「なるほどな、野上たちからのメール、まだ見てなかった」


 「アンタ、割とずぼらね」


 「ほっとけ!」


 「ま、まぁまぁ……それはともかく、これから侑斗をよろしく」







 どうやら、向こうはゼロライナーのパーツメンテのためにジャンク屋に来たらしい。


 桜井侑斗にデネブのゼロノスコンビ、それとワケあって行動を共にしているという退魔巫女の雷道なずな。


 なんだろう、侑斗となずながすっごく似ている気がするんだ…。










 「ツンデレで負けず嫌いでちょっと怒りっぽいところが?」




 『あ゛?』




 「スミマセン ナンデモナイデス ゴメンナサイ…」










 迂闊にもいらんことを口走ったイテンが、ご本人たちからものすごい剣幕で睨まれて意気消沈。


 あーゆータイプほど、ホントのこと言われると怒っちゃうんだからさー。


 ……ツンデレという言葉に慣れるって、人としてはともかく、日常的な観点からすればどうなんだろうね。


 六課関係だけでもツンデレキャラの人口比率がマジパネェ状態なんですけど。















































 「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






 「とある旅人の気まぐれな日常」






  第15話:裏の出会いとジャンク屋と大乱闘


















































 まぁ、取りあえず要件の相手は同じってことで、僕らはゼロライナー組も加えて一緒にご入室。


 ここに来るのは久々だなぁ。


 前に来たときは、いろいろ慌ただしかったせいかもしれないけど。


 空っぽのレリックケースの件のみならず、あの子の面倒のことでもハプニング起きたからなぁ。







 「そういえば思い出したでおじゃる。

  レルネって誰でおじゃるか?」






 そういえば、精霊組の中ではビコナだけ知らないんだっけ。


 あと、クレア以下同行者諸君も知らないだろうし、ジャンク屋についたし、ちょうどいいから説明しようかね。










 「お待ちしておりました〜」


 「よく来たな」











 ……噂をしていれば何とやら、レルネがギガントボムと一緒に奥の部屋からお出迎えしてくれた。











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 ……ふぇぇぇっ!?








 わ、私がもう1人!?







 …………なんて、そんなありきたりなリアクションで驚くようなイテンちゃんじゃないよ!


 そもそも、前に何度も会ってるし。







 あの子、レルネの髪型はどことなくセインとそっくり。


 しいて言うなら、胸元ぐらいまで届く長さの髪が後ろ髪じゃなくて垂直に下がるサイドテールだってところかな。


 あとは瞳の色。セインはエメラルドグリーン、私はブルーだけど、あの子は鮮やかさもある深緑。






 服装も結構違うね。


 上は半袖タイプで、丈の短いジャケット。襟はホックか何かでつながって一体化してるタイプで、襟の大きさは口元より少し下くらい。


 胸のところのボタンと、一番下…おなかの少し上くらいのところのボタン、それと襟のボタンとで通る一筋のラインがある。


 単にまっすぐじゃなくて、胸元のボタンだけ位置がずれていて、ラインはヨットの帆を描くみたいになってる。



 下は水色と白の短パンで、両足にはヒザよりやや上のところまでのソックスと通気性の良さげなピーコックブルーの靴。


 両腕にある手袋と一体型の腕カバーやジャケットのラインもピーコックブルーで、ジャケットの基本色は白だから、


 これはこれでいい感じの色合い。







 蒼凪恭文みたいに女の子っぽい体だけど、実はれっきとした男の子


 誰のコーディネイトか知らないけど、イテンちゃん的にはいいセンスしてる。









 「お久しぶりです、トラルーたま!








 『トラルーたま!?』








 ……あー、そこは未だに健在なんだねー。


 私は別にかまわないし、トラルーも特に直そうとかしてるワケでもないからいいけど。











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 はい、予想通り僕とレルネ本人、あとスターとイテンとギガントボム以外は全員驚いたので、ややこしくならない内に事情説明始めます。









 そう、アレはまさに、「どうしてこうなった」としか言いようのない光景だった…。








 「トラルー、なんでいきなり昔話を読み上げる老人みたいな声になるでおじゃるか?」








 元から昔のお姫様みたいな口調であるビコナにだけは言われたくないやい。











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












 今にして思えば、キッカケはセインがお遊びで影分身の術を勉強し始めたことにあったのかもしれない。


 まぁ、当然ながら独学で学べるようなシロモノじゃないので、講師がいたワケだ。


 その講師は、"月影丸げつえいまる"っていえばビコナは分かるんじゃない?









