みなさんどうも、トラルーです。
僕たち精霊一派は、バグジェネラルとソナー、それにマッハたちマイクロンも加わって機動六課の御厄介になることになりました。
これはスターに感謝だねー。
本当に一度宿泊してたみたいで、寮母のアイナさんに話を通してもらえたとのこと。
巷では「たぬき」とか言われてる部隊長殿を経由して。
マッハたちは特定のパートナーを決めず、誰と組むかは当面本人たちの自由ということに。
そしたら案の定、揃いに揃ってカオスプライムに向かっていったのは、六課内部では割と有名な話。
ちなみに部屋割りは、無難に「男子・女子」(マイクロンはパートナーと一緒)で落ち着きました。うん、それがいいとも。
ただでさえジュンイチにイテンの件でいろいろかき回されたっていうのに、これ以上ネタとかにされてたまるかい。
他にも、チラホラとシュラバスキーな連中も混ざってるみたいだしさ……。
これでまたビコナのハートに火がついたら、いよいよ「たいへんなへんたい」だよ。
……ジンとの定期連絡で仕入れた情報によると、現在彼に付きまとう「エロリスト」が約一名…。
ジン相手限定ならまだいいんだけど(彼には悪いが)、そのエロっぷりがある意味で無差別攻撃っていうのが怖いなぁ…。
ビコナに"押し倒された"時にすら辛うじて死守した貞操、ピンチ再来っぽい。
いやね、押し倒されるより、押し倒したいくらいトキメク相手と交わりたいワケで……
え、千年以上も貞操のままですが何か?さびしい野郎とかいうなそこぉっ!!
「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録
「とある旅人の気まぐれな日常」
第13話:定着と新コンビと幕開け
話が脱線したけど、まぁ何が言いたいかっていえば、僕らもこれから六課のみんなに協力していくってこと。
当面は、一般関係でもこなせる程度の書類関係とか、周辺のパトロールとかね。
あと、ディセプティコンやプレダコンズと交戦経験があることから、その辺のデータも提供してもらいたいとか。
デバイスなどのメンテについては、六課が誇るデバイスマイスター、シャリオ・フィニーノさん…通称シャーリーさんがまとめて引き受けてくれた。
ていうか、イグナイテッドが実質分類不能のデバイスってことに目をキラキラさせてたけど、まぁ、悪いことにはならない…よね。
ちなみに、ティレイスタについては霞澄ちゃんがブレイカーベースに秘匿しておくとのこと。
「JS事件」で大破し、現在も修理後の調整中であるというマグナブレイカーともども、オーバーホールついでに強化改良してみたいんだって。
まぁ、宇宙のジャンク屋たちにお世話になってるとはいっても、さすがにメンテには限界があるしねー。
預けるときにスキャニングしてもらったところ、案の定、装甲やフレームの一部にガタがきていたみたいだし、ちょうどいいね。
……ていうか、まともにメンテできる技量がなくてゴメンよ、ティレイスタ。
《その点については、今後は大丈夫かと》
イグナイテッド、それはなぜに?
《ティレイスタを預けた際、霞澄さんからメンテナンスのナビゲートプログラムをいただいてきました。
今後の自己メンテの際は、私がマスターにメンテのアドバイスをすることができます》
それはありがたいことで…。
《別に万能でなくていいじゃありませんか。
かの有名なMS乗りたちだって、フレームや装甲のメンテとかは専門のメカニックたちに任せきりなんですし》
あー、言われてみればそうね。
それを考えると、自分で自分のメンテができるトランスフォーマーは結構すごいよね。
……まぁ、メンテに限界があるってことは変わらないけれど。
とはいえ、メンテのナビゲートができるようになったのか…。
これなら、応急処置とか可動部の調整とかは困らなくて済むかな。
あ、マイ工具も用意しとかないとまずいね。
それに、破損した際にすぐ交換できるように予備パーツも用意した方がいいだろうし…。
よし、今度ギガントボムのところに寄ろう。"空っぽのレリックケース"の件についても進捗状況が気になるし。
え、なんでそんなもん預けてるのかって?
