〜フェイトとパラムの物語〜



世の中で起きる出来事には
『どうにかなること』と『どうにもならないこと』の
たった2種類しかないらしい。
 
 
そして────わたしは
『どうにもならないこと』に
何度も直面する事になる。
 
 
それは……曰く「運命」
それは……曰く「宿命」、と────
 
 
 
だけど────────わたしは思う
『どうにもならない』んじゃなくて……
 
 
『どうにかしなきゃいけない』って────
 
 
 
「ん?」
「どしたの、フェイト」
「アレ……」
 
 
ジュンイチさんとアルフに付き添われ、
夕食の買い物を終えたわたしは、
”彼”に出逢った。
 
 
「……プ…キュ────プルゥ………」
「大分弱ってるけど、命には別状はないみたい。
────ところで、この子ってもしかして」
「捨てネコ、捨てイヌならぬ『捨て魔法生物』…と言った所か?」
「────笑えない冗談は程々にしときなよ、ジュンイチ」
 
 
 
心無い魔法科学者が生み出した、人工の命…魔法生物。
 
最初はただ、人事のように見えなくて…
我が身の事のように思えてしまって────
 
結局、わたしはエイミィやジュンイチさんに無理を言ってしまい……
 
 
魔法生物────『パラム』の世話をする事となった。
 
 
「ところで……パラムって、何食べるんだろう?」
「やっぱ魔法生物だから、魔力を与えればいいんじゃないかい?」
「そっか────じゃあ…」
「ちょ──っと待った、フェイト。
ご主人様のフェイトの魔力はその使い魔であるあたしの魔力でもあるわけだしぃ。
あたしがあげても何の問題もないだろ?」
「ま、まぁ……そうだね」
 
 
気のせいかな……
アルフの目の奥で嫉妬の炎がメラメラと燃え盛ってるように見えた。
 
「ほーらほら、パラムぅ───ゴハンだぞ〜〜♪」
「──────はぐっ」
「っ痛ぁ────────い!!!」
「あ、アルフ?! だ、駄目だよパラム! 噛んじゃダメ────!!」
「手ぇ!! 手から吸われてる!!
魔力メッチャ吸われてるぅ〜〜!!!
 
 
最初の内は、アルフはもちろんわたしにも懐いてはくれなかったパラム。
時にはなのはやジュンイチさん────
ひどい時にはブレイカーズの皆さんや
アースラのスタッフまでも巻き込んで…
色々、迷惑とかも掛けたけど───
 
 
「……フェ───『ふぇ〜と』」
「───?! ぱ、パラム! あなた喋れるように!?」
「…な……『ナ〜ハ』……ア…『あ〜ふ』」
「わたしやアルフさんまで…!」
「パ、パラム!! 次、オレ! オレ!!」
「…………………………『じ』?」
「何故オレだけ中途半端にぃぃぃぃぃっ!!」
 
 
何だか、パラムが昔から居る…大切な家族のようで
とても嬉しくて…楽しくて…
こんな時間が、いつまでも続いて欲しいって
思ってた……。
 
だけど────起こってしまった。
やって来てしまった。
永遠の別れへと運命を加速させる、最悪の事態が。
 
 
「今まで大切に育ててくれてアリガトウ。
────だが、ママゴトもここまでだ。
我が最高傑作を…そろそろ返してもらうぞ」
 
 
Dr.ナカマツ────第1級次元犯罪者。
魔法生物や、生物兵器の研究・開発を行う
マッドサイエンティスト。
 
あちこちで立て続けに発生する魔法生物の迎撃の為に、
不在だったなのはとジュンイチさん
 
わたしとアルフは、パラムを守るため
全力で戦った。
でも────────
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ふぇぇぇぇぇとぉぉぉぉぉぉっ!!」
「パラム────────────っ!!!」
 
 
力尽き、為す術なく空を見上げるわたしを、
パラムは、力一杯叫んだ。
 
蒼天の夜空が、わたし達の叫びを包み込むように、
広がる中で────────。
 
 
 
リンディ提督の話によると、ジュエルシード探索や対堕天使戦の為にも、
パラム救出のメンバーは割けないとの事。
 
この決断には、わたしはもちろん他のみんなも不服だったけど、
誰も反対意見を唱える人はいなかった。
 
そんなわたし達をあざ笑うかのように
物語は、さらに残酷な方向へと向かっていく。
 
 
 
ハ───ッハッハッハ!!
この圧倒的存在感! そしてこのパワー!! 溢れんばかりの魔力!!
やはり”プロト04”を貴様の元へと預けたのは正解だったようだ──────
改めて礼を言わせてもらうぞ、フェイト・テスタロッサ」
 
 
Dr.ナカマツは最初からわたしの魔力を利用する為に、
パラムをわたしの元へと置き去りにしたのだと、その時判った。
 
────Dr.への怒りや憎しみよりも、
パラムの悲しみや苦しみが
わたしの胸を締め付ける……。
 
 
「確かにパラムを育てたのは、殆どフェイトだ────だが思い出してみろ。
パラムはものすごい食い意地の張ったヤツだったんだぞ?
アイツはフェイトやなのはの魔力だけでは飽きたらずに
魔力が含まれた”オレ達の精霊力”までつまんでたんだぜ?」
「そこから導き出される結論────」
「まだ、諦めるには早過ぎる。────ということですよ」
 
 
見えてきた、希望の光──────
 
 
「ワ……ワシの可愛い息子達が!!」
「ったく、この程度で自慢げにケンカ売って来んなよ。
これだったらまだ”アイツら”の方がいい仕事をするぜ」
 
戦場に降り立つ、黒き暴君────
 
「何故だ!! ”プロト04”はテスタロッサの魔力資質をも取り込んだのだぞ!
それが何故こうも攻撃が当たらんのだ?!」
「悪いけどこっちも高速戦闘は大の18番(オハコ)なのよ!!
フェイトの為にも、絶対に負けらんないんだからぁぁぁッ!!
 
