「どういう風の吹き回しだ?あんたが手を貸すなんてなぁ……」
「……何が言いたい?」
「いや、単に驚いただけさ。」
「……用がないのなら、さっさと現世へと戻る準備をしておけ。」
「おうよ。こちとらあの腑抜けに喝を入れなくちゃなんねぇしな……それじゃ、またどこかで会おうぜ、破壊大帝さんよぉっ!!」
――目の前に立っていた青いTFの姿が消えると、儂は頭上を見上げ果てしない闇を見つめる。
見ているものが違っていても、儂らは同じものを求めていたのかもしれんな……お前は光を、儂は漆黒の闇を……
次の世でも、我が宿敵は貴様だコンボイッ!!
「――儂の言葉通り、求めていたのは同じもののようだぞ……コンボイ。」
かつて、宿敵に告げた言葉を思い返しながら、儂はそう呟く。
漆黒の闇を力としながら、その心には光を宿すあの少年……“混沌”の名を持つ今のスタースクリームのパートナーとなるだけの事はあるが……
――ならば、お前も往くか?異世界の“破壊大帝”よ――
すると、儂の目の前に光が集まり――プライマスの姿を創りだす。そして、プライマスを象った光はそう儂へと問いかける。確かに、あの“ユニクロンの欠片”は儂達が倒すべき存在だが……
――奴はもはや“ユニクロンの欠片”などではない……放っておけば、いずれ世界を飲み込む存在へと姿を変えるだろう――
「……完全に倒しきれなかった儂達にも責任はあるか……いいだろうプライマス。かつては断ったが、貴様の口車に乗ってやる……だから、この儂に力をよこせっ!!」
そして儂はプライマスに手を伸ばし――光に包まれた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――ッ!?なんだ、この感覚は……?
「ダークコマンダー様、どうかなされましたか?」
「――ブラックアラクニア、ファイバード達の調整はどうなっている?」
「既に洗脳を強化して施していますが……あの者達を投入しなくともよいのでは?アサルトジャガーとシャドークロー、キャプテンシャークとアイアンレインがそれぞれ陽動に出ております。ハルピュイア達だけでもヴェルヌスの回収は行えるはずですが……」
「……いや、なにか嫌な予感がする――いつでも使えるように準備はしておけ」
「は、はいっ!!」
……もっとも、それでも足りないかもしれないがな……万が一の事を考えて、アレも用意しておくか……
とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
とある魔導師と守護者と機動六課の日常・外典
Another strikerS
第11話『激闘、激闘、大激闘!!〜友情合体、ドラゴエクスブレイカー見参っ!!〜』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『えぇ、久しぶりねハルピュイア、 レヴィアタン……でも、今の私は……そうじゃない。』
「そう、今の『私』は――」
「『暗黒の勇者――ダークナイト・ゼロだ(ダークナイト・ゼロよ)っ!!』」
「……ダークナイト……ゼロ……?」
――いったい、何が起きているのかは僕には分からなかった。仮面の人物からは、ヴェルヌスとあのバルゴラとかいうデバイスの声が響いている。
でも、それだったらジン君は……?確か、過剰適合でまともに動けないはずじゃ……
『……あぁ、心配はないわよ?彼の体なら、ちゃんと有効活用させてもらっているから。』
「そうだな……しかし、私がマスターの体を使う事になるとは夢にも思わなかったぞ?」
……えっと、まさか……無理やり 霊子融合
してるのっ!?
『気がついてしまえば、実に単純な話だったわ。私との相性が良すぎてパートナーに影響が出るのなら、 フィルターを通して無理やり相性を下げればいいのよ
。』
「という訳で、私を通してマスターと 霊子融合
する事によりなんとか動けるようになったという訳だな……」
『それと、まだジンの意識は目覚めていないけど心配しないでいいわよ?身を呈してまでマスターを守ろうとした お姫様 が目覚めのキスを施してあげれば、きっとすぐに飛び起きるわ。』
「あのさ、むちゃくちゃ話ずれてるよなおいっ!?つか、お姫様って誰だよお姫様ってっ!?」
フィー、少し静かにしていようか?でも、お姫様って……
〜乙女思考中、乙女思考中〜
ぼぅっ!!
