勇者精霊伝ブレイカー
〜神々の野望と人々の純心〜
予告編
「ここが『人の可能性を追求する為』に新造された町…”神居山町”か────
神々しいご大層な名前の割に、色々と物騒な所だよな全く……」
少年────橋本崇徳が自らの精霊器『影天銃』を下ろすと同時に、それまで彼を睨み付けていた男はその場に崩れ落ち、そのまま意識を失った。
思えば”力”の匂いを漂わせると同時に、いきなり有無を言わさず襲いかかってきたのだから正当防衛は十分に成り立つのだが……顔やら身体やら原型が変わり果てるまで撃ち込んだのは
さすがに遣りすぎたかななどと思ったりもする────。
「この町に来てこれで3人目か…いい加減疲れてきたから勘弁して欲しいところだが、
あの子達の安否も気になる。────急いだ方がいいな」
…………………………
……………
事の発端は今から3日ほど前……ジュンイチが異世界からの帰還を果たし、瘴魔神将達との戦いがより一層激化し始めた頃。
珍しく緊急出動もなく、ヒマを弄んでいたブレイカーベース……の
メインコンピュータ(forジーナ用)が一通のメールを受信した事に始まる。
「……ん、何でしょうかこのメール」
「何だどうしたジーナ? 新手の不幸の手紙か何かか?」
「何でそんな意味不明なモノをブレイカーベース(ウチ)のPCが受信しないといけないんですか」
冷ややかにジュンイチのボケをかわしたジーナは、不信感を抱きつつも
ちゃんとウィルスチェックした後に開封………
改めて文面に目を通して見るも────
「…………”しんきょ”……”やまちょう”?」
「お前も人の事は言えないぞジーナ────くだらないボケを無理矢理やらかすな」
「一度はやってみたかったんですよ、こういう天然系のボケ」
ジーナもジーナでかなりの遣り手のようだ。
”ミイラ取りがミイラになる”────ではないが、ジュンイチに引き続いて
小ボケの連続スパイラルをかましてくれたジーナを軽く小突くと、
橋本は二人に代わってメールの内容に目を通す………すると、見る見るうちに彼の表情は一変。
非常に険しいモノへと変貌し、拍子抜け状態のジュンイチ達に告げた。
「悪いジーナ、ジュンイチ……オレ、しばらくの間別行動を取らせてもらう」
「…………霊障絡みか?」
「そっちで片づいてくれた方がまだ気楽かもしれないな。何故ならこのメールの送り主は……」
”神々の力が封じられた『神具』を見守ってたんだからな”───────
さかのぼる事今から10年前……、当時まだ退魔士としては駆け出しの新人だった橋本は、
修行の意味合いも兼ねてとある学者の遺跡発掘における護衛として付き添っていた。
その学者……『星空孝人』が神具を封印した『パンドラの箱』を遺跡からの発掘に成功した後日、
彼は橋本とある約束事をしていた。
”もし…僕の娘達がこの神々の争いに巻き込まれるような事があれば……
崇徳君、君が彼女達を守ってあげてくれないか?”
小さい頃の橋本は、まだ神話とかそういう話に疎かった為、あまり重要視はしていなかったのだが……成長し、ブレイカーとして覚醒した今となってはその危険性が肌を通じてビシビシ伝わってくる。
と、そんな感じで昔とつい最近の記憶を蘇らせていた……その時
「な、何だこのバカでかい”力”は?! この質と量は間違いなく瘴魔神将クラス……
いや、それ以上だ!!」
町内を彷徨う最中、突如として現れた巨大な”力”────
自分の中に宿る”第6感”が危険信号を発し、『撤退』を促すが構いはしない。
橋本は地面を蹴る足をさらに前へと踏みださんとした矢先……その”力”を感知した方向から
2つほどやや小さめの”力”がこっちに向かって迫ってくる。
そして、視認できる距離に至ると、橋本は絶句した。
「も……もしかして、きららちゃんとさららちゃん?!」
「「た、崇徳お兄ちゃん!? え、ど、どうして────────?」」
兄妹同然の付き合いに始まり、今でもたまに親交のある
孝人の双子の娘────『星空きらら』と『星空さらら』が
何やら特殊なエネルギー体で構成された防護服に身を包み、
尋常ならざるスピードでこちらの方へと駆け寄ってきていたのだ。
そして待ち受けていたのは………
世界中の歴史にその名を連ねる英雄ないしは神々との戦い─────
「人間のクセに英雄のオレ様に挑むとはいい度胸だな! そこのガキ共を始末する前に
テメェをブッ殺してやる!!」
「……弱い者イジメをやらかす奴が、英雄なワケないだろっ!!」
触れるモノ全てがその右手の餌食─────力自慢の英雄「ヘラクレス」
「それじゃ…要約すると古代の神々や英雄が復活しちまったから、
二人がそいつ等を封印する事になっちゃったってワケか」
『済まぬ少年よ………我々としても君達のような子供達に協力を申し出るのは酷な話だが、
指輪に宿る身の私達にはこれを止める術がないのだ』
「詫びる必要なんてないさ。───霊障とは全くの別物だけど、こういう系統なら
オレも多少はかじってる。
それに……退魔士でもありブレイカーであるオレなら、きっときららちゃん達の力になれる」
『それじゃあ、協力してくれるんだね』
「当然だ。神様だかヒーローだか知らないが、誰かを傷付けるっていうんだったら
喜んで買ってやるよ。奴らのケンカを─────」
双子の姉妹を選んだ双子の英雄───『ポリュデウケス』『カストル』がそう告げると、橋本は間髪入れずに承諾。
……こうして、きららとさららと共に邪悪なる戦いに身を投じる事になった橋本。
ジュンイチ達の協力は欲しいところだが、瘴魔神将達との戦いが激化していく最中で戦力を裂く余裕はない。
全てを一人で抱え、戦い抜くしかない─────
そしてたて続けに襲いかかる、神々の襲撃。
「強い奴とギリギリのところで命のやり取りをする───その快感は他の何でも得られねえ!!
