レルネ「さぁさぁ、本日もいきます!"レギュラーメンバーのドコナニ"のコーナーのお時間です」


 プロト《前回の主だった動きは、以下のようになっております》








 1.ノーヴェのチームはレルネwithクロスディメンジャーと対面、交戦。




 2.オーディーンらのチームが移動開始。セインらのチームと交戦。




 3.恭文がヒョウエンと激突。途中からスターが乱入し、三つ巴となる。




 4.トラルーらのチームはマキトがシグナムとヴィータを単独で撃破。ジュンイチと遭遇する。




 5.しかしそんなこんなを全て台無しにして、なのはが超広域スターライトブレイカーを発射。

   被害甚大の為、模擬戦は強制的に中止。




 6.なのはがヒルメに制裁された後、深夜に突如一部のメンバーがハッスル。




 7.ハッスル化の原因はオッドアイ少女・ミスリルの特殊能力であることが判明。

   しかしアキレス・ディードの介入により、ヒロリスたちはミスリルを取り逃がしてしまう。




 8.一方でジュンイチは一足先に暴走組に滅多打ちにされ、(人として重大な過ちを犯した末に)トラルーに惨殺される。

   当日死亡数・2を記録した。














 プロト《最後のジュンイチさんについては放っておくとして、いよいよ"アレス"開催です!》


 レルネ「模擬戦がごっそりつぶされた分、今度は大会で活躍してみせましょう!

     それでは、第3クールのメインイベントが始まる第27話をどうぞ!」





































































 

「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






「とある旅人の気まぐれな日常」






第27話:大争奪戦、開幕 〜激戦!乱戦!大混戦!〜




































































 《マスター、いよいよですね》


 「うん、そうだね」













 フェンリル他、一部のビースト系メンバーがハッスルしたり、


 それに巻き込まれてジュンイチさんが2回ほど惨殺されたりとかあったけど、


 ヒルメの冗談抜きな不眠不休の努力のおかげで、出場メンバーの武装は全て修理完了。


 現在、"アレス"の出場確認などを行うエントランスセンターがあるという、第37管理外世界"デルポイ"に移動中。

















 移動手段は、今回はなんとノイエ・アースラ!


 ……ではなく。第一、アレを動かすには本局への手続きだのなんだのでめんどくさくなっているらしいので除外された。


 じゃあ、何で移動しているのかというと……。



















 「……よもや、本当に残っていたとはな」


 「さすがに私も驚いている。古代戦争中に回収不能になったとは聞いていたが……」


 「まぁ、軍事利用を避けるために、情報源を悟られないよう外部から独立した場所に秘匿していましたからね。

  シグナム殿たちが知らなくても無理はないでしょう。なにせ、スターやトラルーにさえ教えていない極秘中の極秘ですから」





















 心底驚いている、ホシケ……スターセイバーとシグナムさん。


 ヒルメが解説しているけど、まぁそういう事情のおかげで、ヒルメたち当事者しかその存在は知らなかったらしい。


 そう、雇い主である霞澄さんはおろか、本人が言うとおり人脈の元であるといえるスターやトラルーでさえも。























 《ディビジョンフリート、極輝覚醒複胴艦きょくきかくせいふくどうかん。コードネームはヒルメ》


 「古代戦争時代に作られた艦だっていうけど、最近の管理局の艦にも見劣りしないよね、これ…」


 「寧ろあっちの方が…まぁ、なんだ、遅れてるというか、なんというか」


 「そうなんですか?」


 「主に動力機関がオーバーテクノロジーで半分ブラックボックス化してるからな」




















 アルトが言ったのは、今こうして僕らを運んでいる艦の名前。


 コードネームからわかる通り、実はヒルメが所有してる。どの組織にも帰属しないフリーな状態で。


 外観はヒルメと同じように、中央の本体を4つの複胴が三次元的に囲んで、正面から見ると×の字になっているのが特徴。で、長いです。


 パーソナルカラーはヒルメと同じオレンジ。他は殆ど黄色で統一されてて、なんかすごい。


 ヒルメいわく、この艦の役割は、保有戦力の収容とバックアップ、輸送など。いわゆる移動整備工場らしい。


 実際、複胴の方は全部ロボの格納庫みたいになっていて、現在は機動六課やジュンイチさんが保有してるトランステクターを収容中。


 実はその数十倍の戦力をまとめて収容してオーバーホールできるほどの整備技術と資材容量があるのだそうで。


 一方で師匠がちょっとしどろもどろになってるけど、わかるんだろうという直感でもあったかエリオに尋ねられたスターいわく、


 どうにもディビジョンフリートというのは、古代ベルカの時代にあったオーバーテクノロジーが使われているらしい。








 で、この艦は古代戦争時代にとある事情で回収不能になっていたらしいのだけど、今はこうして新品同前な姿。


 なんでも、地球に来たばかりの頃に別空間に秘匿して、こっそりと地道に修理していたのだとか。


 ヒルメすごい。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「よぉーし、遂に出陣だお前ら!」


 「せいぜい派手に暴れてきなさい?」


 「取り敢えず、予選落ちだけはするなよ?生みの親として情けなくなるからな」















 さすがにファントムアークで出向くワケにもいかないので、転送でデルポイまで移動。


 メンバーはもちろん、"アレス"に参加する戦闘メンバー。




 アムリタ、メディア、リア・ファルの「チーム・メモリーズ」。


 デビルブライスター、デビルホーネット、デビルポセイドンからなる「チーム・トライデン」。


 ディフィカルター12については、今回は3分割でチーム分け。




 その構成は、1チームにつき4人。本戦トーナメント以降は最大3人を選抜して残りがセコンドとなる。


 ゲリュオン、ヒュドラ、ヒュッポリテ、ヘスペリデスからなる「チーム・GH3」。GH3は「ジーエイチスリー」と読むのであしからず。


 ステュムパロス、エリュマントス、ケリュネイア、ネメアからなる「チーム・SEKN」。


 アウゲイアース、ミノス、ディオメデス、ケルベロスからなる「チーム・AMDK」。





 え、ならリートはどうかって?僕は……「チーム・オメガ」の一員としてちょっと先が心配です。


 なぜなら、最近かませ犬ポジションが定着しつつあるファーヴニルと、柾木ジュンイチ相手に圧勝してきた"Xカイ"がチームメイトだから。


 いやもう、何が心配って、主に後者のせいでいるだけ参戦に終わらないか、つまり出番の意味で心配。


 スティアはまさかの単身エントリーで出番ガッポガッポのぼろ儲けだというのに。










 「かませ犬ポジションなんざ捨ててやるっつーの!

  あと出番ぼろ儲けって、お前なぁ」


 「だって、仕方ないでしょう?実に3話分まったく出番なかったワケですし」


 「理由がメッタメタだなオイ!?」











 いいですかファーヴニル?出番というのは、我ら二次創作に生きるキャラにとって文字通り死活問題でs













 「それ以上はやめとけ!危なすぎる!」





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「お祭りだよね?お祭りだよね?」


 《まぁ、祭典という側面がないわけでもないか》


 「少なくとも観客たちは観戦であり祭りであるわけだしね」











 さて、僕らは現在一足お先にデルポイに上陸済み。


 別に気づかれてもどうでもいいような気もするけど、念のためメルクリウスは光学迷彩で隠しておく。


 騒がれても面倒だし。


 精神年齢がアレなせいか妙に浮かれてるユーリプテルスだけど、まぁ彼ならそんじょそこらの相手には負けないので放っておく。


 ゼノンがいうことももっともだしね。














 《というより、既に若干一名お祭り気分になっているヤツもいるが》


 「あー!もろこしずるい!」


 「うわああああああ」


















 ゼノンめ、気づいたか。ていうかちょっ、ユーリプテルス、ゆすらないで!


 君のパワーでゆすられるとちょっとしたジェットコースター状態だから!


















 「ほ、ほら、もろこしあげるから、どうどうどう」


 「わーい」


















 とりあえずお目当てらしい焼きトウモロコシをくれてやる。


 なんかわからないけど、焼いたトウモロコシにご執心らしい。はたしてそれが生前からの好物なのか、


 この前連れてった某所での盆踊り大会で食べた時に気に入ったのかはわからないけども。いや、さすがにそこまでの情報はない。


 ていうか、あったらお前何のストーカーだよと、ユニクロンに果てしなくツッコんでやりたい。










 ……予選開始前から三途の川見るかと思った。




















 《それはないだろう。君とトラルーは冥土と閻魔と死神に嫌われているからな》



















 いや、そりゃそうなんだけど…。










 え、なんでかって?


 そいつぁ言えねぇなぁ。


 いや、それ触れちゃうと僕だけじゃなくトラルーにとっても最大級のネタバレになっちゃうからマジで。




















 「ヒントちょーだい」


 「え、いや」


 「ヒントちょーだい」


 「あの、今の地の文はわざと漏らしたパターンだから」


 「ヒントちょーだい」


 「ねぇ聞いてる?」


 「ヒントちょーだい」


 「あい」


 《屈した!?》




















 いやぁ、さすがの僕もね、全長が身長の半分くらいあるハサミ(プレッシャーシザース)でつかまれたらねぇ。


 命の危険ぐらい僕もトラルーも感じるんだよゼノン?
















 というワケで、ユーリプテルスに……というか画面の前の皆様にヒントねぇ。














 しいて言うなら、僕もトラルーもユニクロン生まれです。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ノーザン、いつまでむくれてるでおじゃるかー?











 「ぶー」












 そろそろ気持ち切り替えてもらわないと、こっちがちょっとやりづらいでおじゃるよ…。













 「ぶっすー」














 困ったでおじゃるねぇ。


 スターと違うチームになっちゃって以降、ずっとあんな調子。


 チームメイトとして、いろいろ心配なのでおじゃるよ。

















 「姫様、ここは拙者にお任せを」


 「およ」

















 月影丸、何か策が。




















 「ノーザン殿、かくなる上は強硬手段でござる」


 「?」






















 ちょいまちでおじゃる。強硬手段って、まさか……





















 「もうこの際、撃墜してでもそばに引き寄せてしまえばいいのではござらぬか?」


 「アッー!!」






















 やっぱりぃぃ!絶対狙って言ったでおじゃろう!?ノーザンの心理状態を完全に利用する気でおじゃろう!?
























 「仮にいかなる支障が出たとしても、それは全てスター殿の責任ということで」


 「うわぁ……」






















 ……月影丸の一言を聞いてから、ノーザンから異様なオーラを感じる。


 これ、下手しなくてもスターと鉢合わせするまでは触れない方がいいオチでおじゃるか?


 …………ジュンイチも同じ目に遭えばいいのに。






















 「つまり、柾木ジュンイチは通算何回殺されればいいと…?」


 「あ」




















 それもそうでおじゃるねぇ。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 さーて、二人とも準備おっけい?


 特に、昨日の模擬戦で刀忘れてきやがったマキト。











 「今回はちゃんと持ってきやしたぜ!兄貴!」


 「誰が兄貴だ」












 なんかしらんが今日は僕のことを兄貴と呼ぶ。なぜ。














 「だって、スターさんと友達っつーことは、彼を兄貴分とする以上はトラルーさんも兄貴分なワケで。

  ちなみにイテンさんやビコナさんは姐さんってことで」


 「姐さんかぁ……悪くないかも♪」


 「さいですか」















 まぁ、レルネやノーザンの件があるから別にいいけどね。


 でもさ、ビコナと同様の誕生経緯を持つ子たち……今回から新しく"戦国精霊"と呼ばせてもらうのだけど、


 そんな連中も"アレス"に何人も参加している可能性が極めて高い。


 ……ビコナから聞いた情報からするに、特に復讐ノ牙とくノ一。




















 「なぁに、そんじょそこらのヤツらだったらオイラがガツーン!と切り伏せてやりますから!」


 「うーん、とりあえずミッドに紛れ込んでる時点で只者じゃあない気しかしないけど…」


 「姐さん!病は気から!敗北は弱気から!ガッツがありゃたいていの勝負は乗り切れるんですぜ!」



















 そーゆーことにしときな?


 ただでさえ参加チーム多すぎて予選の方がよっぽど混戦模様になるから。


 消耗戦になりやすい予選の方が、実は意外とハードだったりするんだ。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ふーん、デルポイも案外過ごしやすいじゃない。


 ま、私たちが元々いた時代に比べればずいぶんと殺風景だけど。


 猿子がうまい具合に根回ししてくれたおかげで、案外あっさりとついたわ。


 これにはアイツに感謝ね。









 「参加申請と武装の追加登録、ただいま完了しました」


 「そう、ご苦労様。猿子が合流してくるのはいつ?」


 「あと30分ほどはお待ちいただくことになります」


 「じゃあ、どっかで暇つぶさないといけないわね」











 今私に報告してきたのは、私の頼れるしもべ。まぁ現代風にいうなら副官ってところかしら?


 あどけなさもあるけど凛としてる水色の瞳。


 左右に分けたショートヘアー、×の字にも見える長く大きなリボンで結ってある淡い紫の髪。


 首元から胸と背中までを覆うインナーに、その下からお腹だけ出して覆うタイツ的なスパッツ。リボンと同じピンク色のラインが入ってるのがポイントね。


 肘から下、それと膝から下は青紫の布地に甲冑の一部。太もも周辺は内側が大きく開いているタイプのぶかぶかズボン。


 アレってズボンというべきなのかハーフパンツというべきなのか、イマイチ微妙なのよね。


 まぁあとはヘソの下辺りにピンクのリボン、腰の方にピンクのしめ縄を蝶結びで結ってるわ。


 二つ名が"可愛かわい"っていうのも、まぁ納得の容姿だと思わない?














 「取り敢えず猿子との合流は私の方でしとくから、それまでは好きにしてていいわよ、リラ」


 「分かりました、では少し野暮用を片付けてきます」


 「えぇ」
















 ひとまず、登録が済んでしまえばあとは戦うだけ。


 まずはあの子にも息抜きぐらいさせないと。一応、無茶ブリしてるって自覚ぐらいあるんだからねっ。


 ま、あの子が、リラが野暮用っていうくらいだから、まぁ大したことじゃないでしょ。


 寧ろ問題なのは…………ビコナが警告してた、アイツね。


 私としても他人事じゃないし、気をつけないと。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 さて、いよいよ開催間近だな。


 おそらくネガタロスやアストラルもそれぞれで準備を進めているだろう。


 だが、私としてもやりたいことの1つや2つ、あるのだ。













 「本当に参加しないの?黒いオオカミさんとくノ一さん連れてるのに?」


 《私はともかく、そのオオカミとくノ一はフェンリルとパンドラのグレードダウン版にしか見えないからな。

  仮に連中のチームと当たれば、あっという間に劣勢を強いられるだろうからごめんだ》


 「そう、ちょっと残念、な気がする」


 《まぁそう言うな。そもそもコイツらがついている理由自体、大会への参加ではないからな》


















 オオカミさんこと"ハンター牙"は、フェンリルの初期設計機であるハンターの出力向上版、


 くノ一さんこと"鬼クノイチ"は、パンドラの初期設計機であるクノイチの出力向上版、という位置づけの機体だ。


 とはいえ、さすがに当のフェンリルやパンドラにはどのスペックも遠く及ばない。気休め程度の改良だ。


 ただし、コイツらは簡易AIだ。そして、生産体制というものも確立している。




















 《私も合間を縫って観戦させてもらうさ。

  そして時が来れば……動く》


 「そう……」





















 そう、私がコイツらを率いて行動を起こすのは、もっと後なのだ、ミスリル。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 《さぁ、いよいよやってまいりましたぁ!

