これまでのガンガンヴァーサスDは!!
「……英雄大戦の世界か……」
「解っているのは、一つの世界に二つの物語は紡げないこと。
どちらかが滅びるしかないんです」
「一番肝心な問題は何も解決していなかった……」
「本当に倒さなきゃいけないのは、ビッグディザスターじゃない」
「世界を一つにするのだ!!」
シグナルの消滅。
それは太助達だけではなく、ジュード達の世界が融合し始めたことを
太助たちに知らせに来たシャオも目撃していた。
「そんな……?」
そしてシグナルの消滅を見ても怯むことなく太助、剣、真弥、アリーシャはEXエクスデスに挑む。
だが、EXエクスデスは魔法陣で攻撃を防ぎ、即座に『アルマゲスト』で四人を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた四人のうち三人は、変身が解除されてしまう。
「太助君!」
太助の危機に思わず飛び出すシャオ。
だが「磁場転換」でワープしたEXエクスデスに捕らえられてしまう。
「シャオ!!」
「ディケイドよ……。貴様は自分の生命力を分け与えてこの女を救ったそうだな。
ならば、貴様が救った命、改めて私が奪ってやろう!!」
そう宣言して、EXエクスデスは次元壁の中へ姿を消した。
「待て! エクスデス!!」
「どうにかして、シャオちゃんを助けないと……」
「わかってる! だけど、どうしてシグナルたちは消えてしまったんだ?」
「それは、エクスデスが世界を融合させたからでは?」
「違うよ」
アリーシャの意見に異を唱えた声。
太助達は知らないがそれはシャオとジュードに世界の危機を伝えた声と同じだった。
そして、声の主である青年が、機械仕掛けの鳥を肩に載せて現れた。
「エクスデスがしていたのは、世界の融合を『加速』させること。
シグナルが消えたのは太助。君のせいだ」
「なんだと……?」
「それだけじゃない。世界が融合を始めたのも、ディケイドが誕生したからなんだ。
本当にこの世界を救うためには、ディケイドを排除するしかない。この世界からいなくなれ、ディケイド」
「……随分と勝手なことを言ってくれるじゃないか。あんた誰だ?」
そして、青年が名乗った名前に、太助は驚愕した。
「僕はシグナル……A-Sシグナル」
「シグナル!?」
言われてみれば、ジャケットや髪の色こそ違えど青年の姿はシグナルその物だ。
そして、次の瞬間「シグナル」は鳥と融合し、シグナルコードへと変身した。
「どうする? 出ていく? それとも、追い出される?」
「月並みで悪いけど、どちらもお断りだ! 変身!」
『HERO RIDE DECADE』
ガンガンヴァーサスD
第三十一話「葬世者」
シグナルコードと戦う太助。
だが、彼の強さは太助の知る「シグナル」を遥かに上回っている。
徐々に追い詰められていく太助を援護しようと駆け出す真弥とアリーシャだったが、それを
ジュードが止めた。
「行っちゃ駄目だッ!!」
「ジュードッ!?」
「ディケイドに手を貸したら、シグナル達みたいに消えちゃうんだよ! それでもいいのッ!?」
消滅。
その言葉を聞いて、真弥もアリーシャもうなだれてしまう。
そして、シグナルコードのパンチを食らって太助は吹っ飛ばされてしまう。
変身が解けて倒れたままうめく太助。
真弥は……駆け寄ることができなかった……。
「太助君……」
どこかの洞窟にて。
EXエクスデスは魔法陣の上で儀式を行っていた。
「憎きディケイドに敗北した闇の戦士達よ。今一度無の中より甦るがいい!!」
魔法陣から光が放たれ、その中からディケイドが倒してきた邪悪なる者達が這い出てくる。
冥界の咎人、ダークドラゴン、OZ、クオリフィ、ジーク、ベース。
次々とこの世界へ戻ってくる邪悪なる者達を見ながらEXエクスデスは笑う。
「ファファファファファ……!!」
七梨家。
留守番をしていた翔子は、アルバムを整理していた。
最初は暇つぶしで始めたのだが、写真を見ているうちに何だか嬉しくなり夢中になってしまったのだ。
玄関で扉が開く音がした。
「よぉ、お帰り」
だが返事はなく、かわりに太助が傷だらけで倒れ込んでくる。
「七梨!? おい、大丈夫か?! おい! 七梨!!」
簡単ながらも太助は翔子の手当てを受けた。
「まったく、まさか山野辺に手当てされることになるとはな」
「そんだけの口が利けるならもう大丈夫だな……。ッ!? 写真がッ!?」
翔子は目を疑った。
アルバムに収められていた写真から、シグナルの姿が消えてしまったのだ。
「シグナルが!? アトランダムの世界が消えたから……なのか?」
シグナルだけではない。
他の英雄達の写真も、次々とぼやけていく。
「他の英雄たちの世界も、全て消えかかっているのか?
