「なぁに、礼には及ばないよ。

   それよか、そちらのお仲間さんが……って!?」




  言いつつ突然気配を感じ、思わず後ろを振り向いた僕の目の前で、いきなり地面が吹き飛んだ。


  その下から出てきたのは……















  マスターコンボイとかいうヤツのパチモンと同様、ハニワチックな外観を持つヘンテコなロボットたちだった。












  「こ、これは!?」


  「私たちのトランステクターと、そっくりのロボット?」


  「というには、ちょっとおこがましいかな?」




  シャープエッジとニトロスクリューが驚きの声を上げ、アイゼンアンカーが皮肉ってる。



  ちなみに、機体名称はネットで拾った情報の中にあったので覚えてる。さすがに、民間協力者の名前とかまでは出せないか。

  尚、ゴッドオン形態の名称が分かっているのは、まぁ、ロボットもののお約束の関係上で、とだけ言っておく。




  それより、まだあったんだ、パチモン…。



  ちなみに、現れたパチモンは、カイザーコンボイ、ジェネラルライナー、そしてVストライカーの3体。


  しつこいようだけど、揃いに揃ってハニワ顔である、と付け加えておきます。







  「さっさとやっつけて、スバルたちと合流するわよ!」

  「というワケで、アンタも協力しなさい、ブレインジャッカー」

  「仕方ないな」






  オレンジツインテール…ティアナだっけ。それと、斧型の武器を持ってるのは、柾木あずさだっけか。あのジュンイチの妹らしいけど。

  そして、あずさに声をかけられ、しぶしぶっぽいけど承諾したのは、ブレインジャッカーっていうトランスデバイス。

  神出鬼没である、とは知っていたけど、いつの間に来てたんだろ。





  これまたとあるデータベースで情報を拾えたけど、入手経路等についてはコメントを控えさせていただきます。






  『ハイパーゴッドオン!』






  とか言ってる間に彼女たちも戦闘態勢へシフト。それぞれの相棒や愛機に融合、即ちゴッドオン。しかもいきなり上位のハイパーとは、本気だね。


  で、それだけでは終わらないのがこのメンバーなワケで。




 

『ハイパー、ゴッドリンク!』






  『星雷合体! Vストライカー!』


  『大! 連結合体! ジェネラル、ライナァァァァァッ!』


  「カイザーコンボイ、Stand by Ready!」





  おーおー、アレが噂に名高い、六課とその関係戦力が持つ合体戦士の勇士か!


  5体のトランスデバイスが合体したVストライカー、列車型のトランステクターが合体したジェネラルライナー、更にこなたがゴッドオンしたカイザーコンボイ。


  本来、ジェネラルライナーには更に上位の合体が控えてるんだけど、今回はそこまでメンバーがいないからジェネラルまでかな?





  ……相手もジェネラルライナーだっていうことに作為性を感じるけど。






  『さぁ、こい!』





  合体まで終えて、着地した3体のオリジナル戦士が揃って敵を挑発。


  それに乗る形で、3体のパチモン戦士が駆け出した。






















  「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






  「とある旅人の気まぐれな日常」







  第3話:戦いで勝つのはいつも、ノリのいい人?


















  無駄なことを。今回ばかりは"自分のスタイルじゃ"勝ち目はないってのに。



  そんなことを思いながら、オレはマスターソドラボイと切り結ぶマスターコンボイへと視線を向ける。



  バトルスタイルを変えればマシになるとでも思ったか、向こうはゴッドオンの相手をスバルから恭文に切り替えてきた。



  でも、こっちもちゃんと対応できるんだなーコレが。


  マスターコンボイがセイバーフォームになれば、マスターソドラボイも二刀流に切り替える。勿論、他のゴッドオンが相手でも同様に切り替えられる。






  で、出力的な意味で優位なのはこちらなので馬力任せに切り倒そうとするけど、向こうも対処できた。一旦受け流して、距離を取った。いい判断だ。


  でもな?





  「どうだ、剣技においても、お前らより22%強いぞ?」



  「地味にうっとうしいなぁ…22%……」





  恭文のつぶやきから少し間をおいて、再び剣をぶつける。






  「卑怯だぞー、ハニワメカー!

