《面白い。その渇望、闘志……その全てを我らに捧げてみよ》


 《さすれば汝、大いなる永氷の力を得ん…》


 《貴様の戦いへの欲望、我らが全て力へと変えてやろうぞ…》










 たかだか小さな存在の筈の貴様らが、ずいぶんと大きな口をきくじゃないか。


 まぁもっとも、その大口がただの見栄とかではないことは既に知っているがな。


 何しろ貴様らは、スターセイバーに続く、三位一体の……。













 前回は仕留め損なうどころかお目にかかることすらかなわなかったが、今回はそうはいかない。


 オレは、いやディセプティコンは、スターセイバーにも劣らぬ大いなる力を手に入れたぞ。










 今度こそ借りを返させてもらうぞ……蒼凪恭文。



















































 「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






 「とある旅人の気まぐれな日常」






  第17話:葛藤と逆襲と「初めて」の名前












































 「じゃあ、あの設計図から何かを作るつもりなの?」


 「はい、せっかくお目にかかりましたし、クレアさんからも了承は得ていますし」


 「ただし、ちゃんと役に立つものを作ってくれよな」


 「もちろんです」












 イテンからの問いに軽い感じで答え、イリアスからの念押しにもちゃんと対応。


 サーチからの協力も得て更に詳しく解析してみたところ、あれは変形することで多彩な用途に使える強化外装の設計図だったらしい。


 いくつも加えられている各種追加モジュールは、それぞれの用途に特化したもの。


 それを用途ごとに使い分けながら、時に複数同時に運用することもできるように、いくつかのマルチジョイントもある。


 仮にこれが設計図通りに完成すれば、どこぞやのセルメダル式仮面ライダーみたいなものになるのかも。


 まぁなんにせよ、見つけただけでほっとくのは忍びないってことらしい。


 そこはまぁ、技術屋……エンジニアとしての性なのかねぇ。














 鼻歌まで歌いながら自分用の工作室(という名の多目的作業スペース)へと消えていったレルネについては心配してない。


 寧ろ放置でいい。普段は僕とかに甘えん坊だけど、いざ技術屋モードに入れば職人顔負けの熱中ぶりで引きこもるから。


 気長に待ってれば向こうから出てくるさ。完成品なり試作品なり持ってきてね。







 寧ろ気になったのは、設計図のデータに添付されていた、差出人不明のメッセージファイル。


 おそらくは設計図を書いた本人が書いたんだろうけど、これはいったい誰に宛てたものなのやら。


 個人向けの文章ではあるんだけど、誰に宛てたのかが分からないんじゃなぁ…。


 実はこのメッセージファイル、まだ暗号化が残っているのか、虫食い状態なんだ。







 しかし、ずいぶんと思い入れの強い製作者だことで…。










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 しっかしねー、かがみん。







 「どうしたのよ」







 そりゃあ、私たちも地球に落っこちている分についてはマイクロンパネルを確保するって約束はしたよ?


 でもね……。


















 なんでいきなり、こんな極寒の地に飛ばされることになるかねぇ!?


















 「仕方ないですよ、サーチ結果によれば、マイクロンパネルの反応はこの流氷地帯にあるんですから」


 「しかも3枚も。もしかしたら、その、えっと…」


 「神器……って言ってたわね」


 「そうそう、それそれ。その神器ってヤツだったりしたら、大変だーってことなんだよね」








 みゆきさんの言うとおり、マイクロンパネルの反応がこの流氷地帯から出てる。


 それに、一度に3枚ってことは、最低でも何かしらのチームの可能性が高い。


 下手すれば、3体合体して何かしらの神器になるマイクロンかもしれない。


 そうトラルーから聞いたこともあって、大至急確保するようにスカイクェイクから飛ばされたのが、ここ。







 万が一戦闘が起きてもいいように、あと環境に耐えられるように、私たちは既にゴッドオン済み。


 メンバーは、私にかがみん、みゆきさん。


 あと、今回は授業の都合でつかさが来れないので、代役としてこんなメンバーが。









 「なぁ柊ぃ。誰も来なかったら、別に何もすることないよなぁ?」


 「はいそこ、緊張感がなくなること言わない」


 「そうだよ、みさちゃん。ただでさえ、私たちはゴッドオンして出撃するの久々なんだし」


 「分かってるって…」










 現状で最も近しいヒマそーなゴッドマスターってことで、みさおとあやのの二人にも来てもらいました。


 なんでも、スカイクェイクがスタースクリームに直接援軍依頼したんだとか。


 いっそ、直接スカイクェイクがくればよかったのに。










 「そういえばそうね、なんでかしら?」


 「何やら、客人を迎えに行くからついてやれないって言ってましたけど」











 かがみんのつぶやきにみゆきさんが答える。


 ……えっ、客人?何それ、私聞いてない。










 「なぁ、土産に流氷持ってったらダメかな」


 「うーん、持って帰る間に溶けちゃうと思うよ?」


 「あー」








 一方で、みさおがもうお土産の話をしてる。でも、あやのの言うとおりだと思うよ?


 ……それに、流氷持って帰っても、そんなにありがたみとかはなさそうだけどね…?











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 基礎回路とメインフレーム、データ転送システムの構築は完了…。


 あとは、データから物質を生成・固定するシステムと、各種追加装備、それと、リアルタイムでシステムを更新できる管制システム…。


 設計図の完成度が極めて高いおかげで、かなりの短期間でここまで…。


 追加装備の方はすぐにできるとして、問題は生成・固定システムと、管制システム…。







 「入っていいか?」


 「どうぞ」







 ふと、ドアの方から声が。別に聞き覚えのある声なので、すぐに通す。


 どうしました、ギガントボムたま。トラルーたまも一緒ですけど。








 「ゼロライナーのメンテが終わったからな、こっちの方を見てみようと思ってな。

  ……既に基本的な部分はできているな。見た感じ、何かのアーマーか?」








 さすがギガントボムたま、ご名答。







 「作るのはいいが、せめて誰に使ってもらうのかは決めておいた方がいいぞ」








 ……あぁ、そうでしたね。好奇心にかられて、すっかり忘れてましたよ。








 「そんなことだろうと思ってさ、参考になりそうなのを持ってきた」






 トラルーたま、そのチップは…?






