弓樹真弥。
幼いころ、飛行機事故で両親と妹を亡くす。
直前に電話で、「早く帰ってきて」と我儘を言っていたために「皆を死なせたのは自分だ」と責め続けて育つ。
自分を嫌い、親友を羨む、最低の人間。
それが、弓樹真弥にとっての弓樹真弥だった。
しかし、それ以前の。
両親と妹を亡くす前の彼を知る人物は、彼を、こう評する。
「弓樹真弥は、誰よりも、強い」と。
ガンガンヴァーサスD
完結編「それが君たちの物語」
信じられない光景が、繰り広げられていた。
ただ一人で、何人もの英雄を葬ってきたディケイドが。
世界を葬る者が。
たった一人の英雄に、手も足も出ずにやられている。
「うぉぉぉぉッ!!」
真弥の振るう拳が、蹴りが太助を打ちのめしていく。
とうとう、手すりに寄りかかって動けなくなる。
「はぁ……はぁ……」
一方的に叩きのめされながらもこの状態に納得していた。
「(そうだよ……これが真弥さんだ……。
俺なんかよりもずっとずっと強い、ただの人間だ……)」
動かない太助を見て、真弥は殴りかかってくる。
「(だからこそ、俺は勝つ!!)」
咄嗟に太助は身を翻し、真弥を階下へと突き落す。
自分も後を追い、倒れた真弥の腹を踏みつけ、さらに立たせて蹴りつける。
倒れた真弥に向けて、太助は告げる。
「さあ、支配者。
つけようじゃないか、決着を! どちらが『上』なのか!」
真弥も起き上がり、告げる。
「そうだね……。
つけよう! 今までの旅の分、しっかりと!」
そして互いに、右の腕に力を蓄えていく。
彼ら自身は知るまいが、かつてシャオが夢見た構図と全く同じように。
地を蹴ったのは、同時だった。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
そして、全てが閃光に包まれた……。
その光景を、シャオは目撃した。
「太助君……真弥さん……」
閃光が収まり、廃墟となった工場から、一つの影が這い出てくる。
勝者となったその影は、右手に、己が倒した英雄のカードを握りしめていた。
勝者は、太助だった。
「太助君! そのカードは……!」
シャオは全てを悟った。
彼は真弥すらも倒したのだ。
一緒に旅を続けてきた仲間さえも。
「酷いです太助君!! あんまりです!」
「だったらなんだ」
「……私が、太助君を止めてみせます」
そう言って、シャオは一振りの剣を取り出した。
唾の部分に羽を広げた鳳凰の意匠が施された西洋剣を。
その剣を顔の前に掲げ、叫ぶ。
「変身!」
一瞬、全身を光がつつむと、シャオは蒼の甲冑を身に着けていた。
兜にも、鎧にも剣と同じ鳳凰の意匠が刻まれている。
その武具には一人の偉大な勇者の名がつけられている。
その名は……ロト。
「やってみろ!」
ブッカーソードを逆手に持ち、両腕を広げて太助は言う。
シャオはロトの剣を構えると太助に切りかかる。
一撃、二撃、三撃、そして四撃目を放とうとした瞬間、太助の拳がシャオの腹にめり込む。
「覚悟しろ……!」
ブッカーソードを構える太助。
「わああぁぁぁッ!!」
死を覚悟して、ロトの剣を渾身の力で突き出す。
だが。
太助はソードを捨て、剣を受け入れた。
「え……」
剣を取り落すシャオ。
彼女の目の前で、太助は完全に壊れたディケイドライバーを外すと、そのまま倒れた。
「どうして……かわしてくれなかったんですか……」
「……俺が消してしまった英雄たちの事……君が憶えておいてくれ……」
「え……?」
震える手で太助は、英雄たちのカードを取り出す。
「俺は戦うことでしか……英雄たちと向き合えなかった……ぐふっ!