   オリジナリティが全然ないよー!!」



  ゴッドオンの切り替えの関係で、今はギャラリーに回ってる(ホントは回ってる場合じゃないから後で説教だけどな)スバルが声を上げる。

  まぁ、確かにこのままじゃヒネりも何もないよなぁ。

  なので……



  「では、オリジナル技を見せてやる。くらえぇ!」


  そう威勢よく放ったオレの叫びと共に、マスターソドラボイの顔が飛び出した。



  「うわぁっ!?」

  《ぐわぁっ!?》



  完全に不意打ちになったらしく、その一撃を向こうはモロに受けた。しかも、顔面に。


  もちろん、さすがに隙だらけなので追撃かます。




  「もひとつ、どうだぁっ!!」


  顔だけでなく、両腕や両足も同様に伸びてマスターコンボイを襲う。まぁなんだ、どこぞやのゴム人間と同じ仕組みだと考えればわかると思う。




  「負けるなー、二人とも!そうだ、おんなじ武器で戦えば!」


  『こんな武器は持ってない!!』




  スバルのトンチンカンな応援に、恭文とマスターコンボイが同時にツッコんだ。


  ……スバル、オレさっき「オリジナル技」って言ったばかりだぞ…?










  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








  「きゃああああっ」




  ジェネラルライナーがパチモンライナーに殴り飛ばされ、




  「わあああああっ」




  Vストライカーがパチモンストライカーのアンカーロッドで突き飛ばされ、




  「うあああああっ」




  カイザーコンボイがパチモンコンボイの飛び蹴りでブッ飛ばされ、





  まとめて地面に仰向けに叩きつけられた。


  …………いくらなんでも、一方的すぎやしないかい…?




  「確かに、パチモンとかいう割には妙に強いな」


  《パチモンがモノホンを越えられない、というルールはありませんけどね》




  うん、スターも気づいてるみたい。向こうのパチモン組の方がいくらか強い。


  イグナイテッドの言うとおり、本物の方が絶対に強い、ってワケでもないんだけど、それにしても一方的だよね。


  そう思いつつ見てみれば、パチモン軍団が一歩、また一歩と未だ大勢を立て直しきれてないモノホン組に向かっていく。





  「だ、ダメだ……勝てない……」


  「なんか僕たちより、22%強い気が……」




  緑ショートヘアーの子や赤毛の槍騎士の子から弱音が…あぁもう!


  見てられなくなったから、彼女たちを守るように前に出る。





  「弱音を吐くなっ!

   "戦う者"を志す者なら、決して挫けないんだよ」





  そう、形は違えど、平和を願って戦う戦士なら、ちょっとやそっとの逆境で挫けたりしちゃいけない。

  挫けないからこそ、あのユニクロンだって倒せたんだし。挫けないことを忘れちゃダメだよ。

  でも、せっかくだし彼女たちには余力を残してもらおうか。





  《というと…》


  「もう僕が倒しちゃう、アイツら」



  そう、余力を残してもらうにはそれが1番でしょ。アイツら、僕らのデータは持ってないだろうしね。







  …………僕らのデータは持ってないだろうしね……っ!!







  「……あー、自分のパチモンがなかったことが悔しかったのか…?」


  《おそらく、スターさんのその指摘で正解だと思います》






  というワケで、いくよ!






  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




  《マスター》




  ん?どうした蜃気楼。




  《別エリアにおいて、詳細不明の機体の反応が確認されています》





  は?




  《少なくとも、機動六課、カイザーズ、そして我々が保有している機体のいずれとも違う機体であることは確実です》





  おいおい、どういうことだよそりゃ。


  今回の模擬戦、客人なんざ1人も招いてないっていうのに。


  それどころか、蜃気楼のデータバンクにも入ってないなんて、完璧にイレギュラーじゃないのさ。





  《電磁フィールドの発生装置まで壊されているらしく、映像中継はできませんが、画像データは辛うじて届きました》




  あー、こなたたちも戦い始めてるのはそのせいか。発生装置には一応監視カメラが仕掛けてあるんだけど、それごとオダブツか。


  で、蜃気楼が見せてくれた画像を見て、オレは思わず頭を抱えたくなった。



















  なんでアイツがあそこにいるんだよっ!?









