「出でよ、ビッグディザスターの同志たちよ!!」
これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「……ビッグディザスターはどうやって世界を超える力を得たんだ?」
「奴らは何者かが作った「世界を繋ぐ橋」を利用しているだけみたいだ」
「シャオちゃん!!」
「勝ち目なんて無くても戦わなくちゃいけない時がある。確かに一人では無理かもしれないな。
 だからこそ助け合い、支え合う相手が必要なんだ」


 新たな世界を歩く太助たち。

「太助君はどこかの学生服を着てるけど……ここは何の世界なんだろうね?」
「見た感じはアリーシャさんの世界に似ていますね」

 今までとは違う、普通の世界。だが。

「普通が一番怖い。俺はそう思うけどな」

 そういう太助の視界に一人の女性が入ってくる。
 その女性はただ一人、どこかの学校の制服をただ一人身に着けていたのだ。

「ほらね」
「いや七梨。それは何か違うだろ」

 女性の方も太助に近づいてきた。
 だが、どこか切羽詰まった様子でである。

「貴方、その制服どこで手に入れたの!?」

 質問というより尋問に近い勢いで聞いてくる。
 どこでもなにも、役割なのだから太助には答えようがない。
 迷っていると、女性は自分の中で答えを見つけたのか、慄いた様子で訪ねてきた。

「まさか、貴方たち……。ビッグディザスターじゃないの……?」
「いや、あたしらはビッグディザスターと戦ってるんだけど……」

 そう翔子が答えた途端、女性のみならず周りの人々も一緒に太助たちを取り囲む。
 そして、太助たちと向かい合うように、魔物、不死者、フィロの混成部隊が歩み寄ってくる。

「まさか、この世界はもうビッグディザスターに支配されてしまってるんですか?!」

 シャオが驚いた様子で言う。
 怪人たちと戦うべく、太助がドライバーを取り出そうとしたその時。
 怪人たちに向かって、火球が撃ち込まれた。
 怪人たちの背後、そこに立っていたのは。

「あんた達、巻き込まれたくなかったらとっとと逃げなさい!」

 手の甲の部分に珠をあしらったグローブを身に着け、紫のマントを羽織り
 炎の如き意志をその目に秘めた、真紅の髪の女性。

「アヴァター……根源の世界か」



ガンガンヴァーサスD
第二十八話「反抗の物語」



 三体の怪人を相手取る女性。
 だが、近づかれて苦しい思いをしているようだ。

「あれが、この世界の英雄なのかな?」
「その一人、リリィ=シアフィールドだね」
「ってことは仲間がいるんですか?」
「そのはずなんだけどなあ? 変身!」
『HERO RIDE DECADE』

 助けられた借りを返すべく、ディケイドに変身してリリィに加勢する。

「あんたも救世主候補だったの?」
「いいえ。ただの人間ですよ」

 訂正すると、怪人軍団の内魔物に仕掛ける太助。
 手堅く弱らせて、必殺技の体制に入る。

『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』

 ディメンションキックで一体は撃破された。
 続けて残りの奴らに向かおうとする太助だったが……。

「やめろ〜!」
「この人たちに手を出すな! 救世主ども!」
「頑張れー!」

 なんと、人々が残りの怪人たちをかばったのだ。
 それどころか、こちらに向かって石まで投げてくる。

「おいおい、どうなってんだよこれ」
「この世界の人達はビッグディザスターを応援するんですか!?」

 理由はともかく一般人を攻撃するつもりはない太助は戸惑う。

「行くわよ!」

 仕方ないのでリリィの後についていき撤退する太助たち。


「それにしても、まだあいつらと戦おうとする人間が残っているとは思わなかったわ。
 さっきのあれは貴方の召喚器?」
「いや、それを説明する前に……。出てこいよ、どうせいるんだろう?」