「いやいやいやいやいやいやいやいや無理無理無理無理無理無理無理無理っ!?ま、まだジン君とはそんな関係じゃないしっ!?そりゃ、会ったばっかりだけどなんか母性本能がくすぐられるから可愛いなぁとは思っちゃったよっ!?で、でもそれとこれとは話が別でしょっ!?だ、だいたいえっちぃ事は僕嫌いですっ!!」
「……乙女の妄想全開だな。何を考えたんだいったい?」
『あら、面白いからいいじゃない。』
「クレア……あたしは少し悲しいぜ。」
「――戦闘中に雑談とは、ずいぶん余裕だなっ!!」
「そろそろ――私達の相手をして欲しいわよ?色男さんっ!!」
――っ、忘れてたっ!?
声の方向へと視線を向けると、そこにはエネルギーのチャージを完了させた敵の二人がこちらへと武器を振りかぶっていて……
「テンペスト――ギガクロスッ!!」
「コキュートス――ブラスト!!」
十字の 斬撃と、地面を凍らせつつ迫る砲撃がこっちに襲いかかってくるっ!!
「やれやれ、せっかちな お嬢様方 達だ……」
――でも、その攻撃が僕達に届く事はなかった。
なぜなら、彼が攻撃に向かって手をかざした瞬間――漆黒の闇がまるで盾のように広がって、攻撃を飲み込んでしまったからだ。
「えぇぇっっ!?」
「攻撃を……吸い込んだっ!?」
「まさか……マスターギガトロンの“ 支配者の領域
”と同種の力か!?」
『正解よハルピュイア。私が手に入れたこの力――“ 暗黒の聖域 ”はあらゆるエネルギー系の攻撃を飲み込むわ……もっとも、この手のものに弱点が多いのは当たり前だけどね?』
「確かにそうね……でも、エネルギー系が駄目なら実体武器を使うまでよ?」
「やれやれ……クレア嬢、申し訳ないが少し離れていてくれ。さすがに、接近戦になっては君に傷ひとつ付けずに戦う事は難しいのでね……」
「う、うん……」
驚いたのもつかの間、僕をおろしたダークナイト・ゼロはマントを翻すと、再び騎士達の前に立ちふさがった。
「さて、ここからは私のターンといこうかっ!!」
【――……い、バル……ラ……――】
『さぁ……格の違いと言うものを教えてあげるわっ!!』
【――……お……ヴェル……ス……――】
「フハハハハハハハハハハハハハッッッッ!!」
『フフフフフフフフフフフウフフッッッッ!!』
【――いい加減にしやがれてめぇらぁぁぁぁっっっっ!?!?】
「ぬおっっ!?!?」
『きゃあっっ!?!?』
「……えっと……あれ?」
「……タイミング的に、最悪だろこれ……」
――突然、ジン君の叫び声が響き渡ったかと思うとダークナイト・ゼロは青白い光に包まれて、元の姿に戻る。うん、ジン君の意識が戻った事は喜ぶべきなんだろうけど……
≪マスター、空気を読んでくれ。≫
「バルゴラの言う通りよ。ここは私とバルゴラが大活躍して敵を追い払った後、お姫様のキスであなたが目覚めるシチュエーションでしょ?馬鹿なの?死ぬの?」
「いきなり何を言い出すお前らはっ!?つか、状況がまったく分からな……
「フィィィィィィィッッッッッッッシュッッッッッッ!!」
って、うおぉぉっっ!?」
「じ、ジン君っ!?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「やれやれ、現世に復活したのはいいが……なんで俺の身体はプロトフォームのまんまなんだ?これじゃ、ろくに戦うこともできやしない……ちっ、この惑星じゃオレ様好みのマシーンがそこら辺に転がって
るはずも……」
そんな事を考えながら森の中を歩いていると、なぜかオイルの匂いが漂ってくる。気になったのでその方向へと足を進めると……
「……こりゃラッキーだな。」
目の前にはぶっ壊れた輸送船と、少し離れた場所に置かれた黒いスペースジェットがあった。
――いいねぇ、なかなかオレ様好みのデザインだ。そんじゃま、こいつをスキャニングしてさっさと戦いにいきますか。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――どうも皆さん、一応この話の主人公であるジン・フレイホークです。
さて、いきなりですが皆さんに質問したい事があります……
「フフフッ♪やっぱり、間近でみるとその可愛さがよぉく分かるわぁ……ほんと、あんまり可愛すぎて―― 思わずいじめちゃいたいくらい♪ 」
「……レヴィアタン……お前、そんな趣味があったのか……?」
――誰か、この状況を説明してください。
ちなみに、現在の俺はというと……トライデント状の槍が変形した鞭にがんじがらめにされて、妙に露出度の高い水色の鎧を着けた女の人に頬ずりされてます。そこ、羨ましいとか言うな。当事者の俺からしたら刃物を首筋につけられているような悪寒がさっきから背筋を凍らせてるんだよっ!?というか、この女の人絶対サディストだっ!!
