15話『激戦!!ストライカーVSストライカー!!』













「プライマルコンボイ司令官、移民船団の受け入れ先についてなのだが……」

「うむ、当面は月面基地を経由して惑星ガイアに降り立ってもらう必要があるな。」

「残念なんだけど、今の惑星ガイアは大勢の人数を受け入れるには居住拠点が足りなすぎるんダナ。
 親善交流団のみんなも、うちの面子も頑張って建設中だけど……移民船団が来るまでには、間に合いそうもないよ。」

「いえ、その点については了承しています……実は中央政府の方から、居住区建設用の人員を派遣するという報告がありました。その点については、お任せください。」

「……そうか、助かるよヒートロディマス。」

「いいえ、こちらこそお役に立てて光栄です……アレクサ君、スタッフの様子はどうかね?」

「はい……体調を崩した人もいますが、皆さん順調にこちらに馴染んでいます。この様子だと、いずれ行われるであろう他の惑星との交流も問題ないようです。」

「そうか……それで、ミッドチルダに招待された子供たちの方はどうだ?」

「そちらも問題ありません。定期的に報告が来ていますが、充実した生活を送っているようです。」






 ――私たちが惑星ガイアに訪れてから、2週間ほどが過ぎた。

 今は移民船団に残った住人の受け入れ体勢を整えるため、一丸となって準備を行なっている最中だ。


 ミッドチルダに行ったローリたちのことも心配だけど……それよりも、自分にできることをやらなくちゃね。





 あ、そういえば――


「プライマルコンボイ司令、私事で申し訳ないですが……カオスプライムさんについて何か知りませんか?」

「ん、彼がどうかしたのかね?」

「はい……なぜだか分かりませんが、どうにも避けられてるような気がするので……」



 それは、記念式典の後ガイア・サイバトロンの皆さんが開いてくれた歓迎会に出席したときのことだった。

 異世界の出身というフレイホークさんとカオスプライムさんに挨拶に行ったのだが……フレイホークさんはすぐ打ち解けてくれたのに対し、カオスプライムさんの方は、初対面にも関わらず『壁』を感じたのだ。

 もっとも、だからこそ印象に残ったのだけれど……私になにか問題があるのなら、早めに改善したいと思うし。




「……済まない、心当たりはないな。第一、彼が初対面の人間にそこまで距離を置くとも思えないのだが……」

「そうですか……ありがとうございます。」





 うーん、となると直接カオスプライムさんに聞くしかないのかなぁ?でも、彼は今ミッドチルダだし……





「アレクサ君。私とプライマルコンボイ司令は近々、ミッドチルダに赴いている親善交流団の視察に行くつもりなのだが……一緒に行ってくれるかね?」

「……え?」

「問題があるというならば、今後のためにも早めに改善しておいた方がいいだろう。妹さんの様子も見た方がいいだろうしな……」

「…………ヒートロディマス隊長、ありがとうございます!!」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「『やっほータランスちゃん、遊びに来たよー」』

「あ、いらっしゃいっす。ちょうどお茶が入ったところっすから、一緒に飲むっすか?」

「……あんた、その顔でどうやって飲むのよ?」



 ……ダークコマンダー様に命じられて、私ことブラックアラクニアと X カイ はタランスが作り上げたプレダコンズの基地に赴いていた。

 ちなみに、アサルトジャガーとファントムクローは別プラントにおいて量産型TFの調整を行なっていたりする。

 ノイズメイズたちが使っていたシャークトロンに、私たちが作ったワシ型TF「ナイトイーグル」にジャガー型TF「バスタークロー」、さらにはノイズメイズたちのクローンにスカ何とかって奴のガジェットなど、地味に戦力が多いのでそれにあわせて生産ラインを整える必要があるのだ。

 私たちがここに来たのも、クロスフォーマーの連中が企んでいる計画が成功するように(まぁ、失敗してもこちらに損はないからいいのだけれど)戦力の一部を運んできたのが一つの要因だ。




