レルネ「本日もやります、『レギュラーメンバーのドコナニ』のコーナー!」


 プロト《わー》(拍手)


 レルネ「第21話終了現在、主だった動きは以下の通りとなっておりまぁ〜す」









 1:デビル三銃士とアリシアたちが交戦。

   ハルピュイアとレヴィアタン乱入後は二人を中心に三銃士を圧倒、ブラックアウトも撤退しプラントを防衛することに成功する。



 2:トラルーの説明の途中、カオスプライムが元パートナーのグリッドと再会。そのまま合流となる。

   説明会自体は継続中。



 3:ルアクとブライが機動六課に合流。

   現在は六課フォワード陣と共に六課本部で待機中。



 4:ダークコマンダーと提携する精神生命体・アストラルが、

   "暴走凶戦士"ユーリプテルスを復活させ、カオスプライムたちと対峙。










 プロト《一戦去ってまた一戦、といったところでしょうか》


 レルネ「ダークコマンダーも、妙なヤツとつるみ始めてますねぇ」


 プロト《砲撃の直撃を受けても微動だにしないユーリプテルス共々注目の的ですね〜》


 レルネ「それでは、第22話をどうぞっ!」



























































































 「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






 「とある旅人の気まぐれな日常」






  第22話:最凶兵器と暗躍と心の傷跡





















































































 さて、ユーリプテルスの覚醒も完了したし、


 あとは打ち合わせ通りに一発かましてトンズラするとしようかな。











 「いつでもいいわよ」


 「参りましょうか」


 「あー、あと1週間!予選開始までウズウズするな!」


 「ビシビシとトレーニングの日々だな!」


 「機動六課の者たちよ、今度は"アレス"で会うとしよう」


 「首を洗って待ってることね〜え?」





 <ゾーン・マキシマムドライヴ>











 そう、次に彼らと会うことになるのは、"アレス"が開催されてからだ。


 早ければ、予選という形で行われるバトルロワイヤルの途中でぶつかることになるかもね。


 向こうが何チームでエントリーするのかも大体わかるけど、まぁ楽しみの1つにとっておこう。


 あんまりここで喋っちゃってもつまらないじゃん?











 「なんだ…?全員で転送しないだと?」


 「フォートレス、転送したヤツらの行方は分かるか?」


 《……残念ながら、形跡を確認できない》












 そりゃそうさ。


 ゾーンメモリで、しかもマキシマムドライヴで転送したんだよ?アレはまさに瞬間移動。


 あのメモリの特性を把握してでもいない限り、転送先の予測や探知なんて無理だ。


 チート・オブ・チートで有名な柾木ジュンイチや、かなり特殊な察知能力を持つトラルーなら、距離の違いはあれど転送先を見破れそうだけど。













 「ねぇアストラル、目の前にいるのは敵なの?」


 「敵だね。さっき、そこの2体が君に砲撃してきたのは分かる?」


 「……じゃあ、殺さなきゃ」














 さっきの砲撃が目覚ましになったのだろう、意識は既にハッキリしてる。


 もちろん、衝撃とかじゃなくて爆発音でね。


 で、のっけから物騒極まりないことを言いだしたので、限度を越さないようにする為にもここは言いくるめなければ。














 「まぁまぁ、君ほどの実力ならアイツらなんてチョチョイのチョイだろうけどさ。

  時代は変わってる。こーゆーとき、敢えて生かして帰すのもお約束なんだ」


 「どうして?」


 「戦士である以上、敵がいるから面白い。

  仲間同士の手合せだって、所詮は仮想とはいえ敵として戦うんだ。

  どういう形であれ、敵がいるからこそ戦士はその存在意義を見失わないで済む」


 「うん」


 「昔の戦争中はともかく、今の時代は戦士の数は意外と少ない。

  ましてや、君ほどの者と張り合えるヤツとなると極端に少なくなる。

  後で詳しく話すけど、今は敢えて見逃す方が面白くなるよ」


 「……わかった。じゃあ、どうする?」














 どうやら抑えてくれるようだ。


 これで支障は出なくなるだろう。ダークコマンダーは想定外なことがあってもそれすら楽しむけどね。


 そんじゃ、予定通りにシメようか。














 「貴様ら、何を企んでおる?

  そこの鎧王にとって因縁深い相手であろうことは理解できた。だが、何故わざわざヤツを復活させた?」


 「……かつて古代ベルカの民は、ベルカという文明がもたらした数々の技術によって、滅ぼされようとしていた。

  しかも、技術や繁栄に目がくらんだ愚か者共によって勃発した戦争によって。

  ユーリプテルスは、冥王イクスヴェリア監修の元、互いに滅ぼし合うという行為を防止する為に生まれたのだ」


 「圧倒的すぎる戦闘力を発揮することで、全ての軍から戦意を奪うことを目的とした武装化…」


 「さすがはポラリス。

  だがもう1つ、冥王すらも通さない、直接ユーリプテルスの蘇生に関わった連中の思惑が込められていた。

  混乱に乗じて、軍事行動を行う者全てを皆殺しにすることで、自分たち科学者だけが支配できる世界を目指すというね。

  それを実現させる為には、どうしても何かしらのタイミングで確実に無差別攻撃を行えるようにする必要があった」


 「……まさか……あの時、ユーリプテルスが無差別攻撃で皆殺しにしていったのは……!?」


 「そうだよ。

  無差別攻撃を行えるようにする為に、本人の心を消して殺戮マシンに変貌させるシステムが組み込まれていた。

  防衛本能が活性化することで自動的に発動、無差別攻撃を開始する……"バーサークモード"」












 僕の説明で震え上がるポラリスに更に追い打ち。既に滅びたシステムだからネタバレしても大丈夫だし。


 まぁ、科学者どもは想定していなかったらしいけど、バーサークモードが発動している時にポラリスも来ちゃったようだ。


 ぶっちゃけて言うと、彼女はその無差別殺戮に巻き込まれて死亡したんだね。


 ちなみに読者の皆様の為だけに補足させてもらうと、アレックスが命を落としたキッカケにも絡んでる。


 無差別殺戮の中で、何度もある兵器をぶっ放していたんだけど、その流れ弾というか流れ砲が彼らの部隊を飲み込んだ。


 で、そのままお亡くなりになられた、と。


 つまり、アレックスもポラリスも、バーサークモード中のユーリプテルスに殺されたってことになる。


 因果って面白いねぇ、まったく。





 ……と、そう言ってる間に、ユーリプテルスが本格始動。


 少し曲げてた足をピンと伸ばして体を一気に通常姿勢まで上げて、先ほどまで後ろに垂らしていた尻尾を弓なりに前方へ向ける。


 尻尾とはいうけど、根元は背中だったりするけどね。












 「う、動き出した!」


 「モチーフはサソリ…か?」


 「2足歩行ではあるがな」










 ユーリプテルスの動きに、リティ、ステンス、レクセがまず反応。


 でもね、君らとの本格戦闘はまた今度、"アレス"の予選からなんだ。悪いね。


 その代わり、今となっては希少技術となった珍しいものを見せてあげよう。


 ユーリプテルス、目標と射線のデータを送るから、1発だけ撃っていいよ。









 「試し撃ちだね」


 「バーサークモードが発動したユーリプテルスは、持ち前のチート級の戦闘力で戦場を蹂躙した。

  どれだけの命がたった一撃で葬られてきたのかは僕にも分からない。

  ただ、古代ベルカの地の実質的消滅に影響した、当時の技術力でも最"凶"と謳われた兵器をお見せしよう」









 僕のセリフが進む中、ユーリプテルスは今は前を向いている尻尾の先端部のユニットを展開。


 両サイドの連装ビーム砲と上下のブレードが、上下と左右がVの字を描くように展開していき、中央の砲塔がフリーになる。


 その砲塔を中心に、ブレード同士を挟んで電磁エネルギーが発生し始める。











 「そんな…………"大口径荷電粒子砲"……っ!?」




 「ポラリス、またしてもご名答。

  ……撃て」














 『わああああああああああっ!!』















 僕の一言に合わせて、ユーリプテルスが荷電粒子砲を発射。


 その光はポラリスたちを吹っ飛ばしながらその脇を通り抜け……その先、つい先ほどまで戦闘があったらしいプラント施設に直撃した。


 ……さすがだね、たった一撃で跡形もなく消し飛んだよ。












 「今日はお披露目程度。

  "アレス"が開催されてから、また改めて会おう」


 「ばいばい」












 敵かどうかはともかく、善悪の区別なんてつけていないのか。


 粒子砲の余波で吹き飛ばされ、周囲の岩などに叩きつけられて沈黙しているポラリスたちに手を振っている。


 そんなユーリプテルスを専用の小型空母の下部ハッチを引き上げる形で収容。


 僕も空母へ飛び移り、ステルス処理をかけつつ空母を発進させてその場を後にした。










 さぁダークコマンダー、後はうまくやりな。僕らは約束通りフリーにさせてもらうから。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「うーん、とんでもないことになってきよったなぁ…」


