――それは、まだ“彼女達”の道が交わっていない頃。





「……という訳で、今回のミッションの概要は以上だ。異論はないな?」

『はいっ!!』

「はいは〜い♪」

「……毎度毎度の事だがなぁ、貴様はもう少し真面目にやれんのかっ!?」

「だいじょ〜ぶだいじょ〜ぶっ♪ちゃんとミッションの時は真面目にやるからさっ♪」

「その態度で何をどう信じろと言うんだ貴様っ!?だいたい貴様は“あの男”に――」

≪大変ですっ!!目標の“レリック”を輸送している調査団に、ガジェットが接近していますっ!!≫

「――ちっ、予想よりも速いな。説教は後だ、直ちに出撃しろっ!!」

『了解っ!!』




――“栄光の流星”の名を受け継いだ少年と――





「……貴様も、なかなかにトラブルメーカーだよな小僧?」

「いや、これは俺も驚いているんだがっ!?」

≪……だが、これは見過ごせないぞ?調査団を安全な場所まで避難させなくては……≫

「……仕方ないな。小僧、ガジェットを叩くぞっ!!」




――己が“護るモノ”を見つけたTFが、“彼女達”と出逢う時――





















――物語は、新たな広がりを見せる。


























魔法少女リリカルなのはMaster strikerS・外典
Another strikerS〜Extra Episode〜


『輝く流星、混沌の守護者』



























◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「ぬるいわ!!」


 斬りかかってきた白いノイズメイズの斬撃を受け止め、返す刃で斬り捨てる――そのまま身をひるがえし、スカイクェイクは背後に迫っていた白いエルファオルファの顔面を蹴り砕く。


「まったく、能力はオリジナルに遥かに劣るクセに、相変わらず数だけは……!!アルテミス! こちらに来れるか!?」

≪すみません!負傷者がひっきりなしで……!!≫


 こうなれば相棒とのユニゾンで――呼びかけるスカイクェイクだが、後方で負傷者の治療にあたっているアルテミスはまだまだ動けそうにない。

「わかった。ならば引き続きそちらを頼む」


 言って、スカイクェイクは改めてユニクロン軍をにらみつけ――


「アロンダイト!!」


 響いた宣言と同時、飛来した砲撃が白いトランスフォーマー達を薙ぎ払う!!そして――


「そこにいたか……“闇の書”の“闇”を継ぐ者よ」


 言って、スカイクェイクの前に舞い降りてきたのはヤミである。


「貴様か……“闇統べる王”」

「その名で私を呼ぶな。私には、柾木ジュンイチのつけてくれた名前がある!!」

「わかった、ヤミ」

「馴れ馴れしいぞ、貴様っ!?」

「どう呼べと言うんだ、貴様は……」


 結局どう呼んでも文句を言われるのではないか――あからさまに機嫌を損ねた様子のヤミに、スカイクェイクは深々とため息をつく。


「ならば、どう呼べばいいんだ?」

「“偉大なるヤミ様”と呼ぶがい いっ!!あ、“様”は“陛下”でもかまわんぞ」

「断固拒否する」

 迷うことなく即答した。
 





「コズミックノヴァッッ!!」



 その時、スカイクェイクとヤミへ襲いかかってこようとするユニクロン軍を赤い閃光が飲み込んでいき――




「――いつまで喋っている気だ?そんな暇があったら手を動かせ。」

「っておいぃぃぃっっっ!?なんでお前は大帝相手にそんな偉そうなのっ!?」

≪気にするなマスター、私は気にしない。≫

「そうだな、俺も気にしない。というか、気にするだけ無駄だ。」

「ちったぁ気にしろこの馬鹿共っ!?あぁ、スカイクェイクさん本当にすいませんっ!!」



 後ろから、メタリックグリーンのラインが入った黒い装甲を持ち、赤いクリスタルで出来たようなライフルを構えたTFと、赤みがかった茶髪の髪に白いランチャーを構えた少年が現れる。少年の方はひっきりなしにスカイクェイクの方に頭を下げているが、黒いTFの方はスカイクェイクに視線を合わそうとはせず――赤いライフルを光に変えて消し去ると、両腕のバルカンでユニクロン軍に攻撃を仕掛けていた。



