レルネ「さて、第3クールでもやります!"レギュラーメンバーのドコナニ"のコーナー!」


 プロト「特に"アレス"開始後からが本領発揮となります。皆様乗り遅れのありませぬよう!」


 レルネ「前回の動きはこのような感じになっております!」










 1:スターがあずさとアリシアのチームを圧倒。戦闘継続中。




 2:ヒョウエンが天下無双状態。

   電王組やガンナーコンビ、恭文たちと交戦し、ガンナーコンビ、リティ、マスターコンボイを1人でブレイクオーバーさせる。




 3:霞澄はツクヨミ、タケハヤ、ヒルメを迎え、模擬戦のデータ収集を開始。




 4:オーディーンとパンドラはフェンリルの狙撃を活かし現状ノーダメージ。

   フェイトチーム、セインチーム、ひよりチームを牽制。




 5:ビコナ、月影丸、ノーザンはブレイクたちのチームと交戦。

   ノーザンの八つ当たりによりこれを瞬殺。




 6:トラルー、イテン、マキトのチームはシグナム、ヴィータ、ザフィーラのチームと対峙。

   戦闘継続中。




 7:はやて、リイン、レクセのチーム、現在内輪揉め中。




 8:ステンス、ルアク、ブライのチーム、漁夫の利作戦で密かに動き回るも、

   シグナルランサーら交通機動班のチームに発見される。










 プロト「特設スペースのジオラマが廃都市ということもあって、皆さん散らばってますねー」


 レルネ「まぁ、まだまだこれかr」


 プロト「今回の本題は違うみたいですけどねー」


 レルネ「えぇーっ!?」





































































































 

「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






「とある旅人の気まぐれな日常」






第26話:キカイでもケモノ 〜猛獣警報発令中!?〜












































































 なぁホクト、あたしらって今、夢見てるワケじゃねぇよな。


 ちゃんと起きてるよな。

















 「ノーヴェ姉ちゃん何言ってるの?ほら!」


 「あででででででで!」


 「ほら、夢じゃないよ?」


 「あー、そうだな、うん、夢なんかじゃない」
















 ホクトに思いっきりほっぺつねられて、現実だと再認識。


 ちなみに、あたしやホクトはお互いの"最後の切り札ラストカード"を起動、オットーも"インパクトカノン"なんざ装備して、戦闘準備はとっくに完了だ。


 対して、今こうして向き合ってるアイツは……ロボット3体を従えてる。


 んで。




















 「のっけからのぉ、超、無双合体ぃぃ!!」




 《「合体装着完了――クロスディメンジャー!!」》



















 問題はそっからだ。


 アイツ――レルネが合体なんて言い出したと思ったら、ロボットどもがパーツ単位で分離。


 更に変形合体して、同じく武器同士で変形合体した大剣を掴んで決め口上。


 ゆうゆうと大剣を肩に担いで、ヌンチャクみたいなモン左手に持って、こっちを見てる。






















 《案ずるな。アーツバトル連盟には既に特許を得ている。すなわち、この形態でも参戦可能!

  本戦に備え、初めから合体状態でバトルさせてもらうぞ!》


















 3体のAIが1つに統合されて、独自の人格でこっちに話してくる。


 一点ものだからってそこまでいくか。























 「ふふふふ、かつてジンさんたちにも言いましたが、技術屋とは自分で手がけるものに想いを込めるもの。

  その想いに、限界や常識などないのですよ!」


 「随分と力説するね…」


 「すごい自信だねー」





















 レルネがなんか言ってるが、オットー、ホクト、そんなの関係ねぇ。


 相手だっていうなら、真っ向から突破するだけだ!




























































































 「単に、フェンリルの射程外へ逃げる口実だろうけど」


 「狙撃くらってるもんねー」


 「なるほど、それで僕らに狙いを切り替えてきたと」















 聞こえてるぞ、そこっ!!










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 さってと、そろそろポジション変えた方がいいかもなー。


 いくらなんでも長く居座りすぎたか?


 なんか赤いパーカー着たオレンジ頭なヤツがこっちに突撃してるし。










 《なら、俺とパンドラで突破口を開く》


 《その隙にフェンリルから移動して!》










 オーケー。ならさ、あのオレンジ頭――スピアをどうにかしてくれるか?


 こっちはこっちで、目くらましぐらいはできるし。












 《じゃあ俺が行く。ビームガーターを試すにはもってこいだ》


 《気をつけて》


 《気をとられてオレたちからあんまり離れるなよ?》


 《あぁ》















 ドミニオンライフルでスピアを牽制しつつ方向転換。


 今度はちゃっかり近づいてきてたセインとディードをドミニオンライフルで狙い、ここでワンクッション。


 どっから出したとか言わないでほしい、左手にあるもの。


 そいつを思いっきり、投げる!



















 「こ、これは…」


 「煙幕弾か!」


 《悪いな、正面きって近接型とやりあう気はないんだよー!》

























 そう、この移動はあくまで次のポジションの確保だ。


 一応格闘戦もできるけど、あくまで予備だし。


 大人しくドミニオンライフルでの遠距離攻撃に徹するのがオレのバトルスタイルってこった!























 「そうやすやすと狙撃ポイントとられてたまるか!」


 《っと!?》



















 突然、"地面から"セインが飛び出してきた。ディープダイバーってヤツか!


 いつの間にか出したハルバードでこっちを狙ってくる。


 ……けどな!


















 「おっと!?このこのっ」


 《くそっ、このっ》

















 こーゆー時に役立ってくれるのが、クリアーな色になる特殊物質で作られた、両腕のブレード。


 角度が固定だからちょっと使いづらいといったら使いづらいけど、持ち帰る手間がないから便利といえば便利だ。


 すれ違いざまに斬るって感じだな。


 で、そんなこんなやってハルバードをあしらってるワケだけど。





















 《そらよっ》


 「おぉっ!?」





















 ハルバードの柄を左手で鷲掴み。悪いな、ドミニオンライフルを取り回す関係上、パワーもそれなりにあるんだよ。


 一応、スペック上はオーディーンと同等ぐらいの腕力とかあるし、脚力は少し高めぐらいらしい。


 オーディーン自体、近接戦闘のみならず総合的にスペック高めで作られてるから、それと同等ってなりゃ少しは張り合えるってもんさ。
























 「でもいいんスかー?

  ポジションチェンジしようとしたスナイパーが動き止めちゃって」


 《だよなー、イヤな予感しかしないからな……っと!》























 そう、別にウェンディのことを忘れたりなんかしない。


 わざわざ、一度牽制した相手を忘れたりするかよ。


 なので、ドミニオンライフルを持っている右手をウェンディがいる方に向ける。


 ハルバードを掴んでる左手とクロスさせる感じだ。


 さすがにこのまま照準合わせまでできるほどの技量はない。ていうか、フレーム構造的に無理。





















 《フェンリル!》


 「行かせません!」


 《こっちはいい!ディードに集中してろ!》




















 こっちに加勢しようとするパンドラはディードと取っ組み合い中。なので敢えて手助け拒否。


 ……あぁ、一度言ってみたかった。こんなセリフ。


 オレ、もしかして少しくらい輝いてる!?

























 「――失敗したな」

























 その言葉と同時に、オレはちょっと青ざめた。


 セイン、ハルバードの方を諦めて、拳銃出してきたし!


 あーそうだったな!アイツってシールド型のアストライアだけじゃなくて、リーブラっつー二丁拳銃あったんだっけな!


 失敗だったな!マジで失敗だったよな!






 しかも二丁拳銃って、オレらの元ネタのゲームダンボール戦機じゃチート扱いされてんだぞチクショー!


















 「逆転サヨナラだ!」


 「連係プレーで返り討ちッスよ!」





















 …………なんてな?














 『あっれぇ!?』















 背中のブースターを急点火。


 それによって一瞬で大ジャンプしてようやっとポジションチェンジ。


 移動距離はせいぜい100メートルくらいだけど、一瞬なら十分見失うよな。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 《ぐ……ぐふ……》


 《……っ》










 えっと、地の文という意味では初めまして、リュウビです。


 マイスター・イレインによって完成された自立型パワードデバイスです。


 イレインもついさっき席を空けてしまったので、一応あの2人について読者の皆さんにご報告を…。















 ……皆さんは、想像できますか?














 ビームチェーンソーとマジカル鈍器でクロスカウンターするという光景を。
















 一見するとチェーンソーでやられた方……サリさんが完成させた方、名前はナイトメア。


 あっちの方が痛そうどころかミンチになりそうな気さえするけど、非殺傷設定かけてるからか、そんなことはなく。


 マジカル鈍器で殴られた方……ヒロさんが完成させたハカイオー絶斗ゼットも十分に痛そう。


 ていうか、チェーンソーの刃で殴るって、どういうやり方したらできるんだろう、そんな芸当。














 《《俺の……勝ちだ……っ》》















 とことん負けず嫌いなあの2人、全く同じことを同時に言いながら仰向けに倒れてブレイクオーバー。


 さて、これをヒロさんとサリさんになんて説明しよう…。




















 大会まであと18時間切ってるのに、2人とも外部装甲ズタボロなんだけd




















 『あぁーっ!?』


 「あちゃー」




















 って、遅かった!?

























 「……お前ら……あれほど手加減しろっつったのに…」


 「いや、そんなの一言も言ってないぞ」


 「いつもどおりに放置してたようにしか……」

























 と、とりあえず……ヒロさんとサリさんは徹夜確定……かな?


 ハカイオーもナイトメアも、少なくとも外部装甲はフルメンテしなきゃいけないだろうし…。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「タケハヤ、データ収集はどうですか?」


 「順調だよ。この分なら、次のシミュレーションデータのアップデートには使えるんじゃないかな?」












 タケハヤとツクヨミは仲良く戦場のデータ収集。


 もっとも、ツクヨミは主に魔力濃度とかみんなの魔力量の変動とかを重点的に見てるみたいだけど。


 え、自分は何してるかって?




















 「ひどいわ……これでもレギュラーなのに、新入りに初登場回で瞬殺されるとかないわ……」


 「どーしてくれるのよ……つかさやみゆきはともかく、こなたとか日下部とかに何言われるか分からないじゃないの……」


 「オレらなんて……オレらなんて……!」


 「出番10秒足らずって…!」


 「まーまー、きっと運が悪かっただけなんだな〜」




















 順次、ブレイクオーバーしたみんなの回収と治療。あと武装のメンテも自分の仕事。


 ちなみに、回収については転送魔法で迅速かつ安全に。ロングアーチスタッフに感謝感謝。


 大会開始まであと18時間を切ってるワケだし、ちゃんと万全の状態で送り出せなきゃね。


 …………今こうしてメンテナンスベッドに寝かせてる5人が揃いに揃って瞬殺組だってことについてはノーコメントで。






















 「何故です?」


 「自分、技術屋ですから」






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 あのさー、これはいくらなんでもアレじゃないの?


 ジュンイチさんほどじゃないけど、チートでしょこの暴れっぷり!!
















 「さて、これでチーム・アルトは恭文殿だけ。トドメいかせてもらいます!」


 「じょーだんっ!!」


















 ミハシラをトンファーとしてかまえてヒョウエンが突撃。


 元々僕がパワー型じゃないことを差し引いてもパワー差がありすぎるので、素直にバックステップで回h――




















 「その程度の回避、追いきれないとでも!?」





















 って、まだ突撃してくんの!?


 対処しきれず、タックルをモロにくらってブッ飛ばされる。


 ミハシラで殴られなかっただけマシだけど……って、え?

























 《馬鹿力だけじゃなくて、ちゃんと自分の武器の特徴も活かしてますよ。

  あの伸縮機能を活かして、棒高跳びみたいに"自分を"投げ出したんです!》

























 アルトからの声でやっと気づく。


 伸ばしていたミハシラを元の長さに戻すヒョウエンの姿に。


 殴りかかるモーションから、グリップを支点にして回転させて地面に突き刺して伸ばしたんだ。


 あの一瞬の間に持ち替えにジャンプにタックルって動作を済ませてしまうなんて、


 どんだけアレで訓練してたのさ。


























 「そういえばお前と模擬戦すんの、数十年ぶりだったか!?」


 「そうなりますね……隊長!」


























 ハンマーモードのルディンを振りかざして突撃してきたスターの一撃を、


 ミハシラ2本をクロスさせてのガードで受け止めるヒョウエン。


 ところで、隊長って?



























