緊急出動したパンドラが見事クレアをピンチから救い、一気にパワード・クロス。
パワードデバイスの本領を発揮したパンドラは、白のアクセントで際立つ赤い装甲が特徴的なアーマー。
そして、あの設計図から更に改良された各種追加モジュールを形成することで、更にすごい存在になれる。
まぁ、それはこれから高みの見物といこうかね。
何しろ、完成したモジュールを見てみたら、いくつかだけでこの大群をあっという間に蹴散らせるってわかったし。
それに……スターがいつの間にか呼び寄せたっていう援軍のお出迎えを、スカイクェイクと一緒にしなきゃならないのでね。
なんでも、その援軍ってのは地球出身かつデバイス持ちの精霊さんらしいからねぇ…。
「じゃあトラルーたま、お出迎えの方をよろしくお願いしますね。
ボクはその間に"ステーレス"を完成させる必要がありますから」
そっちはそっちで重要案件だからね……任せたよレルネ。
イグナイテッド、ライブ中継よろしくぅ!
「いやいやいやいや!!
ファーヴニルの問題そっちのけかよ!?」
「原因はトラルーなんだから、いなくなられると困るんだけど!?」
「武士の情けとかないでおじゃるか!?」
なんかスターとイテンとビコナが食いついてくるけど、気にしない。
いや、1つだけ言っておくか。
「僕に武士の情けなどありゃせんわいっ!」
『いばるなぁぁぁぁっ!?』
どうでもいいから逃げないでどうにかしろよ。
なんかそんな感じの感情が大いに込められた3人からのツッコミ攻撃で、僕は落っことされましたとさ。
「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録
「とある旅人の気まぐれな日常」
第18話:永氷剣と意思疎通と武者修行
「たぁぁっ!」
「ちいっ!」
パンドラが元から持っている、2つで1セットの、刃付きナックル型固有武装「ホープ・エッジ」を両手に握りしめ、
今回の軍団のリーダー格であると思われる、赤いイマジンに斬りかかる。
ただ、結構距離があったし、リーチも短いから、かわされても仕方ない。でも、問題はここからなんだ。
「パンドラ、詳しい使い方ってどういうこと?」
《説明しよう!アーマー形態の私は、いわば歩く武器庫。
データ転送によって、両肩と両腰にあるホルスター状のウェポンブロックを変形させて、様々な武器……というかモジュールを使うことができるの。
今回は主に私や創主様の判断でモジュールを使うけど、本当はマスターの意思でも選択可能よ》
設計図を踏襲してるから、そういう形になったんだね。
結構たくさんあったみたいだから、覚えるの大変そう。でも頑張らなきゃ。
だって僕はもう、パンドラのマスターでもあるんだから。
《じゃあ、マスター。ヨーヨーって得意?》
「えっ?まぁ、小さい頃はよく遊んでたし、いろいろやってたけど…」
《じゃあ、コレとかいいかしら?》
<ローラーブレイド>
パンドラからデータが送られたのだろう、別なシステムアナウンスが出て、右の腰のウェポンブロックが変形。
ヨーヨーみたいなパーツと、それがまるごと入るくらいの大きさのスリットになる。
ところで、今のアナウンス、つい最近見てた仮面ライダーの、ガシャポンみたいなものがついたベルトと似てるのは気のせい?
《まぁ、これは創主様の趣味ね。お師匠様1号とよく一緒に見てたって姉さんが言ってた》
あ、あはは…。それはともかく、集中集中。
スリットから出してみると、ホントにヨーヨーそっくり。紐に当たる部分は……細めのワイヤーかな?
他に違いといえば、自分の顔くらいはありそうな大きさ、それと、右手首についた専用のパーツとヨーヨー本体とで繋がってること。
手は元からパンドラのアーマーと一緒にカバーされてるからいいとして、ぶつけたら結構痛そうだよね。
《設計した人も相当お茶目みたいね。
だって、ヨーヨーをまんま武器にするなんて、どっかの真ん丸ピンクな星の戦士とか某スケバン刑事ぐらいよ?
あ、お師匠様1号によれば、シスター風の衣装を着たスパッツショタもそうだとか》
あの、前者2つはともかく、後者の表現についてはどうかと思うよ僕はっ!
なんかすごく危ない人みたいに思われるから!
《それね、『自分もスパッツショタな体型だから気にしない!寧ろ好きだっ!!』って堂々と宣言されたから諦めた♪》
それはいろんな意味で大丈夫なのかなっ!?
ていうかトラルーも、開き直るにも程があると思う!
「さっきからゴチャゴチャと何を言ってんだぁぁ!!」
《マスター、迎撃!》
「うわっ!?」
完全に蚊帳の外にしてしまってた赤いイマジンが、左手のクローをソードに切り替えて襲い掛かってきた。
パンドラのボケとマジメの切り替えの早さに驚きつつも、ヨーヨーを思いっきり飛ばす。
数メートル先まで飛んだら、いきなりエネルギーの刃が出現。
ヨーヨーの回転に合わせて刃も回転し、赤いイマジンのクローを紙切れのように切り裂いた。
何コレ!?おじいちゃんって、そーゆー趣味があったの!?
《今使っている武器「ローラーブレイド」は、設計図から変更ナシで作ったモジュールの1つです。
元からそういう設計だったので、まぁそう思っても仕方ないですよね》
開発者であるレルネからそう言われるってことは、まさか本当に…?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「どうした!!この程度の吹雪でお手上げか!!」
マスターギガトロンが新たに手に入れた力、ブリザードセイバー。
あのクリスタルみたいな大剣から発せられる猛吹雪だけで、私たちは既に虫の息なのかもしれない。
「う、動けない……」
「おそらく、この猛吹雪と冷気のせいで、駆動系が凍り始めているのでは……」
現在、私、かがみん、みゆきさんの3人が既に行動不能に近い。
理由は、多分みゆきさんが言ってくれたことで正解だと思う。ヒザとか、まるで何かで固められてるみたいに動かないもん。
ていうか、トランステクター越しの筈なのにとっても寒いし…。
「当然だ。このブリザードセイバーは、またの名を"永氷剣"という。
この氷結の力に対抗したければ、太陽でも持ってくることだな。
もっとも、出力の程度が知れている貴様らでは、抵抗すらできる筈もないんだがな!」
永遠の氷をもたらす、永氷剣ってワケね…!
