N.Y.0064・・・・
「随分と、部下にお手数をかけたものだな・・・。」
「信頼できる上官ですから、こんなのお手数にも入りません。元帥。」
部屋の至る場所から爆発が起こり、今にも崩れ落ちそうな部屋で、二人は話していた。
「さて・・・侘びの一仕事だ・・・早いところ、彼女達と本部に戻れ。レディを待たせるのは紳士的ではないぞ。」
「了解・・・奥様を待たせてはいけませんよ、ジェネラル元帥。それでは・・・。」
赤い無精ひげの男は、直立不動で敬礼した後、転移魔法で脱出。
その後、衛星「サテライト・アルカンシェル」は撃沈、ジェネラル・エストール元帥も衛星と運命を共にした。
これが・・・「ガナーフォース・独立クーデター」の最期だと正式に語られている。
そして、7年後・・・・。
#00「始まりの追い風〜FAIR WIND OF START〜」
N.Y.0071・・・。
新暦0071年4月29日AM10:00 ミッドチルダ・臨海第8空港
新暦0071年・・・・あの「ガナーフォース独立クーデター」からはや7年・・・。
既にガナーフォースは解体。しかし時空管理局の取り計らいにより、ガナーフォースの隊員たちは路頭に迷う事はなかった。それぞれが、それぞれの部署で仕事をする。再び平和な時が訪れた。
「よーし!そのまま、そのまま!慎重に扱えよー!」
厳重な封印の中、ロストロギアの入ったコンテナが戦艦の底部に格納された。
『ロストロギア』――いわゆる『古代遺物』。現在のミッドチルダの魔法技術では解明不可能な大昔の代物。
PT(プレシア・テスタロッサ)事件の『ジュエルシード』
魔導師襲撃事件の『夜天の書』
等、今でも解明されていないロストロギアはごまんと眠っている。
「ふぅ・・・この景色も見納めか・・・。」
「おいおい、わずか2ヶ月の航海だぞ。首都クラナガンから、南部アルトセイムまでの。」
ため息をついた隊員が振り向いた先には紺色の制服に身を包んだ男が立っていた。
「あ、エンツヴェル艦隊司令。」
「何もなきゃ、行きで15日。着いたら聖王教会アルトセイム支部のクラン支部長にさっきの荷物を引き渡して、あとは現地で15日の静養。帰りは、途中で西部エルセアに立ち寄って・・・。」
「陸士386部隊の視察、ですよね・・・でも、なんでコンテナのマークが『バイオハザード(生体兵器)』なんですか?」
「バカモン、今回のブツは生物にも関わるヤツだ。ああやって、擬似的な絶対零度の世界で眠ってもらうよ。」
「しかし・・・
これじゃ、どこぞの傘研究所ですねー・・・。」
「どこでそんなネタを覚えてきた、おまえは。」
「あはは、やだなぁ。エンツヴェル艦隊司令が教えてくれたんじゃないですかwそういえば、エンツヴェル艦隊司令はアルトセイム出身でしたよね?」
「ん、そうだが?」
「静養のついでに、実家に行ってみては?」
「こいつぅっ!よけーな事は言わなくていい!」
レイドは笑いながら隊員を脇に抱えて髪の毛をわしゃわしゃと撫でた。
「うわ、ちょっと・・・・止めてくださいよ!エンツヴェル艦隊・・司令!」
「レイド艦隊司令、次元航行隊のメンバーが揃いました。」
蒼い瞳の少年が、レイドにメンバーが揃った事を伝えた。