 「設計図のデータをコピーして君がこの部屋に行った後、一緒に拾えたメッセージファイルを見てみた。

  ただ、ところどころ虫食い状態になってて肝心な部分が分からないから、解読してほしいのだけど」






 あぁ、あのメッセージですか。そういえば、そっちはまだ手を付けてなかったですね。


 よもや、そっちも暗号化されていたとは。


 気分転換に、そちらをまず片付けましょうか。







 「……やっぱ、レルネに任せると手っ取り早く済むね、こーゆーのは」


 「信頼していただいて何よりです、トラルーたま」






 さて、そろそろ解読できますよ……ほいっと。






 ボクが最後の暗号化部分を解除すると、メッセージファイルは完全な形になった。


 書体は…日本語のようですね。少なくとも、ミッドやベルカの絡みではなさそうです。


 ……でもこれ、なんかメッセージというには重苦しいんですけど。






 「確かにな……妙に重苦しい」


 「ていうかこれ……下手すると遺言なんじゃ……」






 なんで遺言なんかが設計図と一緒になっていたのやら…。







 「……ん?まてよ…。

  設計図とメッセージが入っていたSFジェットは、クレアが持っていた…というか作ったもの……。

  そもそもクレアがこっちまで来てるのは、亡くなったおじいさんの夢が関係しているって話…。

  …………これの差出人、分かる!?」





 あ、はい、解読したことで差出人と宛先人の名前も出てきましたけど……って、えぇ!?


 この名前って…!!








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 今僕達は、レルネとの模擬戦でも使われた特設スペースにいる。


 ただし、地形は変化していて、今回は山岳地帯を模していると思われる、地形の変化が激しいステージ。


 僕は今、ハンマーモードのルディンを構えたスターと、トレントブレードを構えたイテンの二人と数メートルの距離を置いて向かい合っている。





 ……誰でもない、これは僕自身の問題。


 エネルゴンセイバーや霊子融合ソウル・ユニゾンに頼るワケにはいかない。


 僕自身がもっともっとレベルアップしなきゃ、今のジン君たちには到底追いつけない!








 「……なぁ、だからってさ、これは無茶じゃないか?

  霊子融合ソウル・ユニゾンもナシでスターとイテンの相手をするなんてさ…」








 イリアスはそういうけど、これぐらいしなきゃ、ダメなんだ。


 トラルーからの話だと、スターとイテンも互いの経験差こそあれど、実力にそこまで大きな差はない。


 そしてその実力は、管理局のランクに換算するとスターでS〜SSクラス、イテンでもAAAクラス。つまりかなりのハイランクってことになる。


 つまり、この二人を相手に互角以上に戦えるようになれば、ジン君たちの戦いにもついていける!


 「大地の守り手」の名に恥じない存在になれる!


 それぐらい強くなれれば、おじいちゃんの夢だって…!








 「……最後にもう一度だけ確認するぞ。

  ケガしても自己責任で済ませる。ケガしたことについては他言無用」


 「で、私たちは武装使っても全然オッケイ、

  そして自分は霊子融合ソウル・ユニゾンもナシで丸腰同然なその状態で私たちと2対1で戦う…」


 「そうだよ」








 念を押して確認してくれるスターとイテンに、こっちからも念を押してそう答える。


 それで互角以上に戦えるくらいにならなきゃ、ジン君についていくことすらできない。


 だから……やらなくちゃ。僕自身が後悔したくないから!








 「基本的に、3人にセットした特殊なダメージカウンターがゼロになった時点でリタイア扱い。

  復活なしで、時間無制限。ただし、何か事情ができたり、私たちが危ないって思ったらその時点で終了させてもらうでおじゃるよ」


 「あぁ」


 「オッケイ」


 「お願い」







 ビコナには、ジン君や、ゼロノスの中の人である侑斗さんと一緒に、審判を兼ねた判定員になってもらってる。


 これはジン君からの気遣い。でも、これでも妥協案なんだよね。


 ホントなら、いきなり霊子融合ソウル・ユニゾンナシの2対1でやること自体がおかしいって。


 でもゴメン、僕にも、譲れない一線はあるんだ。








 「尚、試合中、イグニッションやエボリューションも使用可能。回数制限もない。

  ただし、カウンターが壊れたらそいつは自動的にリタイア扱いにするからな」


 「いざ、尋常に……修業戦、開始でおじゃる!!」







 侑斗さんからの補足が終わったのを確認したビコナの声の後、レルネとの模擬戦の時にも鳴り響いたゴングが、再び鳴り響いた。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 さて、と…。






