最後に頭の炎が立ち消え、ヘッドギアを装着したジュンイチが叫ぶ!
「紅蓮の炎は勇気の証! 神の翼が魔を払う!
蒼き龍神、ウィング・オブ・ゴッド!」
これぞ、ジュンイチの真骨頂……自身の精霊力を使用して自分専用の防護アーマーを構成、着装する『装重甲(メタル・ブレスト)』である。
────生身の状態でも十分な強さを誇るが、ストームブリンガーのような機動兵器を相手取る時にはこちらの姿になった方が色々と都合がいいし、
何より、彼自身の戦法に幅を持たせる事が出来る。
着装したジュンイチの姿に、再び呆気に取られるエステル達。……さすがに今まで見てきたジュンイチの非常識の中で一番ショッキングな映像だったのだろう。
だが、当事者のジュンイチはそんな彼女達の思いなどお構いなしに、軽々と……
ストームブリンガーに告げた。
「マスターランク、炎のブレイカー…────柾木ジュンイチ!
恨むんならオレにケンカを吹っ掛けたご主人様タチを恨むんだな!!」
それが、人対巨人との開戦の合図となった………。
ごく最近まで、平凡な小学3年生だったわたし『高町なのは』に訪れた小さな事件……。
既に人々の記憶から消え去った人馬の騎士は、幾百年の時を経て現世に蘇る。
邪悪な意志は黒き衣となって、騎士の躯を突き動かしていく。
この胸に宿るのは燃えさかる勇気。不屈の心────そして明日への希望。
冷たく煌めくその瞳は、何を望み、何を思うのか……今は分からないけど
それでも、路(みち)を切り開く為、光を灯す。────全てを貫く、星の輝きをもって。
魔法少女リリカルなのはvs勇者精霊伝ブレイカー×英雄伝説 空の軌跡SCクロス小説
Triangle World 〜空を翔る英雄達〜 始まります。
第6話「集え、星の輝き」
「いくぜっ! 爆天剣っ!!」
ジュンイチが叫ぶと”紅夜叉丸”が突如霧状に姿を変え、拡散。────そして炎が集まって両刃の剣を構成する。
天の名を冠し、彼の力を象徴する精霊器────『爆天剣』である。
爆天剣を手にすると同時、”力”を収束させ……剣が炎を纏う。
あらゆる邪を払い、悪を斬る対魔の力を持つ炎と、ストームブリンガーの躯を覆う魔力の衣と激突する!!
ガキィンッ!!
やや荒げた金属音を立て、ストームブリンガーの装甲は魔力の衣ごと爆天剣の威力に競り負け、深々とその痕を右前足に刻む。
だが、あくまでも”痕を付けた”だけ────爆天剣はその刀身に纏った超高温の炎であらゆる物を完全に断ち斬る事が出来る。
そんな御剣を以てしても傷を付けるのが精一杯。……内心予想通りだったのか、軽く舌打ちをするジュンイチだったがすぐさま次の手を打つ。
「なのは! 射撃魔法で徹底的にヤツのバリアジャケットを剔れ! ユーノはバインドで援護!!」
「分かりましたっ!!」
「了解です!」
言うが速いが、既になのははレイジングハートをシューティングモードへと切り替え、主砲の準備を終えていた。
ユーノも、手慣れたようにいつもの捕縛魔法の準備へと取り掛かった。
素早く……そして確実に、呪文を詠唱。終えると同時に静かに告げる。狂気を纏いし人形を捕らえる、戒めの言霊を────
「古の猛き鎖よ……戒めを以て彼の者を煉獄へと導け────チェーンバインドッ!!!」
〈Divine Buster───!〉
「シュートォッ!!!」
石床から伸びるライトグリーン色の鎖が、複雑かつ精巧にストームブリンガーの四脚に絡み付き、脚が終わると今度は体中に巻き付いていく!
ストームブリンガーも何とか鎖を引きちぎろうと藻掻くが、バインド系等の補助魔法に特化したユーノの力には敵わない。
その間に、なのはの放ったディバインバスターが一閃の光を照らしながらブリンガーの脚部全域に命中。深々と彼の纏うバリアジャケットの防御力を削っていく。
一方で、エステル達も負けじと各々の武器を構えストームブリンガーへと挑む!