「……“闇の書”の“闇”を継ぐ者よ、こいつらは何者だ?」

「まぁ、一応は“我々の協力者”という立場だがな――貴様ら、今の今まで何をしていた?“あの男”が手を回していたようだが……」

「あぁ、“ジュンイチさん”の故郷の方にちょっとお邪魔していたんですよ。それで、青木さん達と一緒にこっちに来たんです。」

「小僧、話は後にしろ、さすがに俺一人では面倒だ……そこの大帝と小娘も手伝え。」

「こむっ!?塵芥の癖に、事もあろうに我を小娘と―― 「口の聞き方はなってないが、確かに貴様の言う通りだな。」 って、貴様も無視するなぁっ!?」

「はぁ……なんでお前はそう敵を作ろうとするんだよ……まぁ、今はそれどころないか。」
 

 黒いTFとスカイクェイク達のやりとりに少年は額を押さえながらも空を見上げる。すると、灰色の装甲に暗い水色のラインが入ったスペースシャトルが舞い降りてくる。少年はそれを確認すると勢いを付ける為にしゃがみこみ――履いていたブーツに装着されていたアンカージャッキで地面を蹴ると、スペースシャトルへ跳躍する。



「ゴッド――オン!!」

 ――少年が掛け声と共に光に包まれてスペースシャトルと一体化すると、スペースシャトルのエンジンが分離すると、残った推進部が後方に伸びて脚部を形成、続けて胴体から腕部が展開され、両翼が回転して背部に固定される。さらに、機首が折りたたまれると同時に頭部が現れ――バイザーの奥に隠れていた瞳が、輝きを放つ。


「ジェットブレイザー、トランスフォーム!!」


 そして、本体から分離したシールドを左腕に、ジェットエンジンが変形したライフルを右手に構えると、そのTF――ジェットブレイザーは空中で勢い良く名乗りをあげた。


「小僧、カッコつけてないでさっさと迎撃しろっ!!それとも、そいつらごと蜂の巣にしてやろうかっ!?」

「謹んでご遠慮いたしますっ!!ったく、少しはキメさせろっての……バルゴラ、いけるか?」

≪システムは問題ない……いつでもいけるぞマスター!!≫

「よっし……それじゃあ―― ≪ジェットブレイザー、バルゴラ……目標を殲滅するっ!!≫ ――って、それ どこの00だよおいっ!?」


 黒いTF――カオスプライムから発せられた言葉にため息をつくと、ジェットブレイザーは改めてユニクロン軍へと向き直り……相棒であるバルゴラの言葉にツッコミを入れつつ、その軍勢へと向かっていった。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







――新暦75年5月






「ちぃっ!!嫌な予感はしていたけど、的中して欲しくなかったぜっ!!」

≪……マスター、最近ヤスフミに似てきてないか?特に、厄介なトラブルを引き寄せる所とか。≫

「ヤスフミには悪いが、断固として否定するっ!!」


 目の前にわらわらと現れてくるガジェットの群れに攻撃を放ちつつ、嘱託魔導師であるジン・フレイホークはそう愚痴をこぼす。今回彼が受けたのは、ある調査団を護衛するという実にありふれた依頼のはずだった。だが、合流した後に調査団が発掘したのはロストロギア――彼の“友人”が独自のネットワークで情報を流してくれた、『レリック』と呼ばれる代物だった。




 ――そして、“友人”から流してくれたのは『レリック』の情報だけでなく……『レリック』に関わる襲撃事件の詳細もだった。




≪今はまだガジェットだけのようだが……いつ、ユニクロン軍やディセプティコンが来るか分からんな。≫

「幸い、レリックの封印処理は終わってるから暴発する危険性はないけど……って、カオスプライムはっ!?」

≪彼なら……≫


 ジンの質問に、相棒であるデバイス――バルゴラが答えようとするが、その声を轟音が遮る。目の前のガジェットに脚部のアンカージャッキを叩き込んで吹き飛ばしつつ、ジンが轟音の方向へ視線を向けると――そこでは、ガジェットを相手に大暴れをしている黒いTFが居た。


