。
 仕方がないし相手は子供なので、太助は「まあいいか」と思い気にしなかったが
 この世界のルールはそれを許さなかった。

「うわぁーー!!」

 なんと、子供が角を曲がろうとした瞬間、どこからともなく現れた魔物が子供を締め上げた!

「オマエノヤサシサハドウシタ?」

 そう言って、片手に持った刃を少年に向けて振り下ろそうとした瞬間!

「やめろぉ!」

 太助は全力で魔物を蹴り飛ばす。
 子供が逃げ出すのを見届けて、太助はカードを取り出した。

「変身!!」
『HERO RIDE DECADE』

 ディケイドに変身して戦う太助。
 少し戦って分かったことだが、どうやらこいつは機械兵器のようだ。

「だったら」
『HERO RIDE JUDE』

 ジュードに変身すると、もう一枚カードを取り出す。

『ATTACK RIDE SHORTSARKIT』

 機械をショートさせる電撃を受けてふらつく兵器。
 間髪入れずに太助はディケイドに戻ると、とどめに移る。

『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』

 ディメンションキックを受けて機械兵器は爆発した。

「こいつはいったいなんだったんだ?」

 その時、太助は背後に気配を感じた。
 振り返るとそこには、動きやすそうな格好の少女と
 おっとりした感じの女性が立っていた。

「ねえ、これ倒したの貴方かしら?」
「そうだけど……君は?」
「だったら早くここを去った方がいいわ。このままじゃ貴方捕まっちゃうわよ」

 だが、それは少し遅かった。
 町の人々が、殺気立った目で太助と二人に詰め寄ってくる。

「敵……敵……敵……」

 明らかに正気ではないが、かといって叩きのめすわけにもいかない。
 太助たちは逃げることにした。

「どういうことなんですか? 助けた人は襲い返せなんて法でもあるんですか?」
「その前に、貴方は誰なの?」
「通りすがりの超戦士です」

 自己紹介としてはどうかと思ったが、まだこの二人が敵かどうかも分からない以上
 名前を出さない方がいいだろうと思ってのことだったが、女性の方は気にすることなく返した。

「だったら、早く通り過ぎた方がいいわ。ここは、旅人さんには優しくない町だもの」


 女性と別れてから、家へ帰るために路地を歩いている太助。
 その前に次元壁が現れる。

「貴様の旅はここで終わるのだ、ディケイドよ」
「レザード……!」

 いつもの如く現れるレザード。

「この世界は秩序を乱す者に決して容赦しない!
 貴様らの敵は、この世界そのものなのだ! フハハハハ……」

 高笑い付きで消えていくレザード。
 太助は、冷ややかにそれを見つめていた。

 翌日。
 この町の最高責任者という人物の家に、太助たちは訪れていた。
 いきなりはどうかとシャオと真弥は気にしていたが、夢幻斎の情報を持ってきたというと
 二つ返事で面会してもらえることになった。
 通された部屋でしばらく待っていると、やがて一人の少年がやってきた。

「お待たせいたしました。鏡堂天城と申します」

 現れたのは、自分たちとあまり変わらない年頃の少年だった。

「驚きましたか? 僕のような少年が、町の長だというのは」
「いっ、いえ! そんなことは……」
「かまいませんよ。僕自身もそう思っていますし……。
 ところで、あなた方は石川夢幻斎の情報を持っているそうですが?」

 そういう天城に、太助は答えた。

「かもしれない、という程度ですが怪しい人物が俺たちの周りをうろうろしていたのは確かです」

 隣に座っていたシャオは違和感を感じた。
 何故かはわからないが、太助の言葉が少し刺々しいように感じたのだ。

「まあ、コソドロの考えなんて理解できないし、したくもありませんけど」
「それは、僕も同感ですよ」

 と、ここで翔子が天城に問いかけた。

「聞きたいんですけど、この町と夢幻斎は何か関係があるんですか?」

 その質問に天城は答えた。

「夢幻斎は、この一本桜花町に昔から出没しているんですよ。
 町の人々が騙し取られたりしたものを、盗み出し本来の持ち主に返す……。
 町の人々は義賊と呼んで持て囃していますが、僕には理解できない。
 奴はこの町の法を犯す「悪」以外のなんでもない……」

 そういう天城の顔には、夢幻斎への憎しみが滲み出ていた……。


 どこかの川辺にて。
 太助のであった少女――如月雛菊とその姉、椿が会話していた。

「そういえば、あの通りすがりの子、どこか似てたわねぇ」
「似てないわよ! あいつになんか……」

 間髪入れずに否定する雛菊だったが……。

「あら雛菊ちゃん。私は別に誰とは言ってないわよ?」
「う」

 姉の方が色々と上手だったようである。

「……うるさいなぁ! あたし本当にあいつのことなんかどうでもいいんだから!
 いきなりいなくなっちゃうし、天城君もおかしくなっちゃうし……」

 ちなみに、雛菊にボロクソに言われている「あいつ」はすぐ近くの林の中で全部聞いていたりする。

「いやぁ〜。酷い言われようですねえ。傷ついちゃうなあ」

 そう言ってあいつ……剣は林の中から現れた。

「剣!? あんたいったい今までどこに……」
「しっ。雛菊ちゃん。それは後にした方がいいみたいよ」

 椿が言うや否や、周りからワラワラと様々な機械兵器が現れる。

「変身!」
『HERO RIDE DI-END!』

 剣はディエンドに変身する。

「剣君。いつの間にそんな力を?」
「話は後です。……雛菊さん。今更戻ってきてこんなことを言うのはおかしいかもしれません。
 でも聞いてください。僕は、この町を守るために戻ってきたんです」