 「あやつ、そんなことしてたでおじゃるか!?」







 分かってくれたようで何より。


 知らない人の為に説明しておくと、月影丸っていうのは、ビコナに古くから仕える"意思を持った"カラクリ武者だ。


 体は機械仕掛けだけど、ココロは僕らとなんら変わらない。実に生き生きとしているお方です。


 武者とはいっても、得意技は様々な忍術と、大小多数の手裏剣による攻撃。どっちかというと忍者に近いね。


 三日月がトレードマークで、色は青が基調。まぁぶっちゃけ、見た目は某忍風戦隊版と某海賊戦隊版の風雷○を足して二で割った感じだと言っておく。








 「トラルー、それは伏字になっているようで伏字になってないでおじゃるよっ!?」







 落ち着こうにも落着けないっぽいビコナはひとまずおいといて







 「そんなっ!?」







 話を戻そう。


 そもそも月影丸は、僕らが初めてミッドに来た際、情報収集の任務をビコナから与えられて別行動をとっていたそうな。


 で、情報収集の過程でマックスフリゲートにたどり着き、セインたちと出会ったワケです。


 中でもセインは彼の忍術に脱帽。自分もやってみたいと、忍術を教えてもらうことにしたらしい。




 さて、ここからが問題。


 月影丸も気分を良くしたのかすんなり交渉成立、さっそく忍術修行をすることにしたのだけど。


 お手本とばかりに月影丸が術を使うと、あ〜ら不思議。


 いきなりセインが二人になった…というより、セインの生き写しが現れたのである。それがレルネ。


 ただし、服装まではコピーできなかったか、すっぽんぽんでの誕生と相成ったが。


 なんでも、その時は間違えて「写し身の術」なんていうアンビリーバボーな術を使ってしまったのが原因らしい。








 ……未だに分からないのだけど、なんで女の子の生き写しなのに男の子になっちゃったんだろうね?