 そう暗がりに向かって叫ぶ太助。
 すると、剣が現れた。

「結構鋭くなってるな。俺の気配を察するとはさ」
「あんた、何者?」
「心配する必要はないさ。俺も破滅の敵だ」
「起きながら寝言言うな。ただの盗人のくせに」

 いきなり火花を散らす太助と剣。
 それを何とかしようとシャオが口を開いた。

「剣さん。この世界は?」
「この世界『アヴァター』ではダウニー=リード率いる『破滅』がビッグディザスターと手を組み、
 世界を滅ぼそうとしている」
「あいつらはまず人の心を狙った……。その結果人々は、『救世主』こそ人の世を滅ぼす「悪」で
 『破滅』こそがそれを倒す「正義」だって信じ込んでいるのよ……」
「その結果、人々は続々とビッグディザスターに入団し、入団しないやつは追われる身となった。
 と、そういうことだ」

 一通り話を聞いた太助は言う。

「大体わかった。
 で、この世界でお前が狙ってるのは『これ』か?」

 そう言うと太助はリリィの腕を取り、彼女が身に着けている『ライテウス』を示す。
 が、剣は。

「見くびるなよ。俺が狙っているのは史上初の男性救世主候補が振るったという召喚器『トレイター』さ」
「トレイター?」

「心配することはないぜ。トレイターの次は、あんたのライテウスをいただく予定だからな」

 そう言い残して剣は去って行った。


 かつて、フローリア学園と呼ばれた場所があった。
 ここでは様々な技術を伝えアヴァターの未来を担う若者たちを育てる学び舎だった。
 その学園も、今ではビッグディザスターの団員たちを育てる悪夢の学び舎となっていた。

「この世界が救われる日は近い……。人類の未来はビッグディザスターと共にある。
 その為にも徹底して反乱分子を燻りだすのだ!」

 壇上に立ち熱弁を奮うのはエクスデスだ。
 その声にこたえ整列した訓練生たちは盛り上がる。
 そして、それを忌々しげにレザードは見つめていた。

「おのれビッグディザスター……! このままでは全ての世界が奴らに奪われてしまう。
 これも全てディケイドのせいだ! ディケイドの……!」


 一方太助たちはリリィに連れられて彼女のアジトへとやってきていた。

「さあ、遠慮なく入って頂戴」

 だが、そこは……。

「へぇ〜。どこかで見覚えあるような……」
「っていうか、ここ家じゃないですか!」
「うん、七梨家だね」

 七梨家だった。

「それはともかく、太助君のやるべきことはこの世界を救うことですよ!」
「そうね、一緒に戦ってくれるなら心強いわ」

 シャオとリリィの言葉を聞いても、太助は浮かない顔をする。

「さて、どうしたものかな……。この世界じゃ奴らは社会のシステムその物を乗っ取ってるみたいだし」
「ええ、少しでも怪しい素振りをした人間は、すぐに通報されて捕まってしまう……。
 人が人を疑う、地獄のような世界にされてしまった……」
「そういえばリリィさん。あんた七梨のことを救世主候補って呼んでたけどどういうこと?」

 翔子の疑問にリリィは答えた。
 アヴァターは千年周期で「破滅」に襲われ滅亡の危機にさらされる。
 そのたびに「救世主」と呼ばれる存在が異世界から呼び出されて戦うこと。
 戦うための力が「召喚器」であること。

「といっても、あたしもまだ候補でしかなかったんだけどね」
「じゃあ、リリィさんも召喚されたんですか?」
「ううん。あたしはお母様に助けられてアヴァターに連れてこられたの。……今考えると、あたしはどこかで
 救われた命に恥じない生き方をしよう……。そんな風に思ってたのかもしれないわね」
「リリィさん……」

 そんな時、外から何かが騒ぐ声がした。


 なんと、先ほど太助を問い詰めた制服の少女が追われているではないか。

「未亜!?」
「あの人、リリィさんの知り合いなんですか?」
「ええ、同じ救世主候補生だったから……」
「後で聞きます! 変身!」
『HERO RIDE DECADE』