ちなみに、なぜかバルゴラはヴェルヌスが首からかけていたので俺の手元にはなく、完全に手詰まりです。マジで状況がつかめん……あの、そこの緑色の鎧つけた人。お願いだから助け……
※ここからしばらくアイコンタクトです
……すまん、無理だ。というか、君と私は敵だぞ?
あ、無理ですかそうですか――でも、あなたも苦労してるんですねぇ……
分かってくれるか?いや、本当に苦労しているんだ。レヴィアタンはこの調子だし、ファーブニルは……あぁ、あそこでお前の仲間と戦っているTFのゴッドマスターなんだがな?そいつはバトルマニアでこちらの言う事など聞かないし……
なんとなく分かります。
そうか……君とは出会い方が違っていればいい友人になれたかもしれんな?
いえいえ、別に今でも友人になれますよきっと。
……私達は敵だぞ?
関係ないですよ。それはそれ、これはこれです。
――私はハルピュイアという。君の名は?
あ、ジン・フレイホークです。
――これからよろしくな、フレイホーク。
こちらこそ。
「……ちょっとハルたん、なに見つめ合っちゃってるのよ?まさか、この子に惚れちゃったのかしら……?
ダ・メ・よ♪この子は私のペットにするんだから。」
……え、俺ペット扱い?というか、マジでその舌なめずりと狩人のような視線はやめてくれないかなっ!?
≪マスター、安心して囚われのお姫様ポジションになってくれ。なに、心配はいらない。クレア嬢をプリ○ュアのような立派な戦闘ヒロインに成長させて助けに来るからな。≫
「そうね、気合と努力と根性と愛を持って彼女をパワーアップさせるわ。だから、安心してその女の家具ポジションになりなさい。」
「いやいやいやいや、それっておかしいよねっ!?」
「……こいつら、こんな状況でも楽しんでやがる……」
う ん、クレアとイリアスのツッコミが的確すぎて涙が出てくるよ……はは、なんなのこれ?
「じゃあ、そういう訳で私は帰るわハルたん。この子をたっぷりと可愛がりたいし♪」
「――レヴィアタン、お前もか?」
「……TFの方はファーたんが引き受けているし、残りは私達の相手にならない女の子と、持ち主が居ないデバイスにヴェルヌスだけ。だったら、後はハルたんだけでも大丈夫じゃないかしら?」
「……いや、アレを引き受けていると言っていいのか?」
「オラオラオラァァァッッッ!!どうした、その程度かぁっ!?」
「へっ、なかなか歯ごたえがあるじゃねぇか……そうでなくちゃ、楽しめねぇよなぁっ!!」
――どう考えてもバトルマニアです、本当にありがとうございました。つか、エクスブレイカーもなにやってんのっ!?完全にこっちの事忘れてるだろあれっ!!
「……まぁ、命令を遂行すればダークコマンダー様も大目に見てくれるだろう……レヴィアタン、お前は一足先に帰還しておけ。後は私がやろう。」
「りょ・う・か〜いっ♪それじゃあ、一緒に行きましょうか。大丈夫…… すぐにキモチよくしてあ・げ・る♪ 」
うん、わりとマジで命の危険を感じるんですけどっ!?というか、なんでアンタは俺の耳を噛んでんだっ!?そんな趣味はねぇからっ!!