実は私は炎属性なんだけど……って抵抗は、もう無駄。だって、さっきから魔力の炎を放出してるんだけど、出した途端に消えてしまう。
とにかく、これじゃあ身動きすらできない。
現時点で異常が起きていないカイテンオーが頼みの綱なんだから、頑張ってよね!
《任せろ!あんな剣、さっさと奪っちまえばいいだけじゃんか!》
「実際に奪う行動をするの、私なんだけどねっ」
みさおの意気込みに背中を押された感じで、あやのの操作でカイテンオーが攻撃を仕掛ける。
手刀と蹴りをメインにしつつ、肩や腕の火器も織り交ぜてブリザードセイバーを狙う。
「その程度の格闘術で、オレを出し抜けるものか!」
「くうっ!?」
対するマスターギガトロンは、
ブリザードセイバーを巧みに使い、刀身で受け止めたり流したりして、寄せ付けるようで寄せ付けない。
火器による攻撃は素直に回避してるところを見ると、防御力への自信はないみたい。
まぁ、以前師匠にその辺でコテンパンにされたこともあるらしいし、教訓としては生きてるらしい。
「だったら、火力押しで!」
「そんなもの!!」
《《《永氷剣に火力任せの攻撃など、笑止!!》》》
3体分の声が重なって1つの文章を述べるブリザードセイバーを大きく振りかぶり、
マスターギガトロンは袈裟斬りの要領で一閃。
それで発生した猛烈な冷気と吹雪が、迫る放火の雨をまとめて凍らせ、吹き飛ばしてしまう。
それってアリぃぃ!?
「どうだ、これで分かったか。
太陽でも持ってこない限り、永氷剣に、そして永氷剣の主となったこのオレには、絶対に勝てないということが!!」
《って、いつの間にかあたしらも動けなくなってる!?》
「まずい、足が……!」
どうやらさっきの吹雪と冷気で、足が直接凍らされたみたい。
カイテンオーまでもが動けなくなる中、マスターギガトロンはあくまで余裕だ。
《《《永遠なる氷の中で、静かなる眠りをもたらさん……》》》
紺色の輝きを全体から放つブリザードセイバーを構え、マスターギガトロンが私たちのど真ん中まで踏み込んで――
「絶対零度――プランティアフリーズン!!」
私たちを薙ぎ払うように、絶対零度と評された氷の刃を振り抜いた。
そして、私たちは……猛吹雪と氷に包まれて……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あのねぇ君ら、いくらなんでも脈動を破壊するワケがないじゃないの。
多分ね、心拍を破壊したんだと思うんだ。
「いやいやいやいや!余計シャレになってないって!」
「ていうか、心拍数を破壊するってどういうことなんだろ?」
「えっと、心拍数がなくなるってことは、心臓が動かないのと同じワケで、呼吸してないのと同じ感じでおじゃるか?」
「のんきに解説しなくていいからな、そこの姫さん!?
イテンものんきな質問してる場合じゃないぞ!?」
いやー、いつになくパニックに陥ってますなー。
こんなスターは久しぶりだよ。はっはっは。
「はっはっはぁ!?なんでそんなにのんきかつ微妙に上機嫌なんだよ!?」
「いやー、実は昨日の晩に、とうとうイテンと愛し合いましてねー。
なんていうのかな、僕も前々からトキメイてた節があるし、ようやく相思相愛で○貞卒業ってヤツ?あっはっはー♪」
「え、そうなん?なんともうらやましいビギンズナイトでよかったな。でもこちとら全然よくないんだよ。
まだ目の前の事件が全然解決してないんだよ」
あ、いつもならちょっと目を輝かせて食いつきそうなネタなのに食いつかない。
よりにもよって「ギャ○マンガ日和」ネタなのに。アレ?でも、セリフはきっちりと再現してる…。
まぁ、下手すりゃここで死人1名、かつ加害者は僕ってワケだしねぇ。
「じゃあなんでそんなに平気な顔してんだよ!?」
「人殺ししてその肉むさぼるぐらいしか生き残る術がない世界で800年以上生きてましたが何か?」
「すいませんごめんなさい」
僕からの回答が終わった瞬間、スターは華麗なるジャンピング土下座をした。
いやね、戦場で無一文で生き延びるしかないってなったらね、そうするぐらいしかないのよ。
かーなーり、リアルな話。
だからね、プレダコンズやイマジン、遠目で聞いてた侑斗まで含め、敵味方問わず大半のメンバーがドン引きしたのは仕方ないと思うんだ。
でも、現実って大抵そんなモンよ?
「マスターコンボイ辺りでも引きそうな話だな……。
こう、あまりにも血生臭すぎて」
そうかなぁ?
でも、ジンが言うならあながちそうかもしれない…。
まぁ付き合いはまだまだ短いからねぇ、マスターコンボイとは。
「…………ところで、結局のところ、ファーヴニルについてはどうなるのでおじゃるか?」
あぁ、それなら心配ないんだよ、さっきから。
だって、アイツの魂はまだ死んじゃいないしねー。
「そういう問題じゃ、ないんだけどなぁ……」
「あぁっ!スター殿がどんどん白くなっていくでおじゃるよ!?」
「ツッコみすぎて燃え尽き始めた!?」
アレだね、「燃え尽きたぜ……真っ白にな……」ってヤツだよね、きっと。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おらららららららぁ!!」
《そんなの!》
<フレキシブルシールド>
赤いイマジンが無数の針みたいなものを連射してくるけど、パンドラが対応。
瞬時に呼び出した左肩のアーム付き大型シールドが、その全てをはじく。
オマケに、パンドラの操作によるものか、アームが動いて、イマジンを殴り飛ばした。シールドで。
「ねぇパンドラ。それっていいの?」
《世の中、盾を武器とする人って結構いるわよ?
某メダルのライダーだって、オレンジのコンボの時は盾で殴ってるようなものだし》
そ、そうなんだ……へぇ〜……。
おじいちゃん、どういう本とか読んでたんだろ……。
《他にも、こんなのとかあるけど?》
<セブンティーンブラスター>
アナウンスが流れると、今度は右肩のホルスターブロックが形状変化する。
これって……大砲?