 「まさか、"暴走凶戦士"を本当に復活させてしまうとは、教会騎士団としても想定外でした…」


 「まぁ、ホントならとっくの昔にロストテクノロジー的な扱いで消失しててもいい存在だしね」








 くらったのが余波だけだったこともあり、早急に意識を取り戻したというベクターメガトロンがみんなを担いで戻ってきた。


 で、みんなの意識が回復しきるのを待ってから改めて事情聴取。


 話をまとめてみると、古代ベルカ戦争時代に"暴走凶戦士"と化し、その時代の間に息絶えた筈のユーリプテルスが大復活。


 オマケに武装も完備で、あいさつ代わりに彼の最強武装である"大口径荷電粒子砲"をぶっ放して消えたそうな。


 あ、大口径荷電粒子砲っていうのは、アイツの尻尾の複合兵装ユニットの中央、サソリの尻尾の針と同等の位置にあるビーム砲のことね。


 たった一撃で都市の1つや2つは簡単に消し飛ばせる、当時の戦争時代は勿論のこと現代でも最凶といわれる兵器だ。


 元々は荷電粒子という存在に目をつけた鎧王直属の兵器開発部がもたらしたテクノロジーらしいけどね。






 しかも、イグニッションを一瞬で行うという離れ業を使ったアストラル共々、アレスに参戦する気らしい。


 ……そうか、アストラルがプレダコンズに入れ知恵とかしたんだな。


 アイツぐらいしか原因が考えられないし。暇を持て余してるからドンパチの見物にしゃれ込むような戦争屋だし。







 ……そうかい、アイツもミッド入りしたのかい…。


 途中でゼロライナー組とすれ違ってなけりゃいいけど。


 向こうが仕掛けない限りは平穏無事に終われそうな気もするけどさ。


 まぁ、ギガントボムのアジトをマークされたりしない限りは大丈夫だとは思うけどね。


 何気にあそこ、組織的な観点から見ればあまりいい場所じゃないし。










 「まったく、ひどい目に遭ったものだ。

  ステンスはともかく、主殿は打ち所が悪かったのか、どうにも頭のお星さまが消えないのだ」


 「アイツはしばらく復帰できないだろ…」











 リティ…何をどう打ったというんだい?


 彼の"中"にいたおかげで、あの現場で唯一意識を失わずに済んだレクセいわく、後頭部をモロにぶつけたらしいけど。


 ていうか、お星さまて。言葉聞いた瞬間に、リティだけおマヌケな顔でぶっ倒れてるようにしか思えなくなったじゃないのさ!


 いつぞやの投げっぱなしジャーマン未遂の話も相当だったけど!











 「取りあえず…ポラリスだけはそっとしといた方がいいと思います。

  よりにもよって、相手がユーリプテルスとあっては…」











 一方で、アレックスから進言が。うーみゅ、確かにそうかも。


 なんかアストラルがネタバレしちゃったらしいけれど、そこに僕なりの解釈を加えておこうか。


 ポラリスにとっては、自分の無念と責任の象徴みたいな存在なんだ。


 自分が無力だったから、ユーリプテルスの暴走を止めるどころか、その危険性を知ることすらできなかったってね。


 ……バーサークモードの存在については、ポラリスの責任じゃないんだけどなぁ…。


 いや、その影から彼を救いだせなかったことに対する気持ちか。


 まぁなんにせよ、その気持ちとの向き合い方を本気で考えないと、これからどうしようもなくなると思う。


 さすがに彼女自身の問題だから、こっちから口をはさむのは野暮なんだけどね〜。












 「しかしどうする。

  ヤツらも"アレス"に出場するとなると、ほぼ確実に決勝トーナメントまで進んでくるぞ」


 「そうなると、予選なり決勝なりで最低でも何人かはアイツらと当たることになるワケか…」













 一方で、ベクターメガトロンは既に"アレス"の時の心配。


 さすがに目の前で参戦表明されたりしたら気になるよね。気持ちは分かる。


 それと、スターの言うことは確定だと思う。


 さっき部隊長殿から聞いた最新案によると、六課及び関係戦力から集められたメンバーをチーム分けしたら数が2ケタになってたし。


 ただし、敢えて言っておく。よくもまぁスケジュール作れたなアンタら。













 「その"アレス"……私も出る」


 「って、いつの間に来たの!?」


 「いや、ツッコむところ違うだろ」













 アレスの話が出た途端に割って入ってきたポラリス。


 イテンとスターのやり取りはともかくとして、絶対に確認したいことが1つ。












 「……ユーリプテルス目当てで行くんだろうけど、

  実際に彼と当たった時に、まともに戦えるんだろうね?」


 「……戦う。そして、絶対に勝って、あの鎧から彼の魂を引きずり出してみせる。

  今度こそ、私の手でね」















 僕からの問いに、ハッキリと答えるポラリス。


 ……でもさ、新たな疑問。なんか口調変わってない?

















 「あ、トラルーも思った?