「……OK、だいたい分かった。」

≪マスター、ここは彼に任せて調査団の方へ向かおう。あちらが襲われては本末転倒だ。≫

「そうだな。カオスプライムがそう簡単にやられる訳ないし……それに、ガジェットが調査団の所にも現れてたら厄介だしな。」


 そんな事を呟きつつ、ジンは地面を蹴ると調査団の元へと向かった……しかし、 敵が既にガジェットだけではなくなっていた事に、彼はまだ気がついていなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「……さて、そろそろ片をつけるか……」


 そんな事を呟くと、黒いTF――カオスプライムは握り締めていた拳を開き、両手を頭上に掲げる。


「……いでよ、エナジーウェポン――カオスセイバー!!」


 すると、カオスプライムの胸部から赤い光が解き放たれ――飛行機の形をした小型ロボットが現れると変形を行い、赤いクリスタルの刃を持つ剣へと姿を変える。そして、その刀身を赤い光が包み込み……巨大な、光の刃となる。



「くらえ…… コズミック、スラッシュッ!!」


 咆哮と共に横一文字に振り抜かれた斬撃は、ガジェット達をいとも容易く斬り裂いていき――連鎖的に、爆発が巻き起こった。


「……なるほど。 純粋な魔力の結晶体でもあり、高出力のエネルギーを放つ事のできる エナジーウェポンならば、威力こそ削がれるものの破壊は可能という事か。それに、小僧のレオーのような 直接魔力を吸い上げ、物理現象に変化させるデバイスの機構 までは阻害できないらしいな……むっ!?」


 その手に持っていた剣を光に変えて消し去ると、カオスプライムは戦況を分析し始めたが、自らに降り注いできたエネルギー弾に気がつくと後ろに飛んでエネルギー弾を回避し、攻撃が来た方向へと視線を向ける。














「へぇ、今のを避けるのね。」

「お、お姉ちゃんっ!?いくらなんでも、いきなり攻撃するのはまずいんじゃないかなぁ……」



 ――そこにいたのは、2丁拳銃を構えたTFと、なぜかあたふたしている背中に砲台を背負ったTFだった。新手の出現に警戒しながら、カオスプライムは様子を伺おうとし――





「何言ってるのよ…… 黒い装甲に赤い瞳なんてよくいるニセモノキャラじゃない。ほら、スカイクェイクさんに見せてもらった映像記録にも居たし……あれで敵じゃないってほぼありえないでしょ?ついでに言ったら悪人顔だし。」

「よし、貴様らは徹底的に潰そう。」

「お姉ちゃぁぁぁぁんっっっっ!?!?」



  なにげに気にしている事を言われ 、カオスプライムの堪忍袋はいとも容易くキレたのであった。赤いオーラを漂わせながら拳を鳴らしているカオスプライムを見て、砲台を背負ったTFはさらに慌てふためく。


(……だが、ついさっき調査団の方向に現れた反応……まさか、こいつらは俺をこの場にひきつける為の囮で、本命はそっちか……?)


 内心煮えくり返っている頭をなんとか冷やしながら、カオスプライムは突如現れた反応と目の前のTFから、状況を分析する―― ただし、最初の誤解などもありその分析は若干間違っているのだが。



「……って、お姉ちゃんっ!!『レリック』の方向に新しい反応がでてるよっ!?」

「なんですってっ!?だったら、こいつをさっさと倒して……」

「――やはり、貴様らの狙いは『レリック』か。ガジェットでこちらの戦力を分断し、調査団を護衛している中で唯一のTFである俺をひきつけ、本命が『レリック』を回収する……なかなかの策士が居ると見た。」

