17話『休暇の裏側……そして、芽生える想い?-U-』
「よし、これでどうだ?今までよりは動きやすくなったはずだが……」
「ふむ…………相変わらずの腕前だな。」
「こちらとしても、お前の体を弄るのはいい刺激になるからな……おかげでここ数年、新作のアイディアは豊作だ。」
「……額面通りに受け取ると、問題になりそうな発言だな。」
「気にするな」
――目の前にいる『彼』に対しそう話しながら、私は『彼』と初めて出会ったときのことを思い出していた。
きっかけは、世間一般でいう『GBH戦役』で宇宙が戦場になっていた頃、ウチの従業員がボロボロだった『彼』を見つけてきたことから始まった。
TFの存在が知れ渡ったとはいえそう簡単に交流できるはずもなく、私にとっては対岸の火事でしかなかったのだが……
まぁ、うまい具合にチャンスが転がり込んできたのでおおいに研究させてもらったというわけだ。
「だが、これからどうするつもりだ?長い年月をかけて地球のあちこちを調べたみたいだが、お目当てのものはなかったんだろ?」
「……スペースブリッジを使って、他の惑星も探すつもりだ。」
「だが、あれは素性不明の輩がやすやすと使えるようなものではないさ。
だからこそ、お前はメンテナンスのためにうちに来る訳だしな……」
すると、目に見えて『彼』の動きが止まる――どうやら、その部分は考えていなかったようだ。
やれやれ、妙なところで抜けてる奴だな……私は頭の片隅に残っていた住所をメモ用紙に記すと、それを破って『彼』へと渡す。
「ほれ、ここを尋ねるといい。」
「……これは?」
「知り合いの知り合いといったところなんだが……まぁ、ここで悩んでいるよりははるかに価値があるはずだ。」
「……感謝する。それでは、ミキヤとシキにもよろしくいっておいてくれ。」
「近くを訪れたら、遠慮なく寄ってくれ。お前なら大歓迎だよ……オプティマス」
――こうして、『彼』は私の元から去って行った。
さて……これで私の役割は終わりだ。あとは、本来の主役たちに物語を返すとしよう。
こういったことは、下手に当事者になるよりも傍観者の方が楽しめるからな……
え、私が何者なのかって?こんな端役でしかない語り部の名前を聞きたがるとは物好きもいたものだな――
――そうだな、通りすがりの『魔法使い』とでも名乗っておくとしようか。
とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
とある魔導師と守護者と機動六課の日常・外典
Another strikerS
17話『休暇の裏側……そして、芽生える想い?-U-』
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それは、突然のことだった。
惑星ガイアに居る筈のプライマルコンボイと移民船団代表の皆さんが視察に来たということで、僕たちガイア・サイバトロン親善交流部隊に
所属するメンバーは早朝の訓練を早めに切り上げて色々準備を行っていた。
そして、はやてさんやビッグコンボイと共にプライマルコンボイたちをロビーで出迎えた訳なんだけど――
「やぁ、久しぶりだなみん……………………おいおいどうした、そんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして?
そんなに私のことが恋しかったのか?」
それは違います。 もちろんみんなが固まってるのは、別の理由からだ。
「………………それじゃあ、この中で一番付き合いが長い俺が代表してみんなの気持ちを言わせてもらうじゃん?
なんでちっさいゴリラになってんのっ!?
校長先生びっくりだよっ!」
チータスの言う通り、プライマルコンボイの体はあの メタリックブルー と
どぎついオレンジ
のばかでかいボディから、昔の毛むくじゃらなゴリラに戻っていたのだ。
「描写こそされてないですが、六課隊舎はプライマルコンボイが動きまわるには少々狭いですからね……判断は間違ってないと思いますよ?」
ライラ、状況分析ありがとう。でもね、あのいかつい姿に慣れた頃だったから余計に驚くんだよ。
あと、感想の方で大まかなサイズ設定していたのを作者が忘れていたのは内緒だったりする。
……というか、なんでビーストモードなのさ?別に、ロボットモードでもいいじゃん。わざわざゴリラになる意味が分からないよ。
「……ライオコンボイ、それブーメランで返ってくるよ?エアラザーとスタンピー以外、ビーストモードでいるときの方が多いじゃん。
コラーダなんてもう、 布団を体に巻きつけてる のがデフォルトだし。」
それは言わないでくれメイル。ツッコミいれて自分でも思ったから。
「で、先輩の質問への答えはどうなんだよゴリさん?」
「うむ、バナナを食べて 『コンボイ、変身っ!ぬおおぉぉぉぉぉぉっっっっ!』
と叫んだららこうなった。」
『なんだ、それなら仕方ない』
それで納得するんかっ!?」
……はやてさん、残念ながらプライマルコンボイに関してはそれがありえるんですよ。
「だってなぁ……ライオコンボイは色々制限がかかってるハイパーモードを、バナナ食べるだけで発動させるもんなぁ……」
「1にバナナ、2にバナナ、3・4がガイア・サイバトロンのことでごにバナナって感じだもんねぇ……」
「……一応、職務は全うするんだなぁ……」
「な、なんやそれ……」
「……コホン。それでライオコンボイ君、子供たちはどうなっているのかね?彼ら自身の口から、今回の件について感想を聞きたいのだが……」
「はい、ただ今スタンピーがこちらへ連れてくるところです。」
……そういえば、なんだかんだでコビー君たちの交流は進んでいるんだよな。ヴィヴィオちゃんとも仲良くなってるようだし……
……まぁ、六課やジュンイチさん、ジンのやりとりがメインだから描写されてない けどね。
「あ、あの……カオスプライムさんはどちらにいらっしゃるんでしょうか?」
すると、情報部のアレクサさんが周りを見渡しながらそんなことを僕やはやてさんに訪ねてくる。
そういえば、『カオスプライムがアレクサさんのことをやけに避けている』ってジンがぼやいてたっけ。エアラザーが探しに行ったけど大丈夫かな……?