退魔士の中でもかなりの実力者と戦(や)りあえるなんて機会、そうそうあるもんじゃねぇからな
…楽しませてくれよ!!」
「やれやれ……神様の中にもブレードみたいな戦闘狂がいたなんてね。
こういうキャラは間に合ってるんだが───四の五の言ってられないか!」
戦いが全て─────女子供であれど、”力”を持つ者ならば誰もがコイツの標的(ターゲット)
……神具”ストラティオテス”を引っ提げて戦場(いくさば)を翔ぶオリュムポス神「アレス」
「早く君の全てを見せたまえ…さもないと君の大切な妹君達がさらに
辛い目に遭うというのに─────」
「見せろと言われて素直に見せる奴がいるかっての。
……言っとくが、あの二人(きららちゃんとさららちゃん)に傷一つでも付けてみろ
───オレの全てを持って、貴様を冥界に叩き落としてやる」
橋本が静かに告げるのは、神の中でも相当の実力者……だが、性格は非常に狡猾にして非情。
……神具”トライデント”と数々の神獣を操り、大いなる野望を抱く古神「ポセイドン」
数々の英雄や神々の思惑が交錯する中、橋本は神の気まぐれで
『人間の退魔士を一番最初に倒した者にこの世の支配権を与える』という非情に勝手な盟約が交わされていた事を知る。
だが、この事はむしろ彼にとっては好都合この上なかった。
「折角連中の狙いがきららちゃん達からオレにシフトしてくれたんだ────
奴らの勝手な都合で巻き込まれた人達の無念を、盛大に利子付で返させてもらうさ!」
誓いも新たに、妹達と……世界を守る為に戦う橋本。
しかし、攻め込む者達はいずれ劣らぬ猛者─────人はおろか全ての生物を超越する人外の存在。
度重なる激戦に、橋本の身体は傷付き…ついには限界を迎え───────
少女達は、神々の手に墜ちてしまう……。
残された橋本は、自責の念に駆られながらも二人を救う為に思考を巡らせる。
「考えろ…考えるんだ! ジュンイチなら相手が神だろうが悪魔だろうが、
守らなきゃいけない者がある時は絶対に負けない。
持てる全ての力で必ず守り抜く─────オレは…あの子達を………」
『オレの大切な妹達を守る為なら、オレは神にも悪魔にもなってやる!!』
少年の想いは力となり────人と共に歩む神と英雄達の想いと合わさって、新たなる伝説を紡ぐ。
「”星光の軌跡(メテオオービット)”……それって、翼君の!?」
「退魔士としてのオレ───そしてブレイカーとしてのオレのオリジナル能力(スキル)。
冥府へと旅立った者達の想いを”力”に変える…その名も、『ゲット・イン』!!!」
そして、仲間達も橋本の危機を察知し、颯爽と現れ…邪悪な者達に立ち向かう。
「全く、こんな大事を全部一人で背負い込んで……少しはあたし達を頼りなさいよ」
「追い詰められた人間が何をしでかすか……欲深な神様に思い知らせてあげましょう」
「行こう、タカ兄ちゃん! あたし達がみんな揃えば、絶対に負けないんだから!!」
「ライカ…ジーナ……ファイちゃん─────」
最後は、この男もいつもの調子で飄々と告げた。
「確かにムカツクよな、こんな自己中な神サマ連中に振り回されりゃ……」
「まあな。……でも、お前の持ち込んでくる厄介事に巻き込まれるよりかはン十倍マシだぜ、
ジュンイチ」
「言ってくれるじゃねぇか─────んじゃ、宣言通り”マシ”って所を証明をして貰うぜ、橋本!」
「上等っ!!」
大切なものを守る想いは、新たな絆を紡ぎ、”力”は巨大な野望を打ち砕く!!