 承諾したまではいいが、いざやろうとするとやりづらいな。


 一応、物理的ダメージは全てダメージカウンターが体力的なダメージに完全変換してくれる。


 まぁ、管理局の非殺傷設定をレルネが流用して作ったからな。そのおかげで、直接攻撃であの柔肌に傷をつけることだけはないが…。


 それでも、衝撃でブッ飛ばされることは変わらないし、その関係で岩とかにぶつかった時のダメージは直接傷になっちまう。


 今はクレアの戦闘スタイルに合わせてハンマーモードにしているが、ライフルモードに切り替えてもいいかもな。


 そこは……ゴングが鳴った瞬間にクレアめがけて突撃したイテンとの戦いぶりで判断するしかないか…。










 「手加減無用って言ったのはそっちなんだから、どうなっても知らないよ!」


 「それはとっくに……」







 さっそくイテンがしかける。


 開始早々にブースターを展開してスタートダッシュをかけ、その勢いのままにクレアめがけて右手の剣を振り下ろす。








 「覚悟していることだよっ!」








 だが、それを左の裏拳ではじく。初撃には対応できるか…。








 「でも残念!ちょっと自信過剰だったんじゃないの!?」








 そのセリフと共に、すぐさま左のトレントブレードで斬りつけられ、早速吹っ飛ばされる。


 イテンは別にパワータイプじゃないが、トレントブレードに内臓されてるブースターを利用すれば、低パワーでも大きくブッ飛ばせるんだ。


 ブッ飛ばされて、いきなり近くの岩に叩きつけられる。


 ……やっぱし、いい気分はしないな。


 けど、レルネじゃないが、トラルーの言葉はオレも共感してる。つまり。









 「戦いとは常に、非情なものだっ!!」








 これは修業を兼ねているとはいえ、立派な勝負。勝負の世界は、非情だ。


 トラルー自身が、身を持って経験してることの1つさ。それで死にかけたこともあったからな。


 で、そのトラルーはというと、実は丸腰で戦う訓練を密かにやってたりする。


 もちろん、イグナイテッドが何かしらの理由で使えなくなることを想定した訓練だ。


 まぁ、アイツは元々丸腰で傭兵稼業をやってた時期もあるくらいの手練れだし、丸腰でも武器持ちの相手を退けられる技もあるんだけどな。


 燃費が極端に悪いから、それを多少なりとも改善できるイグナイテッドを手放したまま戦う気はないらしいけど。






 それはそうと、オレも追撃。試しにハンマーモードのまま、立て直そうとするクレアに飛びかかる。


 今のセリフと共に振り下ろしたルディンは、思いっきり叩きつけられる。






 「っ……! 肩に……」





 回避こそされたが、左肩に思い切り当たってる。今は痛みだけで済んだけど、実戦ならこれだけでも致命傷だ。


 特に、非殺傷設定の概念がない、実弾系の武器とかでやられたら尚更だ。


 だが、クレア自身が手加減無用と言いだしたんだ。悪いが、マジモードでいかせてもらう。






 「まだ、まだ!」


 「甘い!」


 「それに、隙だらけだよ!」





 狙いをオレに変えて、蹴りを放ってくるが、ルディンを引き戻した勢いのままにターンして回避。


 戻ってきたイテンのトレントブレードが後ろから、回避から更に回転して振り抜いたルディンが前から、クレアに叩きつけられる。


 ……まぁ、オレの体はブリッツスカイを除いて某真ん丸ピンクな星の戦士のホワイト版だから、ちょっとカッコがつかないかもしれないが。


 スマ○ラでもやって、某真ん丸ピンクな星の戦士(ホワイト版)が戦う姿を見ればいいさ。大体、アレ+背中に飛行メカ背負ってるって感じだから。




 話を戻して、追撃追撃。マジモードなオレらは、この程度のコンボで止まるつもりはないんだ。


 ブッ飛ばされたクレアは、別な方向の小さな丘の上へ飛んでいく。


 痛みからか立て直し切れていない彼女めがけて、イテンが急加速しつつジャンプ。


 グリップを倒して射撃モードに切り替えたトレントブレードから光弾をばらまいて更に痛めつけ、


 同じくライフルモードに切り替えたルディンでビームを連射してダメージをどんどん重ねる。


 多数の光弾をくらって跳ね上げられたクレアは、未だに宙を舞う。そこへ、オレが大ジャンプ。


 またハンマーモードに切り替えて、ブリッツスカイのスラスターを停止して急降下。


 落下の勢いも加えての、大上段からの振り下ろし。これも、完全に直撃した。










 叩きつけられた勢いで真っ直ぐに下の地面へ飛んでいき……落下した後、煙が晴れたその場には、


 落下の衝撃でできたクレーターの真ん中で、意識を手放して仰向けに倒れているクレアの姿があった。










 「……はっ!? あ、えと、試合終了!二人とも攻撃中止でおじゃる!」









 あぁ、正直オレも一方的すぎるとは思った。


 ただ、だからって茫然とされても困るから、その辺はしっかりしてくれないか、ビコナ?









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 ……言わんこっちゃない…。




 提案された時点でスターもイテンも散々躊躇してくれたんだけど、


 それを振り切って挑んでみれば案の定だ。


 あまりにも一方的過ぎて、反撃すらできない内にクレアのダメージカウンターのライフポイントが限界値に到達。


 重ねに重ねられた追撃と地面に叩きつけられたダメージによる痛みがひどすぎたか、クレアは完全に意識を手放してる。


 当然、これ以上の修業は無理。もうおとなしく寝てもらった方がいい。


 ……もっとも、恭文やジュンイチさん、それにトラルーも、これ以上の地獄を経験してるっていうんだから恐れ入る。








 「……すまん、さすがにオレ自身もこれはないと思った」


 「なんか、ものすごい罪悪感が付きまとうんですけど」







 だよなぁ……。スターもイテンも、マジごめん。


 こんなことになるくらいなら、もっと強くクレアを止めておけばよかった。


 正直、オレもバルゴラ抜きでお前らと単身でぶつかりたいとは思えないし。


 ていうかマジで死ぬから。どんな無理ゲーだよ。ジュンイチさんのスパルタよりかは数段マシだけどさ!









 「まぁ、私も戦う女の立場だからあまりとやかく言うつもりはないんだけど……

  少しは攻撃と攻撃に間を持たせたらよかったんじゃないの?」


 「あぁ……オレも今、すっごく後悔してる」


 「まさか、こんなアッサリとコンボ決まって撃墜になるなんて…」









 なずなの言葉にも同意。ただ、スターやイテンも同じ結論に達していた様子。


 加害者側になっちゃったワケだし、罪悪感がない方がおかしいよなぁ……。


 まぁ、ブレードさん辺りはその辺の配慮なんざ一切しないんだろうけど。









 「取りあえずベッドか何かに運ぶでおじゃるよ」


 「そうだな、それがいい。レルネのベッドを少し使わせてもらうか」


 「毛布とかあった方がいいかな?」


 「デネブ、あのなぁ…」








 ビコナとスターが早くも手当て体勢。


 侑斗は呆れてるけど、正直今のデネブの気遣いはありがたい。さすがオカンキャラだ…。


 イリアス、少なくともお前はクレアについてた方がいいんじゃないか?