  今日というこの日より、全ての次元世界から集う猛者たちによる、真の頂上決戦の火ぶたが切って落とされることになるのです!》










 「王様、なんでボクたちはアレに出ないんだろうね」


 「知るか。出ようとしてもジュンイチに取り押さえられて申請できんのだ」


 「そしてもう開催当日、参加申請の締め切りは過ぎてしまったので参戦は無理です」


 「えぇー!?」










 ジュンイチから聞いた、次元世界規模の総合戦闘技能大会"アレス"。


 今日はその開催当日。


 とりあえずジュンイチに「参加すんな」って追い出されてしまったライたちマテリアルズと一緒に、テレビで試合観戦。


 もったいない気もするけどな。トラルーいわく「別に彼女たちが優勝してもパネルに興味ないからいいのに」とのことだったんだけど。


 実際問題、ライやヤミ、セイカの3人については、その出自が特殊すぎて誰に狙われるかわからない。


 ジュンイチとしてはそこが気がかりなんだろ。


 当初はブリッツクラッカーたち関係者各位にも口止めしてたくらいだしな。










 それにしても、あのナレーションしてる角刈りサングラスなおっさん、どっかで見たような。


 具体的には、某超次元サッカー番組で。














 「うー、やっぱり出たいぃぃ!」


 「我とて出たいわ!」


 「…………二人とも、正式な参戦は無理でも、

  あのお祭り騒ぎに便乗するような形で暴れられる方法はないわけではありません」


 「って、セイカ?」














 なおも駄々をこねるライとヤミに、セイカが提案してきた。


 けど、どうするつもりだよ?
















 「鷲悟さん、以前から何度か違法バトルをしかけている組織がある、という話はご存じですか?」


 「あー、確かジャッジマンと似た黒いロボットに審判させてて、プレダコンズとかいってたっけ?」


 「はい。そのダークバトルは、一見すればプレダコンズ側だけが有利になる違法バトルなのですが……」




















 そこで一旦間をおいてから、真顔で言ってきた。

















 「その時には大抵ジャッジマンが行動不能になってしまっている為、プレダコンズ"以外"の乱入もさほど問題にならないようですので」
















 そこから更に続けられた言葉に、案の定ライたちはやる気を出し始めていた。


 いや、確かに類似例についてはアーツバトル連盟は不問にしてるんだけどさ、


 セイカ……お前はいったいどこで道を間違えた……?





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 《その名に恥じぬ覇を夢見る猛者たちが今、このデルポイの地に集結!

  今か今かと、幕開けの知らせを待っている様子がよく分かります!》










 少し時間が飛んで、現在"アレス"の開会式。ただし、兼用で予選の説明会でもある。


 何しろ、開会式が終わった瞬間から予選開始っていうんだからね。どんだけ王道突っ走るわけ?


 いや、単純な方がいいけどさ。


 いかにも某超次元サッカーで熱狂してそうな風貌のグラサンおっちゃんが進行させていく。


 電子音声ばっかりなのはマイク越しだからってことでひとつ。













 《では、戦闘開始の前に予選のルールを説明しておきましょう。

  審判長及び副審判長、お願いします!》


 「了解」


 「はい」















 審判長と言われたのは、ちょうどスバルやティアナぐらいの年頃と思われる、けども落ち着いた雰囲気を放つ女子。


 腰ぐらいまで伸びたエメラルドグリーンの髪、それと似た色合いの瞳、頭には一対のリボンチックなヒラヒラがついた三角帽子。


 服は簡素で、エメラルドグリーンのシャツに黒のスパッツ、その上にシャツと同じ色のラインがあるベストらしき上着。


 上着は首元に三日月を模したペンダントと一体化したリボンで止められていて、両腕には肘から下に振袖。リボンと振袖はグレー。


 確かガイドブックによるとこの人は「パレサ」って名前。








 続いて副審判長と言われたのは、エリキャロと同程度の小柄な男子。まだあどけなさが残ってる感じ。


 その水色の髪はパッと見ショートヘアーだけど、よく見ると後ろの方で結って少し伸ばしてる。


 頭には、ヒラヒラの形状がひし形になっている三角帽が。ラインの色が水色な点を除けば、ベスト状の上着については同じ。


 その下は黒のシャツ、それと水色主体の短パン。短パンについては本人のアレンジらしいけど、帽子とシャツとベストの組み合わせは制服のようなものらしい。


 パレサと同様の、ただし色は緑の振袖。まるで瞳の色を反映しているかのよう。そう、あの子の瞳は新緑のような緑。


 それと、あの狸が使う夜天の書のような感じの本が常に近くで浮遊してる。ガイドブックの紹介によると、MSデバイス"ガレット"とのこと。


 同じくガイドブックの紹介によれば、彼は「リリエン」という名前らしく、なんでも召喚術と転送術のエキスパートなんだとか。









 ちなみにMSデバイスとは、ムーンストーンと呼ばれる特殊な鉱石を加工して作られたデバイスのこと。


 配合割合は個体差があるらしいけど、共通して魔力伝達が良いばかりか、使い手の魔力を自動的に増幅するだけでなく回復までさせるらしい。


 もちろん、増幅量や回復量は配合割合が多ければ多いほど高くなる。


 ただしこのタイプには致命的な欠点がある。それは、月の元で生まれた精霊、通称"ルナ族"と呼ばれる者たちにしか扱えないということ。


 なんでも、ムーンストーンが発する特殊な魔力にはルナ族の者たち以外には毒にも等しい攻撃性があって、


 結果的にルナ族でなければ触れることすらできないのだとか。つまり、MSデバイスは実質上ルナ族専用機ということになる。


 魔力反応以外にも、ムーンストーンが使われている証として、漆黒の六芒星がどこかに刻まれているらしい。





 ……というのが、ガイドブックの備考項目に書かれていた情報を一部抜粋、解釈したもの。トラルーいわくこれで大体正解らしいけど。


 六芒星云々については、たとえば今こうして見えるガレットの場合、本の表紙にあたる部分に堂々と六芒星が刻まれている。


 一種のシンボルだからなのかは不明だけど、大抵のMSデバイスには大きめに漆黒の六芒星が刻まれている。


 そしてそれらは、ルナ族以外の者には触れることすら許されない。













 「副審判長を務めます、リリエンです。試合中は実況兼解説としてもたまに出ますのでお見知りおきを。

  予選のルールについてですが、皆様にはこれより"ダンジョンバトル"で争っていただきます」













 まずリリエンが一歩前に出て、ガレットを開きながら説明を始める。ていうか、実況解説もするんかい、君。


 そして、会場にいる者全てが初めて首をかしげる。ダンジョンバトル?ガイドブックにもないんだけど。


 ていうか、そういえば明確なルールって実は公式発表されてなかったね。


 予備情報は、強いて挙げれば「強さと軽快さの双方を持つチームだけが勝ち残るサバイバルレースのような感じになる」ということだけ。


 それも、あくまで噂レベルだったワケで。
















 「ダンジョンバトルとは、全チームがバラバラなスタート地点から迷宮化したフィールドを進んでいただき、

  ジャッジカプセルがある地点で遭遇したチーム同士は、戦闘開始のコールが始まればバトルしなければなりません。

  ただし、指定フィールド圏外であれば、双方が視認していても離脱可能です。道を変えれば、戦わなくてもよいということになります。

  ダンジョンバトルのフィールドは、この広大なデルポイの居住エリア以外のほぼ全土を利用し、連盟の方で構築した疑似フィールドを合わせたものとなります」
















 連盟のフィールド形成技術で半ばダンジョン、つまり迷宮と化したデルポイ大陸を突き進み、


 時折ライバルチームと戦いながらゴールを目指していくってことか。そしてゴールについたチームだけが本戦に進むと。


 説明から推察するに、デルポイ大陸のあちこちにジャッジマンが待ち構えているってワケか。


 しかしデルポイのほぼ全土って、この大陸だけで地球のアメリカ合衆国の2〜3倍ぐらい広大なんですけど。


 どんだけ広域管理できるんだよアーツバトル連盟。


















 「なお、このダンジョンバトルではチーム登録した選手全てが戦闘可能です。ただし、一度のバトルには3人までの参戦となります。

  一度ブレイクオーバーした選手は以後の戦闘に参加できず、全員ブレイクオーバーした時点でそのチームは失格です。

  トランスポーターの使用は、選手の回収や装備換装などのインターバル目的、チーム全体での移動手段としてのみ有効とします。

  決してトランスポーターの支援放火などは行わないようにしてください。場合によっては即失格となりますのでご注意を」



















 ブレイクオーバーについての判定は、ジンやクレアさんたちが経験済みのダメージカウンターシステムを利用したもの。


 バリアジャケットと同化させるものらしく、最悪バリアジャケットがなくても戦闘服ならなんでもいいという万能仕様となってます。


 さすが次元世界規模。支給品の汎用性も桁外れだぞアーツバトル連盟。


 で、トランスポーターっていうのは、確か……

















 《ちょっとした移動基地みたいなものです。我々の身近でいえばノイエ・アースラとか極輝覚醒複胴艦とかが該当するのでは?

  あとは極端な話、デンライナーやゼロライナーも該当しそうですね》


 「そうそう。で、一応、極輝覚醒複胴艦についてはトランスポーターの登録はしてるんだよね。

  ていうかアルトさんや、時の電車は登録したらマズイでしょ。いろんな意味で」

















 特に極輝覚醒複胴艦は実際に移動整備工場だからトランスポーターには適任だよね。


 別に艦船に限定しなくても、マックスフリゲートや基地モードのダイナザウラーなんかもトランスポーターに登録できるワケだ。


 要は移動できる収容施設ってところだろうか。それこそ陸上空母から航空母艦まで様々。中にはスターシップまであったりして。


 そんな話が持ち上がった時に、案の定リュウタロスさんがデンライナーをトランスポーターにしようと言い出したけど、


 どういうワケか電王やゼロノスについては匿名状態で出場できるとはいえ、さすがに時の電車の姿を露呈させるとマズイということで却下。


 結局、ヒルメらが管理運用しているという、ディビジョンフリートのみが六課のトランスポーターとして登録されることに。


 あ、ちなみにツクヨミとタケハヤ、あとスターいわくカナヤゴにもディビジョンフリートがあるとのこと。でも、未見です。
















 「そして肝心のゴールについてですが、バトルして勝利するごとに断片化したキーコードを送ります。

  合計3つのキーコードを入手した者にだけ、本戦出場のキップを手にする場であるゴールの位置を知る権利が与えられるのです。

  なお、キーコードの奪い合いはできません。あくまでもバトルの勝利でのみ、キーコードの獲得を認めます。

  チームメンバーの誰か1人でもゴールに辿り着けば、本戦では再度フルメンバーで参戦することができます。

  本戦の詳しいルールについては、本戦出場チームが全て確定してから改めてお伝えします」

















 説明する一方で次々と解説用のイラストや映像がモニター表示されていくのは、


 おそらくガレットを操作しているからだろう。大体魔導書型デバイスの役目は情報の蓄積や運用だしね。


 実際、淡々と説明する一方で手は常にガレットの操作に集中してる。


 魔導書型なのにタッチパネル式とか、そんなケチで野暮なツッコミは、寧ろしたヤツに白々しい視線が集中しそうで怖い。


 アレだよ、飛び出す絵本の電子化したものだとでも思おうか。





 で、本戦出場=ゴールへの到達には、3つのキーコードが必要。


 キーコードはバトルで勝利した時にだけ得る。チーム同士での奪い合いはなく、連盟の方から勝利チームに送られてくるってことか。


 ブレイクオーバーしても、本戦出場が確定すればメンバー全員で本戦に進める。これは事前に確認できた情報だね。


 要は誰か1人でもゴールに辿り着ければチーム全体の勝利になるってワケだ。












 「予選の大まかなルールは、リリエンが言ったことで一通り網羅してるわ。

  補足事項としては、アイテム類の使用は参加申請時に携行許可登録がされているものに限らせてもらうわ。

  これは本戦出場後も同じ。上限数以内ならバトル終了後に補充してもかまわない。

  ただし、妨害行為をするなとは言わないけれど、バトル中の場に投げ込むとかいうマネだけはしないでもらおうかしら。

  連盟審判団の誰かが制裁に行かなくちゃならなくて面倒だから」















 説明の主導を副であるリリエンに任せ、足りないところを主であるパレサ自らが補う。


 よくあるけど合理的な手法だね。副より主の方が知ってる事項も多いワケだし。


 それだけに、説明や忠告にも詳細性がある。たとえばルール違反した奴らに制裁を下しに行くから覚悟しとけ的な発言とかね。


 ていうか、制裁役が決まってないって、どんだけフリーダムな戦闘集団なんですかあんたら。審判団ってレベル超えてるでしょ絶対。


 アレか、某施設武装組織のGUNDAMがランダムで武力介入しに行くようなモンなのか?


 それだったらとりあえずチートと化した二個付きとだけは当たりたくないです。命ごと駆逐されそうで怖い。

















 「まぁ制裁云々はさておき、トランスポーターの火器搭載について制限事項がなかったことに誰か疑問があるかしら?

  それについて今の内に説明しておくと、最近ダークバトルを仕掛けてくるプレダコンズ対策でもあるわ。

  自衛ってヤツね。ダークバトルになったら、いっそのこと問答無用でダークジャッジマンを撃ち落としたってかまわないわよ。

  それどころか、ダークジャッジマンを撤収ないし破壊したチームには褒賞も考えてるから、りたければどうぞ?

  ただしブレイクオーバーしてもかばいきれないので、その辺は自己責任で。

  乱入されたバトルでのキーコードについては……ルール上さばききれないので無効試合、ナシってことで。

  まぁ、プレダコンズやダークジャッジマンがそう易々と逃がしてくれるとも思えないから、結局はバトルするしかないでしょうけど」

















 以前報告があった、リア・ファルを筆頭とするチーム・メモリーズはプレダコンズと通じていることが既に判明してる。


 それに、そいつらが置き土産にした刺客であるステュムパロスたちについても同様。


 でも奇妙なことに、コイツらもフツーに参加チームとして登録されていた。見慣れない連中も含めて。


 どういうつもりなんだか…。他にダークバトル用の人員がいたりするんだろうか。


 ていうかさっきからパレサの発言が時折物騒なんですが。ダークジャッジマンはブッ飛ばしていいんですかい。


 ダークバトルに真っ向から突っかかる……どころかバズーカぐらいぶっ放しそうな勢いの強気発言の数々。


 そんな過激思考でいいのか審判団。






















 「恭文、そんな考えはもはや時代遅れなんだぜ」


 「はい?」




















 ふと、トラルーから声が。時代遅れ?