なんか、砲塔がいっぱいあるんだけど……。
《マスターは"十七連突撃砲"ってご存知?
これの元ネタはまさしくソレ。ていうか、他に酷似する武装が見当たらないわ》
…………おじいちゃん……?
《まぁ、趣向はともかく、威力は十分すぎるくらい高いの。
とりあえず、両足しっかり踏ん張って。これの出力最大一斉掃射は少し反動キツイから》
えっ、僕の意思はもう無関係?
なんか、パンドラが次々と勝手に使ってるようにしか思えなくなってきたけど?
《しょうがないですよ。
ぶっつけ本番なせいで、クレアさんにはロクにモジュールの説明ができてないんですから。
今回はおとなしくボクやパンドラの流れに付き合ってください》
そうだったね。レルネに言われるまですっかり忘れてた。
僕のせいとはいえ、イリアスが目を回すハメになるなんて思ってなかったから…。
それに、もう発射体勢に入ってしまっているので、とにかく踏ん張る覚悟を。
《ではいってみましょうか、十七連突撃砲が奥義――》
《メガ○マックス、ファイアー!!》
レルネのセリフと同じくらいのタイミングに砲塔全てにエネルギーが充填され、パンドラの叫びと共に全ての砲塔が火を噴いた。
パンドラの忠告通り、確かにちょっと反動がキツめ。しっかり踏ん張らないとこっちまで飛ばされそう。
放たれたビームは1ヶ所に集まって、それから炸裂弾みたいな感じで一気にはじける。
はじけたビームたちは次々とイマジンたちに直撃し、撃破していった。
……女の子が使う武器にしては、威力というかインパクトが強すぎる気がするけど…。
《まぁ、行き過ぎた例になると、ガトリングキャノン2門にミサイルポッド4つ、更に各種火器マウントユニットまで装備した、
超ゴテゴテな機体を乗り回して暴れまわった女の子もいますけどねー。
ご丁寧に、元ネタは十七連突撃砲と同じルーツですし》
…………レルネ、おじいちゃんは、僕に何を目指してほしかったんだろうね…。
《何はともあれ、本当の意味での本領発揮は、霊子融合してからですよ。
その為には、イリアスさんに復帰してもらいたいんですけど…》
でも、イリアスはさっき、僕をかばって……。
「…ったく、さっきからドカンドカンうるさいなぁ…。
クレア、どうなってんだよ……主にお前が」
って、イリアス!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
トラルーたち精霊一派絡みの客人を出迎えに行こうとしたところでアルテミスから緊急通信。
中継モニター越しに見える光景に、正直なところ、幻覚を見ているのかと思いたいところだ。
マスターギガトロンが、既に手にしていたマイクロンで泉こなた達をおびき寄せた。そこはいい。
問題はあのブリザードセイバーとかいう大剣だ。
機動六課に舞い込んだスターセイバーと同系列、かつ、先日トラルーから報告が入ったばかりのエネルゴンセイバーと瓜二つな外観。
しかし、その性質は真逆で、全てを凍てつかせる絶対零度を放つ。
その冷気は、トランステクターの防御システムすらも凍てつかせ、機能不全に陥れる。
まさしく絶対零度。その冷気の前に、泉こなた達はなす術もない。
それどころか、先ほどの一撃で、全員まとめて氷づけにされている。いくらトランステクターでも、このままでは…!
《どうしましょう、スカイクェイク。このままでは、皆さんが…!》
オレだってわかっているさ、アルテミス。
だが、いくら転送魔法を使っても、今のままでは確実にアイツらの二の舞に終わるだけだ。
何かしらの耐寒装備なり無効化方法なりを用意しなければならない。ならないのだが…!!
《……これは…?》
どうした?
《今、こなたさんたちのいるところから離れたところに、未確認反応が…》
未確認反応?あの極寒の地にか?
パターンは分かるか?
《このパターン……トラルーさんたちと同じものです》
精霊の類か…。だが、トラルーたちと縁のあるヤツとみていいものか?
あの地に元から住まう精霊の可能性だってある……。
《しかし、反応からすると、デバイスを持っているようですし……見てください》
アルテミスがコンソールを操作し、モニターの一部が切り替わる。
……どうやら、オレとトラルーで出迎える筈だった客人のようだ。しかし、あんな軽装備で…?
いや、それは不思議なことでもないか。
トラルーたち精霊ないし精神生命体は、元から持つ先天的な体質によって、どんな環境の中でも活動できる。
それこそ、半袖ジャケットにスパッツなどという軽装備で、流氷地帯のような氷点下の中でも平然としていられる、とかな。
さて、この客人……彼女は地球出身の精霊であり、名前はノーザン。
服装は今言った通りの半袖ジャケットにスパッツ。黒を基調とし、襟や中央、袖やスパッツの端にオレンジのラインが入っている。
これまた黒のひし形の帽子をかぶり、腰まで届く長さの緑色の髪は後ろで結んでいるようだ。3枚のフィンのように垂れ下がるそれが、風でなびく。
腰に巻かれているオレンジのベルトの左右に備えられているのは、小道具などをしまうのに使えそうな四角形のポーチだ。
そして両手には……緑を基調としてオレンジがアクセントになるカラーリングを施されたライフル。
おそらく、アルテミスが言うデバイスとはこれのことだろう。
呼び寄せた張本人であるスターいわく、名前は「ガメッセ」とのことだが。
ノーザンの黄緑色の瞳の見つめる先には……マスターギガトロンだ。
ブリザードセイバーを狙っているようにも見えるが、モニター越しではなんともいえないな。
アルテミス、映像のアングルを変えられるか?
《はい、問題なく。こういう感じでどうでしょう?》
アルテミスの操作により、画面のアングルが切り替わる。
一方はマスターギガトロンを、もう一方はノーザンを映し、更にもう一方は全体を見渡せる位置まで遠ざかる。
さすがだな、おかげで位置関係は大体分かった。
今現在、マスターギガトロンがノーザンに気づいた様子はない。彼女はヤツの真後ろの位置にいる。
ヤツは気楽なものだな。ブリザードセイバーの吹雪の余韻を楽しんでいるのか、はたまた誰からトドメを刺そうか舌なめずりしているのか…。
それを尻目に、ノーザンが構えを取った。狙撃のようだが……2丁で同時にか?
