ピコン、ピコン・・・









夢を見ていた。








ピコン、ピコン、ピコン・・・







そこは夢のような世界だった。







ピコン、ピコン、ピコン・・・ピコン、ピコン、ピコン・・・






                                                                                              
目に映る景色がとても綺麗で鮮やかで、赤、蒼、黄、他にもいろんな色が混ざり合って、でも濁ってなくて。

ここには、オレ以外の人影はなく、鳥や魚、動物さえ居ない。

命の輝きがない、この美しくも悲しい世界の光景を、"オレ達"は見続けていた。

どれくらいの時間が経っただろうか、十秒、一時間、あるいわもう一日経ってしまったのではないか

一瞬の時流れの中で。この光景は、オレ達から時間とゆう概念さえも消してしまったかのように、オレ達をやさしく包み込んでいた。

なぜオレ達かというと、居るのだ、生命の鼓動のない命のないこの世界で、確かに誰かが居るのだ、いや居たのだ。

それは意思と記憶とゆうか、記録とゆうのか、オレに語りかけている。

自分じゃない、名前も知らない人の意思と記録、形のないそれがオレの中に入ってくるのが分かる。

でも不思議と嫌じゃなかった。難しい本を読まされてる感じはなく。

子供の頃、夜寝るとき母に読んでもらった絵本のように。

まるで物語を語るように。

オレ以外、命がない閉じたこの世界で、その物語は子守唄に等しく。

オレは重くなった目蓋を閉じて意識を手放した。









ピコン、ピコン、ピコン・・・ピコン、ピコン、ピコン・・・ピコン、ピコン、ッピコmm・・・











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<サクライ>







ピィーピィー・・・ピィーピィー





「・・・あぁ・・・。」


つぎに目を覚ませば、周りを見たことのない機械や点滴、直ぐにここが病院だとわかった。

とりあえず鈍い体を動かそうとしたときドアの方から声が聞こえた。

医者だろうか、とりあえず動く首を回しドアの方を見ると。


「おや、目が覚めたんだね・・・ああそのままでいいよ。」


そこに居たのはカエルだった、白衣を着たカエルがそこに居た。


「カエル・・・。」

「・・・よく言われるよ。先ずは自己紹介だ、僕はフロッグ、フロッグ・ゲロップ・ゲップだ・・・自分名前を言えるかい。」


違ったようだ、カエルの医者じゃなくカエルに似た医者だったようだ。

しかし似てるなー。とりあえず、オレも名乗らないとね。


「オレは・・・おれの名前は」


それから簡単な質問に答え、オレがどうゆう状況なのかをくり返し聞いた。

そこで分かったのは、オレの体の状態やどれくらい寝ていたのか、妹もこっちに来たこと、妹はオレみたいに重症じゃないこと、それとマンガのような普通なら信じられない事だった。

オレは次元漂流者。何らかの拍子に他の次元世界に偶然漂流してしまった、大規模な迷子のようなものらしい。

ここは代00管理世界ミッドチルダ、オレは右足の間接からズパリ斬れてしまい、二ヶ月もの間意識不明の重体で、妹は軽い火傷だけだったらしく、簡単な治療魔法でその日うちで治ったらしい。

普通なら、なかなかに不公平なことだと世界の理不尽さに思うことがあるだろうが、今のツッコミどこはそこじゃあない。

魔法だ、そう魔法だ、魔法なのだ。

この世界には魔法があり、魔法を使える人を魔導師というのだと。

どこのマンガだと言ってやりたいが、生憎オレはそんなことを言えんのだった。


「魔法・・・ほんとにあるのか・・・。」

「君はあまり驚いてないけど、創造力豊かなのかな?。」


べつにオレは創造力豊かってわけじゃあない、ただ知っている知っているのだ。いや、教えてもらったのだが。

夢で見たあの世界、その中で見た記録にある魔法。

今ではほんとに夢なのか分からないけど、たしかにオレは魔法を知ってる・・・。


「まあ起きたばかりだし、まだ困惑してるのかな?。今日は寝てなさい"明日"精密検査をするから、そのつもりでね。」

「・・・分かりました。」


明日、その言葉で現実に戻った、いや戻された。オレは目の前が暗くらるのを感じざるを得ない。

これからどうする、家もない、金もない、何より親が居ない。

その事実がオレを恐怖のどん底に落とした。家は良い金も良い、何とかなる、まだ自分をごまかせる。

でも親は?。母は、親父は、ここには居ない、此処には居ない、この世界には居ない。

その漠然とした事実に恐怖した。

明日から母の手料理が食べれない事えの悲しみ。

もう親父の作ったラジコンを超えることが出来ない失望感と、勝ち逃げした事への劣等感。

日常が壊れたことでの虚脱感。

何より、自分の事しか考えていないことえの絶望感。


「・・・さつきは何所ですか。」

「さつきちゃんかい?。それなr・・・」




ドドドドドドドドドァ



バン!!


