これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「真の繁栄は至高の存在によってのみもたらされるものなのだ!」
「違う! お前はこの世界……この町を地獄に作り替えただけだ!!」
「お前だけじゃない……。俺の思い通りにならないものは全部だッ!!」
「聞こえる……聞こえるぞディケイド! 貴様の悲鳴がなぁ!」
「俺の旅の行先を決められるのは、何時だって俺だけだ」
大きな湖の近くにある一軒の家。
「ナッツハウス」と書かれた看板を掲げたその家から一人の少女が出てきた。
どこかの中学の制服を着た紫の髪の少女は、扉を閉めて振り向くなり、信じられない光景を見た。
目の前にいる男子の手の中に、「この世界」にあるはずのないものがあったのだ。
「あんた、それは!!」
「この世界の宝、「奇跡の青い薔薇」は俺が頂いたよ」
「ふざけないで! あんた何者?」
その言葉を聞いた男子……石川剣は不敵に笑いながらカードを取り出し。
「通りすがりの、超戦士。ってところかな?」
そう、名乗った。
「ふざけないでって言ったでしょ……? その薔薇、返しなさいッ!!」
ガンガンヴァーサスD
第二十四話「華蝶の物語」
新たな世界へ到着した太助たちは情報を集めるために、歩いていたが……。
「太助君どうしたんですか? この世界についてから変ですよ?」
この世界に来た時から、太助がどうもソワソワしているのだ。
「いや……。どうも落ち着かないんだ。この世界。肌に合わないっていうのかなぁ……」
「そういえば、今回服装とか変わってないよなぁ?」
翔子の言うとおり、この世界では太助の服装に変化が起こらなかったのだ。
「じゃあ、この世界では太助君には特に果たすべき役割がないのかな?」
「まあ、ある意味ではその通りだな」
真弥の疑問に答えたのは、剣だった。
「剣。その鉢植え……、もう一仕事終えた後ってことか」
「対策課の仕事はどうしたんですか?」
「その通り。ついでに言えば対策課は当分活動できないんで、無期限休暇中だ」
太助とシャオの質問に答えを返す剣。
「それはともかく、七梨に役割がないってのはどういう意味だよ?」
「言葉通りの意味さ。この世界は、お前が主役になれない世界だからな」
「何?」
どういう意味だと聞き返す前に、剣は高台の上に上がった。
「そんな訳だから、とっとと通り過ぎた方がいいぜ」
指鉄砲で太助を狙い撃つと、剣は去って行った。
その剣を追いかけるように、紫の髪の少女が現れ去っていく。
どうやら、もとはあの少女のお宝らしい。
「七梨が主役になれない……? 今までもそうだったよな?」
翔子の言葉は少し乱暴だが、それは確かだ。
太助はその世界の英雄を助けてきたに過ぎない。
それは、剣も知っているはずだが……?
「ホシイナ〜〜!!」
そんな四人の前に、雄叫びとともに怪物が現れた。
緑色の巨体の中心にバスケットボールのような球体が張り付きそこに二つの眼が存在している。
雄叫びは気が抜けるが、それでも確かなことがある。
「この世界にも、倒すべき悪はいるみたいだな」
そう言って、ディケイドライバーを装着しようとしたその時、声が響いた。
「プリキュア! メタモルフォーゼ!!」
そして、桃、赤、黄、緑、青の五つの光が怪物の前に降り立つ。
否。それは光であり人。世界を邪悪から守る伝説の戦士。
「大いなる希望の力! キュアドリーム!!」
「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」
「はじけるレモンの香り! キュアレモネード!!」
「安らぎの緑の大地! キュアミント!!」
「知性の青き泉! キュアアクア!!」
その名は、その名は! その名は!!
「希望の力と未来の光! 華麗に羽ばたく五つの心!