 未亜を追っていたのは戦闘員だったらしく、あっさりと蹴散らされた。

「大丈夫ですか?」
「は、はい……」

 シャオが助け起こすと、リリィも未亜を気遣う。

「久しぶりね、未亜」
「…………リリィさんも」
「取り敢えず、怪我がないか見ましょう」

 そう言って未亜をアジトへ連れて行こうとするリリィ。
 だが、太助は。

「待ってください」
「太助君……?」
「未亜さん。貴方どうして追われていたんですか?」
「そ、それは……、ビッグディザスターに反対したから……」
「でも街中を堂々と歩いてましたよね? 何でビッグディザスターに反対する気になったんですか?」
「え、えっと……その……な、何となく、ビッグディザスターは間違っているような気がして……」

 未亜を疑う太助にリリィが食って掛かる。

「もういいじゃない。私は未亜を信じるわ」

 そう言って未亜の手を取るリリィ。
 だが、太助はどうしても気になった。
 助け起こされる一瞬、未亜がリリィを親の仇のような目で見たような……。


 そして、七梨家にて。
 真弥の傷をリリィが治療している。

「リリィさんって、攻撃魔術だけじゃなく治癒の魔術まで使えるんですね」
「必要にせまられてね。昔は、仲間にまかせっきりにしてたんだけど」
「やっぱりな。お姉さんはどうみても攻撃専門って感じだもんな」

 リリィをからかう翔子。
 だが、ふとシャオは気が付いた。

「太助君と未亜さんは?」
「そういえば……」


 七梨家の玄関先から少し離れたところで、未亜は何事かを話していた。

「はい。リリィ=シアフィールドは七梨家をアジトにしています。場所は……」

 その時、横から伸びてきた手が、未亜が話しかけていた何かを奪い取った。

「こんなことだろうと思ったよ」

 手の正体は太助だった。
 リリィとシャオ達も駆け付けてくる。

「もう遅いよ……。私の魔力でこの場所はすぐに解る」
「未亜……。どうして!? どうしてビッグディザスターに味方するのよ!?」
「……お前なんかに……未亜の気持ちは解らない……」

 先ほどまでとは打って変わってリリィを酷く睨む未亜。

「よく頑張りましたね。未亜さん」
「ッ! ダウニー!!」

 現れたのは、穏やかな微笑みを口元に浮かべた男性。
 ただし、微笑みの前に「造り臭い」とつけられるべきだが。

「こいつが破滅の主幹って訳か」
「お久しぶりですね、リリィさん。
 ですが、ディケイドや異界の英雄と共にすぐにお別れしてもらうことになります」

 そう言うとダウニーは未亜がいるにも関わらず光弾を放ってきたッ!!
 全員が吹き飛ばされる。
 そこに、魔獣を加えた怪人軍団とエクスデスが現れる。

「エクスデス様! まだ私がここにいます!」
「当真未亜よ。貴様は英雄共との戦いの中で名誉の戦死を遂げるのだ。ファファファ……」

 未亜の懇願をあっさり切って捨てるエクスデス。

「そんな……」
「解った? これがビッグディザスターのやり方なのよ」

 そう言って立ち上がるリリィ、太助、真弥。

「変身!」
『HERO RIDE DECADE』
「雷帝、起動!」
「行くわよ、ライテウスッ!!」

 真弥が魔獣を、リリィがフィロと不死者を、そして太助がエクスデスを迎え撃つ。

「ディケイド! 私のデスブリンガーを返してもらおうか」
「これのことか? お前は人の生命力を奪って、無理矢理体を維持しているんだったな」
「その通り。それが無ければ私は滅ぶことになる」

 そういうと太助はデスブリンガーをエクスデスに向かって放り投げ……。

「それじゃあ、こうしておくか」

 エクスデスが手を差し伸べたところで、ブッカーガンでデスブリンガーを破壊するッ!