「「……へ?」」



 そして、このTF達――もうお分かりの方も居ると思うが、彼女らはかがみとつかさがゴッドオンしたライトフットとレインジャーである――のミスは、不用意に『レリック』の名を出した事である。 『レリック』の存在を知っているという事は『レリック』を狙って行動している=敵 という前提条件しか頭にないカオスプライムの勘違いは激しさを増し……彼女達を、『ガジェットを使い襲撃してきた集団』と完全に認識したのであった。




「だが、素直に踊らされるつもりはない――貴様らを早急にたたき潰して、調査団の救援に向かわせてもらおうっ!!」

「きゃああああぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?」

「ちょっ!?マジで敵じゃなかったわけっ!?!? だったら、そんな紛らわしい格好してるんじゃないわよぉぉぉぉっっっっっ!?!?」




――こうして、双方の勘違いが原因となった悲しき戦いが ――幕を開けたのであった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





――現在







「――これはっ!?」

≪私達の能力が極限までパワーアップしているだと……?≫

「……どうやら、アレの仕業らしいな。」


 突如自分達の身に起きた現象に戸惑っているジェットブレイザーに、カオスプライムがユニクロンの元へ視線を向ける。つられてジェットブレイザーが視線を向けると――



「龍神合身! ゴォォォッド! ブレイカァァァァァッ!」


「龍の力をその身に借りて、神の名の元悪を討つ!

 龍神合身ゴッドブレイカー、お久しぶりに只今見参!」




 ――そこには、前口上を述べる巨大な青い巨人が存在していた。


「……アレ、ジュンイチさんか?」

≪まさに何でもありだな……しかし、彼のような存在が居ると……ヤスフミも、遠慮なく自分の手札を増やせるんじゃないか?≫

「ヤスフミの奴、新しい手札を思いつく度に『これ、チートじゃないよね?』ってビクビクしてるもんなぁ……」

「……そこの塵芥共、なかなか余裕だな?」


 ユニクロン軍を相手どりながらそんな事を呟くジェットブレイザーを見て、ヤミが呆れた声で呟くのも無理はないと思われる。


≪スカイクェイク!≫

「アルテミスか!」


 すると、スカイクェイクの元には負傷者の手当てに区切りをつけたアルテミスが駆けつける。スカイクェイクとアルテミス、二人が並び立ち――

「≪ユニゾン、イン!覇道大帝、デスザラス!≫」


 二人の身体が、“力”がひとつに――デスザラスへの転生を遂げ、ユニクロン軍と対峙する。それを見たカオスプライムも何かを思案し――


「――小僧っ!!俺達もいくぞっ!!」

「って、マジで言ってるのかお前っ!?」

≪今まで一度も成功した事ないどころか、試した事もないだろうがっ!?≫

「問題ないっ!!柾木の家で見た作品でもこう言っていた…… 成功率なんてのは単なる目安、後は勇気で補えばいいとなっ!!」

「≪なんか、影響されまくっているっ!?≫」

「行くぞっ!! 合体だっ!!」

「あぁもうっ!?やりゃあいいんだろやりゃあっ!!」


 半ばヤケクソになった所で、ジェットブレイザーはカオスプライムに頷き――





「カオスプライム!!」

「ジェットブレイザー!!」

『ゴッド、リンク!』



 掛け声と共にジェットブレイザーがライフルをシールドに接続して投擲すると、シールドはカオスプライムの背部と合体し、ジェットエンジンが点火してカオスプライムが空中へと舞い上がる。
 ジェットエンジンを分離するとカオスプライムは空中で半回転しビークルモードに変形すると、後部が半分に別れて展開し腕となり、上半身を形成する。
一方、ジェットブレイザーもビークルモードとなり、機首が三方向に展開してジョイントが露出すると、カオスプライムと合体する。ジェットエンジンが腰後方に接続されると共に展開した腕から拳 が飛び出し、最後に頭部が現れ――その瞳に赤い輝きが宿る。



「尊き誓いを心に秘めてっ!!」

流星 ほし の絆で未来を創るっ!!」

『混沌合体、カオスコンボイ――いざ、出陣っ!!』





「……ほぅ?貴様が“ 守る者 コンボイ ”の名を名乗るか。」


 両拳を胸の前でぶつけ、大きく見得を切ったその姿に――デスザラスは、笑みを浮かべつつユニクロン軍を叩き潰していた。


「……柄じゃないのは分かっているがな。俺にだって守りたいモノはある……それを守る為なら、この身に宿る“破壊”の力を――“守る”力に変えてやるさ。そんなにおかしいか?」