 それはともかく、さすがにすっぽんぽんなままではマズイのは火を見るより明らかなので、ひとまず服を着せることから始まった。


 最初はもっと簡素な服だったんだけど、事情を知って何かに火がついた某数の子次女様のすぅぱぁこぉでぃねぇとが発動。


 結果、今のような服がデフォとなったそうな。





 で、続いて僕のことを「たま」付けで呼ぶのにもちゃんと理由がある。


 服装はどうにかなったけど、身寄りをどうするかで数の子議論第2ラウンド。


 そのままマックスフリゲートに留めてもよかったかもだけど、別にとどまる理由はないし、なんでも本人が「外を見たい」と強く志願したそうで。


 事情を聞いたクイントさんたちの計らいでレルネは晴れて外界デビュー。


 で、さすがにナビゲート役がいた方がいいだろう、ってことで、その白羽の矢が立ったのは何故かこの僕でした。





 記憶などについてもほぼ生き写しだったので最低限の教育すらいらず、正直どうしたものかと彷徨えば何故かアキハバラ。


 この時にもしっかりとイグナイテッドにしばかれたけど、それもまたいい思い出さ。


 話を戻して、しょうがないのでアキハバラを少し満喫。…………そしたらこの子、とんでもないオタッキーの素質を持っておりました。


 いやぁもう、ディープなことで有名なアキハバラワールドを戸惑うことなく受け入れ、堪能しちゃうんですもの。


 あまりにも楽しみすぎて僕すら置き去りにするくらいの満喫っぷりは忘れないね。






 まぁ、最低限の衣食住を確保する為にいろいろ当たってみたけど、さすがにそうホイホイと居候を受け入れてくれるところもなし。当てもなし。


 ひとまず1週間くらい一緒に行動して、やがてギガントボムのジャンク屋に行き着いた。


 そこでまたもレルネの才覚を目撃。


 「好きにしていい」って放り出されてたジャンクパーツの山を見て、設計図もなしに瞬時に鳩時計を作ったという偉業をなす。


 そのセンスに目をつけたギガントボムが、「技術屋でも目指してみるか」と言い出せばすごい勢いで食いついた。


 そんなこんなで、レルネの将来は素晴らしい技術屋になるということで意見が一致、僕とギガントボムは密かに提携を組んだ。


 ただの技術屋ではなく、戦う技術屋になりたいというレルネの希望を受け、僕が戦闘面で、ギガントボムが技術面でレルネのコーチとなることに。


 その頃にはスターやイテンと合流してて、時折この二人にも副コーチとして来てもらうこともあった。



 戦闘面については、僕からもみっちりと教え込んだけど、そのあともスカイクェイクやこなた達がローテーションで手合せしてるらしい。





 さて、昔話に花を咲かせすぎたけど、何故レルネが僕を「トラルーたま」と呼ぶかについて。


 どうやらレルネにとっては、「たま」付けであることは「様」付けすることと同義らしい。


 お世話になった人に対する最大級の敬意の表れとして、「たま」であると。


 要するに、レルネからすれば「トラルー様」と「トラルーたま」は全く同じ意味であり、かつ後者の方で馴染んでいるワケだ。





 ちなみに、何も僕にだけってワケではなく、ギガントボムもそうだし、スターやイテンにもそうだね。


 つまり、彼にとって最大級の敬意を払うに値する相手には「たま」が付くってこと。






 いやはや、イテンと違って、言動についてはオリジナルと恐ろしいくらいに違いが出てるよね、レルネって…。


 この時点で既に「どうしてこうなった」状態なんだけど…。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 さて、レルネについての説明がトラルーから済んだところで、要件に入るとしようか。


 まずはゼロライナー組。侑斗からの依頼らしく、パーツメンテだったっけな。


 そういえば、デネブって機械いじりとかできたっけか…?




 まぁ、あっちはあっちでいいだろ。


 こっちの方も済ませなきゃな。


 こっちの要件は、トラルーが前にここに預けてた、空っぽのレリックケースについての解析結果。


 あと、クレアの方で例のSFジェット解析の手伝いの依頼だな。






 「そうだね。レルネ、早速だけどそれぞれ対応してもらえるかな?」


 「トラルーたま、ちょっとストップ」


 「?」





 ……と思いきや、レルネから待ったがかかった。どうした?






 「それぞれ対応はしますけど、その前にこちらから1つだけ、頼みたいことが」





 まぁ、等価交換なんて言葉もあるし、タダ働きに近いワケだし、聞いてもいいとは思うが。


 みんなもいいよな?





 「世話になってるしな…」


 「それが報酬替わりになるなら、まぁいいんじゃない?」


 「頼みっぱなしっていうのも気が引けるよね」





 侑斗、なずな、クレアの順。


 他も一様にOKサイン出してるので、承諾ということでいいぞ?













 「では、申し上げます。

  これから、そちらから4人ほど選抜していただき……」























 「ボク"ら"と模擬戦をしていただきます!」











 『はぁっ!?』



















 ぶったまげた。こんなかわいらしいお嬢s……お坊ちゃんが、いきなり模擬戦を申し込むとは。


 なんでまた…。











 「いやぁ、実は、ボクが開発していた新型パワードデバイスのテストをしたいのですが、

  なにしろこのご時世ですからね、天下の時空管理局に嗅ぎまわられるのもイヤなもので」












 つまりアレか、せっかく完成辺りまでこぎつけたまではいいが、


 管理局に目をつけられるとうっとうしいから今の今まで満足なテストもできなかった、と。


 で、何かしらの理由で、対多数の戦いを経験する必要がある、と。










 「スターたま、大正解。

  どなたが来てもかまいませんし、勝敗に関係なく、模擬戦終了後にすべての依頼に応じます」









 とにかく戦闘データがほしい。そういうことか。


 こっちとしては依頼に応じてもらえればいいワケだし、修業の一環としてもいいんじゃないか?







