えー、相手の"霊子生命体ソウル・ファクター"の無知による迂闊な発言のせいでトラルーが修羅に変貌。


 そんなワケで、もうやることないなーと内心思い始めているスターです。






 「いやいや、アレ止めろって。こっちまで危ないってことじゃんか!?」






 そうはいうけど赤い副隊長さん、冗談抜きで本気と書いてマジでブチ切れたトラルーを止めるってのは自殺行為なワケで。


 幸い、敵味方の区別はつくし、ブチ切れる原因になったヤツらを軒並み叩き潰すか"ガス欠"で止まるから、


 寧ろオレらとしては傍観者にとどまっていた方が安全なんですよ?







 「そ、そうか…あたしゃ、てっきり敵味方無差別で暴れるのかと心配d」















 ただし……攻撃、否、"殲滅"の妨害をした場合は、巻き添えって形で味方でも遠慮なく叩き潰されるけど。















 「だからソレが危ないっつってんだよ!?」
















































 「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






 「とある旅人の気まぐれな日常」






  第10話:剣の行方、誰の元へ?
















































 よし、ひとまず整理するか。








 まず、相手の発言のせいでトラルーがブチ切れた。


 で、今のトラルーはその敵さんを叩き潰す気満々である、と。


 止めようとすれば、たとえ味方であっても問答無用で叩き潰される。これで理性は残ってるんだから驚きだ。


 で、最も安全なのは、アイツの気が晴れるか"ガス欠"を起こすまで待つこと。


 それが、トラルーと縁のあるヤツ(デバイス除く)の中で最も長い付き合いであると自負しているこのオレ、スターさんの考えであり忠告だ。


 何か、質問のある人は?









 「はいはーい」








 はい、何かなイテン?









 「それってつまり、今のトラルーは近づくだけで即死的な状態ってことですかー?」









 あー、それはいえるかも。


 まぁ、ただ近づいただけじゃさすがに攻撃されないけど、攻撃目標と自分との間にいれば巻き添え確定だな。


 アレだよ、「オレの姿を見たヤツは、みんな死んじまうぜぇ!!」みたいな。







 「いったいどこの死神の名を持つガンダム?」






 あ、イテンも知ってるんだ。アイツも大鎌持ってて、黒系統のカラーだったらそれっぽいよなー。


 おっと、コウモリっぽい翼もないとダメか?








 「それよか、どこぞの暴れん坊将軍のように思えるのじゃが」







 ビコナは暴れん坊将軍ときたか。あ、ヤバい。今オレの中で将軍様のテーマが再生され始めてる。


 アレだよ、デーンデーンデーン、デデデ、デデデ、デーンデーンデーン!……ってヤツ。


 そういえば某メダルのライダーの映画で異色な共演を果たしてるんだっけ。そう考えると割とタイムリーなネタだなー。









 「……アンタら、この事態を解決する気、あるの…?」







 だから、今回に限ってはおとなしく傍観者に徹した方が安全なんだって、ツンデレガンナーさん?







 「ツンデレ言うなっ!?」






 ……これは噂通りだな…。


 ツンデレっていえばほぼ確実に反応してお決まりのセリフを放つ…。


 噂通りで大いに結構っ!







 「何がっ!?」


 「落ち着けティアナー。いきなりペース乱されまくってるぞー」


 「……はっ!?」







 赤い副隊長さんの一声で我に返った。


 どっかの黒き暴君とかは嬉々としてネタにするんだろーなーとか思ったのは、ここだけの話な?








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「くしゅんっ」






 あれ、どうかしましたか?


 ジュンイチさんが風邪をひくなんて、そうそうないし…。






 「気にすんな、恭文。アレだ、誰かがどっかで噂してるってヤツだから」







 「まぁ、貴様に関しては誰がどこで噂していようが不思議ではないがな」


 「いろんな意味で名声も悪名も広がってるからなー」


 「へー、そうなん?」





 イクトさんやジンの言葉には素直に同意。


 伊達に異名の山々が積み重なってたりしてないってことだしねー。


 いぶきも試しに調べてみたら?


 地球からでも、少なからず時空管理局へ通じる抜け道あるし。





 「事件が落ち着いたら、そうしてみよか」





 ……もっとも、ジュンイチさんも地球の出身だから、下手するとこっちの方が情報は入るかも…?