イテンをこっち側に引き込んだ、研究施設襲撃の際に拾ったんだ。
レリックウェポンの研究もしていたのか、お払い箱になったレリックケースがいくつか落っこちてたのを…ね。
まぁ、僕もスターも派手に暴れたせいで、無傷で回収できたのは2つだけなんだけどね。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
改めて調べてみると、かなり独特な構造をしているわね。
現在、私・柾木霞澄は機械スタッフと共にブレイカーベースのメンテナンスルームにいる。
理由は、ジュンイチの愛機の1つ、マグナブレイカーの修理と再調整。
それと、数日前にトラルー君から預かった、ティレイスタのオーバーホール兼強化改良。
前者は継続作業なのでスタッフたちがすぐに取り掛かっているのだけど、問題は後者。
トランスデバイスの開発で得たノウハウをフル活用しても手ごわいわね。
他のトランステクターやトランスデバイスとは、メインフレームの構造に大きな差異がある。
まるで、初めから他の機体との連携、ひいては合体までも想定されているかのような…。
しかも、その「他の」って部分の定義が非常に広い感じもする。
装甲の内部に、可変式のフレームがいくつも仕込まれている。合体の際、これらが独立して稼働し、パーツの幅を調節するのだろう。
もっとも、合体相手がロクにいなかったから使われずじまいに終わってるみたいだけど。
装甲のいくつもの継ぎ目に延長用と思われる内部装甲があるのも、多分そのせい。
……でも、それならそれで、一体どういう合体を想定した構造なのかしら…?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「へぇ、君がかの有名な"古き鉄"ってワケか」
「その異名を知っているとは、光栄…と思っていいのかな」
《まぁ、いろいろと"やらかして"ますからねー》
現在、六課は夕方。良太郎さんたちとは一度別れて、別件の書類整理の最中。
アルトからのツッコミはスルーしとく。
で、休暇から戻って早々に僕たち温泉郷満喫(?)組はビックリ仰天。
なんかいろいろ増えてるんだもん。
人間サイズのトランスフォーマー、マイクロン…はまだいいや。
それに、トラルーとはいつぞやのパチモンウォーズ事件以来だしね。
それより、どこぞの星の戦士のような丸っこい体型をしてる勇者王ボイスなスターとか、
セインとよく似たタイプのイテンとか、昔の日本のお姫様みたいな服を着てるビコナとか。
ジンからのメールで話ぐらいは聞いてたんだけど、実際に会ってみるとやっぱ驚く。
みんなして、体格はエリキャロと同程度。中でもイテンがちょっと幼い感じに見えなくもない。
マイクロンの方が若干大きいくらいだ。スターだけは余計に低いが、本人は特に気にしない様子。。
しかも、サイズシフトで小さくなってエボリューションとやらも可能…って、その時点でどんだけだよ。
オマケに、トラルーが彼のパートナー・バグジェネラルとエボリューションすると、スペック上はジュンイチさんすら圧倒できるらしい。
もっとも、その時は彼のトラウマをえぐられてブチキレたせいもあったらしいけど。
「機動六課に来たのは、ユニクロンに関するデータを求めてのこと…それでいいか?」
「その通り。まぁ、一番に欲しかった情報はタランスがバラしちゃったんだけどさ」
「なら、何故六課に正式に合流を?」
マスターコンボイが言ったのは、トラルーが六課に来た理由。
なんでも、トラルーは自分が生まれた経緯をまともに知らなかったんだとか。
で、タランスがいうには、トラルーはユニクロンの物質再構築能力の暴発で生まれた精神生命体なんだそうだ。
誕生したのとユニクロンから離反したのが今から約千年前。
パートナーデバイスのイグナイテッドとも、離反した後の旅の中で出会ったらしい。
それでも何百年もの付き合いっていうんだから、それだけで気が遠くなりそう。
特に、バグジェネラルとは誕生以来の付き合いらしいのだけど、そこは同じくユニクロンから生まれたものってことがあるので納得。
さて、それならどうして六課に残り、更には正式に協力体制をとっているのか?
