「太助君。……ディケイドって知ってる?」
「ディケイドはこの世界を葬る……。奴を倒さなければ、未来は死に絶える……」
これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「どうして、どうして太助君が居たらいけないんですかッ!?
何も知らない人のことを勝手に決めつけて傷つけるのがそんなに楽しんですかッ!!」
「太助君、私は貴方を葬世者だなんて思ってないよ。
世界がどうとか知らないけど、私たちは貴方を追い出すつもりなんてないよ」
「俺はこの世界に居つくつもりはないよ。何しろ俺は、通りすがりの超戦士だからね!!」
太助達四人は「ナナシの世界」とよく似た未来都市の中を歩いていた。
もっとも、あちらとは違ってこちらの世界はより無機質な雰囲気が強かったが。
「今度は、どんな世界なんでしょうね?」
「別にどんな世界だろうと、俺のすることは今まで通りだろうけどね」
シャオの言葉に、太助は絵柄の浮かんでいないカードを見つめながら、どこか投げやりに答えた。
そんな彼らの背後で幾つもの影が動いた。
「なんだあいつら?」
「ロボット? でも、なんか機械っぽいな……」
そこにいたのは翔子の言葉のとおり、作業機械のような印象を見せるロボットたちだった。
外観はばらばらだが、友好的な雰囲気を放っていないことだけは共通していた。
「フフハハハハハ……」
その時、笑い声とともに光弾がいきなり打ち込まれる。
かろうじてかわした四人の前に今度は人型のロボットが現れた。
全身が黄色で、額には勾玉。そしてみずら結いの男性のような姿をしている。
「わが名はナイトメアポリスのヴァジュリーラFF!! 偉大なるドップラー博士の命により
無能な人間どもを排除する!!」
ヴァジュリーラに従っているらしいメカニロイドが、ジリジリと四人に近づいてくる。
太助がディケイドライバーを取り出そうとした時、一つの影が太助たちとヴァジュリーラの間に割って入った。
「待て! 人間を傷つけようとするイレギュラー共……。
イレギュラーハンターエックスの名に置いて、お前たちを処分する!」
そのまま左手をバスターにチェンジさせ、イレギュラーと戦い始めるエックス。
それをみながら太助は呟いた。
「……Xの世界か」
ガンガンヴァーサスD
第二十六話「蒼穹の物語」
まずはメカニロイド達と戦うエックスだが、これは楽に片が付いた。
だが、ヴァジュリーラは言うだけあってなかなか強い。
「あまりあっさり終わらせないでくれないか……エックス!!」
「心配しなくても……期待には答える……さッ!!」
ヴァジュリーラを跳ね除けてバスターを連射するエックス。
シールドで防ぐヴァジュリーラだが、その時思いもよらぬことが起こった。
なんとヴァジュリーラの背後に次元壁が現れ、そこから現れたモンスター「りゅうきへい」と
不死者「ドラゴントゥースウォーリア」がエックスに襲いかかったのだ。
「ムッ。なんだこの化け物共は!」
ヴァジュリーラにとってもこの援軍は予想外だったようだが、それは太助たちにとっても同じ。
「なんで、モンスターや不死者がこの世界に?」
「太助君!」
「わかってる。変身!!」
ディケイドに変身して二体に挑みかかる太助。
「貴様はディケイド!」
「ディケイドだって!?」
「ここでもかよ……」
うんざりしながらも二体の侵略者と戦う太助。
『HERO RIDE COUD』
クードに変身して、翠の大剣で二体を切り刻む。
『FINAL ATTACK RIDE CCCCOUD』
そして、エウロスループでりゅうきへいは倒されたが、ドラゴントゥースウォーリアは次元壁の中へ逃げて行った。
「ええい、覚えていろ!」
ヴァジュリーラも撤退する。
そして、クードの変身を解いた太助の前にエックスが立ちはだかる。
「葬世者ディケイド! この世界をお前の好きにはさせない!」
バスターを突きつけるエックス。
一触即発のその状態に、シャオが割って入った。
「太助君は葬世者なんかじゃありません!!」
「君は……」
エックスはバスターをおろし、太助は変身を解除する。
「太助君はこれまでも世界を救ってきたんです! 信じてください!」
「…………わかった。信じよう、君のその瞳を」
「うんうん。嫁は強し、だな」
「誰が嫁ですか?!」
「シャオに決まってんじゃん」
シャオの説得で、この場は収まり、太助たちはエックスに色々聞くことにした。
「俺はエックス。イレギュラーハンターとしてイレギュラーから人々を守っている。
