レルネ「第2回、『レギュラーメンバーのドコナニ』始まりでーす」


 プロト「前回の大きな動きは以下の様になっております〜」








 1:トラルーやスターの旧友である、アレックスとポラリスが「ヤタノカガミ」で合流。

   事情聴取も兼ねて、トラルー達と一緒に機動六課へ。



 2:クレア、イリアス、パンドラ、ひより、みなみは、

   それぞれの武器や能力を活かしてアウゲイアースたちを撃破、ダークバトルに勝利する。



 3:スバルとティアナが、ブライとルアクの2人と交戦。

   苦戦するも、スバルたちが勝利を収める。



 4:管理局の施設へ、デビル三銃士の実戦試験を兼ねてブラックアウトが強襲。

   三銃士がノーヴェたちを圧倒するが、デバイスを装備したハルピュイアとレヴィアタンが乱入し形勢逆転。

   戦闘継続中。



 5:諸事情により、説明場所を六課から聖王教会へ移し、トラルーたちも移動。

   新たにステンスらを加えて、トラルーの事情説明開始。












 レルネ「こんな具合ですね。

     今回はどう動くのでしょう。楽しみですね〜」


 プロト「(ただ、自作デバイスの勇士を早く見たいだけなのでは…)」


 レルネ「それでは、第21話をどうぞ!」








































































 「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






 「とある旅人の気まぐれな日常」






  第21話:古代戦争と死せる英雄と凶戦士





































































 デビルブライスターたちが新たに放った3種のビーダロイド弾が、ハルピュイアとレヴィアタンに迫る。


 二人はまず散開して、それぞれを追ってきたヘビとナメクジを迎撃。


 三銃士も襲い掛かるけど、真っ向勝負は避けて距離を取り、ビーダロイド弾か三銃士のどちらかと戦えるポジションを保つ。












 「ウェンディ、援護射撃狙えるか?」


 「サジタリウスをもってすれば、朝飯前っスよ!」


 「やっちゃって!」












 自分の"最後の切り札ラストカード"であるサジタリウスを構えて、ウェンディが援護射撃。


 ホント、凄い精密射撃だよね。ハルピュイアたちを避けて、正確に三銃士とビーダロイド弾だけを狙ってる。


 あっちもあっちで手練れなのか、ことごとくかわされてるけど、無駄にはならないよね。










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 「さて、改めて話すとしようじゃないか。

  マイクロンについて。それと、ここに来る本来の案件であったアレックスとポラリスについて」







 
 聖王教会にて説明開始、別な位置に設けられた椅子に座りながらトラルーがそう持ちかけてきた。


 そう、今回ここへ来たのは、古代ベルカに関する情報がかなり残されているこの聖王教会というバックアップを得る為。


 このバックアップを得られないと、説明にどうしても不備が出てしまうんだ。


 マイクロンについてはオレもよく分からんが、アレックスとポラリスについてはドンピシャだしな。






 ちなみに、この場にいるメンバーって意外と多い。


 まず双方に通じているオレとトラルー。


 マイクロンサイドでアレクサ、ローリ、バド、コビー、カオスプライム、ベクターメガトロン。


 そして事の発端でもあるウィーリー、バンク、アーシー。


 古代ベルカサイドでアレックス、ポラリス、ビクトリーレオ、フォートレス、部隊長。


 あとはゲストでリティ、レクセ、ステンス。特にレクセとステンスは古代ベルカ関係にも一枚かんでいるらしい。






 「まずはマイクロンの問題からいこうか。

  先ほど、外部からの影響でその姿を変える者もいることは教えたよね」


 「アーシーたちは、そのケースに入る、と」


 「けど、この3体は更に特別なケースといえる。

  何しろ、マイクロンパネルが宇宙に流れていった当時、霊子生命体ソウル・ファクターは発見されていなかったからね」


 「となると、当時も他に方法というか、原因があったってことか」


 「そう。周辺にある乗り物などをスキャンして目覚めるタイプ、

  あとは外部から直接スキャンデータを送られ、それを元に新たなボディを構築して覚醒するタイプ。

  これは元の時代でベクターメガトロンがやっていたことでもある」


 「いかにも。もし今後、火器を備えた軍用機などに変形するマイクロンを見つけたなら、

  そやつらは儂が一度覚醒させ、ユニクロンとの戦いの後に新天地へ旅立った連中である可能性が高い」










 トラルーからの説明に、アレクサ、ラッド、ベクターメガトロンが補足。


 で、軍用機に変形するタイプってかなり希少で、元からそういうボディであるマイクロンって殆どいないんだよな?










 「スター正解。全くいないワケじゃないけど、かなりの希少種だ。

  モチーフの問題で、元から武装化されたボディを持つマイクロンもいないワケじゃない。

  特に、ビークル、ロボット、ウェポンの3種に変形する"トリプルチェンジタイプ"はその類となる」


 「つまり、特に今の時代のパネルからじゃ、武器がないマイクロンが出るのが当たり前ってことか」


 「元々そうなんだけど、まぁ間違いじゃない」


 「儂がスキャンデータを送ることなく覚醒すれば、軍用機以外のものがモチーフである者もおる」


 「……まぁ、な」











 ステンスの解釈にトラルーが補足しつつ、ベクターメガトロンがカオスプライムを見やる。


 浅からぬ関係だとは聞いているが、二人には何かあったのか?











 「……俺は当時、ベクターメガトロンとは別にマイクロンパネルを獲得し、独自に覚醒させた。

  スキャンデータこそ送ったが、そいつは速さを重視したF1カータイプだ」


 「それって、この子のことではありませんか?」


 「なっ…!?」














 カオスプライムが説明すると、騎士カリムが招きよせた1体のマイクロン。


 アレ?コイツって、確かリティの投げっぱなしジャーマン未遂で確保に至ったヤツだよな。














 「まさか……"グリッド"、お前なのか……!?」














 驚きに満ちたカオスプライムの声に、グリッドと呼ばれたマイクロンはうなずき、歩み寄っていった。


 おいおい、マジか。












 「このパターンからいくと、ベクターメガトロンにも同様のことがありそうだね」


 「……"バレル"か」












 おいおい、マジか。パート2。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 みなさんどうも、キャロです。



 ついさっきまでスバルさんたちとバトルしていた、ルアクって人とブライって人が六課にやってきました。


 どちらもリティさんにゆかりのある人だそうで。







 「何しろ、リティってボクたちのメダルを使い分けてどんな状況にも対応できるってスタイルだしね」


 「まぁ、今じゃそれ必要かってくらいには強いけどなー」









 ルアク、ブライの順。


 それにしても、二人の腰のそれ、どっかで見たような…。












 「あれ、キャロ聞いてなかった?