 「だって、連盟所属でジャッジマンを投下するジャッジサテライトってヤツには無数のビーム砲があって、

  衛星軌道上から直接地上を砲撃できるくらいの火力が確保されてるんだから」
























 あー、制裁ってそういうこと…?






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 "詩霊うただま月詠つくよみ"……でおじゃるか?












 「あぁ。ビコナ殿なら、何か知ってるんじゃないかと思って…」













 それは、デルポイへ移動している途中でのこと。


 トラルーからの勧めもあって、私や月影丸も極輝覚醒複胴艦に乗っていたのだけど、


 突拍子もなくチンクとやらから尋ねられた。


 ちなみに、結局大半がエントリーしたらしいナンバーズ姉妹も同乗してます。













 「いきなり何事でおじゃるか?」


 「いや、ドクターが私たち姉妹に開放している資料の中に、そんな単語があったのを思い出してな。

  今機動六課の方に、特別スタッフとしてツクヨミという者がいるだろう?

  何かあるのかと気になったのだ。まぁ、私の知的好奇心だがな」













 知的好奇心ときましたか。


 いや、その気持ちはわかるでおじゃるよ?


 どういう理由であれ、知りたいって思うのはもうしょうがないから。


 私だってそういう時の1つや2つくらい。















 「で、その詩霊についてでおじゃるが……私もよくはわからないのでおじゃる」


 「む、てっきり日本史に関わることかと思ったが」


 「確かに月詠という漢字自体は日本の古い資料などの一部で見受けられるもの。

  "詠"むという字から連想できるように、いくつもの詩を詠んでいたと思われる歌人……かとも思ったのだけど……」


 「あなたが所有する情報には、該当するものがなかったと」


 「そう。ついでに月影丸に当たっても無駄でおじゃるよ。彼が持つ情報はさほど私のそれと変わらないからの」


 「そうか……」















 実際、月詠と名乗る者が歴史上にいたようないなかったような…。


 いや、さすがに神話時代までは勘弁願いたいです。そこまではさすがに追いきれないでおじゃる。


 うーん、寧ろトラルーの方が知ってるかもしれないでおじゃるねぇ…。














 「私もそう思って当たってみたのだが、彼も知らないようだ」


 「あらら」


 「だが、『直接関係するかはわからないけど』と言ってから興味深いことを教えてくれた」


 「ほへ?」















 さすがトラルー、私ですら知らないことにも精通しているでおじゃるね!


 そこにしびれる!憧れるぅ!


 ……というネタはさておき、興味深い情報とな?
















 「彼いわくあくまで月つながりでの蛇足とのことだが、

  精霊の中には、古き時代より月に住むという"ルナ族"と呼ばれる一族がいるらしい。

  月詠なだけに、もしかしたらルナ族の中にそんな人がいるかも、とのことだ」


 「ルナ族でおじゃるか……私も初耳でおじゃるよ」
















 よもや、原住地=月ときましたか。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 《ご覧ください。壮大な夜明けと共に、連盟が所有するジャッジサテライトの艦隊から、

  無数のジャッジカプセルが投下されていきます!

  その全てが、これから行われる予選のキーコードを司る番人として、選手諸君の試合の審判を行うのです!》











 衛星中継の映像に、いくつものジャッジサテライトから次々と降り注ぐ光が見える。


 角刈りグラサン男の説明通り、あの光は全てジャッジカプセル。


 広大なデルポイの各地に飛来し、それぞれがバトルフィールドを形成していく。


 それらがいくつもつながりあい、ダンジョンフィールドとしての機能を有するほどの規模となる。


 キーコードを集めなければわからない、本戦出場者だけを迎え入れるゴール地点を飲み込むように、その範囲は広がっていく。















 《選手諸君は、既にバラバラに決められた各々のスタート地点にて、開始の合図を待つばかり!

  その合図は、各地のジャッジマンによる同時コールとなります!》














 そう告げられる中、次々と飛来したジャッジカプセルが展開。


 ジャッジマンが姿を現し、バトルフィールドを形成する特殊なエネルギーウェーブを放射。


 戦闘用の疑似フィールドを形成し、他のジャッジカプセルとリンクすることでフィールド同士が繋がりあい、やがて迷宮と化す。


 これこそが、予選の舞台となる"ダンジョンフィールド"ってワケだ。















 「なお、スタート地点がバラバラなのだから当然なのだけど、

  どのエリアからバトルしても、勝利後に送信されるキーコードの種類と順番は決まっているわ。

  あくまでチームごとで異なるので他のチームの進路を当てにしようとは思わないように。

  じゃあ、審判長である私からもこれで説明は終わり。あとはジャッジマンのコールだけよ」
















 パレサはそう言い切ると、お勤め終了とでもいうかのように自ら壇上から降りていく。


 でも、審判長ということは、総合的な解説席でもあったりするんだろうか。


 総合司会兼実況であるあの角刈りグラサン男の隣が空席になってることに多少の不気味さすら感じるよ。


















 《申し遅れましたが、今後の総合司会及び総合的な実況は、

  この私、"角馬かくま 王将おうしょう"が担当させていただきます!

  更にパレサさんには、後ほど総合解説として同席していただくことになっております!》
















 《案の定でしたね、マスター》


 「やっぱりかい!ていうか、やっぱりどっかで聞いた名前だなあの人!」


 《そりゃあ、かの有名な某超次元サッカーからの出張でしょう》
















 名前までそのまんまで出張してこなくても。


 ただでさえ某LBXアニメにも出張してるでしょうに。


 きっと僕らの知らないところで、オーディーン辺りがどよめいているに違いない。

















 「いや、そっちは公式クロスオーバーだから。完全に同姓同名だから。

  関連性については言及されたためしがないんだけど」


 「こちらに出てもさほど違いはないだろうに」
















 リティもマスターコンボイもそんなメタな話はしないの。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「すっごー、アレ全部ジャッジカプセル?」


 「逆立ちして見たら打ち上げ花火に見えなくもないですぜ?」


 「それはどうだろう」














 時は満ちた。


 それを知らせるかのように、無数のジャッジカプセルが次々とデルポイ各地へ落下していく。


 森林、湖の孤島、砂漠、山岳、谷間、はたまたジャングルなどなど。


 落下していったものから順にカプセルが展開、お約束通りジャッジマンが姿を現す。


 イテンやマキトがなんか言ってるけど気にしないでおく。




















 「おや、兄貴、姐さん、あの波のような光は?」


 「なんだろ?」


 「おそらく、ダンジョンフィールド形成用のレプリションウェーブだろうね。

  連盟提供の疑似バトルフィールドは空間湾曲の技術を応用しているらしいから」




















 詳しい原理については解釈が難しいのだけど、もっとも近いというかひな形になっているのは間違いなくディバイディングドライバーだろうね。


 レプリションフィールドとアレスティングフィールドという2つの概念を利用したのが空間湾曲で、


 前者は空間を押し広げようとする力場。対する後者は空間を固定しようとする力場。


 レプリションエネルギーで一定範囲の空間を押し広げ、アレスティングエネルギーによるフィールドで固定する。


 つまり押し広げられた部分を穴とする、存在を隔絶されたフィールドを作れるワケだ。


 空間ごと押し広げられるので、湾曲範囲内に巻き込まれたものについては損壊などのリスクはなし。


 フィールド内の地面などがいくらえぐれようと関係ないので、戦闘フィールドとしてうってつけなのだ。


 ガッツィーでギャラクシーでガードなあの組織は実に見事な考え方をしておられる。


 ……もっとも、その技術の根源は某緑の星の人たちにあるらしいんだけど。まさにオーバーテクノロジーです。






 で、ダンジョンフィールドはまずディバイディングフィールドと同等の空間を設け、そこに別途用意したイメージによる疑似フィールドを形成。


 それを最終的なバトルフィールドとして、かつ互いに連結することで迷宮化させたもの、ということになる。


 元の地形を崩さず、かつ自由度の高いフィールド設計ができるのだから、連盟にとって理想的かつ画期的な技術なんだろうなぁ。


 もっとも、空間湾曲には莫大なエネルギーとそれに耐えられる制御システムが不可欠なので、実用化までに相当な苦労をしたんだろうけど。






















 《皆様、お待たせしました。全てのジャッジカプセルが展開、フィールドの形成が終了した模様です。

  ジャッジマンが試合開始のコールをしたその瞬間から、予選開始となります!》



















 さて、より詳しい解説は鳥系などっかの誰かさんに任せてしまうとして、


 僕らもスタート準備。とはいっても、別にわざわざダッシュする気はないけどね。





















 《"アレス"対応バトルモードを発動。

  バトルモード・ゼネラル1001……》





















 1001というのはアレスなどの大きな大会用の設定らしいです。


 それはともかく、既にバラバラに散らばった他のメンツ同様に少し身構えて……






















 《レディー・ファイッ!!》






















 "アレス"の幕開けを告げる、いつも以上に壮大なゴングの音と共に試合開始宣言。


 同時にあちこちでダッシュし始める音が聞こえてくるのに、大した時間はかからなかった。


 そして僕ら「チーム・ストゥルム」も、ジャッジマンを探して移動を開始した。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 さて、私たちは方々に散ってそれぞれで"仕事"をするわよ。


 やることはわかっているわね?












 「はい。ジャッジマンと連携してのバトルの監視と公平性の判断、

  万が一の不正行為に対する早急な対応。そして……」
















 「みんなでバトルの実況解説ですねっ!」





















 こら後ろの連中!リリエンは正解を言っただけよ!あなたたちもやるんだからね!


 ずっこけてる暇があったらトークの練習ぐらいするつもりでいなさいよね!?


 まったく、これだからいつまでたっても王将さんに総合司会兼総合実況を任せるハメになるのよ。






















 「かくいうパレサさんは?」


 「あら、私は総合解説を担当してあげるので手一杯よ。これでも知るべきことはいくらでもあるんだから。

  その場で検索できるガレットがある分、リリエンに代わってもらいたいくらいよ」


 「あはは……」

























 そう、私は王将さんの隣で総合解説役。だから制裁役に駆り出されるのだけは勘弁願いたいわ。


 万が一そうなったら……その辺のダークジャッジマンにでも八つ当たりしとこうかしらね。





















 「と・に・か・く!予選はもう始まったわ。

  全員、それぞれの持ち場へ行ってちゃんと仕事してくるように!サボッたりしたら……分かってるわね?」


 『サー・イエッサー!!』






















 イエッサーの声と共に各自転送で持ち場へと向かう。この迅速さは私仕込み♪


 悪いけど、デビル三銃士に実況解説の出番はないわよ?


 少なくとも中継実況席は私たち審判団全員分を確保しているワケで、彼らはダークバトルになろうが健在なワケだから。


 え、どうしてそんなこと言うのかって?それは……ウィ○ペディア辺りで調べなさい。もしくはググりなさい。























 「……さて、私もさっさと席に着こうかしらね」




















 王将さんの隣、すなわち総合解説席に。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「ほらスタースクリーム、見なくていいの?」














 そういうお前は随分と興味津々のようだな、フィアッセ…。
















 「ま、結構面白そうだし。機動六課やカイザーズからも出てるし、この前来てたあの子たちも出てるじゃない」


 「この前……トラルーたちのことか」


 「えぇ。彼らの目的は純粋にマイクロンパネルみたいだけど」


 「神器のマイクロンともなれば、トラルーも多少は躍起になるか」


















 次元世界対抗という側面もある以上、当然ながらセイバートロン星でも中継される。


 1週間も連続で生中継するとは、アーツバトル連盟とやらも相当なものだ。


 オリンピックですら三日ぐらいするとダイジェストぐらいしかやらなくなるというのに。




















 「そこでオリンピックを引き合いにするのね…。

  ……あら、早速バトルが始まったみたいね。片方は知らないチームだけど……お相手はトラルーたちね」


 「ほう?」



















 トラルー、お前の実力、少しずつじっくりと見極めさせてもらおうか。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「二人は手出し無用。早いうちに肩慣らしをしとかないと後々たたりそうだからね」


 「はーい」


 「がってん!」












 相手はこちらと同じく3人。見たところ、全員二丁拳銃の射撃型のようだけど……相手にとって不足なし。


 …………っていう評価が悪い意味で覆らないように、せいぜい頑張ってほしい。


 なお、1戦目開始の「レディー・ファイッ!」のコールはとっくに終わってます。

















 「随分と余裕だな」


 「たった一人で俺たちを倒すつもりか」


 「遠慮はしないぜ!」


 「はいはい、お決まりのセリフはいいからかかってきなよ」


 『なぁにぃ!?』


 「トラルー選手、早くも相手を挑発!対するチーム・バレッターは怒り心頭です!

  これは何かの心理的な作戦なのかぁ!?」

















 よくある形だけどとりあえずタンカを切っておく。


 でないと仕掛けてきそうにないんだもん、あーゆータイプ。


 同じ二丁拳銃でも、どっかのツインテールたちとはえらい違いだ。


 あと、このジャッジマンについていた実況担当は、どこぞのフライ拳使いなハエ人間だった。


 まぁそれはそれ。今は目の前の相手に集中すべし。





















 『受けてみろ!俺たちの三位一体奥義!!』


 「なんですとー!?」


 「連中め、そんな技を!?」






















 相手からの発言でイテンとマキトが動揺してるけど、別に関係ない。


 元からチーム戦を想定しているモードだ。合体技の1つや2つあったところで、全く不思議でもなんでもない。


 どうでもいいから早く仕掛けてきてほしい。













 でないとスタースクリームやメガザラックに実戦データの提供ができないじゃあないか。















 『必殺!トリプルハリケーンバレットアタック!!』










 《おぉーっと!早くもチーム・バレッターの合体技が発動ぉ!!

  トラルー選手に猛然と迫る!!》


 《彼らは連盟のチームの中でもAランク、特級のSランクを除けば最高位に位置する強豪チーム。

  その中でも勝率8割を叩き出している技を第1戦開始直後に使うなんて……》


















 早くも総合席から王将の実況とパレサの解説が飛ぶ。


 え、相手の技?別に大して気にしてませんが何か。





















 《そんなの、死亡フラグ中の死亡フラグなのにね》






















 パレサの発言の後半と僕が動き出したのはほぼ同時。そして勝負は一瞬で着いた。























 『ひでぶ!?』
























 思いっきりしゃがみこんで、全身のバネを活かして大ジャンプして突撃。そのまま基本形態のイグナイテッドで顔面を強打。


 2枚のマルチフェザーとイグナイテッド本体、合計3か所を利用して3人同時に強打。


 この攻撃が決まった時点で、既にこいつらの運命は決まった。






















 「フォースチップ、イグニッション!!」


 <ATTACK-FUNCTION RAISE CRASH.>























 あとは簡単。よろめいてる3人を、片っ端からレイズクラッシュでブッ飛ばすだけ。
























 「バトルオールオーバー。バトルオールオーバー。

  ウィナー、チーム・ストゥルム!」


 「なんと!?たった一瞬でチーム・バレッターの3人が全員ブレイクオーバー!