……俺を倒すのが君で……良かった、シャオ……」
剣もどこからか駆け付ける。
「太助! 死ぬな太助!」
そして、二人が見ている前で、七梨太助は、目を閉じた。
その時、太助の体から謎の逆三角錐が浮かび上がってきた。
それが開いたと思ったら、二人は夜のビル街にいた。
何が起こったのかとあたりを見回す二人に語りかける者がいた。
「全ての物語は、時と共に忘却という消滅を迎える運命だった」
それは、ディケイドを旅へと誘い、旅を否定したメッセンジャー。
アルフォンス=エルリック。
「だけど、ディケイドと戦うことで再び人々の記憶に残り、物語を紡ぐことができた」
「物語……?」
宙を指差すアルフォンス。
そこには次元壁を通して映し出されていた。
運命の少女と出会った屋上で、一人たたずむ救世主の姿が。
「真弥さん……!?」
荒野で二人の仲間と再会を果たす、少年が。
「ジュード……!」
どこかの城の前で、かつて自身の半身だった女性と再会する少女も。
「アリーシャさんも!」
「創世は葬世を経なくては行えない。そして、葬世を経て創世された物語は永遠になったんだ」
それを聞いてシャオの疑問が解けた。
ディケイドの旅の真の意味。
それは、英雄たちの物語を記憶し自らが終わらせることで物語が人々に忘れ去られることを防ぐことだったのだ。
だが、それならば。
「でも……ディケイドの物語は?」
物語を繋げてきたディケイドはどうなるのだ?
その問いに対するアルフォンスの答えは……。
「ディケイドに、物語はありません」
簡潔で、残酷だった。
「そんな……、そんなのって!」
シャオが食って掛かろうとした瞬間。
二人はまたしても光に包まれ、気が付いた時は元の場所にいた。
ただ一つ違うのは、太助の亡骸が残っていないことだった。
それは当然だろう。
ここはもう、ディケイドのいない新しい世界なのだから。
元の河原に置いてあったアルバム。
そこに収められていた英雄たちの写真も元に戻っていた。
「かくして、世界は救われた。
その最大の功労者は全てから拒絶されたまま、世界を去ったのだった……か。
綺麗な終わりじゃないか。……残酷すぎるくらいに」
剣の言葉にも、どこか棘が混じっている。
アルバムを見ながらシャオは呟いた。
「太助君は、いつも他の人の写真ばかり撮ってたから、自分の写真は一枚も無いんです……」
アルフォンスの言葉を信じるなら、物語を創世するにはその物語を他者が『記憶』した後で
葬世、つまり破壊されなければならない。
ディケイド自身も葬られた今、たった一つでも写真があれば、物語の主人公である太助も甦ることができるはずだが……。
そこまで考えたとき、シャオは思い出した。
太助と再会した時、自分は何をした?
去りゆく彼を繋ぎとめようと、彼のカメラで、写真を……!
「ありました! 太助君の写真!」
「本当か!?」
「はい、あそこに……!?」
次の瞬間、二人の周囲を多数の怪人、戦闘員が取り囲む。
「ったく、しつこいぜビッグディザスター!!」
「違うな、もう我らはビッグディザスターではない!」
建物の上からフォルテとハーゴンが二人を見下ろしている。
「我等はハイパーディザスターとして生まれ変わったのだ!!
小燐よ、貴様の友も待っているぞ、我らと行こうではないか!!」
「レザードさん……!?」
レザードが言い終わるなり、襲い掛かってきた戦闘員を、剣がディエンドライバーで牽制する。
「ここは俺に任せろ。あんたは先に行け! ……太助の写真、俺も見てみたい」
「はい……!」
剣が開いた道をシャオは駆け抜ける。
だが、怪人たちは次々とシャオの後を追いかける。
そこに、真弥も駆け付ける。
「真弥さん!」
「シャオちゃん、太助君の写真を!」
真弥の援護を受けて、シャオはカメラのもとにたどり着いた。
「あった……!」
だが、そこに……。
「考えてみりゃあ、こいつが行く場所は解ってんだ。
だったら、待ち伏せしてりゃあ話は簡単じゃねえか!!」
シャオ自身を倒すべくフォルテが現れた!
フォルテのバスターがシャオに向かって放たれる!!
だが、直前でダークドリームがバスターを払いのけたッ!!