  リティさんたちって、"オ○ズ"のパラレルの存在だって言ってたじゃないか」


 「あ、そうだっけ」


 「そういうこった。

  ぶっちゃけちまうと、オレは猫系グ○ードのパラレル!デバイス名は"ラトラーター"だ!まんまだろ?」


 「ボクは昆虫系の方のパラレルだね。

  デバイス名は"ガタキリバ"、これもまんまだよね」


 「その系統のメダルのコンボ名ですもんね」










 エリオ君に言われて思い出しつつ、二人の話も聞く。


 でも、前になぎさんから見せてもらったお話に出てきた人と、性格が違いすぎるような。











 『まぁ、パラレルだし』










 即答ですか。











 「また珍妙なお供が増えたものだな、姫」


 「それをお主が言うでござるか、お主が…」


 「あと、オレら別にそこのピンクの嬢ちゃんに仕えるワケじゃないからな?」


 「もしかしなくても、六課に協力する人全部お供扱いしてる?」


 「リティが六課に絡む間は諦めるしかないと思うよー」


 「絡む間って…」












 ジークさん、ルアクもツッコんでるけど、片っ端から自分のお供にカウントしないでください。


 あとアイゼンアンカー、それってどういう意味?










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「……さぁて、いい加減"ソレ"の使い道について教えてもらおうかな?」







 ふむ、さすがにここまでくればバラしても問題はないだろう。






 さて、今私たち二人が見下ろしているのは、1つの長方形の培養カプセル。


 大きさはそれほど大きくなく、厚みを含めても全長約3メートル、全高約2メートル。人間1人が入るくらいの大きさだ。


 現在、リア・ファル、メディア、アムリタを筆頭に、内部の培養液の成分調整を繰り返しながら来たる時を待っているところだ。


 中の水分は、その独特な成分によって薄い桃色に変色しているように見えるが、正確には"中身"のせいだ。


 カプセルの中には、ファーヴニル達を作った時とはまた別な技術とブツによって生まれくる者が潜んでいる。


 内に秘める恐るべきエネルギーが、光となって漏れ出しながら。








 「読者サービスも結構ですが…」


 「分かっている、そうせかすな」








 ついでにもう1つサービスさせてもらおうか。


 読者諸君には、君のことも分からないだろうからな。










 「自己紹介ぐらい、自分の出番の時にするのに…」


 「その出番がいつ回ってくるんだって話じゃねーの?」


 「そうよ、私たちだって分からないってのに」


 「そうそう回らなくなるんだぞ、特に第3クールから」










 アムリタとメディアはともかく、リア・ファル。それは相当なメタ発言だ。





 ……というワケで、今の内に紹介しておこう。


 彼の名はアストラル。精神生命体の類だが、これがまた面白いことに、自ら"ユニクロンから生まれた者"と言い出したのだ。


 スノーホワイトな髪に黒い瞳、紺色を基調としたチェック柄のフード付きの上着に……ピーコックブルーのスパッツ。


 なんなんだ。ユニクロン生まれのヤツには男でもスパッツというお約束でもあるというのか?


 いやそもそも、現時点でユニクロン生まれの者なんぞ男しかいないが。


 ……それはともかく、外観はそんなところだ。小柄で、身長は蒼凪恭文よりも低いな。トラルー辺りと同程度か。


 おそらくはショートヘアーだろうが、いつみてもフードをかぶっているので判別できん。


 ちなみに上着は長袖で、裾のところは下の部分が開いている。素肌が見えるところからすると、中は半袖か。


 あと、黒い手袋と青い堅そうな靴も身につけている。










 「ご丁寧な説明と誰かしらが考えそうなツッコミコメントをどうも」









 そう言うな、考えそうなものなのだからな。


 あと、そのジト目が妙に怖いぞ。












 「いっそのことトラルーと一緒にダブルジト目でもやってやろうか…って、そうじゃない。

  本題逸らすな」












 いや、君が勝手に迷走しただけだろうに。


 まぁいい、話を戻すか。


 培養カプセルの中で目覚めの時を待つ"ソレ"の使い道について、だがな…。


 私の"目的"を知っているなら、君ほどの者であれば安易に想像できると思うのだが。













 「だからこそ聞いている。想像できるだけで、結論にはならない」


 「ごもっともですね」












 リート、君は持ち場に戻ったらどうだ。


 間もなく最終調整が完了する。そうなればあとは指定ポイントへ輸送、"解放"までの間は護衛しなくてはならない。


 忘れるな、"解放"するまでの間は防御力は無きに等しいことを。





 それと、アストラルの方の話だが…"解放"した時に明かすとしよう。


 エネルギー反応が大きすぎて、どうせ"解放"する前に機動六課辺りに察知されるだろうからな。


 デモンストレーションにはもってこいだろう?












 「デモンストレーション…ね。何をやらかすんだかね」











 少しは楽しめると思うぞ?








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「あぎゃーっ!?」


 「ぱらぱーっ!?」


 「げしゃーっ!?」








 やった!