ところが、最近になってイレギュラーとは全く異なる謎の敵が現れ始めた。
おまけに調査にあたっていた仲間……ゼロも行方不明になってしまったんだ……」
エックスの話すこの世界の現状はかなり深刻だった。
「さっきのモンスターや不死者がそれか……」
「どうやら、この世界でも融合と破壊が進んでいるみたいだね」
「その謎を解いて解決するのが太助君の役割ですね」
だが、太助は……。
「またそれか……。そうやって今まで戦ってきたけど、結局旅は終わらないままじゃないか。
じゃあ、俺がやってることって本当に意味があるのか?」
「おいおい、拗ねたのかよ七梨」
どうも、プリキュア5の世界での出来事はまだ太助の心の中で燻ったままのようだ。
そんな太助を見て、エックスが声をかけた。
「俺は今、ゼロを取り戻すために戦っている。君も……」
「あんたは報われるかどうかも分からないことの為に、永遠に戦い続けるって言うのか?」
「なんだって……?」
「俺はごめんだ」
エックスに謝る真弥の声を聴きながら、太助はその場を去った。
その後、太助は街の中を写真を撮りながら歩いていた。
だが、太助は肌で感じていた。
「(この世界も、俺に撮られたがっていない……。
街も、人も、風も……、みんな余所余所しい)」
それでも写真を撮っていると、シャオが映った。
「シャオ……」
「無意味かもしれないなんて言わないでください……。
私は太助君のしてきたことの意味をちゃんと知ってますよ」
「だから、戦えっていうのか?」
「違います! 私たち家族じゃないですか!」
「やめろ! 家族だからって相手のことが無条件でわかるわけないだろう!!」
シャオの言葉も、今の太助には届かない。
「変なところで甘えん坊なんだよな〜太助君は」
離れたところから二人の様子を見ていた真弥だったが……。
太助とシャオのすぐそばに次元壁が出現したのを見て慌てて駆け寄る。
「太助君!」
次元壁の中からドラゴントゥースウォーリアと不気味な大鎌を持った身なりの良い男性。
そして、ソードメイスを持った青い甲冑の男が現れた。
「見つけたぞ、ディケイド」
「お前か……。不死者どもを出していた新たな敵っていうのは」
その言葉に、男は笑って言った。
「ファファファ……。それでは呼び辛かろう。我々の真の名を教えてやろう。
世界の混沌を望む者達が大結集した大いなる大組織……。それが我ら、ビッグディザスターだ!!」
「ビッグディザスター?」
「我が名はエクスデス。貴様を無に帰すためにやってきた。
ディケイドにとっては招かれざる者というわけだ」
その言葉に太助はディケイドライバーを取り出す。
「そう思ってるなら、現れるなっての」
「真空波!!」
だが、エクスデスの真空波でディケイドライバーを撃ち落とされてしまう。
そして、配下の二体に太助と真弥は襲われる。
「ディケイド……。貴様の命をいただこう」
そう言って、いつの間にか左手に握った漆黒の剣を太助に向けるエクスデス。
だが、その刃が太助を貫くことはなかった。
「太助……君」
代わりに、シャオが、貫かれたから。
「シャオ!? シャオしっかりしてくれ!」
「お前……ッ! よくもぉーッ!!」
怒った真弥が殴りかかるが、エクスデス達はそれを避ける。
「ディケイドにメシアか……。面白い、また会おう。ファファファ……」
エクスデス達は次元壁へと消えていった。
「シャオ! シャオ! おい、起きてくれ!」
「シャオちゃん!!」
太助と真弥の呼びかけにも、シャオは目を開けることがなかった……。
そして、倒れたシャオは病院に運び込まれた。
だが……。
「原因不明ってどういうことだよ!?」
「医学的にはそういうことらしい……。昏睡の原因はね」
刺された傷は治療されたが、シャオはいまだに苦しみ続けていた。
「治す方法はないのかよ!」
「原因がわからないんだ! ……手の付けようがないんだよ」
苦しげに真弥は言った。
「哀れなものだ……」
珍しく心の底からそう思っている口調でレザードが言った。
「でやがったな、変態メガネ」
「ディケイドに関わった者は全て滅んでいく……。
月小燐も、弓樹真弥も、そして七梨太助自らもだ……。
滅びを拒むのであれば、奴とは関わらないことだな」
憐みの感情がこもってはいても、いつもと同じ上から目線の忠告をして消えていく。
「……そういや、七梨の奴は?」
太助は、病院の屋上で落ち込んでいた。
覇気が消えたその有様は自殺志願者に見えるかもしれない。
「七梨……。お前こんなところで何やってんだよ?」
今はシャオの傍にいなくちゃ駄目だろう。