「みぃ、黒猫ヤ○トの宅急便なのですっ♪」
その時、笑顔のヴェルヌスが よくわからない物体でがんじがらめにされたカオスプライム
を引きずってロビーに現れた。
………………えっと、これは突っ込まなきゃダメかな?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「フォースチップ、イグニッション!」
――私の叫びと共に、ガイア・サイバトロンのマークが刻まれたフォースチップが胸部の専用スロットへと装填され、それに合わせて翼の装甲が展開し光り輝くエネルギーを放出する。
そして、放出されたエネルギーはバチバチと音を響かせながら周囲に広がっていき、やがてタランスたちを取り囲む雷のカーテンとなった。
「あ、あらっ!?これってもしかして……大ピンチ?」
今更慌てても遅い……これが、私の全力全開だっ!
「雷よ、全てを吹き飛ばす嵐となれっ!ボルテック……ストォォォォォムッッ!」
「シビデバビデブゥゥゥゥゥ!?!?」
掛け声と共に解放された電撃はまるで嵐のような荒々しさでタランスたちへと襲いかかり、その体を焼き尽くす。
そして光が収まる頃には……プスプスと煙を吹きながら、黒焦げになったタランスたちが地面に転がっていた。
「昔のよしみだ、命まではとらん……だが、拘束はさせてもらうぞ。」
「す、すでに動けないってのに容赦ないっすねぇ……?」
「ふん、貴様はどれほど警戒しても足りんからな……なにより、プレダコンズのナンバー2を捕縛すれば大打撃にもなるだろう?」
…………そう、意外に思われるかもしれないがこう見えてタランスはプレダコンズではダークコマンダーの次に偉いのだ。
もっとも、普段が普段なので誰も敬いはせずに適当な扱いをしているが……『とある旅人の気まぐれな日常』を読めば分かるように、極秘任務はタランスに割り当てられることが多い。
それに恐らく、タランスは私たちにも知らされていないプレダコンズの計画を把握しているはず……ここで捕まえれば、プレダコンズを止めるのに大いに役立つはずだ。
「……まったく、爪が甘いものだな。」
そんな声が聞こえた次の瞬間、黒焦げになっていたはずのタランスは私の目の前から姿を消した。
…………ばかな、何の気配も感じなかったぞっ!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あ〜、やっぱり保険をかけておいて正解だったっ すね。
ハルピュイアとファントムビークがあそこまで強くなるとは、このアタチの眼をもってしても見抜けなかったっす。
あ、君もご苦労さんっすね!おかげで助かったっす!
「……立場上、貴様もクライアントの1人になるからな。いけ好かなくても仕事はきちんとやるさ。
まぁ、本当なら俺らも暴れたいんだがな……」
あ〜、近々そうできるように調整するっす。
さて、アタチを助けてくれたこの紫と金のカラーが渋い狼さんは誰かというと……ビーストファングの隠密部隊、『機動忍法帳』ロウガマル君っす。
主に暗殺任務とかを請け負ってるらしく(その割には普通に名乗って暴れてるらしいっすが……)、センサーや気配を悟られずに行動するなんて朝飯前っす。
まぁ、あのチートオブチートな柾木ジュンイチあたりはそれでも察知しそうなんすけど……普通の奴らなら、真の『空気キャラ』である彼の気配を察知するなんて不可能っすね。
「おい、褒めてるのかそれは?」
もちろん褒めてるっすよ。
君みたいなキャラはあのチート連中にかかると『気配がなさすぎる』とか言われて察知されるんすよ?