「シェラ姉は左足を! あたしは右足を崩すっ!!」
「分かったわ!」
「エステルさんっ!」
「クローゼ、オリビエ! アーツでの援護をヨロシクっ!!」
「任せておきたまえ!」
勝手知ったる何とやら…打ち合わせなどいらない。四人に共通する想いはただ一つ────
自分の出来る事で力一杯戦うだけ。
「これで決めてみせるッ──────桜花無双撃っ!!!」
叫ぶと同時、エステルは高く飛翔。────空中での捻りを加えた初一発に続く、戦術棒の連打連撃!
その猛攻はバリアジャケット越しにストームブリンガーの装甲をねじ曲げ、フレームをへし折り、歯車を粉々に砕いていく。
そして、あらかた打ち込んだと思いきや…”気”を棒先へと集中────渾身の一撃をトドメにと言わんばかりに叩き込んだ!!
ズガアッ!!
とても少女の放つ一撃とは思えない、達人の一波。その衝撃に思わず姿勢の維持が出来なくなり、崩れかける。
だが、それで終わるはずがなかった────エステルの猛攻に続けと云わんばかりに、シェラザードは不敵な笑みを浮かべながらもう一方の……健全な方の左足へと歩み寄る!
「悪い人形(コ)にはオシオキしないとねっ……! クインビュートォッ!!」
言って構えたムチをもって最初の一撃。そこから二撃目、三撃目と速度が増していき…最終的には鞭部が全く見えないほどの超高速での連撃と化した。
その速さは稲妻の如く。鳴り響く音は雷鳴の如く。刻まれた傷跡はまるで野獣の爪痕。
猛攻の嵐が過ぎ去る証となる最後の一撃が横一線に叩き込まれ、ストームブリンガーは完全にバランスを崩し、前のめりに倒れ込む。
そのチャンスを逃すまいと、クローゼとオリビエがそれぞれオーブメントを構え、アーツを発動────────
『オォォォォォォォォォッ!!!!!!』
させようとした時、バランスを崩しながらもストームブリンガーは両手に構えた大剣を振りかざし、
自重と重力を利用して二人の脳天目掛け、真っ直ぐ振り下ろしてきた!!
「っ!! なのはっ!」
「─────はい! …レイジングハート、お願いっ!!」
〈All right. Flash Move─────!〉
瞬時に判断し、ジュンイチがなのはにクローゼ達の命運を託す。
一方、託されたなのはも一瞬にして判断、レイジングハートに命じ、足首のフライヤーフィンに魔力を注入───すると爆発的な加速力を発生させ、
なのはの身体を後方へと下げる。なのはにもフェイトほどではないが、瞬間的に移動速度を加速化させる魔法をもっているのだ。
高速移動魔法……『フラッシュムーブ』の発動によって、クローゼ・オリビエとストームブリンガーの間に割って入ったなのはは
立て続けにレイジングハートに念じ、本体部の宝玉を前方へと突き出す。
〈Wide Area Protection────!〉
レイジングハートが叫び、3人の前方に不可視の防御壁が形成─────ストームブリンガーの放った一擢は真っ直ぐに
その防壁へと振り下ろされ……激突する!!
「きゃあっ!」
「な、なのは君!?」
「────っ! クローゼさん、オリビエさんっ……長くは、保ちません…っ!
今の内に……魔法を──────っ!」
「心得たっ!!」
さすがに防御力に定評のあるなのはの防御魔法────ストームブリンガーの一撃に耐えている。
が、体格があまりにも違いすぎる上にジュエルシードによって出力もアップしているのだ。あまり長時間は保ちそうもない。
クローゼとオリビエはすぐさまオーブメントを構え直し、力を放つ!