「いや?ちょうど似たような理由で名乗っている奴を知っているんでな……ついつい“ そいつ マスターコンボイ ”と被って笑みが浮かぶんだよ。」

≪確かに楽しそうですね。私にも、あなたの気持ちが伝わってきます。≫

「――まぁいいさ。それより今は……こいつらを潰すぞっ!!いいな、小僧っ!!」

≪……あぁ、任せろっ!!≫


 そして、デスザラスとカオスコンボイはユニクロン軍へと向き直り……その中へ、突撃していった。






「……ってこらぁっ!?私を忘れるなぁぁぁぁっっっっ!!!!」



 ――いろんな意味で置いてきぼりにされた、ヤミを残して。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




――新暦75年5月




「ヘルブ――ストライクッッ!!



 地面を蹴ると同時に射出されたアンカージャッキの加速力で、紺色の流星と化したジンの一撃が目の前の敵――シャークトロンの腹部へと叩き込まれる。



「もう一つオマケだ――これでも食らってろっ!!」


 さらに、ジンは体をひねると、 某ラーメンの具の名前を持つ忍者漫画に出てくる某技の初動動作のような 蹴りをシャークトロンに叩き込む。それにより、シャークトロンの体は宙へ舞い上がり――激しい音を立て、地面に落下した。



「君っ!!大丈夫なのかっ!?」

「はいっ!!それと、こいつらはロストロギアを狙ってきています……俺が囮になるんで、ロストロギアを貸してください。」

「し、しかしっ!!それでは君が……」

「心配しないでください。頼もしい相棒がいますし……このままあなた達が巻き込まれる方が、俺にとっては問題です。」

「……分かった。だが、死なないでくれよ?」


 調査団の一人からレリックが入ったケースを受け取ると、ジンは地面を蹴ってシャークトロン達をかく乱していく。そのすれ違いざまに、いつの間にかバルゴラの銃身から展開されていた刃によって関節が斬られ、シャークトロン達は次々と崩れ落ちていく。その隙に、調査団と他の護衛達は安全な場所へと避難していった。



「しかし、数が多いなぁこいつらっ!!魔法が使える分、ガジェットよりはマシな気がするけどなっ!!」

≪……だが、こいつらはたしか量産型のはずだ。どこかに、こいつらを指揮しているTFが……≫









「――ピンポンパンポン、大正解っ!!」

「!?ちっ!!」


 バルゴラの呟きに答えてくる声に反応したジンがとっさに後ろへ飛び退くと、さっきまでジンがいた場所にエネルギーミサイルの雨が降り注ぐ。


「……あれはっ!!」

≪――ノイズメイズ。ユニクロン軍のトランスフォーマーかっ!!≫

「なかなかやるじゃねぇか坊主っ!!だが、こっちにも目的があるんでなぁ……そのレリック、渡してもらうぜっ!!」


 ノイズメイズの指揮の元、残っていたシャークトロン達がジンの周囲を取り囲む。だが、ジンはバルゴラを肩に担ぎつつ、不敵な笑みを浮かべていた。


≪……で、どうする気だマスター?≫

「決まってんだろ?こいつらを蹴散らすだけだ。」

「おいおい、たった一人でこいつらを相手にするつもりか?そりゃあ無謀ってもんだぞ?」


 ――確かに、このままシャークトロンやノイズメイズを相手にしていたら消耗しているジンの方が不利だが、それでもジンは笑みを絶やさない。


「……だからどうした?お前らくらいなら、俺達で余裕なんだよ……ごちゃごちゃ言わずに、かかってこいっ!!」

「――だったら、お望み通りにしてやるっ!!」


 ノイズメイズが手を振り下ろすと、シャークトロン達が一斉にジンへと襲いかかる。


(……こんな所で負けていられるか……先生だったら、こんな状況でも諦めなかったはずだっ!!)