  必要最小限、なのに荒々しい動きで3人まとめて撃墜!トラルー選手、恐るべし!!」






















 で、3人はあっけなくブレイクオーバー。1勝目は僕自身にとっても珍しいくらい簡単な速攻で片付いたのだった。


 しかし、バエの実況ってよく通るんだよね声が。伊達にマイクみたいな口してないね。























 「第1のキーコードを送信する」


 《……キーコード受信。ゴール地点の情報の一部を確認しました》


 「まずは1勝っすね兄貴!」


 「残り2勝も速攻でいっちゃう!?」





















 なるほど、こういう形でキーコードを集めるのか。


 デバイスを持たないチームがどうするのかはまぁ気にしないでおこう。やり方なんていくらでもあるだろうし。


 なんてったって次元世界規模のアーツバトル連盟ですから。


 とりあえずキーコードはこのままイグナイテッドに保管してもらおうか。
















 「じゃあ2勝目はマキトかイテン、もしくは両方にとってきてもらおうかなー?」


 「上等っすよ!やってやるっすよ!」


 「私だって張り切ってるんだからねー!?姐さんっていうんだったら出番くらい残してよね」


 「もちろんっすよ!」














 うん、とりあえず次のバトルは見物としゃれ込めるかな?


 もちろん、相手にもよるんだけど。










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 《ウィナー、チーム・ストゥルム!》


 『ぶーッ!?』












 オープンチャンネルにしてたアルトから聞こえてきたのは、トラルーたちのチームが勝利をもぎ取ったことを知らせるジャッジマンの声。


 それと同時に僕もマスターコンボイもリティも同時に絵的な何かを吹いた。思いっきり吹いた。


 マンガで言ったらもう1ページ使うコマの半分くらい埋め尽くしそうな勢いで。















 「ちょっ、もう1勝!?」


 「予選開始からまだ2分も経ってないぞ!?」


 「何があったらそんなに早く事が進むの!?」



















 順に僕、マスターコンボイ、リティ。ありえないでしょ、開始2分足らずで1チーム撃破とか。


 あの対戦相手のチーム、魔導師ランクに換算して考えると単独でもAA〜AAAクラスに相当する猛者だっていうのに。


 ていうか、何があったっていうより、何が原因でそんな速攻で片付いたのかって話だと思う。


 そりゃあ、イテンやマキトもなかなかの身のこなしとはいえ、トラルーはフェイトでさえ追えないスピードを持っ……て……。























 「…………まさか、初戦の相手をトラルーが速攻でつぶしたと?」


 「ダイジェストでもいいから早く確認したいところだがな」


 「あまりもの速攻ぶりに、審判団まで混乱してる」





















 《えー、衝撃的な速攻を見せてくれたチーム・ストゥルムのトラルー選手!

  彼の勇士を今一度ご覧ください!》


















 あ、映像編集できたみたい。





















 ―映像視聴中―





















 …………あの、実質的な戦闘時間、1分すら経ってないよね。どう考えても。


 カップ麺どころか昨今の電子レンジレトルトでさえ間に合ってないから。極端な言い方すると、ほんとに一瞬だから。


 しかもイテンとマキト何もしてないし。トラルーだけで瞬殺ですかい。どんだけだよ。






















 「優勝を目指すにあたって、最大の強敵となるやもしれんな」


 「ジュンイチさんも昨晩の件で完全に優位性失ってるしなぁ」


 「新しいチート伝説の始まり?」


 《トラルーさんのチートぶりも結構なレベルですよね》


 《マスターギガトロンも含めたディセプティコンオールスター相手に単騎で無双してたって話も伊達じゃないよな》





















 反射技のトランスカウンターも使っているらしいけど、それ抜いたって無双できるでしょアレは。


 何気に純粋なスピードタイプってジェノスラッシャーぐらいだし。


 ていうか、ジュンイチさんじゃないけどマジで六課の戦力を単騎で壊滅できるんじゃないだろうか。


 特に魔力攻撃主体の横馬やはやてなんかはトランスカウンター使われたら対抗策なくなるし。アレって結界破壊効果まで無視するらしいし。


 障壁が空間湾曲によるものだとすると、有効範囲内ならスバルの振動破砕さえ通じないってことになるし…。


 やばい。考えれば考えるほど、トラルーに勝てそうな人の候補がどんどん減っていく。





















 《……とりあえずミスタ・恭文、それを考えるのはやめておこうぜ?

  ほら、ミスタ・マキトも言ってたじゃんか。敗北は弱気からだって》


 「確かに、詮索して詰まるよりかは真っ向勝負する方がよほどマシだな」


 「そうだね」



















 うん、もうやめとこう。下手すると寝てないのに悪夢にうなされそうだし。









 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 「始まったようですね」


 「あぁ。トラルーの速攻ぶりにいきなり驚かされたが、それを除けば順調のようだ」












 予選そのものが開始してから僅か2分足らずで1勝目を手にしたトラルーには度肝を抜かされた。


 あの速攻こそがヤツの本気だというのか。


 それとも、以前マッハたちを巡ってプレダコンズやディセプティコンと戦っていたさなかに見せた、アレが…?


 ……なんにせよ、決して過小評価して挑むことだけはしてはならない相手ではある。


 ある意味、カイとかいうヤツが辿った末路は、過小評価した挙句の果てだったのかもしれないのだからな。
















 「二度とそうならないことを祈るばかりです。

  万が一、再びあんなことになったら……隊長たちですら、止められるかどうか」


 「無理だろうな」


 「なんだと?」
















 さて、グリフィスの発言を真っ向から否定してくれたこの小柄な男。名はシュルツ。


 赤いショートヘアーに真紅の瞳、水色のインナーと赤い半ズボンの上には鮮やかなオレンジのチョッキ。


 そう、ベストではなくチョッキなのだ。彼同様に連盟の警備部隊などに紛れているヤツの仲間2名も色違いのチョッキを着ているというが。


 他には、頭にオレンジのつばと水色の本体からなるバイザー。


 そして、両手首付近には、細長い黒い柱のような何かがある。本人いわく武器だそうだ。


 仲間2名を含めミッド出身らしいが、人間とは比べ物にならない寿命を持つ一族であり、かつ元から老化しない体らしい。


 ここにいる理由については、ある人物からの依頼らしい。何を依頼されているのかまでは教えてくれないがな。















 「まず引き合いに出された隊長陣だが、高町なのはと八神はやては魔力砲撃が主体であり、

  絶対反射壁であるトランスカウンターには無力どころか逆利用されるのがオチだ。

  残るフェイト・T・高町やアリシア・T・高町についても、得意分野のスピードで負けている。

  追いつくこともかなわず、かといって砲撃も通じず。寧ろ隊長陣にはなすすべもない。

  言っておくが、この話はそれぞれのパートナー、つまりアンタも含めたトランスフォーマー組にもほぼ当てはまるからな」

















 ……もしこの場に他の当人たちがいたら、何かしらリアクションが起きていただろうな。


 フルボッコにかかるなり、崩れ落ちるなり。














 「副隊長4名についても同様だ。

  スピードと一撃の威力に重きを置くシグナムとて前述のスピード面の理由で圧倒されるのが関の山だ。

  ヴィータに至ってはそれこそ何もできまい。切り札のギガント系の魔法はとにかく隙が大きすぎる。

  仮にギガント魔法を使わなくても、わざわざトランスカウンターを使うまでもないだろうな。

  言ってしまってはなんだが、彼からすればやたら経験値を多くもらえるザコみたいなヤツだ。

  念のために言っておくが、やはり彼女らのパートナーたちも同様に無理だ。体格差がかえって弱点となる」


















 当人たちがいたら、すぐに大乱闘の始まりだろうな。主に一瞬で沸騰する鉄槌の騎士が仕掛ける形で。


 そしてそういう時に限って真っ先に沈められるのはもはや定番になりつつある。


 過去に何度も柾木にあしらわれ続けているからな。伊達にコントじみた方法で撃墜させられたワケでもないだろう。


 注意不足による自滅に近いがな。


 それと体格差云々については、柾木に実際に指摘された部分でもあるな。





















 「寧ろ止められる可能性があるのはマスターギガトロンとアストラルだ。

  前者は常時エネルギーを吸収できる"支配者の領域ドミニオン・テリトリー"で十分に足止め可能だし、

  後者は何と言っても同類だ。おまけに後発で、ある意味で専門家。対処法ぐらい知っているし、実践できないワケでもないだろうしな。

  下手に有能なようで無能な管理局が出しゃばるよりもよっぽど可能性がある」




















 さっきから管理局組に対して物腰がきついように思える者もいそうなので補足しておこう。








 シュルツをはじめ、ヤツの仲間たちは過去に管理局の暗部に潜む者たちの陰謀と思われる、拉致事件の被害者たちだ。


 その事件は、心無い科学者どもが希少技能についての研究を重ねる為だけに拉致を起こしたもので、


 いつしかそれは"レアスキルホルダー乱獲事件"と呼ばれるようになっていた。蛇足だが、表記はカタカナで通しているらしい。




 シュルツもまたその被害者の一人であり、拉致監禁されている間にかなりの苦痛を味わったという。


 話によれば、生体実験の実験台にされるのは当然のこと、成果が出なければ見せしめに友人や知人を殺され、連中の娯楽目的で拷問も繰り返されたらしい。


 しかしもっと驚いたのは、実はトラルーもその被害者の一人だったということだ。管理局側で洗い出した被害者リストにその名があったのだが、


 どういうわけか長いこと秘匿されていて、その事実がわかったのはシュルツが話してくれた後だ。確証はないが、今は亡き最高評議会辺りが隠していた可能性がある。


 しかも他の連中に比べても恐ろしい頻度で拷問を受け、徐々に心がドス黒くなっていくのを見たという。


 やがて、もはや何度目かも数えられなくなったほどに繰り返された拷問の果てに、遂に"爆発"した。




 犯人グループの連中を見境なく攻撃し、一人残らず無残な肉塊に変えていった。その際、トラルーは狂ったように笑いながら虐殺していったという。


 いわば復讐か、はたまた行き過ぎた憂さ晴らしか。さすがに目の当たりにした故に恐ろしくて、シュルツたちも当時の心理については聞けないらしい。


 発狂した原因は、言うまでもなく繰り返された拷問によって無尽蔵に蓄積されていったストレスだ。


 現代社会でも、ストレスを抱えすぎた人間が発狂してテロやら無差別殺人やらを引き起こすことがないワケじゃない。


 ましてやトラルーのストレス云々については、ユニクロン扱いされることでも異常蓄積していると聞いている。おそらくこの事件も原因だったのだろう。


 調査した結果、ユニクロンと似た性質の力を何度か発揮していたのを確認した上で拉致監禁のターゲットにしたことが分かったので、そう断定する。




 話を聞く限り断定できるのは、繰り返された拷問の果てに憎しみが増大しすぎて後戻りできなくなり、殺しという行為に抵抗がなくなってしまったということ。


 そして、人類……厳密には管理局か。その全てに見切りをつけ、憎しみの、ひいては虐殺の対象としてしまったこと。


 当然だろうな。こんな抽象的な話でさえ、狂わない方がおかしいとしか思えない罪状だ。まぁ、犯人は逮捕する前に皆殺しにされてしまったがな。



















 「まぁ、オレからしても、トラルーについてはいくらなんでも行き過ぎだとは思っている。

  だが、現実が現実だ。拉致される前の面識はなかったが、温和なヤツだったはずなのにな」


 「絵に描いたような変革劇ですね…。ただし、エリオくんたちには聞かせられないです」


 「あぁ、さすがにアイツらには早い。執務官志望のスバルとティアナはともかく、エリオとキャロに聞かせるのはマズい。

  というか、エリオに至っては地雷だ。拉致され実験動物にされていたという意味では、アイツのトラウマを掘り下げることになる」


 「柾木ジュンイチにも聞かせられない。アイツの場合、その情報を何に使うか想像もつかないからな。

  ただでさえ、昨晩殺されたばかりだというに…」
























 昨晩の虐殺事件については、シャーリー、アルト、ルキノの3人が迂闊にも話のネタにしていたせいでシュルツに聞かれてバレた。


 だが、驚くほどにスルーされたので内心間抜けな声を上げかけたのだが、事情を聞いてみれば納得した。


 寧ろ虐殺することを喜ぶような性分であることが判明してしまったからな。


 どうりで人殺しに対する嫌悪感や躊躇がない筈だ。とっくの昔に経験済みな挙句、初体験の時点でそんな概念は消滅していたのだからな。


 いわば、倫理観という意味で一線を越えてしまったのだ。超えてはいけない方向に。


 そしてスターの話によれば、ヤツにとっては殺すという行為が、もはやストレス発散にしかなっていない可能性すらある。


 シュルツの補足によると、肉塊へと成り果てた連中を研究施設ごと爆破して消し飛ばした後もなお、「殺し足りない」と呟いていたらしい…。


 彼らの情報とこちらで収集できた情報を照らし合わせた結果、レアスキルホルダー乱獲事件が起きたのは今から約800年前。


 トラルーが生まれたのが約千年前。つまり生誕200年目ぐらいに起きたことになるな。戦場にいる途中で拉致され、解決後再び戦場に戻ったということか。


 ヤツもいわば管理局の過ちによって捻じ曲げられた存在だったワケだが、随分と猟奇的な過去だな…。


 B級スプラッタ映画なんて裸足で逃げ出しそうなほどに猟奇的だ。文字通りの虐殺を心の底から笑うようなヤツだったとは…。













 確かに、グリフィスの気持ちはもっともだ。俺もそんな事態は避けたい。


 止められないどころか、下手すると視界に入っただけで八つ裂きにされそうだ。


 以前の暴走事件でも、ジェノスクリームとジェノスラッシャーが進路上にいただけで半殺しにされたからな。


 進路上にいただけでアレだ。攻撃目標であるカイに至っては……まぁ、読者諸君も知ってのとおりだ。


 寧ろ、よくもまぁ死なずに済んだものだ。攻撃力の殆どが"ディープ・ルインド"によるプラネットフォースの破壊に回されていたのが原因か?