ノーザンとヤツとは、ざっと100メートルほどの距離がある。そこから狙撃、しかもライフル2丁を同時に使用してだと?
普通、狙撃は銃身の長いライフル1つで行うことが多い。
ティアナ・ランスターのファントムブレイザーなどの例外もあるが、かなり珍しいケースといえる。
狙撃……ひいては「狙い撃つ」ことで有名な某ガンダムマイスターも、ライフル2丁同時使用の場合はあまり狙っている構えはない。
寧ろアレで乱れ撃ちをすることに少なからず身震いを起こした覚えもあるが、それはともかく。
ノーザンがライフル2丁を水平に構えて、連結した。それと同時、銃身下部に内臓されていたと思われる刀身が展開される。
銃剣というヤツだな。どうやら、格闘戦にも少なからず精通していると見た。
さて……それでどうするのか、まぁ大体の想像はついたがな。お手並み拝見といこうか?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《主よ……あまり無茶なことはしないでもらいたいのですが。
デビュー早々にスクラップになるなんて憂い目にはあいたくないですよ、私》
ガメッセ、黙って照準フォローと出力調整。
でないと、レルネに言いつけて……この前にスターと一緒に見た映画の「MO○IE大戦COR○」の部分だけメモリー消すよ?
《申し訳ありませんでした》
分かればいい。
狙いは一点集中、あの右手。アレを撃ち抜く。
撃ち抜いて……マイクロンを確保する。
「サンダー、お願い――エボリューション」
《エネルギー充填完了、出力調整に問題なし。
照準、誤差修正。エボリューションにより、クリスタルファイバー展開》
私のパートナーマイクロン「サンダー」は、大型砲塔を持つトラック型の4輪装甲車。緑がかった黒にライム色が特徴。
連結した銃身部分、その上になっている方にビークルモードのサンダーがエボリューションしたガメッセの言葉、その1つ1つに耳を傾け、
顔全体を覆うように展開された水色の半透明な照準器「クリスタルファイバー」の情報に意識を集中。
周辺のサーチをしつつ、あの右手の中心に照準が合わさっていって……
《誤差修正完了、ターゲットロック。いつでもどうぞ》
全ての準備が整ったことを知らせてきたその言葉と共に、引き金を引く。
《「アタックファンクション・ハンティングドライヴ」》
私とガメッセの声と共に、銃身を連結したライフルの銃口が火を噴いて――
「ぐああぁぁぁっ!?」
アイツの……マスターギガトロンの右手が、木端微塵に吹き飛んだ。
けど、それで終わる気はない。
《ディバイドモード》
ライフルを分離、銃剣…バヨネットはそのままに、銃身を収納して拳銃くらいの長さに。私は1回転しながらサイドステップでその場から離れる。
ショックフリートが隠れて偵察していることくらい、とっくに知ってたから。
今だって、さっきまで私がいた場所に、アイツのミサイルが降ってきたし。
「貴様、ただの子供というワケでもなさそうだな……何者だ?」
「通りすがりの射撃手よ、覚えておきなさい」
「何者だ?」と聞かれたら、このネタに走ってみろってスターが言ってた。
仮面ライダーってカッコいいし面白いよね。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《……とまぁ、そういうことですので》
「助かったぜレルネ、おかげで大体分かった」
当然ながらパンドラのパワード・クロスについてはイリアスも知らないワケで。
なので、レルネによる現場説明会2回目。
えっ、説明中の敵襲はどうしてるのかって?
《まったく、テスト機ごときに簡単にヤラレすぎですよ!?
まぁ、所詮は寄せ集めの軍隊ってことですねぇ!?》
《ツヴァイ、ドライ、あっし達もプロト姉者に続くっす!
寄せ集めの軍隊なんぞに無様な負け方はできねっす!》
《寄せ集めの軍隊なんぞに負けるオイラたちじゃないんだよ!》
《いつまでもこんな寄せ集めの軍隊の駆除に手間取るワケにもいかぬ!》
プロト、アイン、ツヴァイ、ドライのレルネ保有デバイス4人組が無双状態で対応中。
ていうかプロト、自分でテスト機って言う割に戦闘力高くないかな!?
途中参戦なのに、撃墜数は現状の迎撃参加メンバーで断トツ1位ってどういうことっ!?
多分、今までで最も多く撃墜してた侑斗さんよりも2倍近く多く撃墜してると思うんだけど!?
《プロトはデバイスとしての機能をオールオミットして、他のステータスを徹底的に底上げしてますからね。
ハッキリ言って、単体戦闘力はパンドラやクロス・アインたちよりも遥かに高いですよ》
《創主レルネの専属秘書として暗躍してるのです♪
暗躍の中でいっぱい修業とかもしてるので、まだまだクロス・アインたちには遅れませんですよっ》
レルネからの補足にプロト本人が更に補足。
専属秘書って…。わざわざそんなの作ってたの…?
《日頃のジュースとおやつの用意から各種必要資材などの買い出し、
挙句の果てに創主レルネお好みのショタ系エロエロ同人誌の購入などなど、
創主レルネのバックアップは私の使命なのです。
クロス・アインたちはあくまで戦闘用ですからね〜》
《《《ガーン!!》》》
プロトからの回答に、アインたち3体が同時にショックを受けた。
いや、あの、なんかとってもアブナイ響きの単語が聞こえた気がするんだけど。
《ちょっ!?プロトってば何をバラしてるのですかっ!?》
「レルネ……僕を見てたまに顔を赤くして精神的なヨダレを垂らしていることがあるけど、まさかそんな趣味があろうとは……」
《あぁっ、トラルーたま!?これは誤解です!事故なんですぅぅ!》
「いや、それはそれで別にヨシっ!!」
『何がっ!?』
なんか、トラルー君が最近よく分からない……。
ねぇ、昨日の晩にイテンと何してたの……?
「それは言えないなぁ。だって、少しでも語ろうものなら確実にこの小説発禁ものになるし。
主にえっちな意味で」
〜っ!??!!?!??!?!?
ホントに何したのっ!?
さっきからイテンも顔赤いし……まさか、そんな……!?