世界が融合してしまえば、俺達の巡ってきた世界は全て消える……。
だとしたら、俺達のやってきたことは全て、無意味だったのか……」
「無駄なものなんてねぇよ!」
落ち込む太助に、翔子は一枚の写真を見せる。
そこには、笑顔のシャオが写っていた。
「見ろよ……。こいつは、お前が護った笑顔だろ?
なのに、お前が無意味だなんて言ってどうすんだよ!」
太助はシャオの写真をじっと見つめる。
「お前はシャオの英雄だろ? 頼む、シャオを助けてくれよ……」
「……頼む、か。お前が俺にそんなこと言うなんてな……」
そう言って、太助は立ち上がる。
「当たり前だろ? シャオは必ず俺が助ける。約束だ」
「約束か……。ありがとな」
そこに、璃瑠がやってきた。
「盛り上がってるところ悪いんだけど、太助、あんたに客よ」
「客……?」
璃瑠は夜の街角に太助を連れてきた。
「ここよ」
そう言って、璃瑠が連れてきた場所にいたのは……。
「太助さん!」
「タスケ……。お願いだから、この世界から出て行ってよ!」
アリーシャとジュードだった。
「ディケイドがいれば、私たちの世界は消えてしまうんです」
「犠牲は僕達だけじゃない、僕達の仲間も消えてしまうんだッ!!」
「……だから、俺に消えろっていうのか?」
二人に背を向けたそこには、「シグナル」が立っていた。
「もう一刻の猶予もないんだ。君を野放しにしていたから、世界の融合はさらに進んでしまった。
これが最後のチャンスだ、この世界から、出て行け」
「俺は消えないさ。俺は世界そのものなんだから」
「強がらないでいいよ。君の気持ちは解ってる。あのシャオって子を救いたいんだろ?
でもね、君がシャオを助けたとしても、仲間たちの世界を犠牲にした結果だと知ったら、シャオはどう思うかな?」
「さあ? どう思うか教えてくれないか?」
「口で言っているうちに、頷いておけば良かったのに……」
アリーシャは剣を、ジュードはシェイプシフターを構えて太助に襲い掛かる。
だが太助は変身せずに、生身のままじっと耐える。
「…………」
真弥は、物陰で様子を窺いながら、血が滲むほど拳を握りしめて、飛び出すのを堪えていた。
その間にも、太助は二人掛かりで打ちのめされ続ける。
どれだけ痛めつけられても抵抗しない太助に耐えかねて、アリーシャが叫んだ。
「太助さん、なんで変身しないんですか!?」
それを聞いて、ついに真弥は飛び出した。
「真弥さん!? 邪魔をしないで下さい!!」
「太助君、行くんだ!」
「真弥さん……!?」
二人の武器を握りしめ、手から血を流しながらも真弥は手を離さない。
「真弥さん、離して!」
「離してよッ!」
「早く!」
太助は走り去る。
真弥は武器から手を離し、変身も解く。
「まだディケイドの味方をするのか!」
「シャオちゃんは、僕にとって大切な仲間なんだ! だからせめて、シャオちゃんを助けるまでは……!」
「その後はどうなる? 君のいた「救世主の世界」が消えてもいいのか? 春儚と出会ったことまで
消えてしまってもいいのか?」
「それは! それは……」
言い返せない真弥。
「太助は世界を見捨てた。こうなったら僕達が消し去るしかない」
ビッグディザスター要塞へと続く荒野を太助はたった一人で歩いていた。
目の前に待つ剣の横を通り過ぎてしばらくした時、剣が声をかける。
「あの子の所に行くんなら、道が違うぜ」
そう言って剣は、書状を取り出す。
「エクスデスからだ。お前と1対1の決闘を望んでる」
書状を受け取る太助。
「もちろん嘘だ。奴は自分が甦らせた怪人達と一緒に、お前を殺すつもりだ」
「だったら丁度良い。エクスデスと一緒に何度でも葬ってやる」
そのまま立ち去ろうとする太助。
剣は、それを聞いて、何かを堪えるような、苦しむような姿勢で俯き……。
「……………ッ、ふざけんな!!」
やっとのことでそう吐き出すと書状をディエンドライバーで撃ち抜いた。
「舐めてんじゃねえぞ……。てめぇ、自分が死んでも悲しむ奴なんていないって思ってるんじゃないだろうな!」
剣の声が震えている。
「誰も悲しまないさ、俺が死ななきゃいいだけだ。……もしも俺が死んだら、シャオを……。
俺の家族を頼む。……ああ見えて、結構泣き虫だからさ」
そう言って、太助は書状に記してあった場所に歩いて行った。
陽炎の揺らめく荒野。
エクスデスの傍でシャオが磔にされている。
誰が着替えさせたのか、その服装は中華風だ。