 「今は亡きどっかの元同僚が情報をばらまかない限り、それはないと思うが」


 「今こうして私たちが神隠し事件の話を広めないようにしてるのと同じこと、ということでいいのかしら?」


 「大体そんなところだ」







 なずな、さり気なく「今は亡き」って部分をスルーしたね。


 まぁ、それはそれで、残念なような、安心なような…。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「ほう、これはまた面白いことになっているな」


 「えっと……なんか嫌な予感しかしないんだけど」





 ジェノスクリームが不意に違う方へ視線を向けるから、どうしたものかと見てみたら…うん、嫌な予感しかしない。


 イリアスと融合ユニゾンしてるおかげで、オーラとかそういうのも多少は分かるから言えるんだけど……嫌な予感しかしない。


 視線の先には、無数の量産型TFやらドールやらが囲むど真ん中で、ドス黒いオーラを放って佇んでいるトラルーの姿が。


 しかも、なんかオーラの一部がどんどんどんどん彼のデバイスであるイグナイテッドに流れ込んで…。










 「……邪魔だぁぁぁぁぁぁっ!!!!」









 彼らしからぬ大声と共に、イグナイテッドが勢いよく投げられる。


 えっと、今の状態は、ツインランサー型のジャベリンフォルム……それを投げる……ヤバい!!










 「ぅおぉっ!?」


 「うわわっ!?」








 オーラをまとったイグナイテッドが、周囲の全てを薙ぎ払う。


 量産型TFやドールを薙ぎ払う勢いでこっちにまで飛んできて、ジェノスクリームも僕も慌てて回避。


 回避するついでに見たら、攻撃を受けた連中は全て木端微塵……って、威力強すぎ!


 あんなのくらったら、それだけで撃墜判定出てもおかしくないよっ!?










 「早いところ"星の剣"を確保して離脱した方がよさそうだな」


 「っ、しまった!」








 いけない、今の回避行動で、ジェノスクリームから距離が!


 でも、逃がさない!








 「グランドクェイク!」







 イリアスの力を宿した拳を地面にぶつけて、地割れを起こして割れ目にジェノスクリームを落とす。


 更に、地割れで出てきた破片を集めて、ジェノスクリームの上に落として蓋をする。


 さて、これでヤツの足止めはできたとして……








 《クレア、油断すんな!》


 「え――」







 イリアスからの悲鳴に近い声が聞こえたと思うと、上空から大量のエネルギー弾が僕に降り注いできた。


 なんとか耐えたけど…新手!?







 「そういうこった!!」






 そう言いつつ降りてきたのは、ジェノスラッシャー!?


 ということは、やっぱりディセプティコンもオリハルコン…いや、マイクロンを狙ってる!


 意地でも阻止しないと!









 「この程度で…オレを止められると思っているのか!?」









 その声と共に、ジェノスクリームも地割れから飛び出してきた。


 さすがにディセプティコンの参謀2体が相手となると…きついかm
















 「どぉけぇぇぇぇっ!!!!」














 ものすごい声が響いてきたかと思うと、ちょうどジェノスクリームたちの真後ろの方から――











 鬼のような形相になって、ジャベリンフォルムのイグナイテッドを持ったトラルーらしき人影が――












 一瞬でジェノスクリームたちをズタボロにしてブッ飛ばした。














 「どけどけどけどけ、どけやオラァァァァッ!!!!」











 そう認識できた頃には彼は遥か彼方で……僕はイリアスとの融合ユニゾンが解けて地面にめりこんでいた。


 もしかして…巻き添え…?


 そう思う傍から、彼の進行ルートにいる人たちは軒並み叩き潰されていく。


 まぁ、人たちっていっても、殆ど量産型TFやらドールやらといった、そんな連中だけど。







 「遅かったか…」






 スター?