「……ところでタランス、『アレ』の調整はどうなっているの?」

「あぁ、『アレ』っすか?ダークコマンダー様に言われた通り、性能の120%を引き出せるようにしてあるっすよ?なんなら……ほら、ポチッとな」


 私の質問にタランスが答えると、壁際に設置されていた大型モニターに画像が映し出される。

 力強さを感じさせる四肢に巨大な翼、鋭い爪と嘴……地球でいう『グリフォン』の姿をしたそれは、私の目から見ても完璧な姿であった。


「どうっすか?ハルピュイアの花嫁衣裳としてはばっちしっす!!」

「ホント、惚れ惚れする出来栄えね……わざわざ、ハルピュイアに渡すのが惜しいくらいに。どうして、ダークコマンダー様はこれを使わないのかしら。」

「そりゃ、専用機として作ったトランステクターなんて邪魔でしかないからじゃないっすか?それに、アラクニアはハルピュイアの教育係っすよね?」

「それとこれとは話が別よ。あの子たちのことは可愛く思っているけれど、敵に塩を送ってどうすんのかって聞いてるのよ。」




 ……そう、ハルピュイアもレヴィアタンも既にプレダコンズには居ない。あの子たちは今、ガイア・サイバトロンの連中と一緒にいる。

 ダークコマンダー様に深いご考えがあるのは分かっているけれども、これほど強力な兵器をみすみす敵の手に渡すのは……技術者として、納得がいかない。






「『そんなの、簡単ですよ。僕もファーヴニル先輩もこいつよりはるかに強い力を持っているんです……
  ……使えない兵器を使えるようにするくらいなら、すでにある兵器を強化する方向でいきたいんですよ。」』



 すると、突然 X カイ がそんなことを言い出す。



「『それに、ハルピュイア先輩には迷惑もかけましたし……ちょっとしたプレゼントということにしておきましょうよ。


  ほら、敵は強い方が楽しいでしょ?フフフ……楽しみだなぁ」』







 そして、抑揚のない声で笑う X カイ は……ひどく、不気味だった。










とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜




とある魔導師と守護者と機動六課の日常・外典



Another strikerS












15話『激戦!!ストライカーVSストライカー!!』







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「それじゃあ、張り切っていこう か!!」

「へいへい、お手柔らかにお願いしますよ?」

「え、何言ってるのフレイホークさん?いくら模擬戦でも、やるからには全力全開だよっ!!」




 ……なぜかすごく張り切っているスバルを余所に、俺は蜃気楼が変化したバルゴラの新しい体――になる予定のデバイスに目を向けた。

 見た目としては、バルゴラの砲身とストックがなくなった代わりに一回り大きくなった形だが、これだけじゃあ戦闘ができるような代物ではない。ぶっちゃけ、今はただの箱だな。

 ジュンイチさん曰く、「教導隊からの依頼に合わせて多目的ツールとしての面を重視した」ためにユニットを交換して状況に対応するデバイスらしいのだが……肝心のユニット部がまだきちんと仕上がってないらしく、今回は蜃気楼にあらかじめ入力されているユニットしか使えないとのことだ。

 それだけでも十分とは思うんだけど……とにかく、試してみるか。


「それじゃあ蜃気楼、ユニットを展開してくれ。」

≪了承しました。それでは、Cユニットを展開します。≫


 蜃気楼が俺に答えると共に、蜃気楼の両端からメカが飛び出して音を立てて変形していく……ふと思ったが、デバイスの変形ってすごいよな。形態さえ登録しておけば、質量保存の法則とか無視なんだし……

 と、そんなことを考えている内に蜃気楼の変形が終わり――















 エンジン音を唸らせて、勢いよく刃を回転させる武器が展開された。















「…………蜃気楼、これなんだ?」

≪おっしゃる意味が理解できません。見ての通り、 チェーンソー です。≫


 うん、それは分かる。けどさぁ、どう見ても対人戦の武器じゃあないよなぁっ!?ほら、スバルなんか冷や汗流してるぞっ!?