 ハルピュイアとレヴィアタンがうまく牽制している間に、ヴィータちゃんがギガントシュラーク。


 三銃士をまとめてブッ飛ばして、地面に叩きつける。










 「ま、まだビーダロイド弾が残ってるでマント!」


 「ちょっ、うあっ!?」








 デビルブライスターの声と共に、3体のビーダロイド弾が奇襲攻撃。


 まともに攻撃を食らい、ヴィータちゃんが墜落。そのまま今度はハルピュイアたちに向かっていくけど…。










 「はい残念、ソレはもう返品しちゃうわ」









 そう言うと、レヴィアタンがマナナーン装着中の槍を高速回転させる。


 すると、いきなり水流が発生してビーダロイド弾を三銃士の方へ押し流しちゃった。


 ……やっぱり、あのデバイスたちはブーストデバイスなんだ。


 それも、持ち主専用にすることで、汎用性を犠牲にして徹底的にブースト力を引き上げてる。


 ジュンイチさんの"最後の切り札ラストカード"みたいなシステムだね。










 「持ち主に合わせて徹底特化、そんなこと考えるヤツが他にもいるモンなんだな」


 「あ、おかえりヴィータちゃん」


 「うー、私たちいいトコなし決定?」


 「ヴィヴィオに合わせる顔が…」


 「もうあきらめた方がいい気もするけどなー」









 三銃士にブッ飛ばされてた4人も復帰。これならブラックアウトの相手もできるね。









 …で、なんか吹っ飛ばされながらビーダロイド弾同士で異変が。


 お互いのお尻や尻尾にかみついて、円になっちゃった。











 「どーなってるっスか?」


 「ウェンディ、前にチンク姉が言ってたろ?

  ヘビ、カエル、ナメクジの3匹ってな、すっごく仲が悪いんだよ」


 「あー、確か"3すくみ"とか言ってたっけ」









 ……チンク、いろーんな教育してるんだねー。


 セインが解説してくれた通り、あのビーダロイド弾のモチーフはすっごく仲が悪い。


 その辺まで反映されちゃって…











 「マズイ、ビーダロイド弾同士が仲間割れでゲス!」











 デビルポセイドンが言ったようになってる、と。











 「さっさと決めるぞ、レヴィアタン」


 「はーい」


 「よっし、ここはこの鉄槌の騎士も…」







 『いえ、今回は素直に引き下がっていただいた方が無難ですから』


 「どーゆー意味だっ!?」







 「あー、もしかして連続全体攻撃?」


 「そーゆーことよ」










 トドメ役の3人目に名乗りを上げたヴィータちゃんが却下された。


 セインの予想をレヴィアタンが肯定したところを見ると…確かに下がってた方がよさそうだよ?














 『フォースチップ、イグニッション!』












 二人の叫びに応えた、ミッドチルダのフォースチップ2枚が飛来。


 それぞれセテフとマナナーンに設けられているチップスロットに飛び込む。


 それと同時に機体のラインに沿って装甲が展開。多分フルドライブモードだと思う。


 フォースチップから解放された"力"がどんどん武器に集中して…













 「まずは私からいかせてもらう!」




 《アタックファンクション・ストーミングセイバー》











 先に飛び出したのはハルピュイア。


 解放された"力"が風となって荒れ狂い、彼女自身も高速回転。


 そのまま三銃士の懐に飛び込んで、連続回転切り。


 風がやむと同時に爆発が起きて、三銃士が吹っ飛ぶ。












 「これもくらっておきなさい!」




 《アタックファンクション・ハイドロカスケード》













 レヴィアタンが槍を構え、三銃士の方へ飛び込む。


 距離はあけているけど、だからといって遠すぎず。ミドルレンジぐらいの距離。


 フォースチップから解放された"力"が槍の先端に集中、光弾を作り出す。


 その光弾もろとも槍を突き出して…光弾から津波のような大きな光が発生、三銃士を一気にブッ飛ばす!












 「初登場でこうなるでゲスかー!?」


 「みんな一緒に動くと失敗するマントー!」


 「アタシたちってチームワークがなってないのねー!」













 口々に叫びながら、ウチの暴走コンビのようにお空の星となる三銃士。


 うん、やっぱりあの二人と同類だねアイツら。













 「おっと!

  どうやら潮時のようだ、さっさと引き上げるとしよう」


 「ちょっとー!まだ終わってないっスよー!」













 後ろに控えていたブラックアウトは、ハイドロカスケードの光から逃れてそのまま離脱。


 いつもなら連れてそうなドールもいないし、今回はホントに三銃士の実力を測る為に襲撃したってところかな?






 でも、これは少し考えないと。


 いくら暴走コンビと同類とはいえ、逆に言えば油断してもいけないってことなんだから。


 あずさちゃんたちを1発でブッ飛ばすほどのパワーに、あのビーダロイド弾。


 どうやらその場でスキャンするものによって変化するらしいし、場合によってはヤバいかも?