それはイクトさんも気になった様子。
「当初の目的は果たされたワケなんだけど、新たに浮上した疑問……主にプレダコンズの行動が腑に落ちない。
それに、前の戦闘でディセプティコンまでマイクロンを狙い始めた。
中でも特に"三種の神器"は、使い方を誤れば文明、ひいては星すらも滅ぼす力を発揮する。
それを争いに使うことはリスクが大きいし、マイクロン自体が争いを望まない。
当面は、マイクロンを連中よりも先に確保して、戦線から遠ざけるのが目的かな」
なるほど、それでマイクロンが増えてるのか。
話によると、前の戦闘でこちらに加わることになったマッハ、ジェッター、シャトラーは、その神器の1つ「スターセイバー」に合体するマイクロン。
その威力はまさに一騎当千、仮にマスターギガトロンが使っていたら、ヤツ1人で六課が壊滅していたかもしれないらしい。
……"支配者の領域"抜きで、スターセイバーだけで。
「ただ、残念ながら、この場所は連中も把握している。
六課に隠すだけじゃ解決にはならないし、彼らをフリーにしても逆に危険になる。
現状で最も確実なのは、連中が現れた際に確実に撃退すること。そのためにはスターセイバーも使わざるを得なくなる。
本来は、巻き込みたくはないけれど…」
話してる内、トラルーの表情が曇ってきた。
えっと、何か重大な問題でも…?
「何人かはチラッと聞いたかもしれないけど、"三種の神器"は…」
その後に出てきた言葉に、僕らは息をのんだ。
「ユニクロンの覚醒キーになる」
ちょっとマテ。
それってつまり、もし「JS事件」みたいにユニクロンの一部があって、そこに神器が揃ったら…
「ユニクロンが復活する、とでもいうのか…!?」
ジンが、その行き着く結論を口にする。そういえば、ジンもユニクロンと戦ったことあったっけ。
僕も、同じことを思った。
今はユニクロンの一部である「ユニクロンパレス」も吹き飛んで、復活の可能性はないかと思ってたんだけど…。
ジンの話だと、ユニクロンのプラネットフォースも復活してるみたいだし、下手すると本当に…!?
「現に、儂らが戦った時には神器の存在がそのままユニクロンの覚醒に影響した。
覚醒後も、永久的エネルギー源として機能していたようだしな」
「ユニクロンは、お前たちも知っての通り、様々な物質を取り込み、己の一部とする能力を持つ。
マイクロンもまた、取り込む対象の例外とはならない」
ベクターメガトロンやカオスプライムが補足。
元の時代でガチでユニクロンとやり合った戦士だけに、説得力あるね。
もっとも、その時は休眠状態に追いやるので精いっぱいだったらしいんだけど。
「更にぶちまけさせてもらうと、マイクロン…あ、ギガロニアで生まれたものは除くよ?
彼らはユニクロンに生み出された、細胞なんだ。
取り込まれれば自分たちの意思はなくなってしまうし、完全に同化してしまうから解放は困難になる。
マッハたちも、ユニクロンの細胞。同時に覚醒キーの一部でもあるってワケ」
おいおい、マヂでか。
なんか、ものすごくヤバいもんが舞い込んできた気がするんだけど。
「プレダコンズも、本当にユニクロンを復活させないとも限らない。
ディセプティコンについては……知らないだろうから放置でもいいだろ」
「私も、そこまでは知らなかったからのぅ」
「そうなの?」
「オレも知らなかったくらいだしな」
スターの言うことはごもっとも。まだまだきな臭い部分が多いからねー、プレダコンズ。
ビコナの知識は、多分トラルーが話した分だけ。それも、今のような部分は話してなかったんだろう。
イテンについても…同程度、つまり深くは知らなかったって感じだろうし。
最も付き合いの長いスターにすら教えなかったってことは、それだけおっかない情報ってこと…?