《さて、大まかな事情説明も済んだし、
いい加減収拾がつかないから早速だけど霊子融合よマスター》
あ、あぁうん、そうだね、気持ち切り替えよう。忘れるくらいの勢いで。
それで、融合することで本領発揮って言ってたんだよね。
まだ敵は残ってるし、リーダー格は健在だし、早く退けなきゃね。
いける?イリアス。
「あぁ、問題ない!いくぜクレア!」
――霊子 融合――
再びイリアスと1つになって――実質パンドラと三位一体となった僕。
イリアスの力が宿った影響からか、アーマーの赤い部分が鮮やかな橙色に変わる。
そしたら、また言葉が浮かんできた。
そうか、これが、イリアスだけでなく、パンドラとも1つになった僕の名前、新しい志名――
僕、イリアス、パンドラ――3人同時に、この新しい志名を高らかに叫ぶ。
《《「"瞬く大地の防人"――レイ・グランディア!!」》》
パンドラは霊子生命体じゃないけど……そんなの関係ない。
イリアスもパンドラも、僕にとって大切なパートナーであることに、違いはない筈だから。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
マスターギガトロンからさっさとブリザードセイバーを取り上げたいところだけど、まずはショックフリートを。
相変わらずのトリックで空間に溶け込むけど、溶け込んでいる間は攻撃が全くできないことぐらいお見通し。
それに、センサーではごまかしきれても、目視と感覚はごまかせない!
「ぐおっ!?」
空間から出てミサイルを撃つ瞬間、それを狙ってガメッセで叩き斬る。
アイツが実体化する瞬間、僅かなひずみとノイズみたいな違和感がある。
それを利用すれば、カウンターまではできなくても、攻撃への対処はまずできる。
「えぇい……何があったショックフリート!」
「申し訳ありません、長距離狙撃を可能とする緑のネズミを発見するのが遅れてしまいまして…」
「狙撃の緑ネズミ……またしてもノーザンか!」
むっ……ネズミじゃないもん。
スターは私のこと、真顔であなぐらマムルって言ってくれるもん。
可愛がってくれるもん。
「いったいどこのダンジョンゲームのモンスターだ」
「しかもアレは、生物としてはどう分類していいのか、判断に非常に困るぞ」
《主、よぉ〜く考えると、それって良くても愛玩動物の類にしか見られていないのでは……》
ショックフリートとマスターギガトロンがツッコんでくるし、ガメッセがなんか言ってるけど、気にしない。
だって可愛いじゃん、あなぐらマムル。
「えぇい、馬鹿な会話に気を取られてブリザードセイバーを奪われるワケにもいかん…。
ここは潔く撤収させてもらうとしようか」
「このエアドールは餞別だ、ありがたくもらっていくがいい」
ショックフリートの言葉と共に、多数の無人機が出現。アレが「エアドール」?
でも、二人とも逃がさない!サンダー!それに……!
「フォースチップ、イグニッション!!」
《エボリューション&イグニッション!》
私の声に応えて、地球のフォースチップが飛来。
銃身を伸ばして再度連結、バヨネットも展開した「バスターモード」にしたガメッセのチップスロットに差し込まれる。
さっきの狙撃と同様にサンダーもエボリューションし、マイクロンとフォースチップ、2つの力が銃身へと集まっていく。
集まったエネルギーは次第に バヨネットの刀身と刀身の間、つまり銃口部分で凝縮され、巨大なエネルギー弾となる。
更にそのエネルギー弾が、徐々に形を変えていく。それはまるで……星から見れば小さな女神。
《アタックファンクション・コンステレーションガッデス》
私が引き金を引くとともに、女神をかたどったエネルギー弾がヤツらへと飛んでいき――
ヤツらがいた流氷を跡形もなく消し飛ばすほどの大爆発が起きた。
《……ディセプティコンの反応はなし。寸前で逃げられたようです》
「そう……」
ということは、ブリザードセイバーも未だマスターギガトロンのところに……。
でも、取り返すチャンスなら、まだあるよね…。それより、今は――
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《さて、霊子融合によって地属性を得た。
それで初めて使えるモジュールもあるから、早速使ってみましょう》
<ブーストハンマー>
パンドラの意思で、右肩の突撃砲が分解され、大きなハンマーに再構築される。
このハンマー、打撃部がロケットみたいになってる。
これって、ヴィータさんが使ってるあのデバイス…グラーフアイゼンの、ラケーテンフォルムってヤツに似てるね。
《グラーフアイゼンがヴォルケンリッターの一部であるなら、開発されたのは相当昔の筈。
先人の知恵は偉大と言いますが、ホントそうですよねー》
さすがに、おじいちゃんもそんなに長生きじゃないもんね。
レルネの言葉に同意しつつ、両手でハンマーを持って、赤いイマジンを見る。
向こうは既に突撃体勢に入ってる。けど、悪いけど負ける気はないよ。
「くらいさらせぇぇぇぇっ!!」
「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」
イマジンの突撃に合わせて、僕もハンマーを振る。
すると、後ろの推進器が火を噴き、凄い推進力が発生したのが分かった。
その推進力に任せてみると、僕がまるでコマになったかのようにグルグル回り出して……
《くらえ必殺、ロケット大回転マグナムハンマー!!》
「ぐっほぁ!?」
高速回転によって増しに増した遠心力も込められた豪快な一撃が、イマジンの左脇腹に本当に豪快に突き刺さる。
まるでビリヤードの棒で思いっきり突いたボールみたいにイマジンがぶっ飛んで、地面に落っこちた。
それにしても今の名前、まさかイリアスが考えたの?
《いや、なんかいきなり頭にパンドラの声がしてさ……》
《実は私は、パワード・クロスした相手限定だけど、テレパシーみたいに意思を伝えることができるの。
さっきの志名の名乗りの時みたいにね》
そうだったんだ…。
それってさ、逆に僕やイリアスからパンドラにってことはできるの?
《可能ですよ。一種のテレパシーや念話のようなものです。
パンドラにだけ届くように念じれば、それでパンドラとの個人的な念話の出来上がりですよ》
《へぇ、そいつぁ便利だな。えーっと……》
《あら、創主様についてそんな風に思ってたの?気が合うわねー》
《えっ?イリアスさんもパンドラも、何を?》
《《秘密っ♪》》
《えーっ!》
レルネからの解説で早速試してみたいと思ったのだろう、
イリアスが何やら念じて……パンドラに見事に通じたみたい。でも、何を思ったんだろう?
