――周囲を木々に囲まれた、少し開けた空間。その中央に、俺は空を見上げて立っていた。



「じゃ、ターゲット生成よろしく。」

『はいは〜い。それじゃあ……いっくよぉっ!!』


 その声と同時に、ゴーレムが10体現れる。もちろん、ただのゴーレムじゃない。

 クレアとイリアスの能力によって創られたこのゴーレムは、原材料が土だというのに硬さだけならばTF並という訳の解らんシロモノとなっている。

 ……まぁ、そのぐらいじゃないと訓練にならないんだけどな。


『ジン、目標は30分以内に敵の殲滅ね。』

『失敗したら、私が1時間ダーリンをしっちゃかめっちゃかしちゃうのでっ!!』

『……おい、少しは自重しないかっ!?』


うん、なんかものすごく嫌な予感がする。こりゃ、さっさと終わらさないと……って、1体3分かよ!?、

 ……いかんいかん、もう時間は刻一刻と少なくなっているんだ……ちんたらしてる場合じゃないっ!!


 気持ちを切り替えた俺は、太腿に装着したホルスターから十字架の装飾が施されたリボルバーと、これまた十字が刻まれた刃渡り15センチ程のダガーナイフを取り出す。



 これが、バルゴラの居ない間の俺の相棒。名前は「レイ・ターレット」と「レイ・カーバー」。

 元々は、アリス姉が予備として持ってたストレージデバイスなんだが……何度か使わせてもらったことがあるので、使い方は分かる。





『……じゃあ、ミッションスタート』

「はいよっ!!」


 ヴェルヌスの声がかかると同時に、俺は地面を蹴って先頭にいたゴーレムへと接近する。そして、ゴーレムに跳びかかるとその胸部へとレオーのサポートをつけた蹴りを放つ。

 すると、ゴーレムの体はどこに爆薬仕込んだと言いたいぐらい派手に吹き飛んだ。














 ……………………はい?レオーにこんな威力あったっけ?





『私と本当の意味で 霊子融合 ソウル・ユニゾン して影響がない訳ないでしょう?
 “力”によるブーストが加わった結果……今のあなたは、魔力を呼吸するのと同じくらい簡単に扱えるわ。』


 すると、ヴェルヌスから通信が繋がる……つまり、恭文並に魔力を運用できるってか?今の蹴りは、それによって魔力を今まで以上に収束できたからの威力と……


 そんなことを考えていると、ゴーレム達が襲いかかってくる……今なら、アレができるかもしれないな。頭が妙に冴えてるし。



 ゴーレムに銃撃を浴びせながら、俺はレイ・カーバーの刃に魔力を収束させていく。




 ……まだだ、もっと薄く……もっと鋭く。

 それに答えるかのように、レイ・カーバーの刀身を太陽のような橙色の魔力が包みこんでいく。



「――はぁぁっ!!」


 頃合いを見て、俺はレイ・カーバーを横薙ぎに振るう。すると、刀身から伸びた魔力刃がゴーレム達を一刀両断していく。






 ……やっと、完成した。

 恭文に土下座までして頼み込んだ結果ようやく教えてもらった斬撃魔法。今まではうまく魔力収束ができずに拡散していたため、「魔力刃を飛ばす」という形でしか使ってなかった魔法。




「……真、ジャック・カーバー」



 って、感激してる場合じゃないな。 さっさと倒さなきゃレヴィアタンに何されるか……分かったもんじゃないしなっ!!








とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜




とある魔導師と守護者と機動六課の日常・外典



Another strikerS













13話『それは、新たな旅立ち?』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「……どうして、こうなったんですか……?」

『げ、元気だしてよ姉さん……』


 あぁ、本当にスクライア司書長達には申し訳ありません。良かれと思ってやったことが裏目に出るなんて……


「あああぁぁぁぁぁっっっっ!?!?どうやって償えばいいんですかぁぁっっ!?!?」

≪落ち着いてくださいマスター。普段のクールキャラはどこに行ったんですか≫


 検索補助用のデバイス作成は、うまくいきました。 当初は 司書の皆さんにもご好評で、もうスクライア司書長の笑顔が見れただけで満足でした。



 ……えぇ、当初は。


 作業能率が上がった分、無限書庫の評判が上がってしまい……それに味をしめた他の局員まで、アホみたいな資料請求をするようになったんです。もうね、自分の迂闊さを呪いましたよ。

 というか、どうして労りの言葉などもなく「あ、能率上がったんだ。じゃあもっと請求しても大丈夫だねっ!!」ってノリの連中が多いんですかっ!?

