織田信奈の欲望、前回の三つの出来事!

一つ! 土御門久脩によって苦しめられた太助は、仲間を救うために爆死した!
二つ! 救援に戻ってきた光秀もまた、土御門によって奈落の底に落とされる!
そして三つ!! 良晴が痛さも怖さも、怖くて痛いほど感じてそれでも笑っていたことを知った信奈は、再び立ち上がったッ!!


太助の、そして良晴の覚悟に答えるため織田軍・二万五千は、浅井朝倉連合軍を討つべく出陣。
決戦の地を坂本と定め、向かっていたのだが、物見の兵から衝撃的な報告が舞い込んできた。
連合軍は坂本を無視して、そのまま叡山に入ってしまったのである!

「……我らの状況は十一点です。どうやら敵方には相当頭の切れる者がいる様子。叡山に籠城し、持久戦に持ち込むつもりです」

こうなった以上、織田軍は叡山を包囲しなくてはならない。しかし、現在の織田軍は東北を浅井朝倉、西を三好一党、南を六角承禎に包囲され京に孤立している。
このままでは、南近江を六角に、京を三好一党に奪われてしまう。だが、西と南に対応しようとすれば、浅井朝倉に背後を突かれる……。

「ちょ。ちょっと待って! 京を手薄にしたままここで釘づけになったらやばいってとこまではあたしにもわかるけど……どうして叡山があたしたちの敵に回ったわけぇ!?
 あたしたち、叡山に何もしてないのにっ!?」
「それどころか天台座主の覚恕様って、姫巫女様の兄貴だそうじゃないか。やまと御所に多額の献金をしているあたしらを恨む理由は無いだろ?」
「ここで浅井朝倉と結ぶなんて手際が良すぎるわ。久政の裏切りは長政にとっても不意打ちだったはずなのに。……まさか、誰かが裏で糸を引いているんじゃ……」

織田軍は攻撃目標を見失い、やむを得ず体勢を立て直すために坂本へ布陣した。
ところがまたしてもここで、予想外の事態が起きた。
叡山の麓から、坂本めがけて一斉に叡山の僧兵たちが不意に攻めかかってきたのだ。
柴田勝家が、僧兵を率いる巨漢の荒法師・正覚院豪盛に戦いを挑むも、分が悪いと見た正覚院豪盛は即座に叡山に引き上げてしまった。
ここに織田軍は進退窮まった。
女人禁制の叡山を攻めることもできず、包囲を解くこともできない。
もし、この場に七梨太助がいたならば、彼はやまと御所で高笑いをしている黒幕の姿を幻視していたであろう。


叡山、根本中堂。
不滅の法灯を前に、四人の人間が顔を揃えていた。
一人は、嫡子・長政を竹生島へ幽閉し、浅井家当主に(長政の孝心のおかげで当主も同然だったが)返り咲いた浅井久政。

「……まさか初手から籠城策をとるとは。織田信奈も健在であるし、わし等は果たして勝てるのであろうか?」

戦下手の久政は、すでに顔が青い。
織田家と手切れしたまでは良いが、織田軍を壊滅させられねば『最低の卑劣漢』として名を残してしまう。そんな不安に苛まれっぱなしであった。
それとは対照的にもう一人の、戦場で公家風の衣装を纏い、優雅にふるまう優男。
この男こそが越前の名門・朝倉家の第十一代当主、朝倉義景である。

「久政よ。時を稼げば稼ぐほど、戦局は我等に有利となる。人を殺す戦は醜い。とりわけ姫武将に血を流させたくはない。美しき戦、血を流さぬ戦で勝利を収めてこそ、世に威光を示せるというもの――我等はゆっくりと、織田信奈から時を奪えばよい」

朝倉義景は戦を好まない。
今回の出兵も、織田信奈が先に越前へ攻め入ってきたので、火の粉を払うために渋々立ち上がっただけだ。
だが。

「実に物憂げなことではあるが……既に始まってしまった以上、この戦、勝たねばならぬ。あたら人を動かし、多くの兵を死なせるのは愚。
 地の利と時の運、この二つを握れば勝利などは熟してきた柿の実が落ちるかのごとく、手に入るであろう」

一度立ち上がれば、この男は凄腕の軍略家なのだ。

「織田信奈を滅ぼした暁には、次の天下人はなにとぞ我が子、長政に」

久政が、年若な義景に対して頭を深々と下げる。

「よい。余は天下人などという面倒な仕事に興味はない。長政はなかなかの傑物と聞く、京も天下も好きにすればよかろう。
 ただし、京の都にある主だった風流物は余が一乗谷へ運ぶとする――戦火が由緒ある芸術品の数々を焼くのは見ておれぬのでな」

朝倉義景は戦を好まない。
それは、天下などは家来も同然の浅井家にでもやらせておけばいい『俗事』であるとして、欠片も興味を持っていないからだ。
現実に興味を持っていないからこそ、戦局を神の視点で見渡すことができるのだ。
そして、この場にもう一人。