「本来なら、この辺の知識は誰も持ってなくてもよかった。
けど、こうして神器の存在が明るみに出てしまった以上は、知っておいた方がいいかも、って思って…」
なるほどね、だから僕らに話したのか。
直接神器を巡って争うことになるであろう、この機動六課に属する以上は、知っておかなきゃならない。
知らないまま狙われるのと、知った上で狙われるのとでは、警戒レベルに差が出る。
そして、この事情は警戒レベルを引き上げるに値する重要事項。
それに、トラルーたちだけじゃどうしても限界がある。だから僕らに改めて協力を申し出た…と。
「うん。ユニクロンと戦った勢力の中でも信頼するに値するのは、この機動六課だけなんだ。
僕たちの…いや、僕の勝手だっていうのは分かってる」
そこまで言って、トラルーの表情がなんか、戸惑い…とは違う。
なんかこう、何かに怯えてるみたいな…。
「けど、戦いたくないのに争いの道具にされてしまうのは、見てられないし放っておきたくない。
だからといって、多くの勢力が絡めば余計に争いが大きくなって、かえって危険になって…」
……そうか、怯えは怯えでも、敵とかに対してじゃない。もっと、身近で大切な…。
「だから、本来は僕だけで解決しきれるならしたかったんだけど……」
「何言ってんの」
そう言って、僕はトラルーのおでこを人差し指で軽く小突く。
思わず女の子みたいにちぢこまるトラルーだけど、構わない。
「仲間や友達を助けてもらった恩もあるし、何より放っておけないのはこっち。
あんな宇宙レベルの厄介ごとを1人で背負ったって、どうしようもないでしょ。
それに、そういう厄介ごとに向き合って、解決するのが管理局の仕事で、モットー。
何より、僕ら全員の目の前で土下座までしてこられて思わずビビったくらいだよ」
うん、この会話の前、はやてたち隊長陣も呼び集められ、一通りの事情を話した上でまずしたのが、
「勝手で申し訳ありませんが協力してください!」って言いながらの土下座だったっていうのにみんなビックリした。
アレにはさすがにはやても参ったみたい。一瞬慌てたけど、すぐに落ち着いて、協力体制を認めてくれた。
それに、協力してあげるって気持ちは、僕も同じ。
良太郎さんじゃないけど、事情を知ってしまった以上は、手が届く以上は、ほっとくワケにもいかないでしょうが。
「大丈夫、君に協力してあげたいって気持ちは、ホント。
だからさ…」
「一緒に頑張っていこうよ、ね?」
……あ、あれ、なんか突然泣き出しましたよこの坊ちゃん。
「……うん…うん…っ!」
涙目になりながら、僕が差し出した手を両手で握りしめるトラルー。
そんなにうれしかったの…?
「あー、まぁ、体の事情が事情なだけに、友達もロクに作れなかったからなー。
しかも、恭文みたいに向こうから歩み寄ってくるタイプは尚更」
「ユニクロンの絡みがあるから?」
「いや、それよかもっと単純なこと」
感慨深い感じで見守ってるスターにエリオが聞くけど、違うっぽい。
じゃあ、なんで?
「いや、オレたちも似たようなもんだけど、トラルーって精神生命体で、千年以上生きてるってのは話したよな?
つまり、だ。単純に寿命っていう問題。先に死んじゃうから。
先に死んでしまって辛い思いをするくらいなら、いっそ作らない方がいい…って深層意識とかできちゃってるんだろうな。
オタク仲間もあくまで「仲間」どまりになってるのもソレが原因さ」
……あー、そういうことか。
精神生命体で、僕らみたいな肉体の概念を持たないトラルーにとっては、そこが問題だったんだ。
人間に限らず、殆どの生き物には寿命がある。長い短いの差はあるけど。
千年も生きられるのは、木とかの一部の植物とトランスフォーマーみたいなタイプぐらい。
友達が寿命で先に死んじゃうから、友達を作っても先にいなくなっちゃうんだ。
それこそ、同じ精霊や精神生命体であるスターたちみたいなタイプしか、友達として互いに存続できないってワケだ。
……そういう意味じゃ、僕もその先立つタイプになっちゃうんだけど…。
「……あぁ、僕もうその考え、やめることにしたよ」
「え」
「ベクターメガトロンやカオスプライム、それにアリシアって子を見て思い出したんだ。
生前の記憶や意思がないとはいえ、人間だって死んだ後にまた生まれ変わる。
それに、何かしらのキッカケで、あの3人みたいに生前の記憶や意思を持ったまま生まれ変われる場合もある。
だから、それを信じてみてもいいんじゃないかって。
っていうより、あんな考えをしたって、現実から逃げてるだけだって思っちゃって。
いっそ、望み薄な奇跡と分かってても、希望を持った方がより楽しく前向きに生きられるかな…って」
……じゃあ、僕の魔導師になったキッカケの話、アレは信じる?