その点、君は某戯言なシリーズに出てくる奴みたいに『認識の隙間』に隠れるっすからねぇ……隠密系のキャラとしては十分キャラが立ってるっす。
「……まぁいい。それより、そろそろ定時連絡の時間じゃないのか?」
「おっと、そうだったっすね。早いとこ準備しないといけないっすね!」
せっかく、 面白いもの が見つかったんすからねぇ……世界を大いにかき乱すためにも、ほうれんそうはきちんとしないといけないっすね!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「へぇ……魔法が発達しているとは聞いていましたが、一般の方々は私たちとあまり変わりがないんですね。」
「まぁ、魔法とは言ってもミッドチルダのは科学技術の発達の上にあるからな……むしろ、似たような発展を遂げた人類が次元世界にいくつも存在するのが驚きだぞ。」
「それもそうか……そうすると、運命みたいなものを感じますね。それでは、次の場所へ行きましょうか。」
…………さて、状況がよく分からない読者のために説明しておこうか。
俺は今、ヴィーノ姉と共にミッドチルダの市街地へと赴いている。理由?そんなもの、あのチビ狸と腹黒猫のせいに決まっているだろうが。
奴ら、ヴィーノ姉が俺との関係をどうにかしたいという話をプライマルコンボイから聞いて、このデートもどきを企んだ。ご丁寧に、俺のヒューマンフォームまでこしらえてな……
しかも、ヴィーノ姉が変な虫に言い寄られないようにと屁理屈を言って腕を絡めてくるものだから、動きにくくてしょうがない。
………………せめてもの救いは、マスターコンボイとは違い少年の姿にさせられなかったことか。噂では 「オレンジ色の“
追跡者
”」 というのが六課にはいるらしいからな……
ちなみに現在の姿を補足しておくと、マスターコンボイのヒューマンフォームを20代後半ぐらいにまで成長させ、それが色黒・メタリックグリーンの髪・赤目になった感じだ。
「……カオスプライムさん、ひょっとして迷惑ですか?」
すると、ヴィーノ姉が俺の顔を見つめながらこちらに問いかけてくる。
「…………いや、迷惑ではない。ただ……君とどう接していいのかが、分からないだけだ。」
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「…………いや、迷惑ではない。ただ……君とどう接していいのかが、分からないだけだ。」
その時、一瞬だけカオスプライムさんの瞳に私でない“誰か”の姿が映る。
それを見て、どうしてカオスプライムさんが私と距離をとっていたのかがおぼろげながらも理解でき――思わず、顔に笑みが浮かぶ。
「…………どうした、なぜ笑みを浮かべる?」
「きっと、カオスプライムさんが真面目で優しい方だということが分かったからですよ。」
「どういう意――ぬぉっ!?」
「ほら、行きますよっ!」
こうして、私はカオスプライムさんの手を引っ張って走り出す。
――簡単なことだった。カオスプライムさんには大切な人がいて、私はその人に似ているのだろう。
必要以上に距離を取っていたのはそのため。まだ、自分の中で折り合いがついていないだけなのだ。
……なら、焦る必要はない。私は私だということを、これからゆっくり分かってもらえばいいのだから。
――それが『恋』と呼ばれる感情だということに私が気づくのは、それから数ヶ月後のことだった。
(18話に続く)
次回予告っ!
ジン「……カオスプライムが……フラグを立てた……だと……?俺に出会いはないのかよっ!?」
カオスプライム「小僧、後ろで手招きしている奴が2人ほどいるぞ。」
アリス「フッフッフ……このチャンスを逃す訳にはいかないわっ!」
レヴィアタン「ダーリンならいつでもウェルカム!」
ジン「…………誰か、俺に普通の恋愛をさせてください。」
ヴェルヌス「にぱ〜、あきらめるのですっ♪」
18話「守護者の名を失った者―その名は、オプティマス―」
あとがき
ども、お久しぶりです。
仕事が忙しくなったり体調を崩したりしてますが私はどうにか元気です。
今回は前回書ききれなかった分を追加しました。けど、甘酸っぱい雰囲気なんてだせやしねぇ……
次回は新キャラの登場……予定。あと、冒頭の語り部さんは今回だけの登場ですからあまり気にしないでねっ!
それでは。
管理人感想
DarkMoonNightさんからいただきました!
冒頭から何か出たぁぁぁぁぁっ!?
語り部さん、今回だけの登場なんて豪華すぎるなぁ(苦笑)。
カオスプライム、順調にフラグ進行中……ライオコンボイとエアラザーといい、DarkMoonNightさんのところは平和な恋愛劇が多いなぁ。ウチとはえらい違いだ(←原因が何を言う)。
とりあえずジンはあきらめるように。少なくとも本流での修羅場は必至だから(←原因が何を言うパート2)。