「全ての生者の根元たる清き水よ…その御身を以て魔を討つ刃と成れ!」
「天と地の盟約に基づき、空の女神よ───重力の戒めを以て裁きを下せ!」
『────ブルーインパクト!!』
『ダークマター!!』
クローゼの放った力が高圧水の濁流となって吹き荒れ、オリビエの魔法によってストームブリンガー周辺の重力が一挙に増加。
姿勢を崩された所に連続して叩き込まれた導力魔法……さすがに古代の人形兵器もこの連係プレーには悲鳴を上げる。
が───それでも、バリアジャケットの強度に救われているのか致命的な一打には至っていない。クローゼ達の魔法の発動が終了してから、
ややしばらくしてストームブリンガーは前脚を立て直し、姿勢を修正する。
……ジュンイチとしてはあまり選択肢としては入れたくないが、長期戦も視野に入れておいた方がいいかもしれない。
決断すると、”力”を収束させて爆天剣に炎の皮膜を作り出し、構える。
(出来る事ならなのはの大技〈スターライトブレイカー〉かオレのゼロブラックで一気に決めたい
所だが、こんな閉鎖空間でそんなのブッ放した日にゃオレ達全員、古代遺跡のサンドイッチ確定だろうなぁ……)
「ジュンイチさん、どうします?」
「───ちぃと気が進まねぇが、小技でジワジワ削ってくしかないだろうな。幸いバリアジャケット越しとは云え、こっちの攻撃が通るのは解りきってるんだしな。
それに────大技撃って瓦礫の下敷きにはなりたくねぇし」
「巨大兵器と周辺の眷属はボクがバインドで押さえます! ジュンイチさん達はその間にっ!!」
「オッケー!」
素早く判断し、次のバインドの準備にかかるユーノ。
なのはといいジュンイチといい、特別な訓練をしているわけでもない彼等が何故これ程までの戦闘力を有しているのか………
戦いの最中、ふとエステルの脳裏をそんな疑問がよぎる────それに……
(なのはちゃんやユーノ君が使ってるあの魔法……どー考えても導力魔法とは全然別系統よね……
それに、あのヴァーチってやつが持ってた────『ジュエルシード』とかいう宝石の事、”あらかじめ持ってたのを知ってた”ような感じだったし………)
「エステル! ボーっとしてないで、一気にいくわよ!!」
「う、うん!」
思考にふけっていた所をシェラザードの喝によって正気へと戻るエステル。とりあえず、彼等への言及は目の前の人形兵器を倒してからみっちりたっぷりやる事にした。
状況としては、ややジュンイチ達が押し気味。ジュエルシードの影響で出力がアップし、バリアジャケットを身に纏っているが
所詮はロボット……チームワークを駆使した彼等に徐々に押され気味になってきていた。、
だが、この場を用意したブルブランとヴァーチはあくまでも冷静。特に表情を変える様子もなく、ストームブリンガーとジュンイチ達の戦いを観戦していた。
「フム……なかなかどうして。遊撃士の面々もさることながら、君のマークしていた子供達もかなりの遣り手のようだね」
「当然です。そうでなければデータを取る意味がありませんから。
……しかし、このままでは満足なデータには程足りませんね。────少し、あの人形にハンデを差し上げましょうか」
そう呟くと、ヴァーチは懐から宝石……いや、”宝石の形をしたデバイス”を取り出した。
濃いすみれ色に、幾重にも重ねられたカッティングの形状はそこんじょそこらの貴金属などかすんで見えるほど美しかった。
ヴァーチはゆっくりと、前方にストレージデバイス『アイオライト』をかざし、目覚めの言葉を紡ぐ。
「地を伝い、空を駆け、天を舞う覇の力よ────目醒めの時は来た。その姿、見えざる霧となって我らが盾となれ────」
呪文を唱えると同時、彼女の足下にコバルトブルーに光る円形魔法陣が出現。
アイオライトは一瞬の閃光と共にその姿をリボルバー銃のような物へと変え、”力”を解き放つ。
すると、ストームブリンガーに宿ったジュエルシード────その大量の魔力が次第に霧散し、周囲の空間に溶け込んでいく。
「包み込め────インターフェアミスト」
ジュエルシードから放たれた大量の魔力は周囲の空間と完全に同化。瞬間、強烈な嫌悪感がなのは達を包み込む!