  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




  パチモンコンボイのふるう刃をレイスジャベリンで受け流し、パチモンストライカーから繰り出される槍と剣の乱舞には素直に後退して対処。


  それを予測していたか、後ろに回り込んでいたパチモンライナーが肩のランチャーを発射してくる。



  「3対1だからって、やり方が単調なんだよっ!」



  ところがどっこい、そんなもんはとっくに予想済み。

  なので、さっさと右にサイドステップで回避し、振り向きざまにレイスジャベリンでパチモンライナーの右わき腹を切り裂く。







  ていうか、地球に流れ着く前にいた場所がバリバリの戦争地域だったせいで、実戦訓練は否応なしに積まれてる。


  しかも、それがイグナイテッドやティレイスタと出会う前で、文字通り体1つで生き延びなきゃならなかったからもう大変。


  どこぞの超兵さんじゃないけど、他人の血をすすってでも生きてきたご身分さ。


  いや、血をすするなんて言葉でもまだ生易しい。仕掛けてきた相手限定だけど、他人の肉すら貪り食って生きてきた。コレ本当。








  人の肉って、焼いて食うと意外とうまいよ?……という生活をかれこれ800年以上は繰り返してきたものでねぇ。


  もはや殺してでも奪い取ることに慣れたせいか、戦闘スキルもそれなりに研ぎ澄まされてるみたいなんだよねー。


  一部、マンモスなワンマンズ・アーミーさんに仕込まれた技術やどこぞの暴君から盗んだ技術も混ざってるけど。


  まぁ、とどのつまり、ほんの1年や2年前に戦士になったばかりの連中じゃ肩慣らしにもなりゃしないってこと。


  それこそ、今こうして戦ってるパチモン軍団だって、所詮は戦士になりたてな連中のパチモン。


  強化されたっていっても、根本的なセンスとかまでは大差ない。












  ……ごめんなさい、カッコつけすぎました。


  ぶっちゃけ、持ち前のハイスピードでヤツらをかき回して、ヒットアンドアウェイでダメージを重ねてるだけです。





  レイスカイザーになる前も後も、僕のバトルスタイルはそんなとこ。



  とにかく機動性と加速性に特化しちゃってるみたいだから、ダメージを積み重ねることで大技につなげる隙を作ろうってワケ。







  まぁそれでも、実戦経験の差がないワケでもないみたいだけど。


  22%アップで多少なりとも対処できるかなーと思ったら、案外アッサリと僕のターンに持ち込まれてる。


  うん、デカいヤツほど脇が甘い。パチモンコンボイはそうでもないけど、こっちは攻め手の駆け引きであしらう。


  向こうは剣による攻撃か蹴り技ぐらいしかやってこないから、ある程度は手が読める。


  対するこっちは、800年の実戦経験+αのおかげで攻め手には事欠かない。




  「甘いんだよぉ!」



  パチモンコンボイが繰り出した右回し蹴りを左手で受け流し、その勢いのままにくるっとターン。


  続けざまにレイスジャベリンでヤツの背中に袈裟斬りをお見舞いしてやる。





  「甘いっつーの!」




  取り押さえようとしたか、パチモン合体戦士2体が左右から突っ込んでくるけど、無駄だね。


  背中のスラスターをふかし、真上に急上昇。その直後、パチモン合体戦士は正面衝突して下へ落下していく。


  ちょうどいいね。




  「どっせぇい!!」



  斬りかかってきたパチモンコンボイの右腕を掴み、そのまま空中背負い投げ。

  先に落下して仰向けに地面に埋まっていたパチモン合体戦士2体の上に投げ落としてやる。

  これで、パチモン軍団は1か所に、しかもご丁寧に1列にならんでくれた。うん、"ならんでくれた"としておく。







  「たとえお前らが、22%アップされていようとも!


   バッタモンである以上、オリジナルの新製品にはかなわないのだぁぁぁ!!」







  さぁ、文字通りのフィニッシュいくよ!