 その光景をスローモーションのように眺めながら、ジンの脳裏には彼の師匠である女性――フィーネ・スノウレイドの笑顔が思い浮かぶ。



「なにより―― あの野郎 カオスプライム に負けっぱなしで、死ねるかってんだあああぁぁぁぁぁっっっっっ!!」




 そのジンの咆哮に答えるかのように――左脇に抱えていたレリックのケースから放たれた強い光が、ジンの体を包み込んだ。





「何ぃっ!?まさか……こいつも『ゴッドマスター』だっていうのかっ!?」



 そして、ジンを紺色の光が包みこむとシャークトロン達が光の奔流に吹き飛ばされ――光の中心に、蒼銀のどこか有機的な装甲に身を包んだ細身のTFが現れる。青いバイザーの奥には緑の瞳が輝いており――そのTFは、自分の両手を見つめていた。



「なんだこれ……俺が、TFに……変わった?」

≪だが、あまり状況は楽観できないぞ?軽くスキャンをしてみたが、今のマスターの姿はどうやら未完全らしい。あれだ、 グローイングフォームとかプラットフォーム的な立ち位置だな。

「……わかりやすい説明をどうも。」

「――そして、ペラペラしゃべってくれてありがとよっ!!お前がゴッドマスターだったのには驚いたが、たった一人ならどうとでもできるぜっ!!」



 TFに変身したジンが状況を把握すると、周囲をシャークトロン達が再び取り囲む。どうやら、先程の光では吹き飛ばしただけでロクにダメージは与えられていないようだった。



「……典型的な敗北フラグじゃないか、それ?」

「うるせぇっ!!俺もなんとなくそんな気がしてるんだよっ!?」



 しかし、ポツリとジンが告げた言葉にノイズメイズは大声を張り上げる。そして、シャークトロン達に命令を下そうとして――


















「……確かに、敗北フラグは立ったようだねっ!!」

「ふんっ!!」

「なにぃっ!?」







 飛び出してきた青と黒の影によって、シャークトロン達が撃破されていく光景に驚きを見せた。その影達はシャークトロンを一掃すると、ジンの前に並び立つ。それは、カオスプライムと――ジンが知る由もないが、こなたのゴッドオンしたカイザーコンボイであった。


「カオスプライム!!それと……どちら様?」

「ども〜♪通りすがりのTFだよ〜♪」

「……まぁ、 不幸なすれ違いがあったが 今は味方だ。」

「え、不幸なすれ違いって何っ!?お前、なんかしたのっ!?」

「ハハハハハハハ……うん、こちらにも落ち度はあるんだけどさ……」
 

 カオスプライムの不吉な物言いに、ジンは思わず声を荒らげてしまう。ちなみに、カイザーコンボイとロードキングが止めに入らなければ、カオスプライムはライトフットとレインジャーを容赦なく叩き潰していただろうとは言っておく。


「気にするな、俺は気にしない。さぁ……まずは奴等を叩くぞっ!!」

「いや、すげぇ気になるんだけどっ!?」

「まぁまぁ、あんまり心配事が多いとハゲるよ?」

「頼むから、誰か説明してくれぇぇぇぇっっっっ!?!?」


 ……戦闘中だというにも関わらず困惑したジンの叫び声が響き、戦いが幕を開けてしまった。





































「あ〜、ひどい目にあった。というか、私達よく生きていられたわね……」

「ゆきちゃんとこなちゃんが止めてくれなかったら……うぅ、寒気がしてくるよぉ……」

「……私、なんて言えばいいのでしょうか……少なくとも、かがみさんの自業自得な面もありますし……えぇと、えぇと……」






「……あの阿呆共が……」

≪いったい、何をしてるんですかあの子達は……≫





――余談ではあるが、その頃別の場所に居た関係者達はこんな事を話していたようだ、まる。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