 それでも、どうやら結構長い間、再生カプセルに引きこもりにさせられていたようだが。


 報告映像を見るだけでも恐ろしいものだな、今にして思えば。




















 「まぁ、最近の話を聞く限り、そこまで本気で大暴れした話はあんたらが知っている範囲だけだ。

  トラウマを刺激されなけりゃ、どこか能天気なアイツなんだ。刺激しなけりゃ」


 「そういえば、あの暴走事件はカイがトラルーのトラウマをわざと抉ったのが原因だったな」


 「似たような事件を、クロスフォーマーがジュンイチさん相手にやらかしたのが記憶に新しいですね」


 「あぁ、あの時も柾木を相手にこちらの主だったメンバーがあっという間に壊滅状態にされたな」


 「目には目を、暴走には暴走をってノリでしか止められない、というのは宇宙規模で勘弁願いたいな」


 『確かに』





















 普段のトラルーを能天気呼ばわりするのは、付き合いがあるためか。


 まぁシュルツが言うのなら、本当に暴走した時だけなのだろう。猟奇的になるのは。


 ただ、解放後は別れたそうなので、戦場に戻った残りの約600年のことはわからない。スターいわく「異様に徹底的だった」とのことだが。


 それと、クロスフォーマーと柾木暴走の一件も記憶に新しい事件だな。高町が自ら死にかけたのが暴走停止のキッカケだったというのは難儀な話だ。


 よりにもよって、トラウマによる暴走を止めたのがトラウマによる記憶の回帰によるものだったらしいからな。


 俺の言葉に続いたシュルツの話、すなわち暴走したトラルーに対抗できるのは暴走した柾木のみ、ということだけはあってほしくないというものだ。












 実に、同意せざるを得ない恐ろしい話だった。
















 「……そういえば最近、トラルーの言動が過激になってきているような」


 「というと?」


 「どうにもストレスがまた溜まり始めているようで、『殺させろ』とか『死ねばいいのに』とか、割と本気で呟いているとか。

  酷いときには遭遇した犯罪者を捕まえて憂さ晴らししているという噂さえあるほどで……」






















 グリフィスの言葉に疑問を持つ。シュルツの声に促され、出てきた説明にため息が出た。


 特に後半。とりあえず、倫理問題になりかねないから、憂さ晴らしで犯罪者を捕まえないでほしい。せめて検挙助勢の名目で捕まえてくれ。


 というより、噂が妙にリアリティがあって恐ろしいぞ。発見する頃には血まみれのミンチになっているとかいうんじゃあるm



















 「しかもストレスがヒドイのかそれとも発散の絶好の機会だとでも思っているのか、

  捕まって憂さ晴らしでリンチにされた人たちは、揃いに揃って体の一部が再起不能になってしまうほどの重症患者になっているらしくて…」


 「下手しなくても殺す気だったな絶対。途中で思い出して、しぶしぶやめたとか、そういう感じしかしないぞグリフィス殿」


 「しかもおそらく、ストレスの元凶は柾木だろうな。俺たちが知らない余罪をたっぷり隠していそうだ」













 伊達に盗撮写真云々の件で明らかすぎる殺意で追い打ちをかけられたワケでもなさそうだ。


 突然思い出したのだが、つい先日、最近は無駄に模擬戦に引っ張り出されているから気をつけた方がいいとスターに忠告されたな。


 つまり高町やスバルについても恨みを買っている可能性がありそうだな…。模擬戦に無理矢理にでも駆り出すといえば、ほぼヤツらしかいない。


 …………あのアホども……。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「ジュンイチの余罪も余罪だけど、アイツのトラウマも相当なモンだよな」


 「下手に刺激したら、それこそ即あの世行きにされる危険性すらありますね」


 「さわらぬ神にたたりなしッスかねー?」














 いずれも直接見たワケじゃないとはいえ、いくらなんでも恐ろしすぎる。


 どんだけ自分の過去にトラウマ持ってんだアイツ…。それと、管理局ってやっぱロクな組織じゃないかも。


 ジュンイチがはじめっから信用してなかったのもわかるなー。いや、ゲンヤさんとかイイ人もいるけどな?


 けどさ、ディードが言ったことが異様に信憑性があって怖い。


 実際、暴走中のトラルーって威力の差が激しいだけで基本的に敵味方無差別になるらしいし。
















 「それはそれとして、ジャッジカプセルが見当たらないッスねー」


 「スタート地点が完全にランダムでしたからね。そういうケースもあるのでしょう」



















 現在、私らは最初のジャッジカプセルを探す段階でつまずいていたりする。


 いや、レーダーで既に大まかな位置と方向はわかるんだけど、いかんせんこのフィールドが入り組んでいるせいだ。


 ダンジョンって名づけられてるのは伊達じゃないってワケか。


 ウェンディのボヤキは軽く流しつつ。



















 「なぁアストライア、お前のセンサーでもう少しなんとかならないか?」


 《申し訳ありません。残念ながら、幾重にも入り組んだ地形を正確に把握できるほどにはセンサー精度はよくありませんので…。

  以前ゴッドオン状態のアイアンハイドのスコープ代わりになれたのは、各トランステクターとの連動があればこそ。

  単体でのセンサー精度では、これ以上は…》


 「ジェミナスも大差はないですね……ミルクディッパーならどうです?

  サジタリウスの射程距離を考えれば、それなりにセンサー精度も高められている筈ですが…」


 《連盟側もさすがに考えている、というべきでしょうか。

  詳細な構造までは特定されないように、レベルを抑えてジャミングをかけているようです》


 「大まかな地形はわかっても、具体的にどう進めばいいかっていうのを判断できるような細かい地図は作れないみたいなんス」





















 てことは、他の連中も立ち往生してたりする可能性は結構あるか。


 トラルーの速攻については、殆ど偶然だったみたいだし。





















 《この辺は特に入り組んでいるのでしょうか。

  他のチームも相当な数がこのエリアで彷徨っているようです》


 「マジッスか」


 「あー、見るからに迷宮って感じしかしないもんなー、この辺」






















 アストライアの話からすると、どうやらジャッジカプセルに辿り着けないだけで、


 他にも多くのチームがこのエリアに入っているらしい。まぁ、遺跡フィールドだから、隠れ蓑にもできそうだし。


 とすれば、うまくやれば一気にキーコードを集めるチャンスかも。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「お兄ちゃん、とりあえずトラルーにだけは会わないように願おうか」


 「そうだよね。確実に日頃の恨みつらみを上乗せされて襲われるに決まってるから」


 「じゃあアイツらのチームを避けながら進むのか…。変に遠回りにならなきゃいいけどな」










 取り敢えず、要は3勝してゴールに辿り着いてしまえば本戦出場が確定するワケで。


 なのでトラルーにとっ捕まらない内にキーコードを揃えちゃおうって作戦。


 あらかじめサーチをかけて、チームが密集してそうなエリアのジャッジカプセル1つに陣取って相手チームが来るのを待つ。


 そうしてれば、わざわざ歩き回らなくても相手の方からやってくるってモンでしょ。


 それに、下手に動き回るとそれこそトラルーにとっ捕まる危険性がある。そうなったらとてもじゃないけど生き残れる見込みがない。


 なので、キーコードが集まりきるまでは、最初に飛ばされたこの密林エリアで待ち伏せ。














 過去に模擬戦で全戦全敗を喫しているんだから、自信持てなくて当然でしょ!?















 「あー、そういえば勝てなかったよな、トラルーに」


 「ていうか、六課メンバーの誰も勝てたためしがないよね」


 「かろうじて認識はできても、追いつけない。あのスピードに追い付ける人、誰かいるのかな…」

















 そう、アリシアちゃんの話で六課メンバー全員共通と明言された全戦全敗の理由は、トラルーのある意味で最大の武器である超機動力。


 あまりにも速すぎるだけでなく、身のこなしまで軽くて速いもんだから、フェイトちゃんやシグナムさんでも振り回される。


 最初のかませ犬はスバルだったっけ。嫌な予感がしたのか警告してくれたエリオの声を完全無視して飛び出した途端に瞬殺されました。


 一瞬かつ一撃で撃墜判定が出た。スバルの突撃をよけた途端に真後ろからブッ飛ばして、


 その延長線上にあった近場の廃ビルに顔面激突というドリフチックな末路で。


 ちなみに、直後のインタビュー(記録:リアルギアのみなさん)によると、「話にならないから黒歴史にしてくれる?」と言ったそうな…。


 まぁ確かに、単調すぎた挙句一撃で決まっちゃったから、話になるワケないよね…。すごく不満そうだったね、あの顔。




















 「でも、最近は多少マシになってきてるんだろ?」


 「取り敢えず瞬殺だけは回避できるようになってるね」


 「それでも秒殺に変わってるだけで、殆ど進展はないけどね」























 性懲りもなく突撃して、かと思いきやフェイントで急転換したりとか考えてみたけど、


 エリオが回避時の勢いを初速にして連続回転でフルボッコにされたり、


 はたまたティアナが足を思いっきりひっかけて転ばされて、直後にマルチフェザーでタタキにされたり、


 さらにはスバルが突撃の勢いを逆利用されてジャイアントスイングで投げ飛ばされたり、


 結局流れはトラルーから奪えないまま撃墜されっぱなしだったりする。


 特にジャイアントスイングになだれ込まれた時は目を疑ったね。いや、スバルを持って振り回すまでのモーションが全く見えなかったし。




 なお、ジャイアントスイングで投げ飛ばされた場合、障害物に叩き込まれるだけならまだいい方で、


 追い打ち要員としてスターやイテンなんかを先回りさせてたり、飛ばされてる途中で追撃を叩き込まれて延々と跳ね飛ばされたりした。


 あと、投げずにそのまま高速回転して同士討ちさせたり、障害物に何度も叩きつけて脳震盪起こさせたりしたこともありました。


 後者だけは、強引に模擬戦に呼び出されてイライラしてた時限定だったんだけど。


 ……最近はリベンジを果たそうと行き急いだばかりに、若干殺気混じりにイライラしてるみたい。ていうか目が本気だった。


 ついでに、その時の犠牲者は強引に巻き込んだ首謀者であるなのはちゃんだったといっておく。


 しかもジャイアントスイングだけじゃ飽き足らず、投げ飛ばした直後にブリーカーかまして腰砕いてた。みんな背筋凍ったのを覚えてる。
















 「心配すんな。万が一トラルーと当たったら、モーメントフォームで一気に封殺してやらぁ」


 「イグニッション前に倒されないようにね?たぶん、モーメントフォームについてはあっちも把握してるだろうから」


 「バトル開始のコールの瞬間に攻め込まれる、とか?」


 「アイツならやりかねないんだよなー。まぁ、やりようなんていくらでもあるけどさ」


















 とりあえずお兄ちゃんはそろそろ、攻め手を崩される脅威が宇宙にはいっぱいあるんだよってことを心から知った方がいいと思う。


 一応、今までにモーメントフォームの発動を阻止されたことも、発動後に力負けしたこともないけど、


 だからって"アレス"の中でも負けなしで済むという保証はない。


 お兄ちゃんのことだから、ヘラヘラしてるだけでちゃんと警戒はしているんだろうけど。


 それと、警戒すべきことはもう1つ。

















 「ジュンイチさん、トラルー限定でいえばもう1つ、忘れちゃいけない技があるよ?」


 「ディープ・ルインドのことだろ?ある意味、それが最大の問題だ。くらったらイグニッションフォームも強制終了だろうし」


 「トラルーの能力を考えると、モーメントフォームでスピードでは上回れても、反射神経とか動体視力とかは不利なままかも。

  それを活かして居合切りの要領で出されたりしたら…」


 「そうさせないためのモーメントフォームだろ?"瞬間"って名前が伊達じゃないってとこ見せてやるぜ?

  マジでトラルーと当たったらな」


















 お兄ちゃんの戦闘力はどう考えたってお墨付きだし、トラルーも「最大級の脅威だ」って言ってたから警戒されてるはず。


 けど、なんでかな。この大会に限っては、お兄ちゃんでも負けちゃうような相手がゴロゴロいるような気がしてならないよ。


 ……だからその分、私とアリシアちゃんでフォローしていかないと…。

















 「チーム・マサキの3人、戦闘準備をしたまえ。

  たった今、私の管轄フィールド内にチーム・ボンバーズが進入し、彼らからのバトル申請を受諾した」


















 おっと、ジャッジマンからのご指名ということはいよいよ出番だね。ボンバーズというと爆撃集団なチーム。


 こうしてお目見えしてきた3人は、揃いに揃って大量の爆弾や小型ミサイルを搭載したアーマーを身にまとっている。


 とにかく敵を爆破することにかけては天下一品とまでいわれているのが、あのボンバーズ。


 でも、実は機動力にはやや難アリってことは既に調査済み!お兄ちゃんでもモーメントフォームを使うほどじゃない。


 これなら2戦目以降に向けての温存はできそう。



 ちなみに、ボンバーズとはいっても、別にどこぞの特急ロボのチームのことではないです。




















 「チーム・マサキ、ヴァーサス、チーム・ボンバーズ。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 …………予選開始から、早くも1時間か。


 やっぱり何かやっていると時間経過は早く感じるね。そう、動いていようが見ていようが。


 ていうか、開始早々に山越えさせられるかと内心ヒーヒー言ってた。主に僕が。


 ユーリプテルスは無尽蔵にタフだし、ゼノンに至っては要するにロボットなワケで。疲れるのは実質僕だけです。ちくしょう。


 ……それはともかく。


















 <ATTACK-FUNCTION BRAKE GAZER.>















 背中のマントの付け根の上にあるチップスロットに、ミッドチルダのフォースチップ。


 ゼノンの得意とするアタックファンクション"ブレイクゲイザー"が発動。


 固有武装の大型円形メイス"ゼノンハルバード"を思いっきり地面に叩きつけて高密度エネルギーの衝撃波を飛ばす大技だ。


 発生した津波のような衝撃波が、眼前にいる敵を吹き飛ばした。


 あー、ありゃもうブレイクオーバーだね。
















 「えいやっ!」




















 一方で向こうも終わった様子。


 ユーリプテルスだ。自慢の超重装甲で攻撃を受け付けず、プレッシャーシザースで掴んで無造作に振り回す。


 まるでおもちゃで遊ぶ子供か何かのように、そりゃもう楽しそうに振り回して、近場の岩とかにぶつけて、


 もういい加減飽きたのか、地面に投げ捨ててから両手を組んで振り下ろす動作でトドメを刺した。


 両手だから、ハンマーパンチならぬクエイクパンチとでもいっとく?いや、別に名前なんてなさそうだけどね。


 独特の光エフェクトが見えたし、あっちもブレイクオーバーだね。ていうかボコボコになって白目むいてるけど、どんだけやったの。

















 ……さて。

















 「お楽しみいただけたかな?僕のチームメイトのバトル」


 「貴様っ、こんなことして何が目的だ!?」


 「んー?そうだなぁ……トラルーって名前、聞き覚えがある?具体的には、今から約800年前」


 「はっ、何を言い出すかと思えば…。貴様みたいなガキがなぜそれを」


 「質問してるのはこっちだよ。お前、次元犯罪者だろ?