 ……特に、最近コッソリと対人戦の特訓を始めているというクレアとか。








 「なな、なんでそれを知ってるのかな!?」


 「いや、トレーニングルームの1つを貸切にして打ち込みとかやってたら、まずバレるって」


 「あ……」





 イテンからの指摘に、クレアがポカーンってなった。マジか。






 「私がメンテ後のトレントブレードの調子を確かめる為に六課のトレーニングルームへ向かった時なんだけどね?

  部屋の1つが貸切状態になってたんだけど、それがここんとこ数日ずっとだった。

  名義は全く同じだし、カリーシュダイブを応用してコッソリのぞいたら案の定だった。

  まぁ、そういうことだよ」






 とまぁ、誰からも求められていないのにペラペラといろいろぶちまけてくれるイテンなワケだが。







 「…………イテン…?」


 「スミマセン ゴメンナサイ ユルシテクダサイ」










 ……侑斗となずなの時といい、今日のイテンはよく口を滑らせるな。


 傍らでトラルーがこめかみ抑えながら呻いてるから、もうちょっと自重しような?








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 プライバシー侵害辺りの罪状のもとに乙女の鉄拳制裁をかまされて昇天したイテンはほっといて。






 レルネがあらかじめ作っていたという、即席のクジで選抜メンバーの抽選会。


 アレだよ、よく端っこに色のついた紙切れを真っ白な紙切れにいくつか混ぜて、色つきの部分が分からないように片手で隠して紙切れを引いてもらうヤツ。


 即席クジの代表的なタイプだと思うけど、どうだろう。






 それはともかく、公平な抽選の結果、ジン、侑斗、なずな、クレアの4名に決定。







 うん、ジンも加わったの。どうやら、この前のゴキブリイマジンの騒ぎを聞きつけて、いてもたってもいられなくなったらしい。


 で、駆けつけた頃にはジャンク屋まで追いかけるハメになっていた、と。


 まぁ、追い返す理由もないし、個人的にクレアとのカップリングを応援したいという欲望的事情もあって、合流ということに。






 イテンは乙女の鉄拳制裁で戦力外になってしまったし、コビーたちはいわずもがな非戦闘要員だし。


 僕とスターとビコナが当たらなかったのは、まぁ、時の運ってことで。







 それとも、カップリングという名の神の陰謀か?













 「では、メンバーも決まったことですし、舞台の方へ移動しましょうか」









 レルネに促されるまま、テストバトル用にこしらえたのだとすぐわかる、広々とした廃棄都市をイメージしたフィールドへ移動。


 参加メンバーとレルネは、それぞれ正反対の位置にあるゲートへ。


 僕ら残りのメンツは、審査なども想定したのだろう、結構いい感じにこしらえられた椅子の並ぶ観覧席へ。


 様々な方向からの検証も可能とする為か、結構な高精度・広範囲のカメラと、中継モニターまで完備されている。


 これらが全部ジャンクパーツから生まれたっていうのだから驚きだ。


 ちなみに、スターが実況、僕が解説となっている。あくまでも模擬戦である為、戦闘経験豊富なメンツで、といったらこうなった。











 サイズシフト装置で人間サイズまで縮んだギガントボムが審判役。レフェリー風の上着と蝶ネクタイがイカすね。










 「では、参加者はゲートより入場せよ」








 ギガントボムの声に従い、まず青い枠のゲートから、ジンたちが入場。侑斗は既にゼロノスに変身。あぁ、今回は特にカードの制約は気にしなくていいらしいね。


 なずなは愛用の槍を、クレアもイリアスと融合ユニゾン済み。そういえば、クレアって固有武装ないんだよね。


 ジンは、未だにバルゴラが手元にないので、もはやお馴染みとなりましたレオーと、今回はエネルゴンセイバーを使用。


 彼が自ら事情を説明した上で協力を仰いだところ、パルスたちは喜んで協力してくれました。ノリがいいなぁ。












 「噂通り、結構な顔ぶれですね。それでこそ、ボク"ら"の対戦相手に相応しい」










 そう言って現れたレルネは、6つの打撃部を持つ多節棍たせつこん「スコールピオ」が基本武装。


 ただ、ジンたちの目を引くのは、一緒にやってきた3体のロボットたちだ。


 身長はレルネより若干低い程度、レルネが僕ら精霊組と大差ないので、まぁ小さいもんだと思われるだろうが、甘く見ることなかれ。


 教えてやりな、レルネ。体格の差が戦力の決定的な差ではないことを!