一方のエステル達は魔力を感知できない為、何故ジュンイチ達がこれ程までに苦しむのか解らず、ただオロオロするばかりだ。
「きゃあっ!!」
「ぐっ! な、何だこのメチャクチャ濃い魔力の波動はっ?!」
「な…どうしたの、二人とも!?」
「さっきヴァーチとか言うヤツが見た事無い魔法を使ってたわ……きっとそれが原因よ!」
シェラザードが叫ぶが、実際導力魔法でもない上に効力自体謎なヴァーチの魔法。
うかつな行動は危険と判断し、急遽エステルとクローゼをなのはへ────
ジュンイチにシェラザード、ユーノにオリビエを護衛に付かせて体勢を立て直す事にした。
「エステル! なのはちゃんの様子はどう?!」
「軽い目眩がしてるだけみたい。それ以外は特に異常はないわ」
「ジュンイチ君は?」
「オレも特に異常なし────
というよりも、今この一室は通常じゃあり得ないくらいの超高密度の魔力素で満たされてる。
オレはともかくとして、場慣れしてないなのはやユーノは一種の酸素酔いみたいな状態になってると思うんスよ」
「状況の打開策は?」
「とりあえず、まともに動けるオレ達でなんとかあのデカブツを黙らせるしか無いかと」
「分かったわ!」
「なら私が!」
クローゼが叫び、戦術オーブメントを構えて再び駆動状態へと持っていく。
オーブメントの内部では、装着されたクオーツに導力が流れ、さらにクオーツによって増幅された導力が周囲に展開し、”力”を具現化する!
「全ての生者の根元たる清き水よ…その御身を以て魔を討つ刃と成れ!────って、え?!」
だが、クローゼの放とうとした導力魔法は、”力”が解放される直前で弾け飛び、周囲に霧散する!
予想外の出来事に、驚きを隠せない様子のクローゼ。
無論、それを端から見ていたエステル達も同様であった。
「え、う…ウソ?! クローゼの導力魔法が……かき消された?」
「でもオーブメントそのものはちゃんと駆動してるわ。アンチセプトや導力停止現象とは全く別の何か………一体何なのこれは!?」
慌てふためくエステル達に対し、好機到来と感じたストームブリンガーは腹部のエネルギー砲に導力を流し込み、殺意という意志を込めた大砲を構える。
瞬間、ユーノは凄まじい倦怠感を何とか押さえながらパーティーの前方に飛び出し、陣を構成。
……幸い、相手側のはチャージに時間を要した為、ユーノの方は何とか間に合った。力を解き放ち、叫ぶ!
「聖なる光よ、包容の壁となって驚異を退けよ! サークルプロテクション!!」
ユーノが呪文を言い放つと、彼を中心にライトグリーン色をした……ドームの壁が出現。
瞬時になのは達を包み込むと、目の前の宿敵────ストームブリンガーの破壊活動に備えて構える。
バリアの展開が終了してまもなく、人形の腹から放たれた渦巻く殺意は嵐となり、ユーノのバリアへと牙をむける!
「────くっ!」
「大丈夫、ユーノ君?!」
「ボクは何とか大丈夫だけど……これだけ魔力素が濃いとなのはもうまく魔法が撃てないだろうし、
エステルさん達の魔法も、敵のフィールド魔法のせいで発動が阻害されてる……物理攻撃じゃ、あっちのジャケットを削るのがやっとだろうし────」
「元々物理攻撃に対してもかなりの防御力を持ってやがるからな。……敵に回すとこれ程厄介な魔法はないぜ!」
ジュンイチも思わず徐々に押されつつある状況にうめくが、場の雰囲気が好転するわけでもなく……
無情にもプロテクションの壁は徐々に屠られつつある。……バリア崩壊は時間の問題だった。
だが、諦めるわけにはいかない────状況を打開すべく、思考を巡らせる…………
と────────
(────あれは?)
思考の合間になのはがふと目をやると、近くでふわふわと……青白い光が漂っているように見えた。
魔力光────ではない。そもそもこの一室はヴァーチが放ったフィールド魔法によって魔力素の濃度はが飽和状態に近い。
では何の光だろう………用いられる感覚をフル動員してその根元を探る────
そして気付く。その光の正体を──────そして閃く。チャンスを引き寄せる、一発逆転の奇策を。
(……試してみる、価値はあるかも!)