  なんていうかさ、お固くない女の子っぽい感じていうか」


 「そうそう」













 さすがイテン、僕が持った違和感に真っ先に共感してくれた。


 続いてスターも同意したところを見ると、彼も気づいたっぽい。













 「あれあれー?この八神はやてを差し置いてガールズネタですかー?」



 「黙れエロ狸」














 ピンクネタに走り出そうとした部隊長殿は僕が、非殺傷設定のイグナイテッドによる武力鎮圧で対処。


 緊張感をそんなもので緩められてもうれしくないんだよこちとら。















 「ジュンイチにアレコレいじられたこと、トラウマになってるな絶対」


 「あ、あはは……今思い出しても恥ずかしいねアレ」

















 尚、スターが言ったことについての詳細は教えない。


 絶対に。


 特に柾木一門とオレンジ畑辺りには絶対に。


 誰が教えるか、あんな悪ノリする確率100%な連中に。


 あぁそうだ、メガーヌさんにも知られたらマズイかも。


 ちなみに、彼女とはマックスフリゲートの方で知り合っています。


 恭文の出会いがしらのラッキースケベのことも聞いてもいないのに暴露してくれましたとも。


 あの話はラッキースケベ以外の何物でもないよねぇ…。






 ……っと、話が逸れた。ポラリスだよポラリス。


 なんか口調というか声色というか、雰囲気が変わってる気がするんだけど。










 「……多分、昔の私だったら、考えもしないことだと思う。

  王という立場にとらわれるから。でも、今は鎧王を名乗る必要はなくて、一人の生き物として、世界と向き合える。

  王という立場が、私の気持ちを心の内側に閉じ込めて、自分を偽ってしまう。偽ったが為に、ユーリプテルスを孤独な死に追いやった。

  自分を偽ることなく生きることでしか、彼を本当の意味では救えないと思って…」


 「王という概念がアイツを置き去りにしてしまう運命にしたのだとしたら、

  アイツを救うには王としての自覚を捨てなきゃならない…か。スターさんには分からないが、頑張れるのはいいことだな」


 「うむぅ、君主の妃として仕えた時代があっただけに、私はその気持ち、わかるでおじゃるよ。

  きっと、殿しんがりを務めた時、ユーリプテルスとやらはさびしがっていたでおじゃる」


 「だから、鎧王としてじゃなくて、一人の友達として、ユーリプテルスを引き入れる。

  私の方へ引き入れて、彼のことをもっと真っ直ぐに、受け入れる」











 なるほど、心構えの問題ってワケね。


 王と部下としてではなく、友達としてユーリプテルスを迎えに行こうってことか。


 口調が変わったのは、アレこそが本当のポラリスだから。


 本当はなんてことのない女の子なんだ。


 すっごく久しぶりだね、素直な気持ちのままの君とこうして話すのは。










 「うん……もう、何百年ぶりでしょうね。

  途方もなく長い時間が流れちゃったけど」












 ……これなら、ユーリプテルスと直接対決ってことになっても大丈夫そうだ。


 あとは、彼女自身がうまくやるさ。心というものは、心でしか動かせないハズだから。












 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 ……大会の開始まであと4日…。


 エントリーの最終締め切りまであと2日…。


 見たところ、既にかなりの数のチームがエントリーされている。


 もちろん、例の機動六課絡みのチームも見受けられる。


 ……ふふ、これはまた面白くなりそうだ…。











 「ねーねー、これからどこ行くの?」


 「あぁ、この近くの刑務所へね」











 さすがに退屈なのだろう、短い手足と妙に長い尻尾をブラブラさせてユーリプテルスが僕に訪ねてくる。


 まぁ、なんだかんだでもう夜になってしまったしね。


 僕もいい加減、腹減ってきちゃったよ。


 ちなみに、ユーリプテルスもお腹は減るし、眠くもなるのだと今の内に補足しておく。













 「刑務所?そこで何するの?」


 「いやなに、ちょいとお掃除しに行くのさ」


 「お掃除?この船で?」


 「まさか」
















 まぁ、転生の際に精神年齢が子供並みになってしまったから、あまり深い思考はできないか。


 だからこそ、こうして僕が彼と一緒にいて、行動管理をしているワケなんだけど。


 で、お掃除なんだけど……そう、空母のくせに火器満載なこの船で焼き払うワケじゃない。


 案外もっと効率のいい方法があるんでね…。


 あと、行き倒れにならないようにする為にも、これは避けて通れないルート。












 「ユーリプテルス、体がなまってきただろう?

  晩ごはん調達の前に、その刑務所でひと暴れしてくるといい」


 「殺すの?」


 「まぁ、この辺の連中はいくら死んだってかまいやしないさ。

  社会的に見ても、面倒が減ってありがたいだろうし」
















 だって、刑務所だもの。











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 「……は?刑務所1つに向かう空母がある?」


 「あぁ、あまりにもいきなりで突拍子もないことで、オレも驚いているが」










 主はやてたち昼勤務のメンバーがあらかた出払い、夜も少し深くなってのこと。


 突然ホシケン…じゃない、スターセイバーからもたらされた情報に、私は思わずマヌケな反応をしてしまった。












 「場所は別な転送ポートを使えばすぐのところだ。

  管理局の方で運用されている施設のようだが…」


 「様子を見に行くぞ」


 「何、正気か?……いや、局の施設である以上、見過ごすワケにもいかないな。

  主はやての風評にこれ以上陰りが生じるのは、致命的だ」











 さすがは私の相棒、理解が早くて助かる。


 我々が出かけている間、隊長クラスがいなくなるのは、少々問題ではあるが…。













 「それなら、イリアスやパンドラ"たち"と一緒にボクがお留守番してますから…」


 「あぁそうか、ハルピュイアたちの"調整"の関係で、クレアも残っていたんだったな。

  だが、正直助かる。少しの間頼めるか」


 「はい、任せてください」












 ……スターセイバー、待て。クレアが、何か妙なこと言わなかったか?


 イリアスはいい。彼女のパートナーだからな。それはパンドラも同様だが……パンドラ"たち"とは?


 まだいるのか?













 《初めまして、挨拶が遅れてました。

  俺、今日から六課に滞在することになった、オーディーンです》


 《オレはフェンリル。パンドラとは、昔からの付き合いなんだ。

  ギガントボムさんのアジトでな》















 オーディーンと名乗った方は、頭部の鋭利なトサカのようなパーツと、背部のウイングが目を引く。


 主に白と薄い紫が目立つカラーリングだ。目と胸部のクリスタルらしきものは赤いが。


 やけに特徴的な肩アーマーだが、武器も独特だ。柄の両端の基部から伸びる指揮棒のような中心パーツを覆うように、光の刃が出ている。





 フェンリルと名乗った方は、頭部や尻尾の形状から、どことなく狼を思わせる。脚部の爪や手の形状もだな。


 緑と黒を主体としたカラーリング。両腕には1枚ずつクリアグリーンのフィンがあり、背中にはブースターが内臓されているようだ。


 武器はライフルであるところを見ると、狙撃型か。あと、脚部は人型よりも獣型に近いな。











 しかし、パンドラと似た雰囲気を放つ彼らはいったい?

















 「む、聞いていなかったのかシグナム?

  本日付けで、一時的に機動六課の方で面倒を見ることになった人型パワードデバイスの話があったのだが」


 《多分、夜勤メンバーの方まではすぐに伝達できなかったんでしょうね。

  改めて、オーディーンとフェンリルもよろしくお願いします》


 「む、あぁ、よろしく。

  ……そうだ、どうせならデバイス組も来るといい」


 《オレ達もか?》


 「そうだ。どうせここに厄介になるのなら、ここがどういう仕事をする組織なのかを少しでも理解してもらわなければな」








 スターセイバーからの指摘で気づいた。そういえば、レルネとかいう者がハルピュイアたちのデバイスと一緒に送ってきたのだったな。


 2人に代わって丁寧にあいさつするパンドラに礼を返しつつ、オーディーンやフェンリルを見やりながら言う。


 そう、ここにいる以上は、少しでも理解してもらわないとな。































































 《そうそう、二人とも。

  そっちのお姉さんがシグナムさんで、隣のトランスフォーマーがホシケンっていうのよ》


 《ホシケンさん?変わった名前だね》


 《これからよろしくな、ホシケンさん》


 「パンドラぁぁぁぁ!?」











 あ、オーディーンとフェンリルが早速パンドラに洗脳された。











 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 おーおー、ハデにやってるねぇ。


 予想通りだけど、もう少し詳細を教えておくべきだったかな?












 現在、空母から降ろしたユーリプテルスに、刑務所のど真ん中で大暴れしてもらっている。


 当然、わらわらと警備員やら武装した局員やらが押しかけてくるけど、彼には全く問題にならない。


 一般兵程度の兵器じゃ、あの超重装甲にはかすり傷すらつけられやしない。


 逆に両腕のユニットの餌食になるだけだ。








 切断するというより掴んだり握り潰したりするのに適した形状のハサミ"プレッシャーシザース"。


 高周波ソードと同等のシステムで目標を切り裂くアームブレード。


 装甲でガードできるよう、内臓式にしてある射撃装備"マルチシューターユニット"。








 両腕のユニットだけといっても、これだけある。


 現在、ユーリプテルスはこれらだけで連中を片っ端から駆逐している。


 相手の実力からして、荷電粒子砲まで持ち出すほどじゃないね。










 ……と言いたいところだけど。











 「ユーリプテルス、この刑務所の地下めがけて荷電粒子砲を」


 「地下?」


 「この刑務所、地下にうっとうしいカラクリがあってね。

  あとあと僕らの邪魔になるのはイヤだから、今夜のうちに消し去っておこうかと」


 「適当でいいの?」


 「なるべく中心点に。そうだな……今いる場所からジャンプして、真下に撃てばいい」


 「分かった」













 尾部の先端、複合兵装ユニットが展開して荷電粒子をチャージ。


 そのままジャンプして、滞空していたこの空母に捕まる。そしてプレッシャーシザースで掴みながら粒子砲の銃口を真下へ向けて……













 「荷電粒子砲、発射」














 どこか機械的な雰囲気もある言葉と共に粒子砲が火を噴き、この刑務所は地下の施設ごとこの世から消滅した。


 バイバイ、管理局の実験動物ども。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 くっ、遅かったか…。




 我々が駆けつけた時には、既にその刑務所は跡形もなく消えていた。


 大きなクレーターだけを残して、何一つ残らず。











 《オイオイ……何もねぇじゃんか》


 《まるで、隕石でも落とされたみたいだ…》


 《仮面ライダー1人でここまでの破壊力は…出せるものかしら?》


 《《いや、誰も仮面ライダーの話してないし》》











 ……本当に仲が良いのだな。


 フェンリルとオーディーンが茫然とする中、パンドラだけは浮いたボケをかますが、そこに二人がツッコミを入れる。


 さすがに笑える状況ではないが、それでも過度に落ち込むことは避けている。


 そこに戸惑いなどの感情がないところを見ると、おそらく日常的な光景なのだろう。


 少々複雑な気分ではあるがな。













 「しかし、こうも完璧に吹き飛ばされていては、監視カメラの映像も残っていないだろうな…」


 「襲撃犯の手がかりはなし、か…」


 《……いや、ある》


 「何?」














 スターセイバーからの言葉に落胆する私であるが、オーディーンが意外な一言を。


 思わず聞き返す。














 《時空管理局って、確か衛星システムもあった筈ですよね》


 「あぁ、導入されたのは割と最近だと聞くが、その解析画像の精密さは各世界で評価さ…れ…」


 《そうか、衛星からの監視映像なら!