 「前に話したっけか!?オレがカナヤゴやトラルーと一緒に傭兵やってた頃もあるって!」


 《そういえばリティさんが話してくれましたね》


 「それにはまだまだ補足事項ってのがあってな。

  古代ベルカ戦争が終わった後も、オレはつい最近まで地球中を又にかけて傭兵は続けてたんだ」



























 ブリッツスカイのスラスターをふかして後退、丁度スターとヒョウエンと僕とで三角形を描くような位置に。


 ていうか、地球中を又にかける傭兵って。どこのアストレイな人?


























 「まぁ、存在自体が極秘扱いだったっていう点はある意味ビコナや月影丸と変わんなかったけどな。

  で、たまたまその任務中に大規模な火災が起きてな」


 「その火災現場に私たちのチームが急行した時、先行して突入した私と鉢合わせしたのです」


 「やばかったなー。民間人にモロバレされたらいろいろ厄介だからな、地球は」


 《まぁ、どの国でも考えそうなことって大体同じですしね》


 「ちょっとアルトさんや?」


 「だが、ブリッツスカイのセンサーが一瞬で見抜いた。ヒョウエンが人間じゃないってな」


 「そう、このような姿をしていますが、種族的には月影丸殿と同じ機獣です。

  お互い正体が露呈してはよろしくない者同士、密かに提携を組んだのです」


 「提携を組む条件として、オレはヒョウエンたちのチームのトレーニングコーチになった。

  実戦訓練形式で、様々な火災現場でチームとしての行動力を磨く訓練。

  コーチとして直接指導してたもんだから、何だかんだで隊長みたいな位置になった。

  ヒョウエンが隊長って呼ぶのはその影響だな」





















 前回割り込んでくれたナレーションさんのおかげで分かっちゃいたけど、ホントに機獣なのね。


 まぁ、ヒューマンフォームの概念があるから、別に見慣れないことでもないけれど。


 特にうちのガキ大将コンボイのおかげで。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「これでもか!これでもか!」


 「あ……あが……あ…!?」













 …………マイペースどころか、なんもしてないなー。


 トラルーです。


 せっかく副隊長ズプラスαと鉢合わせしたっていうのに、そもそも戦闘態勢に入ることすらなく見せ場とられたとです。


 トラルーです。トラルーです。トラルーです……

















 「なんでそんな妙に懐かしいお笑い芸人みたいな話し方してるの?」


 「むしろコレに食いつけるって、僕と離れてる間に何見てたんだ」





















 イテン、エン○の○様とか見てたん?


 アレって夜10時からだから、良い子はギリギリ寝ちゃう時間なんだけど。


 いや、いいのか。ガチでシスターシャッハに締め上げられたような悪い子だし。












 「うわーん!」












 さて、とりあえず現状をマジメに話しておこうか。


 僕がネタ発言する直前から、マキトがヴィータを締め上げてる。


 烈火の騎士はというと、描写されることすらなく締め上げられて撃沈。


 しかし、乙女相手に一切のためらいもなく羽交い絞めで締め上げるってなぁ…。


 なお、決め手は2人とも羽交い絞めからのコブラツイストという、絶対肉体的に無理がある組み合わせ。


 敢えて言おう、おおよそ剣士の戦い方ではない。


 あと、マキトに下心とかは一切無い。だって、締め上げてる時に限って無表情なんだもの。


 ていうか目がつや消しになってるし。アレ間違いなくイッちゃってるよ。危ないよ。























 「あ、トラルーさーん!もーちょっとだけ待っててくださーい!

  そろそろこの人堕ちるんでー!」
























 そしてそんな物騒なことを満面の笑みで堂々と叫んでるんじゃないよ。


 ジュンイチと同類か。



























 「ふぉあっちゃーっ!?」


 「誰と同類だって?」


 「あんぎゃー!」


























 噂をすれば何とやらだよ!チート・オブ・チートめ!


 完全不意打ちでイテンをこんがりと焼きおってからに!ブレイクオーバーまではいってないみたいだけど。


 ていうか、誰と組んでるの?まさか単身エントリー?


 ほら、たった1人で六課の隊長陣をまとめて蹂躙できるワケだし。























 「その言葉をそっくりそのまま返してやろうか今ここで。

  それと、オレもチームだよ。アリシアとあずさに混ざってエントリーさせてもらった」






















 え、なにそれこわい。
















 「いや、さすがにオレが入るとパワーバランス狂うってk」


 「絶賛ぶっ飛び中なフラグ相手と妹を置き去りにしてこっちに乱入してるとかマジこわい」


 「そっちかよ!?」


 「うーん、正論なようなどっこいどっこいなような……」






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 …………この模擬戦……公表したらそれはそれで面白いことになる……。


 そんな、気がする。








 《……正直、相手にしたくない連中も混ざっているがな》








 大丈夫。


 私は別に、機動六課と事を構えるつもりはないし。










 《お前はいいんだ、お前は。

  問題は、私だ。ネガショッカーに加担している以上、"もう"お前にばかりかまってもいられない》












 それも、大丈夫。


 "アレス"が始まったら、新しい出会いが待ってる……気がする。


 だから、私のことは気にしないで……アキレス・ディード。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 あうー、どうしようどうしよう。










 ティアとは途中ではぐれちゃうし、なのはさんは「考えがあるから」って単独で飛び出しちゃったし…。













 「スリアのために、俺、がんばる!」


 「頼もしいわぁ、いつも」
















 ティアがブレイクオーバーしちゃったみたいだから、なんとかなのはさんと合流しようとしたら、


 グラティにスリアのチームと遭遇。そのまま交戦中。


 突破したいんだけど、グラティは重すぎて吹っ飛ばせないし、スリアのムチ「ボルタームウィップ」も厄介だし、それに……






















 「初対面で申し訳ありませんが、これも勝負ですので」
























 いつの間にか参入してた、このアラリアって人がまた問題。





 この人、金髪ロングヘアーに…オレンジ色のターバン、かな。それをハチマキ気味に巻いてる。


 胸にはリティとかと同じタイプのプレートがあって、胸と二の腕から下をインナースーツのようなもので覆ってる。


 肘から下には更に振袖があって、どことなく甲羅っぽい模様がある。縁とラインは黒、他は黄色。


 腰にはオレンジのフード。直線的なラインと、ギザギザアクセントが目立つ。足には黒主体でオレンジのアクセントが入ったブーツ。


 フードの根元を覆うようにベルトが巻かれ、某メダルのライダーなドライバーとスキャナー。


 あ、ちなみにいうとこれで戦闘態勢らしいです。ただし、ドライバーにメダルがなくて、胸のプレートも単調なまま、パワー不足な状態らしいけど。


 というワケで、アラリアもリティの仲間。でも、どうして加入してきたのか、リティもまだ聞いてないんだって。






 この人、見た感じ、キャロと似た穏やかな雰囲気を放ってるんだけど……放ってるんだけど……!






















 「どうしましたか?そんな、蛇に睨まれた蛙みたいに呆けて。

  まぁいいでしょう、やる気が無いのなら即座に墜とすだけですから」



















 あの、その頭からこんにちわしてる生き物について少しは教えてくれないのかn







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 案外、容赦しないわね…。





 アラリアの前に何もできないまま玉砕したスバル。


 ていうかアレね、俗にいうマミったってヤツかしらね。


 頭だけコブラにばっくりといかれてるわ。


 さて、気絶しない内に説明しておいてあげましょうか?










 アラリアは、確かに私たちの仲間。少なくとも、敵というワケではないし、仲も悪いワケじゃない。


 ただねぇ、レクセの恐竜系コアについてもたいがいだけど、あの子のメダルについては殆ど情報がないのよ。


 とりあえず、スバルと遭遇する前に話したところでわかった点を説明しておきましょうか。







 まず彼女のコアは、「コブラ」「カメ」「ワニ」の3種、爬虫類系を司る存在。


 モチーフとなった生物的な共通点から推測できる特徴は、まず何らかの形で防御力が高いということ。


 ……こらそこ、露出部分多いのにとか言わないの。そりゃあ、胸元なんてオーラングサークルがなかったらどれだけ開いてるのかとか疑問あるけど。


 見た感じ、お肌もスベスベでやわらかそうだし……今度いろいろ試してみたいわね。















 「言っておきますが、私の体を弄んでいいのはリティ様と彼が認めた人だけですので」














 ……話を戻そうかしらね。


 もう1つの共通点といえば、水棲系コアである私に次いで水への耐性もありそう。カメとかワニとか。


 って、これじゃスバルを墜としたトリックの説明になりゃしないわね。













 「では、私自ら説明しましょう。あなた方への説明も兼ねて」













 それは助かるわ。でも、グラティでもわかりやすいような説明、できるかしら?


 この子、見た目はともかく中身の年齢って小学生相当だから…。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 改めて説明いたしましょう。


 先ほどスバルさんを撃墜に至らしめたのは、今も私のターバンから顔を出している彼のおかげです。


 コブラメダルにちなんでコブラのような姿をしており、名前は"ブラーンギー"といいます。


 より高度に操るには専用の笛型ユニットが必要ですが、仮に無くても私の意志には反応してくれます。


 具体的な撃墜方法を言いますと、私の意志に感応したブラーンギーが物凄い勢いでスバルさんに頭から噛み付き、


 強い麻痺効果を持つ毒素を浴びせたからです。ただし、何を気に入ったのか何故か未だに頭だけくわえている状態ですが。


 ブレイクオーバーという名義ではありますが、実質上行動不能という意味で使われる判定用語のようですね。











 「防御力云々についてはどうなのかしら?」


 「どうなんだぁ?」


 「では説明いたしましょう」












 私の両腕にある肘から下の振袖。


 これには特殊な結合素材が使われており、両手を合わせる要領で袖口同士を合わせると、


 その場で瞬間結合されたエネルギーによってカメの甲羅のようなバリアを展開することができます。


 ただし、メダルがあっても私だけの出力ではその防御力は半分程度になってしまいますが。


 なお、元から私の体を包み込むようにオーラが発生しており、見えない障壁を服として身にまとっているような状態です。


 そのため、バリアを展開せずとも、多少の爆発程度なら防御なしでも耐えることが可能です。













 「リティと、"コンボ"するのかぁ?」


 「状況さえ整っていれば可能です」


 「まぁ、うまい具合に同系統のメダル3種がある時点で、予想はできたけどね」













 もっとも、パワーが半減する、という点は、他の皆様も変わらないとお聞きしました。


 リティ様が我々のメダルを系統を統一した上で使う、すなわち"コンボ"の時にだけ真価を発揮することができると。


 もっとも、前述のとおり、私の手元には現在自分のメダルがありませんので、それ以前の問題なのですが。


 メダルシステムにリミッターが設けられているのかもしれません。













 私たちにはできないような発想によって。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 ティアナがブレイクオーバーしちゃったせいで完全に孤立しちゃったスバルには悪いけど、


 大丈夫、もうそろそろ終わるから。













 《なの姉、考えたねー。これはさすがにジュンイチさんも驚くんじゃないかな?》


 「意表をつくのが得意な人だけど、たまにはつかれたっていいよね」

















 というワケで、本番前だけど全力全開、いきます!!







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「あんたの噂は聞いてるぜぇ、黒き暴君こと柾木ジュンイチ!

  よもやこんなとこで鉢合わせるとは!」


 「それはいいんだけどさぁ……ヴィータの方、そろそろ離してやってもいいんじゃねぇの?