思い立ったが吉日とは昔の人はよく言ったものだ。中毒症状の身体にムチを打ち、何とか立ち上がると
なのはは震える手つきでレイジングハートを構える。
そんな彼女の鞭打つ様に、ユーノが驚きの声を上げる。
「な、なのは?! もう大丈夫なの!?」
「わたしは……大丈夫。
それよりもユーノ君! ”この部屋の結界”を限界まで強化って出来る?」
「へ?」
なのはの意図がよくくみ取れず、思わず間の抜けた返事をしてしまうユーノだったが、すぐに思考を巡らせ、判断。そしてなのはの問いに答える。
「えと……多分大丈夫。相手の封時結界を補強する形になるからそれほど手間はかからないと思うけど」
「エステルさん達はまだ魔法を撃つ事は出来ますか?」
「えっ? …ま、まぁEP(エネルギーポイント)はまだ余裕があるからちょっとした攻撃用アーツなら撃てるけど────」
「だが、敵の展開したフィールドのせいでボク達の魔法は掻き消されてしまうよ?」
オリビエの言うとおりだ。
実際魔法形態が違うとは言え、事実、導力魔法での攻撃は封じられたも同然の状態なのだ。
だが、なのはの確認したいポイントは”魔法で攻撃できるか”ではなく────────
────────”攻撃魔法を発動できるか”否かであった。
「ジュンイチさんは精霊力、まだ全然余裕ですよね?」
「ま、ゼロブラックとか大技撃ってない身だからな。”力”は有り余ってるがこの状況じゃ
あのデカブツに届く前に拡散され………………って、ま、まさか?!」
「はい、そのまさかです」
さすがのジュンイチも、一瞬肝が冷えた。
────結界系の魔法もユーノの得意分野であるし、自分達の力は長期戦に持ち越せないという程度で、実際まだまだ余裕がある。
加えて周囲には大量の魔力素………つまり、なのはの魔法を撃つのに必要なエネルギーが大量に内包されている状態なのだ。
そこから導き出される打開策による結末────────
「………了解した。こうなりゃ巻き添え喰らわないようにこっちもフィールドを強化しなきゃだな」
「えっ!? ジュンイチ、何をする気なの?!」
「……エステル、クローゼ、シェラさん、オリビエ」
『……はい?』
改まった表情でジュンイチが問いかけてくるもんだから、同時にハモり、気の抜けた返答をするエステル達。
だが、ジュンイチは構うことなく続けて言い放つ。
「なのはが今からどデカい一発をチャージする。……だが、今のままじゃ出力が足りねぇ。
そこでだ──────なのはが準備ってる間にオレ達は大技撃ちまくって援護するぞ!」
「お、大技って……物理攻撃は効きにくいんじゃ?」
「ワザっていうかエステル達は導力魔法(アーツ)……しかも現時点でとびっきりデカイのを頼む!」
「ちょっと待って?! なのはちゃんが魔法を撃つのとあたし達がアーツで援護するのと一体何の関係が!?」
「時間がない。ユーノのプロテクションもそう長くは持たない───────質問は一切受け付けないので夜露死苦」
「あ、………ったくもう!! 判ったわよ、やればいいんでしょやればっ!!」
これ以上の言及は無駄だと判断したエステルは、呻きながらも自身の戦術オーブメントを駆動させ、アーツの発動準備に入る。
それに促されるかのように、他の3人も納得がいかない、訳が分からないといった表情の中───────オーブメントに導力を流し込む。
「レイジングハート。……みんなが────みんなが力を貸してくれるよ。
───────頑張らなきゃ、だね。」
〈Yes. My master────〉
「それじゃ………レイジングハート! シーリングモード、セットアップ!!」
〈All right. Sealing mode────Set up!〉
なのはが告げると、レイジングハートは柄を回転させつつ、宝玉下の連結部分を展張─────
そこからスタビライザーが3本展開し、桜色をした光の翼が展開されると、なのはの足下に巨大な魔法陣が出現する。
ディバインバスターのそれを遙かに上回る大きさ。そしてそこに書き込まれた術式……明らかに今までの砲撃魔法とはケタが違う事を、
専門外のエステル達でもすぐに察する事が出来た。
「確かに……アレはデカそう」
「なのはちゃんが思いっきりやれるように、私達も全力で行くわよっ!!」
言いつつ、それぞれ連続詠唱でアーツを放つ。
が─────予想していたとおり、彼女達の攻撃アーツは”力”が具現化する前に導力が霧散し、消えていく。
その様子を観察していたヴァーチは、すぐさま気付く。彼女が───────なのはが一体これから何をしようとしているのかを。
「────っ!! ブルブラン様! 急いで私の後ろに!!」
「どうしたのだね、そんなに慌てて……君らしくもない」
「急いで私の防御魔法の管下にお入り下さい!! 彼女は───────」
『ここを吹き飛ばすつもりで人形に挑みます!!』
〈Starlight Breaker─────!!〉
レイジングハートの宝玉に呪文の名称が浮かび上がると同時、一室に変化が生じる。
部屋中に漂う魔力素が、桜色の光を帯び、魔法陣の中心部に収束していく─────いや、魔力素だけではない。
ジュンイチが放った精霊力は、深紅の光を伴い─────
エステル達が発動させた導力魔法の大本となるはずだったオーブメントのエネルギー『導力』は青みがかった白色の光と共に
その桜色の球体に吸収されていく!