 「先にご紹介しておきましょう。

  彼らこそが、今回のテストバトルのキッカケであり主役、独立型の人型パワードデバイスの試験機3体です」









 そう、この3体は、単体戦闘すらも可能とする、レルネが自ら製作したハンドメイド・パワードデバイス。


 定期メールの中にこれらのことを思わせる情報はあったけど、見た感じ完成度は高そうだ。









 「ウッス!あっしはクロス・アイン!

  武器は槍型のエクス・ジャベリンっす!」


 「オイッス!オイラはクロス・ツヴァイ!

  武器は斧型のエクス・トマホーク!」


 「チョリッス!吾輩はクロス・ドライ!

  武器は拳銃型のエクス・スプレッダーである!」








 オマケに、コイツら全員が超ハイテクなAI持ち。ご覧のとおり、言語能力も人並みです。


 しっかし、個性をつける為とはいえ、そこまで主張の激しそうな性格になるか。


 特に3番目。


 ちなみに、アインは黄、ツヴァイは橙、ドライは赤がイメージカラーだけど、全体的にグレーにホワイトのラインの装甲が目立つ。








 「さて、選手が出そろいまして、戦いのゴングが今、鳴らされようとしています。

  今回の実況はこのスターが担当します。解説にはトラルーさんに来ていただいております。

  トラルーさん、さっそくですが、今回のバトルの見どころなどは…」


 「そうですね、やはり、レルネが実質上の初バトルとなること自体が見どころといえば見どころですかね。

  チーム・レルネは、こちらからしても不確定要素の多いチームですからねぇ」








 さて、任された以上はやってみようかね。即興役目もいいところだけど。


 いやだって、後ろの方で目をキラキラさせながら様子を見守る子供たち&オカンイマジンの姿があると思うと…ねぇ?













 「これより、チーム・レルネとチーム・ジンによる、総合模擬戦を開始する!

  バトルモードはスタンダード、相手に直接傷を負わせる攻撃は禁止とする。

  レディー・ファイッ!!」









 ギガントボムの言葉が終わると同時、戦闘開始を知らせるゴングが鳴り響いた。








 どこぞやのゾイドバトルの審判ロボみたいな掛け声とモーションとゴングの音色は、誰かの影響なのだろうか?










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 「ゼロノス殿、先手必勝、いざ勝負である!」







 クロス・ドライが開始早々に銃を連射。


 こっちの攻撃を制限する気か?悪いが、その程度で止められるほどヤワな戦闘力じゃない。


 ゼロガッシャーをボウガンモードへ切り替え、ドライと撃ちあう。向こうは速射性重視のようだが…それはそれで厄介だな。










 「ウッス!こちらも仕掛けさせてもらうっす!」


 「あんたの槍捌きがどれほどか、私が確かめてやろうじゃないの!」







 クロス・アインの槍術には、同じく槍使いの雷道が対処。


 向こうはスピードとパワーのバランスがとれているようだが、スピードについては雷道の方が上らしい。


 パワーとスピードがうまい具合に差を消している。根比べになるかもな。












 「よっし、オイラの相手はどいつだー!?」


 「僕とイリアスがお相手するよ!」







 クロス・ツヴァイの斧攻撃に対抗するのは、大地の力を操れるっていうランスロット。


 "霊子生命体ソウル・ファクター"…だっけか。アレはアレでイマジンの影がよぎるのは気のせいか…?