「有難う、エイジ三等空曹。」
「それと、カーネルが来てますけど?」
普段のちょっとがさつな口調に戻った竜宮寺エイジは、カーネルが来ている事を伝えた。
「カーネルが?」
レイドが空港のエントランスに行くと、カーネルがコーンパイプ片手に外の景色を見ていた。
「よぉ、レイド。元気そうだな。今回は南部までのロストロギア移送だって?」
「あぁ、帰りはエルセアに寄って、陸士386部隊の視察だ。」
「良い人材が見つかると良いな。はやて陸尉の言う『エキスパート部隊』がレティ提督に承認されたそうだ。足掛け4年。0075年には正式に発足させるんだとよ。」
「ほぉ、そりゃまた。」
エキスパート部隊・・・それは八神はやてが時空管理局に勤めて初めて痛感した事実。大きな組織だからこそ小回りが利かず、結果的に後手後手の対応を踏んでしまうと言う弱点の解消のために文官、レティ・ロウラン提督に提唱していた計画の一つだった。
「だから、今のウチにお前さんをスカウトしておこうと思ってな。オレは、フォワード分隊の統合管理官に任命されたよ。」
「そっか。まぁ、アルトセイムから帰ってきてから答えを出すとしよう。」
「良い返事、待ってるぞ。レイド・エイジ。」
カーネルは敬礼をして二人の次元航行艦を見送った。
「さてさて・・・レイドの代わりになのはの訓練に付き合うか・・・・。」
(なのは空曹長も、待っていることでしょう。)
ぷはぁ、と喫煙室で紫煙を燻らせたカーネルは、出口に向かって歩き出した。その時、足元で何かがぶつかる音がした。
「ん・・・?」
「あいたたた・・・。」
足元で、蒼い髪の少女が額をしきりにさすっていた。
「大丈夫か?」
「うん・・・。」
「それじゃ、気をつけるんだぞ。」
「はい、すいませんでした。」
少女はぺこりとお辞儀をすると、カウンターの方へ消えていった。
「・・・見覚えはあるんだが・・・気のせいだな。」
カーネルは一人呟いて空港を出て行った。
時空管理局・本局・訓練室 PM2:45・・・・。
「行くよ!アイゼンッ!!」
(はい!)
「ラケーテン・・・ハンマァァ―――ッツ!!!」
ハンマー先端のピックは確実に相手の障壁を捕らえた。
「ぶち抜けぇぇぇ―――ッ!!」
「うぁっ!!」
展開されたオレンジ色の障壁はガラスが割れた様に粉々に砕け散った。
「まだまだっ!!」
(シュワルベ・フリーゲン!)
赤い髪の少女の手に召喚された6つの鉄球は真っ直ぐに相手に向かっていった。
「まだだっ!メイルスランチャー!」
(了解、マスター。)
デバイスから5つの障壁が幾重にも重なって展開された。
(ラウンド・シールド。)
「逃げの一手か・・・ふん、まだまだだな!ノルゥ!」
鉄球は障壁に阻まれ、凄まじいスパークを散らしていた。
「んなくそぉぉぉ――――ッッ!!ヴァリアブル・シューターッ!!」
「なっ・・・!」
シールドと激しいスパークを散らしていた鉄球は突如として砕け散り、黄色の魔力弾5発が飛び出した。
(マスター、コントロールをお願いします。)
「OK!」
魔力弾は変則的な軌道を描き、辺りを飛び交った。
「くそっ!うっとおしい!」
「今だ!行けぇぇっ!」
(パンツァー・ヒンダネス!)