――現在






「エナジーウェポン、フルアームド!!」


 カオスコンボイの叫びと共に、その体から放たれた赤い光がそれぞれ形を取り――右手にはクリスタル状の刃を持つ剣『カオスセイバー』が、左手には赤いクリスタル状のライフル『カオスブラスター』が握られ、さらに左肩にはクリスタル状のシールド『カオステクター』が装着される。


≪って、おいっ!?エナジーウェポンをフル装備なんて何考えてんだっ!!それだと、お前の命が……≫


 しかし、戦力的には強化されたはずなのだがカオスコンボイの中にいるジンは驚きの声をあげる。エナジーウェポンは強力であるが、スパークと人造リンカーコアに多大な負担をかけてしまう為長時間の使用は禁じられていた。一つでさえ負担が大きいのに、全てを装備した状態でかかる負担は――想像すらできない。



「心配するな小僧。ゴッドリンクの影響と、柾木が切ったという“切り札”のおかげでシステムに問題ない……むしろ、こういった形で放出しなければならない程にエネルギーが溢れているっ!!」

≪……分かった。だが、無茶はするなよっ!!≫

「このくらいなら、無茶の内には入らんっ!!はああ あぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

 
 ジンの言葉にそう返しながら、カオスコンボイはカオスセイバーを横薙ぎに振るう。その軌道が光の刃となってユニクロン軍に放たれ――たった一振りで、100体以上のユニクロン軍が消滅する。


≪……はぁっ!?≫

≪通常攻撃でその威力とは、どこのウォーゲームなオメガモンだっ!?≫

≪いや、バルゴラもそのツッコミはおかしいからなっ!?状況的にはあながち間違っちゃいないけどさぁっ!!≫

「まだまだいくぞっ!!……デスザラス、ここは合わせるぞっ!!」

「……フッ、いいだろうっ!!シュベルトノワール、フルドライブだ!!」

≪Explosion!!≫


カオスコンボイの問い掛けにデスザラスは頷くと、シュベルトノワールがカートリッジをロードし、送り込まれた魔力が魔力刃の周囲で荒れ狂い、漆黒と白金の魔法陣が六芒星を描き出す。一方、カオスコンボイがカオスブラスターを構えると、カオスブラスターの銃身が上下に展開、中央のユニットが前方へとせり出し――赤と紺のエネルギーが収束し始める。


≪術式展開!!擬似バレル形成――魔力収束完了!!いつでもいけますっ!!≫

≪こっちも魔力とエネルギーの制御は完了だっ!!≫

「それじゃあ、派手にぶちかますぞっ!!ついてこい、新米コンボイよっ!!」

「そっちこそな、覇道大帝っ!!」

≪「ヘキサ、ヴォルテック!!」≫

≪≪「コズミックノヴァ――グローリーバースト!!」≫≫


 二つの咆哮と共に、雷光を伴った魔力の渦と、螺旋を描く赤と紺の閃光がユニクロン軍を飲み込み――大爆発を巻き起こす!!そして、爆風が収まると――ユニクロン軍は、跡形もなく消滅していた。











≪……駄目か。一時的には退けられたが、ユニクロンを倒さなければ奴等は無限に増殖するらしいな。≫





――だが、その後ろから再びユニクロン軍の影が押し寄せてくるのを眺め、バルゴラは思わずそうつぶやいていた。


≪……だったら、話は簡単だ。ユニクロンは、機動六課やジュンイチさんが相手してるんだろ?そっちは任せて――俺達は、少しでもユニクロン軍による被害を減らすだけだ。≫

「小僧にしては珍しくまともな意見を出したな……」

≪おい、珍しくってどういう意味だっ!?≫

「まぁ、確かにその通りだな……カオスコンボイよ、まだ行けるか?」

「当然だ。そっちこそ、俺の足を引っ張るんじゃないぞ?」

≪だから、なんでお前は大帝相手にそんな偉そうなのっ!?≫

≪……フフッ、面白いですね彼らは。あなたもそう思いませんか、デスザラス?≫

「――まぁ、柾木の奴よりはマシだろうよ。」









「――きぃぃぃぃぃさぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁっっっっ!!!!この“偉大なるヤミ様”を忘れるとはどういう事だっ!?」