 「そ、そうだな…。また無茶とかされたくないし…」







 そういってクレアを運ぶビコナたちについていくイリアスを見送って、オレは内心で溜息。


 この結果で、クレアが余計に落ち込まなきゃいいんだけど…。












 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 さて……まずは試し切りと肩慣らしだ。


 構わないな、貴様ら。







 《あぁ、いいさ》


 《汝に、我らの力を使いこなせるか、しっかりと見極めさせてもらおう》


 《試し切りというより、試し振りだな》







 しかし、よもやあのような力を持つとはな。


 元の発見位置が北極と南極、そしてこの流氷地帯だったことも、納得だな。


 休眠していながらも、絶対的な冷気を放ち続けていたのだからな。










 「マスターギガトロン様、カイザーズの連中がポイントへ接近しております、ご武運を」


 「あぁ」









 空間に溶け込むことで姿を消し、標的であるヤツらの監視を頼んでいたショックフリートからの報告。


 さて、蒼凪恭文へのリベンジマッチの前に、調子を確かめさせてもらうダシになってもらおうか。


 この……永氷剣のな。












 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 ったく、狙いが同じだからってのは分かるが、ホントにしつこいな!


 えぇ!? アサルトジャガーさんよ!?









 「それはこっちにょセリフだにゃ!

  何故にゃぜに毎度毎度、貴様らにょ相手をしにゃければにゃらにゃいのにゃ!?」









 現在、ジャンク屋本部から2キロくらい離れたところで発見された、黄色のマイクロンパネルを巡ってドンパチの真っ最中。


 はい、レルネとの一件で久々みたいに思えそうな人もいそうですが、プレダコンズとのマイクロンパネル争奪戦第2ラウンドです。


 いや、話数的には既に6話くらいの間があるんだけどな?


 これを長いと考えるか短いと考えるかは皆様のご想像にお任せします。


 以上、スターさんの心の声です。











 「久々に出番だ!雪辱を果たさせてもらうぜ!

  トラルー!さっさと勝b」


 「うっさい」


 「ぐほぁ!?」












 …………なんか、スターセイバー攻防戦のときの即撃墜な一撃の主がトラルーと分かったからか、


 トラルーに執念燃やし始めてるのがファーヴニル。


 ただ、アレだな。「相手をよく見てものを言え!」って状態だな。


 案の定、セリフを言いきる前にジャベリンフォルムのイグナイテッドでブッ飛ばされたし。


 しかも、攻撃時の言葉が「うっさい」だけってのがなぁ……。妙に哀愁を誘うんだが。











 「やってくれるじゃ」


 「うっさい」


 「ぐはっ!?」









 …………あー、えーと…。










 「てんめ、ちったぁマジメに」


 「うっさいっ」


 「がはっ!?」








 …………お、おい…?








 「だから、おま…」


 「うっさいっ!!」









 《アタックファンクション・レイズクラッシュ》









 「ぎゃあああああっ!?」











 …………めんどくさかったのか?





 とにかく突っ込んでくるファーヴニルに対し、ジャベリンフォルムのままであしらい、


 挙句の果てに、一瞬でイグニッションして、(レルネにアップグレードしてもらったばっかりの)アタックファンクション発動。


 エネルギーを集中させ、刀身となっているマルチフェザーが輝くイグナイテッドを振りかざし、


 真正面からファーヴニルをブッ飛ばした。









 「ったく、あのおバカちんは…。

  ただでさえ、今回は少数精鋭でやらなきゃいけなくなってるってのに…」









 トラウマえぐられて暴走したトラルーのせいで、戦力の大半をオシャカにされたんだっけな。


 オシャカにされたといえば蜘蛛女さんよ、あのカイとかいう霊子生命体ソウル・ファクターはどうしてるよ?











 「未だに再生カプセルでお眠りよ。ほんっと、とんでもないことしてくれちゃったんだから、もう」










 まぁ、あのトラウマを知ってたヤツなんて、オレら精霊一派しかいなかっただろーしなー。







 あと……ディープ・ルインド、だっけかな。


 アレって、どっちかというと物理的というより内面的なダメージが大きいらしい。


 極端な話、プラネットフォースやフォースチップの"力"としての構造を内部から直接破壊してしまうのがその例だ。


 肉体的な観点ではとらえられない内側……ちょうど、グリードのコアメダルが入ってる演出がいい例だと思う。


 その中に属性破壊効果を持つエネルギーを流し込んで、相手の中で循環している"力"を丸ごと破壊する。


 まさに、"奥深くの破滅ディープ・ルインド"ってワケだ。










 「でも、アレはトラウマを刺激しなけりゃ発動のキッカケすらできない。

  まぁつまり、フツーに戦ってれば使われる可能性なんて考えるまでもないわ」


 「えーっ!?そんなぁ」


 「そうだったでおじゃるか!?」










 イテン…ビコナ…………気づいてなかったのか……。


 蜘蛛女が言ってくれた通り、ディープ・ルインドには重大な欠点がある。


 トラウマえぐられてブチ切れて、バグジェネラルとエボリューション。更にそれによるエネルギーの変調。


 それらが重なったから発動しただけ、とみるべきだ。


 つまり、バグジェネラルとのエボリューション云々を抜きにしても、トラルーの感情が天元突破しなけりゃならな……ん?