 「フフフ……これでダーリンとの距離がまた1歩縮められるわね!」


 「……そうか…?」












 ……まぁ、ジンはまだまだ苦労の種が尽きそうにないみたいだけど…。










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 シスターシャッハって人が出してくれた紅茶を飲みつつ、


 隣で相変わらずの調子でふんぞり返ってアイス食ってるステンスの方を見る。








 「なぁステンス、お前やレクセは古代ベルカにも関わってるって言ってたけどさ、実際はどういうことなんだよ。

  スリアは勿論、ルアクやブライも黙秘を貫くだけで分からないんだ」







 グラティについてはそういう知識問題で出る幕なんてないだろうし。


 あ、スリアにグラティ、この二人については合流もしくは目撃イベントがあった時に。








 「……お前、さり気なく毒舌だよな…。

  おいトラルー、マイクロンについては大体分かった。古代ベルカの方に話を変えろ」


 「貴様、トラルーに対してなんという口をむがもご」


 「僕の性格、完璧に忘れてるだろ……そこにこだわるつもりは一切ないと何度言わせれば……フゥ…」











 ステンスの言い方にいきなり腹を立てたポラリスがダンッ!と机をたたいてつっかか……ろうとしたら、


 どこからともなく布を取り出したトラルーが彼女の口を封鎖。しかもコブラツイストで。


 口ぶりからすると、一緒だった頃にも散々似たようなことやってたんだろうなぁ…。


 溜息が妙に重たいんだけど。












 「さて、茶番はこれくらいにして、お望み通り古代ベルカ関係に話を移すか」


 「んーっ!んーっ!!」


 「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」













 トラルーの横で、布で完全に口を封じられてポラリスが苦しそうにしてるけど、


 アレックスはスター共々助ける気はないらしい。いいのかな。


 布がキツくしめられてるのか、彼女が涙目なんだけど。













 「そういえば、笑顔の裏で圧力を感じたなぁ。パワーの行先は主にトラルーの指」


 「常習犯すぎて呆れてたんですかねぇ…」


 「はいそこ、いつまでも茶番引っ張らない」


 『ア゛ッー!!』












 スターとアレックスにトラルーがハリセン一閃。どこから出したのやら。












 「さて、まぁ古代ベルカ関係とは銘打ってるけど、主にアレックスとポラリスの過去ね。

  この二人の話となると、時代は古代ベルカ戦争時代にまでさかのぼる」


 「時系列すら曖昧で、トラルーやスターが本当に戦線に混ざりこんでいたのかどうか判別しきれないですけどね」


 「でも、見てきたものはまさしくここの資料にある古代ベルカ関係、ひいてはロストロギアと同じものだ。

  それはトラルー共々保障するぜ」


 「おっと、オレたちも加えてもらうか。顔見知りではあるしな」


 「別に機動六課に来た時が初めて会った時というワケではなく、本当に古代ベルカ戦争の時代に出会っているのだ」













 トラルーの話に騎士カリムが苦笑するけど、スター、ビクトリーレオ、フォートレス教授の3人がフォロー。


 尚、本人たちの話によると、GBH事件以降に加わったビッグコンボイやリイン、八神さんを除くヴォルケンズ全員と既に面識があったとか。


 ホシケン騒動のあまりもの広まりっぷりって、もしかしてそのせい?












 「ううん、アレはきっとノリが良すぎてすぐに広まったんだよ!」


 「そうだね、こうして前回の終盤ぐらいからどこからともなく湧いて出た君みたいにね」


 「しくしくしく…」












 そ、そういえば。イテンって同行メンバーのリストにはなかったハズなのに。


 どうやって聖王教会に入り込んだんだろ。












 「イテンのIS・カリーシュダイブだ。

  かまいたちなんて追加効果があるが、元々はセインのディープダイバーと同じく、壁や床なんかをすり抜けられるんだよ」


 「なるほど、その能力を使って聖王教会のどっかの壁から忍び込んだってワケか」


 「壁じゃないもん、天井裏だもん」


 「……ほほう……天井裏からですか……」


 「アッー!」











 スターからの説明にビクトリーレオが言うけど、そこへイテン本人が抗議。


 ……あ、いらないこと自白したイテンがシスターシャッハにつまみ出された。


 なんか両手にトンファーみたいなの持ってたけど、大丈夫かなぁ…。












 「お前がいちいち気にするな、アレは死亡フラグだ。放っておけ」


 「シャレになってないって!」














 そんな軽々しく仲間相手に死亡フラグとか言うなよ。


 ホントに死んじゃうワケじゃないんだから…。















 「茶番終わり終わり!いつまでたっても話できないじゃないの!

  とにかくだ!アレックスとポラリス、この二人も、実は古代ベルカ戦争で知り合った存在なんだ。

  しかもこの二人、今の記録によれば"飛王ひおう""鎧王がいおう"の通り名で伝わっているらしいね」


 「ですから、なるべく服装ぐらいは変えた方がいいかなーとか考えてたんですけど、

  ポラリスがその辺に意識を向けていないものですから…」


 「だから騎士カリムやビクトリーレオたちには1発でバレたんやな。

  アレックスも苦労しとるんやねー」


 「あぁいえ…」












 あぁ、そういえば初対面の筈なのに当たり前みたいにアレックスやポラリスのことを呼んでたよね。


 古代ベルカに深くつながってる人からすれば、有名人なのかも。












 「で、彼らは彼らで必死に戦ってたワケだよ。相手については触れないでおくけど。

  ただね、その戦争の中で、それぞれ守りたいものを守る為に戦火の中で散っていった」


 「―っ!?」


 「それに、元はといえば二人も人間だ。たとえ古代ベルカ戦争を生き延びても、

  今の時代になる前にとっくにお亡くなりになってしまう筈なんだ。寿命でね」


 「シグナムたちが今の時代でも生きておるんは、夜天の書の守護騎士プログラムであるからや。

  ホシケンたちも、今となってはそこは変わらへん」


 「トランスフォーマーでも、普通なら年を取るからな」















 ということは……どういうこと?















 「まぁつまり、何らかの理由でこの二人は転生したワケだ。

  それも、元の姿を保ったままで」


 「ただ、転生してから既に50年ほどは経過しています。

  転生して気がついた時には、全く知らない場所で、後ほど全く別の次元世界の中だったと分かったんです」


 「当初からミッドやベルカでいう次元世界の概念を知っていたから、そういう発想に至ったんだと思う。

  あと、まだ精密検査とかはしてないけれど、僕の感覚から言わせてもらうと、精神生命体になってる」


 「でしょうね…50年経っても一切外観上の変化がないのがその証拠かと。しかも…」












 トラルーと変わりばんこに説明してたアレックスが一回息をついて、それからまた喋り出す。











 「この転生には、プライマスが関与しているんです」



 『プライマス!?』











 ちょっ、プライマスって確か、トランスフォーマーの創造主っていうあの人(?)でしょ!?


 そんなこともできるの!?











