18話『守護者の名を失った者―その名は、オプティマス―』
















「おにいちゃん、おっかえりぃぃぃっっっ!」

「おかえりなさい、だぁぁぁぁりぃぃぃぃんっ!」



 部隊長室でスターセイバー(ヴォルケン)改名騒動のことを聞いた後、俺は温泉のお土産を配るためにガイア・サイバトロンのみんなが集合している部屋へと足を運んでいた(もちろん、はやて姉やビッグコンボイたちにもお土産は渡したぞ?)。

 そして、部屋のドアが開くと同時――真っ先に俺の姿に気付いたメイルとレヴィアタンがこちらへととびかかってくる。
























「おう、ただいまメイル。」

「ちょっ!?」


 身の危険を感じた俺はメイル だけ を受け止めると体をひねり、レヴィアタンの突撃を受け流す。
 
 すると、勢いを殺しきれなかったレヴィアタンはギャグマンガのようにゴロゴロと廊下を転がっていき、壁に頭をぶつけて悶絶していた。





 ……レヴィアタンの奴、黙ってたら美人でドキッとする部分もあるんだけどなぁ……あの性格はどうにかならんのかね?



「メイル、駄目だぞ〜?いきなりとびかかったりしたら、今のレヴィアタンみたいに派手に転んじゃうからな。」

「うんっ!次からは気をつけるねっ!」

「しくしくしくしくしくしく、最近だーりんの扱いが酷い……」



 そりゃ、一歩間違えたらR18な展開まっしぐらだし?神経とがらせるのも当たり前だろ。

 あと、アリス姉に鍛えられてるからウソ泣きとかすぐにわかるからな?


「くっ!?ろくにフラグも建ててないくせにどうしてこういうときだけ邪魔するのよあのオバ―――― っ!?」


 ん、どうした?


「な、なんか急に寒気が……というか、 殺気?」


 ……………………アリス姉なら、そんぐらいできてもおかしくないか。







「まぁ、積極的にアプローチするのも悪くはないのですが……レヴィアタンさんの場合、それが空回りしていますね。」

「それはともかくとしてだ……おかえり、ジン。」

「おう、ただいま。ところで、何か変わったことはあったか?プライマルコンボイたちも来てたみたいなんだが……」


  メイルたちに遅れてこちらへ近寄ってきたライラやライオコンボイにおみやげを渡しながら、俺は気になってたことを確認する。
 
  ……だって、あのプライマルコンボイだぞ?六課がギャグ展開に引きずり込まれてもおかしくないしな……
 
 
「まぁ、あの方はスポンサーの意向で真面目な部分も多かったですから、真面目な時は真面目ですよ?まぁ、バナナでフォームチェンジしてましたけど。
 変わったことがあるとすれば……六課のスターセイバーさんが ホシケン という異名を手に入れたことと、ハルピュイアさんがトランステクターを手に入れたことぐらいですね。」
 

 ホシケン騒動は置いておくとして……ハルピュイアがトランステクターを?どっから手に入れたんだよおい。

 
「なんでも、プレダコンズから強奪してきたとか……今は、 スバルさんたちを相手にトレーニング中ですね。
 あと、プライマルコンボイが兄さんとレヴィアタンさんのトランステクターを六課に持ってきてくれましたよ?」
 
 

  ……どうやら、いつの間にか事態は進んでいたらしい。しかし、俺のトランステクターの修理が終わったってのは嬉しいことだな。
 
  マスターコンボイとのゴッドオンは、なるべく非常手段にしておきたいし……まぁ、よっぽどのことが無い限り大丈夫だろ。
 
 
 
 
 
 
 
 
「おーすジン、おみやげはどうしたー?」
 
「オイラたち、それだけが楽しみなんだけ――」


轟・音
 

























 
「お帰りなさい、ジン君。具合悪くとかしてないかな?」
 
 
 
 ……なんか、久しぶりに見たなエアラザーのスパルタツッコミ。だから、そのトンファーをしまってくれ。後ろでブレイクたちが震え上がってるから。

 
 
「……ふん、ようやく帰ったか小僧。」
 
「おう、ただいまカオスプライ――」
 
 


 ――カオスプライム、なんなんだその体にひっついてるマイクロンたちは。お前、幼稚園児を相手する保育士みたいだぞ?