 それに、イテンやビコナも…。






 「クレアたちは傷が軽くて何よりだ」


 「敵味方の区別がつくって、そういうこと?」


 「ほぼ無差別と変わらんの…」







 そういえば、確かに。


 まだ意識はハッキリしてるし、ケガもそんなにないし…。


 イリアスも、融合ユニゾンが解けたショックか気を失ってるけど、大きなケガとかはない。


 対するジェノスクリームたちは、あの一瞬でどうしてってくらいに全身の装甲がボロボロで、ところどころ内部にまでダメージがあるように見える。


 ひとまず、あの二人がこれ以上戦えるとは思えないけど……それとはもう別な意味で大変だよね?








 「まぁ、な。

  ひとまず、オレらにとって1番安全なのは、今のアイツに近づかないことだ」


 「それと、進行ルート上に立たないこと…?」


 「そうなる。現に、こうして君も巻き添えくらったワケだし」







 スターって、確か前にもトラルーがあんな状態になった現場にいたんだっけ。


 ずいぶんと冷静なのは……まさか、見慣れたから…?






 「ほら」





 スターが僕に渡してきたのは…イヤホン?






 「オレらはもうどうしようもないから、

  ビコナ推薦の「暴れん坊将軍のテーマ」でも聞きながらアイツが止まるのを待ってようぜ」







 少し辺りを見回してみると、六課の人たちやハルピュイアたちも同様にイヤホンをしてる。


 これ、コードがないけど…。








 「あぁ、"コイツ"のおかげで、発信機能がアップしてるからな。

  ラジオみたいなものさ。今はオレのブリッツスカイが発信源ってワケ」








 そう言うスターが後ろを向いて見せたのは、ブリッツスカイの上面部に合体している6輪の探査車。


 車体上部には、ビームガンとレーダー装置が一体化しているようなものが見える。


 更に車体前面に当たる部分には、マイクロンのマーク。








 「オレのパートナーマイクロンさ。名前はソナー。

  情報収集やレーダー機能に優れてるみたいだ。あと、マイクロン共通でサイズシフト能力もあるらしい」







 あぁ、だからブリッツスカイに合う大きさになってるんだ。小さいマイクロンかと思っちゃった。


 ……で、そのレーダー機能を、ラジオ替わりに使っていいのかな…。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 まずい、どんなに逃げてもヤツは僕を追ってくる。


 目くらましにでもなればと量産型TFを送り込むけど、ダメだ。片っ端から一瞬で潰されるだけだ。


 それに、あの攻撃力。一撃で量産型TFを木端微塵に破壊するとなると、まともにくらえば致命傷は確定。


 かくなる上は…いや、アレはダメだ。ダークコマンダー様から禁止されている。









 「成敗すっぞゴルァァァァァッ!!!!」







 ただならぬオーラとスピードで、トラルーは依然こちらを追いかけてくる。


 我ながら、よくもまぁあんな相手から逃げ回っていられる。


 大体、あぁなると逃げ切れずに倒されるのが関の山だろうに、僕に秘められたポテンシャルはそれを認めn








 「ぅらぁぁぁぁぁぁっ!!!!」







 一瞬で勢いよく投げられたイグナイテッドが僕の背中を直撃した。


 そう気づいた時には、既に地面に倒れていた。


 戻ってきたと思われるイグナイテッドを掴み、こっちに襲い掛かってくる――そうはいかない。


 とっさに地面を転がり、攻撃を回避。僕が今までいた場所には、クレーターができた。








 「《どうしました?

   さっきまでと雰囲気がまるで違いm》」








 「死ねぇぇぇぇぇっ!!!!」








 「《わっ》」








 問答無用、そんな言葉が頭をよぎる。


 とっさにバックステップした僕の目の前で、またクレーターができた。


 原因などいうまでもない、彼のオーラが移ったあの武器が叩きつけられたから。


 おかしい。以前まみえた時、これほどの破壊力はなかったはず…。


 けど、それももう活かせなくなる。







 「っ!?」







 転送ポイントの真下に来たトラルーの上から、球体型の大型ガジェットが飛来。その数、4。


 全てがベルトのようなアームで彼を押さえつける。







 「ご苦労だったな、"Xカイ"」







 僕の隣に、ダークコマンダー様も現れる。


 そして、トラルーに話す。





 「ユニクロンと同一の存在であると、何故認めようとしない?