「ジン君っ!!」
「こうなったら、もう一度 霊子融合 して……」
「ダメよ。あなた達では、あの子達に勝つ事はできないわ。むしろ、私の力をフルに使って、ジンを気絶させた上で……」
≪なるほど、どちらにせよマスターを犠牲にする訳だな。わかった、存分にやってくれ。≫
「お前は本当に俺のデバイスかおいっ!?」
≪マスターを気絶させる事でこの状態を抜け出せるのなら仕方がないだろう?それとも、そのまま彼女に連れていかれてSMプレイの方が好みか?まぁ、それはそれで面白そうだから私は構わないが……≫
「――バルゴラ君、もう少し真面目に話そうか?」
≪はっはっは、軽いジョークだよクレア嬢。だから、その私を握る手を緩めてくれないか?いくら頑丈な私でも恋する乙女のパワーには勝てないのだが……≫
「……敵の前だというのに緊張感がないな。まぁ、それもここまでだが…………うん?」
「あら、どうかしたの?」
すると、ハルピュイアはなぜか空を見上げる。つられて俺達も空を見上げると、銀色に輝く有機的なデザインのスペースジェットがこちらへと急降下してくる。そして、そのスペースジェットの上部が反転したかと思うと巨大な砲身が展開され、紫色の光が集まりだし――って、ちょっと待て。
「フュージョニック・ブラスター!!」
『な、なにぃぃぃぃっっっっ!?!?』
そして、紫色の閃光が――俺達へと襲いかかった。またかよこのパターンっ!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――っ、今の光はなんだっ!?
「よそ見してんじゃねぇぞゴラア アァァァァッッッッ!!!!」
「DEATHDEATHDEATHDEATHDEATHDEATHDEATHDEATHDEATHDEATHDEAAAAAAAAAAAAAAAATH!!」
「くっ!?カオステクタァァァァッッッッ!!」
遠目からも分かるほどの巨大な光の柱に気を取られていると、視界を埋め尽くすほどのミサイルの嵐がこちらへと襲いかかってくる。カオステクターを構えながら、俺はガイア・サイバトロン地上基地を守るように立ちふさがった。
「コズミック、フィールドッ!!」
カオステクターを起点に展開された障壁がガイア・サイバトロン地上基地を包みこみ、ミサイルの嵐を防いでいく――まったく、厄介な事になったな。
「おいおい、もうちっと本気を出したらどうだ?――そんな事じゃあ、今の俺達は止められないぜぇ?」
「KILLKILLKILLKILLKILL――KIIIIIIIIIIILL!!」
すると、爆煙の奥からそんな声が響いて――サメのような意匠の胸部と右肩のミサイルポッドが目を引く、海賊のような印象が見受けられるTFと、全身に銃火器を装備し蒸気機関車の意匠が各部に見受けられる鉄のTFが姿を見せる。
こいつらの名は、キャプテンシャークとアイアンレイン。傭兵家業を営むTFの中でも凶悪と恐れられた2人組のTFだが……まさか、プレダコンズに雇われていたとはな。
だが、ある意味では当然か……プレダコンズはユニクロン軍とは違いただ世界に混沌をもたらそうと暗躍している。こいつらにとっては金も稼げて自分達の楽しみである戦闘の狂気をつねに味わえる……最高の環境という訳か。
『カオスプライム、聞こえますかっ!?』
『ちょっと、まずい事になったみたいなんダナ!!』
……アイとライノックスか。他の所はどうなっているっ!?
『スペースブリッジの方も襲撃されているんダナ!!そっちはオーバーロードとギガストームがワイルドジェミナス達と一緒に食い止めてるけどこちらの援軍は無理。プライマルコンボイ達も、足止めを食らっているんだなっ!!』
『ファイヤーマグナス達も出撃準備はしていますが、もうしばらく時間がかかります!!』
……ちっ、予想以上に状況は悪いな……俺一人で、こいつらを抑えなくてはならんとは……
――待て、“俺一人”でだと?
「……くくっ、傑作だなこれは……」
「あぁ、何がおかしい?」
「あぁ、スマンスマン。貴様達に関係はないさ……」
思わず含み笑いを漏らしてしまった俺に、キャプテンシャーク達は怪訝そうな顔をする。キャプテンシャーク達にそう言葉をかけつつ俺はカオステクターを左手に持ち替え、頭上へと掲げた。
――いつの間にか、あの小僧に背中を預けて戦う事に慣れてしまっていたとは……これでは、フィーネに笑われてしまうなっ!!