 いくら非殺傷設定がされているといっても、絵的にもヤバいから(どこの殺人鬼だって感じだしな)他のユニットに切り替えてくれ。


≪分かりました。それではRユニットに切り替えます。≫


 蜃気楼の声と共に、チェーンソーが内部へと引っ込んで再びユニットが展開されていく。こんどは、ギラギラと輝く巨大な杭に後部に展開された大型のリボルバーマガジン……


「って、今度は パイルバンカー!?」

≪ちなみに、赤い方の古き鉄にインスパイアされたユニットとなっております。正式名称も、リボルビングバン……

「他にはないのかよっ!?」

 ……残されているのは、Dユニットだけですが?≫

「ちなみに、それはどんな武装だ?」

≪ドリルブースターユニットです。開発者曰く、『これで天元突破も簡単にっ!!』というのがコンセプトだそうで……≫


 よしスバル、模擬戦は一時中止だ。ちょっくらジュンイチさんに文句言ってくる。


「わかったよフレイホークさん。生身でそれらと戦うのは遠慮したいねぇ……」




 あ、言いにくそうだからジンでいいぞ?





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「……ジュンイチさん、なにか言い分は?」

「下手人なら、すでに オシオキ しておいた。
 ったく、いつの間に俺に気付かれないようデータをすり替えたんだか……」


 そういう ジュンイチさんが後ろを指さすと、そこには 悪ノリしそうな3人 アリシアとこなたとあずささん がまっくろ焦げで地面に転がっていた。

 ……なるほど、シャーリーは無罪か。


「なんなのその認識はっ!?そりゃ、私だって試したいとは思ってたけど……さすがに模擬戦ではやらないよっ!?」


 いや、だってねぇ……というかほら、みんな見てみなよ?ドン引きしてるから。


「僕はすごく笑えないんだなぁ…………」

「まぁ、ジンがあれをツッコミに使わないことを祈るしかないじゃん?」

「使われたら、オイラたちが真っ先に被害受けるけどね……」

「とりあえず、ジンは怒らせないようにしねぇとなぁ……」

「……そうだな。あれはヤベェぜ。」


 そして、はや……じゃなかった、ハインラッドは顔を青くしながら若干震えていたり、チータスたちも顔を引きつらせている。


「しかし……ユニットを交換して状況に対応するか。コンセプトとしてはなかなかのものだが、使い手が追いつけるものなのか?」

「その心配ならいらないよ。ジン坊はそこら辺フィーネの奴に鍛えられてるからね。」


 そんな中、いち早く再起動したマスターコンボイの疑問に答えたのは、ヒロさんだった。
 というか、フィーネって……確か、ジンの保護者兼魔法の師匠人だっけ。


「ジン坊の奴、魔導師としての才能はなかったけどデバイスとか武器とかの扱いだけはすぐ覚えたからなぁ……
 なのはちゃんたちの教導がベリーイージーモードに見えるくらいひどかったぞ?」

「ど、どんな訓練ですかそれ……?」

「そうだなぁ……例えるなら、魔法を習いたての子が、ガチ状態のやっさんやヒロと模擬戦するぐらい?」

『……あぁ、なるほど』


 サリさん、少しお話しよっか?というかそれ、サリさんも当てはまるでしょうが。

 ……って、いつの間にかジュンイチさんジンの所に行ってるし。


「ふむ……それよりエリオたちを見なくていいのか?なかなか面白いことになっているのだが。」


 すると、イクトさんがモニターを見ながらそうつぶやく。それにつられて僕らがモニターを見ると……たしかに、面白いことになっていた。




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「どうした少年……その程度か?」

「いいえ……まだまだ、これからですよっ!!」



 ――僕が振るうストラーダと、ハルピュイアさんの持つレイピアが激しくぶつかり合う。
 いろいろ動き回っている内に屋内での戦いになっちゃったから、以前マスターコンボイ兄さんに教えてもらった戦い方を試していたりするけど……そんなことは関係なしに、ハルピュイアさんは強い。



「しかし、驚いたな……得物の違いこそあれ、君と私は戦闘スタイルがよく似ているっ!!」

「えぇ、僕もびっくりしましたっ!!けれど……だからこそ、あなたには負けられないっ!!」

「ふっ、ならば少年……私の速さについてこいっ!!」

「いいえ……ついてくるのは、あなたの方ですよっ!!」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「いぃっっけぇぇぇっっっっ!!」

「くぅっ!?」



 クレアさんが操るTFのようなゴーレムの拳から逃げ回りながら、私はこの状況を打破する方法を必死に考える。






 ……やっぱり、一人でも戦える力は必要だ。
 
 今まではみんなをサポートしてるだけ でよかったけど……これからは、そうもいかなくなるから。
 
 けれど、今は――












  ――蒼穹を走る白き閃光、我が翼となり天を駆けよ!