「武門の頭領は男でなければならぬ! 織田信奈如き小娘が天下人などとは片腹痛し。拙僧は、叡山の総力を挙げてお二方を支援いたしますぞ」

織田軍との戦から戻ってきたばかりの僧兵軍団のリーダー、正覚院豪盛。
鉄火場での槍働きと酒を何より好み、肉も喰らえば金も貸す、貸した金は押し込みをしてでも取り立て、借りた金は足利幕府が相手でも踏み倒すために一揆を起こす、破戒僧の鏡であった。
そしてなぜか、妙に姫武将を憎悪していた。

「浅井殿、朝倉殿。この国を不浄なおなごなどに自由にさせてはならん。奴らは今、僧兵たちとの戦が終わったばかりで油断している。夜が更けると同時に
 全軍で坂本へ繰り出して大決戦と行こうではないか! なあに、不利になればまた叡山に逃げ込めばよいのだ、がっはっは!」
(呆れた殺生坊主、ですね)

そう心中で呟いたのは最後の一人。
黒ずくめの謎の人物、シンであった。
墨俣一夜城、清水寺の戦いに続いてまたしても、織田家の敵中から織田信奈の戦いぶりを観察していた。

「……しかし義景殿。十二月になればあなたの領国・越前への帰路は雪で閉ざされますぞ」
「より時間に追われているのは織田方。この戦、先に織田軍の方が崩れよう」
「う、う、うむ……だが、敵の大軍を前にこうもじっとしているのは……何か手は無いか……。おお、坂本に陣を張った織田方の大将へ暗殺者を放つというのはどうだろう?」
「がはははは! それならばちょうど杉谷善住坊という鉄砲の名人が当山におる。三度目の機会を与えてやるとしようか」

正覚院豪盛が小坊主に銘じて、良晴を狙撃してしまった後叡山にかくまわれていた杉谷善住坊を根本中堂へと招いた。
だが……。

「――俺にかまうな。放っておいてくれ」

呼びだされた善住坊は泥酔し、目に隈を作って荒れ狂っていた。

「おう善住坊。いったいいかがした?」
「……俺はあの女を、織田信奈を二度も仕損じた。何故だ……! 俺の腕が甘かったのか。それとも甘いのはこの俺の……」
「だが代わりにサルの腹に、二発も喰らわせてやったのだろう、おなご風情が天下など望むから仏罰が下ったのじゃ、がはははは!!」
「……俺は、狙った獲物は即死させる男。身体に弾を喰い込ませて苦しめるなど、俺の主義に反する。いや、人が苦しむ様を見るのは大好物だ。
 だが天下一の種子島の名手は、獲物を一撃で殺してこそなのだ」
「おやおや。ただの外道と思えば、意外にも求道者だったとは。では何故、狙撃に失敗したのです?」

全く興味を持っていなかったシンと、朝倉義景が身を乗り出してきた。

「……顔を狙えば、確実に即死させられた。だが俺は……織田信奈の顔面を、撃てなかったのだ」
「撃てなかった、ですか。何故です?」
「……わからん! わからんが……何故だろう。あの小娘の笑顔が、やけに眩しかったのだ。俺のような地を這う虫けらの如き者が決して犯してはならない何かを、俺は撃とうとしている
 ――何故か、不意にそんな迷いが生じた。この杉谷善住坊としたことが。訳が分からん……」

善住坊は呻いた。

「ええい、貴様が織田信奈の顔を撃ち抜いていれば、今頃は!」
「久政、無粋なことを言うな」
「それで俺は咄嗟に腹を撃った。二発とも、確実に織田信奈の腸を貫くはずだった……。それなのに、あのサルは俺の狙撃を読んだように織田信奈を庇った……この俺が、二度も暗殺を仕損じたのだ。
 もはや織田信奈には、俺がうかがい知れぬ天の加護があるとしか思えぬ……」

この男はもう使い物にならんな、と呟きながら豪盛が頭をかいた。

「出て行け。この豪盛、おなごも撃てぬような役立たずを食わせてやるつもりはない! 要は、お前は織田信奈の色香に迷ったのではないか!」
「……そのような野暮な迷いではない! この杉谷善住坊を舐めるな!」
「この男も風流の心を知ってしまったということだ」

朝倉義景は、そう言って微笑みながら『源氏物語』の絵巻を床へと広げ始めた。

「余は分かる気がする。至高の芸術品を目の当たりにすれば、打ち砕くのは忍びないと思うのが人の心。織田信奈とはそれほどに美しき女人なのであろうか。
 『源氏物語』の絵巻に描かれた姫よりも美しき女人が、この現世にいるとは余には信じがたいのだがな。事に、物怖じせずに源氏を引っ張りまわす若紫の愛らしさと言ったら……余も北山の桜を
 愛でに行きたいものよ……ふ、ふ、ふふふふふ……諸君はその北山が本当はどこであるのかご存じか? 余は様々な書物をかき集めたが、いまだに確証を得られぬ。
 京の北にあるお山ということで、おそらく鞍馬山ではないかと思うのだが……どうであろう?」