  生まれがユニクロンであるというなら、君もまたユニクロンであるはず。

  別に、不名誉なことでもあるまい?何しろ、宇宙的に有名な破壊神の一部なのだからな」






 押さえつけられているからか、ダークコマンダー様の言葉をまともに聞いているように見える。


 タランスの言葉が真実であることを、裏付けているようなもの。






 「いっそのこと、我らプレダコンズに来たらどうだ?

  ユニクロンの遺志を継ぐ我々の元なら、いろいろ解放され、楽になれると思うがね」





 「……あ゛ぁ?」










 ダークコマンダー様からの言葉に、反応した。


 けど……またドス黒いオーラを放ち始めて……









 「ふざけるなよクソ野郎…誰がユニクロンの眷属に戻るか……。

  お前と違って、こちとら気持ちまでユニクロンになったワケじゃないんだよ…」























 「一緒にしてんじゃねぇぞ、クソッタレがぁぁぁ!!!!」




























 その叫びと共に放たれたオーラは、それだけでガジェット4機を爆砕。僕やダークコマンダー様すら吹き飛ばす。


 なんか、余計にひどくなったような…!?









 「……こんな力は、ユニクロンにもなかった筈だが。

  いや、ない筈だ。おそらく、トラルーのパートナーマイクロンの影響だろう」







 よくよく見ると、彼の背中にはメタリックブルーが特徴的な球体がある。


 データで見たことがある。アレは、彼のパートナーマイクロンであるバグジェネラル。球体なのはビークルモードに当たるサテライトモードだから。


 まさか、本当に生身でエボリューションするなんて…。




 外観上は大きな変化はないけど、内面的な何かが違う。


 オーラの感じから推察するに、彼の中の何かが違うエネルギーに変換されているように思える。


 彼の体から放たれるオーラが、武器に流れ込んでいくエネルギーが、今こうしている間にも恐ろしい速度で増大している。


 そして、あふれたエネルギーの一部が形状を持ち、頭部から生える一対の翼のようになった。









 「《ダークコマンダー様は、アレをどう思います?》」


 「並み居るマイクロンの中でも、あのバグジェネラルは異端児だ。

  ヤツの力を受けて、トラルー自身の力が"変調"を起こしていると見るべきだろう」










 ダークコマンダー様いわく"変調した"トラルーは、いきなり背中を見せたかと思うと恐ろしい加速度で移動。


 その行先には――







 「がっ…!?」


 「なっ!?」







 スターセイバーをかけて戦闘中だった、ファーヴニル先輩とカオスプライムがいた。


 トラルーは先輩に肉薄、先輩はスターセイバーをふるう暇もなく一撃で撃墜された。


 先輩の手元を離れたスターセイバーは放物線を描きながらあらぬ方向へ飛んでいき――










 「……これは…チャンスと見るべき、かしらね…?」











 ヴェルヌスの目の前の地面に突き刺さった。

































 (第11話に続く)





























 あとがき



 あれ、スターセイバーがちっとも活躍できてないぞ?とか思いつつ書きあがった第10話でした。

 しかもファーヴニルやジェノ兄弟が一瞬でご臨終になっちゃうし(あ、死んではいませんのでご安心を)

 剣はヴェルヌスの目の前へと移動した形ですが、もう少し混迷模様は続きます。




 エボリューション前から恐ろしい破壊力を発揮して暴れん坊将軍状態になっているトラルーですが、次回は余計に悪化します。

 うん、クレアの見せ場を潰しちゃってごめんね?(マテ)

 それと、DarkMoonNight様……ダークコマンダーになったつもりで、計画を見直す覚悟で次回をお読みください(オイ)




 そろそろ第1クールも終わりですし…第12話までには決着したいなぁ(ぇ)


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 暴走トラルー大暴れ。敵味方の区別がつく分ジュンイチの暴走態よりはマシですが……区別ついても手は出すんかい(苦笑)。
 活躍するかと思われたクレアは暴走に巻き込まれて融合ユニゾン解除 。イリアスが目を回しちゃったし、今回はリタイアかな?

 スターセイバー(剣)はヴェルヌスの元へ。少なくともディセプティコンやプレダコンズには渡さないと思いますが……ネタには走るだろうけど(笑)。
 とりあえず一番の問題である暴走トラルーは誰が止めるんだろう? スター達は傍観決め込んじゃってるしなぁ……