それはともかく……。
《……OK、じゃあ、とっておきのモジュールでバシッと決めましょう!》
<ホープ・レイザー>
僕の意思を受け取ったパンドラが勧めてくれたモジュール。
それはホープ・エッジをベースに左右両面に大型のフィンがついたナックル型の武装。
今までに展開していたモジュールは全てホルスターブロックに戻り、4つ全てがフィンに再構築されて割り振られる。
ホープ・エッジ1つにフィン2枚という形。これが「ホープ・レイザー」だね?
《さぁ、フィニッシュはこれで!》
《おう!》
「うん!」
これも使うのは初めてだけど……訓練とかでジン君も使ってたし、
感覚はハルピュイアから教えてもらったから、きっと大丈夫。
《《「フォースチップ、イグニッション!!」》》
僕、イリアス、パンドラの3人の叫びに応えて、地球のフォースチップが飛来。
背中にあるチップスロットに差し込まれ、連動してアーマーのラインに沿って装甲が展開される。
それと同時、体中に力がみなぎるのを感じる。
みなぎる力は左右のホープ・レイザーへと流れていき、橙色の輝きを放つ。
輝くホープ・レイザーを握りしめ、赤いイマジンへと突撃し――
《アタックファンクション・グランドパニッシュ》
「グランドぉ、パニッシュ!!」
パンドラの機動力で一気に赤いイマジンの懐に飛び込んで、まず左手で思いっきり眼下の地面を殴りつける!
叩きつけられた"力"が炸裂し、噴き出した衝撃波に向けて右ストレート。
更に"力"を受けて、凝縮されたエネルギーが相手の懐で一気に炸裂。
吹き飛んでいく赤いイマジンを尻目に、僕たちは胸を張って宣言する。
《《「撃退――完了!」》》
「ぐあああああああああっ!!」
くすぶっていた分のエネルギーも炸裂し、大爆発。
赤いイマジンが消滅したことを、パンドラのセンサーとイリアスの感覚が知らせてくれた。
《――あっ、クレア!アレ!》
「アレは!」
イリアスの声で気づいたけど、今の攻撃で吹き飛んだ地面から、キラリと光る1枚のパネルが見えた。
色は黄色だけど……間違いない、マイクロンパネルだ!
すぐさまパネルを回収し、残るイマジンたちの攻撃を回避しつつ侑斗さんたちの方へ合流する。
「大手柄だな、クレア!残りは俺たちが!」
《《《こんな連中相手なら、プランティアブレイズを使うまでもない!》》》
「ジン君!」
しつこく攻撃してくるイマジンたちは、エネルゴンセイバーを持ったジン君がまとめて片づけてくれた。
いつも思うけど、その熱風攻撃ってすごいよね。
熱風っていう割に、普通の衝撃波みたいにいろんな敵を薙ぎ払うし。
でも、余波だけで結構熱いから、やっぱり熱風なんだなぁって思うんだけどね。
何はともあれ、マイクロンパネルも回収できて、よかった…。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「えっ、ウソ!?もう終わり!?」
「あちゃー、こりゃもうあきらめるしかないっすねぇ。
向こうは新戦力登場で勝ちフラグだし、変に撃墜されるよりは潔く撤退した方がいいっすよ」
なんか、イマジンとかいう連中に割り込まれたせいもあって、またしても出し抜かれたっぽい。
こうも何度も出し抜かれるなんて、このブラックアラクニア、悔いても悔いきれません、ダークコマンダー様。
ていうか、今回はやけに諦めがいいわね、タランス?
「あぁ、別に今回は負け戦でもかまわないんすよ。
今回出てきたあのパネル、最終的にはアタチたちの手に渡ってもおかしくないっすからね。
ムフフフフフ♪」
どういうことかしら…?
「やいやいやい!ジン・フレイホークとその愉快な仲間たち!
そのパネルのマイクロンを覚醒させたければ、このチラシの大会に出ることっす!
言っておくっすけど、これはアタチたちからの挑戦状でもあるっす♪
来るも逃げるもそっちの自由っすけど、逃げたらマイクロンは無条件でアタチたちのものっすよ。
そんじゃまた〜。パラリラパラリラ〜♪」
って、ちょっ、何言いたいこと言ってビークルモードになって逃げてんのよ!?
とりあえず、ファーヴニルは死んではいないし、回収は済んでるけど……って、あぁもう、待ちなさいったらぁぁぁ!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
…………なんだったんだ?
急に(主に俺に対して)挑戦状を叩きつけたかと思いきや、アッサリと撤収していったタランス。
まぁ、既に転送で逃げられた後なので、ひとまずそのチラシとやらに目を向ける。
総合戦闘技能大会「アレス」
魔導師、能力者、トランスフォーマーなど、参加者の種族や戦闘スタイルは一切不問
最大3人までのチームで行うトーナメントバトルを勝ち抜け!
優勝チームには、近日話題沸騰のマイクロンパネルを贈呈!
火星の軍神の名を冠する栄光をつかむのは、あなたかもしれない
…………こりゃまた、良くも悪くも賑やかそうなイベントを振ってきたなオイ…。
ていうか、もしかしてプレダコンズからも誰か出るのか、アレ?
「タランスが"無条件で"とか言ってたから、多分そうだと思う。
それと、この写真」
そう言ってトラルーが示したのは、チラシに載ってる1枚の写真。
優勝賞品になってるマイクロンパネルなんだろうが……ん?
今クレアが持ってるパネルと、このパネル……色が黄色!?
「神器のマイクロンだよ。間違いなく」
トラルーが断言するってことは、スターセイバーと同じルーツの……。
「"星の剣"と対をなす"銀河の盾"。
その防御力は絶大で、他の神器の攻撃すらも無効化することができる。
正式名称は、"コスモテクター"っていうんだけどね」
なるほどな、プレダコンズとしても神器は重要みたいだし、手を引く理由はないってか。
それに、大会で俺たちと当たって、倒してしまえば、今回回収できたこのパネルもゲットできるってワケだ。
……俺たちが会場にパネルを持ち込まないってことは考えてないのか…?