 司書の方々が、どれだけの苦労をしてるかあなた方は知ってるんですかっ!?

 いっそ、一回資料請求してる側が検索側に回ってくださいよっ!?特に、無茶な資料請求をしている代名詞である某執務官とかっ!!



 ………………フ、フフフフフフフフ………………こうなったら、無限書庫の皆さんを焚きつけてストライキでも起こしますかね?そして、私の謀略をフル活用して無限書庫の待遇改善を……



≪……弟君、早急にこちらへ来て下さい。このままではマスターが暴走します。≫

『うん、すぐに向かうよっ!!』

≪しかしマスター、どうしてそこまで無限書庫のことを気にかけるのです?≫

「……はぃ?」


 カペルの言葉に、私の頭は急速に冷えて考えをまとめていく。

 ……そう言えば、どうして私はそこまで無限書庫に拘るんでしょうねぇ……?いや、あまりに状況がひどかったというのもありますが。


≪ですが、私財を持ち寄ってまで対処するのはいささか度を過ぎているかと≫

「…………そうですね。なら、スクライア司書長が気に入ったということにしておきましょうか。」


 

 まぁ、これは嘘じゃないですしね。さて、ライが来るようですので準備をしなくては……フフフフフフフフフフフッ♪





≪……弟君、どうやら私は判断を間違えたようです。申し訳ありません。≫







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






・前回までのあらすじ

1.バルゴラがぶっ壊れた

2.修理ついでにパワーアップさせたい

3.ついでにレムレースもばーじょんあっぷしようぜっ!!







「という訳で、なんかいいアイディアよこせこの野郎っ!!」

「突然職場に乗り込んできたと思ったら、第一声がそれかっ!?相変わらず自由だなお前はっ!!」

「やだなぁとっつぁん、私はいつだって全力全壊のフルスロットルだぜっ!!」

「とっつぁん言うんじゃねぇっ!?だいだい、お前は俺とさほど歳変わんねぇだろうがっ!!」

「おい、乙女の年齢に触れるのはタブーだろうが?」

「乙女ってタイプかよお前が……」

≪マスター、今 回はレイオに同意だよ。≫

≪右に同じく≫


 こ、こいつら……後で覚えておきなさいよ?












 
 ……さて、話を戻しますか。

 私が今話しているのが姉貴と私共通の友人でもあるレイオ・ガーランド。管理局で教導官をやってるの。

 
 という訳で、本局に居るはずのレイオを訪ねてきたんだけど……なんでだろ?

 どうして「おい、あの筋肉バカのレイオにあんな綺麗な女の人が訪ねに来たぞ?」とか「いったい、どういう関係なんだ……?」って反応がないのさっ!?



「そりゃそうだろ。お前らスノウレイドシスターズの悪名がどれだけ広まってると思ってんだ?
 若い奴らならいざ知らず、ここに居る連中はお前のこと 残念な美人 としか認識してないぞ?」

「ちょっ!?そりゃないでしょっ!!」


 確かに、若い頃はちょっとヤンチャしたけどさぁっ!?むしろ、姉貴が居た頃は私ストッパー役だったんだからねっ!?なんなのよこの扱いはっ!?


「まぁ、お前の風評は置いとくとして……なんで俺んとこ来たんだ?」

「いや、本職の教導官ならいろいろアイディアあるんじゃない?……特に、上にはNG出された奴とかさぁ?」

≪ちょっと待て、なにやら非常に嫌な予感がするんだが≫

≪奇遇だねバルゴラ、私も嫌な予感がするよ?≫


 そう、レイオの元に来たのはそれが理由。

 教導隊はあくまで管理局に所属しているから、上層部の意向に沿わない訓練や新装備開発はNGが出される。その中には、教導官が現状を打破する為に必死に考えたものだってあったはずだ。


「せっかく考えたアイディア、日の目を見なきゃもったいないでしょ?この際だから、使えるものは全部使わせてもらうわ。」

「――なるほど、面白そうなこと考えるじゃねぇか……おい、誰か廃棄案の資料持ってこいっ!!日頃の鬱憤、一気に晴らすぞっ!!」




 ……さぁってと、暴れるわよ?