「まだまだ、バスターッ!!」
「なに!?」
加速した魔力弾は一気に障壁にぶつかっていった。
「とどめッ!ブロウクン・・・・」
「そこまでっ!ヴィータ・ノルゥ!」
訓練の姿を見たカーネルは二人の訓練を止めさせた。
「カーネル准将。」
二人はぜいぜいと肩で息をつきながら、カーネルの前に駆け寄った。
「模擬戦をやるのは構わないが、デバイスの非殺傷設定を忘れているだろ。すぐにわかったぞ。」
「あ。」
ヴィータは言われて気がついた。ここ最近、発見されたばかりの謎のロストロギア「レリック」を狙って現れる機械兵器「ガジェットドローン」。
ガジェットドローン達は、魔力無効化フィールド・・・通称「AMF(アンチ・マギリンク・フィールド)」を展開して、魔導師の魔法を無効にする。それを破るには実体兵器の魔力コーティングでの打撃か射撃が有効である。この所、出動も多かったためデバイスを実戦設定にしていたのだった。
「傷ついては元も子もなかろう。さて、悪いがオレはなのはと訓練だから使わせてもらうぞ。」
「了解。しっかし・・・カーネル、大丈夫か?」
「ん・・?」
「腕だよ、アタシだって・・・あんなの見て・・・忘れたわけじゃないんだ。今だって夢にも出てくる。」
ヴィータは、カーネルの左腕を見てふっと表情を曇らせた。
「ははは、もう大丈夫だ。お前達が気にする事じゃない。」
「けど・・・!」
ヴィータは言葉を続けようとしたが、そこで詰まってしまった。
「とにかく、オレはもう大丈夫だ。皆に、心配するなと伝えてくれ。」
「あ・・・あぁ。」
そして、カーネルは何時ものように笑顔でヴィータの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「あ・・・お、おいッ!わしゃわしゃ撫でるなぁッ!」
語気荒くヴィータは怒ったが、満更でもなさそうな笑顔だったのは言うまでも無い。
「あはは、元気そうだね。ヴィータ。」
そこに、なのはがやってきて、笑顔をみせた。
「ははは、来たな。代理で仮想ターゲットになるが、手加減無用だ。なのはも全力全開でこい。」
「うん、カーネルも無茶だけはしないでね。」
「そこは承知している。だからと言って、下士官に負けるような無様なマネはせんぞ?」
「了解。」
なのはとカーネル、互いに微笑んだ後、すぐに訓練フィールドの上空に消えていった。
「カーネルも、若くねぇのによくやるよ。」
「それは・・・言えるね。もう35歳だし。」
ノルゥとヴィータ。二人は苦笑しながら、入り口のすぐそばにあったベンチに腰掛けた。
「最近、レベルが上がってきてるな、ノルゥ。アタシも冷や汗モンだったぜ。」
「別に。ボクは、ただ皆に追いつこうとしてるだけだよ。いつまでも、守ってもらうのは好きじゃないし。」
ヴィータは立ち上がってバリアジャケットを解除して、武装隊の制服に戻した。
「追いかけるのもいいけど・・・たまには立ち止まってみろ。前を向いてるばかりじゃ、足元の石ころなんか解んねぇからな。」
デバイス、「グラーフアイゼン」を肩に担いで、ヴィータは訓練室から出て行った。
「お前にしては・・・いいアドバイスだったな、ヴィータ。」
「うっせー・・・シグナム。」
訓練室を出たとたん、シグナムがヴィータを茶化した。
「アイツは・・・カーネルはなのはを守った。今度は・・・アタシが守らなきゃいけないんだから・・・。」
ヴィータは、クラナガンの蒼い空を見据えた。
「バスタァァ・・・スピアッ!!」
(ラウンド・シールド。)
カーネルは左腕の義手型デバイス「バーンフィスト」で手刀を繰り出し、なのはのデバイス「レイジングハートエクセリオン」は障壁を展開して防御した。
「くぅぅっ!」
(アクセル・シューター)
なのはの周囲に桜色の魔力弾が展開された。元々、レイジングハートエクセリオンには「自動祈願型プログラム」が搭載されており、なのはが想うだけで様々な魔法の発動が可能なのである。
「!!」
「シュートッ!」
大きく距離をとったカーネル目掛けて魔力弾は飛んでいった。
