「どうするつもりよ!?
あれだけキメて登場してきたんだから、何か手はあるんでしょうね!?」
「オレにはないっ!」
「はぁっ!? 考えなしに飛び込んできたっての!?」
「仕方ないだろ! 考えてたらやられてたんだぞ、お前っ!」
まぁ……安心しろ。
言ったろ? “オレには” 手はないってさ。
「なずな、こっちだっ!」
「え――きゃあっ!?」
説明している時間はない。なずなを引き寄せ、レオーを使ってのジャンプでその場を離れて――
「エナジー、ヴォルテクス!」
「ゼロブラック――Fire!」
オレ達を狙って集まってきた河童なんて、 マップ兵器 の格好の的でしかない。マスターコン ボイとジュンイチさんの同時砲撃で、あっという間に薙ぎ払われた。
「よくやった、ジン!
オトリをやらせたら世界一!」
「ンな実績ないですからね!?」
マスターコンボイと二人でやってきたジュンイチさんにとりあえずツッコんで――
「もう大丈夫だから、離れなさいよっ!」
「ぶっ!?」
なずなに殴られた。しかもアゴを思いっきり。
みぃ、ジンもフラグ乱立なのですか?これは、すっごく面白そうなのです♪
……うん、1人で猫かぶってるのもむなしいからやめておくかしら。本来の私のキャラはミステリアスなクールビューティーなんだし。
あぁ、読者の皆さんには説明してなかったわね。私たち“ 霊子生命体
”はパートナーとの感覚共有が任意でできるのよ。
ジンの記憶を読んでティーセットを持ち込んだり、隠しておきたいエロ本なんかの場所を知ってるのはその応用ね。
まぁ、ほとんどイリアスと一緒にいるクレアや、“ 霊子生命体
”と分子レベルで融合しているレヴィアタンたちは特に使う必要がないから気にしてないしね……
それに私が積極的に使ってる理由は、 ジンをからかうためのネタ集め
にすぎないわ。あとは、見てて面白いからね。
けれど……また面倒なことに巻き込まれてるわね彼らは。さっさと解決してもらわないと、私が温泉楽しめないじゃないのよ……
「ヴェルヌス、こんな所で何をしている?」
「……みぃ、見てわからないですか?チェスの棋譜を解いていたのですよ。」
「だったら、ちゃんと椅子とテーブルがある場所でやればいいだろう?なんで自販機の上にいるんだ……
ネコか貴様は?」
そんなことを考えながらチェスの駒を動かしていると、たまたま通りがかったカオスプライムが額を抑えながらそんなことを私に問いかけてくる。
「こういった場所の方が、落ち着いていろいろ考えられるのですよ。にぱ〜♪」
「……前から思ってたが、貴様のその語尾や恰好はどうにかならんのか?というか、どこでそんなのを覚えてきた。」
「あぁ、これですか?
プレダコンズで実験台になってた頃に、タランスが 研究と称してプレイしていた
ひ○らしやうみ○こというゲームを参考にした――って、どうしました?」
「………………いや、天才となんとかは紙一重という格言を思い知らされただけだ。」
まぁ、それには同感するわ。タランスの奴、ほんと自分の趣味や欲望を丸出しだもの。
「あ、居た居た……カオスプライム、ちょっといいですか?」
「む、どうしたエアラザー?」
すると、通路の向こうからエアラザーが歩いてくる……ふむふむ、何か面白そうな気配がするわね。
「実は、プライマルコンボイたちが惑星ガイアから抜き打ちの視察に来 たんですよ。
なので、引率の代表となっているカオスプライムにも顔を出してほしいとアレクサさんが――って、カオスプライム!?」
「俺は用事ができたから、適当にクレアあたりでも代理にしておけっ!!」
……アレクサという名が出てきた瞬間、カオスプライムはエアラザーが止める間もなく脱兎のごとく逃げ出した。
フフフ……そうは問屋が卸さないわよ?こんな面白そうなこと、逃してなるものですか!!
「―― 暗黒の聖骸布 」
「ぬおっ!?」
私が指を鳴らすのと同時に、カオスプライムの足元に突如として現れた影が布のように伸びて、カオスプライムの体を縛り上げる。
そして、バランスを崩したカオスプライムはというと――無様に、床へと転がった。
「こ、これは……ヴェルヌス、貴様の仕業かっ!?」
「にぱ〜♪逃げちゃ駄目なのですよカオスプライム♪」
――さすがは、ユニクロンのプラネットフォースというべきかしら?まさか、ダークマターの生成までできるようになるとは思わなかったわ。
……虚数空間への干渉に、ダークマターの生成+操作、我ながらチートっぷりにも程があるわね。まぁ、敵側にそれ以上のチートがいるのだから仕方ないのだけれど。
「それじゃエアラザー、一緒に挨拶しに行くのです♪」
「え、えぇ……でも、ヴェルヌス?どうして自販機の上に…………うん、聞かれたくないのはわかったからそのウルウルした目はやめて?」
こうして、私とエアラザーは身動きの取れないカオスプライムをつれて(ダークマターって便利よね。何でもアリな意味で)プライマルコンボイたちの元へと向かうのでした、まる。
そういえば、ハルピュイアが朝早くに出かけたんだけど……何か、あったのかしらね?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ウヒャヒャヒャヒャ、元気っすかぁハルピュイア?」
「あぁ、おかげさまでね……それで、何の用だタランス?」
「ありゃりゃ、ずいぶん嫌われたもんっすねぇ……そんなんじゃ、せっかくの美人が台無しっすよ?」
「当然だ、貴様ほど胡散臭い奴がどこにいる?」
――ミッドチルダの廃棄都市部。その一角にある広場に呼び出された私は、呼び出した本人……タランスに対しそう言葉を投げかけた。
何かの罠かとも思ったが……六課の方々に迷惑をかける訳にもいかないので、素直に呼び出されることにしたというわけだ。
「……あたちより胡散臭い奴なんてゴロゴロしてるっすよ。たとえば、うちのリーダーとか?」
「それには同意するが、堂々と自分の上司を批判するな」
「相変わらず、委員長タイプっすねぇ……まぁ、そんなことはどうでもいいっす。今日は、ハルピュイアちゃんにプレゼントをもってきたっすよ!!」
――私に、プレゼントだと?
