ごく最近まで、平凡な小学3年生だったわたし『高町なのは』に訪れた小さな事件……。
 
始まるは大いなる戦いの序章。
 
動き出した歯車は、いつか大きな絆になる………。
 
戦いの先に待つのは、絶望か希望か……?
 
今、女神と悪魔との戦いの幕が開ける─────
 
魔法少女リリカルなのはvs勇者精霊伝ブレイカー×英雄伝説 空の軌跡SCクロス小説
 
Triangle World 〜空を翔る英雄達〜 始まります。
 
 
 
第1話「乙女の決意」
 
 
8月2日 A.M.11:37 場所…海鳴市 高町家リビング
 
「うぉ〜い、なのは、フェイトぉ!」
「あっ、ジュンイチさん。お帰りなさ〜い」
「お帰りなさい、ジュンイチさん。結局リンディさんにどういう理由で呼び出されたんです?」
 
 リビングに入るなり、同室のプラズマテレビで格闘ゲームに洒落込んでいたなのはと、ジュンイチと同じ世界の住人にして大地のブレイカー……
 ジーナ・ハイングラムも一旦ゲームを中断してジュンイチの方に顔を向ける。
 元々ゲーマーであるジュンイチと一緒に生活していただけあって、ゲームの知識に関してもかなりのものであったジーナだったが、
 なのは達が府中市にやってきてからというものの、完全に”目覚めた”らしく今では家主のジュンイチを超える知識とテクニックの持ち主となったのだ。
 ……さすがに格闘ゲームではコマンドの入力においてジュンイチに軍配が上がってはいるが、それ以外のジャンル────RPGとかシミュレーションとか
 とかく知識やインスピレーション、根性を要求する面においては彼女の方が一枚も二枚も上手だ。
 そんな感じで、時々海鳴に来てはこうしてなのはと共に腕を磨きあっている現状に一抹の不安を感じつつも、とりあえず
 アースラでの事の成り行きを簡単に説明し、ジュンイチは例のMOディスクをジーナに差し出す。
 
「今や懐かしですねぇMOなんて……まるでどこぞの傘会社の研究所みたいです」
判る人にしかわからねぇボケかますな─────っで? 読めるか、コレ?」
「えぇ、大丈夫ですよ。……なのはちゃん、ちょっとノート貸してくれる?」
「あ、はぁ〜い」
 
 ジュンイチのつっこみを軽くあしらうと、ジーナは手持ちのMOドライブを鞄から取り出しつつ、なのはからノートの借用を要請。
 その一方で、不思議そうな面持ちでフェイトは事の成り行きを見守っていた。
 
「それにしても……リンディ提督、どうしてこんな回りくどいやり方を?」
「さてな……傍聴させる訳にはいかない内容なのか、はたまた別の理由か………。
登録抹消品なんて要は欠陥だらけの不良品だからな。でもそーゆーのに限って異常な個体性能(スペック)っつーのはある意味お約束なワケで……欲しがる連中は山のようにいるだろうし。
ま、考え得る理由は腐るほどあるが、何にせよこのMOをみりゃすぐに判るだろうな」
「だといいんですけど………また、繰り返されるんでしょうか? ジュエルシードを巡る戦いが………」
「まぁお前さんからすりゃジュエルシードっつー存在自体いろいろな縁ゆかりのある存在だからな。気が気じゃないって気持ちはわからんでもない」
「──────────」
 
 フェイトは答えない。
 自分もかつて、ジュエルシードを巡ってなのは達と対立し、時にはボロボロになるまで戦うこともあったからだ。
 そして今回、新たに自分達の集めたジュエルシードを求めて堕天使という連中も介入してきた。
 強大すぎる力というのは、その存在だけで争いの火種となる。それを彼女はイヤと言うほど思い知っているのだ。
 だからこそ、今回のリンディのやり口はゆったりとしすぎていて……どこかもどかしい。そんな心情を悟ってか、ジュンイチもあまり多くは語らない。
 