 「なるほど……プライマスなら納得だ。

  我らトランスフォーマーの父ともいえるプライマスならば、あるいは…」


 「精神生命体ってことは、オレたちみたいに肉体という名前の入れ物なんていらないからな。

  プライマスぐらいになれば、そういうこともできるんじゃないか?」


 「対となるユニクロンが、暴発とはいえできたんだ。

  プライマスに同じような芸当ができても別におかしくないよな」














 フォートレス、ビクトリーレオ、スターの順。


 あぁ、言われてみれば確かに。神様だもんね、あの人(?)。


 スターの発言については……トラルーのことを言ってるんだろうなぁ。















 「で、アレックスは"飛王"として、古代ベルカの魔法文化を。

  ポラリスは"鎧王"として、古代ベルカの機械技術を。

  自分たちで軍を率い、筆頭となって保全に努めた。戦火で失われることを恐れたから」


 「……だが、不覚にも間違いではないのか、そう思ってしまった」


 「あまりにも高度に発達しすぎて、発展に対する欲望に飲まれ、戦争になってしまったと思い始めたんです」














 あ、ポラリスが自力で復活した。普通にトラルーの後に話し始めるけど、誰もツッコまない。


 いや、どう考えたってその辺をツッコめる空気じゃないでしょ。














 「そのキッカケは、今でいう生物兵器にあった。

  激化する戦争の中、"冥王"イクスヴェリアを筆頭にしたグループが兵器技術を発展させる中で、生物兵器という形を考えついた。

  既に戦闘で重傷を負い、死線をさまよっていたところを回収された一人の兵士が、その実験体にされた。

  それも、人間とはまた違う素体、スターやカナヤゴさんみたいな姿の者というケースで」


 「……ただ、その実験体にされた兵士は、ポラリスの部下。

  しかも、ポラリスはおろか、イクスヴェリアからさえ許可を取らない内に実験が始まり、それがそのまま悲劇の引き金になった」


 「実験自体は成功していたのかもしれない。

  様々な部分に重武装が施され、サイボーグとでもいうべき体となって、彼は私の前に戻ってきた。

  最初の内はいつもの彼のままで、変わらぬ態度で接してくれていたのだが…」


 「ある時、一発逆転の策として、飛王軍と鎧王軍の合同襲撃を敢行したんです。

  その作戦に彼も参加していたのですが……」











 ポラリス、トラルー、アレックスの3人が、入れ替わりで説明してくれる。


 まさに戦争中って感じの話だね。しかも彼らはいわゆる生き証人。


 なんかポラリスの表情が特に重たいままなんだけど…














 《部隊長、突然で申し訳ありません!緊急事態が!》













 そこへ、突然機動六課のグリフィスさんから通信が入ってきた。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 ふむ、やはりエネルギー反応が強すぎるな。


 これでは既に機動六課に気づかれている可能性が高いな。


 アストラル。ファーヴニル、リア・ファル、メディア、アムリタ、リートの5人が既に配置についている。


 先ほど説明した通り、"解放"完了までカプセルを防衛するように伝えておけ。


 完了後は速やかに撤退するなり、しばし高みの見物をするなり、好きにしていい。











 『了解。あと4分少々か…』










 メディアのゾーンメモリを用いて培養カプセルを転送、ミッドチルダのとある山間部に設置。


 ただし、何度も言うようにエネルギー反応が大きすぎるからな、護衛としてファーヴニルも含めた戦闘要員を可能な限り投入。


 総合管制役としてアストラルをエリア中央に配置し、最大出力でサーチをかけて警戒している。











 『予想通り、機動六課の者と思われる反応が接近中。

  数は……そんなに多くない』


 「適当に相手をしてやれ。あくまでもカプセルの防衛を最優先にな」


 『分かってるよ…』












 アストラルが戦闘態勢へ移行するのを尻目に、一旦通信を切る。


 あと3分……さて、一足先に高みの見物と洒落込もうか。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「らしくないですよ、ポラリス!

  確かに、心当たりはあるんでしょうけども!」


 「分かってるならそんなことを言うな!

  もし私の予想が正しければ、冗談抜きにミッドが破滅する!」










 グリフィス補佐官からの緊急連絡。


 それは、聖王教会から少し外れた郊外エリアにある管理局のプラント。


 更にそこから少し離れた山間部に突如謎のカプセルが出現。


 何かしらの培養カプセルであること、そしてそれが、太陽並みのエネルギーを放っていることが判明した。


 その話を聞いた途端、ポラリスが物凄い速さで飛び出してしまった。


 仕方ないので俺たちも出て、カプセルの件に対処しようということになった。


 時間はかかるけど、六課本部からも増援の手配はしているらしい。


 ただ、転送ポートの定期メンテナンスが入った為に移動に手こずってしまい、殆ど俺たちだけで対処するハメに。


 で、今のポラリスとアレックスのやり取りが起きていたワケです。




 ちなみに、カプセル対処組にはカオスプライム、ベクターメガトロン、ビクトリーレオ、スター、俺、レクセ、ステンス。


 そして先行しているポラリスとアレックス。


 トラルー、イテン、フォートレス、八神さんには、万が一聖王教会付近に敵が出現した場合に備えて居残りしてもらうことになってる。


 もっとも、イテンについては未だにシスターシャッハから説教をくらってるらしいんだけど。












 「……ここだ!」


 「って、何もねぇけど」


 「違う……おそらくはカモフラージュされているんだろう。

  光学迷彩か何か知らないが、熱源までは隠しきれてないけどな」


 「温度は6000℃……確かに太陽並みだな」


 「それほど巨大な熱源を、よくも今まで隠し通せたものだな」


 「ですが、今になってその熱源を露呈させるということは、おそらくそれを解放する気でしょうね」










 ポラリスが止まったところは、崖に挟まれたエリア。


 プラントからは一本道になっていて、真っ直ぐ走ってそのまま辿り着いた。


 俺やビクトリーレオは気づけなかったけど、スターの言葉に納得。


 カオスプライムもベクターメガトロンも、呟きながら既に臨戦態勢に入ってる。


 理由は多分、最後にアレックスが付け加えた部分だと思う。













 「ようやくのお出ましか、待ちくたびれたよ」














 どこから!?


 山間部ということもあって声が辺りに響いて、声の主の位置が分かりづらい…。
















 「初めまして、僕の名はアストラル。

  ワケあってプレダコンズの元で行動させてもらっている」













 アストラルと名乗ったのは、俺たちの目の前に突然現れた、チェック柄のフード付きコートを身に纏う少年。


 でもこの感覚、人間ってワケじゃないね。


 どちらかというと、俺やレクセ、ステンスたちと同類だと思うけど。














 「フッ、同類だけにすぐわかるか。

  いかにも、僕は精神生命体だ。太古の昔、ユニクロンによって生み出された存在さ」


 『っ!?』















 ゆ、ユニクロンに生み出された!?