 まてよ、そういえばあの時……。
















 《――マスター自身のエネルギーの変質を確認。更に私のシステムデータとして登録された為、スキル名称の設定が必要です》
















 イグナイテッドがそんなこと言ってたっけな。


 で、名づけられた名前が「ディープ・ルインド」なワケで。


 まぁなんだ、もしかすると、「システムデータに登録された」ってことは、変質した状態が今も継続してるのだとしたら…。











 「おーい。トラルー!」


 「なに?」


 「試しにエボリューションしてディープ・ルインド撃ってみ?」


 「できるんかな…?」


 「某護星天使のノリで、とにかくやってみる!だぜ!」


 「よっしゃ」









 オレの説得に応えてくれたトラルーが、バグジェネラルを手元に呼ぶ。








 「エボリューション!

  そしてくらいさらせ……」







 「このまま終われるかよぉぉぉ!!」








 しつこく復帰してきたファーヴニルが、火炎放射器であるバスターをこっちに向けてきた。


 なぁ、なんでアイツはあぁまでして死亡フラグを踏み抜くんだろうな?










 「ディープ・ルインド!!」









 案の定、火炎放射の体勢に入ってたファーヴニルに、属性破壊効果を持ったイグナイテッドの刃が直撃。


 ……あれ? 爆発どころか、なんにも起きないが。













 ポク・ポク・ポク・ポク・ポク・ポク・ポク・ポク・チーンッ



 バタッ(←ファーヴニルが倒れる音)












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 「と、取りあえず、お葬式の準備を…」


 「いらねぇよバカ!?」









 長い長い沈黙をようやく破ったのは、デネブのボケと侑斗の割と本気なツッコミだった。


 うん、取りあえず、何を破壊したんだアレ?









 「えっと……脈動……かな?」


 《あぁ、さっきのいかにもお逝きになられた感じの音はそのせいですか》


 『うおぉい!?』










 トラルーもイグナイテッドも、揃いに揃って不吉なボケかましてんじゃないっての!!


 え、うそ、マジで脈動を破壊したのか!?









 「……へんじ がない まるで しかばね の ようだ」








 イテン、妙にファミコンチックな喋り方してボケてる場合かっ!?


 いや、アイツ敵だけどさ!








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 さーて、さっさとマイクロンパネル回収して、帰るとしますかねー。


 ゴッドオンしてるからって、こんな氷点下何十度なんていう極寒の世界で長時間活動できるほど、


 私たちのトランステクターは寒冷に強くないしねー。






 「そういう意味じゃ、あやのはいいよなー」


 「あぁそっか、ブロードサイドはもともと海中戦力、ある程度は耐寒性能も強いってことね?」


 「まぁね。でも、だからって過信できるものでもないんだけど」


 「本格的な極地仕様というワケでもないですからね。

  さ、そろそろつきますよ」






 みさお、かがみん、あやの、みゆきさんの順。少しでも耐性があるだけマシだよー。


 っと、そんなことを言ってる間にポイントへ到着。どれどれ、パネルはどこk















 《待ちかねたぞ》


 《我らの最初の獲物は貴様らか》


 《女ばかりとは、肩透かしもいいところだな》














 ちょっ!?


 いきなり誰かの声が聞こえたかと思うと、私たちの前の地面が吹き飛んだ。


 えっと、数は…3人かな?












 ……いや……まだ、もっとヤバいヤツもいる!











 「そういえば貴様らとも久しいな、カイザーズ」


 「マスターギガトロン!?」


 「先回りしていたのですか!?」











 割れた地面からは、3つの影の後にマスターギガトロンが飛び出してきた。


 思わず声を上げるかがみんとみゆきさん。私やみさお、あやのも、驚きつつも臨戦態勢に。


 でも、もっと私たちを驚かせたのは、さっき飛び出した3つの影が、そろってマスターギガトロンの元へ集まったこと。


 そして……その影の正体だった。










 「この場のマイクロンパネルなど、とっくに回収されている。

  反応の正体は……こいつらだ」


 《クォンタム》


 《ビーコン》


 《レンズ》











 3つの影改め3体のマイクロン、クアンタ、ビーコン、レンズ。









 《クォンタムだ!どこぞのガンダムと一緒にするでないわ小娘がっ!!》









 クアンタもといクォンタムに、ものすごい剣幕で怒られた。


 まぁ、感知できた反応は、こいつらだったんだね。


 でもあの姿、なぁんか見覚えがある。ついこの間機動六課に舞い込んだっていう、マッハたちとそっくり。


 違いは、カラーリングが宝石みたいな水色とシルバーを基調としていること、あと大なり小なりエッジとかの追加がされてること。


 クォンタムがマッハ似、ビーコンがジェッター似、レンズがシャトラー似ってところ。











 「蒼凪恭文へのリベンジの新戦力として検討しているのだが、いかんせん初使用なのでな。

  貴様らでテストさせてもらおうと思ってな。言っておくが、合体できないからといって容赦はしないぞ!」


 「なにおー!?

  合体できるのが柊たちだけだと思うなー!あやの!」


 「う、うん!今回は私が上になるよ!」










 「ブロードサイド!!」


 「オクトーン!!」






 『ゴッドリンク!!』






 『連結合体、カイテンオー!!』











 今回は流氷地帯ということで、水中戦も得意なカイテンオー。


 海と天を統べるからカイテンオー……というのは名付け親のみさおの談。





 「どっかのガンバルオーみたいなネーミングだ」ってトラルーがツッコんでたのがつい最近のように思えるよ。





 それはともかく、ゴッドリンクしてマスターギガトロンの前に立ちはだかるカイテンオー。


 防御力が特に高いみたいだし、今回のバトルの主軸は確定かな?