 
「……………………ほっとけ。」
 







 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 





「――ちっ、なぜ俺ばかりこのような役が回ってくるんだっ!?」

≪まぁまぁ、少しは落ち着いてください。それだけ、スカイクェイクが頼りにされているということですよ?≫

「どう考えても、便利屋ポジションにしか見えんがな……いっそのこと、代行業でも開設して盛大に資金をふんだくってやるか?」

≪……これが、いわゆる“つんでれ”という奴ですか?≫


 …………どうやら、泉のやつには“なのは式のお話”をしなければならんようだな。

 

 それはともかくとしてだ、少し状況を説明する必要があるな。

 嵐山をミッドチルダに送り届けた俺は地球に戻ると、アルテミスと共に客人を迎えるために待ち合わせ場所へとやってきたのだ。



 しかし、もう少し早く連絡が来ていれば嵐山と一緒に送り届けられたものを……なぜこうもタイミングが悪いっ!?





 ……まぁ、仲介人の名前を出したら政木の奴が冷や汗をだらだらと流していたのは面白かったんだがな?


≪確か、“青崎橙子”さんとおっしゃいましたっけ?≫

「そういう名前だったな。政木にも、苦手な輩がいたということか……」
























「へぇ、ジュンイチの奴橙子のことが苦手だったのか。そんな風には見えなかったけどなぁ……」





 すると、こちらの会話に割り込んでくる形で声が聞こえてくる。

 声のした方へと振り返ると――そこには首元まで伸ばした黒髪に、青紫の着物の上から赤い皮ジャンを羽織った女性が立っていた。



「……お前は何者だ?仲介人の話では、客人はTFだったはずだが。」

なんだ、橙子の奴伝えてなかったのか?ったく、面倒だな…… なぁに、大したことじゃない。
 ここ数年ろくに顔も見せなかった恩知らずに、家族を代表して“愚痴”を言いに来ただけ だ。」


 こちらの問いに、その女性はふてくされたような声で言葉を返すが……その奥に、照れくさそうな感情が混じっていることが伺えた。

 なるほど、そういうことか……それならば、“愚痴”ぐらいは言わせてやるか。


≪スカイクェイク、口元が緩んでいますよ?≫


 アルテミス、余計なことを言うんじゃない。








「……お、どうやら来たみたいだな。」


 ふと、女性が視線を横にそらしたのでつられてそちらへ顔を向けると、エンジン音と共に銀色のコンテナを積んだ赤と黒のコンボイトレーラーがこちらへと近づいてくる。

 どこかで見たことのあるような形状だが……気のせいか?


「オプティマス、トランスフォーム!」



そうこうしていると、コンテナを切り離したコンボイトレーラーが掛け声と共に変形を開始する。



「……なん、だと?」

≪あれは――≫


 そして、人型になって降り立ったその姿に――俺とアルテミスは、驚きを隠せなかった。





「君が恐怖大帝スカイクェイクだな?私の名前はオプティマスだ――これから、よろしく頼む。」




 多少カラーリングさえ違えど、その姿は――カオスプライムに、うり二つだったのだから。













































「よっ、久しぶりだなオプティマス。」

「……シキ、なぜ君がここに居る?」

「家族を代表しての見送りだよ。未那も会いたがってるから、たまには遊びに来てほしいんだが……」

「…………やれやれ、君は相変わらずマイペースだな。」







 そこ、何を勝手にほのぼのとした空気を醸し出している?こっちのシリアスな空気を返せ。







 
とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜










とある魔導師と守護者と機動六課の日常・外典







Another strikerS


























18話『守護者の名を失った者―その名は、オプティマス―』

















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惑星ガイア





『――という訳で、この子が私のパートナーになったレーザーよっ!』

『これから、末永くよろしく頼む。』

「えぇ、こちらこそよろしくね。」



 ミッドチルダの視察を終えてからしばらくした後。業務を終えた私はローリとの会話を楽しんでいた。

 でも、いくらスペースブリッジがあるからとはいえ惑星間や次元間を超えた通信システムを作るなんて……ここの技術力は恐ろしいわね。

 まぁ、ラッドやカルロスも楽しそうだからいいんだけど。あれこれ根回ししてねじ込んだかいがあったわ。



 それはともかく、今はローリのことだ。

 パートナーができたことが心底うれしいのか、ビームというマイクロンを抱きかかえた状態でローリは興奮冷めやらぬまま会話を続ける。

 ……まぁ、無理もないか。ローリにとっては“特別なパートナー” というものは憧れだったもの。



 移民船団ではパートナーとして 霊子生命体 ソウル・ファクター が与えられるけど、そのすべてが特別な能力や容姿を持つ訳ではない。

 私のパートナーであるアーシ―も、電子制御の能力を持ってはいるが見た目はぼんやりとした光の球体みたいなものだったし、ラッドやカルロスの 霊子生命体 ソウル・ファクター も同じようなものだ。