≪………………私はいったい、どうなるんだ?≫




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 ……うん?なんか今、嫌な予感がしたような……

 訓練が終わった後、俺は妙な悪寒に体を震わせる。おかしいな、ヴェルヌスの設定した制限時間内に終わらせたんだが……



「けれど、ジン君は相変わらずすごいね?僕も、もう少し強くならないとなぁ……」


 ……いや、クレアはそのままでいいです。切実に願います。


「ランスロットは戦闘経験が欠けているからな……その点をカバーすれば、多彩な攻撃を繰り出せる分厄介な存在になりそうだな。」

「おい、なに冷静に分析してんだ。お前、少し前まで敵だっただろうが」
 
「ダメだよジン君?今のハルピュイアは僕達の味方なんだから、そんな言い方しちゃ……めっ!!」


 え、なんで俺が悪い雰囲気?今の、ただのツッコミだよねぇっ!?


「……いや、ランスロットとは主にレヴィアタンへと対応と苦労で意気投合してな……?はぁ……」

「あ、ゴメンナサイ。」


 まさか、意気投合した理由がそれだったとは……うん、ハルピュイアが心なしか煤けてるようにみえるし……


「もう、ダーリンったらハルたんのことイジメちゃダ・メ・よ?」

「男の風上にも置けないわね。」

「いや、お前らはもう少し自重しろ、な?」



 誰のせいで2人が苦労して ると思ってんだおい。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














「まずは、君達がこのプレダコンズの元へ集まってくれたことに感謝する。」

「いいってことよ……俺らは所詮戦闘狂いの傭兵だ。」

「さぁ、遠慮すんなよ大将……戦場は何処だ?」

「まぁ、そう慌てないでくれビーストファングの諸君。」



 ――傭兵団「ビーストファング」。彼らはより強さを求めた結果、『獣人』としての姿を持ったTFだ。

 知性と野生を合わせ持つが故に戦闘能力は高いが、その強すぎる闘争本能が災いし何度も種族間で戦争を行い、わずかに生き残った者は傭兵として戦場を求めている。


 私の目の前に居るのは、ビーストファングを率いる長である、竜人型TFのガリューンと、ライオン獣人型TFのブライオンだ。そして、彼らの側近であるTFが何体か。

 彼らが傘下に入ったことにより、いずれプレダコンズの元にはビーストファングの全戦力が結集することになる。

 ……これで、戦力の補強は出来た。こういった戦闘狂は、相応の戦場さえ用意すればこちらの命令を聞いてくれるからな……使いやすいというのもある。

 そして、 傭兵団の中でトップである2人がこの場に居るということが、 私にとっては都合のいいことなのだ。



「……さて、ガリューン君にブライオン君、1つ頼みたいことがある。」

「ん、なんだ?」

「実は、私の配下に君たちとぜひとも戦いたいという輩が居てね……1つ、お手合わせを願いたいのだよ。無論、報酬は支払おう。」

「ほぅ?……そいつら、強いんだろうな?」

「もちろんさ。我がプレダコンズにおける精鋭の中でもトップクラスの腕前だ……むしろ、君たちが敗北してしまうかもな?」

「おもしれぇっ!!さっさとそいつらをここに連れてこいっ!!誰に喧嘩を売ったか……思い知らせてやるさっ!!」


 すると、案の定私の挑発に乗ったガリューンとブライオンは武器を構える。その顔には、強敵と戦えるという高揚感が浮かんでいた。


 ……さて、と。



「――2人とも、あまりやり過ぎるなよ?」

「『もちろんですよダークコマンダー様」』

「俺は分かんねぇなぁ……なにせ、これを使うのは初めてだからよぉっ!!」


 そして、私の横に2体の魔神が現れる。

 1人は、 X カイ の操るオメガルファー。もう1人は……ファーヴニルに合わせて調整したギガンティックテクター、「クリムゾンガイスト」。

 2体の魔神はバイザーの奥に隠れた瞳を輝かせると、ガリューンとブライオンへと歩み寄る。


 さて、どうなることやら……ガリューンの大きさはオメガルファーに引けを取らないとして……ブライオンの方は大型TFとはいえ、クリムゾンガイストと比べるといささか小さいしな……?