  直接衛星を狙われたりしなけりゃ、映像はいくらでも残せるぜ!》


 《そういうこと!》














 なるほど、その手があったか。


 確かに衛星からの監視映像であれば、フェンリルの言うようにいくらでも監視映像が残せる。


 さすがに衛星を直接撃墜できるような装備などないだろう。


 オーディーンからの指摘で、活路が見えてきた。
















 《えっと……その活路も、ちゃんと報告できなきゃ意味ないわよね〜…》


















 しどろもどろな感じで私たちに言うパンドラの後ろから、何かが来る。


 ……どういうことだ?ディセプティコンのドールに、プレダコンズが接収したという各種量産戦力。


 そこに更に、イマジンだと?


 どういうことかは分からんが、機動六課が今までに対峙してきた一般兵相当の戦力が大挙して現れた。


 しかも全員、こちらを敵と認識しているようだ。
















 《なんなんだよ、この数!?》


 《マイスター・レルネの情報にあった戦力が、なんかごちゃまぜになってるけど…》


 《取りあえず、タダで帰してくれるワケじゃなさそうよ?》










 デバイス組がそれぞれに言っているが、特に重大なのがフェンリルも気にした数だ。


 あまりにも多い。多勢に無勢どころの話ではないぞ。


 だが、転送ポートからは離れているし、あの数に追跡されるのは避けたい。


 となれば……ここで全て片づけるしかないか!











 「増援を呼ぶ、という手は……さすがに使えないな。

  留守番を頼んでしまっているクレアやジンはともかく、夜勤メンバーは少数精鋭。

  迂闊に隊舎から引き離すワケにもいかないからな」


 「そういうことだ……最悪でも、数を減らしてから撤退する!」














 騎士服を着用し、レヴァンティンを構える。


 向こうに目立った動きはないが…近づいてくる以上は迎撃させてもらうぞ!
















 《フェンリル、パンドラ、俺たちもやろう!

  転送ポートを守らなきゃ、機動六課も危ない!》


 《そうね、私たちも危ないし》


 《結局そうなるのかよ……ま、しょうがないか》












 『アウトフレーム、フルサイズ!!』











 オーディーンたちが、叫びの後光に包まれ、エリオ辺りと変わらない身長になった。


 アウトフレーム…ということは、リインのそれと同等の技術ということか。


 オーディーンとフェンリルはともかく、パンドラはいつの間にそのような装備を?











 《拡張プログラムってヤツです。

  オーディーン達と一緒に、そのプログラムを入れたユニットも届いたんです》











 なるほど、そういうことだったか。













 《"閃光の遊撃手"パンドラ、出陣!》






 《"電影の狙撃手"フェンリル、出動!》






 《"鳴動の槍騎士"オーディーン、発進!》













 それぞれ武器を構え、名乗りを上げた3体のパワードデバイス。


 彼らは先ほどまでとは変わって、戦士の雰囲気を放ちながら、戦闘態勢へと移行した。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 ムフフフ、始まったっすねぇ。


 最近、人型パワードデバイスがダークバトルでドンパチやらかしたっていうから様子を見てみれば、面白そうじゃないっすか。


 しかも今回、なんか増えてるし。


 槍騎士って名乗ったのと狙撃手って名乗ったのはこれが初陣ってところっすかね?








 《クヴァシルのデータベースをもってしても、昨日の更新でやっとわかったくらいだ。

  本格戦闘はおそらく初めての筈だ》








 アストラルが言うんなら、間違いないっすね。


 ところで、ダークコマンダー様に伝言があるとか?


 今ならリアルタイムでお話できるっすよ?









 《なるほど、じゃあ早速交代してもらおうかな?》









 というワケで、ダークコマンダー様よろしくっす〜。









 「どうしたというんだ?

  大抵の用事なら、タランス辺りにでも頼めば済むことだろうに」


 《だよねー。でなきゃ、こんな短期間でネガタロスに頼んで大量のザコ戦力をピンポイントで送り込めたりしないもんね。

  本題だけど、前回のことで1つ物申したい》











 前回のことで?













 《前回、ご丁寧に僕のことを読者の皆さんに紹介しただろう?

  その時のとある1文に、気づいたところがあってねぇ》











 そのセリフと共に、モニターにその文章が。











 "ちなみに上着は長袖で、裾のところは下の部分が開いている。素肌が見えるところからすると、中は半袖か。"




























 《"裾"と"袖"を間違えてやんの♪》


































 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………



 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………



 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………



 ………………………………………………………………………………………………………………………………………



 …………………………………………………………………………………………………………………………………



 ……………………………………………………………………………………………………………………………



 ………………………………………………………………………………………………………………………



 …………………………………………………………………………………………………………………



 ……………………………………………………………………………………………………………



 ………………………………………………………………………………………………………



 …………………………………………………………………………………………………



 ……………………………………………………………………………………………



 ………………………………………………………………………………………



 …………………………………………………………………………………



 ……………………………………………………………………………



 ………………………………………………………………………



 …………………………………………………………………



 ……………………………………………………………



 ………………………………………………………



 …………………………………………………



 ……………………………………………



 ………………………………………



 …………………………………



 ……………………………



 ………………………



 …………………



 ……………














 「……………………タランス、後は任せた」


 「なっ、ちょ、えーっ!?!?!?」


 《あ、逃げた》











 ダークコマンダー様ぁぁぁぁっ!?


 こんなん、どないせーっちゅーんすかっ!?








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 ダークコマンダーとタランスの漫才は置いといて。


 なかなかにやるね、あのパワードデバイスたち。







 現在、空母"メルクリウス"のブリッジにある艦長席に座る僕は、モニターで下の戦闘を観戦中。


 え、ユーリプテルス?


 彼なら先ほどご飯を食べて寝てしまったよ。


 まぁ、夜更けになってしまったしね。










 話を戻して、僕が現状で特に注目しているのは、当然ながらあの新人たちだ。




 ビーム状の刃を備える双槍"リタリエイター"を振るうオーディーン。


 高精度かつ長射程の狙撃銃"ドミニオンライフル"で相手を狙い撃つフェンリル。




 どちらも素人とは思えない腕前だ。やはり、戦闘データをパンドラと共有しているのが大きい。


 更にパンドラ自身、先発機であるプロトの戦闘データを活かしている。


 となれば、あとは経験値を積むだけでスキルも馴染んでくる。早い内に大化けするかもね。








 彼らの開発者、レルネ。


 相当に凄まじい技術力の持ち主と見た。こうも高性能なパワードデバイスをホイホイと出してくるとはね。


 オマケにアウトフレームの技術を確立したおかげで、人間サイズの相手までなら単体で戦える。


 最近の世界事情も考慮すると、トランスフォーマーとも戦えるレベルじゃないかな?


 ふふふ、強者が多いに越したことはない。その方が"アレス"もずっと盛り上がる。








 それに、ユーリプテルスに経験値を積ませるにも、マイクロンパネルの存在を浮き彫りにするにも、


 強者の数が多いってことには、メリットが大きいからね…。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 ったく、どっから出てきてんだよコイツら!


 いくら撃ち落としてもキリがない!









 《泣き言を言ってるヒマがあったら撃ちなさいよ!》










 分かってるよ!分かってるからホープ・エッジがこっちに飛んできそうな勢いで振り向くのはやめてくれパンドラ!


 何気に新幹線くらいの装甲は貫けるぐらい鋭いんだぞアレ!


 普通は非殺傷設定のおかげで斬れないだけでさ!











 《もうヤブレカブレだ!とことんやってやる!!

  フォースチップ、イグニッション!》










 《アタックファンクション・ホークアイドライブ》














 アニマトロスのフォースチップが飛んできて、ドミニオンライフルのスロットに入る。


 連動してアナウンスが流れた後、構えた銃口の前にターゲットを狙うカーソルを模したエネルギーリングが。


 突っ込んでくるシャークトロンやエアドール、ガジェットV型に向けて3連続で引き金を引く。


 いつも放つヤツより大きい特大の光弾が、3機を次々と撃ち抜く!