いくらなんでもスピリチュアルすぎて、僕ですら引いてるくらいなんだけど。
「信じるとも。意思や魂ってのは本来、不可視で形を持たないからね。
寧ろ幻とかみたいに見えることの方が当たり前じゃないかなーって思うし」
『…………友よっ!!』
まさか、そこまでまっすぐに信じてもらえるなんて…!
僕も思わず感動してきちゃったよ。あ、なんか目から汗が…。
「よかったねー、新しい友達ができて」
「感慨深いでおじゃるねぇ…」
「イテンもビコナも、アイツが考え方を改めたことも大きく取り上げてやろうぜ。
スターさん的に結構重要なんだから」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて、トラルーが新しいお友達をゲットできたあの日から数日後。
オレたち精霊一派にも、それなりに六課のお仕事が舞い込んできた。
一応、オービットからの宅配業務も継続してるから、そのノルマをこなす過程でできるような仕事だけど。
で、今回のお仕事はというと……
「すっごぉい!ホントに変形しちゃうんだぁ!」
「バド、はしゃぎすぎ…」
「でも、トランスフォームっていうよりは…変身?」
「ははっ、そこはある意味で生命の神秘かもね」
バドにコビーにローリ……ミッドに来ている移民船団の子供3人組の、ミッド観光の護衛。
護衛とはいっても、何事もなけりゃ荷物持ちと案内程度で落ち着くんだけどな。
現に、実は昨日もこれをやって、荷物持ちで終わったしな。
でトラルーさんよ、生命の神秘っていう問題か?オレのビークルモード。
「ブリッツスカイは純粋な機械だけど、君は精霊。一応肉体としては有機物に近い。
それでそこまで無難に変形しちゃうんだから、凄いことだと思うよ。まぁ、体がブリッツスカイに収納されたって感じだけどさ。
どっかの武○神姫もビックリだ」
あー、一時期ビークルっぽい感じに変形できる神姫が出回ってたんだっけな。
「ところでさ、マイクロンって、お姉ちゃんの相棒のアーシーと雰囲気が似てる気g
「ブルァァァァァァッ!?」
『!?』
ローリの、本っ当に何気ない一言でトラルーがいきなりぶっ飛んだ。
そりゃあもう、いかにも若本ボイスが似合いそうな悲鳴で。
……マイクロン…マイクロン…ユニクロン…あー、もしかして。
「トラルー、そのアーシーってヤツ、知ってるんだな?」
「はい、割と深い意味で…」
『深い意味ぃ?』
どうやらオレの予想は大当たりだったらしい。
で、声を揃えて追及するのはイテンとバド。
精神年齢が似た感じだから、気が合うのか…?
「えっとね、ベクターメガトロンたちが元の時代でユニクロンと戦った時、マイクロンも戦ったの。
で、結果的にユニクロンはマイクロンの裏切りを受けて敗れたと言っても過言じゃない。
しかも、その当時のマイクロンたちを束ねていた3体のマイクロンの内の1体が、アーシーなんだ…」
ユニクロンから"夢"って形で情報を流し込まれていたから、その辺も知ってるんだな。
でも、なんでまたそこまで?