 「ふん、特に冷気などを操れる属性も持たないくせに、堂々と出てくるとはな。

  まとめて凍てつかせてくれる。クォンタム!ビーコン!レンズ!」









 「エボリューション!!」








 マスターギガトロンの叫びに応え、クォンタムたちが飛翔。


 まずビーコンがビークルモードになる。


 その上からクォンタムがビークルモードになって両者が交錯、すぐにビーコンが向きを変えずに降下して、互いのエンジン部が連結。


 更にそのまま降下し、ビークルモードから更に機首部分を展開したレンズの合体部めがけてクォンタムの機首を展開して連結。


 ビーコンとクォンタムが刀身を、レンズが基部兼持ち手を構成する大剣となる。


 全体的に氷みたいな色合いを持つ大剣をキャッチし、マスターギガトロンが叫ぶ。










 「全てを氷に閉ざせ――ブリザードセイバー!!」










 ブリザードセイバー!?聞いたことないよ!


 多分、マッハたちと似た系列のものだとは思うんだけど…。











 「ほう、貴様らは知らないか。この……永氷剣のことを」










 そういって、マスターギガトロンはブリザードセイバーをかまえて……












 「ならば……体感してみればいいさ。全てを凍てつかせる、神の吹雪の力をなぁ!!」










 勢いよく天へ向けてかざしたブリザードセイバーから、とてつもない冷気と吹雪が発生した。











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 ――――っ!!







 「うわっ!?」







 あ、あれ?イリアス?








 「ったく、自分で提案した条件下で完敗した挙句に気絶までして、それでしばらくして急に起きるなよ…」


 「あ、ゴメン」








 そうだ、スターとイテンの二人を相手に模擬戦やって…それから…。


 全然歯が立たなかった。それどころか、今までにない負けっぷりだったと思う。


 まだハルピュイアとレヴィアタンを相手していた時の方が戦えてた気もする。










 「そりゃそうだよ、あの時は融合ユニゾンだってしてたし、武器もあった。

  第一、今みたいな焦りだってなかったじゃんか」










 焦り?


 ジン君からの指摘に、思わず首をかしげる。










 「事情を説明したら、トラルーが思いっきりため息をついてくれたよ。

  『焦って自滅してたら世話ないよ』ってな」








 他言無用でって頼んだのに…。








 「いや、向こうが気づいた時点で隠し立てできるワケないだろ。

  それに、トラルーってオレらの中で断トツの戦闘経験を持ってる。

  それこそ、ジュンイチさんの数十倍から数百倍のな」


 「何百年もリアルに戦場で食ってたって話だよな」


 「そうそう。その点については体感した部分と知識程度の部分が混ざってるから何とも言えないとは本人の談だが。

  でも、何百年単位で積み重ねられた経験からすれば、クレアのことがわかっちゃったんじゃないか?」







 イリアスからの補足に答えつつ、説明してくれるジン君。


 でも、なんか気に入らないなぁ……お見通しなんて。








 「そこについては諦めた方がいいと思いますよ」








 あ、レルネ。……もしかして、君も聞いたの?








 「ていうか、いきなり救急車を呼ぶかのような騒ぎになったりしたら全員気づきますって」









 …………返す言葉もございません。








 「それで続きですけど、トラルーたまは技量だけでなく、心理的な問題でも経験値が豊富です。

  戦場で生き抜く為に、貧困時代の間は終始焦りっぱなしだったくらいだそうで。

  だからこそわかってしまったのでしょうね。力不足を実感し、早急に解決しなければならなくなった時の気持ちが。

  自分も似たような経験をしているから、文字通り手に取るように」



 「それで、アイツ、オレに伝言残してったんだ」








  強くなること自体は悪くない。しかし、それで死に急いでは意味がない。


  敵を撃つ強さを持つ前に、生きる強さを持たねばならない。


  生きる強さとは、武力ではなく、心を強く保つことをいう。


  どんなに武力を持とうが、武力は武力。振るう主の心が弱ければ、何の意味も持たないし、無力で愚かだ。










 「……ってな」


 「な、なんか深いな…」


 「千年以上も生きているトラルーたまだからこそですよ〜」









 ジン君から伝えられた、トラルー君の言葉。


 イリアスやレルネがいろいろ言ってるけど、それは置いといて、僕は考えてた。


 心を強く保つ……生きる強さ……!










 「そのあとでこう言ってたな。

  『死んだおじいさんの夢の為に、イリアスと二人だけで漆黒の宇宙を旅し続けてきた時点で、

   ホントはすごく心の芯が強いハズだ』って。

  生きる強さを、とっくに身につけてるハズだって。

  その強さを忘れなければ、きっともっと上のステップへ行くこともできるってな」



 「というワケで、こちらはその辺のことも踏まえての贈り物となっております。

  まぁ、回収できた設計図から再設計して開発した、あなた専用のアームドデバイスですけどね」











 トラルー君からの伝言を続けてくれたジン君の後で、


 レルネが縦に長い長方形のケースを僕に渡す。なんか……ずいぶんと小さい感じがするけど。










 「どのようなものかは……現地で説明いたします。戦えますか?」









 ありがと、レルネ。でも、僕はもう少し、イリアスとのアレで頑張ってみる。









 「よっし、こっちはいつでもいいぜ!」















 ――《「霊子ソウル 融合ユニゾン」》―― 











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 くっそ、いつぞやの量産型イマジンかよ!






 「侑斗、イマジンは量産なんてできないぞ?」






 扱い的には似たモンだよ! 同じような連中がウジャウジャ出てくるし!


 大半がモールイマジンってのも、以前のアレとそっくりでうっとうしい!






 プレダコンズの方をトラルーたちに任せて、こっちでイマジン軍団を相手している最中。


 大方、ゼロライナーやオレを狙ってきたんだろうが、残念ながらお前らに捕まるようなヤワな実力じゃない!