「――エナジーウェポン・ダブルアームド――ソード&シールド!!」
その叫びと共にカオステクターから光が放たれ――カオスセイバーへと創り変えられる。回転しながら落ちてくるカオスセイバーを右手で掴みとると、俺はその切っ先をキャプテンシャーク達へと向ける。
――ミッドチルダでユニクロンとの大決戦を繰り広げた際、柾木ジュンイチが使用し た“ 究極蜃気楼
”によって、俺達は驚異的なパワーアップを果たした。その際にエナジーウェポンがなんらかの影響を受けたのか、俺は以前よりも楽にエナジーウェポンを使用できるようになった。それからどうにかして複数のエナジーウェポンを使用する事ができないか試していたが……まさか、ぶっつけ本番で成功するとはな。
「さて、ここからは少しだけ本気を出してやる……悪いが、さっさと貴様らを蹴散らさせてもらおうっ!!」
「ほう……いい度胸じゃねぇか。やれるもんなら、やってみやがれぇぇぇっっっ!!」
「KILLDEATHKILLDEATH――KIIIIILL!!」
カオスセイバーとカオステクターを構えて、俺はキャプテンシャーク達へと突撃する。
――小僧、すぐに片付けて向かってやるから……それまで生きてろよ?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「そんなもの……」
「お前をぶちのめす相談に、決まってるでしょうがっ!」
今さら、そんな攻撃が通じる僕らじゃない。あっさりとかいくぐった僕の繰り出したアルトがマスターギガトロンの鼻先を痛打。ひるんだマスターギガトロンを、同じく飛び込んできたマスターコンボイが蹴り飛ばす。
残念だったね、マスターギガトロン!
戦いってのは……ノリのいい方が勝つんだよっ! テンション上がりまくりの今の僕らに、冷静なまんまのお前が勝てるはずないでしょぅがっ!
「そういうことだっ!
さっさと叩くぞ、蒼なg……いや……」
「恭文っ!」
「りょーかいっ!」
迷うことなくうなずく……うん、本当に一切の迷いなく。
自然と動いた。ごくごく当然のように。
そして……僕とマスターコンボイは同時に叫ぶ。
『ゴッド――オン!』
その瞬間――僕の身体が光に包まれた。強く輝くその光は、やがて僕の姿を形作り、そのままマスターコンボイと同等の大きさまで巨大化すると、彼の身体に重なり、溶け込んでいく。
同時、マスターコンボイの意識がその身体の奥底へともぐり込んだのがわかる――代わりに全身へ意思を伝えるのは、マスターコンボイの身体に溶け込み、一体化した僕の意識だ。
《Saber form》
トランステクターのメインシステムが告げ、マスターコンボイのボディカラーが変化する――グレーだった部分が、まるで染め上げられていくかのように青色に変化していく。
それに伴い、オメガが分離――巨大な両刃の剣が真ん中から別れ、二振りの刀となって両腰に留められる。
そして、ひとつとなった僕ら二人が高らかに名乗りを挙げる。
《双つの絆をひとつに重ね!》
「ふざけた今を覆す!」
「《マスターコンボイ・セイバーフォーム――僕(オレ)達、参上!》」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いてててて……い、いったい何がおきたんだ?というか、動けないのによく攻撃が当たらなかったなおい。
「ジン君、大丈夫?」
「……クレア……?」
ふと自分の状態を確認すると、俺は土で出来た狼の背中に乗せられており、その横には 霊子融合
して鎧を見に纏ったクレアが立っていた。
……あの状況で、よくとっさにそんな行動ができたな?
「うん、自分でもびっくりしているよ……」
≪さすがマスター、悪運だけは強いな。≫
「ほんとねぇ。これには私も驚いたわ。」
……おい、そこの馬鹿コンビ。よくもまぁそんな事が言えるな?
≪だが、私は謝らない。ライダーシステムに不備は確かにあった。だが、私は謝らない。絶対に謝らない≫
「そこでお前は 剣 ネタをするなっ!?」
あぁもう、マジで空気読まないなぁコイツはっ!!