「ユニクロンから生まれたマイクロンは、ユニクロンからすれば裏切り者になった。
中でも、アーシーを含む3体はかなり特別で、人間と変わらない自我だけでなく、言語能力もあった。
他のマイクロンよりも明確に、しかも強く、ユニクロンに宣戦布告したんだ。
ヤツとしては結構大きな計算違いだったんだろう、おまけに"2回"も裏切られた。
だから、忌々しい存在としてイメージに残っちゃったんじゃないかな?」
オレらがユニクロンを忌々しく思っているのと似たようなものか。
……ん?"2回"…?
待った。仮に2回だったとして、2回目がユニクロンが倒される前後だったとすると、あと1回は?
「……そういえば、ちょっと古い文献で見たことがあるでおじゃる。
なんでも、地球人の中には、オリハルコンと心を通わせることのできる者がいたとか…」
「オリハルコンって、マイクロンのことだよね?呼び方が違うだけで。
で、それは今ここにいるバグジェネラルやソナーも該当する、と」
「そうなるでおじゃるね。
そういえば、カオスプライムがこの手の…特に地球人の…確かアレクサとかいう者の話になると途端に逃げだすのを何度か見たような」
ビコナの思い出話には、マイクロンに関わる部分もあったみたいだ。
移民船団の間では、オリハルコンって名前で伝わってたみたいだけど。
コビーはさすが機械好きといったところか、すぐに食いついてきた。
バドもその辺の気はありそうだし、今度オレたちのお得意様のジャンク屋にでも連れてってみるか…?
トラルーが次の休み、ていうか明日にギガントボムのところに寄るって言ってるし、ついでに連れてくぐらいはいいだろ。
あ、そうなると後見人っていうか同行者にジンかクレア辺りもくっつけた方がいいんだろうか。
「カオスプライムは何か知ってるのかな?」
「お、バドは鋭いねぇ。彼は結構知ってるよ、かなり深いところまで…ね」
トラルーさんや、お前が言えた義理でもないと思うぞーオレは。
詳しく説明しようとするとトラウマに触れそうで怖いからしないけど。
「でもトラルー、あたしが言ったアーシーって、お姉ちゃんのパートナーの霊子生命体なんだけど」
「ふぇっ?」
あ、固まった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――「ほう、お前は、"最初に変異した"マイクロン」――
――《僕たちは、平和を愛するマイクロン。僕たちに争いはいらない。ユニクロンはいらない!》――
――「おのれ、"また"裏切ったな、マイクロン」――
ウィーリー、バンク、アーシー。3体合体して「バンブル」と呼ばれる戦士へと姿を変える彼らは、マイクロンたちのリーダー格。
そんな彼らも、生まれたときは意思を持たない機動兵器。
エボリューションを利用して戦いを激化させ、自らを復活させようと目論むユニクロンの操り人形だった。
だが、彼らを"変異"させる存在があった。
それは人間。しかも、少年少女たち。
彼らの中の1人がウィーリーのマイクロンパネルに触れた時から、ユニクロンの計画は崩壊したのかもしれない。
子供たちと交流する前から、更に詳しく言えば昔の地球にマイクロンパネルが飛来する前から平和を愛する意思を持っていた。
子供たちとの交流や、トランスフォーマーたちの終わりの見えない戦いから、それはもっと強くなった。
同時に気づいた。争いによってその先に何が待つのか。本当に戦い、倒すべき敵がなんなのか。
それはユニクロン。ヤツにとって、戦いによって生まれる"憎しみ"こそが最大のエネルギー源。
もっとも手っ取り早い摂取方法は、戦いを長引かせること。
そのために、トランスフォーマーと合体…エボリューションして更なる力を引き出すマイクロンを生み出した。
マイクロンを巡ってサイバトロンとデストロンが争うことで、よりエネルギーを満たすことができたから。
……マイクロンたちに意思がなく、本当の意味でユニクロンの操り人形だったら、っていう前提条件はつくんだけどね。
「へぇ、つまり私たちのご先祖様がオリハ…じゃなくてマイクロンと交流してた」
「その交流の中で、マイクロンたちの意思が強くなり、ユニクロンの計画が狂いだした」
「そして、ユニクロンに立ち向かって、やっつけた!」
ローリ、コビー、バドの順。はい、正解です。よくできました♪
ただし、厳密にいえば退けた、つまり「覚えてろ」とか言いそうな感じで逃げてったんだけど。
休眠状態になって、つい最近のGBH戦役までひっそりと復活を狙い続けていたワケだ。
その時は、いい加減マイクロンを信じる気はなくなったか、プラネットフォースという形に切り替えたから成功した感じ。
さて、勉強になったかな?