浅井久政は目をしばたたきながら突然語りだした、朝倉義景の端正な横顔を眺めていた。

「光源氏は現世に絶望した余に素晴らしい希望を与えてくれたのだ。光源氏の如く母の面影を重ねられる愛らしき少女を我が館に連れ去り、閉じ込め、そして余の思いのままに
 少女を育てることが出来れば……若紫の如き理想の女性を手に入れることができる……ふ、ふ、ふ」
「よ、義景殿。そろそろ、風流話はそのくらいに……」
「そうそう。女人とばかり知り合う源氏に嫉妬し、生霊を暴走させて女人もろとも源氏を殺そうとする六条御息所にも捨てがたい趣がある。初めは冷たくあしらっていたが、
 源氏の魅力を知るや否や、一転尽くす女になる葵の上も真に素晴らしい。葵の上が六条御息所の生霊に憑かれて苦しむくだりなど、何度読んでも身悶えできる。
 それから、度々源氏と関わる少女陰陽師も不思議な魅力があってな。はぐらかしてはいるが、源氏に惹かれているのがよく解るのだよ」

朝倉義景は現世に興味を持たないが、京の文化だけは例外だった。
越前の都・一乗谷の町を「小京都」と呼ばれるほど徹底した京風造りに改め、常に風流な平安絵巻を携えて手放さない。
特に『源氏物語』へのこだわりは異常で、絵巻だけではとどまらず、自らの館を光源氏の館そっくりにこしらえ、天才絵師・長谷川等伯の筆になる『源氏物語』の壮大な絵物語を
建物の壁や天井や襖にびっしりと描かせ、館に籠って物語の世界に耽溺するのを日課とするほどだった。
そして、何時までも止まらない義景の女性語りに、久政も豪盛も閉口していると。

「朝倉さん、浅井さん。猿回しは死んだよ。木っ端微塵になった。首までぐちゃぐちゃになってしまったのが残念だけど――杉谷善住坊の代役は、この僕が務めてあげよう」

僧兵たちに追い立てられて山を追い出された善住坊と入れ替わりに、土御門久脩が姿を現した。

「こんな子供が土御門家の当主じゃと? そもそも首一つ持ってこずに良く威張れるものじゃ」

浅井久政の漏らした言葉を、久脩は聞き逃さなかった。
翼を生やした式神に首根っこを掴まれて、久政は無様に泣きわめく。

「ひいいいい! ゆ、許してくれええええ!」
「猿回しの首は、服部半蔵の焙烙玉で粉みじんに吹っ飛んだんだよ。僕に首を渡すのがよっぽどしゃくだったんだろうねェ。
 出来るのなら、僕を見下したあいつの首の、目をくりぬき鼻を削いでやりたかったんだけど、さ。ふふっ」
「わ、わかったから、この化け物をひっこめてくれえ! 許してくれええええ!」
「いいかい。織田勢を滅した暁には、土御門家を京に再興する。そして日ノ本各地に散った流れ陰陽師の全てを、安倍清明公直系の後継者である僕が頭領として束ねる。そう言う約束だよ」
「好きにするがいい。陰陽師と式神が京を跋扈する平安の昔に戻る……実に喜ばしいことだ。京が再び古の闇に覆われる。まことに風流ではないか」
「くすくす。朝倉さんは話が分かる人だなあ。そうそう。ついでにあの気位ばかり高いおでこ娘の、明智光秀も殺しておいたよ」
「――そうか。あれほどの才を秘めた高貴な娘が、あっけないものだ。おでこが後少しばかり狭ければ、理想の若紫となれたものを……どちらかと言えば朧月夜に似ていたものだなあ」

相良良晴は生きているとも死んでいるとも取れず、出陣できない容態であることは確かだ。
厄介だった二人――七梨太助と明智光秀は土御門が倒した。
美濃尾張を数少ない手勢で守る斎藤道三は、甲賀の六角承禎と東の武田信玄とに挟まれ、うかつに身動きが取れない状態。
伊勢戦線に張り付いている滝川一益も同様で、やはり六角が防壁となっている。叡山へは辿り着けまい。
四国の三好一党が機内へ再上陸し、空き家同然の京を突くまでに要する時間を計算すれば――。