 ランスロットは素手だけど、張り合うには特に問題はないらしい。うまく当たり判定を避けて対処してるな。










 となると、あのジャンク屋はフレイホークってヤツと対決か。











 「よそ見しているヒマなど、ありはせぬぞ!」


 「それぐらいわかってるっての!」







 今は目の前の相手に集中だ。


 連射しながら接近するドライから距離を取り、ボウガンでの狙い撃ちを試みる。


 ……反応速度とかも、そこらのからくり人形とかよりは圧倒的に上だな。


 さすがはハンドメイド品…ってワケか。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「たぁぁぁっ!」


 「うぉらぁ!」






 僕の繰り出した拳のエネルギーと、向こうが振ってきた斧の刀身がぶつかり合う。


 で……僕も相手も吹っ飛んだ。お互い、着地は無難にできたけど。


 どうやら、パワー勝負は互角みたい。


 機動力はこっちが上だからかき回そうとするんだけど、あのトマホークのリーチを活かした回転攻撃で弾かれてしまう。


 かといって、こっちが一旦距離を取ろうとすると、トマホークを地面に突き刺して棒高跳びの要領でとび蹴りを繰り出してくる。


 あれ、そういえばあんな攻撃をこの前のイマジン相手にスターがやったような…。








 「当然さ、スターさんは御大将の師匠。ならば、御大将のしもべであるオイラたちにとっても師匠!」









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 「……って言ってるけど、実際どうなの?」


 「抜け目ないなー、アイツ…」






 ローリからの言葉にそう溜息をつくスター。


 まぁ、無理もないよ。何しろ、つい最近彼が教えたばかりの戦術が、既にAIの戦術データにフィードバックされてるんだもの。


 それも、これまたかなりの完成度で。多分、より確実なものにする為にレルネが自ら動くことでテストしたのだろう。






 いやぁ、僕としても、師匠として鼻が高いなぁ。


 レルネ自身のみならず、デバイスたちにも戦術をフィードバックさせるとは大したものだ。


 お互いが戦術を共有できれば、連携の幅が広がるしね。







 あの子の戦いぶりに、ちょっと鼻高々な僕、トラルーでありました。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「チェストォォォ!!」


 「当たるもんですか!」







 クロス・アインとかいうヤツが、大上段から槍を振り下ろす。


 リーチを活かしての攻撃だろうけど、あいにくさま。私には通じない!


 振り下ろされる槍を横に飛んでかわし、その勢いのままに接近。


 私も槍をかまえ、横なぎにふるって――止められた!?






 よく見ると、ヤツの槍の柄が私の槍の柄とぶつかっている。うそ、あの一瞬で引き戻した!?







 「御大将の一番師匠は槍使いと同等のバトルスタイル!

  その戦闘データとて、あっしたちには既にフィードバック済みっす!」









 よく分からないけど、取りあえずあんたらは師匠たちの戦術までキッチリ盗んでる。


 それも、自分たちで、自分たちなりに使いこなせるくらいの高レベルで身に着けてる。


 そういうことね…!?










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 な、なんかそれぞれで押されてるっぽい…?


 おいおい、なんかヤバい感じがするんだけど?







 「よそ見してると、一瞬で撃墜になりますよ!」


 「くそっ!」







 確かに、レルネの言うとおり、よそ見してるヒマすらオレにもない。


 何しろ、あのスコールピオとかいうデバイスが、どこぞのGNファングよろしく飛んで来たりヌンチャクみたいになったりするせいで大変なんだ!