そう言外ににじませる翔子の言葉に、力なく太助は答えた。
「俺は葬世者だ……。俺が傍にいればシャオはもっと傷つく……」
「……ッ! こんな時に何言ってやがんだッ!!」
胸ぐらをつかんで無理やり太助を立ち上がらせる翔子。
「まったくだな、隙だらけじゃねえかよ太助。
おかげでほら、あっさり最高のお宝が手に入っちまった」
そういいながらディケイドライバーを手の中でもてあそぶ剣。
「……俺達は今、お前みたいな暇人にかまっている暇はないんだ」
「気に入らねえなその言い方。人と話し合うときはちゃんとその人と向き合えって教わらなかったのか?」
「そんなことはどうでもいい。剣、知ってるなら教えろ。
あのエクスデスって言うのは何者なんだ? シャオはなぜああなったんだ?」
どうでもいいと言われたことに不満そうだったが、剣は話し始めた。
「エクスデスは『究極の幻想の世界』の一つから来た暗黒魔導士だ。
奴は、無の力を手にしようとして光の戦士バッツ=クラウザー達と戦い、極度に消耗した。
今はデスブリンガーという魔剣を使って他人の生命エネルギーを奪い、体を無理やり保持している。
もっとも、混沌を求める在り方を見いだされて、今ではビッグディザスターの大幹部だけどな」
「邪悪の世界でも融合が始まっているってわけか……」
「エックスの世界以外にもまだ英雄の世界があるのか……。
いやそれよりも、七梨。なんとしてでもエクスデスからデスブリンガーを奪って、シャオを助けるぜ」
「ああ。どうやらそれが、俺がこの世界で成すべきことみたいだな……!」
明確な目標を持ち、心に火をつけた太助。
だが。
「そういうことなら、デスブリンガーは俺がもらうとするか」
「剣ィ……。お前はッ!」
「俺が! あの女の子を助ける。そうすればお前はあの子の英雄にはなれない。
今まで散々俺の邪魔をしてくれたお返しだ」
そのシャオの命よりも、太助を困らせることの方にこだわる態度に、翔子はキレた。
「てめえ……ッ、いい加減にしやがれ! シャオの命がかかってるんだぞ!!」
翔子をひらりとかわすと、ディケイドライバーを太助に抛る。
「ただし、勝負はあくまでも正々堂々、だ。
それでも俺が勝つけどな」
そう言い残して、剣は去った。
「七梨、あたし達も行こう」
「いや、山野辺は真弥さんと一緒に、シャオについていてくれ」
「まさか、勝負とかに付き合う気か? こだわってる場合じゃねえだろ!」
太助は翔子の肩を掴むと、その目を真直ぐに見つめて言った。
「シャオを頼む」
翔子も、真っ直ぐに見つめ返してうなづいた。
そして、市街地でヴァジュリーラとエクスデスは対峙していた。
「また貴様らか!」
「我が名はエクスデス。ドクタードップラーに伝えよ。
我等ビッグディザスターと手を組み、英雄共を倒すのだ!」
「貴様らの助力など必要ない!」
「……雑魚共め」
交渉は決裂。
ヴァジュリーラとイレギュラー対ビッグディザスターという構図になる。
太助が駆け付けたのは、丁度その時だった。
「見つけたぞ、エクスデス……!」
「太助君!」
声の方を振り向くと、エックスが駆けてきていた。
「貴方は……」
「君はさっき、報われるかどうかも分からないことの為に、永遠に戦い続けるのかと聞いたね?」
「それがどうかしたんですか?」
「俺は、ゼロを失ってからずっと一人で戦ってきた。だから余計に仲間の大切さを学んだよ。
俺は戦い続ける! 仲間の為に、仲間と一緒に見た懐かしい未来の為に!!」
懐かしい未来。
そのフレーズが意味することも、今の太助ならわかる。
「それも……いいかもしれません」
「……話は真弥君から聞いたよ。君はエクスデスを」
「そうさせてもらいます……!」
決意とともに、太助はカードを構える。
「変身!」
『HERO RIDE DECADE』
エックスとともにヴァジュリーラ対ビッグディザスターの戦いに割って入る。
宣言した通り、太助が狙うのはエクスデスただ一人。
「ディケイドか。返り討ちにしてくれるわ!」
エクスデスに挑みかかるも3対1では不利。
ドラゴントゥースウォーリアとヘリングに足止めをされた好きに真空波を受けて吹き飛ばされる。
「大丈夫か? 太助」
『ATTACK RIDE BLAST』
拡散型ディエンドブラストでエクスデス達を牽制するのは剣だ。
「ほほう。ディエンドまで現れたか」
「デスブリンガー争奪戦、スタートだ!」
『HERO RIDE MAZENDA GEIST』
剣はマゼンダとNガイストを召喚するとそれを、太助に差し向けたッ!