「二週間だ。あと二週間この退屈な籠城を続ければ、我らの手に勝ちが転がり込んでこよう」
「がははッ! 勝ったな朝倉殿。柴田も丹羽も姫武将。この叡山には一歩も踏み込めず、決して手出しできん! 叡山の女人禁制の掟を戦に利用するとはお主、中々の知恵者よのう」
「余はただ、女たちを血なまぐさい戦に巻き込みたくなかったのだよ。風流人としてね。女とは……館に閉じ込め、毎晩着せ替え、飽くまで眺め、ひたすらに愛でるもの。ふ、ふ、ふ」

笑う朝倉義景を、そしてほかの三人を、シンは冷めた目で見ていた。

(所詮、現実から逃げた者と、あの浅井長政の父親……ですか。これでは私が手を下さなくてはならなくなるかもしれません……まあ、望むところですが)


第二十二話「僧兵と光秀の試練と叡山侵攻」


深夜だった。
見渡す限りの山野。
四方八方に一揆勢が担いでいる鍬や鋤がうごめいていた。

「……皆、すまないな……一揆勢の執念を舐めていた」
「謝らんでくれみゃあ、大将!」
「大将が一人で行ってくれなけりゃ、俺達の半分はあの式神に殺されていたみゃあ!」
「ここからは、俺達が大将をお守りするみゃあ!」

七梨太助が殿部隊の肩を借りながら山野を彷徨っていた。
水坂峠で土御門久脩の罠に踏み込んだ時、太助は五体をバラバラにされて吹っ飛ばされたはずなのになぜ?
あの時、龍穴を探しに向かう直前での作戦会議の際、太助は半蔵に打診していたのだ。

(いざというときには、「微塵隠れ」を使おう)

忍法・微塵隠れ――。
半蔵が煙幕を張って戦場にいる敵味方の全ての視界を一時的に奪った隙に、七梨太助と「替え玉」を入れ替える。
本物の太助は、忍び部隊が掘った穴に飛び込み、そのまま土を被って地中に姿を隠す。
「替え玉」とは、そう、前鬼である。
前鬼が太助の武具を身に着け、顔を変えて太助に成りすましたのだ。
後は、光秀たちが目撃した通りである。
半蔵が仕掛けた爆薬で木っ端微塵に吹き飛んでしまうことで、「死」を偽装する。
故に「微塵隠れ」
土御門久脩に気づかれればすべてが終わり。また傲慢な土御門が、約束を無視して殿部隊を襲う危険もあった。
また、土御門が約束を守って去ったとしても、落ち武者狩り連中はまだ、諦めないかもしれない。
半蔵と忍び部隊は、土御門が去った後で地中の太助を掘り起こし、彼を安全に京へと撤退させる……そう言う手はずだった。
ところが太助を掘り起こしたのは半蔵ではなく、殿部隊の皆であった。
聞けば、爆発の直後、明智光秀が土御門の作り出した大地の裂け目に落下し、松平元康と前田犬千代は半蔵と共に去っていったらしい。
三人のおかげで土御門久脩は本来見破れるはずの「微塵隠れ」を見抜けなかったが、三人がここまで兵を率いずに来てしまったため、半蔵は主君の警護につかねばならず、
水坂峠の地中にいったん太助を置き捨てて行かねばならなかった。
敵地の真っ只中だったため、半蔵は元康に真相を語れなかったのだ。元康が「微塵隠れ」について知らされるのは、京に戻ってからということになるだろう。
そして、太助はこうして仲間たちとともに再び京に向かっている。
だが、もう体力の限界を超えてしまった太助は、こうして肩を借りなければならないほどに弱っていた。

「見つけましたよ……!」

そんな太助の前に、現れたのは……。


「……信じないです。七梨先輩は、普通の人間とは違うです。『でぃけいど』なんて得体のしれない何かに変われますし。こんな山の中で野垂れ死にするようなタマじゃないです」

何と、明智十兵衛光秀も生きていた。
怒りに我を忘れて前方不注意という『うっかり』をやらかし、土御門が作った深い大地の裂け目へと落ちた……はずだった。
だが――。
光秀が乗っていた馬がこの時、まるで神がかりのように全身を震わせ、激しく嘶きながら、深い絶壁の中を飛ぶように駆けた。
まるで、この者はここで死すべき宿命にあらず、という『大いなる意思』が馬に取りついたかのようであった。
驚異的な跳躍力で主人を守ろうと奮闘する馬に奇跡のように守られた光秀は、馬がついに力尽きてその動きを停止すると同時に、腰の大太刀を抜き放って大ジャンプ。
間一髪、刃先を岩と岩の間に貫き通すことで、助かったのだ。
この時の衝撃で右肩を脱臼しながらも、小太刀を命綱代わりに岩へ突き立て、左手一本で歯を食いしばりながら、ロッククライミングをやり遂げたのだ。
彼女がようやく裂け目から這い上がって水坂峠の洞窟へと舞い戻った時には、すでに元康たちの姿は消え、そして太助も足軽達に掘り出してもらって退却を始めた後だった。
利発な光秀はこの時、太助が埋まっていた穴を発見すると、「微塵隠れ」のからくりを見破った。