「フッ、我々を甘くみるなよっ!?いでよ、ブルーガンダー!!」


 すると、ブライオンの掛け声と共に転送陣が現れ、巨大な青い龍が現れる。


「我が魂よ、今こそ1つにっ!!ヘッド、オンッ!!」


 そして、ブルーガンダーと呼ばれた龍が胴体と四肢を形成し、ブライオンが胸部へと合体する。


「ビーストファング格闘王!!ダイガァァァ、ライオォォォォンッッ!!」


 ……なるほど、ブライオンの種族はリンクアップに似た能力を持っているのか。ならば、思ったよりも楽しめそうだな。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ――早いもので、一週間がもう過ぎてしまった。




「総員、敬礼っ!!」


 惑星ガイアでは、ガイア・サイバトロンによる親善交流団を迎える式典が行われている。そして今、あちらの代表とプライマルコンボイ、ファイヤーマグナスが挨拶を交わしていた。


「ガイア・サイバトロン移民船団イグザイルス防衛部隊・スペースガード4代目隊長、ヒートロディマスであります。今は亡き初代隊長、ブレイブロディマスの意志を継ぎ、只今帰還しました。」

「そこまで畏まらなくてもいいぞヒートロディマス。スペースガードは今や独立した組織だ。我々も、対等な付き合いをしようじゃないか。」

「はっ!!光栄であります。」


 ……おい、クレア。そう言えば気になっていたんだが、ブレイブロディマスとは誰だ?ファイヤーマグナスからは、移民船団防衛を任されたのはマグナロディマスというTFだったと聞いているが……


「あぁ、そのことですか……マグナロディマスが惑星ガイアに残ったTF達の勇気を受け継ぐ者として、スペースガードを正式に発足させた際に改めて名乗り始めたと聞いていますよ?」

「なるほど……いや、感謝する。」

「それほどでも。」


 クレアへの質問を終え、俺は改めて特設舞台に立つ人物を眺める。移民船団の代表として、ヒートロディマスの横に並ぶ人物――







「では、私も自己紹介を。移民船団イグザイルス中央政府情報部所属、アレクサンドラ・ヴィーノと申します。気軽にアレクサとお呼びください。」








 ――それは、『私』の記憶の中にある少女、アレクサと瓜二つだった。















(14話に続く)

















次回予告っ!






ローリ「惑星ガイアって自然が多いのはいいんだけど……なんだか慣れるのに時間がかかりそう。」

コビー「まぁ、環境が変わっちゃうしね……こればかりは、しょうがないよ」

バド「でもさぁ、なんだか面白そうじゃん?探検とかしようよ探検とかさぁっ!!」



14話「戸惑う2人〜好奇心は、猫をも殺す?〜」















あとがき


という訳で、第二部のスタートですが……うん、短いなっ!?(汗

キャラクターの特徴もいまいちつかめてない連中が多いし……出し切れてない連中も多いし。リハビリも兼ねてじゃんじゃん動かさねば。

まぁ、のんびりとお楽しみください。






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 ムーン、ビルドボーイ……どう?


「なんとか調整は済んだムーン」

「でも、本当に使うんですか?『ゴッドゼノン』も『ダイナドラゴン』も、プライマスとユニクロンの戦いに乱入したときぐらいにしか使わなかったじゃないですか。」


 ……私の第六感が告げてるの。もしかしたら、世界の存亡をかけた大きな戦いが始まるかもしれない。
























 だから……できることは、全部やっておかなくちゃね。






(終わり)


管理人感想

 DarkMoonNightさんからいただきました!

 『とまコン』本流参戦に向けて準備の進むジン達。
 その一方でレリスさんは無限書庫に惨状にキレかけているようで……とりあえず、ユーノ先生の新たな春のお相手ってことでふぁいなるあんさー?

 そしてカオスプライムは“向こう側”の想い人のそっくりさんと対面。あー、そりゃそうなりますよね。
 これはまさかフラグの予感? ジン、早く相手見つけないと相棒に先越されるぞ(ニヤリ)。

 最後にいろいろ名前が出てきてますが……
 ガリューンにダイガライオンにゴッドゼノンにダイナドラゴン……うん、ツッコみませんとも(苦笑)。