 雷道も頑張ってくれているおかげで、ベガフォームを使わなくても済みそうだ。


 デネブが合体するから、手数が減って逆につらいんだよ。


 一方で、主なくとも健闘してくれているのが合体デバイス3人組。





 ……まぁ、開発者であるレルネいわく、元々は単体でパワードデバイスとしての性能もあるから、


 必要とあればどれか1機だけをアーマーとして纏うこともできるとか。


 手数の調整がしやすいってのは便利だな。






 《ウッス!御大将の心の命ずるままに、はびこる外道を叩き斬るっす!》


 《オイッス!イマジンだろうがなんだろうが、敵とあらば叩き伏せるのみ!》


 《チョリッス!今後の為にも、逃がすワケにはイカンのだよ諸君!》








 それぞれでバラバラに迎撃してるかと思えば、馬跳びやすれ違いとかで位置を入れ替えながら戦う。


 チームワークもよさそうだ。さすがに、同じ戦術データを持ってるだけのことはあるか。









 「侑斗!そっちはどう!?」


 「問題ない! お前はお前で集中してろ!」


 「お言葉に甘えて、そうさせてもらおうかしらね!」










 とにかく今は、目の前に群がるイマジンどもの排除が先決だ。


 オレ、雷道、デネブの3人もそれぞれで攻撃し、徐々に数を減らしていく。











 「僕も手伝うよ!」


 《人手は欲しいだろ!?》










 大剣で飛び込んで乱入してきたのは、融合ユニゾンしたランスロット。


 確かに、人手が増えるのはうれしいんだが……。











 「ガキだけでこのオレ様が倒せるかぁ!!」












 よりにもよって、乱入するポイントがまずかった。


 かく乱しようとしてくれたのだろう、敵陣のど真ん中。ただ、そこには今回のリーダー格である、赤いモールイマジンがいる。


 着地した時の隙を突かれて、左腕のクローで思い切り殴り飛ばされる。


 畳みかけようと、他のイマジンどもがランスロットの方へ…まずい!












 《させるかよ!》


 「グランドクェイク!!」













 だが、心配はいらないらしい。空いてる左手に力を纏わせて叩きつける。


 それによって発生した衝撃波が近くの岩や瓦礫を吹き飛ばし、イマジン共をまとめてブッ飛ばす。


 かいくぐってきた連中も大剣で切り倒し、一度離脱する。やるじゃないか。













 「じゃあよぅ、コイツならどうだぁ!?」


 「なっ…」


 《クレア、危ない!!》













 アイツ、いつの間に潜ってやがった!?


 知らない内に地面に潜っていたと思われる赤いモールイマジンが、突然ランスロットの後ろから強襲。


 対応しきれないランスロットめがけてクローを振り下ろし、凄まじい衝撃と共に発生した土煙で、ヤツらが見えなくなった。













 「侑斗、こっちは片付いたけど…」


 「ちょっと、何よこれ…!」












 デネブと雷道は片付いたか。アイツら、大量に出てくると弱体化するしな。


 それより、問題はランスロットだ。大将格から強襲かけられて、それから……。










 「……ちっ」










 舌打ちしながら、煙から赤いモールイマジンが出てきた。仕留めそこなったか?











 「イリアス、しっかりしてよイリアス!!」










 いや、半分は仕留めたらしい。ランスロットをかばって、イリアスが融合ユニゾンを解除して盾になったんだ。


 それを再確認して、赤いヤツがクローを構えなおす。それと同時、保険として潜ませていたのか、またイマジンどもが出てくる。


 くそっ、これじゃランスロットのフォローにいけない!











 「くたばりぇばっ!?」








 ……その時、オレたちは見た。


 ランスロットへ迫るクローを一閃で弾き飛ばし、同時に顔に蹴りを入れて赤いヤツを吹っ飛ばした、小人のような感じの人型ロボットの姿を。


 アイツか!? だが、姿はそっくりだが、色が違う。


 オレやデネブが見たことのあるアイツは白と黒を基調とし、青竹色のラインが目を引く色だ。


 だが、目の前にいるアイツは、赤と白と黒を基調とし、ラインの色はラベンダー。


 後頭部にある、まるで女の髪みたいな流線型の5枚のフィンは、オレたちの知るものが透明な水色なのに対し、目の前にいるのは透明な紫。


 どういうことだ…!?












 《間に合ったようで、何よりです。大丈夫ですか、クレアさん》


 「その声、レルネ…?」


 《今、あなたを助けたのは、さっき渡そうとしたパワードデバイスです。

  SFジェットから回収できた設計図を基に、更にクロス・アインたちのように単独行動できるように再設計したのがこの姿。

  説明しておきますかね。あなたに託すことになった理由を》










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 レルネが僕に託すことになった理由?


 それに、設計図から、って…。








 《まぁ、全てはこれから送るメッセージデータにあるので、見ていただくのが手っ取り早いでしょう》









 その言葉と共に、目の前の機械仕掛けの小人が僕に向き直り、ホログラムを映す。


 そのホログラムは、何かの手紙…?









 《あの時回収できたデータは、設計図だけでなく、添付式のメッセージファイルの2つだったんです。

  それをトラルーたまが気にかけたので、暗号化されていた部分を解読してみました。

  そしたら、こういうことになっていたのですよ》








 

 今現在の持てる技術では、設計までが精いっぱいだ。


 しかし、我が夢を受け継いで宇宙を旅するお前なら、きっと、これを現実にできる術を持つ者とも出会えるだろう。


 その時に、もしもお前が、更なる高みを目指す理由を持つのなら、


 高みを目指すことで、守りたいものがあるというのなら、


 "大地の守り手"としての更なる高みの形と信じて、これをお前に託す。


 我が夢を、まるで自分の夢でもあるかのように思ってくれる、お前に。


 ――親愛なる叔父より―― 













 おじいちゃん……僕の為に、こんな……。







 《完成直後はボクがネーミングしようとしたのですけど、

  よくよく見ると設計図にコードネームが記載されていました。

  それは、地球のとある神話において、最初の女性の名前として伝わる名前。

  そして、ボクが初めて作った女性人格のAIを内蔵していることを含め、そのまま使わせてもらいました》








 言っているそばから僕に迫る敵は、白を基調とする同型の機械の小人が次々と蹴散らす。


 えっと、アレは…?