  「フォースチップ、イグニッション!」




  僕の叫びに応え、上空からフォースチップが飛来。ただし、描かれているシンボルは、マイクロンのシンボルと同じもの。僕の"力"の影響だろうけどね。


  飛来したフォースチップは、背中のチップスロットに飛び込んでいく。



  〈Full drive mode, set up!〉



  告げるのは、ティレイスタに内臓されてるAIの制御OS。これは近代のトランステクターでも変わらないみたい。

  それはともかく、アナウンスと共に解放されたエネルギーがレイスジャベリンに集中していく。

  更に、集中してあふれた分がオーラとなって僕を包み込む。



  〈Charge up! Final break Stand by Ready!〉



  準備完了の意を告げるOSの声を確認し、背中のスラスターと両肩の翼に備えられたブースター全開。

  オーラに包まれながらレイスジャベリンを突き出し、一気にパチモン軍団へと突撃する。





  「レイス、フィニィィィッシュ!!」






  オーラと共にレイスジャベリンでパチモン軍団のボディを逃さず貫き、少し離れたところで振り返る。







  「僕に出会った不幸を呪え…!」







  キメ口上も含めて「レイスフィニッシュ」が決まったところで、

  ボディにデカい風穴をあけられたパチモン軍団は大爆発。全てが完璧にスクラップと化した。







  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




  ……いきなり現れて、僕たちを守ってくれたどころか、あのロボットたちをあっさりと倒しちゃった。


  相手に情報がなかったってこと、それを差し引いてもすごい。




  「ありがと、レイスカイザー」



  っと、それよりもまず、お礼言わなくちゃ。こなたがあのレイスカイザーとかいう人にお礼を言ってる。


  今度、こなたから詳しく話を聞いてみようかな。




  「なぁに、礼には及ばないさ!


   困った時の旅人頼みだ、さらばっ!」








  ……え?


  なんか今、変な言葉を言ってたような…。そんなことを思ってる間に、レイスカイザーはシャトル型に戻り、丸い人と一緒に飛び去ってしまった。












  「こ、困った時の…」


  「…旅人、頼み?」


  「……外したね、レイスカイザー…」











  これにはキャロもジェットガンナーも、こなたまで茫然としてる。


  なんだったんだろ、あの人…。







  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










  粘りに粘ったみたいだけど、そろそろ限界か?




  マスターソドラボイのフェイスアタックがクリーンヒットし、そのままマスターコンボイは地面に叩きつけられる。



  ……いや、まだいけるか?





  「無理だよ無理。お前らじゃオレには勝てないんだってヴぁ!!」




  ちょっとどっかの目立ちたがりなゴッドマスターみたいな口調が混ざったけど、まぁいいや。


  とにかく、今のセリフと共に胸部から展開した大型キャノンがマスターコンボイを狙う。





  「立って!恭文!マスターコンボイさん!

   やられちゃうよ!」




  スバルの叫びもむなしく、肝心の向こうは積み重なったダメージで立つのも難しそうだ。



  じゃあ、いっそ終わらせるか…?





  「トドメだ」





  そう言ったとき……マスターソドラボイの背中で爆発が起きた。




  なんだ!?







  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





  どーやら、間に合ったみたいだねー。




  さすがだねー、かがみん。射撃はお手の物だね!




  「よしなさい、て、照れるじゃないの…」



  いいじゃん別にー♪




  さて、あとは……アイツだけだね。




  「ゲゲッ!モノホンのヤツら!

   どうしてここに!」




  なんかマスターコンボイの偽物なヤツのコックピットから妙に聞き覚えのある声が聞こえるけど。


  気にしなくていいよね。






  「確かにそのパチモンは強い」



  「22%アップだからな!」



  「でも、私たちが力を合わせれば……」





  『お前たちなんか、敵じゃない(です)!!』





  ティアにゃんが、クロくんが、私が、そしてみんなで、アイツに宣言してやる。


  そうだよ、私たちが力を合わせれば、あんなの敵じゃないよ!





  《突然現れたイレギュラーの手柄を横取りしてるだけじゃないですか》





  マグナムキャリバー!!それ言っちゃダメー!!