 それって…














 《貴様、トラルーと同類だとでも言うのか?」


 「あぁそうさ。それも、僕の先輩にあたる人だ。今の内に言っておくと、面識はあるからな?

  トラルーは暴発事件の時に生まれたからすぐに行方知れずになってたけど」


 「どうやら、お前はユニクロンのしもべってことらしいな」


 「そう。トラルーはあの性格だしね、ユニクロンの思い通りに働くなんて思ってないさ。

  僕も別にアテもコダワリもなかったから付き合っていたに過ぎないし、しもべとはいってもフリーってところかな。

  まぁそういうことだよ、ステンス?」


 「……オレの名前を知ってるだと?」


 「名前だけじゃないさ。

  君たちの能力や武装、挙句の果てに戦闘スタイルまで、何もかも知っている」













 実体化したレクセやステンスの言葉をすんなり肯定するアストラル。


 でも、なんでステンスやレクセの、いや、俺たち全員のことを知ってるんだ?












 「これは実に簡単な話だよ。

  僕には、古代ベルカが作り上げた魔導書型大容量ストレージ"夜天の書"のようなデバイスがある。

  この"クヴァシル"には、これまでに起きたありとあらゆる事象、生まれ出ずる人物、存在する世界、全ての情報が記憶されている。

  これと精神リンクを行うことで、僕はその情報を瞬時に判別し適用することができる」











 クヴァシルと言って手を当てた、胸元の黒くて横長なひし形の宝石。


 あんな小さいものにそこまで膨大すぎる情報が入っている…らしい。












 「何をたわけたことをぬかしておる。

  そんな小さな宝石1つに、それほど大げさな量の情報を記憶できる筈がなかろう!」












 そう言いながら、ベクターメガトロンが右手に光り輝く剣を持って歩み出た。


 同時に、アストラルの周りから、ぞろぞろと人が出てきた。














 「プレダコンズの新入りどもか…。

  貴様ら小童どもなぞ、ひねり潰してくれる」


 「あぁ!?ルーキーじゃねえ!!てめぇが知らないだけでな、オレらだって戦闘経験ぐらい重ねてんだよ!!」













 報告にあった、アムリタ…だっけ。アイツがベクターメガトロンに食って掛かる。












 「ここにいるトランスフォーマーはガチでユニクロンと殺し合ってきた連中だが?」


 「すんませんっした!!」














 けど、スターのツッコミでいきなり撃沈。


 一瞬でキレイな土下座をした。


 とはいえ、六課においても要注意戦力としてマークはされてるらしいので、カオスプライムたちも武器を構える。













 「……時間か。

  まぁまぁ君たち、今回は別に大乱闘をしに来たワケじゃあないんだ。

  せっかくだから見ていくといい。こんな間近なんて、凄い特等席d」


 「そこをどけぇぇぇぇっ!!」


 「うわ怖っ」













 アストラルがセリフを言いきる前に、独特な形状をした二振りの剣を両手に握りしめたポラリスが突撃。


 ものすごい形相と気迫でアストラル…いや、彼が今立っているあのカプセルらしきものへ振り下ろす。













 「―っ!?」


 「まったく、穏やかじゃないなぁ。中身を見たワケでもないのに」












 けど、その斬撃はアストラルにすら届かない。


 いきなり現れた物体によって、完璧に止められてしまっている。


 薄い輪っかみたいだけど、浮遊してるってことは……ビット!?














 「おぉ、リティ君ご明察。

  その名も"チャクラムビット"。1枚1枚でも鋭利なカッターやビーム発生器として機能するが、

  複数が密集することで、強靭な防御フィールドを展開することもできる。

  そして、このチャクラムビットたちの制御を手助けしてくれるのが、今身に纏った"ビヴリンディ"さ」


 「……なるほど、バリアジャケット式のデバイスということか。

  ビヴリンディだけでなく、その大容量ストレージであるクヴァシルもな」


 「レクセ君ご名答。

  そして、おてんばのすぎるお姫様にはおとなしくなってもらおうかな!」


 「しまっ―」










 《アタックファンクション・フルビットバースト》












 瞬時に呼び寄せたフォースチップによって、アストラルのアタックファンクションが発動。


 ポラリスを弾き飛ばしながらチャクラムビットが分離。その全てが輝きだして……













 「迂闊なヤツめ!」


 「ていうか、あんなのアリか」


 「リートもさすがにビット使いは経験してないんだったかしら?」


 「ビット使い自体が今も希少で、今のところ当たったことがないですからねぇ」













 リア・ファルたちがのんきなことを呟いてる間に、無数のチャクラムビットがポラリスを滅多打ちにする。


 ビームで、チャクラム故のカッターで、全身を徹底的に痛めつけられる。


 それは一瞬で、あっという間にビットの集中砲火というトドメでポラリスがズタボロになってこっちに飛ばされてきた。














 「イグニッションを、一瞬でやりやがった…」


 「それにあの威力……まともにくらえばオレらでも危ない」













 ビクトリーレオやスターも戦慄。


 確かに、イグニッションという行為を一瞬で済ませるなんて、そうそうできることじゃない。


 多分、途方もない量の情報を収集するあのストレージデバイスが超高速でパワー制御をアシストしてるんだ。















 「トラルーとは何気に気が合うと思うんだ。血の気が多い人ってのは、嫌いだから」


 「いや、最初の攻撃から必殺技使うヤツの言うことじゃない」


 「それと、トラルーはトラルーで血の気が多い一面もあるぞ?」


 「オレなんか、この前の戦闘でぞんざいな扱いでギッタギタにされたしな」


 「異様に燃費が悪いですからねぇ。多分、それがいい感じに血の気を緩和させているのではないかと」


 「便利なんだか不便なんだか、よく分からないわね。

  あとファーヴニルについては、単に相手が悪かったって認識が広まってるわよ?」


 「マジか!?」














 ……もしかして、本当に戦う気なんてないんじゃ…。












 『バカか(お前/貴様/貴方)は!』










 なんか、大ダメージを受けたポラリスを除く味方一同から怒られた。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「しかし、何故ポラリスは急に飛び出したのでしょう?」


 「あのー、もう反省しましたから、ほどいてもらえませんかー?」


 「ダメです」


 「ふぇーんっ!」









 説教タイムが終わったかと思ったら、なんかどっかのSMプレイもビックリな縛られ方で拘束されていてみんなで唖然。


 シスターシャッハが、涙目のイテンをギッチリ縛り上げて戻ってきた。


 あの、武闘派シスターだって噂はかねがね聞いてたんだけど、そこまでいく?