「なんだてめぇは!!」
それが気に食わなかったのか、ダークドリームの力に感心したのか、フォルテはダークドリームと戦い始めた。
距離を開けたところにバスターを連射するフォルテ。
爆炎に包まれるダークドリーム。
フォルテがニヤリと笑ったその瞬間、ダークドリームは懐に入り込み、腹部に手を添えた。
「な……ッ」
次の瞬間、ダークドリームのフルパワーエネルギー波がフォルテを包み込んだ。
だが、フォルテは大ダメージを受けながらも生きていた。
「ちきしょう……! 覚えてやがれ……!」
フォルテは去ったが、ダークドリームもダメージが大きかったのか膝をつく。
駆け寄るシャオだが、ダークドリームはそれを拒絶するように後退する。
「太助のおかげで、やっと解ったかもしれない……。
大好きな人が大切だとか、どうやって笑えばいいのか……。
私は消えるけど、きっと太助は私の事忘れないよね……」
そう言って光に包まれながら消えていくダークドリームの顔は、まぎれもなく『笑顔』だった。
シャオは、しばらくその場に佇んでいた……。
七梨家の暗室。
シャオはフィルムを現像していた。
「シャオちゃん! フィルムは!?」
そこに真弥が駆け込んでくる。
「感光してました……。でももう一回やってみます」
二回目の写真は、一度目よりもましではあったものの太助はほとんど写っていなかった。
「誰かが太助君のことを想ってくれれば……たった一人でも忘れずにいてくれれば……
太助君は戻ってこられるのに……」
写真を見つめながら、シャオは言う。
「僕は絶対忘れないよ……太助君の事を」
「忘れようとしたって、忘れられねえさ。あんなお人好しの顔は」
「太助君は、ここにいます。ここに……」
シャオは、真弥は、剣は、写真を掴み太助を想った……。
太助と共に未来の為に戦った王、アリーシャも。
大人たちから『魂』を受け継いだ少年、ジュードも。
太助と共に『生きる』ために戦ったロボット、シグナルも。
かつて太助と『チーム』だった少年、留美奈も。
太助の事を『心』に刻んだ戦士、ナナシも。
太助の力を借りて再び『繋がり』を持てた少年、クードも。
『七梨太助』と繋がっている全員が、彼を想った。
そして、光と共に写真は完成した。
覗き込む三人。
その時写真から小さな次元壁が現れた。
その次元壁には記憶が映し出されていた。
弓樹真弥の中の『彼』の記憶が去って行ったとき、足が見えた。
アリーシャの、留美奈の、シグナルの、ハーメルの、クードの、ケロロの、ナナシの、ジュードの。
そして、ダークドリームの。
英雄たちの想いが、七梨太助の新しい物語を望み、彼の存在を望んでくれたのだ。
「「太助君!」」
「太助!」
三人は太助に駆け寄る。
「シャオ……真弥さん……剣……」
三人に微笑みかける太助。
真弥は笑顔で。
剣は、半分だけ顔をこちらに向けながら言う。
「受け取りな」
そう言って太助のヒーローカードを差し出す。
そして、シャオも。
「太助君……これ……」
そう言って差し出したのは、マゼンダカラーの二眼レフのトイカメラだった。
「これからも、世界を映してください……」
太助はトイカメラを受け取ると、笑顔で言った。
「ああ。『俺の』世界をな」
一方、傷ついたフォルテは儀式の間へと戻ってきていた。
「俺は……俺は最強だ……。
おい、てめえ! 神だっていうなら、俺に力をよこせーーーー!!」
その絶叫に答えるかのように『神』は身じろぎした。
『その……執念……良かろう』
フォルテは笑った。だがその直後笑みは凍りついた。
『我が混沌の一部にふさわしい……』
異変を察知して、儀式の間に駆け付けたアルティミシアが見たもの。
それは『神』に取り込まれていくフォルテの姿だった。
そして、フォルテを完全に喰らった『神』は玉座から立ち上がった。
「ついに……、ついに我らが『神』が……」
アルティミシアの顔には、歓喜と畏怖が浮かんでいた。
『神』の復活は、外にいたハーゴン達にも伝わっていた。
「おお……、ついに我らが『神』が復活したぞーーッ!!」
歓喜に沸く怪人達。
だが、そこに現れる者達がいた。
この世界に残った英雄達だ。
「レザード……。『災厄(ディザスター)』になってまでディケイドを倒したいか」
「ディケイドに物語など不要! 貴様らの旅は、ここで終わりだ!」
「終わる旅なんて無いぜ?」
「ああ。俺はこれからも世界を繋ぎ、物語を繋ぐ。それこそが俺の旅。
『ディケイドの物語』は、ここから始まる」
物語の始まりを告げる太助。
それに、レザードが吠える。
「ディケイドォ!! お前は……、お前は何だというのだぁ!!」
「通りすがりの超戦士だ! 覚えておけ!! 変身!!」
『HERO RIDE』
『HERO RIDE DI-END!』
「変身!!」
「「変身!!」」
剣がディエンドに。真弥が救世主に。シャオがロトの勇者に。
『DECADE』
そして、太助がディケイドに変身する。
ハーゴンの指示のもと、一斉に襲い掛かる怪人達。
剣は華麗な動きで包囲を潜り抜け、ディエンドブラストを放つ。
真弥は変わらぬ強さで次々と敵を蹴散らしていく。
シャオも、数々の剣技を駆使して敵を切り捨てる。
そして太助も圧倒的な強さで敵を蹴散らす。
そして、各々がとどめの一撃を繰り出す!