「来よ、我が竜フリードリヒ!
  竜魂召喚!」

「グギュルァアァァァァァッ!」



 ――目の前のことに、集中しようっ!!



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氷結の舞踏 フリージング・マスカレード !!」

「くっ!!」


 空中から襲いかかってくる氷の雨を時に撃ち落としつつ時に避けながら、私は必死にあのレヴィアタンとかいう奴に銃撃を浴びせる。

 ……というか、なんなのかしらこれ。なんか、攻撃に妙な 怨念みたいなの を感じるんだけど?



「え〜とねぇ?なんだかあなたを見てると、ダーリンが取られそうな気がするのよ。なんというかこう――



















  元祖ヒロイン的な意味で?」

「いったい、なんの話よっ!?」






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 ……それからなんやかんやあったのち、模擬戦は無事終了した。

 あ、どっちが勝ったとかそういうのは気にしないでね?あくまで模擬戦だし、パワーバランス的な意味で明言するのも怖いし。

 まぁ、フォワード陣にとっては色々と得た物がある模擬戦になったのだろう……ティアナを除いて。




 うん、僕もあのエロリストには触れたくないのよ。だから察して?



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「なるほどなるほど、ジュンイチもなかなか粋な仕事をするわねぇ……」

≪うん、マスターに任せるよりははるかにまともに出来てるね。≫

「……レムレース?」

≪だが、事実だろうに≫


 こ、こいつら……本気でマスターを敬わないデバイスたちねぇ……いや、バルゴラは私のデバイスじゃないけども。



 ――さて、私が今何をしているのかというと……ジュンイチから送られてきた、新バルゴラの設計図に目を通していたのだった。

 いやはや、教導隊から依頼という形になったときはどうしようかとも思ったけれど……これなら、ジンの力を最大限に発揮できると思う。

 なんだかんだで、以前ジンが使っていたバルゴラは機能を制限されてたしね……


≪だが、問題はこっちだろう……これは明らかに、ジュンイチの手によるものではないぞ?≫

≪そうだよねぇ……どちらかというと、マスターとかが考えそうなものだよねコレ。≫

「うっさいわよアンタたち。」


 そして、私は『もう一つの』設計図の方へと視線を向ける。そちらも新型バルゴラの設計図なのだが……さっきの奴とは、まるっきり別物だ。


 ジュンイチが作ったと思われるものが『多目的ツール』として特化してるならば……もう1つの方は、『複合武器』として特化したもの。

 けれど、こちらの方がバルゴラの系譜としては納得がいく……でも、どうしようかし らねこれ。廃棄するにはもったいないんだけれども?


≪なら、ジュンイチに確認した方が……

「よし、とりあえず師匠のところにもっていくか」

 ……聞いてないな、おい≫

≪うん、さすがマスターだね。あんまりにも普段どおり過ぎて涙がでちゃいそうだよ。≫









 よーし、待っててねジン。ぜったい、アンタにぴったりなデバイスを作ってみせるからっ!!
























≪…………別に、君が作るわけではないだろう?≫


 バルゴラ、うっさい




(16話に続く)




































次回予告っ!













ジン「で、次回はどうなんのさ?」



カオスプライム「時間軸としては、お前たちが休暇をとっている頃になるらしいぞ?」



ジン「……なんだか、不安だなぁおい」







16話「休暇の裏側……そして、芽生える想い?」
































あとがき


という訳で、16話でした。
激戦とかタイトルにしてる割には、バトル要素が少ないような気もしますが……まぁ、仕様ということで(マテ





管理人感想

 DarkMoonNightさんからいただきました!

 アレクサを意識しまくりのカオスプライムが個人的にツボ。
 フラグか!? フラグなのか!? やけぼっくいに火がつくのか!?(並行世界の別人やっちゅーねん)

 そして着々と復活の時が近づくバルゴラ。
 華々しい復活劇、期待しています……活躍的な意味でも、ジンいじり的な意味でも(笑)。