「……お〜い、みんな無事か?」
「あ、エクスブレイカーさん。」
すると、装甲を所々焦がしながらも元気そうなキングエクスブレイカーがこちらへとやってきた。さっきの攻撃で少し頭が冷えたみたいだな……よかったよかった。
「……で、なんで少年はそんな格好なんだ?」
「あ、聞かないでください。俺だってよく分かってませんから。」
そういや、さっきのスペースジェットは何処にいった?というか、あいつはいったい……
「――あぁ?なんだこの状況は。これじゃあ、オレ様の出番がねぇだろっ!!」
――すると、森の奥から声が響いてくる。そして、俺達の後ろに姿を現したのは、どことなくこなたのカイザーコンボイに似た印象を持つ……黒いTFの姿だった。
こいつ、一体いつから……いや、いつの間にこの惑星にやってきたんだっ!?
「……ん?誰だお前ら。」
「いや、それはこっちのセリフなんですけど……」
「それに、そのデザインは……もしかして、僕のスペースジェットッ!?」
「お、あのスペースジェットはお前が造ったのか?いやぁ、なかなかセンスあるじゃねぇかお前っ!!このオレ様が気にいるようなデザインなんて、そうそうないんだぜ?」
「は、はぁ……ありがとうございます。」
『クレア、なんかズレてるぞ?』
うん、余計に状況がつかめなくなってきた。というか、アンタは一体誰なんだよ?
「……その声……まさか、マグちゃんかっ!?」
『マグちゃん?』
「……ひょっとして、スピードブレイカーか?久しぶりじゃねぇかっ!!この野郎、ちょっと見ない間にずいぶんカッコよくなったじゃねぇか……もっとも、一番はオレ様だがなっ!!」
「って、なんでいきなりヘッドロックをかけんだよっ!?痛いからマグちゃんっ!!」
「おっと、自己紹介がまだだったな。オレ様の名はゴッドマグナ……
あ、せっかく新しい姿になったんだしどうせなら改名しないとな……よし。 オレ様は黒雷の龍闘士、ドラゴマグナス様だっ!!」
「いい加減離せってっ!!……ったく、相変わらずだよおい……こいつは、ファイヤーマグナスの弟さんだよ。俺達が現役の時は副司令官を勤めてたんだ。」
……ちょっと待て。ファイヤーマグナスの弟って……あ りえないだろっ!?
「なんだ坊主、オレ様に何か文句でもあるのか?そんな格好で喧嘩を売るとはいい度胸してるじゃねぇか……」
「格好は置いといてくれっ!!というか、アンタ自体に文句はないっ!!俺が聞きたいのは……なんでアンタが此処にいるんだ?確か、アンタは……」
そう、もしドラゴマグナスがファイヤーマグナスの弟だって言うのなら……おかしい事が一つある。
だって、ファイヤーマグナスの弟は……はるか昔に、その生命を犠牲にしてファイヤーマグナスを救ったんじゃなかったのかっ!?
「――あぁ、そういう事か。まぁ、詳しい事情はおいておくが……分かりやすく言うなら、腑抜けた馬鹿野郎を殴り飛ばす為にあの世から戻ってきたんだよ。実にシンプルだろ?」
……いや、そんないい笑顔でサムズアップされても、こっちが逆に困るんだけど……
「……それに、殴り飛ばさなきゃいけない奴は他にも居るみたいだしな……まったく、情け無いったらありゃしないぜ。」
――すると、ドラゴマグナスは視線を遠くに向けながらそう呟く。俺達がその方向へと視線を向けると……そこには、ハルピュイア達をかばいながらこちらを睨みつけているファイバード達の姿があった。
その後ろから名残惜しそうな目でこっちをみているあのレヴィアタンとかいう人の事は気にしない。あぁ、気にしないったら気にしないっ!!
「――さぁて、行くぜダチ公。」
「あ?行くって……何すんだよ?」
「何って……決まってんだろ?
――あそこで変な夢をみている仲間をぶん殴る為にやる事ったら…… 合体だぁっ!!」
「……っ、おぉっ!!」
いや、その理屈はおかしい……というか、展開にまったくついていけねぇぞっ!?