『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』
『FINAL ATTACK RIDE DIDIDIDIEND』
「クロスクルセイドリバースデリンジャーッ!!」
「ギガ……スラァァァッシュ!!」
「つぁぁぁぁッ!!」
各々の必殺技で怪人軍団は一掃された。
集合し、健闘をたたえる四人。
だが次の瞬間、何かが飛来して爆発が起こった。
四人だけではなく、ハーゴンも吹き飛ばされる。
「うぁぁぁッ!!」
飛来したなにか。
それは、四本の腕を持ち、背には翼。顔はまさしく悪魔の異形だった。
「あれは……」
「混沌を司る神、カオス。
ということは、究極の混沌が甦ったのか!」
ハーゴンの装束が脱げて、元に戻ったレザードもカオスを目撃する。
「世界は再び混沌の時代を迎えてしまった……。
おのれ、ディケイドォォォォッ!!」
例え神であろうと、敵だというのなら戦うのみ!
一斉に突撃する四人だが、カオスは彼らを軽くあしらう。
のみならず空中へとワープ。
『弱き者よ……露と消えよ!』
四人の周辺に幾つもの火柱を起こし、火球を剣に変じて拘束。
とどめに上空から巨大な剣を叩き落とす。
「「うわーーーッ!!」」
爆風で吹き飛ばされる四人。
その間に、カオスの傍に生き残った怪人たちが続々と集まってくる。
だが、それに対抗するかのように、太助たちの背後に次元壁が現れ、中から見覚えのある二人が現れる。
「アリーシャさん!?」
「ジュード!?」
「太助さんのおかげで、全ての英雄が甦りました!」
「それだけじゃない。僕達の仲間も、全て甦ったんだッ!」
「「僕達(私達)も一緒に戦います!(戦うッ!)」」
アリーシャとジュードは獲物を取り出し、カオスに突撃する。
さらに、烈風と疾風が、青と赤の光が、ビームサーベルとバイオリンが。
一瞬にして怪人たちを撃破する。
クード、留美奈、ハーメル、シグナル、ナナシ、ケロロ軍曹も駆け付けたのだッ!
「我輩たちもいるでありますよ!! 今こそ受けた恩義に報いるときであります!!」
「良し……行くぞッ!!」
十二人の英雄が一斉にカオスに突撃する。
しかし、カオスはその爪で、火炎弾で、衝撃波で十二人という数を全く物ともしない。
いや、むしろ圧倒している。
ならば、こちらは持てる全てをぶつけるのみッ!!
太助は、ケータッチをバックルにセット。
すると、光のカードが英雄たちの前に現れる。
『ZAIN』『FULLSYNCHRO』『ANGEL』『ARMS』『FINAL』『CODE』
『EMPIRMESSIAH』『VALKYRIE』『ULTIMATEKERORO』
『FINAL HERO RIDE DECADE』
コンプリートフォームの力で、9英雄達も最強フォームへと姿を変える!
そして、ディメンションシュート、Zアロー、クラッシュガジェット、烈風陣が。
続けてナイフクロー、神剣ランドグリーズ、ギガスラッシュ、メザーランスの刃が。
さらにエンジェルハーメルと究極ケロロの鉄拳が。
怯んだところに、真弥の渾身の拳を受けて、さすがのカオスもよろめく。
『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』
「おぉぉぉぉッ!! つぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
間髪入れずに繰り出されたディメンションキックを受けて、カオスは大爆発を起こした。
着地した太助の周りに英雄たちが集まってくる。
「やったでありますな!」
喜ぶ英雄達。
だが!