Yes! プリキュア5!!」
シャオが、翔子が、真弥が呆然とする中、太助は呟いた。
「プリキュア5の世界か……」
プリキュアと怪物「ホシイナー」との戦いは割とあっさり終わった。
といってもシャオ達が呆然としていたからそう感じただけで、実際にはもう少し長かったが。
「いやー、なんていうか……。徒手空拳で怪物となぐり合うヒロインとは……」
「最近の女の子は凄いんだなあ……」
翔子と真弥がプリキュアの戦いぶりに感想を言い合う中、シャオはあることに気付いた。
「二人とも! 太助君が居ません!!」
いつの間にか、太助が居なくなっていたのだ。
「ああああ。どうしましょうどうしましょう……」
目に見えて取り乱すシャオを見かねて、翔子が声をかける。
「心配し過ぎだよ。七梨だって子供じゃないんだから……」
「なんでそんなに落ち着いていられるんですかッ!!」
「シャ……シャオ……?」
恐る恐る翔子が名前を呼ぶと、シャオは怒鳴ってしまったことを反省したのか、やや小さな声で言った。
「ごめんなさい……でも、不安なんです。この世界は太助君を必要としていないみたいで……」
真弥の「役割がない」という言葉を「ある意味」と肯定し、「主役になれない」といった剣。
そしてその証拠であるプリキュアの存在。
それらが、シャオの心に重くのしかかっていたのだろう。
「……大丈夫だよ。太助君はシャオちゃんを置いていなくなったりしない」
「ああ。お前と七梨は家族なんだろ? だったら信じてやれよ」
「……はい」
一方その頃太助は何をしていたかというと。
プリキュア達の後をつけてナッツハウスにたどり着いていた。
「この世界の英雄が彼女たちってわけか……。五色の戦士とかスーパー戦隊の親戚か?」
入ってみると、中は手作りと思しきアクセサリーが並んでいた。
「あら、お客さんですか?」
カウンターに立っていたのは、緑髪の少女。
「(この子の声……確かキュアミントだったな)はい、家族に……プレゼントをしようと思って」
そう言って商品を見ながら、店のあちこちに視線を巡らす。
カウンターの少女だけでなく、店の中にいる四人の少女たち。
どうやらここはプリキュアの基地(のようなもの)らしい。
「(? キュアドリームが見当たらないけど……二階かな?)」
そう思っていると、上から男性と女性が言い争う声が聞こえてくる。
女性の方はキュアドリームと同じ声だ。
「(喧嘩……か?)」
一方、剣は。
いまだに薔薇を持って少女「美々野くるみ」から逃げていた。
「いいかげんに薔薇を返しなさいよ!!」
どこまでも追いかけてくるくるみに、剣もイライラしてきた。
「そう言われて「ワカリマシタ」と返す奴が盗みなんかするか。
いいかげん粘着質が過ぎるんだよ! 変身!!」
『HERO RIDE DI-END!』
ディエンドに変身した剣は、早速二枚のヒーローライドカードを取り出す。
「あんた……エターナルだったの!?」
「やれやれ……悲しいねェ、無知ってのは」
『HERO RIDE SHARUMA FARAH』
ロールパンヘアの鞭使いシャルマと、レグルス流拳士ファラがくるみに襲いかかる。
だが、彼女もただの女子中学生ではない。
懐から、華やかなパレットケースを取り出すと、流れるようにボタンを押す。
「スカイローズ! トランスレイト!!」
奇跡の青い薔薇の力で誕生した新たな戦士。その名も!
「青い薔薇は秘密の印! ミルキィローズ!!」
ミルキィローズは一撃でシャルマを倒し、そのまま剣、ファラと戦い始めた。
「ムフフフ……あれがそうだな」
離れたところで剣とミルキィローズの戦いを見ながら呟くオールバックのおっさん。
彼の名は「ブンビー」プリキュアの敵、エターナルの一員である。
「とりあえずは……あいつの銃だな!!」
その言葉とともに、ブンビーは怪人態になり、右腕の針を剣に向けて発射する!!