「おそらく、マイクロン同士の共鳴反応を利用する気なんだろう。
こっちで初めてマッハたちがスターセイバーにエボリューションした時を覚えてる?
あの時、基部となるマイクロン……アレでいえばシャトラーになるけど、その呼びかけで残り2体も集まった。
つまり、優勝賞品になってるあのパネルのマイクロンがそのタイプなら、他2枚も……」
「共鳴反応で、直接手を下さなくても手に入れられる……」
「そういうこと。
なんにせよ、オレたちには、大会に参加してパネルを手に入れる以外に、プレダコンズを止める方法がないってことだ」
トラルーの指摘でみんな気づいたみたいだ。クレアの言葉が、きっとタランスたちの本当の目論みなんだろうな。
スターの言うとおり、大会には参加するしかなさそうだ。
けど、メンバーの方はどうするんだ?申し込みの締め切りまでに日数があまりないんだが…。
《心配せぇへんでええよ、ジン。それはこっちでなんとかしたるから》
そう言って通信をつなげてきたのは……はやて姉!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて、僕は一旦ジンたちとは別行動。
プレダコンズとの戦闘で遅れちゃったけど、スカイクェイクと一緒に客人のお出迎えです。
……だけど、スカイクェイクによると、その客人が地球の流氷地帯でひと暴れしたらしい。
あと、マスターギガトロンがブリザードセイバーなるものを披露し、こなた達を追い詰めたところで乱入。
奪うまでには至らなかったものの、トドメを刺される前に撤退させることには成功。
現在は、ブリザードセイバーで氷漬けにされてしまったこなた達の救助……ってところらしい。
まぁ、救助っていっても、ぶっちゃけアイスピックなんだけどね?
あの子――ノーザンには、炎属性の技がないからねー。というワケで、パルスたちもつれて現場へ急行。
転送中にスカイクェイクと合流して、流氷地帯への転送完了待ち。
「しっかし、よもやパルスたちのリカラー軍団もいようとは」
「言ってやるなよ……」
他愛もないおバカな話をしていると、転送完了。
周りは、吹雪の吹き荒れる流氷地帯。すぐ目の前に、問題の方々がいた。
「おーい、ノーザン」
「……あ」
「こうして直接顔を合わせるのは初めてだな、恐怖大帝スカイクェイクだ」
アイスピックに没頭しているノーザンを見つけ、声をかける。
ひとまず作業を中断してこっちを向くノーザンに対し、スカイクェイクが自己紹介。
あぁ、そういえばスターからの連絡でしか知らなかったんだっけ。
…………かくいう僕も、こうして直に顔を合わせるのは初めてだったりする。
実は、僕ら精霊一派の中でも、ノーザンと直接の面識があるのはスターだけ。
なら、なんでスターが迎えに行かないのよ、という話になるのだけど。
身もフタもない言い方をさせてもらうと、スターと彼女の関係は僕とレルネの関係と同等であるといえる。
まぁ要するに、スター絶賛ラブな妹キャラってワケですよ。
で、そんな子にあこがれの騎士様を向かわせたらどうなると思う?
一切の迷いも躊躇もなく、問答無用でロリっ子ロケットハグハグが炸裂して立ち往生するにきまってる。
え、ジェラシー?そんなものはないですよ?ないんだよっ!!
「なら何故見えない血涙を流す」
「流してないよっ!!」
流す筈がないんだ!
僕にはもう、イテンっていうロリっ子ロケットハグハグ要員がいるんだから!
流すワケがないんだよぉっ!!
「……?」
「あぁゴメン、いきなり取り乱して。
話を戻すか、うん」
「改めて初めまして。
ノーザンって言います、よろしく」
「こちらとしては大きな恩もあるしな、よろしく頼む」
「スターの話だと、今日からこっちに合流するってことらしいけど」
「うん。
力を貸してほしいのと、世界のお勉強をしてもらいたいのとで、ミッドに来いって」
「しかし、それならなぜいきなり地球のこんな流氷地帯に出てしまったのだ」
「それは……」
気を取り直して話をしていると、ノーザンの後ろからひょこっと姿を見せた1体のマイクロン。
スターからは彼女がマイクロン持ちだなんて聞いてないぞ?
「こっちにくる途中で出会った。
名前はサンダー。私の、パートナーマイクロン。それと、デバイスのガメッセ」
《お初にお目にかかります、ガメッセです。主共々、お見知りおきを》
じゃあ、スターも……って、それはないかなぁ。
多分、スターにはメールか何かで真っ先に報告してるだろう。
「なんでわかったの?」
「うん、君と同類の男の娘を知ってるからねぇ…」
「?」
まぁ、取りあえず、要救助者をいい加減氷から解放しないとね。
というワケで、パルス、レーザー、ビーム、頼むよ。
《何故にお嬢たちはいないのだ?》
《いーじゃん、別にアレってノリの問題だったんだしさー》
《ビーム、それ身もフタもないから》
いやね、正直な話、こんな極寒の地で耐えられるような防寒装備がジャンク屋にはないんでね…。
残念ながら、ローリたちは連れてこれないのだよレーザー君。
《むぅ、それは仕方ない》
《早く終わらせて帰ろうよー》
《じゃあ、やりますか》
パートナー不在のところ悪いねー。
それはともかく、パルスたちにエボリューションしてもらい、エネルゴンセイバーを握りしめ、意識を集中。
地面になってる流氷まで溶かさないように……一閃!