(これは服部半蔵と前鬼がたまたま組んでいたからこそ可能だった大芝居。先輩はまだ生きているです!
 だが松平殿と前田殿はこのお利口な私の足元にも及ばないお馬鹿さん達ですから、先輩が地中に埋まっていたことに気付かず、そのまま京へ引き返したに違いないです。
 そもそも、任務の為なら手段を選ばぬ忍びとはまことに冷酷なもの。服部半蔵は自分の主を守る為なら、地中に埋めた七梨先輩や大地の裂け目に落ちた私を平然と置き捨てていくです)

今や七梨先輩を救えるのは、この十兵衛光秀のみ――外れた右肩を自分で強引にはめ込んだ光秀は、たった一人で七梨太助の捜索を開始したのだった。
そして。
遂に、見つけた。

「まったく、随分とフラフラじゃないですか」
「ハハハ……そっちこそ、あれで死なないなんて、ずいぶんと生き汚いじゃないですか。……ともかく、何で助けに来たのか、教えてください」

そして、共に京へと向かいながら、光秀は太助に語った。
杉谷善住坊に狙われた信奈を庇って、良晴が撃たれたこと。
信奈は心を壊しかけ、良晴も大変危険な状態であること。
自分たちは、最後の希望として太助を救いに来たのだということを。

「それに、清水寺で私は七梨先輩に命を救われたですから」
「そうですか……。それは……ありが……たい」

喋っている最中に、太助はバランスを崩して倒れそうになる。

「た、大将! しっかりするみゃあ!」

季節は、すでに冬。
そして、雨降りしきる夜の森。
冷え切った山の空気とこの雨が、この冷たさが、疲れ果てた太助からどんどん体力を奪い取っているのだ。

「これではどこかで休まないと先輩は京まで持ちません。おお、丁度あそこに洞窟があります! あそこなら雨を凌げる分、外よりずっと暖かいです」

お前達は見張りをするです。と光秀は太助を背負い、洞窟の奥へと潜った。
狭い道を抜けていくと、その向こうは広い鍾乳洞になっていた。

「まったく、手間がかかる先輩です。これで清水寺での借りはチャラですからね、先輩」

ぶーぶー言いながら太助を傍らに寝かせ、木々を集めて火を起こいた。
いや。憎まれ口をたたいているが、光秀の心には、清水寺へ信奈たちと共に駆け付け、自分の命を救ってくれた太助への感謝の心があった。
命だけではなく、松永弾正久秀に操られ、疑心暗鬼に駆られて折られかけた心をも救い出してくれた……。

(だから忘れるな。この国は、世界は今、織田信奈を必要としているんだッ! あの人はこの国とそこに生きる人々の、もしかしたら世界中の人々の『最後の希望』かもしれないんだ。
 光秀さん。もしもこの戦を生き延びて、それでも自分を、信奈さんを信じられなくなったら、今この時を思い出せっ! あんたを救うために、織田信奈は命を賭けて手を伸ばした。その事実を思い出せッ!!)

あの炎に包まれた清水寺の境内で、七梨太助は、必死に何かを伝えようとしていた。
殴りつけてでも自分を正そうとし、そして仮面に覆われていても感じた、悲しい瞳で自分を見つめた七梨太助。
あの時光秀は、己が胸を貫かれたかのような衝撃を受けたのだ。
胸騒ぎが、収まらなくなった。
なぜ。
どうして。
先輩達は私に、本当は何を伝えたいのか――。

「先輩――」
「ん?」
「先輩は、清水寺で私に何を仰りたかったのですか? もしかして先輩は、私の運命が……この私の未来が、とてもとても哀しい未来になると知っていて……!
 それで、私を守ってくださると……そう仰りたいのでしょうかッ?」

ななな何を言っているですか私は!?
理性がそう慌てるが、光秀の体の細胞は理性を無視して叫びだしていた。

「先輩、教えてください! 私は……私は、目の前の事に夢中になると何も見えなくなるです! 人に騙されやすくて、空気も読めないから、きっとこれからも失敗を重ねてしまうです!
 どうか、油断するとすぐに悪い子になってしまいそうな私をお導き下さい……!」
「それは――きっと俺にはできない」
「……! そ、そんな……」
「だって、光秀さんの未来は、光秀さんにしか作れないから。通りすがりの俺には……いや、シャオや良晴さんにも、していいのはきっと手伝いまでなんだ」

だから――。

「失敗して、叩かれてもう立てないと思ったら、その時は手伝うから。俺が立てなくなったときは、光秀さんが手伝ってくださいね」
「……わかりました先輩。約束ですよ」

差し出された手を取りながら光秀は思った。
自分はあの時の清水寺で、この人に……恋を……してしまったのかも、しれない。
家族に愛されなくても、ここまで人に優しくできる人間を、自分は知らなかった。
この人がシャオの、信奈の、良晴の、皆の笑顔を守るというのなら、自分はこの人の笑顔を守りたい。
こんなに優しい人間が愛されないなんて、悲し過ぎるから……。