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 まぁ、フェンリルの愚痴もごもっともだから、これ以上は言わないけどね!


 こっちもさっさと決めるわよ!






 《フォースチップ、イグニッション!》










 《アタックファンクション・蒼拳乱撃そうけんらんげき









 私の叫びに応えたスピーディアのフォースチップが背中のスロットに。


 連動したアナウンスが流れた後、チップのエネルギーは均等に分けられて2つのホープ・エッジへ流れ込んでいく。


 大ジャンプして、光り輝くホープ・エッジを握りしめたまま空中で2回ずつストレートを放つ。


 それによって放たれた合計4つの光弾が、次々とガジェットやドールを粉砕する!









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 今こうして戦ってる俺たちは、機動六課の防衛ラインなんだ!


 転送ポートへは、絶対に行かせない!


 迫ってくるイマジンやシャークトロンを次々とリタリエイターで切り倒しながら、敵の群れへ突っ込んでいく。


 ど真ん中なら、少なくとも射撃系の攻撃は封殺できると思う。


 フレンドリーファイアをさせるほど、向こうも考えなしだとは思えないし。






 勢力の違う一般兵クラスの戦力がこうして合同で襲い掛かってくる以上は。






 フェンリルもパンドラも、アタックファンクションも使いながら敵の数を減らしていく。


 もちろん、俺だって!









 《フォースチップ、イグニッション!》











 《アタックファンクション・グングニル》













 俺の叫びによって、地球のフォースチップが飛来。


 背中にあるチップスロットに飛び込んで、アナウンスと共にその力を解放する。同時に俺の体が金色の光に包まれる。


 一直線に飛翔して、空中で胸を張る。金色の光が発散されていき、上に突き上げたリタリエイターに巨大な炎の槍が生まれる。


 振りかぶってリタリエイターを突き出し、飛んでいった炎の槍がイマジンやガジェットを一気に吹き飛ばす!








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ――明けて翌日。夜更かしはあまりよくないね……未だに眠い。






 というのも、結局あの派遣戦力が全滅するまでモニタリングをしていたせいで、


 気づいたら日の出1時間前というトンデモナイ時間になっていた。


 ユーリプテルスが起き出して朝ごはんをせびるものだから、僕の睡眠時間は消え失せました。


 いつもなら、日の出までの間に6時間くらいは寝てるんだけどなぁ…。






 多分、今頃はオーディーンらパワードデバイス組も充電という名の睡眠タイム中だと思う。


 もっとも、メンテナンスをする為に一時的にAIを休眠状態にするだけといえばそこまでだけどね。







 まぁそんなワケで、眠気をこらえながら、現時点で存在する食材のチェック中な僕だけど。











 「ごはん、まだ」


 「ちょっと待っててよ、今メニュー考えてるかr」


 「ごはん、まだ」


 「……よし、マ○ドナ○ドにでも行くか」


 「わーい」











 …………メルクリウスの中に、外出用の小型ビークル搭載してて本当によかった。


 不覚にも、お遊び感覚で搭載していたものに対して、心の底からそう思ってしまった。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「……それ、きっとネガタロスの仕業ですね」


 「ドールだけでなくイマジンまで加わっていたとなると、十中八九そうとしかいえないな」


 「どーやら、プレダコンズとも手を組んでいるってのはガチらしいな」


 「やはり、恭文たちもそう思うか」








 夜明け直前くらいに、シグナムさん達が全身傷だらけになって戻ってきたというのでビックリ。


 オマケにオーディーンたちパワードデバイス組はエネルギー切れですぐ充電&リペア作業に入ってしまった。


 なので、シグナムさんとホシケ…じゃなくてスターセイバーの二人から事情聴取することに。


 そこで得られた情報からして、その戦力の差し金が誰のものかは簡単に想像できた。


 僕の言葉にマスターコンボイやジュンイチさんやイクトさんもうなずいてるし、ネガタロス率いる悪の組織の仕業でいいでしょ。


 ジュンイチさんとタイマン張って無傷なカイとかいうヤツも気になるけど、単純に戦力差も大きいなぁ…。








 「ううう、オーディーンやフェンリルはともかく、パンドラは僕がマスターなのに…。

  あの子たちの危機に駆けつけられなかった自分が情けないよ…」


 《いや、あの時は仕方なかっただろ……結局アイツらに引き継ぎしてもらうしかなかったんだし》








 クレアさんが落ち込んでいるけど、実はシグナムさんたち夜勤組のゲストにオーディーンたちが入ってたの。


 レヴィアタンたちの用事が済んだこともあって、結局デバイス組を残して帰ることになったらしい。


 で、襲撃騒ぎが起きたのが夜中の4時くらい。


 そりゃあ、イリアスが仕方ないというのも納得なんだけどね…。








 「さすがに悪いことをしたな……入りたての新人にいきなり修羅場をくぐらせてしまうとは」


 「新人に修羅場を、ねぇ…。特務部隊である機動六課でそれを言う?」


 「ぐはっ!?」


 「こりゃまたキッツイところ突いたなぁオイ…」








 シグナムさんが後ろめたくなってるけど、トラルーが容赦なく撃墜。


 スターの言うとおり、キツイところではあるんだけど……正論でもある気もする。


 だって、設立当初から大災害級の問題に対処することを前提としてるワケだし。


 ていうかそんなこと言ったら、六課本部が直接襲撃されるハメになった地上本部崩壊事件の時とかなんなのさ。


 その際に腕折られたっていうエリオなんて、局員になってからまだ半年すら経ってなかったじゃないの。









 《別に死んだワケじゃないんだから、そんなに慌てられても困るんだけど…》


 「だって、僕が責任もって預かるって言ったのに……あうあうあう」


 《いや、オレたちだって、バトルで傷つくことぐらい覚悟してるからな?

  ……たまに怖いけど》


 「あああああああああ」


 《ちょっとフェンリル、追い打ちかけてどうするのよ》


 《わ、悪い》









 一方で、メンテ送りになっているオーディーンたちが人形サイズの診察台メンテナンスベッドに並べられて合流してきた。


 あぁ、エネルギーの充填は済んだけど、ボディのリペアはこれからなんだっけ。


 ていうか、よくもまぁ約100対1なんていう戦力差で生き残れたよね。まずそこを褒め称えたいところなんだけど。









 《アタックファンクション連発でどうにかってところ。

  でも、実は俺たち、助けられてるんだ》








 へ?助けられてる?誰に?









 《名前は分からない。ただ、大きな銃を持ってて、服装は……かなりスッキリしてたと思う。

  えっと、どんな感じだっけ》


 《確か……ボディスーツなみにピッチリした半袖短パンだったよな?あと、腰に箱みたいなの着けてたっけな》


 《記録映像もないワケじゃないけど、暗かったのと慌ただしかったのとで、解像度は悪いわね…》












 ただ、当の本人たちもよく覚えてないみたい。その割には結構な情報が出てきてる気もするけど。


 大きな銃ってことは、少なくともガンナー系の人だとは思う。


 ねぇ、記録映像出せる?












 《まぁ、見ないよりは見た方がいいわよね……はい》











 リペア直前な為、固定されたままで情報を送信。


 展開されたウィンドウに、その映像が映る。暗くてよく分からないけど、確かに大型の銃らしきものが見える。


 ていうか銃だよね。なんか極太のビーム出してるし。発射時の光で銃ぐらいは色も少しわかったけど…。












 「……なん…だと…!?」











 ってどうしたのさトラルー?そんなテンプレな驚き方して。












 「……この映像にある銃、神器の1つなんだけど……」




 『はぁっ!?』












 ぶったまげた。いや、マジで?


 颯爽と現れたガンナーさんが神器持ち?ありえないとは言わないけど、マジで?














 「現場に立ち会ったワケじゃないから絶対とはいえないけど、

  アレはスターセイバーやコスモテクターと共に神器と数えられる最後の1つ、"アストロブラスター"だ」


 「意外な形で最後の神器が見つかったものやね……しかも完成形で」


 「神器を1人で、軽々と扱うとは…。どうやら子供程度の体格のようだが、なかなかの腕っぷしと見た」













 はやてやビッグコンボイがなんか言ってるけど、ひとまずおいとく。


 ちょっとちょっと。わざわざ"アレス"でコスモテクター巡って大慌てって時に、そこで残り1つの神器ですかい。


 しかも完成形ってことは、パネルは3枚とも覚醒していて、かつ所有者は1人であるということになる。


 どういうワケか知らないけど、手間が省けたようなそうでもないような、微妙なところだね。

















 「ついさっきまで、パネルの所在すら分からなかったんだよ?