「……死ぬかと思った…」
「寒い寒い寒い寒い寒い寒い」
「九死に一生ですね…」
熱風攻撃で氷を溶かし、こなた達を解放。
うん、パルスたちを連れてきたのはこの為。僕らの中で最も効率のいい炎熱攻撃手段となるのがエネルゴンセイバーぐらいだから。
"獄炎激流乱舞"が使えることから、ビコナも炎属性の魔力を扱う技量はあるのだけど、さすがに猛吹雪の中じゃマッチ程度の効果しかないと本人が辞退。
……炎と水っていう、相対する属性の魔力を同時に扱えるからこそ、単体の魔力出力は弱いってことなのかな。
「……さて、氷から解放されて早々に悪いのだが、お前たち全員に参加要請が出ている案件がある」
そんなことを考えてたら、唐突にスカイクェイクが切り出してきた。
あー、もしかしてアレのことかな。
「先に柊つかさにも問い合わせてみたが、参加可能とのことだ。
何に参加してもらうのか、ということだが、まぁ一種の闘技場のようなものか」
「アレでしょ?タランスから突き付けられた挑戦状」
「そうだ。次元世界対抗、総合戦闘技能大会「アレス」への参加。
大会の優勝賞品はマイクロンパネルとなっており……」
「そのパネルは、神器の1つ"コスモテクター"の一部。
プレダコンズは勿論、ヘタするとディセプティコンからもメンバーが出てくる可能性がある」
「そこで、八神はやてを筆頭にチーム分けを行い、アレスに出場。
試合を勝ち抜くという形から、修行の一環にもなるが、最終的に優勝することでマイクロンパネルを回収するのが目的になる」
スカイクェイクと僕とで事情説明。
とどのつまり、アレスに出場する為のメンバーを集めてるってこと。
六課だけでなく、僕ら精霊一派も出るし、もしよければ、こなた達カイザーズにも出てもらいたい。
マイクロンパネルを回収するチームは、多いほどいいからね。
参加すること自体がプレダコンズの計画にとってプラスに働く可能性もないワケじゃないけど、しないよりはマシだろう。
参加しなければ、何らかの手段をもってプレダコンズがパネルを回収、攻勢に出てくるかも。
パネルの中身のマイクロンにもよるけど、アレが"スピン"だったら、大変だからね…。
「でもさ、結構面白そうじゃん。
パネル云々については抜きにしても、いい修業とか腕試しにもなるし」
「そうですね。JS事件がキッカケで、私たちも腕をなまらせていい身分ではなくなってしまいましたし…」
「修業して、鍛えて、柊たちを困らせるヤツらをコテンパンにしてやるぜい!」
「まぁ、マスターギガトロンにまた狙われないって保障もないしね…」
「…………しょうがないわね、つかさも出る気みたいだし、私も出るわ」
「ありがとう、助かるよ」
「本当に武者修行にもなるというところが複雑な気分にさせるがな」
こなた、みゆき、みさお、あやの、そしてかがみの順に決意表明。
現場にいないつかさも含め、カイザーズ+αも参戦決定。
そういえば、ニトロスクリューとブレイクアームの子たちは?
「アイツらには、泉こなた達とは違って自分のデバイスがない。
技能的にはともかく、戦力的な問題で参戦は不可能だ」
あー、だからゴッドオンしてる状態でしか戦闘してないのか。
さすがにそれじゃコレは無茶ブr
「じゃあ、作ってもらえばいい」
『……は?』
ノーザンが突拍子もないことを言いだした。
……まさかとは思うが、聞こうか。
「…………レルネに働いてもらう、とかいうつもり?」
「うん」
即答したよこの子ぉぉぉ!
そんでもって、やっぱりかぁぁぁい!?
(第19話に続く)
<次回の「とたきま」は!>
ノーザン「レルネ、再開早々悪いけどデバイス2つ作ってくれる?」
レルネ「簡単に言ってくれますね」
トラルー「いくら優秀な設計図と素体にちょうどいいテスト機があったとはいえ、
一晩もかからずパワードデバイスを作り上げるような子のセリフじゃない」
レルネ「いくらボクでも、デバイス1つにつき一晩はかかるんですよ?
トラルーたまも容赦ないですね」
トラルー「デバイスを一晩で作れる時点で自分が特殊例だってことに気づこうか。
それと、本当に容赦のない人っていうのは、あぁいうのをいうんだぞ?」
ジュンイチ「ほらほら!そんなトロトロした攻撃で次元世界の覇者なんぞ狙えるかぁっ!!」
ジン「目的ずれてるー!あくまでマイクロンパネルの合法的確保ですからー!!」
ジュンイチ「どっちみち優勝しなきゃダメなんだから、死ぬ気でこのオレの攻撃全部無傷でさばいてみせろ!」
恭文「試合開始した瞬間にギガフレア三連ぶちかますような人はあなたしかいないからぁぁぁっ!?」
ジュンイチ「なにおう!?そんな甘ったれた精神でバイ○・ハザードを生き残れるなんて思うなよ!
せめてこのサタニックフォームの砲火の中でも無傷でいられるようになれ!!」
ジン&恭文『どんな無理ゲーだぁぁぁぁぁっ!?』
レルネ&ノーザン『なるほど』
あずさ「第三者から見たお兄ちゃんの立場がどんな感じか、どんどん分からなくなる……」
トラルー「ある意味、反面教師としてはとことん使い勝手がいいとは思う」
第19話:鍛錬と戦力増強と武勇集結
あとがき
今回はやけに完成までに時間くった感じがある第18話です。
時間がかかっただけに、いろいろやりたかったネタを実現できてスッキリした感じもありますが。
……まぁ、若干R-15くらいの指定がかかりそうなネタも混じりましたけども(マテ)
クレアの更なるパワーアップ「レイ・グランディア」のお披露目からフィニッシュ、ブリザードセイバーの本領発揮、
あと新キャラ・ノーザンの活躍が今回の大まかなメイン。
次回以降の主軸となるイベント「アレス」への前哨戦的なお話にもなっています。
というワケで、次回からは総合戦闘技能大会「アレス」編……の前夜祭編に突入。
まずは今までスポットを当てられそうで当てられなかった、あの二人の強化イベントが。
あと、大会イベントの通過儀礼、新キャラ・ラッシュも始まります。
そんな中でも、マイクロンパネル争奪戦は続きます。マイクロンは神器だけじゃないのぜ!(ぇ)
……今から既に、収集をつけられるのか疑問な自分(マテマテ)
管理人感想
放浪人テンクウさんからいただきました!
格闘技大会……なんて素晴らしくジャンプ王道な超展開。
オールスターでお祭り騒ぎな展開になりそう。生身では無力な若干名にも強化フラグが立ったし、次回の新キャラ大行進に負けないインパクトを期待しています。
そしておじいちゃん、あなたは御存命ならきっとジュンイチや恭文と心友になれたことでしょう。あなたのセンスは素晴らしすぎる(ニヤニヤ)。