その中─────魔法を発動させようとしているなのはは...
(さすがに─────キツい!!)
いくら”周囲の魔力を再利用”して、威力を上昇させるこの魔法とは云え、限界近くの濃度まで上がった魔力素の中、
精霊力や導力までまとめて収束させるのには骨が折れる……少し集中を乱せば術式が崩れ、荒れ狂うエネルギーは間違いなく自分を襲うだろう。
そんな極限状態の中、なのははレイジングハートを握りしめる力を強くする。
みんなの願いが……思いがこもっているこの一撃─────無駄に終わらせるわけには、いかない!!
最後の仕上げといわんばかりに、なのははユーノに告げる。
「ユーノ君!」
なのはの叫びにユーノは答える。問題はない───────
自分はいつも、なのはの隣にいた。……彼女のしたい事、成したい事を最大限サポートするのが自分の役目。
……詠唱は、意外に早く終わった。静かに、そして高らかに告げる。
「古の猛き鎖よ……戒めを以て彼の者を煉獄へと導け! チェーンバインドッ!!!」
再び地面から展開される光の鎖は、ストームブリンガーだけではなく周辺の眷属をもがっちりと掴み、
その行動を戒める。
剣を振るおうとも、大砲を放とうとしても、鎖が邪魔をして思うようにいかない。
藻掻き苦しむ最中、ついにその時は訪れる────全てを打ち砕く、星の輝きが今、少女の手から放たれる!!
全力全開!!
スターライト……ブレイカアァァァァァァッ!!!!
それは、裁きを下す光の一撃────────
それはまるで、女神が誇る必殺の一擢────────
少女が左腕に握るインテリジェントデバイスを振り下ろした瞬間、魔法陣上に収束していたエネルギーの固まりは巨大な閃光と共に、
嵐となってストームブリンガー目掛けて放たれた!!
駆け抜ける魔力の津波はバリアジャケットを食い破り、破壊し、その形を亡き物に変え────
ほとばしる衝撃は全ての装甲、歯車、骨組み、そして武器をへし折り、ねじ曲げ────────
貫通した余波は遺跡の壁に激突。ユーノの展開した結界と激しい火花とスパークをまき散らし、エネルギーの嵐は行き場を失う!!
ドドォォォォォォンッ!!!