雲母坂、信奈軍本陣。
自らは女人禁制の霊山・叡山の根本中堂に本陣を設け、時折血気盛んな正覚院豪盛に夜襲をかけさせ、旗色が悪くなればさっと僧兵たちを女人禁制の山へひかせてしまうという
浅井朝倉の時間稼ぎ戦法に、信奈たちは手古摺っていた。
「種子島で相良良晴を狙撃した下手人を引き渡すように」という要請も「不浄な姫大名などに当山は一切関わり無し」と相手にもされない。
本来何の関係も無いはずなのに、浅井朝倉軍を迎え入れるどころか、織田軍に被害さえ与えている。
叡山のこの態度に、特に激怒していたのが、松永弾正久秀であった。
彼女は、京での戦で家族も家も失い、奈良の興福寺に拾われて育てられていた。
だが、久秀がそこで見たものは、宗教者であるにもかかわらず武器を持って殺生を厭わない、仏に仕える者でありながら女を「不浄」と決めつけて人間と認めない、
そのくせ自分は戒律を破って欲に塗れて呆けて暮し、自分を「異国の娘」と蔑む僧兵共の傲慢さだった。
槍も、毒も、元は我が身を守る為に覚えたのだ。
そしてその怒りは、水坂峠から戻ってきた犬千代の報告――太助が若狭の陰陽師・土御門久脩が率いる式神部隊に襲われて粉みじんになって死に、
救いに舞い戻った光秀も、土御門が断ち割った大地の亀裂に落ちて行方知れずになったと聞いてますます強くなった。
しかも土御門久脩は叡山に入り、浅井朝倉軍と合流したという。

「うふ。信奈様、叡山に火を放ち、浅井朝倉も生臭坊主どもも一緒くたに焼き殺してしまってはいかがでしょう?」
「お待ちを! そんな罰当たりなことをしたら日ノ本中のあらゆる仏門宗派が信奈様の敵になります! 零点です!」

長秀が慌てるが、久秀は出来の悪い生徒に教え込むような口調で続ける。

「長秀殿。叡山は京の鬼門を守護する霊山と称していますが、その実、京を乱す元凶ですのよ。僧兵を率いて日ノ本の神事を司るやまと御所に逆らい、南北朝の騒乱の折には
 京を治める足利将軍家と相争い、近くは法華宗と争って京を火の海にしましたのよ?」

さらに、久秀は叡山の現状を諸将に語っていった。
叡山の麓にある坂本の町の旅籠に入れば、まず般若湯を何本お付けいたしましょうかと尋ねられ、次に蓮の葉の御用はございませんか? と尋ねられる。
般若湯とは酒、蓮の葉とは遊女を示す、叡山の坊主共が使う隠語の事だ。
だが久秀が言いたいのは、そんな隠語があるということではない。
旅籠に入ればすぐにそう尋ねられるということは、叡山の坊主どもは飲酒姦淫の常習者だということだ。
正覚院豪盛のような男が僧兵の親玉をやれるのも当然だった。
むしろ彼のような破戒僧が今の叡山では当たり前なのだ。
無論、久秀とて、僧侶とは破戒僧ばかりではなく、戒律を守り民に徳を施す高僧も存在していることは知っている。
叡山にも、名僧智識と呼ばれるものが三十人余り。仏の道を一心不乱に歩んでいる若い僧が百人ほど居る。
ただし――。

「叡山にいる、三千から四千人の中での百三十余名、ですけど。彼らとて他の者達を止めなかったのですから同罪ですわ」

これには信奈を含めた全員が絶句した。
叡山の腐敗は尾張にまで届いていたが、まさかそれほどとは――。

「男共にとって仏法などは所詮、己の我儘を通すための方便に過ぎませんわ。宗教なんてものはどれもこれも全部偽善ですの。叡山の僧兵も奈良の僧兵も、中身は全部同じでしたわ。
 南蛮の耶蘇教も同じこと。全ての宗派は、何かに縋らなければ生きていけない弱い人間を食い物にして肥え太る悪党の為だけにあるようなもの――仮に神仏が本当にこの世におわすのならば、
 七梨太助も明智光秀も、浅井久政如き俗物の裏切りによって無残に死ぬことは無かったはずですわ」
「ですから、叡山に火を放ってもいいと? 天に代わって信奈様が裁きを下してもかまわないというのですか?」
「それにさ、その叡山の内情とかって、普通の人々は全然知らないんだろ? だったら、こんなことをしたって信奈おねーさんが神も仏もくそ喰らえな第六天魔王だってアピールにしかならないぜ。
 それに叡山の天台座主は姫巫女様の兄貴なんだろ? この上御所の信頼をなくしたら、織田家は日本の敵になっちまうぞ!」