 「あー、シャッハって結構おっかないからなー。

  なのはちゃんが初めてヴィヴィオに会った時とかなー」


 「何も知らない子供相手に問答無用でデバイス起動したという話ですか?」


 「そーそー」










 部隊長殿の言葉にフォートレスが付け加え、それによって急に赤面したシスターシャッハ。


 おいおい、マジですかい。


 まぁそこはともかく、質問に答えておこうか。











 「騎士カリム、古代ベルカ戦争において問題となった人物のデータとかってある?」


 「え、はい、確かにいろいろと人物の記録を記した書籍などもありますけど…」


 「なら聞いておきたい。あなた方は"凶戦士"についてご存知?」


 「"凶戦士"…ですかっ!?」











 お、血相を変えたってことは心当たりアリってワケですな。












 「……トラルー、まさか、あのカプセルの中身がソレとかいうつもりじゃ…」


 「可能性は高いんじゃないかな?

  有史以来、太陽並みのエネルギーを持つ生命体なんて未だにアイツしかいない。

  あのジュンイチでさえ無理難題なことだよ」


 「……ユーリプテルス、ですね」













 ビンゴ。バッチリ知ってたねぇ。


 さすがにあんなことをしでかしたら、記録に残らない方がおかしいけども。


 それに、アイツでもなきゃ、ポラリスが韋駄天もビックリな勢いで飛び出すはずがないし。


 あまりにも因縁深いのよ、あの二人って。














 「じゃ、通信で中断しちゃってたところの続きね。

  サイボーグ兵士となったユーリプテルスは、合同作戦に参加し、ポラリスと共に前線に出ていた。

  だが、敵側の仕掛けた罠にはまり、よりにもよって彼らの部隊だけが孤立してしまうハメになった。

  そこへ敵の追撃がきて、彼はポラリスを逃がす為のオトリになった。

  ポラリスも、彼を助ける為に戻ると約束したのだけど……同じ頃には戦線崩壊。

  アレックスが敵側の巨大質量兵器の群れによる奇襲攻撃で部隊ごと葬られてしまったらしい。

  当然、援軍を連れ込むこともできず、敵の更なる追撃。それでも、無理を押してポラリスと数名が強行突破。

  辛うじて兵士の元へ辿り着けたんだけど…」














 「その時彼は、全兵装を惜しみもなく使い、敵味方問わず殺し回っていた」














 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 「まぁ、無理もないのかな?

  何しろ、この中身の人ってポラリス殿下にとっては因縁の相手だもんねー」


 「そうだったのか!?」


 「まぁ、元となるコアを提供した張本人ですからね…知っていてもおかしくないでしょう」










 アストラルがポラリスを瞬殺した後、すぐにカプセルが動いた。


 彼の言葉にファーヴニルやリートが話す一方で、ハッチが開き、中から液体がこぼれていく。


 ということは……作業完了ということか。










 「さぁ皆さんお待ちかね、僕が提供したコアをプレダコンズが培養。

  元のデータに忠実に武装化した、まさに蘇る凶戦士!

  古の時代にさえ"暴走凶戦士"の異名を欲しいがままにした者、ユーリプテルスよ!」













 液体がなくなり、蒸気が晴れていくと……ヤツはいた。


 大きさは人間の大人と同程度だが、一頭身という体格のせいで妙に大きく感じる。


 まだ眠っているのか、特に動きは感じられないが……かなり武装化されているようだ。


 そして何より、有無を言わさぬプレッシャーがヤツから発せられている。

















 「今こそ甦り、破滅の歴史を記せ!!」

















 アストラルからの言葉に反応したのか、全身から光が放たれ、変色した。


 全身灰色だったのが、どこぞやのフェイズシフト装甲のように変色し、青を基調とした赤と黒のカラーリングへと変化した。





 外観は……どこの海サソリ型ゾイドだよ。


 露出している部分から辛うじてオレやカナヤゴさんと同類なタイプだということは確定した。


 両手にはブレードとハサミが付いた篭手。アンバランスで余計にデカく見えるなー。


 オレとカナヤゴさんでお馴染み、真ん丸本体は某海サソリ型ゾイドのバイザーと背部装甲でガッチリガード。


 足は爪先立ち…というか、オレらが水平とするなら、アイツは垂直。スゲェバランス感覚だ。


 そしてやっぱり目を引くのは、背中から伸びる尻尾……ていうか、もうバラす。某海サソリ型ゾイドの尻尾。


 背中には小さなハサミもあるしな……。某海サソリ型ゾイドが足2本で極端にデフォルメされた感じっていえば大まかなイメージはできると思う。


 













 「あ、アレがユーリプテルスか!?」


 「ま…間に合わなかった…」


 「ポラリス、無理はいけません!」












 話が終わる前に急行したワケだが、ポラリスとユーリプテルスには因縁というか、難儀な関係があるんだよな…。












 「ステンス、レクセ、アイツは…」


 「悪いが、オレも知らん」


 「少なくとも、有機生命体と見るにはお粗末すぎるがな」











 比較的最近生まれたばかりだっていうリティは知らなくて当然。


 ステンスとレクセの双方も詳しいことは分からないようだ。


 アレックスは分かるよな?