  オーディーンたちを助けたところを見ると、根っからの悪者ってワケでもなさそうだし…いい方向じゃないの?」


 「ホシケンじゃない方のスターセイバーを狙うスパイとかじゃないことを祈るでおじゃるよ」


 「今現在スパイ疑惑を持っているヤツが何を偉そうに」













 ……マテ、マスターコンボイ。


 今、なんて?






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 現在時刻、午前8時。


 食事と仮眠を済ませ、いざ行動。







 はい、仮眠とらせていただきました。さすがに一睡もしないのは無理です。勘弁してください。


 ユーリプテルスを相手に土下座してまで許しを請い、どうにか仮眠したのがついさっき。


 ちなみに仮眠時間、2時間。










 「随分と過剰に戦力を投入したじゃないの。

  プレダコンズ側はいいとして、ディセプティコンはいいの?

  ドールの量産プラントがなくなったワケじゃないとはいえ、数が激減していること自体は変わりないんだし」


 「問題ない。あの時使ったドールはマスターギガトロンとは別にオレの方で製造したものだ。

  それより、随分と面白いことになったじゃないか」


 「……アストロブラスターを使う者がいたとはね」








 そう、あの戦闘で何が1番の収穫だったかというと、アストロブラスターのマイクロンが既に覚醒しているという情報だ。


 ミール、アポロ、ムーヴ。


 マイクロンの中でも特に自分たちの力に怯え、戦いを避ける傾向にある彼らが、抵抗もなく戦場に姿を現すとは。


 あの使い手、どうやって彼らを説得したんだかね。









 「まぁ、神器を探す手間は変わらない。

  少なくともプレダコンズにとっては見過ごせない品だ。

  ……待てよ、敢えて躍らせてみるのも1つの手か」


 「どうした?」


 「いや何ね、今すぐアストロブラスターを確保しようとするより、

  "アレス"の後でコスモテクターが覚醒してから一気に頂いちゃったほうが効率的だなーと」









 どうせ、"アレス"の景品になってるマイクロンパネルの中身が誰なのかは分かってるからね……ふふふ。









 「……アストラル殿に告げる」


 「どうしたの、レオソルジャー」


 「ユーリプテルスが突如、クラナガン郊外の小規模な町で暴れ始めているとのこと」













 …………お散歩って、お散歩って言ったじゃないか、ユーリプテルスの馬鹿ぁぁぁ。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 つまんない。


 強いヤツなんていない。つまんない。


 せっかくこの町をピンポイントで攻撃したのに、強いヤツが出てこない。


 あの張り紙に騙されたかな。










 「えぇい、この奇怪なバケモノめ!」


 「失せろ!この町を土足で踏み荒らすマネは許さない!」


 「産業廃棄物みたいな恰好しやがって!」











 …………殺す。












 「うっ、うわぁぁぁぁぁ!?」











 1番目の人はまっすぐ突撃してそのままプレッシャーシザースでグシャグシャにしてやる。


 突き刺して、開いたり閉じたりして粉々にして、赤い団子みたいにして投げ捨てる。












 「てめっ、何しやが…ぎゃあああああ!!」










 2番目はアームブレードで両手両足を切り捨てて、残った頭をグチャグチャにする。


 残った骨はプレッシャーシザースで握りつぶす。












 「ひいっ、ひいっ、ひぃーっ!?」











 3番目はいきなり逃げ出したけど、逃がさない。お前が1番ムカついたから。


 ムカついたから、背中のハサミで串刺しにして、引き寄せて、アームブレードでズタズタにして、


 荷電粒子砲の両サイドにあるビーム砲を連射して、閉じたプレッシャーシザースで何度も体に穴開けて、


 穴開けて穴開けて顔潰して穴開けて穴開けて内臓潰して顔潰して肋骨壊して体の肉引きちぎって














 「ストップストップストップぅぅ!!

  何いきなり三流スプラッタ映画も真っ青になりそうなグロ展開をスタートさせちゃってんの!?

  事情は把握したけど少しは自重してお願いだからぁぁぁ!?」













 あれ、アストラル?ネガタロスとのお話はどーしたの?










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 ……読者の皆様、予告ではまず出そうにないグロ展開を未然防止できなかったことをお詫びいたします。






 ていうかね、これこそユーリプテルスが"暴走凶戦士"なんて言われてる所以。


 何かしら彼に憎しみの感情を抱かせるようなことがあれば、それが引き金となって殺戮タイムがスタート。


 さっきみたいに誰かが静止させないと、延々と殺戮をやめない上に必ず流血沙汰になるので怖い。


 いまどきスプラッタ映画が流行るとも思えないしさ…。





 まったく、バーサークモードは消去した筈なのに、なんでまだこんな殺戮癖があるのやら…。


 やはりこれは、システム上ではなく、心理上の問題なのかな…。


 となると、知識面ではどうにもならないね。どうしたものか。







 あぁそうそう、そもそもなんでユーリプテルスが町に襲撃かましたのかっていうと、


 近くにあった張り紙に、"アレス"優勝候補を名乗る強者が多数在住とかなんとかぬかした文章があって。


 その真相を確かめるべく、ついでにデータ採取もするべく、試しに町の中の闘技場で暴れてみたらあぁなったらしい。


 まぁ、いろいろな方向で調べてみたら、その辺の情報はガセネタだったけどね。










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「まったく、あれほど僕が許可しない限り殺戮はよしなさいと言っているのに」


 「だって…」


 「だってもダンテもないの。ただでさえ君は一種の有名人なんだから。

  人殺しなんてある意味で最も目立つマネを繰り返されても困るんだよ」








 やれやれ、だよ。どうしてなんだろ。


 念のためにスキャニングまでしてみたものの、やはり異常をきたすような存在は見受けられない。


 やはり精神的なところなんだろうけど……どうにもなぁ。










 「だって、どいつもこいつも歴史の汚物だの産業廃棄物だのって」










 ……前言撤回。理由が分かった。


 歴史的なトラウマだコレ。


 案外ね、物理的な暴力よりも言葉の暴力の方が尾を引いたりすることって多いの。


 もちろん、物理的にも言葉的にも暴力を受けてたってなると、ある意味取り返しのつかない状態になるけど。


 トラルーの逆鱗とかその例だ。ユニクロン扱いされて執拗な迫害受けてたし。


 ユーリプテルスってその類だよ。しかも重傷。






 歴史背景などを見る限り、あの肉体改造(?)は本人が望んでいたワケじゃない。


 言ってしまえば、生態研究グループによる陰謀に近い。


 そうとも知らないくせにあーだこーだと言いがかりをつけてくる連中が許せないんだろう。























 トラウマね……ある意味、世界がどれほど病んでいるかを現すバロメーターともとれるかもね。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 しかし、となると他にも可能な限りは情報を集めておきたいところだな。


 特に、"アレス"に向けてとなれば尚更な。










 「……それで僕の方を見やる時点で、何の情報が欲しいのか分かった気がするけど…」











 そうか、ならさっさと話してもらおうか。


 あのアストラルとかいうヤツについて、知ってることを洗いざらいな。













 「予想通りすぎて笑いそうになったよマスターコンボイ。

  まぁ、しゃーないね。もっとも、知ってる情報については結構古い。参考の域は出ないよ?」


 「まぁ、ないよりはマシでしょ。僕らも気になるし」


 「ハッキリ言って、オレの情報網でもアイツについてはさっぱりだ。

  少しでも情報がある方が助かる」


 「それなら話しておこうか」











 恭文や柾木ジュンイチからも押され、情報を解禁する気になったようだ。


 オレも正直同じことを思っていた。


 敵を倒すには、まずは情報が無ければな。














 「まずアストラル自身についてだけど、彼がユニクロンから生まれたっていうのは大マジ。

  目撃までしたしね。もっとも、ユニクロン経由だけど」


 《この機動六課に来るキッカケになった、正夢云々の話ですね》


 《あー、確かにユニクロン自身の記憶とかなら、ミスタ・トラルーも知ってるよな》


 「彼の誕生から数年後、偶然とはいえ鉢合わせしたんだけどね。

  まぁその辺はともかく、彼は僕とは違って、ユニクロンが意図的に生み出した存在だ。

  その使命は、世界の監視と、戦いの混迷化であるといえる」














 監視と混迷化…か。その割には、記録映像を見る限り戦闘能力も高められているようだが。


 ベクターメガトロン、カオスプライム。


 お前たちならどう見る?
