「うん、とっても。僕たちの先祖ってすごいなぁ」
「そこなんだけど、ホントに先祖ってことでいいのか?
人間繋がりでいけば確かに先祖かもしれないけどさ…」
コビーの発言に対するスターの疑問もごもっとも。そこはさすがに僕にも断言できないな。
んー、パラレルワールドの定義が怪しい世界だしねー。
それこそ、創作の産物だと思ってた電王がなんか実在しちゃってたりとか、何をパラレルと定義できるか心底分からなくなったし。
あ、恭文からプリンのおすそ分けをごちそうになりました。
赤鬼のモモタロスに「ありがとう」って言ったら、なんか照れてた。原作でもそうだけど、褒められたりするのに慣れてないのかな、やっぱり。
話を戻して、観光とはまた趣旨を変えたお勉強会もここらでお開きにしようか?
荷物もいっぱいだし、時間も晩ごはん一歩手前だからそろそろ心配されるよ?
「あーそうだ!晩ごはん!すっかり忘れてた!」
バドって食いしん坊キャラなのかな。昼ごはんの時もちょっとはしゃいでたらしい。
「それにしても、マイクロンがパートナーになるって、どんな気分だろうなぁ…」
一方で、コビーは僕が話した昔話の中心、つまりマイクロンと子供たちの交流ってことに興味津々。
あ、だからって僕やスターの回答はアテにしない方がいいよ?
あの昔話とは事情も何も全然違うからさ。
「あの霊子生命体の方のアーシーとは別問題ってことでいいわよね?
昔話の方もこっちに来ちゃったらややこしいわ」
確かに。ていうか、そうなるとホシケン騒ぎほどじゃないけど名前ネタでヒドイことになりかねないよ。
ホシケンさん、結局落ち込みすぎて1日寝込んだらしいし。
尚、この件に関して、彼やパートナーのシグナム副隊長からセインがお咎めをくらったりはしなかったそうな。
理由については、ご本人は落ち込みすぎてそれどころじゃないし、副隊長さんは自分も賛同してしまって後ろめたいからだそうで。
さて、荷物が多いのでスターにはビークルモードのままで戻ってもらうことに。
うん、現状のメンバーで最も荷物持ちに適してるのは、ビークルモードで低労力での飛行が可能なスターなのよ。
ちなみに、ビークルモード時の外観はほぼ某ステルスガオーUです。裏側に白い円盤、元ネタでいうところの下部タービン部がスターの手らしきものってこと以外は。
うまい具合にブリッツスカイの翼部分に荷物を固縛して飛んでもらう。
しっかし、ミッドだといちいち飛行許可とやらを政府に提出しないと迂闊に空も飛べないのは不便だね。
おかげで楽しみの空中散歩もできやしない。浮いてるだけでも楽しい時もあるっちゃあるんだけどさぁ…。
ピピピピピ
「何?今の音」
「ソナーが何か探知したみたいだ」
スターのパートナーマイクロン、ソナー。
六輪車のビークルモードに変形することで、ブリッツスカイの上面部に合体できる。
高い探知能力を持っていて、情報戦に投入すれば結構な活躍も見込めそう。
で、音に真っ先に反応したバドじゃないけど、何を探知したんだろね。
「コビー、お前から見て2時方向。
あっちの街路樹から反応が出てるみたいだ」
「どれどれ…あ、何か引っかかってる」
ソナーから送られたデータをブリッツスカイ経由で正しく理解し、スターがナビゲート。
コビーが示された街路樹を見てみると、何か光るものが1つ。
……って、マイクロンパネルじゃん!?