  いい加減、失神どころのダメージじゃすまなくなりそうな光景なんだけど」


 「え?……あ」















 ジュンイチを前にしても動じないどころかヴィータにかけてるコブラツイストに微塵の乱れもないとは恐るべし。


 でもね、確かに離した方がいいとは思う。


 肉体的な意味ではともかく、意識の方がブレイクオーバーしてるから。


 それ以上締めたら骨折れるから。ていうかシグナム副隊長に至っては……

















 「…………よくマミらなかったよね、あの人……」


 「うん。意識手放す瞬間にすごーく豪快な粉砕音聞こえたしね」



















 イテンが言った「マミる」については……昨今有名なマギカな方の魔法少女の序盤を見てもらえばわかる。


 ていうかミもフタもなく単刀直入に言っちゃうと、まぁアレだよ、首チョンパ。


 まさかの魔法少女でレギュラーメンバーなのに真っ先に惨殺ですよ?あの作者ってばサディストね。


 で、マキトはシグナム副隊長をコブラツイストでマミりそうなところまでやっちゃったワケですよ。


 あとであの狸隊長に怒られなきゃいいんだけど。あとホシケンとか。


 でも、あそこまでやっちゃったら、明日の"アレス"開催までに治療は間に合うんだろうか。


 どー考えても、首の骨が折れるどころか粉々に砕け散ってるんですけど。




















 「心配すんな。言い方はアレだが、シグナムたちはプログラムだからな。

  シャマルに任せればなんとかなるさ。治療法はアイツが一番心得てるハズだしな」


 「そーゆー問題じゃないと思うんだけど」


 「気にするなイテン。ジュンイチっていうのはそーゆーヤツだから。

  乙女心なんざ微塵たりとも分かってやれない銀河一朴念仁なんだしさ」


 「おぉい!?」





















 心当たりがないとはお前以外の誰も思っちゃいないぞ。


 いったいこれまでに何人のレギュラー女子とフラグ立てては粉砕してんのさ。


 話で聞いた限りでもざっと二桁は超えるっていうじゃないか。浮気者とかそーゆーレベルはとっくの昔に超越してるぞ。


 もう殺されてしまえ。フラグ立てた相手全員に殺されてしまえ。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ……あら?









 「ふ〜ん、これはまたなんとも…」


 「どうした?」














 タケハヤも気づいたようですね。
















 「大気中の魔力濃度が急速低下……一点に収束していきます」


 「収束点の位置特定……完了」


 「って!?」

















 私が魔力濃度の変化に気づき、その"形跡"を追いかけて、


 タケハヤがそのゴールの位置を特定して――ヒルメの顔が青ざめた気がする。



















 「あらあら」


 「えっと、これってさ……さすがというべきなのか、待ったというべきなのか……」



















 気になったのか、霞澄さんものぞいてきましたね。まぁ、既に結果はわかったようですけど。


 多分、シャマル医師が過労で倒れるかもしれませんね。






















 「いや、その前に説教と制裁が待ってる気がするんだけど…」























 それもそうですね、ヒルメ。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 《警告。上空にて急激な魔力収束を確認。

  至急の防御あるいは回避行動に移ることを提案します》











 なんだ?今さりげなくいいとこなのに。


 ブリッツスカイから緊急警告。更に防御なり逃走なりしろという忠告まできた。


 ていうか、上空って……。


 ブリッツスカイのアナウンスは筒抜けだから、思わず恭文やヒョウエンもつられてオレと一緒に空を見る。




















 …………マジか。
























 「いきます――全力全開!!」






















 膨大な魔力を"ブラスタービット4基と共に"収束させて、レイジングハートを振りかぶるエクシードな一等空尉の姿。


 マテマテ。なんで既にリミッター解除してんだよスターズ隊長。






















 「スターライトぉ、ブレイカーッ!!」





















 結界破壊効果付きでもあることで有名な収束砲の光が、なんの前触れもなく模擬戦フィールドを丸ごと吹き飛ばした。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「少しは反省してください!!」


 「はい…」


 「少しどころか限りなく自重しろ模擬戦ぐらい!!」


 「はいぃ…」











 えー、あんの白い冥王が突拍子もなく、よりにもよってMAP兵器級のスターライトブレイカーをぶっ放したせいで、


 参加メンバーの大半というかほとんどが一瞬でブレイクオーバー。


 挙句の果てに体力的な意味だけでなく各々の装備にも大きくダメージを与えてしまったので、


 ダメージケア担当のシャマル先生のみならず、


 みんなの武装の整備を担当しているヒルメからも怒涛の剣幕でアルティメット説教が飛んでいます。







 ちなみに、ヒルメの声量が余計にデカいと思った人はそのまま心中お察しください。


 分からない人のために説明しておくと、ヒルメはそもそも霞澄ちゃんにメカニックスタッフとしてスカウトされた。


 で、丁度よく六課に出向できるということでツクヨミやタケハヤよりも少し先に六課に来てもらったワケだ。


 もちろん、今回の模擬戦でデバイスや武装に損傷が出たときに迅速に修理できるようにってこともある。


 何しろヒルメの特技の1つは、三次元的に取り囲むあのツールボックス群と自身の技術を活かした超高速補修だからね。


 だから、多少の損傷が出ても、よほど本人にダメージが出ない限りは明日の"アレス"に支障がないと保障されてた。


 ところがあの冥王が超広域スターライトブレイカーという暴挙に出たせいで大変。








 あの一撃で殆どの装備が重度の損傷、最悪本体全損なんてことになったせいで、不眠不休の徹夜作業が確定してしまったのだ。









 一応参考程度に話しておくと、たとえばスバルのマッハキャリバーがJS事件中みたいなダメージを受けたとしよう。


 普通なら数日はかかる修復作業を、ヒルメなら20分程度で終わらせることができる。いやホントに。


 彼女は元々所属していたガッツィーでギャラクシーでガードな組織の整備班の主任監督であり主任技術者。


 その整備班自体、トランスフォーマー級のロボが全身ズタボロになったって数十分で修理できるのだから驚きだ。


 ……という実績データから察していただきたい。ピンとこない人はTV版勇者王の19話とか30話とかを見ればいいと思うよ。







 で、そんな彼女のスーパー整備技術をもってしても、全てを明日までに万全の状態にするには徹夜しなくてはならない、と。












 さすがにデバイスマイスターでもあるシャーリーさんとかマリエルさんとかも手伝ってくれるけど、


 その程度で……というかそーゆー理由でヒルメの怒りが鎮まるはずなど微塵もない。


 だからシャマル先生よりも大きい、この場にいる全員が思わず飛び起きるほどのハウリングボイスで冥王を怒鳴りつけているワケだ。


 ちなみに生き残ったメンバーは、僕、ジュンイチ、グラティ、スリア、アラリア、オーディーン、セイン。





 ジュンイチはお得意のエネルギー絶対防御の力場。


 グラティは重力操作で周囲に重力障壁を作り、スリアとアラリアも含めてガード。


 オーディーンはビームガーターを最大展開して屋根代わりにすることで生還。ただしビームガーターは大破したけど。


 セインはディープダイバーで地中に急速潜行してかろうじて回避。


 尚、同等の能力を持つイテンは撃墜。やり方は同じだったんだけど、セインのアストライアみたいな速度補助がなかったので間に合わず。






 で、僕は……実は"トランスカウンター"という防御技がある。


 これは光学系・物理系を問わずエネルギーを吸収・反射できるというもの。


 物理系については、この障壁に叩きつけられた衝撃とかだね。衝撃や振動も、運動エネルギーだから。


 光学系については、ジュンイチと同等。つまり、付与効果があろうとなかろうと防御可能なんだ。


 反面、僕が保有する技の中でも1、2を争うほどに燃費が悪く、フィールドとしての連続展開は早期の"ガス欠"を招くのでごめんこうむる。


 だから普段は手のひらサイズで、イグナイテッドと合体するヘッドウィングモードでやっとフィールド展開できる。


 第1話でヘッドウィングモードの方が戦闘でも好都合だって話したのはそれ。僕のエネルギーサイクルを大きく補助できるんだ。


 一応、展開範囲と燃費の関係についてはもう少し補足事項があるんだけど、長くなるのでこの辺にしておく。
















 話を戻すけど、まぁそこの冥王には反論の権利も便宜を図る権利もあるワケないので、生き残って立ち会ってる僕らは全員で放置。


 これぞまさに四面楚歌の構図なり。














 「だ、だけど、別にブレイカー使っちゃダメっていうルールはなかったし…」


 「模擬戦で味方にぶっ放すなっていってんのっ!!」


 「ひぃぃっ!!」






















 ……そのくせに反論してくる冥王に、ついにヒルメがキレた。


 あーあー、ダメじゃないか。ヒルメはね、組織所属時代には"整備補修の巫女神みこがみ"なんて呼ばれたほどのカリスマ性を持ってるんだ。


 本職の機械整備にとどまらず、総合的にみんなの体調とかにも気遣う女神みたいな懐の深さを持ってるんだよ?






 おっと、「じゃあ巫女神じゃなくて女神でよくね?」とか思った人は甘い。メロンフロートばりに甘いゼ。


 ヒルメという名前…本当はコードネームなんだけど、それは日本神話の天照大神(アマテラスオオミカミ)の別名・オオヒルメノムチに由来する。


 で、オオヒルメノムチは漢字で書くと「大日霎貴」となるのだけど、この字の内「霎」には巫女って意味があって、


 つまりヒルメ(日霎)は「太陽の女神」または「太陽男神に仕える巫女」ともいわれているんだ。巫女神っていうのはそれに由来するみたいだね。







 話を戻して、そんな人がただでさえ怒鳴りつけて説教してるってのに、自分の落ち度を棚上げして反論しちゃおしまいさ。


 普段はちょっとのんびりなくらいなのに、マジギレしたらスターとは違った意味で破壊神に化けるんだから。


 まぁとりあえず、その天誅は甘んじて受けてもらおう。当然の罰だ。



















 「自重しないでむやみやたらに暴れるようなヤツは……!!」


















 さて、ここで1つ別に補足しよう。


 ヒルメの体を三次元的に取り囲む4つの楕円形長方体ユニット。


 アレはツールボックスであると同時に、極めて頑丈かつ超重量な打撃武器としても機能する。


 トンファーのようにはもちろん、組み合わせてロッドみたいにしたり、今みたいにハンマーみたいにしたり。




















 「天罰光臨ッ!!!!」




 「って、なのはちゃーんっ!?」























 彼女"ら"の元ネタに相応しい掛け声と共に振り下ろされた鉄槌が、罰当たりな冥王を叩き潰したのであった、まる。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 だ、大丈夫……だよね?









 《創主様の手が空いていて助かったわね》


 《さすがにヒルメさんは火の車だしなー》











 そう、今回は創主レルネが修理担当。具体的には、パンドラとフェンリルの修理。


 ヒルメさんは他のみんなの武器やデバイスで手一杯。それでもビームガーターだけは預かってくれたけど。


 俺はリタリエイターも含めて無事。ビームガーターさえ直ればアーツバトル連盟に登録済みの状態に復帰できる。


 けどパンドラとフェンリルは武器もボディもボロボロ。


 クロスディメンジャーも創主レルネを守って中破。計5体の修復完了には今日いっぱいはかかるとか。


 昨日から今朝にかけてオーバーホールが済んだばっかりだったのに…。














 とりあえず、創主レルネは徹夜は回避できるっぽい。


 一応修理完了後に最低限の稼動テストはするけど、それさえ良好なら大丈夫みたい。


 メインフレームは無事だったから、外部装甲をまるごとリペアすれば〜って言ってたっけ。

















 ……それでも、創主レルネも寝不足にならなきゃいいけど…。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 …………なんだい?あのハルマゲドンは。











 《その比喩表現はどうなんだ……と言いたいところだが、否定できる要素が見つからない》











 なんだゼノン、君も僕と大差ないじゃないか。










 「ひどいなぁ……仲間相手なのに結界破壊効果付きの広域殲滅攻撃を遠慮なく使うなんて」


 《まぁ、おそらく六課の人たちもあそこまで大げさな攻撃は想定できなかったのだろう》


 「よりにもよってスターライトブレイカーだもん。いくら切り札だからって本番直前で撃つか?アレを」












 メルクリウスとクヴァシルをリンクさせて、こっそりと六課の模擬戦を中継していたのだけど、


 今こうして話していることについては小一時間ほど高町なのはと話してみたい。


 もちろん、抵抗できないように縛り上げた上でフルビットバーストで滅多打ちにしながら。













 それにしても、敵側の事情ではあるものの、問答無用な収束砲でやられた連中を哀れむ辺り、


 ユーリプテルスって根は温和な人だったのではないだろうか。


 歴史の中で、バーサークモードさえなければ、もっとマトモな人生を過ごせたんじゃなかろうか。


 世の科学者には非道なヤツがいるもんだよね。














 ユーリプテルスについてはひとまずおいといて……さすがは管理局の白い魔王だ。


 味方相手でもまるで容赦しない……って、柾木ジュンイチの専売特許じゃなかったのかそれは。


 よくもまぁ人望崩れないなぁ、あの二人。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 《大丈夫、技術屋のプライドを賭けて、

  あと不屈のなんたらなアンチクショウへの恨みをパワーに変えて、今晩中に全て仕上げておきますから》


 「あ、あぁ、すまないが頼んだぞ」


 「しかし、今から既に過労によるダウンという光景が目に浮かぶなぁ…」


 《それを言うな……少なくとも自分については確定なんだから……じゃあ、作業に移るので失礼》














 僕に続くスティアの発言に思いっきりうなだれつつも、ヒルメは作業を始めるべく通信を終えた。


 しかし、技術屋じゃないからわからないところがあるが、今回の件でなのはにどれだけ恨みを持ったんだ?