 別の視点からすれば、自分達ブレイカーも特異の代表格だ。今でこそ瘴魔との戦いで何とか気がそれているものの、本来ならば自分達の力というものは
 諸外国の軍隊からすればそれはもう喉から手が出るほど欲しがる異能の力だ。もし瘴魔達がいなくなれば自分達は
 間違いなくそんな”連中”の争奪戦に巻き込まれることは必須。
 だからこそジュンイチには痛いほどよくわかるのだ。フェイトが今、どういう気持ちでここに立っているのかが。
 
「そういや、探索と封印担当のメンバーも一緒に記録されてるんだろ、このディスク?」
「あぁ、そうらしいけど。────やっぱ気になるか?」
「そりゃ、フェイトが探索メンバーに入ってりゃ必然的に使い魔のあたしも行くことになるからね」
 
 そうジュンイチに答えるのは、フェイトに同じく最近”半ば”高町家の居候と化してきている彼女の使い魔であるアルフだ。
 なのはの兄であり、剣術家でもある恭也の指導も相まって最近では単独での戦闘もかなり様にはなってきているが、それでもやはり前提はフェイトとの連携戦だ。
 フェイトの機動を生かしつつ、スピードとパワーを生かすコンビネーションは彼女との連携でなければ実現はできない。
 そこら辺はやっぱり長年のキャリアから来てるんだろうなぁと心の中で微笑ましく思いながら苦笑するジュンイチであった。
 
 それから2分弱してから、なのはが自室からノートPCを持ってリビングへと戻ってきて、起動の準備を整えた。
 一方のジーナもすでに準備万端の様子。あとはディスクを読み込んで中身を確認するのみである。
 
 
 
 
 
 
 
8月2日 P.M.0:25 場所…海鳴市 高町家ダイニングルーム
 
「というわけで、明日からしばらくの間また家を出ることになりました……」
 
 申し訳なさそうになのはが母である桃子に告げる。ちなみに現在ジュンイチ達も交えて昼食(冷麦)中である。
 ディスク内包のデータを読み込んで出てきた探索メンバーの布陣────それは予想通りとも取れ、かなり意外な内容とも取れた。なぜなら………
 
探索及び封印担当メンバー:ジュンイチ、ライカ、ファイ、なのは、フェイト、ユーノ、アリサ、すずか、恭也、美由希、忍
 
 ……アリサやすずかは分かるとして、何で一般ピープルの忍まで含まれているのかは何となく察しがついた。
 多分本人の熱烈な希望(や、実際忍がリンディに懇願してるところ見たし)により、技術スタッフとして同行することになったのだろう。
 なのはやフェイト、そして自分達に降りかかるであろう一抹どころか百抹くらいの不安に身を震わせながら
 ジュンイチがデータを確認していたのはまた別の話である。
 
「まぁまぁ……ずいぶん急な話ね」
「すんませんね、さすがにこのオチはオレでも予想がつかなかったッス」
「しょうがないわよ……でもま、ジュンイチくんが一緒なら桃子さんも安心かな。ジュンイチくん優しいし強いし」
「───────」
 
………照れた。
 
「少なくとも、忍に関しては夏休み中の課題がまだ残ってるので、正式にメンバー入りするのはかなり後になるらしいが」
「でも、賑やかになりそうだよね」
「出来ることならそんな日は永遠に来て欲しくないものなんスけど……」
「まぁそう言うな。前にも言ったが…命に関わる程のことはされないんだし、一種のスキンシップと割切r」
「れません」
 
 そう答えるのは恭也となのはの姉であり、恭也と同じ剣術家の美由希だ。
 そんな彼らの会話にジュンイチが横から水を差すが、逆に恭也が恐ろしいことをほのめかすものだからすべてを言い終える前に
 ジュンイチが釘を刺す。それほどまでにイヤなのか……忍の”調査”は。
 
「それに……課題があるっちゅう点ではライカもファイも一緒ッスよ。ファイはともかくとして、ライカのヤツ、オレが散々注意しても
与えた課題期日までにやりやがらねぇッスから」
「………文武両道は辛そうだな、あの二人は」
 
 ものすごく納得できてしまうあたり、悲しいなと思う恭也だった。
 
「いぃな〜〜…師匠も美由希ちゃんもついていけて」
「うぅ…ウチらも出来ることならお手伝いと行きたいところやったんですけど」
「こら二人とも、遊びに行くんじゃないんだぞ? 特にレン、お前に関しては友達と勉強会するんだろ? 約束を破るのはよくない」
『ふぁ〜い……』
 