『キングエクスブレイカー!!』
『ドラゴマグナス!!』
『リンク、アップ!』
ドラゴマグナスがスペースジェットへと変形しその上にキングエクスカイザーが飛び乗って空高く舞い上がる。すると、ドラゴマグナスのボディが分割されて巨大な四肢へと変形しキングエクスブレイカーの四肢を包みこむ。さらに胸部に炎のようなアーマーが、背中に残された機首が合体し、キングエクスブレイカーの頭部を覆っていたヘルメットが分解・再構築される。
――そして、腕を組んだ巨人は地面に降り立つとその揺ぎ無い眼光でファイバード達を睨みつける。
「友の絆が導く勇気、重ねて生まれる驚異の力っ!!」
「怒りと誇りを刃に秘めて、無限の明日を切り拓くっ!!」
『友情合体、ドラゴエクスブレイカー……
俺達(オレ様達)を、誰だと思っていやがるっ!!』
……なんでだろ、頭が痛くなってきた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――あの小僧がなにやら危機に陥っていたから威嚇の為に砲撃を行ったが……予想以上に威力が高かったな。いかん、もう少し自分の力を制御できるようにし なければな……
まぁ、今はそれどころではない……なにせ、本命のお出ましだ。
「トランスフォーム!!」
儂はトランスフォームして下にあった火山の斜面に降り立つと、腕を組んで上空を見上げる。
すると、先程から儂の後を追ってきていた黒いジェット機から、巨大なランチャーと剣を構えたTFが同じように斜面へと降りてくる。
「――気に食わんな。儂が認めたスタースクリームならまだしも……貴様ごときがコンボイの姿を真似るのはな……のぅ?ダブルフェイスよ……」
「今の私は、ダークコマンダーと名乗っている……できればあなたにもそう呼んでほしいのだがな……メガトロン?」
「……フッ、ならば儂も新たな名を名乗ろう。今の儂は、すべての破壊大帝を超えし者――」
「超越大帝、ベクターメガトロンだっ!!」
(第12話に続く)
次回予告っ!
ベクターメガトロン「フハハハハハッッッッ!!次回はこの儂、超越大帝ベクターメガトロンの活躍を見逃すでないぞっ!!」
ジン「なんかはっちゃけてるよこの人っ!?カオスプライム、この人止めてくれっ!!」
カオスプライム「……いや、ベクターメガトロンは昔から機嫌のいい時はこんな感じだったぞ?」
ジン「マジかっ!?」
ベクターメガトロン「……そういえば、この世界にはかつて“破壊大帝”でありながら今は“コンボイ”を名乗る者も居ると聞く……小僧、そやつの元へ案内せよっ!!この儂直々に、その力を確かめてやろうっ!!」
ジン「いや、だから暴走しないでほしいんですけどっ!?」
第12話「戦いの終わりと新たな始まり〜栄光の流星、ミッドに参上!?〜」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あとがき
メガトロン復活!!メガトロン復活!!メガトロンふっかぁぁぁぁっっっっつっっ!!
……はい、すいません。前回の時点ではカケラも登場予定のなかったキャラを登場させたおかげで、余計に話が延びました。うん、次回で一旦惑星ガイアの出来事は終わらせたいなぁ……セイバートロン星にいる面子にもそろそろスポットをあてたいし、色々絡ませたいキャラもいるし……
鷲悟とかジュンイチとかマスターコンボイとか恭文とかはやてとかビッグコンボイとかね?
ちなみにベクターメガトロンのモチーフは『アニメイテッド』に登場するメガトロンのサイバトロンモード(アニメイテッドではセイバートロン星をサイバトロン星と言ってるので……)です。本当はアースモードを使いたかったんですが……まぁ、そちらはモリビトさんがネタとして使ってくれるはずです、多分。
それでは、今回はこの辺で失礼します。
管理人感想
DarkMoonNightさんからいただきました!
>メガトロン復活!!メガトロン復活!!メガトロンふっかぁぁぁぁっっっっつっっ!!
ゴッドマグナスはどーした(爆)。
……とまぁ、のっけから本編ではなくあとがきへのツッコミでしたが(笑)、何はともあれ新戦士降臨。
しかし事実上のお披露目編なので活躍は次回に持ち越しですか。うまいこと焦らしてくれるものですなぁ。
…………レヴィアタンについてはツッコみません。えぇ、ツッコみませんとも(怖)。