  「恭文!もう一度代わって!」




  と、スバルが恭文と交代してマスターコンボイとハイパーゴッドオン。







  「こなた、久しぶりに過激に無敵なアレやろうよっ」







  そうだね、じゃあやろっか!















  『マスターコンボイ!』

  「カイザーコンボイ!」




  『ハイパーゴッドリンク!!』





  私たちが、そしてマスターコンボイのハイパーゴッドオンで合体してるトライファイターが1つになり、1つの戦士となる。






  『カイザーマスターコンボイ、全力全開、Stand by Ready!』





  私たちなりの全力全開、それこそがこのカイザーマスターコンボイ!負けないよ!





  「よぉし、それならこっちだって、カイザーマスターソドラボイに合体だ!

   来い、カイザーソドラボイ!!」





  あー、諦めた方がいいと思うけどなー。







  「オォイ、来いよ!

   来てよ!!カイザーソドラボイったらぁ!!」





  レイスカイザーにスクラップにされてるワケだし……ねぇ?





  《そうでもなきゃ、こうして駆けつけられるワケがないですからね》





  だからそれ言っちゃダメなんだってば、マグナムキャリバー!!





  「よぉし、本物の力を見せつけよう!マスターコンボイさん!こなた!」

  「おうよ!」

  「おっけー!」






  ひとまず、今は目の前の敵への対処だよね。速攻で。







  『フォースチップ、トリプルイグニッション!!』



  ミッドチルダ、セイバートロン星、そして地球、3枚のフォースチップが飛来して、背中のスロットに飛び込んでいく。



  〈Full drive mode, set up!〉


  メインOSが告げ、全身の装甲が展開。"フルドライブモード"ってヤツだね。


  〈Charge up! Final break Stand by Ready!〉



  更に、虹色の魔力が荒れ狂い、両手にあるオメガとアイギスの刀身がフォースチップの力による輝きに包まれる。



  〈Wing road!〉
  〈Blaze road!〉


  マッハキャリバーとマグナムキャリバーがそれぞれで魔法を発動。

  魔力で発生した"道"に乗っかって、目標へと伸びていく勢いのままに敵へ突撃。







  『絆の剣よ!』






  飛び込んで、まずアイギスで一撃!






  『灼熱の嵐を呼べ!』






  続いてオメガで追撃!更に頭上に剣を振り上げながら身をひるがえして、










  『ブレイジング、ストーム!』










  そろえた二振りの剣を振り下ろして、パチモンを斬り飛ばす!


  大地に叩きつけられて、なんとか身を起こすパチモンだけど、そんなアイツに私たちは背を向けて…





  任務Mission――完了Complete







  そう告げると同時、アイツの周りでくすぶるエネルギーがトドメの大爆発を起こした。





  ……よし!





  「チクショーッ!」




  ……って、なんかどっかのスーパーサイヤ人な宇宙人みたいな叫びが。


  よく見ると……アイツ、頭だけになって飛んでる!?





  「こうなったらこのまま、一旦退却して………ってぇ!?」


  「見つけたぁぁぁぁぁぁっ!!」




  レイスカイザー!?離脱してたんじゃなかったの!?


  どこからともなく猛スピードで飛んできたレイスカイザーが、頭だけになったあのパチモンをわしづかみにした。





  「やっと見つけたよ、ジュンイチ!

   君宛てにお届け物があるのをすっかり忘れてたよ!」






  ……え?「お届け物」?






  「離せっ!今はそれどころじゃないんだぁぁ!!」








  なんかよくわかんないけど、ものすごい慌てた様子でアイツがレイスカイザーの手から脱出。



  でもね、こっちとしてもむざむざ逃がすつもりはないんだよねー。





  「げげっ!げげげげっ!!」




  というワケで、ジェネラルライナー、Vストライカー、そして私たちの3体でアイツを取り囲む。








  「どこへ行く?」


  「え、いや、あの……別にその……」







  マスターコンボイからの、妙にドスのきいた問いかけに、アイツはコックピットの中でがっくりとうなだれて降参したのだった。









  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





  「えーっ!?