そして、そこに太助が現れた。
「太助君! 来ちゃ駄目です!!」
「約束通り一人で来た! さぁ、シャオを返してもらうぞ!!」
「良かろう……。だが、返すのは亡骸だがな!」
そう言って、エクスデスはソードメイスをシャオに突き立てようとする。
だが、シャオに突き刺さる寸前、太助が放ったカードがソードメイスを弾き、
シャオの戒めも切り裂く。
自由になったシャオは太助のもとに駆け寄る。
「太助君!」
甦った邪悪なる者達が、エクスデスのもとに現れる。
「剣の言ってた通りだな。一騎打ちが聞いて呆れるぜ」
「ファファファ……。英雄共さえも敵に回した貴様とは、大違いだろう?」
「例え世界中を敵に回しても、たった一人を守る為に戦う。それが仲間って言うんだ」
それは、太助が最初に出会った英雄が体現していたこと。
「その女を助けたところで、結局はその女を、いやその女の世界を葬る定めだ」
「俺達は仲間で、家族だ! だから守る! それだけだ!」
太助の横に、剣が現れる。
「縁が無いと思ってたけど、手に入れちまったんなら仕方がない。
『親友』ってお宝、一つ守ってみるか」
そして、真弥も。
「僕は春儚がいない世界なんていらなかった……。でも、皆と出会って、ほんの少しだけ、
世界を好きになれた……。だから僕は春儚の分まで人を助けられる!」
「誰かの手を繋ぎ、自分も誰かと手を繋いでいく……。私たちはそのことを旅で学んだんです!」
「黙れ! 貴様らの旅など、意味のない愚かな行為でしかないのだ!」
エクスデスの言葉を切り捨てるように太助は言う。
「俺達はこれからも旅を続ける。世界の壁を越えて、仲間を作る。
その旅はやがて、未来を変える!」
「何なのだ、貴様は!?」
「通りすがりの超戦士だ、覚えておけ!」
『HERO RIDE DECADE』
『HERO RIDE DI-END!』
「「変身!!」」
太助、剣、真弥が戦闘態勢を取る。
そこに、アリーシャとジュードも駆け付ける。
「アリーシャさん! ジュード君!」
「太助さんの言葉は、私たちの胸にも響きました!」
「僕達も賭けてみるよッ! 未来を変える旅にッ!!」
アリーシャとジュードも武器を構える。
「ジュード、アリーシャさん! 行くぞ!」
「はい!」
『FINAL HERO RIDE DECADE』
一気にコンプリートフォームに変身。
そこからはもはや一方的だった。
剣がOZを、真弥が冥界の咎人を、アリーシャがクオリフィを、ジュードがジークを撃破する。
『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』
そして太助はディメンションキックでダークドラゴンとベースをまとめて撃破する。
残るはEXエクスデスただ一人。
「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め 始源の炎甦らん フレア!!」
「ッ! 太助君ッ!!」
エクスデスの魔法から太助を庇う真弥。
真弥はそのまま倒れてしまい、ピクリとも動かない……。
「真弥さん……」
呆然とする太助。
止めを刺そうとエクスデスは太助に迫る。
「太助君ッ!」
太助を守ろうとシャオが飛び出す。
咄嗟に太助はシャオを庇って地面を転がる。
服は泥まみれになってしまったが、シャオは無事だった。
「シャオ、大丈夫!?」
アリーシャとジュードがともにEXエクスデスに挑む。
「太助、これをつかえ!」
一枚のカードを差し出す剣。
それはディエンドのファイナルアタックライドカードだった。
それを受け取り、ディケイドライバーに差し込む。
『FINAL ATTACK RIDE DIDIDIDIEND』
「剣、これが俺とお前の力だ!」
構えたライドブッカ―の前に、ディエンドライバーと同じくカードが展開される。
EXエクスデスはそれに気づくと、アリーシャとジュードを跳ね除けると、無の力を放つ。
ダブルディメンションシュートと無の力がぶつかり合う。
撃ち合いの末、ディメンションシュートが無の力を押し返し、炸裂する。
「グァァァッ!? ……いつか必ず……貴様らを無の中へと……。ウゴゴゴゴ……」
壮絶な大爆発と共に、ついにエクスデスは滅んだ。
「ついにエクスデスを倒したんですね」
「やったな」
喜ぶシャオ。
だが、ふと気づいた。
泥だらけの服を着た自分、切り立った崖に囲まれた荒野。