 その頃シャオと翔子と真弥は、町の中を歩いていた。

「太助君、大丈夫でしょうか?」

 と、太助を心配しながら歩いていたが、その前に大きな荷物を背負って歩いている老婆を見つけた。
 シャオは急いで駆け寄ると、その荷物を支えてあげた。

「相変わらずだな、シャオは」
「そうだね」

 出遅れた翔子と真弥は、それを見ていたが……。

「オマエタチノヤサシサハドウシタ?」

 何と、翔子と真弥の後ろに、昨日太助が戦った機械兵器が現れていた。

「えっ?」

 ドゴッ!

 機械兵器は、二人を気絶させると、どこかへ運んで行った。


「やっと見つけたよ! 借りは返させてもらうぜ!」
「あんたは……昨日の通りすがり」

 その頃、太助は如月姉妹と会っていた。

「変身!」
『HERO RIDE DECADE』

 挨拶もそこそこに、太助もディケイドに変身して戦いに参加する。

「取り敢えず教えてくれないか? こいつらは一体何なのかをさ!」
「こいつらは……よくわからないけど番犬ってところかしら! この町の人間のね!」
「ええ、こいつらは人々に「優しくあれ」と強制しているの」

 椿と雛菊の言葉に、太助は納得した。

「なるほど。あの優しさはやっぱり作り物だったのか。おかしいわけだ!」
「そして、それを守らない人間はすぐに拘束されて……心を奪われる。
 ミクトランの操り人形にされてしまうの……」
「ミクトラン……。そいつは一体……」

 詳しく聞こうとした太助だが、敵の攻撃を受けてよろめく。

「剣! 一気に決めるぞ!」
「……ちょうど俺……僕もそう思ってました!」

『SINYA COUD RUMINA HARMEL SIGNAL JUDE NANASI KERORO ALICIA FINAL HERO RIDE DECADE』

 コンプリートフォームに変身すると、アリーシャの紋章をタッチする。

『ALICIA HERO RIDE VALKYRIE』

 太助の知るアリーシャを成長させたような女性が現れる。

『FINAL ATTACK RIDE AAAALICIA』
『FINAL ATTACK RIDE DIDIDIDIEND』

 ニーベルンヴァレスティとディメンションシュートが機械兵器の大軍を一掃する!


 その頃、鏡堂邸にて。

「ミクトラン様。異世界からの来訪者を捕らえました。
 すぐに貴方様の僕として生まれ変わるでしょう」

 この世界の真の支配者にそう報告する天城。
 そして拘束され、今まさに、自由を奪われようとしている翔子と真弥。
 この町の涙は、まだ止まらない……。



データファイル


如月雛菊
「桜花の世界」の重要人物。
代々夢幻斎を追い続けてきた如月家の次女。
石川夢幻斎対策課の実働要員として、日々夢幻斎捕縛に燃えている。
が、現在は対策課を一時休業して、レジスタンス活動をしている。
心の奥底では剣のことを……?

如月椿
雛菊の姉。
対策課課長として、肩に力が入り過ぎな雛菊をフォローしている。
実は、雛菊よりも遥かに高い身体能力の持ち主なのだが、それを表に出すことはない。
古い因習に縛られるのを快く思っていない。

鏡堂天城
一本桜花町の長である鏡堂家の跡取り。「かがみどうあまぎ」と読む。
雛菊とは幼馴染で、昔は体が弱かったらしい。
雛菊の前では少年らしい顔を見せるが、夢幻斎のことを「悪」と見下していたりするなど
時折、冷酷な一面を覗かせることも……。

後書き
剣の世界……というより雛菊の世界編スタートです。
小梅ちゃんは、隠れ家でお姉ちゃんたちの帰りを待っています。
さすがに戦うには幼すぎる年齢ですからね。


管理人感想

 ダークレザードさんからいただきました!

 そうですね。ディエンドの世界となったら、この作品では剣の世界=『ひなぎく見参』の世界なんですよね、すっかり失念しておりました。
 桜野作品では“ひなぎく×剣”のカップリング(“剣×ひなぎく”ではない。断じて)が一番好きだったはずなのに、なんてこったい。

 それはともかく、やっぱり天城は悪役ですか。
 けどコイツ、雛菊のためなら手段を選ばないってあたり、純一役よりも『555』の草加役の方がよっぽど似合う気がします(苦笑)。