 恭也にたしなめられ、しょぼくれる二人の少女は”城島晶”と”鳳蓮飛”である。
 アルフと同じ高町家の居候なのだが、今ではすっかり同家の次女と三女だったりする。
 
「とりあえず、行ける人員だけで明日から早速向かいますんで夜露死苦」
「はぁ〜い……それじゃ、お弁当フェイトちゃん達の分も用意しといてあげるわね」
「あ、ありがとう…ございます……」
 
 桃子の申し出に、真っ赤になって照れながらフェイトが答える。
 明日は大荷物になりそうだ。……何となく荷物持ちの代表格になりそうな予感がして、心の中で苦笑するジュンイチだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
8月3日 A.M.9:28 場所…時空管理局所属 巡航L級8番艦 アースラ、転送ポート
 
「まさか大々的にこの転送システムを使うことになるなんてね」
「未だに慣れてませんもんね、ジュンイチさん」
 
 なのはの一言にバツの悪そうな表情を浮かべるジュンイチ。こうしてる分には歳相応の少年なんだが…などとは口が裂けても言えない。
 結局、課題絡みで忍とライカ、そしてジュンイチから追加の宿題を出されたファイはそれに区切りがつくまで居残りという処分を言い渡された。
 特にライカについては出発直前まで駄々をこねてくれた為、ジュンイチが強硬手段に訴えて強制的に沈黙させたのは秘密だ。
 そんなワケで、今日集合できたのは既に宿題をあらかた終わらせているなのは、フェイト、アリサ、すずか、恭也、美由希にユーノとアルフのパートナー組。
 そしてグループを束ねるリーダを言い渡され、若干気分がブルーなジュンイチである。
 
「うぉーっし、設定準備完了! いつでもオッケーだかんね、ジュンイチくん」
「ラジャ♪ 野郎共、準備はいいかーっ!?」
「ジュンイチくん……ひょっとして今この場に”野郎”が何人いるか知っててワザとボケてる?」
「細かいなぁ美由希ちゃん………ま、いいじゃん。こういうのはノリなんだし♪ っつーワケで有無を言わせません」
(強制執行デスカ………)
「ということで改めて、準備はいいか野郎共────!!」
『お─────っ!』
 
 意気揚々とかけ声を上げ、転送ポートの魔法陣の中に入るジュンイチ達。そして、全員が魔法陣の中に入り終えたのを確認し、
 エイミィは手元のコンソールを操作……転送魔法を立ち上げる。と……
 
(あれ………? 次元壁干渉エラー…レジスト関数微反転? まただ……この次元世界にアクセスしようとすると絶対なるんだよなぁ)
 
 手元の転送デバイスの表示を確認するなり、エイミィはうめく。
 2項目とも次元世界への跳躍のために監視しなければならないのだが、ジュンイチ達が向かおうとしている世界に対しては微弱ながらこの項目に対して異常が見られるのだ。
 だが、あくまでも数値の変動は軽微なものである為、転送魔法そのものへの影響は無いと言っていいとエイミィは判断する。
 
「そいじゃ、いくよぉ〜〜♪」
 
コンソールの決定キーを勇みよくエイミィが押すと、転送魔法が発動。
ジュンイチ達の周囲は光に包まれ……光が濃くなっていく。そして、光が収束したときにはジュンイチ達の姿は消えており、部屋の中に残されたのは
エイミィだけとなった。だが、先程まであふれていた笑顔はどこかへと消え去り、祈るように魔法陣を見つめている。

(がんばってね、みんな……必ず、帰ってきてよ!)

 普段のおちゃらけた彼女とは似ても似つかない心からの祈り……これ程までにジュンイチ達の心配をするエイミィの気懸かりはジュエルシードとは別の、
 大きな力が存在するという可能性に行き当たった為だった。
 無論、その力が新たな戦いの幕開けになることも、エイミィは薄々感づいていたのだろう。そしてその戦いを止められるのもまた、彼等でなければ不可能だと………。
 
 
 
 
 
 
 
8月3日 A.M.9:35 場所…???
 