「ぐあぁぁぁッ!!」
針は剣に直撃し、ディエンドライバーを手放したため変身が解けてしまった。
「よーし! ……いやまてよ、ついでにこれを使って……ムヒヒヒ………」
ディエンドライバーを見つめてニタニタ笑うブンビー。
そして、徐にホシイナーボールを取り出し、ディエンドライバーに合体させた!!
一方、ナッツハウス。
湖の岸辺で「夢原のぞみ」が落ち込んでいた。
「はぁ〜。ココに言い過ぎちゃったかなぁ? でも……」
事の起こりはついさっき。
最近、いつにもまして自分を心配するようになったココと喧嘩してしまったのだ。
「喧嘩して落ち込むなんて、伝説の戦士もやっぱり普通の女の子なんだな」
いきなり声をかけられて、のぞみは振り向く。
そこには、自分たちと同じくらいの男子――太助が立っていた。
「貴方……いったい誰なの……!」
太助を睨みつけるのぞみ。
自分のことをそう呼ぶ以上、この人は普通の人間じゃない。
「そんなに睨まないでくれよ。俺は世界を旅するただの通りすがりさ。
まあ、しばらくこの町いるだろうから、また会うかもね」
「太助くーん!」
呼ばれたので振り向くと、真弥がこちらに駆け寄ってきている。
「良かった、見つかって」
「いったいどうしたんですか?」
「それは歩きながら話すよ。とにかく、帰ろう」
そう言って、太助を引っ張りながら歩き出す剣。
「ちょ、分かりましたから!」
二人を呆然とした表情で見送るのぞみ。
「……なんだか、不思議な人」
「で、いきなりなんですか?」
いきなり現れて、何も言わずに話を中断されたことに、太助は不満を覚えていた。
「ごめん。でもシャオちゃんが……」
「シャオがどうしたんです?」
「……剣君に言われたことでナーバスになってるみたいなんだ。
太助君、一度時間を作って話をしてあげてくれないかな?」
「ええ……。ん?」
その時、太助はフラフラと目の前に人が現れたのを見た。
「剣? お前そんなにボロボロでどうしたんだ?」
その疑問はすぐに解けた。
剣を追いかけるように、ホシイナーが現れたからだ。
しかもそのホシイナーは、シアンのプレートが配置されてる上に、右腕がディエンドライバーになっている。
「お前まさか……、ディエンドライバーをホシイナーにされたのか?」
「クッ……」
そのまま剣は倒れてしまう。
「アーハッハッハ!! お前天才だな! 泥棒が泥棒されるって……、も、最ッ高!!
俺、笑い死にしそうだよ!! 真弥さん、そいつちゃんと助けておいてくださいよ」
「そりゃ助けるけど……、何考えてるの?」
「決まってるじゃないですか……。
この恩を百倍返しで返させるんですよ……」
そういう太助の顔は、相当に悪者だった。と真弥は後で語っている。
「変身!」
『HERO RIDE DECADE』
ディエンドライバーホシイナーと戦う太助。
だが、ディエンドライバーホシイナーはかなりの強敵で、太助は苦戦していた。
「い、いったいなんなんだ? あのホシイナー、強いのはいいんだがこっちの言うことを全く聞きやしない!」
物陰からこっそりとみていたブンビーもディエンドライバーホシイナーに違和感を感じていた。
「ホ……ホシ……ィィィィ!!」
叫び声さえまともにあげられていない。
このホシイナーはここで倒さなくてはいけない。
そう直感した太助はケータッチを取り出す。
『SINYA COUD RUMINA HARMEL SIGNAL JUDE NANASI KERORO ALICIA FINAL HERO RIDE
DECADE』
『KERORO HERO RIDE BLAVE』
騎士コスプレをしたケロロを召喚し、止めに移る。
『FINAL ATTACK RIDE KKKKERORO』
ファイナルアタックライドを発動させ、突撃するが、ホシイナーは回避して、そのまま逃げだしてしまう。
「えー!? ちょっとドコ行くのー!?」
文句を言ってしまうブンビー。
そして彼の後ろで一部始終を見ていたレザードは憎々しげに呟いた。
「はじまってしまった……この世界もディケイドによる改変が……」
逃げたディエンドライバーホシイナーはビルの屋上に佇んでいた。
いや、その中身はもうホシイナーではなかった。
「ウゥゥゥゥ……ォォォォォ……」
何かに浮かされたようにカードを右腕であるディエンドライバーに差し込む。
『EVIL RIDE』
「……ヘ・ン・シ・ン……」
『DI-END』
現れたのは「ホシイナーディエンド」とでも言うべき異形の超戦士だった。
「ウォォォォーッ!!」
不気味な唸り声をあげるホシイナーディエンド。
それを見ながらレザードは呟く。
「誕生してしまった……! この世界にもディケイドの敵が……!