空を駆ける、光の鳳凰────
 
みんなで力を合わせ、なんとかDr.ナカマツを倒す事ができた。
────でも
 
 
「マズイぞ! 今のパラムは制御装置がイカれてる上に
人間への憎しみで我を忘れてる────!!」
「このままだと……どうなるんです?!」
「最悪世界中の軍隊との全面戦争になって────
ヘタすりゃ核の雨あられ三昧だぞ!!」
「───っ!!」
 
 
止めなきゃ────わたしが。
こうなってしまったのは、わたしのせい。
わたしがパラムを育てるなんて言わなければ────
わたしがパラムと同じ時を歩もうと思わなければ────
わたしが……”パラムと出逢わなければ”────
 
でもそれじゃダメ。…それだけじゃ、ダメなんだ。
 
 
「おい、フェイト」
「え…?」
「お前はどうしたい?
友として…家族として今のパラムを討つか────
人という存在から今のパラムを守るか────
どっちを選ぶ?」
「ジュンイチさん────
わたしは……そのどちらも選ぶつもりはない。
わたしが取るべき道は…たった一つ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「パラムを──────今度こそ助けるんだ!!」
 
 
たとえ命の長さは違えども…
その心に宿る気持ちは、わたしもパラムも
きっと、おなじだから────。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『だいすき、だよ』
 
 
 
 
 
〜フェイトとパラムの物語〜
 
 
 
────重ねたい時間、ありますか?────
 
 
 
あとがき
 
今までのウソ予告の中でも間違いなく最長スケール。
しかも珍しくギャグは控えめのシリアステイストでお送りしてみました。
…一応、今回はクロスする作品が作品な為、あとがきもマヂメにいきたいと思います。
 
どうも、おはこんばんちわ。takkuです。
 
今回なのブレとクロスしたのは今月8日から全国放映されている「マリと子犬の物語」
────とは言ってもクロスしてるなって言えるのは全体の雰囲気とサブタイトルコールくらいです。
マリは勿論の事、彩ちゃんや亮太君、安田2曹なんて一コマも出ていません。
 
こーいう雰囲気だけのクロスってアリかなー何て内心ビビリながら大学ノートに下書きし、執筆しましたがどうでしょうモリビトさん(恐)
 
 
────さて、本作の内容ですがリリなの系の小説にしては珍しい(と、私は思う)
フェイトちゃんメインのお話。
だいたいなのブレのウソ予告や単発SSでもジュンイチ君やなのはちゃんがメインで語られてますし、
TWでもうしばらく(少なくとも年内は絶望的(滝汗))
フェイトちゃんの出番が無さそう
なので今回彼女にスポットが当たりました。
 
定義は違えど、”造られた生命”という事で他人事のように思えなかったフェイトちゃんがパラムを世話していくウチに、
家族とか、姉弟とかそういった身近な存在になっていき、パラムと居る時間に幸福を感じるようになると。
 
しかし、作中にもある通り、パラムは元々Dr.ナカマツが自分の欲望を満たす為に造り出した生物兵器のプロトタイプ。
運命的な出会いを果たした2人は、運命によって引き裂かれ、共に敵対する存在へとなってしまう。
 
そういった『どうしようもないこと』を目の前にして、フェイトちゃんや仲間達は果たして”パラムとの時間”を取り戻す事が出来るのか?!
 
……てな感じで構成されてます。
物語のテーマとしてはまさに『マリ』が教えてくれる
『生きる事の楽しさと苦しさ』
『大切な物・命を守る為の勇気』
をフェイトちゃんに語って欲しくて今回このウソ予告を書きました。
 
……ウソ予告に留めたのは、『連載するならしっかりとネタと結末を温めてから』とくくったからです。
どうせ連載するならありきたりのオチで終わらせたくないですからね。
 
 
ちなみに……私が「マリと子犬の物語」を観た時、恥も躊躇いもなく号泣しました。
服もかなりビショビショ。────汗なんかかいてもいないのに。
悲しい涙ではなく、心が温かくなるような…そんな涙。
この涙の存在を教えてくれたこの映画を、ぜひ皆さんにもおすすめしますよ────!
 
 
……ただし、観る時はハンカチを2〜3枚
常備しておく事をオススメします(爆)。

管理人感想

 takkuさんからいただきました!

 雰囲気だけのクロス、とのことですが……これはこれでOKかと。ちゃんと物語が成立してますし。
 少なくとも「見せましょう」ネタにも手を染めているモリビトとしてはぜんぜん無問題です。

 フェイトとパラムの交流。『どちらも“自然の摂理に背いた命”である』という共通点から始まったものですが、そこに生まれた絆は確かなもの。
 確かにこれはフェイトだからこそ成立するテーマだと思います。

 「マリと子犬の物語」、見に行きたい映画のひとつではありますが……残念ながらまだ未見。休日出勤や寮の年末大掃除で忙殺されていたツケがこんなところで出ています(涙)。