  レアスキルホルダー乱獲事件の犯人グループ、そのナンバー2にいたはずだよね?バルケル・バロード?」




















 バルケル・バロード。管理局が今も追っているかは知らないけど、重大犯罪者の一人だ。


 今言ったレアスキルホルダー乱獲事件、僕は時期的な意味で誕生する前だったから被害者じゃないけど、


 まぁある事情により僕にとっても胸くそ悪い話なんだよね。





















 「そういうことだったのね!?履歴を改ざんして、連盟登録選手に紛れ込んで!」


 「くそっ、変装までしてごまかしていたというのに、貴様のせいで台無しではないか!」


 「自ら変装と公述するなんて、少なくとも逮捕の理由がより明確になるだけよ!

  これは公開生放送、音声付き映像記録として、十分すぎる証拠になるわ。遠慮なく逮捕させてもらうわよ!」


 「しまった!?」





















 追いつめられると墓穴を掘るタイプか。その割には、よくもまぁあの騒ぎで生き残れたね。


 本能……というか破壊衝動むき出しのトラルーから逃げ切るなんて、そうそうできることじゃない。


 まぁ、犯人グループもコイツを始末すれば全滅なんだけどね?






 あぁそれと、今こうして僕に便乗してバルケル・バロードに突っかかったのはレジスト。


 連盟審判団所属で、僕の調べによれば彼女もレアスキルホルダー乱獲事件で拉致監禁された被害者の一人。


 今は機動六課に査察兼提携相談で来訪してるっていうシュルツの仲間だ。


 前に向いたアホ毛と少し内側に向いてる水色の髪に、落ち着いた雰囲気の黄色の瞳。後ろ髪は首の近くで細くなびくように結ってある。ダウンテールとかいうのかな。


 シュルツと同形状のチョッキを着てるけど、下のシャツの色はわからない。シュルツと違ってチャック締めてるから。


 あとは水色の短パンかな。そして武装は、左腕に基部を介して装備されるプロペラ状のブレード。武装名称は"パタリオット"だったかな。


 シンプルな服装はいいことだ。風でなびく、細く束ねられた髪が映えるね。あ、別にこの感想に深い意味はないですハイ。




 連盟の所属となることで捜索可能範囲を広げて、独自にバルケルを追いかけていたのか。


 なるほど、お互い身を置いている立場がどういう状態か理解してないまま鉢合わせたってワケね。


 レジストは変装してないから、バルケルは察したうえで気づかれないようにふるまっていたようだけど。


 まぁ、偶然か必然か、僕のパフォーマンスで逮捕の根拠は固まったようだ。身ぐるみはがしてDNAでも採取すれば素性はわかるだろうし。


 ていうか彼女にツッコまれた通り、途中から自分でバラしてたけどね?















 「まぁ、変に抵抗されるとこっちとしても面倒なんだよね。

  だから……徹底的に痛めつけて、身動きできなくしてからレジストに突き出すとしようか」


 「……そうはいかんぞ!」

















 「どぁぁぁぁ!?」


 「ジャッジマン!?」


 《このパターンは……来たか。アストラル》


 「うん。とりあえず増援に警戒して。どうせ連盟未登録の、"それ専用に"手配された連中だろうから」



















 突如ジャッジマンが潰された。はい、元ネタ知ってる読者ならもうわかるね?


 まぁお約束過ぎる突然っぷりに思わずレジストが声を上げるけど、わかりきってる以上はこちらも対応しやすいというもの。


 でも、主だったメンバーはみんな連盟登録選手として予選に参加している。


 ネガタロス辺りからの差し金かな?


 だってアイツ、バルケルみたいな古代時代の犯罪者にまで手を伸ばして、いろいろ収集してるみたいだし。




















 《……グロンギとアンノウンの混成部隊か》


 「ごちゃまぜー」


 「また事件の内容に興味を示しそうな連中が来たもんだなぁ。グロンギは今回は単純に戦力派遣に近そうだけど」





















 でも、ネガタロスもさほど大きな興味は示していない様子。


 だって、原作でも早々に倒されて退場と相成った連中の出来損ない複製だけだもん。アレだよ、企画当初はゲスト怪人になるはずが、途中でザコ怪人に降格させられた的な。




 とりあえず、グロンギ側はズ・グムン・バ、メ・ギャリド・ギの出来損ないコピー。あちこち簡略化されてるし、なんか無駄に細いし。


 ていうかなんなのこの人選。前者はまだ原作第1話のお相手だからいいとして、後者なんてトラック対決以外に特記事項が無いんですけど。




 アンノウン側は、パンテラスのグループからキュアネウスとルベオーの出来損ないコピー。出来損ないっぷりはグロンギ組と同じ。


 やはり微妙というかテキトーくさい人選。こいつらも原作の時点で大した活躍もできないままアギトに倒されたっちゅーの。




 ネガタロス、お前はバルケルに興味を持っていたのかいなかったのか、いったいどっちだ。


 ……いや、必要な情報とかを手に入れ尽くしたから、どーでもよくなったとか?


 主戦力は殆ど対機動六課用に回してるって言ってたし。実際そういう動きなのも察知している。






















 「ユーリプテルス」


 「なに?」


 「……荷電粒子砲スタンバイ」


 「はーい」






















 あんな下級以下の出来損ない軍団しかよこさないなら、ネガタロスの関心も薄いだろう。


 というより、僕個人の感情として、バルケルを逃がすのはよろしくない。


 なので、とりあえず邪魔者は吹き飛ばすことにした。荷電粒子砲って便利ね、お手軽で。






















 「ヒャッハッハッハ、ダークバトルの時間だぁぁぁ!

  ……って」


 「薙ぎ払え」


 「ふぁいやー!」























 さて、通算3度目の荷電粒子砲は"アレス"の中での発射となりましたねぇ。


 でも予選で使うなんて想定外だぞ。さすがダークバトル込みなご時世だ。


 ユーリプテルスの妙に子供チックな掛け声とともに放たれた荷電粒子の渦が、目の前にいた出来損ないコピー軍団をまとめて消し飛ばす。


 一撃で火の海だ、はっはー。なんか先にブレイクオーバーした二人が火の海に巻き込まれた気がするけど、気にしなーい気にしなーい。


 大丈夫、焼けただけで死ぬような種族じゃなかったし。どっちかというと怪人系だったし。










































































































 ついでにダークジャッジマンも荷電粒子砲に飲み込まれた気がするけど、まったく気にしましぇーん。























 「……よくもまぁ、連盟から登録承認が下りたものよね」


 「だよねー。僕もそう思うよ」





















 レジストのツッコミは至極もっともなので同意しておく。


 荷電粒子砲の威力ぐらい、知っていそうなものなのにねぇ。はっはっは。





















 「……まぁいいわ。バルケル・バロード、あんたをここで逮捕するわ」


 「あぁ、ちょっとだけ待って」




















 そう、僕もまだやり残しがあるので。





















 「僕の友人知人が受けたウラミツラミ、一部にしかならないだろうが彼らに代わってぶつけてやるから覚悟しろい!!」


 <ATTACK-FUNCTION FULLBIT BURST.>





















 瞬間展開したチャクラムビットを、今回は全て斬撃モードで使用。


 四方八方から滅多切りにし、吹き飛ばしながら切り刻んでいく。


 そして今回は容赦なし。非殺傷設定を解除して、両腕と両足を肘と膝の付け根からぶった切って切り落とす。


 オマケに射撃モードに切り替えて集中砲火で吹き飛ばす。


 ちなみに、縁の外周にビームカッターを展開すると斬撃モード、そうでないときは射撃モードってことで四露四苦。





















 「徹底的にやったわね…。まぁ、こんなもんじゃ私たちが受けた屈辱と憎しみはどうにもならないわよ?」



















 そう、前述したとおり、レジストもコイツの被害者。


 とりあえずただ運べばいいだけなのをいいことに、残っていた顔を思いっきり踏みつける。


 拉致監禁に留まらず、拷問とかもされてたっていうけど、さすがに具体的な方法はまでは……。




















 「永遠に許さないわよ……私の初めてを拷問なんかで奪ったあんたなんか!!」



















 ……………………あー、うん……そうだよね、拉致監禁だものね。そしてバルケルは男。あとはお察しください。

















 《アストラル、彼女の苦言は何のことを言っているのか…》


 「なに話してるの?ねぇねぇ」


 「君たちが知るには20年早い!!」


















 ゼノンはメカだからまだいいとして、ユーリプテルスは…………。


 ……うん、来るべき再開の時に無駄なショッキングイベント増やさない為にも、まだ教えない方がいいや。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 《さぁさぁ、予選開始から早くも1時間が経過!各地でバトルが勃発し、決着がついていきます!》










 テレビ中継でも伝わってくる、バトルの激しさ。一口にブレイクオーバーといっても、そのされ方は1つじゃない。


 カウンターのライフが無くなって特有のエフェクトが出て沈黙するパターン、


 カウンターが壊れるくらい激しいダメージを叩き込まれて、エフェクトが出る前に爆発してしまうパターンもある。


 特に後者は強烈なんだよな。なにしろ、カウンターが振り切れるほどの大きなダメージが一撃で叩きつけられるワケだからな。












 「ねー、オイラはここにいていいのかなー。

  オイラがいないとジュンイチはフルパワーを発揮できないってのに」


 「いや、だからこそだろ。ジュンイチにフルパワー出されたら、一発でフィールドが使い物にならなくなるからな。

  同じ"ヤヴァイ暴走持ち"でも、トラルーとじゃ被害規模が比べ物にならないんだよ」













 そう、変に調子のってフルパワーで暴れられるとたまったものではない、と、


 わざわざアーツバトル連盟から直々に送られてきた通達により、ブイリュウはこの柾木家の実家で隔離されることになった。


 暴走しなくたって、アイツが調子のると周辺被害が大変なことになるからな。


 たぶん、シュルツの視察で寄せられた報告で警戒されてるんだろう。


 ……そういう意味じゃ、ある意味でスターも危険人物じゃないかって思ったが、まぁジュンイチに比べればマシだったってことで。


 ジュンイチの場合、再開発中の建造物とか、寧ろこれから使うとか今現在使ってるとか、そーゆーブツばっかり破壊してるからな。















 ……そう、六課に特命で出向いてるシュルツの目的は、六課の戦力の詳細な視察だ。


 より詳細な戦力データを、模擬戦の経歴や保管資料から収集して、連盟に送ってるんだと思う。


 ただ、連盟はあくまでフェアプレイを信条としている。あそこまで深入りして情報収集しようとするなんて、ちょっと妙だ。


 何か、違う意思でも働いているってのか…?
















 「柾木鷲悟だな?」


 「え、そうだけ…ど…」


















 あ、あの……どちらさま?










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 《柾木鷲悟とブイリュウがいる柾木家に到着した。双方に柾木ジュンイチと合流する気配はない》












 そう、ご苦労様。じゃあ悪いけど、ジュンイチの敗退が確定するまでは監視よろしく。


 いいわね、絶対にデルポイに近づけたりするんじゃないわよ?













 《了解した。それと、1つだけよろしいか》













 あら、何かしら?














 《監視終了までの間の食費等については、本当にパレサ殿の口座から引き落とす形でいいのか?》














 っ、い、いいわよ、別に。















 《一時的な居候という迷惑料、という建前で、主に食費の方で大盤振る舞いするハメになると思うのだが、

  本当に、本当にパレサ殿の個人口座からでいいのか…?》

















 …………ごめんなさい……。


















 《無理するな…。ただでさえ、いろいろな方向にコネをきかせたせいで生活費削減の危機に直面しているんだろうに。

  ていうか、そういうことにこそ連盟の経費を使えばよかったのでは…》


















 あなたみたいな道筋の人を雇うのって、表向きのお金だけじゃすまないのよ…?


 我らが総帥サマは、必要性こそわかっているとはいえ、あまりそういう方向にお金を使うことにいい感情は持ってないから…。


 お金が陰謀につながるアイテムだって認識も非常に強くて、経費管理にはそんじょそこらの組織とは比べ物にならないほどうるさいお方なんだから。


 まぁ、あの人の過去を知っちゃうと、どうしても、ね…。

















 《あぁそうか、確かその総帥殿も、レアスキルホルダー乱獲事件の被害者であったな…。

  我ら精霊にとって、非常に忌々しい事件だ》



















 あら、おかしいわね。あなたにはそのことは話していないはずなのだけど。




















 《すまんな、こちらとしても依頼主やその周りの情報は掴んでおかないと、信憑性の問題があるんでな》



















 あぁ、そういうこt



















 《試しに、パレサ殿のスリーサイズをこの場で当ててみせようか?

  身長はピー、バストサイズはガー、トドメにヒップはポー、だろう?》



 ※プライバシー保護の為、具体的な数値については伏せさせていただきました。




































































 どうやってその情報を調べ上げた!?


















 《調べられたくないなら、自分のプロフィールデータにプロテクトをかけるなりすればよかっただろうに。

  いや、そもそも載せないとか書面記述のみにとどめて隠すとか、やり方はあっただろう?

  フリーデータをあさっていたら、割と簡単に出てきたぞ》

















 ……しまったぁぁぁ!?
















 《話が派手にそれてしまったが、確認したかったことは経費の落とし元についてだ。

  パレサ殿の口座から、ではなく、連盟の経費から、ということでよろしいか?

  ていうかそうしとくぞ?でないと、俺にも非がありそうだが、いたたまれないんだ。本当に》
















 いいわよ……もう……さっさと経理部に申請してしまいなさい……このすっとこどっこい……。

















 《自分のミスだぞ、言っておくが。そうやってくの字に崩れ落ちられたってどうしようもないからな》







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「バトル承認!バトル承認!」










 ふむ、次のお相手は、シグナムとヴィータの副隊長コンビか。パートナーのホシケンたちは別にチーム組んでるらしいね。


 ……じゃあ、僕が出るまでもないね。ていうか、出るとツマラン気もするしー。















 「とゆーワケで、イテン、マキト、GO!」


 「ふふん、相手が二人だけってなら、私たち二人におあつらえ向きだよね!」


 「仲良くお手柄半分こっすね姐さん!」








 「ちっ、余裕こきやがって」


 「落ち着け、ただでさえ一度敗北しているマキトも一緒だ。下手に冷静さを欠けば、それだけで命取りになる」






















 「さぁさぁ、早くも2つめのキーコードを巡って争うことになったチーム・ストゥルムが、

  古代ベルカの魔法を使いこなすチーム・ヴァンゼンと激突です!」























 ちなみに、ここにいる実況さんは女の子。でもって精霊だね。見た感じ、火属性の魔力を持っているだけでなく、単独飛行もできそうね。


 響天声きょうてんせいヒビキっていうんだよね。ガイドブックによれば。


 赤い縁のメガネに青い瞳。頭には羽のアクセがついた赤と黒のヘッドフォン。


 首元には白いマフラー。それ以外は単純で、胸元が開いていて肩も背中も出した露出度高めな上着に、ヘソだしで白いホットパンツ。


 あとは白い手袋にブーツ。腰には赤い翼と鳥の尾羽。まぁアレです、鳥系な人ってワケですな。ステンスとはまた別口で。


 ちなみに、彼女の出身世界は管理局では第209管理外世界バンショウと呼ばれていた。これで元ネタに気づけたらすごいな。


 寧ろフルネーム検索かけた方がよほどわかりそうな気もするけど、伏せます。なんとなく。


 ガイドブックによると、自らの肉体を燃え上がらせてしまうという特殊能力もあるんだとか。本当に触れたらヤケドするねアレ。


 相方もいるらしいけど、そっちは監視特化型みたいだし、広域サーチに徹してるといったところかな?





