「甘いな。」
ぱちんッ!と指を鳴らした瞬間、桜色の魔力弾は掻き消えてしまった。
「フィールド!?」
(AMFと酷似したフィールドです。)
「ふふ、この間、回収されたガジェットドローンのデータを解析してな。試験的に搭載させてみた。中々安定した性能だな。」
その時、訓練室全体を警報音が包んだ
「なんだ!?」
「PM5:55、ミッドチルダ臨海第8空港にて大規模火災発生!密輸入ロストロギアが原因と想われます、管理局員は直ちに出動準備を!」
なのはやノルゥ達は慌しく出動準備に取り掛かった
「マリー、消火装備Aタイプを頼む!」
「了解!消火装備Aタイプですね!」
消火装備、ロストロギアの爆発による火災を消すための装備で。バリアジャケットは着用者を炎から守るために水系の防御フィールド展開機能を持っている。
「カーネル・アーヴァイン!バーンフィスト!行くぞッ!」
背中に大きな黒い翼を。ブーツのサイドに黒い小さな翼を展開し、夕闇に染まる空に飛び立った。さらに、その後ろを追うかの様に蒼い光に包まれた大柄な男がついてきた。
「マーズ・H・フレイム!!ドレッドトンファーッ!!行くぜ!!」
「マーズ!今回は消火と人命救助がミッションだ!!」
カーネルはより加速して、紅蓮の炎が燃え上がる空港に消えた。
「了解ッ!!」
「遅れるなよ!フェイト!なのは!!」
マーズもまた、火炎に包まれた空港に消えた。
「私たちは人命救助だね。」
「うん。」
「リイン、ゲンヤ陸上一佐と一緒に情報処理。できるな?」
なのはとフェイトは飛行魔法で、はやては特装車両に乗り込んだ
「了解ですよ!」
3人もまた、燃え盛る火炎が渦巻く空港に消えた。
これが未来に繋がるとは・・・知るよしもなく・・・・。
#00:始まりの追い風〜FAIR WIND OF START〜FIN
キャラクター対談・・・という件に見せかけた後書き。
ミナ:「ミナルーシェと・・。」
カーネル:「カーネル・アーヴァインの・・。」
二人で:「後書きスペシアルッ!」
ミナ:「どうも。萌えっ娘もんすたぁのパッチをゲットして当てたのに、旨い事起動してくれないダメダメ作者ミナルーシェです。永いので、『ミナ』と略称表示しておきます。」
カーネル:「どうも、カーネル・アーヴァインだ。」
ミナ:「っつー訳で、初のリリカルなのはStSオリジナルストーリー『魔法少女リリカルなのは∞〜INIFINITY〜』のプロローグ、お楽しみいただけたでしょうか?」
カーネル:「モリビト28号氏を通して感想をいただけると私としても、作者としても嬉しい所だな。」
ミナ:「今回は、StS第1話の前・・・丁度『ストライカーズ・ジ・コミックス』の最終巻に当たるシーンだな。」
カーネル:「冒頭のシーンは・・・オレが叛乱軍との戦闘の後だったな。」
ミナ:「まぁ、ね。なんとなく入れてみようと思ったんだよ。しかし・・・長かった・・・。」
カーネル:「まだまだ長いんだろ?こんなところでヘバって居る場合じゃないだろ?」
ミナ:「そーぅでした・・・『3クール。超熱血ハートフル魔法少女小説』で頑張ります。(生)暖かい目で見守っていただければ幸いです。」
カーネル:「がんばれよ。」
ミナ:「以上。私、ミナルーシェと」
カーネル:「カーネルでお送りしました。」
二人で:「これからもよろしくお願いしますッ!!!」
管理人感想
ミナルーシェさんからいただきました!
冒頭の「ガナーフォース・独立クーデター」、これだけで1本かけそうな気がしますが……まぁ、それはさておき。
オリジナルメンバーがすでに参戦している関係から、過去(『A's』〜『StS』間)の出来事にも変化が出てきているようですな。
カーネルで空港で出会った女の子は……だいたい想像がつきますが、“姉”か“妹”かで展開が変わりそう。髪の長さが言及されていないのでどちらとも取れますし。
それはともかく……カーネルを気遣うヴィータを見て「ヴィータ×カーネル」なんてものを思いつく自分はダメ人間でしょうか?(苦笑)
(2008/12/28:第2版)