プロローグ
「始まり」
光があれば闇もある。光と闇、これは常に表裏一体。
遥かな時の流れの中で、光と闇は常にせめぎ合い、数々の戦いを起こし、結果常に等しく保たれてきた。
光と闇の戦いの中、人と闇との戦いも人類の歴史の中で残されている。
闇は常に人にまとわり付き災厄を降り注でいた。
それに対し、人は霊能者などの霊力の強い人間や魔力を操る人間を集め対抗する手段をとってきた。
2001年、日本が世界に誇る大都市、東京──
繁栄を謳歌するこの街の中心にそびえる多くのビルの1つ、そこから静かに事件が始まろうとしていた。
「……以下の内容の依頼でよろしいですか?」
とあるオフィスの一角、ここで1人の女性が電話で応対している。
彼女が勤めるこの会社──退魔企業「影武」は、この国の退魔業界の最大手、トップブランドである。
地縛霊の浄霊、悪霊、禍物の退治、御払いから占い、地鎮祭などを主な業務内容としている。
「はい、わかりました。明日、我が社のエージェントをそちらへ派遣いたします。はい、ありがとうございました。」
今回の依頼は山間のとある村で、毎夜、霊の叫び声が聞こえるから浄霊してほしいという物だった。
この類の依頼は「影武」にとっては毎回来る依頼だった。
浄霊という仕事自体簡単ですぐに終わる仕事だったのだが、この依頼が後に大きな事件へ発展して行く事など、この時点では誰にも予想出来なかった。