 イリアスやヴェルヌスのような特殊な容姿と能力を持つ 霊子生命体 ソウル・ファクター なんて、ほんの一握りでしかない……それ故に、容姿や能力を付与する装置や職業も存在していたりする。


 ローリの場合、私とアーシ―という存在がそばに居たからかそういった憧れが人一倍強かった。そのため、自分の 霊子生命体 ソウル・ファクター がなんら特別な能力や容姿を持たないことを目の当たりにしたときは幼いながらに大暴れし、両親に叱られたこともある。

  霊子生命体 ソウル・ファクター なんていらないとまで言い出したこともあるし……本人にとっちゃ、黒歴史みたいなものだけどね。




『……お姉ちゃん、何か変なこと考えてない?』

「別にぃ?……ところでビーム、質問してもいいかしら。あなたたちマイクロンに、外部の影響で変化する子はいる?」

『…………済まないが、オレには分からない。トラルーなら何か知っているかもしれないが……』


 あ〜、やっぱりそうか。それなら、そのトラルーって人にコンタクトを取る方法を考えないと――


『ちょっとお姉ちゃん、なんなのよその質問。いきなりすぎてわからないわよ?』

「……少しばかり、厄介なことになってるのよ。実際に見せた方が早いんだけど、あいにく今は席を外し――」






≪アレクサ、こっちの資料はどこに――って、ローリと通信してたの?≫



 ローリの問いかけにどう答えたらいいのか悩んでいると、後ろのドアが開き声が聞こえてくる。

 後ろを振り向くと、そこには資料を台車に載せて運んできた……オレンジ色の、スクーターのパーツがちらほらと目に入る小さなTFが立っていた。



「――ナイスタイミングよ、アーシ―。」

『…………へ?』

『…………どういう、ことだ?』





 だから言ったでしょ、少しばかり厄介なことになってるって。




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「ウィーリー、本当に大丈夫かい?」

≪うん、大丈夫だよラッド。むしろ、自由に体が動かせて面白いんだっ!≫

「しっかし、なんで俺ら3人の 霊子生命体 ソウル・ファクター だけがこうなっちまったのかねぇ……なぁ、バンク?」

≪いや、俺に聞かれても困るんだけど……≫

「まったく、不思議なこともあるんダナ。アイちゃん、そっちはどう?」

≪駄目ですね、完全にスパークと融合しています。むしろ、これが本来の姿だったかのような……≫



 ――きっかけは、本当にただの偶然だった。

 親善交流団の探索チームがガイア・サイバトロンのメンバーと環境調査に出かけた際に発見した3枚のパネル、それを僕ら開発チームが調査していたんだ。
 
 けど、成果はまるでなし。ガイア・サイバトロンの データにも存在しないそれは、移民船団に伝わる伝説の“オリハルコン”ではないのかという突拍子もない見解まで出る程だった。
 
 
 
 そして、シフトの引継ぎを行う為に僕とカルロスが作業を行なっていた所にアレクサが差し入れを持ってきたある日。

 パネルがまばゆい光を放ったかと思うと、端末から僕らの 霊子生命体 ソウル・ファクター であるウィーリー・バンク・アーシーがパネルに吸い込まれ……彼らは、今の姿に変わった。

 今も調査を続けているけれど、何がパネルを覚醒させるきっかけになったのかは分からないし、なぜ僕ら3人が揃った時にパネルの覚醒が起きたのかも分からない。






 特に、僕にとって一番不思議なのが……本来ならとんでもない光景のはずなのに、なぜか 既視感 デジャヴ を感じていることだ。

 いったい、この感覚はなんなんだろう?













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 ……タランス、プラネットフォースの方はどうだ?