……………………
…………
……
特大の一撃を放ち終えたレイジングハートはダクトを展開、燃焼し終えた起爆剤(魔力の残骸)を放出する。
するとこれまでとは比べ物にならない倦怠感がなのはを襲う。
呼吸は激しく乱れ、脈も激しい運動をしたかのようにドクンドクンと急ピッチで波打ち、身体に不足した酸素を供給しようと入り乱れる。
あれだけ高濃度の魔力素が密閉されていた状態から一気に濃度が急低下した為、身体はおろか精神も悲鳴を上げている─────それでもなのはは
ふらつきながらも仲間達の居る所へと歩み寄る。
────その場所は、ユーノの防御魔法とジュンイチの”力場”によって防護され、瓦礫や爆風の余波からエステル達を完全に守り通していた。
「…………ジュンイチもそうだったけど、まさかなのはちゃんまで切り札を隠し持ってたなんてね」
「あれがなのはの最後の切り札、『スターライトブレイカー』だ。
周辺地域に飛散した魔力やその他のエネルギーを回収・再利用する事で高威力の砲撃魔法を短時間で発射する事が出来る。
────それでも発射シークエンスが長すぎるから、バインド魔法との併用が前提だけどな」
「じゃあ、私達にアーツを大量に使えとおっしゃられたのは……」
「ああ。あのバカでかいヤツの魔力のジャケットを完全に破壊するにはこの部屋に満ちた魔力だけじゃ足りなかったんでね。
アーツを発動させるのに使われるエネルギーを代用させて貰った。……思えばもっと早くこの方法を思いつくべきだったぜ」
クローゼの問いかけに答えつつ、ジュンイチは”力場”の展開を解き、周囲の状況を改めて確認する。
さすがはなのはの一撃必殺砲。ストームブリンガーやその眷属達は見るも無惨な姿へと変貌し、元の形が殆ど残らないほど粉々になっていた。
遺跡の方はというと………見た目とは裏腹に結構頑丈に出来ていたらしい。
結界越しとはいえ、大爆発を引き起こしたなのはのスターライトブレイカーにもしっかり耐えきっていた。
「いやはや………寿命が縮まるかと思ったよ」
「イヤ〜……かなりびっくりしたけど、何とか終わって良かっ────」
言いかけて気付く。
まだ戦いは終わっていない………部屋の奥から訪れる”気”に驚いて戦術棒を構えるエステル。
「なかなか、見事な一撃だった────正直驚いたよ。君のような可憐な少女がこのような一撃を放つとは」
「ブルブランさん………」
不敵な笑みを浮かべつつ、なのはに告げるブルブラン。そして────
「この状況下でこんな魔法を使うなんて………なかなか面白いデータが取れましたよ」
「ヴァーチさん……」
シールドによって守られていた二人は、朦々と立ちこめる土埃の中から姿を現し、
悠々となのはを睨み付けていた。
to be continued...
次回予告
ブルブランさんはクローゼさんが目当てらしいですけど、ヴァーチさんは一体何が目的でこんな……
……どうやら、やっこさんの目的はなのは────お前らしいぞ
えぇっ?! な、何でわたしなんかを!?
今までさんざ嘗めくさった真似しやがって……現時点を以てお前は”炭焼き(ウェルダン)”の刑、決定だっ!!
………出来る事なら、穏便にいきましょうねジュンイチさん。
次回、魔法少女リリカルなのはvs勇者精霊伝ブレイカー×英雄伝説 空の軌跡SCクロス小説
Triangle World 〜空を翔る英雄達〜 第7話『不屈の心』
リリカル・マジカル!
それにしても…………腹減ったなぁ
−リリなの連合緊急特別集会(兼あとがき)−
ジーナ「またやるんですか。しかも今回何で私が………」
オリビエ「まぁまぁ、細かい事は言いっこ無しさ。仲良くいこうじゃないかジーナ君」
ジーナ「しかも今回変態紳士(この人)ですか」
takku「順番的にはシェラ姉ぇなんだけど、そうしたらここの女性密度が上がってどうにもやりきれなくなる」
だったらブレイカーからのパーソナリティ、男性キャラにしたらいいじゃんとかいうツッコミはあえてしない事にします。
男ばっかりでも盛り上がらないモンね、こういうのって♪
ジーナ「………前回のパターンを考えると、またStrikerSから新キャラの召還ですか?」
takku「察しが良くて助かる……それじゃ、入ってきな二人共」
エリオ「ど────どうもこんにちわ」
キャロ「お邪魔しますね♪」
フリード『キャフー』
takku「つーわけで、今回はStrikerSが誇るちびっこカップル!