コビー、もしや運命の出会い!?
「これがマイクロンパネル…。結構大きいね」
「キレイな色ねぇ。なんか、お日様みたい」
「どんなマイクロンが出るんだろー?」
ローリもバドも興味ありと見た。まぁ、ご先祖かもしれない人の話を聞いたら、そうなるか。
しかし、これは見たことのないパターンだね。ユニクロンからの情報にはない。
金色とはちょっと違う…夜明けみたいな感じ?そんな色。
こんな色のパネル、ユニクロンの覚醒キーになる神器のどれにもなかった筈だけど…。
「う…うわっ!?」
「急に光り出した!?」
「トラルーのお話の通りなら、これって覚醒!?」
そんなこんな思ってたら、パネルが輝きだした。バドの言うとおり、これは覚醒の光!?
コビーもローリもバドもビックリ、ついでも僕らもビックリ。
おそらく、僕も知らないマイクロンが眠ってるんだ…。それが、コビーとの出会いで目覚める。
「……君が…僕の…マイクロン…?」
光が収まると、光っていた筈の場には、まるで無垢な子供のようにコビーを見つめる1体のマイクロン。
覚醒した直後はビークルモードだったおかげで、どういったボディか少しわかった。
クリアイエローが基本色の、マッハとよく似たボディが特徴的。ただし、ビークルモードはSF戦闘機って感じだ。
主に、マッハにはなかった前方に突き出す感じのエッジが追加されてる。
えっと、神器ではないにしろ、なんか特別な感じはする。で……名前は?
《やぁ、僕パルス!》
『フツーに喋ったぁぁ!?』
敢えて言うなら、僕のイグナイテッドや恭文のアルトアイゼン、あとはヘイハチ一門諸君のデバイスたち。
あんな感じでごくフツーに自己紹介してくれたパルスに、僕らは揃いに揃って驚くのだった。
(第14話に続く)
<次回の「とたきま」は!>
パルス《やぁ、僕パルス!僕を手に取ってくれてありがとうコビー!》
コビー「あ、あぁ、うん、よろしく…」
ローリ「ずいぶんと調子のいいマイクロンね」
バド「元気な方がいいと思うけどなぁ」
パルス《僕の仲間たちも元気!僕ら3人、太陽みたいに元気を振り撒く太陽剣!》
3人『……太陽剣?』
トラルー「……3人って、やっぱそうなるの?」
第14話「時の電車とジャンク屋と太陽剣」
あとがき
恭文とトラルーが若干スピリチュアルな意味も含めてお友達になりました。
電王メンツ参入の一方で、こんなことも……っていう、裏事情的な話がメインなのは第1クールから相変わらずです。
ただし、次回で若干名と共闘することになりますが。
マグナブレイカーのことが出る一方で、なんかとあるジャンク屋で何かが起きたり、トラルーが昔話したり。
そして何より、DarkMoonNightさんからの要望もあってですけど、コビーたちGFトリオに変革の兆し!?
パルスが出たとなれば、あと2体は……ってことで、スパリンのマイクロンを復習してお待ちくださいませ。
尚、パルス他数体のマイクロンの人格については原作で詳細不明なのでねつ造だらけです(ぁ)
管理人感想
放浪人テンクウさんからいただきました!
ホシケン騒動もひと段落。完全に戦いから離れての交流回。
その一方で気になる展開がチラホラ……あ、ギガントボム、存在自体忘れてた(マテ
しかし、ヤツのところに空のレリックケースとな? ウチでも使えそうなネタが出てきたなぁ。
その一方で恭文とトラルーが友達に。マスターコンボイが嫉妬しなきゃいいんだけど……あ、アイツはアイツでそれどころじゃなくなるか(笑)。
>尚、パルス他数体のマイクロンの人格については原作で詳細不明なのでねつ造だらけです(ぁ)
ご心配なく。アリシアも原作じゃ夢の中や回想に出てきただけなのをいいことにねつ造全開です(爆)