 《アレはプロトタイプ。デバイスとしての機能は持たないですけどね。

  逆に、人型ロボットとしての稼働パターンなどのデータ収集と、超長距離通信の精度向上の為のテスターをしてもらっていたワケでして》


 「なるほどな、オレやデネブが知ってるアイツとそっくりなワケだ」











 そ、そうなんだ…。それで、この子の名前は?










 《始まりの女性の名、"初めての名前"……》








































































 パンドラ




























 レルネから名前を告げられ、赤と白、2体の小人が同時に目を光らせる。


 え、2体とも同じ名前…!?







 《まぁ、そこは設計上仕方なかったということで。

  何しろ、内臓しているAIが完全同型でしたので…。まぁ、多少性格は違ってますけどね》


 《そういうワケで、私のことは今後"プロト"とでも呼んでくださいな》


 《姉さん、"パンドラ"の名前、キッチリ受け継いで頑張るからね!》







 白い方がプロト。赤い方がパンドラ。そして、赤い方は僕の……。







 《あなたのおじいさんの願いと希望も込められているといっても過言ではありません。

  パンドラのこと、よろしくお願いしますね。クレアさん》








 ……うん! ありがとう…!!


 これからよろしくね、パンドラ!!









 《あぁそうそう、完成形であるパンドラには、アインたちと同様のシステム、即ちアームドデバイスとしての機能もあります。

  いや、きっとアインたちもビックリするようなものになっておりますので、試してみてください。

  詳しい使い方は、パンドラに教えてもらった方が早いですね》


 《何でも聞いてね!ていうか、初めてなんだから私が教えなきゃね》










 もうぶっつけ本番、やるしかない!


 …………イリアスが後で嫉妬したりしなきゃいいけど……それは後の問題だよね。


 とにかく、お願いねパンドラ!








 《それじゃあ……パワード・クロス!!









 その宣言と同時、パンドラが僕と同じくらいの大きさになってパーツごとに分かれる。


 肘から下と手、肩、胸と背中、そしてヒザから下にはパンドラのそれぞれのパーツがアーマーとなって装着される。


 残りのパーツは、腰の後ろにあった2基のスラスターが分割されたものに均等に集約され、ホルスターのような形状になる。


 それが合わせて4つ。腰に新たにベルトが巻かれて、ホルスター状のユニットが移動。


 両肩、そしてベルトに設けられた両サイドのジョイントにそれぞれ接続される。


 最後に、パンドラの頭部を模したヘッドギアが僕の頭にかぶさる。








 《閃光の遊撃手、パンドラを纏いしこの姿……名づけるとすれば――》







 パンドラの思う言葉が、僕の心に浮かび上がる。すごい、イリアスと融合ユニゾンしてるみたい…!


 そこは今はいい。浮かび上がった言葉を、パンドラと共に告げる。


















 《「"閃光の防人さきもり"レイ・フォルティス!!」》


















 そう宣言し、僕は改めて身構え、目の前の敵たちと対峙した。























 (第18話へ続く)


























 <次回の「とたきま」は!>





 クレア「なんか、最後の名乗りがすごく霊子融合ソウル・ユニゾンの時と似たノリなんだけど…」


 パンドラ《だって、元から創主様がそーゆー風に設定してたし。あ、創主様っていうのはレルネのことね》


 イリアス「まさか、リストラの危機!?」


 レルネ「違うんですなーコレが。まぁ、それを証明する為にも、さっさと起きなさい」


 イリアス「なんで命令口調!?」


 マスターギガトロン「えぇい、イマイチ印象が薄い……次回は是が非でも貴様らをイケニエにしてやる!」


 こなた「どういうイケニエさっ!?」







 第18話:永氷剣と意思疎通と武者修行





















 あとがき


 どうしても省けない部分が多く、結局クレアのパワーアップ案であるパンドラ及びレイ・フォルティスがあいさつ程度になってしまった第17話です。

 前回で登場した設計図の伏線を昇華した形です。モジュール関係はこれからですけど(汗)

 クレアのおじいさんの名前は……敢えて決めずに通した結果がコレです(何)



 一方でマスターギガトロンがお披露目した永氷剣・ブリザードセイバー。

 形状はエネルゴンセイバーと瓜二つ、色はクリアパーツ部分がクリアスカイブルー、その他が主にシルバーを基調としているリカラー品だったりします。

 (一応、「マイクロンブースター」という商品でバラ売りされてました。スパリン現役時代だったので随分と昔ですが…)

 クォンタムだけ名前ネタで遊ばれたのは、コイツしか実物をゲットできなかったからです(マテ)



 次回は、レイ・フォルティスとブリザードセイバーの本領発揮編。

 今回発見されたマイクロンパネルも、神器とは違った意味での伏線になっていたりするので、今後をお楽しみに。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 クレア嬢、ジン達について行きたいのはわかるけど、また無茶な特訓してくれますなぁ。
 まぁ、そういう意味ではジュンイチ好みの教え子かも。実現したらスバル達やノーヴェ達とはまた違った意味でお似合いの師弟になりそうな気が。
 そんな彼女も無事にパワーアップ。次回の活躍を楽しみにしております。

 一方ですっかりやられ役が定着しつつあるファーヴニル。
 カイなんてトンデモナイのが身内に出てきちゃったからなぁ。ご愁傷さまです。

 そしてマスターギガトロンの手にしたブリザードセイバー。
 氷結系ということでも対ジュンイチ用の戦力になりそうですが……だからこそぶつかった時が心配だ。水蒸気爆発とか起きないよな?(ぇ

>……えっ、客人?何それ、私聞いてない。
 所長だーっ!? 探偵はどこだ!? 歩く図書館はどこだ!? 刑事はどこだーっ!?(←落ち着け)