   アレって、そーゆーシチュの模擬戦だったの!?」



  「はい」




  諸々、お互いにアイツ…というか、ジュンイチさんに用がある、とのこと。


  なので、レイスカイザー…の中身な人、トラルーと一緒にジュンイチさんを尋問中。


  で、得られた情報が、なんとあのパチモンはジュンイチさんが僕らの模擬戦相手として仕組んだってことだった。


  僕らを代表して、トラルーがビックリ仰天。うん、気持ちはわかるよ。





  ちなみに、ジュンイチさんの返事が超低姿勢なのは、その考えに賛同したっていう横馬ともども、マスターコンボイにドスのきいた視線を向けられてるから。


  まぁ、僕も多少はジト目でにらんでるけどね。



  他のみんなも、おおむねそんな感じ。豆芝はなんか複雑な表情だけど。



  特にティアナとかがみの視線がキツそうだけど、まぁいいでしょ。


  よりにもよって、当事者である僕らに事前通知なしで、しかも郊外とはいえ六課の敷地外な場所であんなことをしでかしたんだから。


  後でレジアス中将からも文句いわれるんだろーなー。まぁ、直接言われるのはあのタヌキだろうから別にいいけど。







  「ところで、トラルーさんはどういう用事で?」






  そう、キャロが言うとおり、今度はこっちが気になる。

  つまり、トラルーがジュンイチさんにどういう用があるのかってこと。



  話しぶりからすると、顔なじみではあるみたいだけど…。





  「あー、そうそう。今日はね、ジュンイチ宛てのお届け物があるんだ」





  さっきも、「お届け物がある」って言ってたっけ。


  というと、君は宅配便とかやってるの?




  「そうだよー。あ、コレ一応名刺ね。バイトみたいなもんだけど、一応正式に所属してるから」




  そういいながらトラルーが差し出した名刺を受け取る。


  「株式会社オービット」……なるほど、結構大きな運送会社だね。





  《最近はミッドにもその業務範囲を拡大している、という噂は聞いていましたが、本当にそうみたいですね》


  「そうみたいだよー。配達の途中で君らをみつけて、そこから…ってとこ」





  アルトの言葉に、トラルーが付け加える。なるほど、こなたたちが捕まってる現場に通りすがってしまったワケだ。


  エリオが「すごい」って言ってたけど、話によれば乱入した挙句にカイザーコンボイ、ジェネラルライナー、Vストライカーのパチモンを1人で倒したとか。


  へぇ、それはそれは…。




  《迂闊に手合せしたら、あっさり返り討ちにされそうな気もしますが》




  ……アルトさんや、それは言わないでほしいですなぁ…。






  「で、お兄ちゃん宛ての荷物って?」


  「気になる?

   見たいんなら、ジュンイチは尋問の為に簀巻きにしちゃってるから、僕が開封しちゃうけど、いい?」


  「あぁ、かまわねぇよ」



  あずささんは「お届け物」の方に興味津々。ジュンイチさんからの許可を得て、トラルーが搬送用と思われるダンボールを開けていく。

  あれ?代金は?



  「コレは宅配依頼の時点で代金は振り込まれたヤツだっていうから、問題ないよ」


  あぁ、そういうことか。




  「なんなんだろーねー…………………………ホントになんなんだろーねー」




  開ききって、真っ先に中身を見たトラルーは、なんてことなしに両手でさっさっと開いたフタを閉じて中身が見えないように隠した。


  どうしたのさ?





  「あー、単刀直入に言っちゃうと、"あぁるじゅうはち"なブツの数々が詰め込まれてる」





  『〜っ!?』



  トラルーからの回答が出た瞬間、周りの全員が引いた。うん、僕もドン引きだよ。






  ……ひとつ、聞いてもいいかな?




  「何?」


  「その荷物の送り主って…誰?」


  「えっと……伝票には「柾木 霞澄」って書かれてるけど」







  あの人かぁぁぁぁぁぁっ!!