 しかも多分、アレは同一規格になってるから、どれがファングになろうがヌンチャクになろうが関係ないんだ。


 オマケに直列合体してロッドになったり、はたまた打撃部が全部ファングになったりと、とにかく対処しづらい。


 けど、攻撃をさばく内にある程度はやり方も分かってきた。








 「2番、4番、6番、ファング!」


 「だったら!」






 6つある打撃部の内、レルネの声に反応した3つがGNファングよろしく遠隔ビーム兵器となって襲い掛かる。


 だが、エネルゴンセイバー相手には少し分が悪かったな。


 思いっきり横なぎに振り抜いて、それによって発生した熱風でまとめて吹き飛ばす。


 続いて襲い掛かるのは、3つの打撃部がそれぞれ光の帯でつながったスコールピオを振りかざすレルネ本人。


 これは少しだけ踏み込み、斜め上に切り上げてスコールピオをはじく。


 思いっきりはじかれた勢いでバランスを崩したレルネに、直接エネルゴンセイバーの一撃を叩きこむ。







 思ったんだけど、このエネルゴンセイバーって、刀身に纏わせるエネルギーを叩きつけたりすることでダメージを与えるから、


 剣っていっても斬るワケじゃなくて、叩き伏せたりすることに向いてる武器なんじゃ。








 「さすがは栄光の流星、やってくれますね。

  総員、一時集合〜!」







 どこからか取り出したホイッスルを吹き鳴らし、クレアさんやゼロノス、なずなと戦闘中だった3体の人型デバイスがレルネの元に集まった。


 それに伴ってこっちも一時集結。いつ攻撃がきてもいいように、それぞれで構えなおす。














 「いやはや、噂以上…というのも失礼ですか。とにかくお見事。

  ボクらの誰一人として、ここまでで決定打を与えられた相手がいないのですから」





 すまん、正直、こっちがお見事って言いたい。


 技術屋だからってちょっと見下してた節もあるんだけど、考え直さないとな。


 このメンツを相手に互角かそれ以上に戦えるって、どんだけ鍛えたんだよ。











 「そうですね、戦闘面の師匠だけを挙げるにしても、

  トラルーたまに、スターたまに、イテンたまに、スカイクェイクたまに、こなたたまたちカイザーズに…」










 オイ、あのスカイクェイクやカイザーズにまで修業つけてもらってんのかよ!?


 そりゃあ強くならない方がおかしいって!


 またとんでもないのを相手にしちまった気がする…。










 《……オイラ、このバトルが終わったら……御大将にい〜っぱい褒めてもらうんだ…!》


 「!!?!?!?!?」


 「……何言ってんのよ、コイツ」



















 かっきぃ〜んっ!!(某ホームランバットでかっ飛ばされたような音)

















 《ツヴァーイッ!!》


 《バカヤロウ、あれほど戦闘中のその手のセリフは撃墜フラグだって言ったのに!!》











 ……なんか、ツヴァイがバトル後のことを独白して…なずなにブッ飛ばされた。


 アインも言ったけど、それ、撃墜フラグだから。


 あと、なんかトラルーが吐血したような感じがしたんだけど、気のせいか?













 《いや〜、悪い悪い。だって、これオイラたちの初バトルじゃんか。

  そう考えたら、つい…》











 …って、何事もなかったように復帰してきたし!













 「しかし、まだまだ驚くのはこれからです。

  アインたち3体の本領は、まだ発揮されていないのですから」


 「なんだと!?」


 「とっておき…とでもいっておこうかしらね?」












 レルネの言葉に、内心驚く。これ以上、まだあるのかよ。












 「ふはっはっは、レルネ自身が言った筈だよ。

  アインたち3体は、パワードデバイスであると!」










 いつの間にか立ち直ったトラルーの言葉に、オレはいよいよ頭が痛くなった。


 そうだ、パワードデバイスってことは、レルネのアーマーとなって能力ブーストを行うこともできるじゃないか。











 「その通り。しかし、ボクのしもべたちはそこらのパワードデバイスとはワケが違います。

  お見せしましょう……いざ、超無双合体ぃぃ!!」















 ……って、おぉい!?装着するんじゃなくて、デバイス同士で合体すんのかよ!?











 いや、違う。まず、3体のパワードデバイスがいくつかのパーツに分かれて…!?








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 アインは両腕と両足を外し、頭部を胸飾り内部に収納してからボディが前と後ろで半分に割れて展開。