『あ〜、ダメっすね。“力”としての構造が完璧に砕かれてるっす。こりゃ、直すのに相当時間がかかるっすよ?』

「そうか……ならば、今は“神器”の回収を優先しろ。」

『了解っす!ちょうどいい情報を見つけたっすからねぇ……アタチ、頑張っちゃうっすよっ!』

「…………まったく、計算外にも程があるな。」



 タランスとの通信を終えると、私は玉座に座り込み盛大なため息をつく。理由はもちろん、トラルーの手によって破壊されたプラネットフォースとX(カイ)のことでだ。

 まさか、計画のキーパーソンとなる両方がこのような形になるとは思ってもいなかった。X(カイ)の方はあまり心配してはいないが……







「計算か本能かは分からないが、こちらの計画をピンポイントで阻害するとはな……だが、こうでなくては面白くない。  今までは、こちらの思惑通りにしか状況が進んでいなかったからな……フレイホーク君以外にも楽しめる“おもちゃ”が生まれるとは思わなかったよ。」



 機動六課とカイザーズ、サイバトロンやディセプティコンに蝿蜘苑。そして、イレギュラーである政木ジュンイチ――障害は多ければ多いほどいい。


 どうせ、私の計画が成功すればすべては“ゼロ”になるのだ。ならば、今は思う存分楽しまなくてはな……?





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 ……まさか、またここに戻ってくるなんてな。まったく、ちゃんとした休暇でなら大歓迎なんだけどなぁ?


「小僧、ため息をつくのもいいがさっさと用事を終わらせるぞ。戦力なら正直 過剰に 揃ってはいるが、やはり心配なものは心配だしな……」

「いや、それはそうなんだけどさ……くそっ、アリス姉が余計なことをしてなければこんなことにはなってないというのにっ!」


 え〜、状況を説明いたしますと、俺は今つい先日(あんまり休めていない)休暇で訪れた大賀に居ます。
 
 理由?とコ電第5話と第11話を参照してくれ。そっちが手っ取り早いから。



 ……まぁ、理由はそれだけじゃないんだけれどもな?
 
 スカイクェイクさんから連絡があり、ミッドチルダへ知り合いを同行させて欲しいとのこと。
 
 で、そのスカイクェイクさんの知り合いはというと……俺たちと合流するために大賀に向かっているんだそうな。



 ただ、問題が一つ。『会えば分かる』と言われ、こちらには顔写真などが一切送られてないということ。

 あれ、絶対何か企んでいるよな……スカイクェイクさん、悪そうな表情をしていたし。



 まぁ、それは置いとくとしてだ。

 いよいよ、念願の再会だぜ相棒っ!頼むから、大人しく待っててくれよっ!?































「ハッハッハッハッハ、遅かったわねジン!
 あんまり遅いから、近辺の食べ物屋は完全制覇しちゃったわよっ!?」
 
 
≪まったくだっ!せっかく出番待ちをしていたというのになんだこの扱いはっ!?謝罪と賠償を要求するぞっ!≫
 


≪…………ゴメンね?2人とも本当にゴメンねっ?≫












 …………やっぱりかえっていいですか?


















(19話に続く)












































































次回予告っ!















ジン「いや、なんなんだよ最後の終わり方……」


カオスプライム「そんなこと、俺が知るか。それより、次回予告にならんぞこれは。」


ジン「はぁ?何を言って……おい、作者ぁっ!?」


19話「タイトル詐欺が激しくなりそうなので、未定です。」



































































あとがき

…………はい、ごめんなさい。全然話が進まない上にスランプでした。
もう、構想に執筆速度が追いついてません。こんなスローで他所からネタを拾いまくりかつ無茶ぶりの嵐な物語ですが、最後まで付き合っていただけると幸いです。
では、また次回。




管理人感想

 DarkMoonNightさんからいただきました!

 ジンのトランステクター、ようやく手元に戻ってきましたか。
 よし、これで『とコ電』でも出せ……ハッ! その前に大賀から戻ってきてもらわないと!(←コレ書いてる時点で『とコ電』最新話は11話)

 そして今回の主役のオプティマス……アルマダコンボイ(『マイ伝』コンボイ)かよっ!?
 名前からてっきり実写劇場版か『アニメイテッド』からかと思いきや、こっちから来ましたかー(苦笑)。
 しかし式と知り合いですか。また彼女の参戦を促すようなマネを(再苦笑)。