「いくぜ、きららちゃん! さららちゃん!!」
「オッケー!!」
「これがわたし達の…正真正銘全力全開!!」
「「「”英雄達の絆(ヒーローズリンク)”!!!!」」」
そして、新たな物語が歴史の中に刻まれる─────
勇者精霊伝ブレイカー
〜神々の野望と人々の純心〜
「ねぇ崇徳お兄ちゃん。ジーナさんや鈴香さんってメチャメチャ胸おっきいけど、
何食べればあんな風になるの?」
「─────きららちゃん、そーゆーオヤジっぽいコメントは控えような。……女の子なんだから」
「女の子の好みが極端に偏ってる崇徳お兄ちゃんの言えるセリフじゃないけどね…」
−あとがき−
大暴走パート2。(←パート1ははじおてとのクロスSS)
『GM異聞』で対抗(爆)されてしまったので、負けじと新年早々非常にアレなウソ予告を書き上げてしまいました。
今回のクロス作品は同人サークル「ぱんだだんぱ」様のAVG『魔法少女きららとさらら 〜星天のディオスクロイ〜』で、
主人公はブレイカーより橋本君に出張って貰いました。……本当はジュンイチ君を主人公にして暴走の限りを尽くして貰いたかったんですが、それをやると『Triangle hazard』並の血みどろストーリーになり兼ねなかったので、辞退して貰ったのはここだけの話(苦笑)。
さて、この「魔法少女 きららとさらら」…略して「きらさら」の大まかなストーリーですが────
孝人が管理していた『パンドラの箱』の封印が、何者かの手によって解けてしまい、彼等の住む”神居山町”のあちこちで神や英雄が人の身体を乗っ取って大暴れ。
時を同じくして、復活した英雄…『ポリュデウケス』『カストル』のかわりに復活した神々や英雄と戦う事になってしまったきららちゃんとさららちゃん。
いきなりのデビュー戦でぶつかったのが英雄「ヘラクレス」で、色々ドタバタはあったものの何とか撃退できたのに始まり、とある神サマが
『この二人を最初に倒したヤツに世界の支配権を与える』
何て言い出すもんだから、それ以降頭のネジがトんだ様なイッた神様方が多数彼女達の元へ押し寄せてくる事に。
果たして、彼女達は自分達の住む町と人々を守り抜く事が出来るのか!?
────という感じで進んでいきます。
そんなこんなの「きらさら」ですが、”力(神霊力)”の概念や物語における精神性────
何より”大切な何かを守りたい”という点がブレイカーとそっくりなんですよ。……そう思うのは多分私だけなんでしょうが(汗)。
加えて、登場するヒロイン達は全員かなり個性的な面々ですし、戦闘能力も高い事から十分ブレイカーズのヒロイン達ともタメを張れるかと。
バトルは勿論、色恋面でも(爆笑)。
なおこのゲーム、主人公(兼ヒロイン)が双子という事もあってかストーリーも「きらら編」と「さらら編」の2部構成になっており、
しかもきららちゃんとさららちゃんが共に性格や得意分野が真逆という事もあって、根本的なストーリー展開は同じでも考察の違いとか、共通ストーリーに至るまでの経緯が全く違ったりと、
内容的にはかなり読み応えのあるものになっています。選択肢もないのでスラスラ気軽に見れたり出来るというのも大きなポイントですね。
バトル中には、BGMと場面が一体となって臨場感をかき立てるD・E・S(ドラマティックイベントシステム)の採用や、
あらゆる場面で登場する専門用語に対する辞典機能など、ギリシャ神話の詳細に疎い人(例:私(←マテ))でも楽しめるようになってます。
興味のある18歳以上で、しかも陵辱シーンが平気というお兄さんは是非御手に取ってみては?
以上、『心は永遠の14歳────』……仕事場の新年会で行う余興のネタで苦しんだtakkuでした。
※注:このウソ予告は全年齢対象でお届けしています
管理人感想
takkuさんからいただきました!
今回は同人ゲームからのクロスですか……モリビトは同人ゲームは二次創作にしか手を出したことのない人間ですが、これは面白そうですなー。
サークルさんのサイトによればショップ店頭でも扱ってるらしいですし、買いに行ってみようかと考える今日この頃です。
さて……最初に読んでみた感想。
「初戦からいきなりヘラクレスかいっ!」まずここで止まりました(笑)。
ヘラクレスといえば某型月作品ではあの狂戦士。最強クラスだったあのお方。
幸いこっちは12も命を持ってないようですが、いきなりそんなのが相手か……と思って良く見てみると――
「味方サイドは双子座のあの二人かいっ!」
(↑ポリュデウケスとカストルは双子座の神話に登場する双子デス)
もちろん真っ先に脳裏に浮かんだのは金ピカ鎧の聖なる闘士様。「そりゃ主役級には相応しいわな」と勝手に納得。
幼馴染の二人を守り、神々や英雄達との戦いに身を投じることになった橋本。
本編の橋本は、現時点ではどちらかというと“守りたい存在を守ること”よりも“友人である涼の遺志を継ぐこと”が瘴魔と戦う主な理由となってるフシがあります。
そんな彼が、きららとさららを守るため“守るための戦士”になろうとする、っていうのは正直ワクワクするシチュエーションです。モリビトの中の全米が拍手喝さいです。
こりゃ確かにジュンイチには任せられない役どころですな。ヤツに任せたら原作とは違う意味での18禁指定が確定です(笑)。
…………それにしても、年上好きなのに年下相手にばかりフラグが立ってるな、この男(爆笑)。