「「≪≪自分で言うか、自分で。≫≫」」


≪あぁ、ここにも面白い子がいましたね。いえ……彼女の場合は、可愛いというべきでしょうか?≫



――すると、すっかり忘れられていたヤミの叫びに鋭いツッコミが入る。デスザラスの中のアルテミスは若干ズレた発言をしているが、まぁそこは置いておこう。




「……さて、いい感じで空気もほぐれた事だ……後は、奴等を叩き潰すだけだな。」

「そうだな。小娘、貴様もついてこれるか?」

「だから、小娘言うなっ!?それに、私を嘗めるな……あの程度の敵、私には造作も無い事だっ!!」

「……期待させてもらうぞ?」



 そんな軽口を叩きつつ、三人は武器を構えると――ユニクロン軍へと攻撃を開始した。


















――ここから先の物語は、今はまだ語るべきではないのだろう――

――だが……彼らのその先にはきっと、光輝く未来が待っているはず――

――今はただ、それを信じるしかない――





To be continued...?


























あとがき

……やってしまった、ぱーと2。


6/13日付けの感想お返事を見て、『暴走?大いに結構……なぜなら、こちらも暴走するからなっ!!』と意気込んだ結果がこれだよっ!!しかも、展開的には先行最終回という感じだしっ!?そして、実質的な執筆時間が二日ってどういう事!?なにこのハイペース、その勢いをもう少し他のに回せと自分に言いたい(マテ

……まぁ、それはさておき。


内容的には115話にジン達が参戦していたらというIFと、ジンがトランステクターを入手したエピソードをザッピング形式で纏めてみました。番外編扱いなのは、さすがにこれが本編に組み込まれる事はないだろう……というか、モリビトさんが暴走するにしてももう少しマシな関わり方があるだろうという期待と自分に対するツッコミだったりもします。さすがに、トランステクターまで入手するのはまずいか?と内心ビクビクしています。


ちなみに、今回先行登場したジェットブレイザー……トランステクターからパワードデバイスに変更するかもしれませんが、いずれ登場させる予定です。それと、第1話の方ではカオスプライムを名乗ってない『彼』ですが、『彼』がリンクアップorゴッドリンクする事で初めて『コンボイ』の名を名乗るのは『彼』の設定を考えた時から決めていた事でした。モリビトさんの世界観では『守る者』のみが名乗る事を許される名前という感じなので、いくらオリキャラでも不用意に名乗らせたくなかったのが理由です。能力は激しくチートですが。

さらに余談ですが、カオスコンボイ……元ネタは『マイクロン伝説』の『ジェットコンボイ』です。つまり、 カオスプライム単独のパワーアップ形態 最終形態 が残っていたりします。そちらはAS本編が進んだら出てくるかもしれません……パワーアップ形態はともかく、最終形態がでてくるシチュが思いつきませんが……モリビトさんならなんとかしてくれるはず(エ?


皆様が楽しんでいただけると幸いです……それでは。



P.S.
今回の話しではかがみがうっかりしすぎですが、気にしないでください。カオスプライムにあの台詞を言うキャラは自分の中でかがみしかいなかったんです(原作の『マイ伝』でもコンボイが悪役顔とか最初は言われてましたし、そのオマージュです)。そして、この為だけにカイザーズと絡ませたと言っても過言ではありません(ジェットブレイザーがトランステクターというアイディアよりも先に決まりましたから)。かがみファンの方、もし気分を害されたら申し訳ありません。





管理人感想

 DarkMoonNightさんからいただきました!

 ジンとカオスプライム、その原点がここに! なお話ですか。
 115話のIFでもあるこの話。確かにジンとかいてもおかしくないくらいのオールスターっぷりだったんですけど。今からジン達も登場する形に書き直そうかな?(マテ)

 かがみのうっかり……まぁ、原作でもしっかりしてるようで時折ポカする子だったので問題はないかと。
 いつもいつもしっかりしてるからこそ、こういううっかりが魅力的に見えるものなのですよ、うん(力説)。