「ふっふっふ、みて驚かないでほしいっすよ…… それでは、いっつしょーたいむ!!」
次の瞬間、タランスの背後に突如としてコンテナが現れ……それが音を立てて展開されていく。
その中から現れたのは……白とメタリックグリーンの装甲を備えた、グリフォンのよ うな機体。
こ、こいつは――
「そうっす!!これこそが、ハルピュイアちゃんのために作られた専用トランステクター……ファントムビークっす!!」
――そう、それはダークコマンダー……様が私のために用意してくれた、専用のトランステクター。
私の能力を最大限に活かすために、調整を重ねていた結果投入が遅れていたのだが……それが、なぜここにあるっ!?
「ちなみに、ダークコマンダー様からの伝言っす。
『この力で、ジン・フレイホーク君を守ってやれ。彼は私の計画に必要不可欠な存在となったのだからな……』とのことっす。まぁ――」
次の瞬間、私の周囲にシャークトロンや量産型TFのナイトイーグルとバスタークローが展開される……やはり、罠だったか。
「……ただ渡して終わりってのもつまらないっすから、盛大に暴れちゃって結構っすよ?ついでに、六課の連中も呼んでくれて構わないっす。」
「なるほど、何はどうあれ自分の作品の出来を知りたいという訳か……いいだろう、その話に乗ってやる!!」
ダークコマンダー……様が何を考えているのかは知らんが――私の帰る場所はもう、プレダコンズではない。
クレアにイリアス、レヴィアタン……メイルやライラ、カオスプライムにベクター目がトロン、ガイア・サイバトロンのみんな……
……そして、ジンのいる場所。そこが、今の私の帰る場所だ。
だからこそ、それを壊そうとする奴は……許す訳にはいかないっ!!
「ファントムビーク……私に、力を貸せっ!!」
「のほぉっ!?」
私の声に答え、瞳を輝かせたファントムビークがタランスを弾き飛ばしこちらへと接近してくる。同時に鎧を身に纏った私は地面を蹴ってファントムビークの背に乗り、ナイトイーグルを蹴散らして大空へと舞い上がる。
「ゴッド、オン!!」
その言葉と共に、私の体が光に包まれてファントムビークに溶け込んでいく。そして、ファントムビークが高らかに咆哮すると、変形を開始する。
胴体が展開されると、前脚が脚部、尾が腰アーマー、後脚が胸部アーマーを形成。そして、内部に格納されていた腕部が露出すると、胸部のクリスタルとビーストモードの頭部が肩アーマーへと変わる。
最後に、胸部から頭部が展開されると、ウィングの一部が分離・変形し片刃のブレードへと変わる。それを両手に持ち、天に掲げて振り下ろすと――晴天にも関わらず雷光が降り注ぎ、旋風が巻き起こる。
「降臨!!ファントム、ブレイザァァッッ!!」
(17話に続く)
次回予告っ!
ジン「……ぐ、ぐへぇ……」
なずな「ん、どうかした?」
ジン「いや、急に魔力が吸い上げられ……がふっ」
なずな「ちょ、ちょっとっ!?!?いきなり倒れられても困るんだけどっ!?」
恭文「……マスターコンボイ、あれどうしよっか?」
マスターコンボイ「知らん。というより、俺たちがここに出ても次回予告なぞできんぞ?」
ジュンイチ 「まぁ、俺らは本編で活躍すりゃいいんじゃね?」
イクト「……今回のお前はコメディ側だがな?」
いぶき「それで、ご飯はどこや?」
17話「休暇の裏側……そして、芽生える想い?-U-」
あとがき
あれ、おかしいな……本当なら、アレクサとカオスプライムのデートを入れる予定だったのに、微妙にシリアス化してきたぞ?
どうしてこうなったし……まぁ、BWシリーズのコンボイ勢揃いができそうなので問題ないか?
それと、今回は放浪人テンクウ様からキャラをお借りしています。なんと使い勝手のいいことか……放浪人テンクウ様、使用許可を出していただきありがとうございました。
それでは、今回はこの辺で……
管理人感想
DarkMoonNightさんからいただきました!
相変わらず、な行の発音のおかしいアサルトジャガー。周りもなかなかにイラついているようで。
そしてハルピュイアには待望のトランステクターが……あれ? 誰かの砲撃魔法にそんな名前が……
最後に、いぶきとなずな。イメージ&予告限定とはいえ『外典』出演おめでとう……トラルー客演の祝辞はテンクウさんに譲りますです、はい。