 「チーム・ストゥルム、バーサス、チーム・ヴァンゼン。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「こちらは障害物の少ない荒野フィールド。

  ここでも、新たなバトルが幕を開けます!実況は私、ミソギがお伝えします!」














 他のチームも次々とバトルを始めている。そろそろ我々もキーコード集めにかからねば。


 ……ということで動き出した矢先にジャッジマンを発見。同時に相手チームも発見し、ジャッジマンによってバトルを組まれた。


 見るからに一撃でタダで済みそうにないおっかない武器を持っているヤツがいるんだが…。


 まぁ、それぐらいでガスケットやアームバレットがビビるワケでもなさそうなので、私も気合を入れなおさなければ。









 ちなみに実況担当ミソギについては、実はミッド出身の若者らしい。


 ライトグリーンの髪と水色の瞳、頭にはクリーム色の丸い帽子。


 小柄で細身な体を包む水色のボディスーツに、胸部にはクリーム色の円盤型ユニット、両腕にはクリアイエローの膜のようなものが。


 六芒星のような形のサブフライトシステムを持っていて、それに乗ってこの場に現れている。


 資料によれば、普段はそれを活かした通達役や上空監視などを仕事としているようだ。


 円盤型ユニットには、高精度カメラとサウンドレコーダーの機能が内臓されているらしい。













 そして対戦相手なのだが…。














 「やぁやぁ、遠からん者は耳に聞け。近くば寄って目にも見よ!

  我こそはドバン家14代目当主、バラン・ドバンなり!」




 「その門下生、水嶺すいれいのシズクなり!」




 「同じく、飛星とびぼしのミナトなり!」



















 まず第一印象、時代劇の見すぎではないだろうな?あなた方。








 それはともかく、あのドバン家14代目当主とやらは、見るからにゴツい鎧戦士。というか、機獣の類か?


 丸みを帯びながらも威圧感を感じさせる頭部、両肩に張り出したモーターのようなユニット、重厚さを見せる屈強な各部。


 全体的にやや黄色がかった緑のカラーが特徴的で、赤と黒のアクセントがきいている。


 色合い的にはともかく、とにかく存在感が派手だ。ご丁寧に人間サイズでありながら、身長はゆうに3メートルはありそうな大男だ。


 そしてその体にも匹敵する巨大な鉄球が目を引く。アレをぶつけられると一発でご臨終になりそうで嫌だ。









 門下生の女の子の方、シズクといったか。


 深みのある緑の髪をポニーテールでまとめている。大きな白いリボンはオシャレの一環か。


 他は、服装については全体的にどことなく中華風な雰囲気が漂う。少し胸元を出して、あとは腕は肩まで露出。


 下半身は膝の少し下までの長さの黒いタイツ、腰の前後に短めのヒラヒラ…というか、垂れ布?そう言っておく。短いのは、タイツがあるからだな。


 あとは、左右ともに二の腕の中間と太ももの中間に黄色いリング状のアクセ、両手首に黒いリングがある。


 腰背部には頭の髪留めになっているものと同様の、白い大きなリボン。そして、バランほどではないにしろ強そうな鉄球。


 なお、この鉄球は彼女の体ほどもある錨状のものの柄尻に連結されている。








 もう一人の門下生、ミナトは男の子か。


 こちらは鮮やかな赤い髪。実にしっかりと手入れしているのか、こう、☆のそれぞれの角を折り込んだような、そんな髪型だ。


 瞳はこれまた鮮やかな黄色。門下生の中では年少組なのか、シズクよりも小柄でやや幼い感じも見受けられるが、その割には闘争心に満ちた目だ。


 服装は、半袖で膝まで覆うタイプのボディスーツか。色はピーコックブルー。その上には腰回りを巻く白い厚手の布に黒帯。


 黒帯というと、日本の道場では一定量以上の実力を持つ、いわば段持ちとかいう人が締めるものだったか。


 ドバン家にもそういう風習があるのかは知らないがな。あとは肘と膝に黒いプロテクターがある。こちらはそこまでで、よりシンプルだ。















 そして、さっきから他にも気になっていることが1つ。
















 我こそはぁ〜♪我こそはぁ〜♪バラン・ドバン!♪(バンッ!バンッ!バンッ!♪)


 我こそはぁ〜♪我こそはぁ〜♪バラン・ドバン!♪(バンッ!バンッ!バンッ!♪)



















 あのチームが出てきた時点からひっきりなしに流れているこのBGMはいったいなんですか。



















 「あれ、あんたら知らないんすか?ドバン家当主っていえば、結構有名なんすよ?

  ちなみにBGMのタイトルは『我こそはバラン・ドバン』っす」


 「しょうがないよ、ミッドチルダにはドバン家のフォローはないから」



















 ミナト、シズクの順。ふむ、ドバン家については後でリサーチしてみるのもいいだろう。


 本戦トーナメント進出となれば、彼らについての情報は仲間たちにとってもありがたいはず。


 もっとも、私たちはぶっつけ本番だが。




















 「取り敢えずシグナルランサー。僕たちもそろそろバトル準備した方がいいんじゃね?」


 「ジャッジマンのコールが始まっちゃうんだな」


 「それもそうだな」



















 まぁ、元より機動力には定評のあるガスケットやアームバレットもいる。


 そうそう簡単には遅れはとらないだろう。















 …………アイツらがまたバカをやらかさなければな。





















 「チーム・ハイウェイズ、バーサス、チーム・ドバン。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「ウィナー、チーム・ライトニング!」












 よし、まずはこれで1勝。弾幕が激しくて思いのほか手こずったけど、全員で突破できたね。


 ジンジャー、スケイルフェザーは?













 《全機、引き続き使用可能です》













 なら、次も大丈夫そうだね。


 エリオ、キャロ、そっちも大丈夫そう?













 「はい、ストラーダもそんなにダメージはないです」


 「ケリュケイオンもフリードも、まだまだ元気ですよ」















 よし、なら問題なさそう。
















 「第1のキーコードを送信する。フェイト選手、受け取りたまえ」


 《ジャッジマンからのキーコードを受信しました。ゴール地点の情報の一部です》


 「ありがとうございました」

















 キーコードはバルディッシュに。これであと2つ。



















 「ちなみに現在、私が管轄するフィールドの周囲には多くのチームが展開している。

  相手チームをここで待ち構えるもよし、次のエリアを目指して移動するもよし。好きにしたまえ」




















 なるほど、だからトラルーたちは既に違う場所にいるんだね。今はシグナムたちと戦闘中だっけ。


 エリオ、キャロ、二人は進むか待ち構えるか、どっちがいい?


















 「この際、他のエリアを見ておくという意味でも、移動してみてはどうでしょうか」


 「そうですね、デバイスのインターバルもあまり必要なさそうですし」


 「そっか、じゃあ移動しよう」


 『はい!』





















 とりあえず、ここから一番近い他のジャッジマンは……南か。


 誰と当たるかはわからないけど、本戦へ進むためにもこれは避けて通れない。頑張ろう。







































































 「……え、君たち、待たないのかい?おい?おーい?」


  ↑ジャッジマンの哀愁漂う声





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「はぁぁっ!」


 「なんの!カリーシュダイブ!」










 戦闘開始からまだ1分。イテンがお得意のトレントブレード二刀流でシグナムと切りあってる。


 とはいえ、ISカリーシュダイブのおかげで、直撃はないんだけど。対するシグナムもさりげなく優れている機動力でかわしてる。


 さて、一方でマキトはヴィータと、か。そういえばまだ彼の愛刀を見てないね。


 スターによれば『到底刀になりそうにないものが刀扱いされてる』とのことなんだけど。






 それと蛇足なんだけど、実は2戦目に入る前に、フィールドで"モーニングスター"とゆーアイテムを拾った。


 両手持ちなんだけど、全方位にトゲ付き鉄球を振り回せる武器なんですな。ええ、こんなん生身の人には当てられない。殺傷力ありすぎだろ。


 ていうか"ダンジョンフィールド"ってそういうことかい。どこぞの風来人なダンジョンゲームのシステム取り入れたのかよう。


 他にも、一口飲むだけで炎をはける"ドラゴン草"やら、踏んだ瞬間睡眠ガスが噴出してしまう"眠りガス"のワナとか。


 ていうかワナまで作るな。どんだけ目の細かい振るいにかけようとしてんのさアーツバトル連盟!バトルする以前にブレイクオーバーしないか!?


 特にここに来るまでに各10個以上見つかった"大型地雷""大落石"の2大ワナについては、いろいろとツッコみたいものがある。


 ……ということはまさか、今後予選の間は時々ゲーム画面の下に出てくる文章的な表記もあったりするのか?


 ……それはそれで面白そうだけど。















 「マキト、お前の愛刀ってヤツ、今度こそ見せるんだろうな?」


 「勿論だぜヴィータさん。さぁ、括目して見ろいっ!!」













 そういって、背中にかけてあったブツを右手で取り、巻かれていた布が外れていく。


 そして見えたのは……。













 「伝家の宝刀、かつおぶしだっ!!」




 『は?』












  マキトはかつおぶし+99を装備した。




















 …………はっ!予感してた通りな文章があったけど、そこはいい。


 さり気なく最高強化値の+99まで鍛え抜かれた名品レベルの代物であったことが分かったけど、ひとまずそこもいい。


 問題はむしろ、何故に愛刀がかつおぶしなのかってことだ。そういえば武装登録時に"袈津尾丸かつおまる"とかいってたけど、まさかホントのかつおぶしだったとは…。















 「え、なに、もう1回言って?」


 「なんだ、しょうがないな。

  伝家の宝刀、かつおぶしだっ!!」


 「ちょっ、ちょっ、かつおぶしって!

  伝家の宝刀がかつおぶしって、なんだよソレ!?料理人の家系とかそんなか!?腹いてぇっての!」













 一方、わざわざ聞き返してしまったヴィータは腹を抱えて大爆笑。まぁ、笑いたい気持ちはわかる。


 いくらなんでも発想が子供レベルじゃありませんかいマキトさんや。






 なぜにかつおぶしなんだァー!!






 でも笑わない。見た目で判断すると痛い目見るっていうか。とりあえず、笑っちゃいけないんだ。















 「きっ、貴っ様ぁ、かつおぶしを笑う者はかつおぶしに泣くぞ!?」


 「ぬがっ!?」







  マキトはかつおぶし+99でヴィータを殴った!

  痛恨の一撃が炸裂!

  急所に当たった!

  効果は抜群だ!

  ヴィータは力尽きた








 「ヴィータぁぁ!?」


 「かつおぶしを甘く見るからそうなるんだ、分かったか!」


 「恐るべし、かつおぶし……」


















 痛恨の一撃て。マジですか。このダンジョンフィールドの元ネタである風○のシ○ンじゃ、ミノ○ウロスかその上位種しか使わないレアな奥義じゃないか!


 ていうか会心の一撃じゃないんかい。いや、今回の場面だと寧ろ痛恨の方がしっくりくるんだろうけど。


 そして一撃の威力がパネェ。脳天に全長120cmはあろうかという巨大かつおぶしを叩きつけられ、哀れ鉄槌の騎士は一撃でブレイクオーバー。


 でも確かに、かつおぶしって質量ある上に重たいからなぁ。武器として転用できたら、まぁ人間クラスなら痛いわな。


 ましてや、どこぞの勇者特急さんさながらの大ジャンプからの唐竹割りを直撃させられたらなぁ。確実に頭蓋骨響くってソレ。


 真剣だったら今頃バッサリ真っ二つになってるレベルだから。


 装備しているご本人が言うとおり、確かにバカにしちゃイカンね、かつおぶし。いつも和風料理でごちそうさまです。


 イテンが珍しく戦慄してるのもわかるよ、ものすごく。














































 





















 《"タワー"の正位置……遂にかつおぶしで叩き潰されるまでに落ちぶれたかねェ、鉄槌の騎士……》


 《一撃で撃墜するほどの威力…。あまりにも堅くしすぎて食材には使えなくなったのか?》


 《取り敢えず、僕たちは僕たちで相手を見つけましょうよ。マキトさんに見とれてないで》





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「だーっ!!だからなんで主役の僕が目立てないっ!?」













 あのー、のっけから顔面超アップで迫ってくるのやめてくれないかな…?


 ていうか、近すぎる。あと数ミリ動いちゃったら男同士でキスしちゃいそうなくらい近すぎるから。


 そんでもって、発言がメタすぎるよ。














 《だから、再三再四マスターがふがいないからだと言っているじゃありませんか。

  第一、こっち(とたきま)では主役はトラルーさんであってマスターではありません。お分かりですか?》


 「ぐはっ!?」

















 アルトアイゼンからのマジレスで吹っ飛んだ。


 そう、いろんな人が来てるから忘れがちな人もいそうなので敢えて言わせていただくと、


 この「とたきま」の主役はあくまでトラルーです。誰が何と言おうとトラルーなんです。



















 「恭文、何ならこれからのバトルで目立てばいい。

  主役の座は奪えずともインパクトは十分だろう。インパクトはな」


 「マスターコンボイは僕の敵か味方かどっちだ!?」


 《取り敢えず主役宣言諦めろよ、いろんな意味で》


 「ぐはぁっ!?」


















 今度はオメガからの言葉で吹っ飛んだ。ていうかさりげなく意味がひどくなってる。


 まぁ、最近は本家(とまコン)でも違う人に食われかけてるし。


 主役と言い張るならもう少し……いや、やめとこう。


 下手に刺激するとすぐ暴れる方向で突っ走るからなぁ…。今にして思うと、あの模擬戦でのヒョウエン無双はそのバチ?


 …………俺とマスターコンボイ、超濡れ衣!?


















 「おい、ジャッジカプセル……にしては黒くないか?」


 『え……』


















 マスターコンボイの言葉に、思わず確認。確かに黒い。






 …………黒いってことは……




















 「ヒャッハッハッハッハ、ヒャーッハッハッハッハ!

  このフィールドは、既にプレダコンズがジャックしたぁぁ!

  チーム・アルトバーサスチーム・ダスター!」




















 チーム・ダスター?


 その言葉と共に出てきたのって……え、えぇぇぇっ!?






















 「ほぉーほぉーほぉーほぉー!」


 「どうでゲス?驚いたでゲスか!?」


 「コイツらはオレたちで洗脳してやったマント!」


 「だからぁ、アンタたちが何言っても聞こえやしないわよぉ〜」



















 特徴的なオカマボイスの高笑いと共に黒い物体が飛来。


 ベース的な浮遊物体に乗って上空にいるのって……デビル三銃士!?