 両腕は拳と関節部を収納、拳は内側に収まると同時に連結用のジョイントが露出。イメージ的にはデー○ス○イパーの拳の変形プロセス辺り。


 両足はつま先をたたみ、関節部を収納。裏側どうしを合体させてプレート状になる。





 ツヴァイは下半身を分離してから、両腕の拳と関節部を収納、肩アーマーをたたんで、頭部を収納したボディが前後で分割。


 下半身は左右で分割され、両足をたたんで固定。


 ボディから胸飾りが分離する。





 ドライは頭部を収納した胸飾りを分離し、ボディが丸ごと左右に分割。


 両腕と下半身が分離し、両腕と両足はそれぞれが内側の装甲を展開。腰部〜股間部は前後に分割して展開。


 最後に、分割した双方の胴体部の内、胸部からジョイントが、腹部から推進器が露出する。








 変形したこれらを身に纏うのは、当然ボク。


 まずドライの両腕と下半身が、ボクの両腕と下半身を覆うように合体。


 ツヴァイの上半身パーツが腹部のアーマーに。ドライの下半身パーツとツヴァイの上半身パーツが連結し、腹部から下をカバー。


 続いてアインのパーツが胸と背中、肩のアーマーに。この際、ドライの肩にアインの肩が重なるようになってる。同時に、胸部と腹部のパーツも連結。


 アインの腕パーツとツヴァイの下半身パーツが連結し、大型の篭手となってボクの両腕を覆う。


 肩アーマーの先端部のジョイントに、ドライのボディ半分が合体。


 ここまでくれば、ドライのボディが肩部スラスターとなっていることがわかるでしょう。


 更にツヴァイとドライの胸飾りが1つに合体、胸部アーマーのアインの胸飾りに重なるように合体する。


 同じく、アインの両足であったプレート状パーツが背中に合体、可動式の背部スラスターになる。


 仕上げに、ボクの頭にはイノ○イターなガッ○スの頭部パーツを模した形状のバイザー兼メットが追加される。






 最後に、3体がそれぞれで使っていたエクス・ジャベリン、エクス・トマホーク、エクス・スプレッダーも変形。


 ジャベリンは刀身部分が左右で分割され、スプレッダーの銃身部の上下に合体。更にスプレッダーのグリップが動いて銃口と一直線上になる。


 そして刀身の上部分を開いてクワガタのアゴみたいな形状になったトマホークと連結して合体完了。


 合体剣「ユニオンカリバー」となり、ボクはそれを右手でキャッチ。ロッド形態のスコールピオを左手で持ち、これらをクロスさせてかまえる。














 《「合体装着完了――クロスディメンジャー!!」》















 全てのシークエンスを終了し、ボクは、否、AIが統合されて1つの人格になったクロスディメンジャーとボクは高らかに名乗りを上げる。














 「おいおい、どうなってんだ…!?」


 「な、なによアレ…!?」


 「3体が、1つのアーマーに…!?」


 「マジかよ…!?」




















 侑斗さんも、なずなさんも、クレアさんも、ジンさんも。揃って驚かれているようですね。









 さぁ……本番はここからですよ、皆様方!!

























 (第16話に続く)

























 <次回の「とたきま」は!>




 クレア「3体のデバイスが、合体して1つのアーマーになるなんて…」


 レルネ「このクロスディメンジャーは、ボクの最強最高傑作!

     手抜きで勝てるような相手ではないことを、これから証明してみせましょう!」


 ジン「ちなみに、誰の為に?」


 レルネ「勿論、愛しのトラルーたまの為にッ!!」


 トラルー「げふっ!?」


 スター「まさかの同性愛!?」







 第16話:合体デバイスとジャンク屋と設計図




























 あとがき



 というワケで、まず言っておきましょう、レルネはお嬢さんっぽいかもしれない。だが男だ(キリッ)


 もはや存在自体が「どうしてこうなった」の集合体であるともいえるレルネが大活躍(大暴走?)


 ジンとクレア、なずな、ゼロノスを巻き込んで、盛大なテストバトルをおっぱじめやがりました。





 レルネの過去話が出ると同時に出た、月影丸。ビコナにお仕えするカラクリ武者ですが、その詳細はまたいずれ。


 まだまだジャンク屋エピソードは続きます。


 次回はテストバトルの決着編。レルネが引き続き大暴走します。勝敗関係なしのバトルですが、果たして…?





 ちなみに、スコールピオのモチーフである多節棍は、ヌンチャクと同系列のルーツの武具だったりします。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 レルネ、男の子でしたか……可愛らしいしゃべり方なので女の子かと思いきや。
 まぁ、それならそれで弟キャラとして愛でるので無問題ですが。

 >どこぞやのゾイドバトルの審判ロボみたいな掛け声とモーションとゴングの音色は、誰かの影響なのだろうか?
 惜しいっ! 『レディー、ゴー!』じゃなかったか(←そーゆー問題ではナイ)