 いきなりなのはのことをアンチクショウ呼ばわりするし……。















 「今タケハヤからキルスティルに被害データが転送されてきた。

  それによると……うげ、これ六課のデバイスマイスター総動員でも仕上げられるのかよ…?」


 「どれどれ…?」















 ヒルメと通信を行う一方で、タケハヤには今回の模擬戦で出た損失などの情報をまとめてもらい、


 こうしてキルスティルに送る形で僕にも届けてもらった。


 データを見た瞬間にスティアがげんなりしたので、若干嫌な予感はしつつも僕もそれを見る。


 …………なるほど、確かにこれを一晩で、となると過労死レベルだな…。


 いや、かつて僕も恭文に過労死レベルな書類業務をやらせていたから、あまり人のことを言えないが。

















 「……とりあえず、高町なのはだけはヒルメには頼みづらくなっただろうなー。

  レイジングハートとかプリムラとか、何だかんだでフレームとかへの負担かかってるみたいだし」


 「あぁ、結局シャーリーかマリエルさん頼みであることに変わりはなくなる、と」


 「仕上がりの精巧さは同レベルなのに所要時間は圧倒的に短く済む分、いい取引相手を失ったな」















 取引相手……まぁ、シャーリーたちを除けば身近なデバイスマイスターが不在なことも多いし、


 その辺の対応というか助っ人としてはこの上ない逸材だからな…。


 あながち間違っていないような気もするが、表現的にはどうだろう。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 はー、何でこんなことになっちゃったんだろうねぇ。







 結局、高町なのはのスターライトブレイカーでウェンディもディードもブレイクオーバー。


 ミルクディッパーもジェミナスもダメージ受けて、現在はヒルメが修復してくれてる真っ最中。


 いやー、アレはアレですごいね。


 4つのコンテナみたいなのからいっぱいロボアーム出てきてさー。


 アレぞ千手観音!って感じ。マジでロボアーム千本とかいったら凄いを通り越して怖いけどな?








 「はー、ひでー目にあったぜ…」








 およ、アイツらは…。










 「治療はすんだのか?」


 「あぁ、割と早くな」


 「セインはいいなぁ、無傷生還できて」


 「無機物をすり抜けることで直撃を避けたんだったな」













 声をかけた私にブライ、ルアク、ステンスの順に返してくる。


 ロングアーチのシグナルランサーたちと遭遇して戦闘に入ったんだけど、


 こう着状態に入り始めたところで殲滅くらって6人仲良くブレイクオーバーしたらしい。


 珍しくアームバレットも一緒になって残ってたらしいんだけど、台無しだよなー。













 「まぁ、俺たちはコンボ起動してたからな、それに守られたというべきだな」


 「結界破壊効果のせいで気休め程度にしかならなかったけどな」


 「でなきゃシャマル先生に診てもらったりしないよね」











 ……何もされなかったの?


 あの改造実験帝国SHAシャマルに訪れて。












 「えっ、シャマル先生はショッカー科学者だったの!?」


 「んなワケねぇだろ」


 「なんでいきなりショッカーの話になるんだ」















 うーん、それは多分、君らの元ネタ(オ○ズ)にもショッカーが絡んでたせいじゃないかな…?


 突拍子もないことを言い出したルアクにブライとステンスのダブルツッコミチョップが炸裂するのを尻目にふと思った。


 アレ?そういえば、君らってグリードっていうよりコンボ形態のパラレルっぽいよね。


 だとすると、あのタ・マ・シー!なヤツとかもいたりすんの?















 「アレについては、リティが別に再現可能だ。

  ……メダルさえあればな?」













 あー、そっか。ステンスの言いたいことはなんとなくわかった。


 元ネタの時点で、アレは諸事情でメダルが消失してるから、仮にいたとしても出ようにも出れないってとこか。


 でも、逆にメダルさえあれば、リティがモードチェンジみたいなノリで切り替えできるってワケかぁ。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「君にはいろーんな意味で借りがあるからねぇ。

  欠員が出てしまった夜勤メンバーに代わって僕が徹底監視してやるから光栄に思うがいい」


 「監視じゃなくて少しでも手伝ってくれるとありがたいんだけどなー…」


 「いっぺん三途の川を渡らされたいのかな?コンチクショウが」


 「ごめんなさい」












 こりゃまた珍しい光景になってるな。


 何が珍しいって、あのトラルーが怨念むき出しで高町を監視してるんだからな。


 いや、アレはもう監視を通り越して一種の脅迫だな。


 少しでも下手すれば、高町相手だろうが本気で半殺しぐらいはしかねないからな、アイツ。


 もっとも、能力的な意味では柾木ジュンイチ同様に絶対的な敗北要素があるんだが……まぁ、今は別にいいだろ。


 それ以前の問題で既に生死の狭間に立たされてることだしな。








 今いるのは、六課のオフィスルームの一角。


 天誅を下された高町の回復を待ったら、いつの間にか夜更けになったが、オレは別になんともない。


 リティはヒョウエンに撃墜されたダメージに高町の収束砲の追撃が重なって未だに患者ベッドの中だ。


 ルアクとブライ、グラティとスリアはそれぞれで借り部屋のベッドの中だろうな。何しろ、今の時刻は夜中の11時過ぎだからな。


 レクセはリティの"中"に引きこもり、アラリアはリティの看病という名目で同じ部屋に。


 で、このオレは……退屈だから何か見ものはないかと彷徨っていたらこの現場に出くわした。








 ちなみに、高町が手伝ってほしいと言ったのは、山のような原稿用紙。400字詰めらしい。


 何をしているかといえば、先ほどの模擬戦の件の反省文だそうだ。1枚1枚は同じ内容だが、全て手書きで仕上げろと。


 つまりアイツは、あの何十枚、何百枚もの原稿用紙全てを手書きで書ききらなくてはならない、という罰を受けているらしい。


 誰が噂したか知らないが、別名"400字詰め棺桶の刑"とかいってたな。















 「なぁステンス、何かメダル絡みで新種発見的な情報はないかね。

  暇人同士、少しくらい討論でもしてみようじゃないの」


 「そいつは面白そうだが、メダルについてはもうオレの知ってる範疇は超えてるな。

  アラリアが、"メダルなしで"あぁして実体化している点についてとかな」














 トラルーからの問いに答えてやる。回復を待つ以外は暇だからな。


 だが、メダルについては特に目新しいことはないな。寧ろ疑問がある。今言ったアラリアのこととかな。













 「君らと同型のメダルトレイサーがある以上、メダルもどこかにあるんだろうけど……」


 「出所はおろか、目撃情報すらない。ブラーンギーも意思疎通だけでやり取りしてる状態で、操作まではいかないらしい。

  オーラングサークルも、実体化こそしていたがシンボルはなかっただろ」


 「君らの待機状態と同じように、単に色分けがされているだけで、コアの動物のマークはなかったね。

  それと、砂漠の国の蛇使いみたいに、笛型のツールがあるんだっけ」


 「ついでにいうと、アイツの経歴も調べているんだがな。

  なんでリティを様って呼ぶんだか」


 「いやー、不思議なもんで」
















 アラリアについては、当のリティからしてもよく分からないらしい。


 だが、アイツのリティに対する忠誠心はどうもマジだ。スリアがそう漏らしていたからな。


 となると、手がかりは結局メダルだけか。


















 「メダルの出所がわかれば、一緒にアラリアのルーツもわかるかもしれない、と」


 「そういうことだ」

















 だが、オレたちは自分の系統のメダルが最低1枚はないと、極めて弱体化する。


 オーズドライバーに相当するオレたちの共通デバイス"メダルトレイサー"がある以上、


 アラリアも定期的にメダルからエネルギーを供給されている筈なんだが…。


















 《マスター》


 「どしたの?」


 《アルトアイゼンから緊急通信が入っております。電話ですが》


 「デバイス経由してケータイって。まぁいいや、繋げてよ」


 《了解しました》


 「いやはや、何事?」















 デバイス経由して携帯電話というより、デバイスで電話しているということじゃないのか。


 というより、なぜ電話。


 そこらへんでよく見る、テレビ電話的なアレじゃないのか。それとも、してるほどの暇がないのか。
















 《ガルルルルル〜!!》


 《ぎぃやああああああ殺されるぅ!!》


 《猟友会!猟友会はまだか!》


 《いやアレ金属だからエヌエスでマグネットなライダーの方がっ!》


 《祟りじゃぁ〜きっと荒神様の祟りじゃぁ〜!》



 「ホントに何事ぉーっ!?」
















 ……なんだ?





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「えーっと、とりあえず落ち着ける人は落ち着いてほしい」







 だよね、まずはそこからだよね…。









 「マジで何があったん?

  電子的な猛獣の叫び声が聞こえたかと思いきや、

  いるはずのない猟友会を必死に呼びまくる瘴魔神将の声、

  最近ビミョーに影薄い磁石ライダーを候補にするハチマキ女の声、

  どっかの陰陽師でも必要っぽい叫びあげてた徳川の姫様の声、

  そして何かを盛大に噛み千切られてマジで1回絶命したという、

  ある意味でざまぁみさらせな惨劇に見舞われた暴君殿の断末魔が聞こえたワケなんだけど」












 通話で流れたと思われる発言順とは若干違いはあるけど、


 それぞれフェンリル、イクトさん、スバル、ビコナ、ジュンイチさんのこと。


 あと、この中には含まれていないけど、ブライとかも騒ぎに関係していたりする。


 ていうか、フェンリルと連携してジュンイチさんを血の海に沈めた。


 ……フェンリルに開く口はないはずなのに、噛み千切って。

















 《お騒がせして本当にごめんなさい》


 《フェンリルはこうして確保しておきましたから…》

















 フェンリルについてはオーディーンとパンドラが確保してくれて、現在捕縛中。


 いや、俺もロープで縛り上げようと試みたんだけど……ブライに八つ裂きにされるかと思った。


 いや寧ろ、捕食されるかと思った。大人の遊び的な意味で。


 ブライはスリアの協力のおかげで電気ウナギのムチで簀巻きにされてる。





















 「ていうかリティ、治ってたのね」


 「ついさっきだよ…おかげでまた医務室送りにされるかと思った」


















 そう、治ったからとりあえず起きてる人にだけでも知らせようと思って歩いたら、


 突然野生動物のように狂暴化したフェンリルとブライが暴れまわる現場に立ち会っちゃって。


 しかも狂暴化はこの二人だけに留まらず、ガイア・サイバトロン側でも何人か同様のことが起きているらしい。


 幸いライオコンボイは無事っぽいので鎮圧に向かってたんだけど……。




















 「さぁ、お前たちもバナナを食えだ!力がわくだ!」


 「……すまない、バナナで釣っておとなしくさせるしかなかった…」


 「いや、ある意味簀巻きにするよりも効果があるぞ?」


 「完全にゴリラに逆戻りしてますけどね」



















 よりにもよってゴリさんことプライマルコンボイまで暴走組。


 その巨体ゆえに取り押さえられるメンツがおらず、結局大量のバナナで機嫌を取るという手段で鎮静化したらしい。


 お約束というか、ビーストモードで。


 現状を教えてくれるライオコンボイの顔に何か哀れみたくなるような雰囲気があるのは気のせいだ。


 ステンスとアラリアはフォロー…でいいのかな?アラリアだけは毒吐いてるように見えるんだけど。


 それよか、パワーでいえばザフィーラさんのパートナーのダイアトラスさんとかいるけど、彼はまだ修理中。


 つくづくあのスターライトブレイカー事件の被害が悔やまれる…。




















 「リティ君まで引きずるなんて、ひどい!」


 「いや、そういわれても…」


 「現に、貴様が無駄に被害を肥大化させたせいで対処に手こずっているんだぞ」


 「そうです、あなたごときに反論権などありはしませんよ」





















 で、その犯人であるなのはさんが泣きじゃくるワケなんだけど、レクセとアラリアが容赦なく追い打ち&蹴落とし。


 もしここにヒルメさんがいたら、また天罰降臨させてたんだろうか。


 ていうか、やっぱりアラリアって基本的に毒吐きキャラなイメージがある。






















 「今のところ、把握できている限りでは深刻な被害は出ていない。

  問題は、未だに正気に戻らないコイツらをどうするかだ」





















 お留守番要員にされてスネていた分というべきか、ちっとも動揺していないビッグコンボイ。


 彼もビーストタイプだけど暴走はしてない。マンモスに暴走されたらたまらないけどね…。


 そう、一応今のところ大きな被害は出てないけど、フェンリルたちを正気に戻す方法がわからないんだ。


 ……気がかりといえば、暴走してるメンバーはみんな右目が金色に光っているような…?






