この場所を、自分は知っている。
「この場所……夢と同じ? まさか!?」
その瞬間、アリーシャとジュードの体が光の粒子となって消滅する。
「アリーシャさん? ジュード!?」
『ディケイドの存在が、戦乙女と荒野の物語を消してしまったんだ』
次の瞬間、太助は夜のビル街に立ち尽くしていた。
そこには始まりの日に現れた、メッセンジャー=アルフォンスもいる。
「君は、あの時の……」
「僕の言葉を覚えているかい?」
『君は、葬世を行うものだから。葬世は創世に必要なことだからね』
「君は全ての英雄を葬らなければならなかった。なのに仲間にしてしまった。
それは大きな過ちだ」
「どういうことなんだ?」
「今から僕の仲間が、君の旅を終わらせる」
そう言って、胸の前で両の手を合わせるアルフォンス。
身構える太助。
だが次の瞬間、周囲はあの荒野に戻っていた。
「!?」
そして、彼の目の前に立ちはだかる七人の英雄。
ハーメル。
浅黄留美奈。
ケロロ軍曹。
ジュード=マーヴェリック。
ナナシ。
クード=ヴァン=ジルエット。
アリーシャ。
太助の知る彼らとは違う。
だが同じだと、太助には感じられた。
そして、「シグナル」も姿を現す。
「ディケイド、君を倒す」
「結局、こうなるのか……。変身!」
『HERO RIDE DECADE』
ディケイドに変身し、八英雄と対峙する太助。
「真弥さん! しっかりしてください! 起きてください!」
このままでは夢と同じになる。
それだけは避けなければならない。
必死に真弥を起こそうとするシャオ。
「心配しないで。私が真弥を助けるわ」
「璃瑠さん」
そう言うと、璃瑠は真弥の傍に座り込み、一冊の本を置く。
「…………ごめんね」
その本は、たちまちのうちに光り輝くと真弥の体の中に消えた。
起き上がった真弥の背中には、翼が生えていた。
運命を操る者「支配者」の証である黒翼が。
「真弥さん!?」
そのまま真弥は太助に襲い掛かる。
「真弥さん……?」
九英雄に取り囲まれた太助。
崖の上から、レザードがその様子を見下ろしている。
「ディケイドが全ての世界を滅ぼす! 全ての英雄を、そして七梨太助を滅ぼすのだ!!」
定められた道を歩むまいと抗ってきた。
だが世界は、それを許さなかった。
……だからどうした?
俺はただ、俺自身の願いの為に戦ってきた。
俺は迷わない。
目の前に敵がいるのなら、例えそれが正義だろうが、世界だろうが。
葬り去り、成すと決めたことを成す。
だから。
「来るなら来い!! 全てを葬ってやる!!」
英雄大戦 開戦―――
拳が、蹴りが、剣がぶつかり合う。
光弾が飛び交い、火柱が立ち昇り、爆炎が舞い上がる。
もうシャオにできることは何もない。
英雄ならざる者である彼女には、ただこの戦いを見ていることしかできない。
――もし、自分に彼と同じだけの力があれば。
――たった一人だけでも、彼を信じ抜くものがいたら、物語は変わっていたのだろうか?
太助の隣に、剣が走り寄り、ディエンドライバーの銃口を突き付ける。
「太助」
「剣……?」
その時、太助の心の中にどんな感情があったのか……。
剣の選択が、苦難の末のものだったのか……。
解らぬまま……。
銃声が、鳴った。
「ディケイドーーーッ!!」
データファイル
「シグナル」
英雄大戦の世界に現れ、アリーシャやジュードに、世界の融合を引き起こした原因は
ディケイドの誕生と存在にあると吹き込み、ディケイドの追放と抹殺をはかった。
外見や、パートナーの存在から『原典』のシグナルに極めて近似した存在だと思われる。
七英雄
アルフォンスの仲間であるらしい、太助が出会ってきた英雄達と同じ姿をした英雄達。
彼らも「シグナル」と同じく『原典』と極めて近似した存在だと思われる。
過ちを犯したディケイドの旅を終わらせるためにディケイドに襲い掛かった。
後書き
TV編完結しました。
もちろん、これで終わりには致しません。
少なくともあと一つの世界まで続けます。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
祝?TV編完結! まだ続くとはいえこれで一区切り。お疲れ様でした。
そしていよいよ劇場版編。展開されるのはオール英雄対ビッグディザスターか英雄大戦2010か。
どっちに転んでもおもしろそう。とりあえず死神博士役になりそうな山野辺、がんばれ(爆)。