 「……もし、古代ベルカ戦争時代と同じ心理状態のままであれば、

  ボクたちは勿論、プレダコンズも危険です。ユーリプテルスはまさに暴走凶戦士。

  戦闘が始まれば、敵も味方もなく殺戮と破壊の限りを尽くす、制御不能の悪魔」


 「古代ベルカの遺物の1つということか」


 「少なくとも、放っておいていい相手ではあるまい」


 「戦争に参加していたどの勢力もアイツに大打撃くらったしな…」












 アレックスの言葉に、ベクターメガトロン、カオスプライム、ビクトリーレオが声を上げる。


 そう、放っておくのもマズイ。けどなぁ……アイツをガチで攻め落とそうとなると、とんでもなく大変なんだよな…。












 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 ……ならば!











 「カオスブラスター!」











 エナジーウェポンの1つ、カオスブラスターを呼び出す。


 エネルギーを集中し、一撃で仕留める!










 「ならば儂も手を貸そう。同時にゆくぞ!」


 「おう!」











 ベクターメガトロンもキャノン砲を構え、チャージ。


 俺もカオスブラスターをチャージし……引き金を引いた。












 「カタストロフィーノヴァッ!!」


 「コズミックノヴァ!!」












 最大限に高められた2つのエネルギーの渦が、狙いたがわずユーリプテルスへ迫り……爆発。


 手ごたえありだ!


 昔どれほど大暴れしていたかは知らないが、必殺技級の攻撃を前に微動だにしなかったこと、せいぜい後悔し……て……!?















 「単細胞だねぇ、君ら。その程度の攻撃で、本当に暴走凶戦士とまで呼ばれたユーリプテルスを止められると思ってるの?

  見てごらんよ。かすり傷すらないじゃないか」


 「……おはよう、アストラル」


 「うーん、ユーリプテルス。時間的にそこはこんにちわだよ?」


 「あ…こんにちわ」
















 だが、向こうはなんとも呑気なものだ。あまりにも。


 まさかアイツは、俺たち二人の砲撃が直撃しても感じてすらいないのか…!?














 「メディア、転送準備だ。

  アストラルよ、本当にお前たち二人は別行動なんだな?」


 「そうだよ。その為にわざわざ空母まで持ってきてるんじゃないか。

  人のことより自分の心配したら?」


 「だよな!?もうアーツバトルの予選バトルロワイヤル、一週間後なんだしよ!?」


 「私たちもそろそろ参加申請しとかないとマズイわねぇ?」


 「では、あとはお願いしますね」
















 一方で、先ほどの砲撃によって吹き飛んだカプセルの近くから、リア・ファルたちが出てくる。


 予選バトルロワイヤル…?そういえばそんな話が小僧からあったな。


 だが、その前に禍根は取り除いておかないとな…!






















 (第22話へ続く)









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―








 リティ「ほらステンス、出番だぞ」


 ステンス「ったく、これからだって時に切り上げやがって…」


 リティ「演出ってそういうものだと思うけど…」


 ステンス「まぁいい、今回は"ビーダロイド弾"について教えてやる」




 ステンス「ビーダロイド弾は、デビル三銃士だけが扱えるものだ。

      生き物や道具をスキャンし、そのデータを元に自身のエネルギーで実体化させたのがビーダロイド弾。

      スキャンするものについては特に制限はないが、ビーダロイド弾には主の固有属性が付与される。

      デビルブライスターのビーダロイド弾が炎属性になっているようにな。

      生命体じゃないがある程度自立行動が可能でな、俗にいうピ○ミンみたいなモンだ。

      ちなみに発射後はビーダロイド弾が自立する。その後の指示はできるが、直接コントロールすることはできなくなる。

      今回のバトルであったみたいに、スキャン元の性質や習性などを利用すればこちらの武器にもなる」





 リティ「どういうメカニズムになっているんだろうなぁ」


 ステンス「さぁな。魔法とも違うが、機械技術ともまた微妙に違う。

      一説によれば、アイツら自身のスパークとリンカーコアが何かしら化学反応を起こした結果生まれた産物らしいがな」


 リティ「じゃ、また次回!」










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 <次回の「とたきま」は!>







 トラルー「最後の最後で新レギュラーがやらかしますねー」


 カオスプライム「貴様は貴様で呑気なものだな…。俺たちが今まさにどんなことになるか分からない状況に置かれてるんだが」


 アリシア「せっかくひと段落つくかと思ったのにね」


 アストラル「はっはっは、こうでもなきゃ面白くないでしょ?」


 カオスプライム「加害者側だからってなんでそんな他人事なんだ」


 アストラル「だって君ら、別に次回で死んじゃうワケでもないし」


 トラルー「あー、確かにねー。そういう意味じゃ他人事にもなれるっていうか」


 スター「結局似た者同士だな、コイツら…」







 第22話:最凶兵器と暗躍と心の傷跡







 アストラル「次回は僕とユーリプテルスが主役だっ」


 ユーリプテルス「わーいわーい」


 スター「急に緊張感が消え失せたっ!?」























 あとがき




 これまた手こずりましたが、なんかトンデモナイのが出現して終わった第21話です。


 第2クールも残りわずかとなり、アレス編開始の前に嵐が吹き荒れております。

 つまり第3クールはもっとすごい嵐が襲来することになると(ぇ)



 前回からの続きということもあって新規参戦キャラの数は2人のみですが、インパクトがデカすぎたかな?

 数秒間でカオスプライムたちを震撼させる実力を発揮したアストラルや、砲撃の直撃をくらって何も感じないユーリプテルス。

 次回はこの二人が更に目立つお話。「とたきま」では珍しく、基本が六課関係以外のサイドのお話となる予定です。

 ちなみにユーリプテルスとは、海サソリの一族の名前。元ネタのデススティンガーが海サソリ型ゾイドであることからつけてみました。



 気がつけば第2クールも残り3話。

 OPやED、挿入歌についても新作を検討中ですが……出せるか自分?(マテ)


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 ユーリプテルス。またトンデモナイのが出てきたなぁ。
 凶悪&戦闘能力突出キャラ同士、ジュンイチとぶつけてみたいけど、ヤツは『とコ電』でカイとの対決が 控えてるし……実現したら実現したで想像図が怪獣大決戦にしか見えん(爆)。