 「ユニクロンの意思細胞だけがダブルフェイスとして独立し、戦場に介入した例もある。

  もっとも、今はダークコマンダーと名乗って再度暗躍しているようだがな」


 「つまり、さほどイレギュラーなことでもないということだ。

  それと、アイツは本当にユニクロンの意思に忠実に従っているワケでもなさそうだ」


 「何それ?」















 そうか、二人はそう見るか。


 マイクロンについても、トラルーはパネルになっているものについてはユニクロンの細胞だと言っていたな。


 今回の件でついに明らかになった、アストロブラスターも含めた3つの神器もな。


 だが、アストラルがユニクロンの意思とは無関係だというのか?


 恭文も思わずマヌケな声を上げたが、気になるな。

















 「ユニクロンから生まれたからって、僕やアストラルはそもそも精神生命体。

  かつて食らってきた星々と共に取り込んできた生き物の魂やスパークを変質させて、生命体として生まれ変わらせたに過ぎない。

  その、変質する前……元々の人格の記憶も引き継いでしまうし、暗示をかけられるワケでもない。

  心はそのままに生まれ変わって出てくるようなものさ。だから、忠誠云々については、ほぼ野放し状態。

  ユニクロンに従うも背くも、意思だけでいえば、自由となる。

  だから僕はこうして離反し、アストラルも、ヒマだからつるんでるだけにすぎない。離反しようと思えばできる筈」


















 どこぞやの歩く図書館の如く、近場にあったホワイトボードに次々と絵を描きながら説明するトラルー。


 ユニクロンの部分がただの丸で済まされているのは……めんどくさかっただけだろうな。


 アイツのモールドはハンパない…というより、プラネットモードがほぼ球体だからな。


 微妙に哀れにも思えなくもないが、相手が相手なので寧ろいい気味だと思っておく。




















 「でもさ、だったらなんで?

  監視ぐらいだったら、別に戦闘能力を高めなくたって…」


 「言ったでしょ?目的は、監視"と混迷化"だって」


 「混迷化……混迷化……そうか、そういうことか!」


 「アレックス!?」


 「そうか……だったら、別に野放しにしておいても何ら問題はない…!」


 「何か気づいたんだったら、教えなさい!早く!」


 「ああああああああ」













 恭文の問いに、トラルーの答え。


 そこからアレックスが何か気づいたようだが……ポラリス、そんなにゆするとそいつの意識が飛ぶぞ?














 「…はっ!?ご、ごめんなさい!」


 「あ、あはは……元気なのは、いいことですよね…うっぷ。

  ともかく、今のことなんですけど……別に放置してても問題ないんです。

  戦いの混迷化……それに必要なのは、とにかく戦いを長引かせる理由。

  強大な力を持つ者を生み出し、ばらまくことで、世界は遅かれ早かれ、それを巡って争うようになる。

  しかもそれが、手に入れにくければ入れにくいほど、自然と長引いていくんです。

  オマケにそれが、自我を持って移動し、手にしようとすれば武力で抵抗するとなれば……躍起になっていく筈…。

  躍起になって追いかける内に戦いが勃発し、それがあちこちで起こるとなれば……」


 「さすがはアレックス、大正解〜!!ニューヨーク行きたい?

  ともかく、ユニクロンの活力の源は、戦いによって生じる負の感情そのもの。

  それを絶えずに供給されてくるようにするには、戦いが多ければ多いほど、長ければ長いほどいい。

  負の感情、ひいては憎しみが続くことになるから。

  覚醒手段を切り替えただけで、マイクロンを生み出した本来の戦略、

  マイクロンパネルを巡る争いによる憎しみの無限供給は続いているんだ」


 「え、えっと…だから…?」


 「まぁ要するに、僕やアストラルがどう行動していようと、

  僕らの力が明るみに出れば出るほどに、世界のどこかで争いが起きてる。

  高い戦闘能力が分かれば、戦争屋とかはこぞってその力を欲しがるだろうからね。

  つまり、戦いの混迷化はできているワケで、わざわざ精神操作とかしなくてもいいってこと」


 「なるほど、つまり給料泥棒みたいなものだな!」


 『いや、どうしてそうなるっ!?』










 アレックスとトラルーの説明に混乱しかけたエリオ・モンディアルに、トラルー自ら要約してやる。


 その直後に出たデネブの謎発言に、オレたち全員が同時にツッコんだ。


 メンテ直前でAIのシャットダウンに入ろうとしていたオーディーン達からさえも。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 どう?ギガントボム。


 あのチャクラムビット、分析できた?









 「あぁ、問題ない。今回は優秀な助手も一緒だったしな」


 「えへへ」


 「それであのチャクラムビットだが、やはりどこの技術屋でも開発履歴どころか設計図の存在さえなかった。

  完全にアイツのハンドメイドということになる」


 《プレダコンズでさえ手に余るシロモノだったようです。

  単体浮遊と遠隔操作は当然としても、射撃も格闘も防御も同時にこなせる上にあそこまで高精度なコントロールを可能とするとは》












 やっぱり…ってところね。


 ギガントボムを中継してレルネに頼んで、アストラルって子が使ってた攻撃装備、チャクラムビットについて調べてもらったの。


 展開してから密集するまで、そして散開してからの超高速オールレンジ攻撃。


 しかも格闘と射撃を織り交ぜている……アストラルからの指示をビットがそれぞれで受け取って、かつ高速で実行している。


 ビット兵器でなくても厄介な武器ね。おそらく、ジュンイチのフェザーファンネルやイスルギのシールドビットでさえ手におえない。


 数は10基で固定のようだけど、あまりにもコントロールと飛翔速度が速すぎて、追いきれないわ。


 それに、おそらくエネルギーをビット自体に纏わせて、それでカッターやファンネルのように使えると思う。


 チャクラムがモチーフということは、当然強度についても群を抜いているでしょうし。












 「霞澄たま、ご明察です。分析結果によると、アレは多種多様な特殊合金を配合させて作られているようです。

  デバイスが物質転送で呼び出せる物質のどれにも勝る強度を誇っているといって間違いありません」


 《中国古来の殺人カッターを模しているだけあって、単純な格闘武器としても十分すぎるくらいのスペックですよ》


 「そうね」












 まさかアレって……"ビット使いをビットで潰す"ためにあるような装備なんじゃ…?










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 「待てぇぇっ!!」


 「しつこいなぁ」










 えー、僕は現在、ゴッドアイズのお二人さんと追いかけっこしている真っ最中。


 なんでって?


 昨晩の刑務所消滅騒ぎが本格的に六課に伝わったみたいでね。


 追撃部隊ってヤツがメルクリウスにやってきたのさ。


 ユーリプテルスは射撃装備のメンテで出られない。


 仕方ないので、メルクリウスから引き離す為に、僕がこうして鬼ごっこの鬼の役をやっているワケ。





 で、物騒にラケーテンバレットで突撃してくるアリシアとデッドヒート状態。


 普通にビヴリンディであしらってもいいのだけど……面白そうだから、コイツも使ってみようかな。


 正直、"アレス"までのいつごろにテストしようかと悩んでたし、グッドタイミングかもね。


 青に黄色の縁取りがなされたリストバンドをはめて、












 「起動せよ――クヴァシル、ビヴリンディ、グリームニル」











 バリアジャケット式なので私服代わりに常時展開している、コート型の超大容量記憶ストレージ"クヴァシル"。


 その上から着こめるようにローブ型にした、無線遠隔操作が可能なチャクラムビットを搭載・制御する"ビヴリンディ"。


 更に今回は、まさにできたてホヤホヤなリストバンドタイプの"グリームニル"も追加装備。 














 「また新しいデバイス!?」


 「ちょっと、まさか"四神"を真似したとか言わないでしょうね!?」


 「まさか。モチーフの時点で、その気はさらさらないよ。

  しいて言えば、僕は自らバリアジャケット式のデバイスのテストケースになっているんだよ。

  コート、ローブ、そして新型のリストバンド」










 アリシアとあずさからツッコミが来るけど、さらっと答えてやる。


 まぁ、さすがにコアはあるけどね?