久秀が目を細めて「お黙りなさい。此度の戦は貴方の友、七梨太助の仇討でもありますのよ」と翔子を睨みつけるが、翔子は怯まない。

「黙らないよ。大体あんた、本能寺で信奈おねーさんに何を飲ませようとしてた? ははあ……、さては三好長慶を毒殺したって噂の正体はそういうことだな?
 痛み止めだなんだと麻薬を飲ませて、耳触りのいい言葉を並べて、自分を三好長慶から引き離そうとする家臣を次々と粛清させたんだろ!
 清水寺で言ってた通り、あんたは長慶を殺すつもりは無かったかもしれないが、結果として長慶は中毒死しちまった。
 あんたのそれは忠義でも愛でもない。ただのエゴだ!」
「そこまで言うのでしたら、山野辺殿にはよりすぐれた代案があるというのでしょうね?」
「翔子さん。私は久秀さんの意見に賛成です」

なんと、あのシャオが久秀の意見に賛成した。

「今回の戦は短期間で決着をつけなくてはなりません。それ以上に、浅井朝倉をこのままにしておけば「負けそうになったら寺社仏閣に逃げ込んでしまえば織田信奈は無力」
 と日本中に宣伝するようなもの。なら、そんなことは無駄だと八百年の治外法権をいいことに、腐りきった悪の要塞を見せしめとして焼き払ってしまうのも一つの手段かもしれません」
「くす。貴方のような方に賛同いただけるとは思いませんでしたわ」
「ただし、それはあくまで、とっておきたいとっておきの手段として、です」

そう言ってシャオは、我に策有り、とばかりにニコリと微笑んだ。


その夜、にわかには信じがたい報告を、朝倉義景と浅井久政は聞かされた。

「織田軍が動き出しました! 信じられないことですが、この叡山に火を放つべく準備を整えているようです!」

浅井久政は、その報告を信じなかった。

「ば……馬鹿な……この叡山を、焼き討ちにする……だとッ!? 叡山こそは八百年の歴史を誇る、日ノ本仏教界の最高峰におわす聖地であるぞッ!?
 いやいや、さらに遡れば仏教伝来以前の遥か昔より日ノ本古来の神がおわす霊山ではないか。織田信奈は乱心したのか。女の身でありながら
 叡山へ攻め込もうとするだけでも非常識だというのに、全山焼き討ちとは!」

『源氏物語』の絵巻を傍らに広げながら月を眺めていた朝倉義景は、手を叩いた。

「これは酔狂なことになってきた。感服したぞ織田信奈、流石に天下布武を宣言するだけのことはある。現世の女人とは思えぬぞ」
「流石とはなんだ!」
「久政殿。織田信奈は共倒れ覚悟で策の盲点を突いてきたのですよ。この叡山は険阻な山ではありますが、岐阜城の如き城塞ではありません。
 貴方が先ほど言ったこと、眠くなるほどの常識です。いうなれば『信仰』『歴史』それらこそが叡山を守っていた。
 ですが、それを取っ払ってしまえば、拠点としてはあまりにも脆過ぎる」

そこでシンは義景に向き直る。

「これで、叡山は女人禁制という一点を前提に組み立てた貴方の戦略は根こそぎ崩れたわけですが――悔しそうではありませんね」
「悔しいものか。叡山を焼き討ちすれば織田信奈は日ノ本中の仏僧や信者どもを全て敵に回すこととなろう。そうなれば天下布武など夢のまた夢となる。
 それを承知で、叡山を焼き討ちにできるのか。あの者は真の魔王なのか、それとも常識を知らないただの田舎の小娘なのか――
 一度この目で織田信奈を見てみたいものだ、いや、ぜひ我が一乗谷の館に連れ帰ってみたい……クククッ」

朝倉義景は目を輝かせて笑うが、小心者の久政はそれどころではない。

「わ、わ、笑っている場合ではないぞ、義景殿! もとはと言えば、貴方が叡山籠城という策を出したのではないか! 何とかして下され!」
「まったく、風流を理解せぬ御仁だ。……久政、策は三つある。上策は先手必勝。山に火を放たれてからでは手遅れ。今すぐ全軍で麓の織田軍へ逆落としをかけて攻め入るのよ。
 乾坤一擲の勝負を挑むのだ」
「敵は叡山焼き討ちの報に慌てた我等が山を駆け下って出てくるのを待ち構えているかもしれんではないか! もっと安全な策は無いのか?」
(やれやれ……どこの世界でも小心者は疑り深い……)
「中策は、叡山の僧侶を使者に立てて和睦をすること。叡山を焼き討ちにすれば織田信奈は破滅するという事実をこんこんと説けば、まず和睦は成立しよう。
 我等も無傷で本国へ帰還できようが、八方塞の窮地に追い込んだ織田勢に息を吹き返す間を与えることになる」
「確かに安全な策だな。しかして義景殿、下策は?」
「勝ち目無しと見て、さっさと織田信奈に降伏するのよ。そなたは、織田信奈の妹を娶っている長政に家督を返して出家せよ。さすれば浅井家を遺せよう」