……おのれ、ディケイドォォォッ!!」
データファイル
キュアドリーム/夢原のぞみ
サンクルミエール学園中等部二年生の少女。
妖精の世界「パルミエ王国」の王子「ココ」の夢を叶えるため、キュアドリームとして
闇の組織「ナイトメア」との戦いを、仲間たちとともに戦い抜いた。
現在は新たな闇の組織「エターナル」と闘い続けている。
大好物のたこ焼きにかけようとするほどチョコレートが大好き。
ココとは種族の違いと別離を知りながらも互いに想い合うようになっていった。
キュアルージュ/夏木りん
サンクルミエール学園中等部二年生の少女。
キュアルージュに変身する。
のぞみの幼馴染で親友。
運動が得意だが手先も器用でナッツハウスのアクセサリーも彼女作。
実はお化けが大嫌い。
キュアレモネード/春日野うらら
サンクルミエール学園中等部一年生の少女。
キュアレモネードに変身する。
学校生活で初めての友人であるのぞみを強く慕っている。
たこ焼きにまでかけようとするほどのカレー好き。
キュアミント/秋元こまち
サンクルミエール学園中等部三年生の少女。
キュアミントに変身する。
読書が大好きで好奇心が強いせいか、お化けなども怖がらない。
実家が和菓子屋の為か、料理に羊羹や大福をいれようとする悪い癖がある。
キュアアクア/水無月かれん
サンクルミエール学園中等部三年生の少女で同生徒会長。
実家が大富豪で、ナッツハウスも元は水無月家の別荘(の内の一つ)
キュアアクアに変身する。
こまちとは大の親友。
才色兼備という言葉がぴったりの少女だが、経済感覚と料理には難あり。
ミルキィローズ/美々野くるみ
パルミエ王国の妖精「ミルク」が奇跡の青い薔薇の力で人間、そして戦士へと変身した姿。
プリキュア5全員に匹敵するパワーを持つが、妖精が変身しているため時間制限という弱点がある。
ブンビー
かつてプリキュア5と戦った闇の組織「ナイトメア」の元中間管理職で、現在は「エターナル」の新入社員。
今回はディエンドライバーホシイナーを使って点数稼ぎをもくろんだがあっさり失敗。
ディエンドライバーホシイナー
ディエンドライバーを母体として生み出されたホシイナー。
この世界に存在しない物を母体とした為か、徐々に「ディエンド」の概念に浸食され
「プリキュア5の世界」における最初の、そして邪悪な超戦士「ホシイナーディエンド」となってしまう。
後書き
ライダーの後番組であるプリキュア。
その中でも最も戦隊っぽい「Yes! プリキュア5」の世界の始まりです。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
『シンケンジャー』の世界に対応したのは『プリキュア』ですか。戦隊シリーズっぽいというのは納得ですが、また思い切り方向性の違うところを狙ってきましたね。
まぁ、作品のチョイスの自由度がますます上がって良いことですが。
剣に恩を売ろうと企む太助が悪者顔な件。
太助も、アレで意外と腹黒いところがあるからなぁ……うん、違和感ないな(マテ