 転送魔法の光が徐々に収まり 、自身の視界に転送先の景色が入る………って
視界に地面が見あたらないってどういう事やねん。
  
「何でいきなし空中に放り出されるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 
 思わず自身の置かれた状況にジュンイチは絶叫する。と、その隣をこれまた同じく、ニュートンさんの発見した自然の摂理に従って落下する”物体”が一つ。
 
「ジュンイチさぁぁぁんっ、たぁすぅけぇてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
「ぬぇっ、なのは?! …ちぃっ!!」
 
 ドップラー効果を伴いつつ絶叫し、落下していくなのはを掴んだジュンイチはとりあえず手近の岩に捕まる!
 直後自身の肩を襲う強烈な衝撃。だが脱臼するほどのものじゃない……。落下の危機を脱したジュンイチは改めて状況を確認しようと、救出したなのはの方を向くと
 
「ふにゃぁぁぁぁ………頭に血が上るぅ」
 
 逆照る照る坊主よろしく、ジュンイチに右足首を掴まれた状態で宙ぶらりんになったなのはの姿が。
 当然この体勢だと自然と目に入ってしまう”アレ”を思わず目撃してしまい、ジュンイチがつぶやく。
 
「あ、薄ピンク
 
ずげしっ!!!
 
 フリーになっている左足でジュンイチの脇腹に思いっきり蹴りこむ。コレは痛い。思わず激痛で足を掴んでいる手を離しそうになるが何とかキープ。
 
ジュンイチさんのエッチ! 助けてくれたのは素直にありがとうですけど、最後が余計ですっ!」
「しょーがねぇだろ、見えちまったモンはっ!! 第一、その体勢がイヤならとっとと変身して飛びやがれ!」
「あ、そっか……レイジングハート、お願い」
〈All right. Barrier Jacket──〉
 
 自身の能力をすっかり忘れていたなのはは、すぐさまにレイジングハートを起動。まずは白を基調としたバリアジャケットを纏う。その後……
 
〈Flier Fin──〉
 
 すぐさま飛行魔法を発動させ、宙を舞う………が、何の前触れもなくいきなり発動させるもんだから今度はジュンイチが宙ぶらりん。

「な、なのは……”げしっ!”っ! ちょ、ちょっ”ばきっ!!”っ痛ぁ!! っ手、手g”がんっ!!”あべし!!!
 は、離…離させt”ばこっ”てぶら!!!!
 しかも、そのままの状態で地面すれすれを滑空し、着陸しようとするものだからなのはの足を掴んだまんまのジュンイチすっかりボロ雑巾。
 絶対ぱんつ見た仕返しとばかりにわざとやっただろ……心中でそううめくと、ジュンイチは血で滲む視界を手で拭い、辺りを改めて見回してみる。
 
 まず最初に視界に入ってきたのは太陽に照らされて目映い光を光を発する海岸線。穏やかな風になびく街道沿いの草木。
 そして肌を撫で、微かに鼻腔をくすぐる潮風が何とも心地よかった。海鳴臨海公園のような人工的な景色ではなく、あくまでも自然のそれの雄大さに
 柄にもなく綺麗だなぁと感傷に浸っていた自分に、ジュンイチは思わず苦笑する。
 が、いつまでもここで立ちぼうけという訳にもいかない。周囲に人気がないか、神経を集中させる……するとすぐに見つかった。
 
「近くに人の気配は………あるな。大体南南東に400mと北西に約1km位かな」
「相変わらずどうやって探ってるのか謎な能力ですね……」
「悪かったな、謎でよ。────とりあえず街か村に向かって離ればなれになったメンツを探し出さないと」
 
 そう。状況確認で周囲を見回したときに分かったのだが、今この場にいるのはなのはとジュンイチだけ。
 一緒に転送魔法でこの世界にやってきているはずのフェイトやアルフ、ユーノ、アリサ、すずか、恭也と美由希は今この場にはいなかったりする。
 フェイトや恭也達は兎も角として、アリサやすずかに関しては一番の親友であるなのはは勿論ジュンイチも安否を気にかけていた。
 