 「右目が金色にねぇ。変調の証拠としては十分だけど、どういう仕組みかわからないとなぁ…」


 「……あー、もしかしたら案外簡単に解決できるかも」


 『えっ!?』























 恭文もお手上げなところで、トラルーから提案があるみたい。
























 「ツクヨミ、まだ起きてるかな。

  彼女の精神パルスを利用すれば、何かしら手がかりが得られるかも」


 「……なるほど、ツクヨミのセンシングマインドで何か反応があれば、

  それを足掛かりに原因を辿れるかもな。未来予知に近い能力らしいが、試す価値はあるか」






















 トラルーとスターが提案したのは、センシングマインドっていうものを使うこと。


 でも、それって何?





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 センシングマインド。






 ツクヨミが保有する、精神系特殊能力のことである。


 詳しいことは未だ不明点が多いが、抽象的ながら未来予知などができるようである。


 もっとも、ツクヨミ本人に関連のある事象しか予知できず、また予知できる部分も曖昧なことが多く、


 得られた情報を正確に読み解くには豊富な経験と知識による幅広い見解が必要とされる。








 なお、この能力は精神学者の中に何人か身に着けている者が他にも存在するらしい。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「はー、やっと終わったぜ」


 「まったくやれやれだ。お前ら、稼働とかは大丈夫か?」


 《あぁ、問題ねぇ》


 《こっちもだ》













 どうにか今晩中には修理が終わった。


 それはヒロリスに修理されていたハカイオー絶斗も同じ。


 これで明日は問題なく出場できるワケだが……。














 「お、のっけからタロット占いか」


 「何か思い当たることでもあるのか?」


 《どうしたんです?》


 《なんだ、来てたのか》


 《イレインも来てますよ。今はシャワー中ですけど》















 オレはふと、背中の方に手をやる。


 マントの付け根くらいのところに隠しているタロットカード…その内"大アルカナ"と呼ばれる22枚の束から見ないで1枚出す。




 知ってるか?一般的にいうタロット占いは、この22枚の大アルカナでやるんだ。


 タロットには他に56枚の"小アルカナ"というものもあるが、それは日本とかのトランプみたいなもんだ。役名は違うがな。


 この大アルカナに描かれている絵、そのそれぞれの意味から、近い内に起こること、今起こっていることを占う。




 なんかリュウビとイレインも来ているらしいが、別にどうでもいい。


 で、今出てきたのは……

















 《……"ハーミット"の正位置》


 《タロットの意味はよく分からんが、どうなんだ》


 《ハーミット、日本語でいうなら隠者……隠し事…?》


 《隠し事…って、僕らで?》


 《……いや》

















 ハカイオー絶斗もリュウビも意味を分かりかねているが……正直、オレもこれだけじゃよく分からない。


 ……ん?オレとしたことが、2枚いっぺんに抜いちまったらしい。


 もう1枚は……



















 "デス"の正位置……?




 このカードの意味の中で最も当たっていそうなものがあるとすれば……急変…?







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 なぁんだ、案外あっさり終わっちゃった……気がする。


 みんな優秀。


 フェンリルもブライもゴリラさんも、みーんな取り押さえられちゃった。


 せっかく"開放"させてあげたのに。
















 《お前か、六課で変なことしてるヤツは》














 突然声がして、振り向いたら目の前にタロットカードが飛んできた。


 思わずキャッチして、絵を見る。これって、騎士か何か?















 《そのカードはハーミット。

  正位置に込められた意味は冷静、マイペース、研究心、そして……隠し事》















 丁寧に教えてくれるのは、どこからともなくやってきたナイトメア。


 あぁ、タロット占いでここまで来たんだ……。そんな、気がする。
















 「気がする、って……予知能力とか持ってるんじゃないだろうな?

  ナイトメアのタロット占いナビに従ってたらドンピシャとか、その時点でただ事じゃないワケだが」
















 一緒に来たのは、確かナイトメアのパートナーというかマイスターだよね。


 えっと、名前は…………なんだっけ。















 「ナイトメアは知ってて俺は知らないのか!?」


 《ま、連盟への登録はしてないしな。クロスフォード財団の直接関係者というのも微妙な立ち位置だ。

  ヒロリスを通じて縁があるだけだろう》


 「なんでお前はそんな軽い扱いしかしないんだよ!?

  さすがにちょっとショックなんだが!?」


 《それより、お前、何か隠してるだろ。オレのタロットはよく当たるんだ。

  何かあるんならさっさと話した方がいいぞ?》


















 まぁ、別に特段隠すほどのことでもないけど……あなたたちに話しても信じてもらえるかどうか。


















 「二人して無視かいっ!?」

















 うーん、でも、まだもう少し面白いことになる……気がする。

















 《……"フール"の逆位置、間違った行動…?》

















 あ、それも当たってる……気がする。






































































 「いや、だから、無視しないでくれないか!?なぁ!?」







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「とりあえず、暴走しちゃった子たちはそれぞれで手なずけておくしかないわね」


 「そのようです」


 「ったく、面倒なことになったもんだ」












 スリア、アラリア、ステンスの順。


 結局、元に戻す方法はわからないため、未だにブライ他数名は猛獣モード。


 とりあえずオオカミモチーフなせいでロクな機嫌取り手段がないフェンリルだけは鎖で簀巻きのままだけど、


 他の人たちはその場しのぎとはいえ機嫌を取りつつなだめておくことに。


 プライマルコンボイはいわずもがなバナナ、ウチのブライは……

















 「いわれてみれば確かに、3枚ともネコ科なんだよね、黄色のメダルって」

















 今ルアクがやっているように、猫じゃらしで適当にフラフラさせているところ。


 そう、ラトラーターの3枚はいずれもネコ科。なので最適アイテムは猫じゃらしということで落ち着いた。


 ライオンですら、コレで遊ばせることができるからなぁ。動物園で。















 「リティは猫じゃらしじゃダメなのかぁ?

  トラのメダルあるのに…」


 「ははは、さすがに純粋なネコ科じゃない……ていうか、そもそも元は人間だしね」















 夜も深いせいで寝ぼけかけてるグラティの言葉には軽く答えておく。


 まぁ、読者のみなさんはパラレル云々の話である程度理解してもらえてると思うけど、


 俺は元々は人間。説明が長くなるから、どうして精神生命体になった、とか、そういうことは聞かないでほしい。


 キッカケ自体は、あまりいい思い出でもないし。


















 「しかし、トレイサーからメダルを外し、

  メダルホルダーに隔離してしまうのが最も手っ取り早いのだろうが…」


 「今のアイツを相手にそれができりゃ苦労しない」


 「ていうか、俺はなんか違う意味で襲われた気がするんだけど」


 『それは(お前/主殿)が見事なまでのショタキャラ姿だからに決まっている』


 「ちょっと!?」

















 レクセもステンスも、なんで絶妙なハモり具合で危ない発言するかな!?


 まさかスリアの何かが感染したとか、そういう話じゃないよね!?



















 「あらぁ、感染だなんて…。坊や、今夜は調教した方がいいかしらねぇ?」


 「謹んでご遠慮いたします」


 「釣れないわねぇ、坊やの割に」



















 いや、それにノッてしまったら、いつかのトラルーみたいな目に遭いそうだから絶対に嫌だ。


 彼は翌日には普通に顔出してたけど、さっそくネタにしようとした部隊長さんが、


 ネタにしようとしただけで問答無用で半殺しにされたくらいトラウマになってるんだから。


 ていうか、簀巻き+説教をしたっていうのに、殆ど懲りてないよねスリア。





















 「しょうがないわねぇ、それじゃあ今度はマジメに恭文を…」


 「閃光の女神と炎の瘴魔神将に半殺しにされてもいいならね」


 「……やめておくわ」


 「うん」


















 すかさず(ある意味で)本来の仕事をしようとしたスリアに改めて釘を刺す俺。


 素直に忠告に従ってくれてうれしいよ。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 でも、ずっと遊んでるとノドが渇いてきちゃって…。


 それは多分ブライもそうだろうと思うので、とりあえず仲良く水分補給としゃれ込もう。














 「にゃる?」


 「食べるー?」














 とはいっても、今手元にあるのは、何故かキウイ。


 暴走騒ぎが転じて、何故か転がり込んできたのをこっそり拾ってたんだ。


 あとで食べようと思ったけど、思った以上に被害が拡大してたから忘れてたよー。


 今ならワケもわかってないブライだけだし、こっそり。


 彼も気になってるようなので半分こで。

















 「あれ、ルアクはまだ起きて……って、それをブライにあげちゃダメー!」


 「えっ」


















 通りかかってきたリティが思いっきり青ざめて、あげちゃダメっていうけど…なんで?


 まぁ、もう時すでに遅し、ブライは半分になったキウイの片割れをぱっくりと…。



















 「ショォタァァイムェァァッ!?!?!!?」


 『わぁぁぁっ!?』




















 少しモグモグして飲み込んだかと思ったら、なんか顔赤くなって、突然変なこと叫んで飛び出してった。


 ビックリしちゃって、僕もリティも飛びのいちゃって……逃げられたー!?


 でもどうして?キウイで興奮するなんて……





















 「あー、やっぱり知らなかったんだ……」


 「え?」





















 何か知ってるっぽいリティが、起き上がりながら意味ありげな一言。


 でも、全然わからなくて、首をかしげてしまう。






















 「知らないって人、結構いるんだけどさ……」






















 言いながら、僕が持ってたもう片方のキウイを指し示して一言。











































































 「キウイってさ……マタタビの仲間なんだよ……」





















































 ……………………えっ……?









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「にゃんともかんともニャン○イア♪にゃんともかんともニ○ンパイア♪」


 「な、なんだー!?」


 「ちょちょちょ、危ないんだなっ!?」














 突然、一部の猫好きとかが聞いてそうな歌を……中毒性の高い感じさえする歌を歌い叫びながら疾走する黄色い影。


 影はガスケットとアームバレットを翻弄し、あっけにとられる私を尻目に鎖を切断……鎖!?