「いってこい」
「……ッ! 邪魔す・る・なぁぁッッ!!」
太助をマゼンダとガイストに任せ、エクスデス達と対峙する剣。
「俺に盗まれることを感謝するんだな」
「愚か者め!」
剣も流石に3対1では不利なのか、太助と同じように真空波を受けて倒れる。
「ッ! 危ねぇ危ねぇ」
『ATTACK RIDE INVISBLE』
真空波をもう一発食らおうとしたところ、ディエンドインビジブルで咄嗟に姿を消す。
その間にも、エックスはヴァジュリーラ率いるイレギュラーを相手にしていたが、ヴァジュリーラが
追い込まれていると見たエクスデスは次の手を打った。
「出でよ、ワイリーナンバーズの同志よ!」
その言葉と共に、次元壁が現れ中からロボット「シャドーマン」が現れる。
「また新たな敵か?!」
「あいつら、自在に世界を超えられるのか?!」
ヴァジュリーラとの戦いに割って入り、エックスと戦うシャドーマン。
「感謝するのだな、ナイトメアポリスとやら。
ビッグディザスターの申し出を受け入れるか否か、もう一度よく考えることだ」
顔をうつむかせるヴァジュリーラ。
エックスの危機を見た太助は、うっとおしい二体を片付けるため切り札を切った。
『SINYA COUD RUMINA HARMEL SIGNAL JUDE NANASI KERORO ALICIA FINAL HERO RIDE
DECADE』
邪魔をする二体の攻撃を受け止め、切り裂き、吹き飛ばす。
『NANASI HERO RIDE ZAIN』
『FINAL ATTACK RIDE NNNNANASI』
ダブルZ2でマゼンダとガイストを消し去る。
これで、エクスデスまでの道が開いた。
にらみ合う太助とエクスデス。
「うぉぉぉぉッ!!」
だが、ドラゴントゥースウォーリアとヘリングによって阻まれ、その隙に
エクスデスは次元壁の中へ消えてしまう。
ヴァジュリーラ、シャドーマンと戦っていたエックスはある決意をした。
「アーマー転送!!」
エックスが光に包まれ、それが晴れた時には、エックスの全身に強化アーマーが装着されていた。
「太助君! ここは俺に任せて君はエクスデスを追うんだ!!」
「えっ?」
「心配するな! この世界を守るのは、俺の役目だ!!」
アーマーを装着したエックスは4対1でありながらも互角以上の戦いぶりを見せる。
「……はい!」
迷うことなく太助は次元壁に突入する。
通過する際激しい衝撃に襲われるが、何とか通り抜ける。
それでもダメージは大きく、コンプリートフォームへの変身は解除されてしまった。
「この世界は……?」
夜なのでよくわからないがエックスの世界とそれほど変わらないように思える。
と、その時、反対側から人が歩いてくるのが見えた。
この世界のことについて聞かせてもらおうと歩み寄ろうとしたその時。
「君はディケイド!?」
そう叫んで、身構える。
そして、
「チェンジ! ロックマン!!」
変身する。
その姿は……。
「エックス!? いや、違う?!」
「世界の破壊者ディケイド! この世界は僕が守る!」
データファイル
エックス
イレギュラーハンター第17精鋭部隊隊長を務めるレプリロイド。
かつて大規模なイレギュラーの反乱を何度も終結へと導いた。
進化としか思えないような成長、強化をすることから、伝説のレプリロイド『ROCKMAN』
なのではないかと一部の者達から思われている。
ヴァジュリーラFF
ドクタードップラーが全世界のレプリロイドの優れた部分を参考にして作り出したレプリロイド。
ナイトメアポリスの名の通り、ドップラーに仇なす者にとってはその戦闘力は悪夢である。
エクスデス
数多存在する『究極の幻想の世界』の一つにおける巨悪。
「無の力」を求めて光の戦士達と激しい戦いを繰り広げた結果敗北。
その後、ビッグディザスターの一員となった。
現在はデスブリンガーで他人の生命力を奪うことで、滅びかかった体を無理やり生かしている。
後書き
丁度十人ということでアポロガイストはガンガンの親会社スクエニの大先輩「エクスデス」に決定しました。
エックスの時系列に関しては、一応エックス3のあたりと思ってください。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
ブラックとRXの共演に小粋なギミックの利いた『BLACK/RX』編。対応作品にどんなものを持ってくるのかと思ったらロックマンとXがきましたか。
うまいこと選んできますねー。ウチも見習わなければ。
大ショッカーに相当する巨悪、ビッグディザスターが登場。
アポロガイストはエクスデスとして……劇場版ルート突入だと他の幹部は誰になるんでしょうかね?
ポジション的には山野辺が死神博士として、キングダーク役ができるようなでっかい悪役……やべ、スクエニ作品にはゴマンといるじゃん(笑)。