『希望など存在せぬ……超えることは許されん……!!』
倒したはずのカオスが立ち上がり、その四本の腕に剣を持って切りかかってきた!!
『喰ぅらえい!!』
ワープで懐に入り込み全周囲に衝撃波を放つ!
たちまちのうちに十二人は地面に這いつくばる。
『弱き者どもよ……諦めろ』
――いい加減、諦めろっての!
その言葉を拒む者がいた。
――諦めるもんか!
「諦めるかぁ!!」
「自分と向き合った者のことを忘れない限り!」
――その思いを汚す奴は、絶対に許さない!!
――何だっていうんだよ、お前は!?
『弱き者よ……貴様は何だ……?』
「覚えておけ! 俺は」
――あたしは(俺は)
「機動六課の……」
「通りすがりの……」
「「超戦士だぁぁぁぁっ!!!」」
その時、天を切り裂いて、一台の戦闘機とそれを追いかける機械の巨人が現れた。
戦闘機はそのまま人型ロボットに変形し、巨人の方は太助の傍に降り立つ。
太助はこの巨人を覚えていた。
「待っていたぜ、マスターコンボイ」
「貴様は確か……前に……(確か……通りすがりの……ディケイドさん!!)」
その巨人の名はマスターコンボイ。
また異なる世界で、魔導士スバル=ナカジマやその仲間と共に戦う英雄である。
かつてビッグディザスターとの決戦に置いて、どこからともなく駆け付け、太助のピンチを救い
そのまま去って行ったことがあった。
が、和む前に上空からレーザーが撃ち込まれる。
「しつこい奴らめ! ここでイケメンの俺様がぶっつぶしてやる!」
どうやらあのトランスフォーマーを追ってきたらしい。
『貴様……丁度良い……』
なんとカオスは赤い球体になると、そのトランスフォーマーと融合しようとする。
「ぎゃーッ! なんだよ! せっかく出てこれたのにこんな役なんてありかよーッ!!」
なおも叫んでいたトランスフォーマーだったが、だんだんと声が小さくなりついには消えたとき。
そこにいたのは、カオスとスタースクリームの融合体。
名づけるなら、カオススクリームとでも呼ぶべきか。
『「神に逆らう愚かさを知れい!!」』
太助とマスターコンボイに襲い掛かるカオススクリーム。
迎え撃つ二人だったが、カオススクリームは強い。
「(あいつ、半端じゃないよ!)
だが、切り札はあるのだろう? ディケイド」
「もちろん! ちょっとくすぐったいけどね!!」
『FINAL FORM RIDE MMMMASTER』
太助はマスターコンボイの背後に回ると、マスターコンボイの体を二つに分ける。
そして太助を中心として、二体のマスターコンボイが左右に立った。
「これは……どういう状態だ?」
「ひょっとしてそっちは……マスターコンボイさん?」
これぞファイナルフォームライド、マスターコンボイMとマスターコンボイSだ!
「さあ、決めるぞ!」
『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE』
「うん!」
「いいだろう……」
三人の目の前に環状魔法陣が形成され、魔法陣中央と右拳にスフィアが形成される。
エネルギーは右拳に纏わりつきそれは嵐となっていく!!
「猛撃――」
「必倒ぉっ!!」
「「「トリプル、テンペスト!!!」」」
マゼンダ、スカイブルー、パープルのエネルギーが絡み合い、まさに嵐となったエネルギーを
正面から喰らい、カオススクリームは成すすべもなく大爆発を起こした。
カオススクリームが倒れたことにより、ハイパーディザスターは壊滅した。
英雄たちは勝利したのだ。
「さて……お疲れ様であります」
ケロロを初めとする英雄たちは次元壁をくぐり、それぞれの世界へと戻っていく。
そして、変身を解いた太助と、スバル、マスターコンボイ(ヒューマンモード)が残される。
太助は、スバルに一枚のカードを渡した。
「それは、二人が持つべき物です」
「え?」
だが、カードの絵柄はぼやけていてよく見えない。
そして、太助はサムズアップをしながら次元壁の向こうに消えて行った。
「このカードは……?」
マスターコンボイも覗き込む。
すると、カードの中に次第に、彼の良く知るトランスフォーマーの絵柄が現れる。
そして次元壁の向こうから、そのトランスフォーマーが現れた――!