降伏などできぬ! と久政が顔を赤らめて立ち上がった。

「わ、儂は我が子の長政を天下人にするために、あえて織田と手を切ったのじゃ! それだけはならん! 義景殿、ここは中策を取ろう!」

我等に加勢してくれた叡山を焼き討ちなどに巻き込んではならん。ここは一旦和睦し、織田信奈との決着は堂々とつけよう! などと言っているが、シンは久政の本音を見透かしていた。

(死にたくない、の一言をよくもまあそこまで善人ぶった言い方にできるものだ……。このような臆病で優柔不断な総大将がいては勝てる戦いも勝てるはずがありません。
 こんなうつけの鳶からあんな鷹が生まれるとは……これも戦国の奇跡なのでしょうかね)

これまで無言で軍議を座視していた正覚院豪盛が「それでは拙僧が織田の陣へ使者として参り申そう」とうなずいた。

「がははは! 不浄の女どもが叡山を焼き尽くすなどという暴挙。この豪盛決してやらせはせぬ! じゃが、対等な和睦など片腹痛し。
 女ども、我ら逞しき男共に平伏せ! と降伏を勧告してきてくれるわ!」

豪盛は続ける。

「この根本中堂には八百年に渡り灯り続けてきた尊い『不滅の法灯』がある。守らねばならん。この豪盛、小娘の癇癪などで叡山を滅ぼさせはせん。滅ぼさせはせんぞ!」

女を仏敵の如く嫌い見下している正覚院豪盛。この偏屈な奇人を使者に立てれば――あの織田信奈の事、苛立ちのあまり無茶な条件を突き付けて自分から壊してしまうだろう。
シンはそう確信していた。


叡山を焼き尽くす準備は、すでに完了していた。
この夜は空気が乾燥し、その上、風も強い。
焼き討ちには最適の条件がそろっていた。
信奈はこの夜、本陣の床几に腰かけ、手元の地図を凝視していた。

「準備は整いました。後は、信奈様のお下知をいただくばかりですわ」
「デアルカ」

久秀が信奈に報告を行った、その時。

「お待ちください!」

本陣へと、南蛮渡来の片眼鏡をかけた大柄な商人風の男と、そしてロザリオを胸にかけた金髪の修道女が息せき切って駆け込んできた。

「おひぃ様! 坊主でありながら武具を手にして織田家に戦を挑んだ叡山の僧兵どもが滅びるのは自業自得なれど、明らかにおひぃ様の天下布武事業にとって此度の叡山焼き討ちは致命的な愚行!」

片眼鏡の男は堺の豪商、今井宗久。

「エイザンはジパングにおいてもっとも伝統ある最高学府と聞きます。古の叡智を集積したこの国の学府を燃やしてはいけません。
 エイザンの方々が宗教者の使命を忘れて武器を持っているのはよくないことですが、彼らの武装を解除させればそれで済むことです」

修道女は、信奈の許可を得て京に入り南蛮寺の建築をはじめていたルイズ・フロイスだった。

「あたしを思い留まらせようとしにきたのね、二人とも。安心して、実は――」
「申し上げます!」

信奈が二人に事情を語ろうとしたその時、駆け込んできた伝令が信じられない事実を口にした。

「七梨太助様、明智光秀様。ただ今、ご生還為されました!」


後書き
この世界の紫式部は、ある陰陽師が自分の真名を隠すために名乗っていた数ある偽名の一つであり、源氏物語は彼女とその周囲の人間をモデルにして執筆した――と伝えられています。
彼女は光源氏のモデルになった少年を「光」と呼んでまるで家族のように大切にしていました。
ちなみにこの陰陽師、とても美しいのですが口にする言葉のほとんどが、冗談や嘘で、周囲からは狐の血を引いているのではないか……と噂されていました。
…………原作者様の別作品「姫狐の召使い」とちょっとだけつなげてみました。
だって三巻終盤で登場したあの人、どう見ても「あの人」だったんですもの。


管理人感想

 ダークレザードさんからいただきました!

 むぅ、太助の死の偽装は半蔵と前鬼のコンビネーションプレイでしたか。しかも光秀は自力(+騎乗馬のがんばり)で生還してるし。
 自分の予想は外れてましたが、面白いので無問題。

 反して光秀×太助は予想のひとつとしてありましたがいよいよ確定ですかね。
 素直に表に出せないところはあれど一途な子ですからね。太助がこの世界を離れる際ついてくる展開になってもいいかも。というかこの子の行動力を考えたらガチでそのくらいやりかねん(苦笑)。