 「まだまだ終わらん♪ダメ押しいきます♪ニャ○パイア体操絶好調♪」


 《オレはオオカミだって何回いえばわかるってんだよおどんだぁらぁぁっぁっ!!》




















 唯一有効そうな対処法がないために鎖で捕獲していたフェンリルを解放されてしまった。


 ついでに錯乱が余計にひどくなっているようで、黄色い影の叫びを聞きつけたか、何かに対してキレている。


 だが、ヤツらは何故かこちらには目もくれず、一目散に去って行った。


 通信機越しに早速異変が知らされてくる。





















 《ねこにゃんダンス♪ねぇこにゃんダンス♪ねこにゃんダンスッ♪》


 《うわっ、どうしたいったい!?》


 《チーターもさぁ、実はネコ科なんジャンッ!猫同士釣られちゃうジャ〜ン!!》


 《ちょっ、チー坊まで行っちゃったよっ!?》


 《ライフル振り回す猫なんていな…ギャァァァァァァァ!?》


 《オオカミぁんだよぉぉ!!オオカミナンダッツンダヨァァォォオッァァオァア!!》


 《みぃ、フェンリルが気にしてることをついてしまうとは、ハルピュイアもまだまだなのです。

  にゃんともかんともニャン○イア♪》





















 ……とりあえず、黄色い影ことブライの叫ぶ歌が変わっているが、猫にこだわりでもあるんだろうか。


 ブレイクが翻弄され、チータスが猫暴走に便乗した模様。


 ラットルが呆気にとられ、いらんことを口走ったハルピュイアが不幸にもフェンリルに滅多打ちにされたような気がするんだが、


 ヴェルヌスだけはマイペースだというのはどういうことだろうか…。いや、直後の言葉からすると、彼女も猫暴走に便乗したかもしれない。


 それと、フェンリルがいよいよ末期になり始めているような気がする。叫びの後半がかろうじて言葉になっている程度なんだが。










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「え、猫ちゃん大脱走?」


 「厳密にいうと、猫系モチーフの黄色なヤツが筆頭、というところでござるがな」


 「へぇ、穏やかじゃないねぇ」


 「…………」
















 睡魔にはかなわず布団にもぐったまま、そして暴走被害にもあわないために全く出てこないイテンはそのまま寝かしておく。


 興味本位で夜更かしで事の顛末を見ているのが、今こうして猫ちゃん大脱走などと評したビコナ。


 彼女がいるのだから、配下というか専属忍者である月影丸も当然一緒。


 で。




















 「まさか、お前がまた何か変な細工やらかしたんじゃないだろうな。

  模擬戦をなのはにつぶされた不完全燃焼によるモヤモヤを晴らすために」


 「理由がさりげなくヒドイんじゃないか?」


 「自分で暴君呼ばわりを公認しておいて何を今更」






















 僕の推理に不服を申し立てるジュンイチ。いつの間にか紛れてきたんだ。


 で、改めて言わせてもらおう。























 「味方内で突拍子もない異変が起きたら、大体は最終的にお前のせいじゃないか」











































































 間。


















































































 「くそっ、ボコれねぇ……」


 「いかに黒き暴君といえど、一方的にボコることは許さない」


















 そう、一瞬の間、僕をボコろうとジュンイチが迫るのに対し、僕は真っ向から拳と蹴りを繰り出しあい、相殺していた。


 なんかわからないけど、コイツにだけはボコられたくない。寧ろボコりたい。なんでだろうね。





















 なんでだろうね。























 「い、いや、トラルー?それを私たちに向けて言われても……」


 「正直、返答に困るのでござるが……」

























 ちっ。その辺についてはマトモに考えていたか。いや、いいことなんだけど。


 何故かわからないけど、正論を言ってくれた筈のビコナと月影丸に舌打ちしてしまう僕であった。


 まぁ、それはもういいとして、なんでまた再び大暴走を…。しかも、対策なしのフェンリルじゃなく、猫じゃらしのブライが。


















 「それが、ちょっとしたトラブルがあって……」


 「あうあう…」



















 リティが、申し訳なさそうにしてるルアクと共にやってきた。


 よく見ればステンス、レクセ、アラリアも一緒。スリアは、グラティと一緒に自分たちの部屋に戻るのを見たので寝ているのだと断定する。




















 「実は、ルアクがそうとは知らずにキウイをブライにあげちゃって…」


 「キウイがマタタビの仲間だなんて…ごめんなさいごめんなさい…」


 「ま、まぁまぁ、そう気を落とさずに…」


 「そういえば確かに、マタタビが人の食生活に絡むことは少ないでおじゃるね」


 「一部で酒の原料にされているくらいでござろう。

  そういえば、その手の酒に詳しい者が姫様の旧友にもおられたのでは」


 「あー、確かにあやつであればすぐ気づけたのやも……まぁ、ここ数年久しく会ってないでおじゃるけど」




















 リティの説明で落ち込むルアクに気遣う月影丸。


 傍らでビコナが言ったのは、マタタビの一般的な使用法。主にというか、大半がそれに使われるって感じ。


 熟したマタタビを素にした薬用酒があるんだ。まんま「マタタビ酒」なんていうこともある。


 ちなみに、熟してないマタタビは辛いそうです。


 あと、蕾に虫が寄生してこぶをつくっているものは生薬として用いられ、冷え症や神経痛、リューマチなんかに効果があるそうな。


 もちろん、ちゃんとした使い方をすればって話だけど。










 でも、ビコナの旧友か。月影丸や本人の話によれば、戦国時代前後からビコナと同様のルーツで生まれ、今も存続する精霊がいるという。


 中には別な経緯で徳川家や豊臣家、織田家なんかと関わりを持つ者も少なくないらしい。


 そして、そういうメンツには決まって二つ名がついていたりする。











 たとえばビコナは「泰平女君たいへいじょくん」なんていう、たいそうな二つ名がある。


 今までのプライベートトークで確認した中では、「金剛姫こんごうひめ」「太閤娘たいこうむすめ」「絢爛槍けんらんそう」「クノイチ」「復讐ノ牙ふくしゅうのきば」「殲滅姫せんめつひめ」なんて面々も現存してるんだとか。


 ……その内5番目だけは不吉な二つ名だけど、今は気にしない。少なくとも今回の件に関係しているワケじゃないだろうし。















































































 「どわっ!?」


 「わっちゃーわっちゃーおーなかーがへったー♪」


 「ぐげっ!?」


 「にゃー♪」


 「がふっ!?」


 「にゃー♪」


 「がっ!?」


 「わっちゃーわっちゃーおーなかーがへったー♪」


 「がはっ!?」


 「にゃー♪」


 「ごほっ!?」


 「にゃー♪」


 「げふっ!?」


 《ジュンイチィィェァァァァァィアァイァイエェァッァイァァイアァァイア!!》


 「がぁぁぁぁぁっ!?」




































































































 …………突如襲来した猫キャラと化したブライとそれに便乗したらしいチータスとヴェルヌスに乱舞をもらい、


 サビの締めとでもいうつもりか、前振りなしにフェンリルに飛びつかれて、某初号機に食われる第17使徒よろしく、文字通り八つ裂きにされた。


 誰が?ジュンイチが。















 「こ、これは……」


 「どういうことでおじゃるか…?」


 「オレたちは眼中にないようだが」


 「なんか複雑……」


 「暴れるだけ暴れてあとは貪り食うって様子だね、アレ……」


















 月影丸、ビコナ、ステンス、ルアク、リティの順。


 有無を言わさず八つ裂きにされたジュンイチに抵抗は許されず、猫というよりハイエナみたいな勢いで、その鮮血に染まった体を更に引き裂く暴走組。


 その光景はさながら、死体に群がるカラスの群れに食われる肉塊のよう。


 槍で頭を貫かれた上に、量産型の群れに体をメチャクチャに食いちぎられる某赤い二号機の役がジュンイチ、だといえばよく分かると思う。


 彼らを止めるものはない。なにしろ、無事である僕らが一切介入しにいかないからね。


 まぁ他のみんなは唖然茫然ってところなんだろうけど……



















 《けど……なんです?マスター》


 「いやさ、イグナイテッド……」























 なんていうかさ、まるでジュンイチに対する日頃の天罰が具現化しているかの如き凄まじさがあるなー、と。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 偶然か必然か、ナイトメアのタロット占いナビゲートによって辿り着いた、ミステリアスな雰囲気を放つ女の子。


 頭の左右に特徴的な黒いプレート……ていうか、カチューシャみたいなもんか?それがある。あと、頭頂部だけ黒く、他の髪はスノーホワイト。


 服は結構簡素だな。首元を隠すように一体化してる襟と、胸元の星をかたどった丸いブローチが特徴的な薄いグレーの上着。


 上着と下の服は多分同一形状で、肩から二の腕の上半分までという短めの半袖仕様。


 下はスカートとストッキングの組み合わせのようだ。それにブーツという、シンプルな出で立ちだ。


 まぁちゃんと名前はあるんだろうけど、特段名乗ろうとしないし他に優先して聴取すべき事項もあるので、仮に不思議ちゃんと内心呼称させてもらう。


 そして他にも気になるのは、左がサックスブルーに近い色なのに、右目だけ金色、それも光っていること。


 オッドアイについては別に驚かないけど、片目だけ光ってるっていうのはちょっと…。














 「まぁとにかくだ、何かやってるっていうなら早くやめてくれるか。

  あまり混乱を長引かせられるワケにはいかないからな」


 《見たところ、直接的な戦闘力は低そうだが……ここはひとつ、叩き落としてやるか?》


 「どこから?」


 《……"タワー"の正位置、試しに六課隊舎の屋上から、とかどうだ?》


 「やめいっ!!」















 ったく、ナイトメアは物騒なこと言い出すし、目の前のミステリアスな不思議ちゃんはマイペースだし、


 困ったもんだ…。


 ていうかナイトメア、今出した"タワー"のカード、占いの一環か?


















 《……ふん……さしずめ予期しないこと、といったところか》


 「それ、当たってる……気がする」


 《そこまでだよ》


 《観念しな》





















 いまいち微妙だが、予期しないこと、つまり想定外だってことは、不思議ちゃん自身のことか?


 ナイトメアと同様にアウトフレームフルサイズ状態でやってきたリュウビとハカイオー絶斗がそれぞれの獲物を体に突き付けてるし。





















 「悪いなサリ、合流が遅れた」


 「いや、別にナイトメアが遊んでたおかげでそんなに暇じゃなかった」


 「今回の騒動の原因、この子のせいかもしれないのよ」























 俺に詫びながら合流してくるヒロ、ワケありな雰囲気満点な発言をするイレイン。


 まぁ、ハカイオー絶斗やリュウビがいるんだし、当然二人もいるよな。


 それよか、一緒にやってきたスターともう一人がわからん。特にもう一人、誰?























 「彼女はツクヨミ。オレの人脈で霞澄さんがスカウトした人材の一人だ。

  で、彼女だけが持ってる特殊能力"センシングマインド"のミステリアスな何かが特殊な波動をとらえたと」


 「今ハカイオー絶斗たちが取り囲んでいるその子から、指向性の強い精神パルスを感じます。

  その精神パルスは、今も暴走しているフェンリルたちへと向けられているようです」


 「つまり、その子が何かしら能力を使ってて、それでフェンリルたちがおかしくなってるってことだ。

  ……もしかして、暴走してる連中の右目が金色になってるのって……」


 「へぇ、そこまでわかったんですね」























 スターからの紹介を受けて説明してくれるツクヨミ。


 指向性の強いパルス、それによって暴走してるってなると……

























 「でも、暴走っていうのは間違い。あれは全部、あの人たちの潜在意識。

  ただ、私が"開放"してあげているだけです」

























 ……被害報告からすれば、完全に狂ってるヤツもいるんだが。狙撃オオカミとか猫メダルコンボとか狙撃オオカミとか。


 あぁでも、逆にある意味でブレてないヤツもいるな。ゴリさんとか。


 確かに、言われてみればそうかもな。みんな、形はどうあれ本能とかに忠実になってるって雰囲気はあった。


 ……………………それでついさっき血の海に沈められたっていうジュンイチについては、とりあえず気にしないことにしておく。


 だって、もう誰に目の敵にされてるか分かったもんじゃないし。


 俺たちの知らないような暗殺者に狙われてる可能性だってゼロじゃない。寧ろ確率が5割超えてるような悪寒さえする。
























 「あと、別にみんな、私のせいで新しい力を手に入れたワケじゃないです。

  あの人たちが元から持ってる、けど自分自身も知らない内に隠しちゃってる力なんです」


 《……フェンリルがやたらめったら狂暴化して柾木ジュンイチを八つ裂きにしてたのも、そのせいか》


 《えっ、そんなことを!?》


 《ヨーロッパ圏では特に、狂暴な魔獣として描かれることが多いオオカミがモチーフだしな。

  それに創主レルネのことだ、下手しなくても余計な機能とかをこっそり入れていてもおかしい話じゃない》


 《《『あー……』》》





















 不思議ちゃんの説明を解釈すれば、要するにフェンリルたちはリミッターを強制解除されている状態らしい。


 ゴリさんはバナナ好きって一面が前面に押し出されてるし、ブライもいつになく活動的になっていたしな。


 そしてフェンリルは……同名のオオカミが神話で神様の手を食い千切った話もあるしなー…。


 ナイトメアのレルネに対する危惧に、思わず納得してしまう俺たちだった。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ところでどうする?


 もう既に手遅れな気もするんだけど、ジュンイチさんそろそろ死んでしまうかも…。


 助けたいけど、今のあの群れに挑むのはいろいろと大変そうだし…。













 「みんなー、そっちは大丈夫……って、お兄ちゃん!?」


 「あ、あずさ殿」















 そこへ、ジュンイチさんの妹であり柾木家の苦労人、あずさちゃんが登場。


 ビコナが心配するけど、やっぱり変わり果てた兄の姿を見たら、ショック受けるよn

















 「お兄ちゃん……いくらなんでも、半殺しにされるほど恨み買われるようなことしてたの…?」


 『は?』






















 ツッコむところ、そこなんだ…?






