「あれって、ひょっとして……!」
「ギャラクシーコンボイ……!? 別の世界の……か?」
「誰かは知らないが、いい目をしているな……。あの子達によく似ている。
私はサイバトロン総司令官、ギャラクシーコンボイ。またどこかで会おう」
ギャラクシーコンボイはそう言うと、次元壁の中へと消えて行った。
「ギャラクシーコンボイめ……。どこの世界でも変わらんな……」
「あれが……ギャラクシーコンボイさん……」
後に、彼らは元の世界に帰り、自分たちの戦いの最終局面に置いて、ギャラクシーコンボイと出会うのだが
それが『再会』だったのかどうかは……不明である。
そして、七梨家では。
「やっといつもの僕達に戻ったね」
「こうやって、私たちの旅は続いていくんですね」
「あぁ、俺は旅を続ける。なぜなら……旅こそが、俺の物語だからな」
「太助だけじゃねえさ」
剣も、話に加わる。
「俺達で一緒に旅を続けるんだ。それが、『俺達の物語』だ」
「そうそう! 私たちはみんな、旅の仲間!」
「そうだ、七梨! せっかく新しいカメラなんだからさ。
写真撮ってくれねえか?」
「おい山野辺。それだと俺が写らないじゃないか」
じゃあ、あたしがいや僕がと騒ぐ一同の脇のテーブルには、新たな絵が浮かんでいた。
新しい世界。
それは、青空の下、どこまでも続く一本の道。
物語はいつも夢から始まる。
物語が終わるとき、それは人の心に刻まれ、新しい夢の種となるかもしれない。
そうやって物語は無限に広がっていく…………。
人の心から、夢が消えない限り…………。
データファイル
カオス
混沌を司る男性神。
ハイパーディザスターの切り札としてアルティミシアの手で復活させられようとしていたが、
フォルテを取り込み自らの意思で復活を遂げる。
が、やはり不完全だったのか、十二英雄の一斉攻撃を受けたことで肉体が崩壊しかかり、
スタースクリームを吸収し、カオススクリームとなる。
余談だが、声がアニメイテッドにおけるスタースクリームの上司と同じである。
スタースクリーム(アニメイテッド)
異世界からやってきた自称イケメントランスフォーマー。
どうやらミッドチルダで悪さをして機動六課に追い立てられたようだ。
登場早々カオスに乗っ取られてしまう。
カオススクリーム
カオスがスタースクリームの肉体を乗っ取った姿。
最強の敵としてディケイドとマスターコンボイの前に立ちはだかる。
マスターコンボイ&スバル=ナカジマ
「Master strikerSの世界」における英雄の一人。
自分たちの世界で悪さを働いたスタースクリームをこの世界まで追いかけてきた。
最後に、太助から託されたヒーローカードの力でギャラクシーコンボイと対面を果たす。
ギャラクシーコンボイ
「Master strikerSの世界」で偉大な功績を遺した英雄。
ヒーローカードの力でスバル&マスターコンボイと対面を果たし、二人の眼差しに自分の知る「誰か」
との共通点を見出した。
なお、マスターコンボイとはちょっとした「縁」があるのだが、彼がヒューマンフォームであった為か
あるいはそもそも別世界の存在だからかその「縁」には気が付かなかった。
マスターコンボイM&マスターコンボイS
マスターコンボイのファイナルフォームライド。
一つの体に宿った二人の意思を、個別の体へと分割する。
必殺技は、ディケイドを加えた三人でディバインテンペストを繰り出す「トリプルテンペスト」
後書き
終わった……。
もうその一言につきます。
ビギンズナイトを切ったせいでマスターコンボイとスバルが唐突、かつ出番が少なめになってしまいました。
モリビトさん。
許可もらっといてこんな扱いしちゃってごめんなさい。
ギャラクシーコンボイと彼の言う「あの子達」については……ご想像にお任せします。
では、ここまで読んでくださった皆様がた。
そして、掲載してくださったモリビトさま。
ありがとうございました。
管理人感想
ダークレザードさんからいただきました!
ついに完結、お疲れさまでした!
さらにうちのマスターコンボイ達まで使っていただいて、ありがとうございます。
しかも最後にはギャラクシーコンボイまで。『MS』ではゲスト参戦扱いで終わってしまったので、出番を作っていただけて感謝の言葉もありません。
33話に渡る連載、本当にお疲れさまでした。
それでは、ダークレザードさんの次回作に期待して……