(そういや転送の時に時空間の歪みみたいなものを感じたけど──────エイミィ強制的に転送しやがったな)
 
普段の彼女からすれば、らしくないミスである。だが結果的には目的地に転送は出来ているので問題は無いといえば無いワケで………
とりあえず、彼女への罪の言及は後にしておくとして……当面の問題の処理を行うことにした。
 
「さてと……とっとと出てこいよ。気配消したつもりだろうけど獣臭ぇからバレバレなんだっつーの」
「え? え?!」
 
 突然のジュンイチのハッパに反応し、あたりの物陰から続々と姿を現す原住生物達。
 辺りが海沿いということもあってか、見た目もサメとかカニとかそれっぽいのばっかりだがどれもこれもジュンイチ達に対する殺る気で満ちている。
 その総数、ゆうに2桁に上ろうとしていた。
 しかもどこから知恵を回したか、二人を包囲する形で円形陣を作り……ゆっくりと距離を縮めてくる。
 
「熱烈な歓迎、ご苦労さん……今日の晩飯は魚介がたっぷりの石狩鍋だな」
「悠長に構えてる場合じゃないですよ! いくらわたし達でもこの数は……」
「────しゃぁねぇ。一カ所どでかい一発ぶちかまして穴開けて一気に突破するぞ!」

言ってジュンイチも自身の愛刀”紅夜叉丸”を抜き放ち、”力”を込めて臨戦態勢に。一方のなのはは、レイジングハートをデバイスモードから射撃に特化した
シューティングモードに移行させると、颯爽と魔獣達に視線を移す。

「わたしがディバインバスターで穴を開けます…ジュンイチさんはそこから一気に切り崩してください!」
「任しとけっ!!」
 
”あー止めた方がいいわよ? ここの魔獣は執念深いから切り崩すだけじゃすぐに囲まれ直されるわ”
 
「──────?!」
 
 臨戦態勢に入っていたジュンイチの頭を踏みつけ一人の人影が跳躍、そのまま背中に携帯していた獲物に手を伸ばす。
 棒術具(スタッフ)────それがその人物の……”彼女”の相棒だった。
 
「とりゃああぁぁぁぁぁっ!!」

 
 跳躍と同時に相棒を振りかぶり、なのはの背後から迫り寄っていた一体の魔獣に一閃。とてつもない一撃に喰らった魔獣はそのまま沈黙するが、
 それでも彼女の集中は途切れることはなかった。既に彼女の目は、他の魔獣達に向いていたのだ。
 
「あ……ありがとうございます、助けてくれて」
「気にしなくていいわよ。それがあたしの仕事だから──────そこのあなたは大丈夫? 何で地面に突っ伏してんの?」
「………モウイヤ(T_T)」
 
 踏みつけられても気付いてもらえず、冷たい対応しか返ってこない現在の自分の扱いに血涙を流しながらジュンイチはいぢけモードに突入。
 
「罪もない動物を傷つけるのは少々アレですが、人様に迷惑をかけるのなら容赦はしませんっ!!」
「って、えぇっ?! 意気揚々としてるけど、あなたも戦うの?!!」
「えっと……戦うというか、軽いオシオキというか……」

言いつつも、なのははレイジングハートを構え、叫ぶ!

〈Divine Buster──!〉
「シュートォ!!!」

 レイジングハートの周囲を3本の環状魔法陣が囲み、魔力を収束…現状で、なのはの主砲である『ディバインバスター』が一筋の桜色の光の線となり、
 魔獣の群れ目掛けて空を切る!
 そして、光が収まった後には力無く崩れ落ちた魔獣達がそこにいた。


「な、何よアレ?! 導力魔法(オーバルアーツ)でも一撃で魔獣を黙らせるなんてできないのに……」
「ジュンイチさん、いぢけてないで手伝ってくださいよぉ〜!!」
「へぇへぇ…全く、人の気も知らないで」

 なのはの文句に微妙なテンションで受け答えするジュンイチだが、やはりまだ立ち直れきれてないのか、答えにやる気が感じられない。
 だが、彼の右手にはちゃんと”気”が込められている。溢れんばかりのエネルギーが紫電となり、荒れ狂う中、ジュンイチが右手を翳し吼える!