「……サマァァァァァッ!! よくも!!」
『HERO RIDE HARMEL』

 デスブリンガーを破壊されて怒り狂ったエクスデスにハーメルに変身して戦う。

「ヴォルテカノンッ!!」

 リリィも負けてはいない。
 まずは極大の雷撃で不死者を。

「ファルブレイズンッ!!」

 続けて劫火球で魔獣を倒す。

「ふぅ……」

 さすがに大魔法の連発は答えたのか、リリィが一息つく。
 そこに背後からダウニーが切りかかってきた!

「ダウニー! それは……召喚器!?」
「その通り。ディスパイアーと言います。主を失い放置されていたのですが
 ビッグディザスターの力で、こうして私が使っているのですよ。
 丁度いい。貴方を教授した身として、最後にその暴言癖を矯正してあげましょう!」

 そう言ってリリィに切りかかろうとするダウニー。
 だが、そこに真弥が割って入る。

「僕が相手だ!」
「貴方は引っ込んでいなさい!!」

 ダウニーの魔術で真弥は半身を凍らされる。

「真弥さん!」

 太助もエクスデスの攻撃でなかなか思うように動けない。

「真空波!!」

 エクスデスの真空波をギリギリの所でかわす。
 だが、その後ろにいたリリィは余波で吹き飛ばされてしまう。
 その時マントが脱げて、リリィの背中が露わになる。

「あれは……!」

 なんと、リリィは背中に剣を背負っていたのだ。
 それを見た未亜は、彼女から剣を奪おうとする。

「未亜……何を……」

 打ち付けられたダメージがまだ残っているのか阻止しようとするリリィの動きは鈍い。

「うるさいッ! 何でお兄ちゃんの召喚器をあんたが持ってるのッ!?
 未亜からお兄ちゃんを奪ったくせにッ! お兄ちゃんを死なせたくせにィッ!!」

「ッ!」
「何だってッ!?」

 未亜の言葉に驚く太助。
 その間に、とうとうリリィは剣を奪われてしまう。

「未亜……」

 太助と真弥も追い詰められる。
 果たして、勝負の行方は……。



データファイル

リリィ=シアフィールド
「反抗の物語」のキーパーソン。
召喚器『ライテウス』に選ばれた救世主候補として戦う魔導士。
ビッグディザスターと手を組んだ破滅との戦いの中で仲間と離ればなれになりながらも一人で戦い続けている。
何故か、剣の形をした召喚器を持っていたが……?

当真未亜
召喚器『ジャスティ』に選ばれた救世主候補の一人。
何故か、ビッグディザスターに支配された世界で普通に暮らしていた。
リリィのことを憎んでいるようだが……?

ダウニー=リード
破滅の主幹。
他者の肉体を吸収し己の力にする「ダークナイト」
元はスパイとしてフローリア学園にて教師を務めていた。
ビッグディザスターの助力で、召喚器「ディスパイアー」を使えるようになった。


後書き
ライダー6号であるアマゾンの世界なので「FF6の世界」でも良かったのですが、あえてそれはやめて
私がプレイした数少ないアドベンチャーゲーム「デュエルセイヴァーデスティニー」にしました。
ちなみにアマゾン役がリリィなのは「私がリリィに惚れたから」です。
大河、ごめん。


管理人感想

 ダークレザードさんからいただきました!

 「なぜ『アマゾン』編で『デュエルセイヴァー』?」と思ってましたが本編を見て納得。
 なるほど。「大ショッカースクール」なんてものが登場した『アマゾン』編。『デュエルセイヴァー』にするかどうかはともかく、学園が舞台の作品にした方がしっくりくるワケですか。そりゃ『FF』シリーズでは苦しいですわ(失礼)。

 大河が退場……まぁ、リリィが主役な以上冷遇は避けられないんですけどね。
 そして未亜との確執はこちらでも健在ですか。原作でもルートによってはドロドロにモメますからねぇ、この二人(苦笑)。