  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




  荷物の受け渡しは終わったので、ひとまず仕事を終わらせるべくスターと合流。




  「ちゃんと渡したかー?」



  うん、滞りなくね…。




  「どうした?」




  うん、世の中には、エロゲーやらエロ本やらを、何の隠ぺい工作もなしに送りつける人っているんだなー、と。





  「…………開けたのか」




  開けました。勿論、相手の許可は得てね。





  「で、見えたのがそーゆーブツだった…と」





  そゆこと。






  「あー、まー、あまり気にするな?」


  《そうですね、「さわらぬ神にたたりなし」とも言いますし》









  うん、そうするよ。


















  さて、六課へ突撃取材するの、いつぐらいにしようかね…。
















  (第4話へ続く)















  <おまけ:とある暴君と魔王のその後>




  ―事件終息後、機動六課隊長室にて―




  「さーて、なのはちゃんにジュンイチさん、覚悟はええよね?」





  はやてちゃん、怖い。その視線と笑顔が妙に怖いよ。





  「怖くなっても当たり前だと思うがな。

   何しろ貴様らは、よりにもよって機動六課の隊員の訓練という名目でミッドチルダの郊外を戦場とし、

   挙句の果てにその辺の趣旨をレジアス中将ら地上本部上層部に全く連絡していなかったのだからな。

   おかげで上層部を代表してレジアス中将から直々に嫌味三昧だ」


  「おかげでこっちはえらい迷惑なのですよ。

   後処理は勿論、周辺住民への謝罪やら賠償やらで財政が圧迫されかけてることも自覚してほしいのです」





  ビッグコンボイさんやリインからダメ出しされて、更にしょんぼり。

  確かにあのパチモンたちはAIによる自立行動タイプだったけど、まさかそんなに甚大な被害が出るなんて…。





  「どうせ、あの辺りはまだ再開発地区だ。損害が出たところで大した問題にはならねぇよ」


  『……』


  「…………すいません」




  で、どこ吹く風といわんばかりなことを言うジュンイチさんも、

  はやてちゃんまで加わった3人からの怨念のこもった強烈な視線で黙らされました。


  うん、今回ばかりはジュンイチさんも真面目に反省しましょう?





  「というワケで、2人にはこれから各種始末書及び各方面への謝罪文の作成と提出、

   それと、パチモンロボットたちの残骸の撤去と各種資料の消去及び処分。

   あと、被害に遭った周辺住民の皆さんへの直接謝罪巡りを随時こなしてもらいます」


  「尚、その全てが完了したと我々3人が満場一致で判定しない限り、貴様らに逃げ道はないのでそのつもりで」


  「逃げようとしても無駄なのですよ♪」





  リインの言うとおり、言ってるそばから逃げようとしてたジュンイチさんは、

  一瞬で回り込んでいたフェイトちゃんにあっさりと捕まっていた。







  えっと……これ、全部私たち2人だけでやるの?







  「もちろん、その通りやでー」


  「当然のことを聞くんじゃない」


  「他に誰がやると思ってるですか」








  うわーん!















  (ホントに終わり)



















  あとがき


  というワケで、「とまコンでソ○ラをやったらこうなるね」的なお話もこれで解決。

  現時点で、トラルーは「宇宙の海は俺の海」なサメ船長のポジションです。

  無双っぷりも原作のサメ船長譲り(アレンジはしてますが)。

  ……ただし、サメ船長とは違って、カウンター役を想定されてるワケではないので、アレ以上の戦力が相手だとさすがに不利です。

  (サメ船長は他の黄金勇者全員を相手に無双できるらしいですけど)




  データ提供やら、送りつけるブツやら、ホントに霞澄ママは愉快犯であり確信犯であると思われます(マテ)




  合流こそまだ先ですが、トラルーと恭文たちは、今後も行く先で遭遇して、なんやかんや…な展開が続きます。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 自分のパチモンがなくて残念そうなトラルーの背中がちょっぴり煤けて見えた今回のお話。
 とりあえず霞澄ママは「世間体」という言葉を覚えましょう(爆)。

>「たとえお前らが、22%アップされていようとも!
> バッタモンである以上、オリジナルの新製品にはかなわないのだぁぁぁ!!」

 あぁ、このセリフに一切反論できない自分がいる(笑)。