エリオ・モンディアル君とキャロ・ル・ルシエちゃん! そんでキャロちゃんのお友達のフリード君にお越し頂きました♪」
ジーナ「『お越し頂きました♪』─────じゃないですよ。もはや『TW』本編と全く関係ないキャスティングじゃないですか」
オリビエ「まぁいいじゃないか。
ボクとしては……何とも食べがいのある子供達が来てくれてヨダレが出そうだよ♪ ジュルリ────」
エリオ「出てます! オリビエさん思いっきりヨダレ出てますよっ!!」
takku「つーワケで、のっけからはっちゃけてますが今回はこのメンツでいきたいと思います」
ジーナ「して………今日は何の祝い事ですか?」
takku「祝い事ッつーか、一昨日ようやくSCの続編たる新作『空の軌跡 the 3rd』のデモムービをゲットして鑑賞し終わって思いついたネタを披露しようかと思ってな」
オリビエ「3rdとStrikerSとのクロスかい?」
takku「宇宙の雷ィッ!!」
ピシャアアンッ!!
takku「さてと。筆者の意図を完全無視して独走してくれた狼藉者は放っといて……」
キャロ「でも、実際の所どうなんですか?」
takku「正確には『TW』の続編として書きたいなぁと思ったんだけどね。そうなるとジュンイチ君達も10歳プラスしなきゃならないからそれは如何なものかと悶絶してたり」
ジーナ「年齢もそうなんですが、ジュンイチさんとのフラグを成立させたのが誰なのかがどうにも気になります」
オリビエ(復活)「確かに……ああ見えてジュンイチ君の女性からの需要はなかなかの物だからね」
エリオ「需要って……」
takku「そもそも機動六課の任務ってレリックを始めとするロスト・ロギアの回収や調査が主だった任務だからね。
そう言った意味では3rdは格好の舞台だと思わないか?」
キャロ「そうですね─────でも」
takku「ん?」
キャロ「もし本当にクロスした場合、間違いなくエステルさん達ははやて部隊長のおっぱい揉み手の餌食に」
ジーナ「まさか……それが本心ですか?!」
takku「はやてちゃんのはセクハラじゃありません! 同性同士の愉しいスキンシップ♪♪ (;´Д`)ハァハァ」
しばらくお待ち下さい...
takku「では、そろそろ終わりも近づいてきましたのであとがきをば」
オリビエ「……血、拭かなくていいのかい?」
ジーナ「ちょっと血の気を抜いた方が若い子達の為です」
takku「んなろぅ………まぁそれはさておいて、今回は結構戦闘に力を注ぎましたホント。
戦闘だけに目をやったら───もしかしたら私の書いた小説では初めてかもしんないこのボリューム」
ジーナ「それはいつもの貴方自身の怠慢でしょ」
takku「今回、戦闘シーンを執筆するに当たって何度もブレイカー本編の描写を読み返したり、なのはVFBを開いたりと、結構忙しかったです。」
エリオ「特にスターライトブレイカーの発射シーンは気を遣ったらしいですね?」
takku「うん。やっぱりなのはちゃんの切り札にして必殺技だかんねSLBは。格好良くしたかったんで『集え、星の輝き〜 スターライトブレーカー〜』
をBGMに気合いを入れつつ書いてました。しかも途中からユーノくん大活躍」
オリビエ「サポート関連では彼の独壇場だね……。多分『なのブレ』本編でも戦闘で彼がこれ程大活躍したのはないんじゃないか?」
takku「いきなり確信突くなああぁぁぁぁっ!!!」
モリビトさん、ゴメンナサイorz
管理人感想
takkuさんからいただきました!
前哨戦とも言うべき相手、ストームブリンガーをスターライトブレイカーで粉砕!
さすがはなのは! 『+』版の話とはいえジュンイチの防御を抜いたのは伊達ではないですな。
そして――『なのブレ』本編で間違いなく活躍できてないユーノくん、お疲れ様でした(笑)。
しかし何より言いたいのは――
盾にすれば、どさくさまぎれに世の悪を抹殺できたんじゃね?(笑)
>ジュンイチさんとのフラグを成立させたのが誰なのかがどうにも気になります
モリビトも気になります(笑)。
何しろ、朴念仁に作りすぎたおかげで「誰かとくっつく」って絵がものすごく想像し辛いんですよね、作者なのに。
『ブレイカー』本編だけにしぼっても、候補は……ひの、ふの、みの……以下略っ!(ヲイ)
>ああ見えてジュンイチ君の女性からの需要はなかなかの物だからね
『ジュンイチからの需要』でないのがポイント。ヤツが需要なんぞ求めるはずがないですもん。
さすがと言うべきか、ジュンイチのことをわかってらっしゃる(笑)。