 クヴァシルとビヴリンディは留め金になっているひし形と星形のペンダント。


 グリームニルは、リストバンドについてる丸いプレート。


 どれもこれも、正真正銘のメイド・イン・アストラルさ。すごいだろ?


 まぁ、あのレルネって子には負けるけどね。さすがにロボットまで手を出せるほどに器用じゃないんだ。













 「リストバンド……接近戦対応型?」


 「前のがビット装備だったワケだし、接近された時の対策なんだろうけど…イカヅチ!ゴウカ!」














 おっと、向こうも別なデバイスを起動してきたか。


 イカヅチ……砲撃から連射まで、魔力射撃に関する機能に特化したタイプか。龍。


 ゴウカは、"四神"を制御するブーストデバイス。これは普通に朱雀。


 他にシールドビットを主武装とするイスルギ、玄武。


 近接戦に優れた斧型のレッコウ。四神にはめるなら白虎か。


 まぁ、あっちは所詮、神話の四神というワケじゃなくて、単にデンライナー基準だろうけど。


 つまり名前の通り。4つ全てを同時展開することで「電光石火」となるんだ。


 でも、今回はイカヅチとゴウカのみ。ということは……火力のゴリ押しでくる気か。












 「ゴウカ!出力を一気にイカヅチへ!そしてイカヅチ!」


 《Burst mode!》


 「のっけから、タイラントぉ、スマッシャー!!」













 来た。しかもかなりの出力。


 ゴウカが自慢のブーストで飛躍的に向上させた出力を余すことなく使い、


 カニのハサミのような形状になったイカヅチから魔力砲として放たれる。


 ……今回はグリームニルの実戦テストがメイン。となれば……










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 イカヅチから放たれたタイラントスマッシャーが、一直線にアストラルを飲み込んだ。


 手ごたえあった!


 撃墜できなくたって、すぐに反撃できるようなダメージじゃないでしょ!









 「砲撃の後に動きを止める。仕留めたと確定できないのにそれは、落としてくださいと言ってるようなものだよ?」









 その言葉と共に、爆炎の向こうから"ロンギヌスが"飛び出してき…って!?


 待って待って待って!?うそ!?爆炎の向こうって、アリシアちゃん!?








 「いやいやいやいや!?私ちゃんとここにいるよ!?」


 「だよね!?そうだよね!?」










 慌ててロンギヌスをかわしつつ、アリシアちゃんと合流。


 よかった、こっちは本物みたい。ビックリしたー!!









 「アリシア!あずさ!大丈夫!?」


 「フェイト?追撃部隊に加えられてたっけ?」


 「そうじゃないけど、つい心配で様子見に来ちゃた」


 「まったく、相変わらずだなぁ〜」









 そこへバリアジャケットを身に纏ったフェイトちゃんが合流。うーん、となるとアストラルはどこへ?












 「ここにいるじゃない」











 ……何が何だか分からなかった。


 フェイトちゃんの声が聞こえたかと思うと、


 後ろから衝撃を受けて、私はアリシアちゃんと共に下の地面に叩きつけられていた。


 なんとか起き上がろうとしながら見上げてみると、不敵な笑みを浮かべたフェイトちゃんの姿。


 でも、徐々にその姿が崩れていって……アストラルの姿になった。













 「……ふふ、うふふ……ここまですごいと、自分に才能があるんじゃないかと惚れてしまうじゃないか…。

  惚れてまうやろー!的な!

  さて、これでお分かりかな?聡明な君らなら、分かると思うんだけどねぇ」


 「……まさか……グリームニルの…!?」


 「ピンポォーン!アリシア大正解!

  そう、このグリームニルはね、一言でいうと"超高精度偽造デバイス"なのである!

  姿形だけでなく、使っている装備までもを忠実にコピーできちゃうビックリドッキリメカなのだ!」


 「じゃあ、さっきのロンギヌスも…!」


 「その通り!君が放ったタイラントスマッシャーを瞬間展開したチャクラムビットのバリアで防ぎ、

  生じた爆炎に紛れてロンギヌスをコピー、投げつけたってワケさ」











 周辺に散らばるチャクラムビットの1つを手に取って、指でクルクル回して遊びながら私たちに答えるアストラル。


 気がつけば、周囲を完全にチャクラムビットで囲まれている。


 データさえあればコピーは一瞬で完了。そのデータはクヴァシルから好きなだけ確保できる。


 デバイス同士の連携ってワケ…!?













 「せっかくだ、君らにも味わってもらおうかな。

  僕のアタックファンクションを」


 《アタックファンクション・フルビットバースト》












 アストラルの背中に一瞬だけトラルーのものと同型のフォースチップが見えたかと思うと、


 次の瞬間には全てのチャクラムビットが輝いてこっちに殺到して――

































 (第23話へ続く)








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―










 リティ「うーん、俺、今回は大したことしてないような…」


 ステンス「気絶して以降出番ナシだからな、この際気にするな」


 リティ「救済処置一切ない!?」


 ステンス「というワケで、今回は"バーサークモード"について教えてやる」





 ステンス「バーサークモードは、闘争本能を極限まで引き出した状態のことをいう。

      主の中に眠る闘争本能を強制的に引き出し、徹底的に攻撃を行うようにするシステムだ。

      闘争本能を引き出すことで戦闘力の飛躍的な向上などの効果があるが、

      使えばほぼ確実に暴走状態になり、エネルギー切れなどの事情がない限りは止まらない。

      敵味方の区別もなくなり、近くにいる者を無差別で攻撃する。

      システム自体は電子的なものだが、専用の特殊な機械を使うことで生身の者にも影響を与えることができるらしい。

      古代ベルカの崩壊によってテクノロジーが消滅し、実際に運用されたのはユーリプテルスの件だけのようだ」






 リティ「バーサーク……バーサーカー……凶戦士…」


 ステンス「ユーリプテルスのヤツが暴走凶戦士などといわれているのは、このシステムによる大虐殺が原因だといえるな」


 リティ「ではまた次回!」








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 <次回の「とたきま」は!>





 イテン「トラルーに浮気なんてさせないんだからねっ!」


 ???「悔しかったら、捕まえてごらんなさ〜い」


 ビコナ「おおお、なんと大胆な…」


 スター「何ぃ!?ヒューマンフォームがあれば、あんなうらやましいマネが…っ!!」


 はやて「おーおー、なんか面白そうなことになっとるなぁ」


 レルネ「さぁ、全国のショタファンの皆様!

     次回はあなた方の欲求をかなえられる…かもしれない大発明が登場ですよ!」


 恭文「何故そこで僕を見る!?」










 第23話「疑惑と拉致と欲求解放」











 ???「わー、お菓子だぁー」


 月影丸「次回、拙者らも登場なのでござるが…」


 トラルー「取りあえず誰か次回の僕を助けてください」















































 あとがき









 またもや大きく間が開きました。隔週更新って難しいですねぇ…。





 そんなこんなで、アストラルとユーリプテルスが主役(な筈)の第22話です。

 主にこの二人のこと、それと次回以降に持ち越されるイベントの伏線がチラホラ。




 他にも、こちらにも登場して騒がせてくれたネガタロスやら、

 パンドラと同系列の技術で誕生した新型機オーディーン&フェンリルやら。

 キャラクター面でも今後につながっていく下地ができつつあります。

 ネガタロスが六課に来た後、ということで、今回の時点で「とコ電」第16話〜第17話の中間ぐらいの時期となります。




 次回は、そんなこんなから離れてのドタバタ劇。

 ぶっちゃけた話、以前の日誌であった「男性陣の不幸」の「とたきま」バージョンなお話になります。

 誰が不幸になるのかは、次回予告の時点でモロバレな気もしますが(ぁ)






 …………ちなみに、"アレス"開始となる第3クール突入早々にも「男性陣の不幸」なエピソードが入る予定だったり(オイ)


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 ユーリプテルス。無邪気な破壊神ですねぇ。
 しかし、無邪気なだけにバーサークモードさえなんとかすれば味方化フラグの期待もアリかも。悪意がないだけに救われてほしいキャラですね。

>恭文の出会いがしらのラッキースケベのことも聞いてもいないのに暴露してくれましたとも。

 外堀か!? 恭文攻略のために外堀から埋めていくつもりか!?
 おのれメガーヌさん! いいぞもっとやれ(マテ