「ケン兄!。」

「うぉ!。」

「おや、噂をすればだね。」

「ゲン兄!ゲンジ〜!!。よがうっだ〜びょ〜ぼんでょ〜ぼに、よがうっだ〜びょううぅぅぇぇぇぇぇうああぁぁぁぁぁぁぁ。」

「ごめんな心配かけててぇおい、さつき!。布団で鼻をかむな、布団が涙と鼻水でぐしょぐしょだ。」

「怖がった、ゲン兄ぼう、もう起ぎないじゃみゃいがって。ヒドりになっずぢゃうってズゴく怖かった。」

「・・・さつき。」


そうだな、さつきは今この世界でただ一人りの肉親で、この世界でただ一人りの妹だ。

そしてオレは兄だろ。

いの一番に妹を心配しなくてどうするのだ。


「心配するな、一人にはしないよ約束する。」

「ほんとに?。」

「ほんとに、ほんと、この兄を信じなさ〜い泥舟に乗ったつもりでな。」

「泥舟は沈むよ・・・。」

「ははは、さつきはバカだな嘘に決まってるじゃあないか。これだから泣き虫と・・・」





















そうだな、さつきは泣き虫だから、守ってやらないとな。

悩む必要なんて無い、オレはさつきの兄だからな。

さつきが独り立ちするまで守ってやるよ。











































・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










































と、思ってた時期も、ボクにもありました。





カッチャ

      

       ごくごくごく・・・・・・・・・・・




「ハァー・・・・・・。」





・・・ヤッテランネー・・・





オレは冷めきったカンコーヒを飲み干して今後のことを考える。


「どうするクビだってよ、またさつきに金借りるか。でもあんな見栄張っといて、また何度も人様の家庭に金を借りるのもなー・・・はは、もう兄の威厳は皆無だなおい。」


そう威厳が無いのだ、それは何故か、簡単だ。

妹には在ったのだ、魔法の才能リンカーコアが。

いくら成人の早いミッドチルダでもリンカーコアの無い十歳児が働ける職場は皆無といって良い。

必然的に、ミッドチルダの成人の十五歳まで妹に養ってもらったのである。

この時点で兄の威厳はすでに皆無な気もするがこれはしかたないだろう。

誰かしかたないと言って、お願いだからさ。

まぁ唯一の心配は、妹が怪我をしないかとゆうことであったが、それは杞憂に終わった。

なぜなら妹の魔導師ランクはAAA、今ではS+、遠距離からの連射で大体終わる。

そして妹は結婚して家庭をもち、オレはマダお街道まっしぐらの独身(泣)。

研究資金が足りず妹に金を借りる毎日、情けない思いをこらえながらオレの中の記録の知識を使ってようやく出来た物も上には相手にされないままクビ。





情けない、これではあまりにも情けない。




「何がしたかったんだろうな・・・オレは。」


いや、分かってる(理由なんて無い、泣き虫な妹を守るんだ。)そう思ってたはずだ。


いつの間にか妹に守られてる自分が悔しくて。

泣き虫な妹が泣ながらき戦い、傷つき傷つけるのを見守る事しか出来ない自分が嫌いで。





そんな自分を変えたかった。





オレには才能が在った。




物造り才能が。




オレには知識が在った。




オーバテクノロジーの記録が。




だから欲しかった。




才能に縛られない力を。




だから創った。




才能に縛られない力を。




欲したのは自分を変えてくれる鎧。




情けない自分を、勇ましい自分にしてくれる、強靭な鎧。




欲したのは自分を変える仮面。




非力な自分を隠し、自分を強い戦士へ替える、仮面




望んだのは一騎当千の武勇じゃない、チームワークの勝利。




力の弱い虫だって良い、たばになれば象にだって勝てるから。




望んだのは英雄じゃない、ただ大事な人を守るこのできる男に。




活躍なんてしなくても良い、守りたいものを守れなら。




成りたかったかったんだオレは、ヒーローに、テレビの中の変身ヒーローに。

何故かって、

ヒロインのピンチには必ず駆けつけるヒーロー。

理由なんてそれでもう充分だろ。


「・・・今のオレ、ヒーローとは程遠いな。」


気持ちの整理もついた、家が無いのも金が無いのも事実。

情けない話だが、さつきに頭を下げて拝み倒すしかないな。


「オッシャ、そうと決まれば景気づけにホ〜ル〜イ〜ン・ワン!。」


ベンチから向かって正面のゴミ箱。

そこに向かって勢いよく空のカンを投げたオレは考える。

オレは運命ってのは都合の良い逃げの言葉だと思ってる。

それが運命、決まってたことだから仕方が無いとか、自分を守るオブラートでしかない。

だからオレはいつも心で自分に誓う言葉がある、((理由なんて無い))。

小難しい理由はいい。

在るとすれば自分、オレは自分のしたい事をしているのだから。



カアァァァァァァァァァァー


「グゥ!。」

「あ。」



だからこの失敗も自分のせいで。



「貴様、上官に対する態度がなっとらんな。海は下への教育から叩かねばいかんな。」

「しっ失礼しました、レジアス・ゲイズ少将。」



だからこの出会いも運命なんかじゃなくて偶然、たまたまオレが投げたカンが、レジアス少将に当たっただけ。



「ほー海の下っぱは、最近少将になったばかりの私のことは知らないと思ったがな。」

「自分は存じています。魔力無い身でありながら少将にまで上り詰めた魔力無いの英雄であります。」

「フッン、なにが英雄ものか。」



それはなんてことない繋がり、ただ偶然が重なっただけの出会い。













だけどこの出会いがオレの此れからを左右する四度目の人生の分岐点だった。


管理人感想

 ゴガルドバさんからいただきました!

 妹さん既婚だったーっ!(号泣)
 前回のあとがきでケンタ氏に頭下げたのにーっ!

 しかし、妹さん、かつてAAAランクで今はS+……なのはと同等ですか。
 ……いかん。砲撃で相手を薙ぎ払ってる図しか思いつかん(笑)。