ここには不死者にして超越者たる、
認識の及ばぬほどに増えてしまった、無数の本がある
まずは、その中から3冊ほど紹介しよう
1冊目
赤い宝玉がはめ込まれた杖を手にする少女が描かれている
笑顔を見せてはいるものの、その体は傷だらけだ
最近の他者の為に、自己を犠牲にした英雄の物語によくある姿だ
2冊目
機械のような獣たちが描かれている
それだけ見れば新しい本のように思えるが、作りや劣化具合を見るに相当古い本だ
おそらく古代文明に関わる本なのだろうが、多くの伝承とは差異が多い
そして3冊目
ぼろぼろで、ほとんどなにも分からない
古い傷ではないため、なにかしらの理由で傷ついたのだろう
表紙と背表紙からかろうじて、EとSのアルファベットが読み取れ、赤い服の人間が居ることが分かるだけだ
よく見ると、どれも写本らしく、違和感が感じられる
この手の本は楽しく、面白い
いたずらをすると、あるべき姿から外れた物語を紡ぎだすことがよくあるからだ
とりあえず、試してみよう
先ずは文章を解体する
そのあと、文章を混ぜ合わせてしまい、何も考えず、運命の導くまま並べ替える
……これだけじゃ、面白くないな
他の写本もあったはずだ、ついでに混ぜておこう
次は、自分で用意した楽しい文章を間に挿んでいく
ここで問題なのが入れる量だ
なにもなくても、それなりに面白いものができる
しかし、本の中の世界の住人に働きかけたいことがあるなら、数を用意しなければならない
同時に多く用意しすぎると、全てが入らず零れ落ちることがよくある
あとは、この文章の集合体に“魔法”をかける
といっても、神話なんかの魔法よりも、アニメにあるような無等滑稽な魔法だ
とは言っても、これこそが、最も重要なことだ
これに触れた人に、これを使って物語を書きたいと思わせる魔法
――物語の人物が自分の経験を書き残すように――
――後を追う者が先駆者の逸話を書き記すように――
――神話の英雄に憧れるものがそれを書き綴るように――
ただ、書きたいと思わせる魔法
さて、これはどこか、出来るならば、未熟な書き手が触れる場所に置いておくとしよう
出鱈目で、陳腐で、理解不能で、滑稽な――
管理人感想
水晶さんからいただきました!
プロローグらしく本編の内容をいろいろと想像させられる流れですな。
3冊の本……一冊は当然『なのは』でしょうが、残りの二冊は……?
まだまだ始まったばかりの物語、続きを期待しております!