――雷光弾!

 彼の右手から解き放たれた雷の弾が鈍重なサメ型の魔獣に命中。しばらくの間、電撃に悶え苦しんだ後魔獣は沈黙。
 だがそれでもジュンイチの猛攻は止まら……いや、むしろ腹いせとばかりに半ば八つ当たりのようなテンションで”紅夜叉丸”を構え…

――雷鳴斬!

 振りかざした”紅夜叉丸”から雷の一閃が解き放たれ、残りの魔獣を一掃する。


「…………ひょっとしてあたし、助ける必要なかったんじゃ?」
「んなことねぇよ。あのタイミングで突っ込んでくれなきゃ奴らの虚はつけなかったし、何より…」

 ジュンイチが動き出してからの展開は、それはもう早かった。
 彼の(半分以上逆恨み)猛攻によって完全に全滅した魔獣の群れを改めて再確認し、うめく助っ人の少女に対して、
 ジュンイチはなのはの方に視線を移しながらすっぱりと言い放つ。

「この未熟者を助けてくれたのには素直にありがとうだ」
「うぅ……事実なだけに言い返せない」

 身内にはとことん容赦のないジュンイチの評価に、ただただ項垂れるしかなかったなのは。
 と、一つ解決していない問題が。最初に気付いたなのはがそのことに対して告げた。

「というかお姉さんどちら様ですか? 助太刀して貰っておいてなんですけど………」
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったわね。あたしは────」
 
 
「あたしはエステル・ブライト────よろしくね、お嬢ちゃん達♪」
 
 
to be continued...

 
次回予告
 
突然わたし達の前に現れた、正遊撃士のエステルさん。
 
エステルにつられるまま孤児院について行ったりガキの世話したり、手配魔獣退治に付き合わされたり……成り行きでオレ達も遊撃士扱い?!

そんな忙しそうなエステルさんですが、本当は”あるもの”を追ってるんだとか
 
”あるもの”って何なんだよ……って、何で黙り込むんだなのは?
 
えっと……その………”亡霊”、らしいです。
 
────────────逃げてもいいすか?
 
次回、魔法少女リリカルなのはvs勇者精霊伝ブレイカー×英雄伝説 空の軌跡SCクロス小説
 
Triangle World 〜空を翔る英雄達〜 第2話『紡ぐ絆、忍び寄る影』
 
リリカル・マジカル!
 
幽霊イヤ………お化けキライ………
 
 
 
 
−あとがき−
 
どうも。プロローグであとがきというのも変なので(←違)、第1話でまとめて書くことになりました、筆者のtakkuです。
 
以前からの野望であったなのブレと空の軌跡SCのクロス小説……何とかその野望の第1歩を踏み出すことが出来ました。
今作でのジュンイチくん、完全なギャグキャラです。第1話からはっちゃけてます。
のっけからなのはちゃんのぱんつを目撃という世のおっきなお兄さん全員に中指突っ立てん勢いの所行を素でやってます。
 
プロローグの時もそうですが、ギャグの時は非常に書きやすいのですがシリアスなシーンになると途端に動かしにくい……
ジュンイチくんの持つキャラ性の難しさを改めて痛感しました。
そして今回ようやく登場のエステル嬢! 自分の中では彼女とジュンイチくんって結構な似たもの同士だと思ってますので、そこら辺の絡みを
時には熱く、時にはコミカルに描けたらなぁと今から試行錯誤しております。
 
本来のゲームでは、この時点でもう一人パートナーキャラがいるんですが、今作において彼(彼女)の出番はまた次回ということで……

管理人感想

 takkuさんからいただきました!
 いやー、takkuさんの描かれるジュンイチは『セクハラ系の自爆が5割増』な感じで、産みの親としては複雑な気分――となるはずがなく、むしろ了承(マテ)。

>「近くに人の気配は………あるな。大体南南東に400mと北西に約1km位かな」
>「相変わらずどうやって探ってるのか謎な能力ですね……」

 地味に高性能レーダー所有のジュンイチ。ホントにどーゆー感覚器官持ってんだか(笑)。

逃げてもいいすか?

 ダメ(笑)。