 「……あれ、お兄ちゃんから念話が」
























 ふと、突然ジュンイチさんが念話を始めたらしい。


 残念ながら俺たちコアメダル組は念話能力を持ち合わせていないので、


 同様に念話が使えない、またはチャンネル外であるトラルーたちと一緒に、やり取りの終了を待つ。


 数秒後、すっごく気まずそうな顔で、あずさちゃんはトラルーの方を見た。

























 「……トラルー、とりあえず話だけは聞いてもらえるかな」


 「なんだ、アイツはまたよからぬことを企んでいるのか」


 「えっと、それがね……」























 ほんっとうに気まずそうに、でも意を決してあずさちゃんはその先を告げた。


























 「早くなんとかしないと、以前入手したイテンとのキャッキャウフフ盗撮写真の数々をバラ撒くって……」





























 えっと、あの、トラルー?どうしたの、そのスパイク。


 シューズタイプだけじゃなくて、グローブタイプまで持ち出して。


 いつ手に入れたのとか、そういう意味じゃなくて、それをこれから何に使うつもりなのかなーと…。


 い、いや、さすがにブライたちをソレで蹴るとか殴るとかいうのはかわいそうじゃないかな!?


 けど、そう言おうとした時には、両手両足にすごく鋭利なスパイクセットを装備したトラルーがヘッドウィングモードで飛翔。


 羽替わりになっているマルチフェザーでブライたちを振り払い、猫じゃらし風に操作することで彼らをいなし、


 ジュンイチさんを…………踏みつけた。スパイクで。
























 「ジュンイチてめぇ、それが人に助けを求める態度かゴルァァ!!」
























 それはもう、物凄い剣幕でひたすらにジュンイチさんを踏みつける。スパイクで。


 もう既に肉塊寸前だったジュンイチさんの体を容赦なく殴って砕いていく。スパイクで。


 ブライたちのけん制をイグナイテッドに任せ、思う存分にジュンイチさんの体をミンチにしていく。スパイクで。


 剣幕とプレッシャーがすごすぎて、誰もアレに介入することはできなかった。


 そして、続けざまに放たれたトラルーの一言で、俺たちは逃亡すら辞さなくなった。
























 「どうせ再生するんだから、もういっぺんマジで死んじまえゴミクズがッ!!」





















 あまりにも冷酷で、返り血をいくら浴びようと微動だにせず虐殺を楽しむトラルーの姿は、


 さながら心底人殺しを楽しむ殺人鬼のようでも、他者を痛めつけ蹂躙することに快楽を覚えるサディストのようでもあった。


 それと、既に半分死んでたジュンイチさんは、トラルーの殺意に満ちすぎた追撃で完全に絶命。


 死亡時刻、某日の地球時間23:57分。最初にフェンリルによって絶命してから僅か数時間足らずの命だった。


 いや、結局再生するワケだから、これはこれでおかしい表記なんだけど。












 ていうか、1日で2回も仲間に殺されるって、どれだけ日頃の行いが悪いんだろう…。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 《…………雄叫びと断末魔と憎しみと断末魔が聞こえたな》


 「なぜ断末魔を2回言った」












 とりあえず不思議な女の子を取り押さえようとしたら、いきなりすごい声が。


 ただ、その内容は……今ナイトメアが言った通り。サリさん、断末魔は2回響いたんですよ…。


 ちょっと具体的にいうと、猫キャラ軍団にノされた時と何者かに痛すぎるトドメをさされた時に。


 2回目の方が一際すごい声だったけど、うん、今は気にしないでおこう。

















 「……大丈夫、柾木ジュンイチはどうせ生き返りますから」


 《って、なんで柾木ジュンイチのこととか知ってるんだよ。俺らのことも知ってるみたいだしよ》


 「連盟の登録データでも見たんじゃないか?ジュンイチも出るみたいだし」


 「ん」



















 不思議な子がごもっともなこと言うんだけど、ハカイオー絶斗の疑問もごもっとも。


 いくら僕らが連盟に登録したっていっても、得られる情報には限りがある。たとえば、六課関係者だということとか。


 それについては連盟側にはまだ教えていないはずなんだけど。























 「それは……まだ秘密」


 《まぁ、そいつは別に追求しようにもできないだろうしな》


 「せめて、現在絶賛オーバードライブ状態な連中の変調を止めてもらえないかしら?」


 「今回はいろいろドサクサしすぎたし、それさえしてくれれば深追いはしないって約束するさ」


 「言い訳はこちらで考えておきますから、お気になさらず」





















 情報源はまだ教えてくれないらしい。


 でも、ハカイオー絶斗の発言やアリシアの提案には賛成。


 スターさんのいうこともそうだし、まずは体勢を立て直すのが先決だよ。


 尋問してるほどの暇もなくなってきたしね。


 日の出にはまだまだかかるけど、うっすらと空が明るくなり始めてきたし。


 ただ、ツクヨミさんはこのことをどうごまかすつもりなんだろう…。





















 「まぁ、原因そのものである人がそうすんなりと止めてくれるとh」


 「わかりました♪」


 『えっ?』





















 あ、あれ?やけに素直に…。




















 「私の目的は、ただある人の手伝いをすることだけ。

  今晩の騒ぎは、そのためのことなんです。六課の人たちと敵対するつもりじゃないです♪」


 「そのある人っていうのは……って、そこはさすがに教えてくれないかしらね」


 「依頼主は名前は教えてくれなかったんです。でも、私と同じくらいの身長で、チェック柄のパーカー着てました。

  あとは……ちょっと暗い場所での相談だったので……」


















 彼女と身長が同じくらい、ってことは、多分小学生くらいの子供ってこと?いや、寧ろトラルーさんとかに近い精霊の類かも。


 それはともかく、匿名でこんなこと頼むなんて、ますます怪しい。


 少なくとも、機動六課のことや僕たちのことを多少なりとも知っている人だとは思う。


 多分、今回の騒動の目的は、六課の人たちの戦力分析。それも、潜在能力の方を重視していると思う。


 何か連盟のデータにもないような隠し技とか持っていないか、そういう感じで。





















 「でも、確かその人は、ある目的の為に機動六課の戦力を必要としていると言っていました。

  ですから、もしかしたらそう遠くない内に接触してくる……気がするんです」


 《……"ムーン"の正位置、か。やれやれ、今度は何があるやらねぇ》





















 でも、依頼主からしても何やら事情がある模様。


 機動六課を当てにするということは、ロストロギア関係?


 でも、ナイトメアはタロットで何か気づいたような。どういうこと?




















 《"ムーン"の正位置に込められた意味は、曖昧、偽り、裏切り、伏兵、三角関係…。

  だが、現状でそのどれを意味しているのやら、オレでも分からない》


 《ご自慢のタロットでも占いきれないってか?

  まぁそんなモンだろうよ。ただでさえいろんな連中が絡んでるのが"アレス"、つまりこれからの一週間だ》






















 ナイトメアのタロット占いはよく当たると思うんだけど、それはあくまでナイトメアがその場でうまく意味をくみ取っているから。


 つまり、タロット占いはそもそも、的中率を読み手によって大幅に左右されてしまうものなんだ。


 その読み手がまず状況を把握しきれていなければ、その結果を、タロットが示した意味を読み解くことはできない。























 《でもハカイオー絶斗、今のタロットって依頼主について占ったものじゃ…》


 《機動六課の戦闘要員も大半は"アレス"に出場するんだぜ?

  どういう理由であれ、機動六課に用があるんなら、戦力データの収集ぐらいするだろ。勿論、依頼主も試合映像に注目するはず。

  で、現状その依頼主ってヤツの目的は、オレたちには見えねぇ。何しようとしてるのか、それに、そもそもこのタイミング。

  偶然とは考えづらい。戦力が最も整っている筈の開始前夜を狙う方が、より多くのデータを集められると考えたのかもな》


 《……今は、曖昧という意味をとっておくとするか。断言できる情報が少なすぎる》























 依頼主、何者なんだろう。管理局の関係者かもしれないけど、まったく違う路線かも。


 少なくとも、管理局の高官なら、こんなことしなくても視察とか情報交換とかで直接出向けるはずだし。


 多分、僕たちが知らない人なんだ…。








 ハカイオー絶斗の推理に納得しつつ、ナイトメアの結論も否定しないことにした。


 だって、本当に情報が曖昧だから。依頼主どころか、今回の依頼の目的すら、断言できないんだし。














 「……はい、これでみんな元通りですよ」


 《いや、元通りって、何が変わったんだ?右目閉じただけだが》


 「いえ、今精神パルスが途絶えました。フェンリルたちも鎮静化したようです」


 「右目を開いている間だけ、開放ってヤツが起きるワケか…」


















 本当に、右目を閉じる、ただそれだけ。それだけで、急に静まり返った感じがした。


 ハカイオー絶斗もさすがに困惑気味だけど、ツクヨミさんがいうところによると本当らしい。


 スターさんが言った通り、きっと右目を開けている間しか効果がないんだ。


 ……アリシア。


















 「何?」


 《この子、どうしたらいいだろう。六課に連行する?》


 「そうね……悪意は感じられないけど、私たちが隠ぺいすれば……って、スターとツクヨミに合流されたから無理ね」


 「少なくとも、オレは六課の正式な協力者になっているからな。報告の義務はある。

  こうしてツクヨミを連れ出したのはトラルーたちのアイディアだから、どうしても報告しなきゃならない」


 「随所に設置されている監視カメラのどれかが、このやり取りを記録している可能性もありますからね」


 《となると、連行しかないか…》




















 手荒な真似はしたくないけど、抵抗されたら多少は仕方ないのだろう。


 武装も持たない女の子に手を挙げるかもしれないことを覚悟しつつ、取り敢えず手錠ぐらいはしようと……


































































 《そうはいかないな》





















 突然の声、はっとした僕たちが見たのは、空。上から声が響いたから。


 見上げた先には、僕たち……というより、多分オーディーンに近い系統のアーマーを身にまとうロボットがいた。


 いや、違う……この反応、僕たちと同じ自立行動型パワードデバイスだ。


 ただ、まだ明けきっていない夜の闇のせいで、詳しいパーツなどはわからない。人型であり、飛行能力があるみたいだけど…。

























 《名前ぐらいは教えてやろう。長い付き合いになりそうだからな。

  私の名はディレス。ある組織の元に引き込まれた、自立行動型パワードデバイスだ》


 「自立行動型パワードデバイス!?そんなの、プリムラやジンジャーを除けばあの子しか作っていないはずなのに!」


 「なんかその偽名、わざとらしい……気がする」


 『……は?』
























 ディレスと名乗ったそのデバイスは、右手の銃らしきものを突き付けてはいるものの、そのまま動かない。


 アリシアが声を上げるけど、すぐに白い髪の子から出た言葉にサリさんもヒロさんもアリシアも、全員が硬直した。


 それは、ハカイオー絶斗やナイトメアも、そして多分ディレスも同じ。え、偽名?




















 「なんで偽名使ってるの?」


 《…………何のことだk》


 「私がまだ小さい頃から一緒にいてくれたのに、なんでそんな水臭いことをするの?アキレス・ディード」


 《……………………》


 「沈黙したぞ」


 「どうやら偽名っていう点と、あの子と関わりがあるっていう点が見事にマッチして、反論できないらしいな」





















 女の子とディレスの一方的な問答の光景に、サリさんとヒロさんが一言。


 ということは、もしかしなくてもアキレス・ディードっていうのが名前なんじゃ……。
























 《…………おお!思い出したぜ!

  確か、オーディーンの先行試作ボディにアキレスっつー企画があった。

  その企画がちょうどあのディレスだかアキレス・ディードだかいうヤツにそっくりだ。今データ送ってやる》

























 突然ハカイオー絶斗が思い出したのは、今送られてきた設計図データのことらしい。


 コードネーム・アキレス。パーツがところどころ違うとはいえ、確かにシルエットはそっくりだ。


 設計者名……レルネ!?創主様の作った企画ってこと!?




























 《…………あぁそうだ!その通りだ!私はアキレス・ディード!

  変形機構を持たせた発展型として新規設計されたオーディーンとは違い、アキレス系統の機体として再設計された姿なんだ!

  そうだと認めればいいのだろうまったく!!》























 ……なんかご本人がヤケになりながら容認した。とりあえず、今はこれ以上触れない方がいいかもしれない。


 いや、なんかあの人に悪い気がするんだ。
























 《とにかく、ミスリルはまだ機動六課や管理局に渡すワケにはいかないのでな。逃がさせてもらうぞ》






 <DEMONNICK MODE.>
























 デモニックモードというアナウンスが聞こえたかと思うと、突然アキレス・ディードがどす黒い赤のオーラを放ち始めた。


 今度こそ銃をこちらに向けると、大出力のビームがこちらに襲い掛かる!


 って、ビームが向かう先は……マズイ!
























 《ミスリル、今のうちに離脱しろ!まだ機動六課にお前を預けるワケにはいかなくなった!》


 「……管理局に何かあった……気がする」


 《なっ、待て!……どわぁっ!?》























 アキレス・ディードに促される形で、ミスリルって呼ばれたあの白い子が駆け出していく。


 逃がすかと追いかけようとしたハカイオー絶斗は、アキレス・ディードによって足元にビームを撃ち込まれて動きを止められてしまう。


 こっちはこっちで、赤く輝くアキレス・ディードの動きについていけず、足止めされてしまう。


 ナイトメアのスピードですら追いかけるのがやっとだなんて、とんでもないスピードだ。


 そして最初に放たれたビームは隔離用の壁の一部を破壊していて、ミスリルがそこから逃げていくことだけは確認できた。


 でも、それが限界だった。気づけばアキレス・ディードも飛び去ってしまって、これ以上の追跡はできそうになかった。




















 ……でも、アキレス・ディードについては多少は情報が入ると確信している。まずはそこから当たろう。


 少なくともコアだけは創主レルネによって生み出されている筈だから。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 《ほんっとうに何も覚えてないのね?》


 《だからそう何回も言ってるじゃないか!頼むからもう許してくれよぉ!》


 《そういわれても……ジュンイチさん殺しちゃってるからなぁ、錯乱状態だったとはいえ》














 結局、暴走現象はミスリルという小学生相当の女の子が自ら能力を止めることでようやく終息した。


 とりあえず暴走組は一通り拘束して尋問してはみたものの、困ったことに暴走組は全員暴走中のことを何も覚えていないという。


 どう問い詰めようが記憶解析しようが本当に何も覚えていなかったようなので、


 比較的被害が少なかったというか些細なものだったゴリさんとかは釈放。改めて戦闘準備を進めている。もう開催まで数時間だからね。








 だけど、目撃者が少なからずいた中で過度の傷害行為を繰り広げたために問答無用で問い詰められたフェンリルやブライたちは未だ尋問中。


 ブライは別室でスリアがオシオキ兼用で尋問しているらしい。まぁレクセとアラリアを同伴させたから、調教だけはしないと思うけど。


 フェンリルはパンドラとオーディーンに尋問してもらってたんだけど、今のような有様。つまり、収穫なし。


 ちなみに、唯一の例外としてトラルーだけは自分から拘束されました。あぁそうだよね、この人だけは完全に自分の意思でジュンイチさん殺したからね。









 たった半日で2回も殺されるハメになったジュンイチさんは集中治療室に運ばれ、どうにか包帯だらけで動けるくらいには再生。


 "アレス"の予選開始までには完治する……らしいんだけど。


















 「いやー、さすがにひどい目に遭ったぜ、いやマジで」


 「ふんだ、当然の報いだゴミムシが」


 「ちょっとトラルーさん!?なんでお兄ちゃんが殺されなきゃいけないの!?フェンリルもだけど、いくらなんでもヒドイよ!」


 「落ち着けスバル。フェンリルは少なくとも思考回路が暴走していたようだしな。責任能力についてはそろそろ疑問になってきた。

  トラルーにも事情があるようだが」


 「ふーんだ」


 「ちょっとー!自分から縛られたくせに反抗的ー!」


 「さすがにこれは怒りを覚えるよ、トラルーさん」


 「いや、とりあえずホクトとギンガも落ち着いてほしいんだけどな、こっちとしては」

















 当のジュンイチさんは……ミイラ男になってるけど割と余裕だよね?トラルーやフェンリルにプレッシャーぶつけるとかするワケでもなく。


 で、スターいわくジュンイチフリークな人の代表格として名高い?スバルちゃんとホクトちゃん、それにギンガさんがそれぞれで抗議。


 憤る彼女たちはマスターコンボイやノーヴェ(先ほど回復が終わったらしい)によっていさめられてる。


 ごめん、二人ともそれ持続してもらっていいかな。だって……ねぇ。




















 「まぁまぁ3人とも落ち着いて。

  こればっかりはお兄ちゃんが悪いんだから」


 「あー、やはり来たか妹よ」


 「どういうことだ?」

























 と、そこで助け舟を出した……というより、真実を伝えに来たのはありがたいことにあずさちゃんだった。


 ジュンイチさんの実の妹である彼女の意見ならあの3人も納得してくれるだろうと信じて、俺たちは敢えて口を出さないことにした。


 ちなみに、この場にいる他のメンバーは、実はステンスと俺=リティぐらいだったりする。


 2度目のジュンイチさん絶命現場にはビコナや月影丸もいたんだけど、あの二人はイクトさんやなのはさんなどの隊長陣に説明中。


 立ち会った中ではほぼ唯一、組織でいう高官の立場で仕事してたようなものなので、あの人たちの相手を任せることにしたんだ。


 そういえば恭文にも説明しておくって言ってたっけ。なんだかんだで彼もジュンイチさんとはつながり深いから。























 「だって、助けてもらおうとトラルーに提示した時の条件が、

  報酬で釣るとかそういうんじゃなくて、盗撮写真バラ撒くぞっていう恐喝だったんだから、

  それに殺意持たれても仕方ないとは思うよ?盗撮した挙句にそれをネタにされるって、下手すると社会的な意味で死んじゃうし」


























 そう、ある意味仕方ないことだと思う。殺害者となったトラルーの方が正当防衛に思えてしまう難儀なケースだ。


 いや、さすがに盗撮写真持たれてるだけでも気分悪いのに、それを救出の条件に利用されたら……ねぇ。


 寧ろ口封じとか機密保持とかの目的で謀殺されるパターンじゃないかな。ほら、政治家とかでもよくあるし。


 まぁつまり、ジュンイチさんは人として絶対しちゃいけない重大な過失があるワケで。


 更にあずさちゃんはそれを隠そうとしているワケでもないので、ジュンイチさんの四面楚歌の図は確実に完成しつつあるんだ。


 いや、スバルちゃんとかが納得した時点で、ほぼ完成したようなものだけど。


 他にいたっけ?ジュンイチさんを擁護しそうな人。























 「え、えっと、ジュンイチさん、さすがにそれは……」


 「いっつも思うけど、パパってデリカシーとか殆どないよね」


 「盗撮って犯罪なんだよお兄ちゃん。多分今に始まったことじゃないとはさすがの私も思うけど」


 「おいマテ、ホクト。デリカシーないってなんだよ。あとスバル、それはどういう意味だ」


 「……もういっぺん死ぬ?どうせ"アレス"の予選はアリシアとあずさに任せきりにできるんだし。どうせ1日で再生するし」


 「勘弁シテクダサイマヂデ」


















 さすがに後ろめたくなったと思われるギンガさんもたじろぎ、


 ホクトちゃんにスバルちゃんからも非難の声。ジュンイチさんがオシオキモードに入ろうとしたけど、トラルーに封殺された。


 その様子だと、ジュンイチさん絡みで蓄積したストレスはまだ発散しきれてないっぽいね…。単にり足りないだけかもしれないけど…。


















 ちなみに、件の盗撮写真はレルネのハッキングによって全て回収され、


 ちゃっかり保存しようとしたレルネを叩き伏せたトラルーによって、データチップごと全て削除された、と言っておく。


 うん、これでもかといわんばかりに粉々に。もう塵になってたよ。


 ただ、件数がすさまじいことになっていて、この後ジュンイチさんは結局、トラルーにまた半殺しにされたけど……。




























 (第27話に続く)














 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―






 リティ「ジュンイチさん……南無」


 ステンス「墓に入る前から砕け散るとは、馬鹿なヤツめ」


 リティ「そういう問題か?」


 ステンス「まぁいいだろ。今回は"デモニックモード"について教えてやる」








 ステンス「デモニックモードは、アキレス・ディードの使う特殊モードだ。

      トランステクターのバーストモードに相当する機能で、通常の数倍の出力が得られるようだ。

      発動中はマゼンタに近い赤の光を放つのが外観上の特徴だな。よく見ると本体の色も変わるらしい。

      ただし、元となったと思われるアキレスの設計データにもなかった機能だっていう話がある。

      あと、今回の描写では確認しきれなかったが、発動時にはヤツの胸部のマークが回転する。

      回転後はアルファベットの「D」に見えるが、おそらく頭文字をとったんだろうな。

      通常の射撃でも隔壁を破壊できるほどだ、アタックファンクションを使ったら恐ろしいことになりそうだ」








 リティ「武器は片手銃みたいだけど、アレでなのはさん級の砲撃とかできたらどうしよう…」


 ステンス「取り敢えず、噂によると片手銃のアタックファンクションの中には砲撃級の技もあるらしいぞ」


 リティ「六課に使い手はいないみたいだけど」


 ステンス「オーディーンたちは、経験値さえ積めば違う武器の技も使えるらしい」


 リティ「……あー…」


 ステンス「たとえばパンドラがリタリエイター持ってグングニルぶっ放すとかな」


 リティ「なんか恐ろしい感じしたからやめてくれる!?

     で、ではまた次回!」







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 <次回の「とたきま」は!>





 ノーザン「読者のみなさん、ノーザンです。ついに"アレス"開催です。いつもよりたっくさん人がきています」


 スター「そりゃあ、次元世界規模の頂上決戦だからな。人も集まるさ」


 ノーザン「いろんな世界からいろんな人たちが来るので、作者が1番てんてこまいです」


 スター「あー、まーな。ゲスト参戦作品、生々しい話するとまだ決まり切ってないらしいし。

     でも逆に参戦確定で話のネタ作ってるヤツらもいるらしいしなぁ。最終的にどーなるんだかな」


 ナイトメア《俺のタロットで……占いきれないだと…!?》


 スター「こっちはこっちで引きずってるし」


 ノーザン「六課の人たちもお互いをライバル視して、予選の戦場へ飛び込んでいきます。みなさんこうご期待」













 第27話:大争奪戦、開幕 〜激戦!乱戦!大混戦!〜













 トラルー「スター、君に1つ忠告してやろう」


 スター「?」


 トラルー「若干一名、君に対してヤンデレ化して特攻かます可能性があるらしいので気をつけてね。強く生きろヨ」


 スター「な、なにぃぃぃ!?」














































 あとがき






 前夜祭のようなノリで波乱が起きましたが、次回から遂に"アレス"が開催です。

 予選開始早々に大混戦となることは……まぁ大抵の人がすでに想定の範囲内でしょうが。

 (そういう意味で、次回のサブタイは案外開き直っています)


 実は未だに発表しきってはいないチーム構成。あと、それぞれのチーム名も殆ど不明のまま。

 すべてはジャッジマンの出番確保という陰謀からだったり(マテ)

 いつぞや出たダークジャッジマンもしっかり乱入してくるので、ダークバトルに巻き込まれる人も結構出ます。






 前半で模擬戦の(強引すぎる)幕引き、後半で荒ぶる金色アイ祭り(ぇ)

 今回新登場となったミスリルが犯人であった、ということでひとまずの幕引きですが、後ほどまた出ます。やらかします(オイ)

 ちなみに、彼女は「ケロロ軍曹」の「金阿弥 明」が元ネタであったりします。初めて本格登場した話が今回の後編の元になっていたり。



 同じく新登場のアキレス・ディードについては次回以降でじっくりと。

 原作(ダンボール戦機W)同様にシブい立ち回りをさせてあげたいキャラです。なので素性明かしはじっくりと(ぇ)






 ……しかし、読み返してみると「ジュンイチざまぁ」な話にしか見えなくなってくるなぁ、今回(マテ)


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 とりあえず、生みの親としてまずはジュンイチに合掌……する気になれねー(爆)。
 日頃が日頃だからなー。とりあえず……たまには死んどけ?(再爆)

 魔王の暴走によって“前夜祭”はひとまず(強制的に?)閉幕。
 なのはもすっかりジュンイチに感化されちゃって……「主に交われば赤くなる。柾木ジュンイチに交われば黒くなる」の法則が適応されたか(マテ

 新キャラ大盤振る舞いで次回いよいよ“アレス”開戦。
 もう今からカオスになりそうな気がしてしょうがないですが、楽しませていただきます……カオスは今に始まったことじゃないし(オイ