 洗脳って、まさか…。





















 「おっと、遂に出てきやがりました、デビル三銃士!

  連盟側で収集した情報により、貴様らがダークバトルの主催者の一部であることは把握済みだっ!!」


 『ひょえーっ!?』






















 突然割り込んできたのは、潰されたと思しきジャッジカプセルと組んでいたと思われる審判員。


 名前はユウサ。ルナ族のエンジニアかつメカニックらしい。パーソナルカラーは白。


 真っ白な髪はショートヘアー、かぶる帽子は六角形、かな。白のラインがある黒のベストに黄色の短パン。


 あとは両手首に長い布を巻いて、なびかせているぐらい。背中にあるのは彼の基本装備だろうか。


 パンフの解説によると、アレは「ガノッテ」というらしいけど。


 それと、ダークバトル主催者ってわかってて登録容認したのかアーツバトル連盟。何がしたいんだろう。





















 「そ、そーいえばここ数話、まるっきり姿が見えないと思ってたら!」


 「誰もが忘れ去っていたタイミングで洗脳するとは、やってくれる!」





















 あー、うん、とりあえず、恭文もマスターコンボイも、あの人たち元に戻ったら土下座くらいしようか。


 さり気なくヒドイ発言ぶちかましてるからね?


 開放した時に洗脳状態の間の記憶が飛ぶ仕様だったらいいのかもしれないけど…。


















 《いや、それ以前の問題で終わりでしょう》


 《だよなー、"アレス"ってほぼ全試合を生中継で放送するんだろ?だったら…》


 「あ、そういえば」




















 アルトアイゼンとオメガの言葉で思い出した。


 そういえばこれ生放送だから、下手するとダークバトルさえお茶の間に筒抜けなんだっけ。


 ていうか、下手しなくても審判員のユウサが健在な以上、ほぼ筒抜け確定。


 ということは、後で見返した時に動画証拠として……。


 やっぱり、あの二人は土下座確定みたいです。























 「ふっふっふ、驚けおそれおののけ!でゲス!

  何しろこの二人には、ワシが特別に手掛けたデバイスを装備させているでゲスからね!」


 「それ、名前はなんていうマント?」


 「そんじゃ、順番に紹介していくでゲスか。でもその前に。

  ダークジャッジマン!さっさと試合開始のコールをしちゃうでゲスよ!」

















 やっぱり、やるしかないみたいだ。


 しかし、困ったな…。コンボチェンジなしでも相手しきれるかどうか…。











 あの、アレックスとポラリスが相手じゃ…。
















 「ヒャァッハッハッハ、ダークバトル開幕だぁ!

  レディー・ファァァァイッ!!」

















 ダークジャッジマンのコールと共に、洗脳されたらしいアレックスとポラリスがそれぞれの武器を構えて襲い掛かってきた。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「チーム・フライヤー、バーサス、チーム・スターズ。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」













 チーム・スターズにとっての最初のキーコードをかけた戦いの相手は、


 Aクラスチームの中でも有数の空戦プロフェッショナルだというチーム・フライヤー。


 連盟のファイターたちの間では、ドッグファイトをさせたら彼らの右に出る者はそうそういないってくらい強いらしい。


 でも、別に問題ないよね。


 だって、たとえ飛べなくたって、駆け抜ける術と撃ち抜く術はバッチリ教え込んでいるから。


















 「先制いきます!クロスファイア――シュート!!」


















 まずはティアナが仕掛ける。大量に生成した魔力弾を不規則に発射、コントロールしてフライヤーのメンバーを攪乱。


 アーマーが戦闘機のような鋭角なフォルムの割に、けっこう小回り利く……って、ドッグファイトで強豪の仲間入りしてるんだから当たり前だよね。


 でも、単純によけるだけなら、どうせ……




















 「リボルバー、シュートッ!!」


















 スバルがウイングロードで回り込んで、至近距離からのリボルバーシュート。


 あ、まず一人は撃墜だね。うんうん、さすがナイスコンビ♪



















 「サード!?おのれ!」


 「ならば我らの神髄、見せるまで!」


 「言っておくが、俺もまだ健在だ!」





















 《直撃の筈ですが、やはり防御力にも念を入れておられるようです》


 「そうだね、でないとさすがにAクラスをキープするのって難しそうだもんね。

  スバル、ティアナ、油断しないで。今みたいに確実に攻撃を当てることを心掛けて!」


 『はい!』





















 さて、こちらのおおよその攻撃パターンは大なり小なり掴んでいる筈。


 相手がその飛行能力をどう活かしてくるか…。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「じゃ、1戦目はそっちでよろしく」


 「仕方ないでござるな」


 「チーム・GLX、バーサス、チーム・パルサーズ。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」

















 スバルたちも頑張ってるみたいだしな、こっちも張り切っていくか。


 いつも通りめんどくさがって戦闘参加メンバーから自分で外れた兄貴については置いといて、


 オレ、シャープエッジ、ジェットガンナーの3人でバトル開始。


 ジャッジマンのコールも絶好調だ。






 お相手のチーム・パルサーズは、どっかのスーパーでロボットな大戦ゲームでいえばなんと全員が全体攻撃とマップ兵器を持っているっていう、


 とにかく範囲攻撃の手段が豊富でしかも強烈なチーム。


 これでもかっ!!ってぐらいに満載された火器やら何やら……。見ただけで重たそうな感じさえするほどの重装備。


 連盟登録チームの中では新参みたいで、まだチームランクは初期のCクラス。


 ただ、そのあまりもの大火力と攻撃範囲の広さのおかげで近寄れるヤツが殆どいなくて、既に勝率9割以上を確定させているって噂だ。


 まぁ、勝率9割っつっても、正式な対戦数はまだ二桁超えたばかりだったけどな?


 ていうか、コイツら、確かなんかのゲームで見覚えがあったんだけど。なんだったけな?スバルとかやってたよな。


















 《アレだよ、第○次αのディ○リウムじゃない?ほら、特にセンターの人なんて赤くてなんかトゲトゲしてるし》


 「ああ、いわれてみれば確かに!」


 「待て、そのディバリ○ムの画像データを見てみたが、似てはいるが同じではないぞ」


 「ジェットガンナー、それはいわゆるアレンジってヤツでござるよ。真に受けたらダメでござる」




















 ジェットガンナーも持ってたのか、そのデータ。そしてシャープエッジが知ってるのは意外だ。


 エリオやキャロはあのゲームをやってなさそうな気がするんだけど。





















 「姫はともかく、エリオ殿はスバル殿などと一緒にたまにやっていたでござるからな」


 《そのキャロがエリオにベッタリだってことを考えると……》


 「付き添いでそのプレイ映像を見て、知っている可能性は十分に考えられる」


 「あー、そういえばそうだな」























 キャロってエリオの嫁候補……つーかもう正式カップルだしなぁ。


 主に彼女側が積極的にアプローチするもんだから、もうベッタリなんだよな。お馴染みな光景すぎて忘れてた。






















 「ふふふふふ、よくぞ見破ったな!」


 「オレたちの装備は、そのディバ○ウムを参考にグラップル・ファクトリーに依頼して開発してもらったのだ!」


 「厳密には量産型だからオリジナルみたいな合体機能まではないけどにょー」


 『しーっ!!余計なこというな!!』






















 装備の形状は同じだが、差別化のためか色が塗り分けられてる。


 発言者から順にレッド、ブルー、イエロー。なんだこの戦隊チックな配色は。


 あと、イエローのヤツについてはボケが混じってると見た。弱点露呈させてどーするよ。ていうかそこまで意識したのか。


 そして敢えて量産型の方を開発ベースにしたって、なんのコダワリがあってそうなったんだ?























 「オリジナルを意識しちゃうと、合体相手を作ろうとしてコストがかかりすぎたからだにょー」


 『だから言うなってばよー!!』






















 …………割と世知辛い理由だった。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「さぁーて、先輩たちに遅れないためにも、ドーン!といくッスかね!」


 「スピアは大丈夫?デバイスの方、まだ試作品だって…」


 「心配ご無用でさぁ。試作品とはいえ、安定度はヒルメさんのお墨付きですからねぇ」













 張り切る私の隣で、みなみちゃんはスピアの心配。


 えーっと、確か"シャマシュ"っていったッスか?昨日の模擬戦では結局読者のみなさんに披露できないまま終わっちゃったッスけど。
















 「あー、こいつぁ…」



















 「どあぁぁぁぁ!?」






















 って、いきなりジャッジマン退場ッスか!?世知辛いッスね!?























 「……見たことないけど…ロボット…?」




















 みなみちゃんが言うとおり、ジャッジマンが潰された後に現れたのは、ロボット。


 指みたいに5本の爪を備えた円筒状の腕、犬とかみたいな形状をした無機質な足、全体的に不気味な黒とグレーのカラーリング。


 大きさは、私たちと同じぐらい。


 赤い目が不気味ッスね。バイザーの方か、その上にある点々か、どっちがホントの目かわかんないスけど。










 それが、合わせて12体も。プレダコンズの仕業にしちゃあ、手抜きなような寧ろ厄介なような…。


















 「ヒャッハッハッハッ!

  チーム・IBTバーサスチーム・グラップル!レディー・ファァァィ!!」



















 えーっ!?




















 「ちょっと!?明らかに人数おかしいじゃないッスか!?」


 「ダークバトルに、そんな制約は、なぁーしっ!!」


 「くっ…」





















 私の抗議に、あの黒いジャッジマンは聞く耳持たず。


 だーっ!!なんで初戦がダークバトルなんスかね!?


 嫌われてるッスか!?運命か何かに嫌われてるッスか!?






















 「御嬢さんがたの場合、まずプレダコンズのユニゾンデバイスどもに嫌われるんじゃないすかね?

  だって、初陣をフルボッコで飾られた相手ですし」


 『あ』





















 スピアに言われて、なんとなくわかった。


 アイツら……























 「自分たちが直接かかれない腹いせにこんなことさせてるッスか!?」










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 「……かかったみたいですね」


 「なんだ、お前らが別途手配してたインビットどもか」


 「はい、数は12体。メンバー構成的に、最低でも4対1の構図ですから、ダメージは避けられないでしょうね」


 「やっぱダークバトルって型破りじゃないとなっ」















 ステュムパロスの話から、僕がステュムパロスをたぶらかして手配させたチームがアイツらにかかったっぽい。


 あのチームは、自立稼働型の純戦闘用パワードデバイス"インビット"だけで組まれたもの。


 人の制御がいらない上に僕らの指示ひとつで後は勝手に判断するから、すっごくラクチンなんだよねー♪


 さすがに勝てはしないだろうけど、ヘロヘロになってるところを奇襲かけて、いつかのお返しさ!


















 「あーあ、ガキだな。んなもん、さっさと突撃かけてひねりつぶせばいいだろうが」


 「さすがに力任せの勢い任せはダメだろうけど、直接実力行使がイチバンだよなー、やっぱ」


 「うーん、やっぱり?」




















 とはいえ、ちょっと陰湿くさいっていうか、スッキリしにくいっていうか。


 やっぱり、こうガツーン!ってブッ飛ばす方が爽快なのかな?


 ご丁寧に二人とも、僕らみたいに突っ込んでナンボみたいな装備だし。























 「どう思う?ステュム?」


 「そのステュムっていうのは僕しかいませんよね?

  あと、それ以前の問題なんですけど……」























 うん、ステュムパロスって名前、ちょっと長ったらしいもん。だから縮めてステュム。わかりやすいし。


 それで、何?


























 「かくいうネメアさんとケリュネイアさんだって、

  スティアを相手に真正面から突撃かけて結果的に一蹴されているということを忘れてませんか?」































































































 間。








































































 「ほざいてんじゃねーぞ理系が」


 「これだからちょっと頭いいヤツは」


 「えーと…」


















 戦果的には同じことなんだろうけど、あの二人にとっては禁句に等しいっぽい。


 ケリュネイアとネメアにステュムがシメられた。そしてステュムが泣いた。


 そっかー、これが昨今話題のイジメ問題ってヤツかー。


 ……そーいえば、ステュムって前々からいじめられっこみたいな感じあったなー。


 よくアムリタとかファーヴニルとかにけしかけられて、その度に最終的に泣かされてる気がする。



















 「……もういやだ…」

















 ……トラウマ…?







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ……イジメでありますか……おろかなりプレダコンズ。


 まぁ、プレダコンズみたいな組織がお世辞にもオツムのいい組織であるワケがないので、


 泣かされた緑髪の子には悪いでありますが、そこはスルーで。













 それよか、鎧王様はいったいいずこへ…?













 《大変な事態になっております!

  皆様、これはそこらのダークバトルとはワケが違います!》












 おや、何事でありますか?


 あの歯科医……もとい司会さんは大げさな実況がウリだから、時たまハズレが混ざってるでありますよ。


 まぁ、バトルはまだ組まれてないし、様子見くらい……。
















 《あの、あの伝説の飛王と鎧王が、あろうことかプレダコンズのチームに混ざっております!!》

















 あんですとーっ!?


 馬鹿な、あの誇り高き鎧王様ともあろうお方が!?飛王様ともども、なんたること!?

















 《……おっと、現地の審判員から続報が入ってまいりました。

  それによりますと…なんと、あの二人はマインドコントロールを受けている模様です!》

















 ぅおのれ、プレダコンズぅぅぅぅ!!


















 《なお、解除方法については、バトルで勝利する他ないようです。

  対戦相手となっているチーム・アルトの健闘次第ということになるでしょう!》


















 こうしてはいられないであります!


 待っていてください、鎧王様、飛王様!このW2部隊隊長のパスナ、時代を超えて今再びあなた様の元まで!























































































 パスナは大落石のワナを踏んだ!


 38ポイントのダメージを受けた。








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「プレダコンズめ、あちこちで騒ぎを起こしているようだな」


 「でも、連盟側はさっぱり動じてない雰囲気ですよ?

  パレサさんとか、終始冷静です」


 「まぁ、元からダークバトルに対して対抗姿勢を崩していないからな。

  動じないことこそ、プレダコンズに対する揺さぶりなのだろう」














 まぁ、ダークバトル自体、ある意味で連盟への揺さぶりやからな。


 それで取り乱したりした方が、よほどプレダコンズ側の思うつぼなんやろうね。


 話に聞く限りじゃ宇宙的にはまだ若い感じらしい(それでも人間年齢80歳やけどな)けど、毅然としとるんやね。


 外観は子供っぽかったけど、随分と芯の強い総帥殿と見たで。














 「寧ろ、そうでもないと総帥にはなれないだろう。

  アーツバトル連盟は、時空管理局で想定できるほどチャチな組織ではない。

  それこそ、仮に構成員全てが戦闘員になれるなら、組織力で見ても軍事規模で見てもネガショッカーすら上回るというからな。

  多様すぎるとさえ形容できるほどの規模を持つ連盟の総帥、すなわち統べる者である以上は必要だろう。

  そういう意味では、ネガショッカーをまとめ上げているネガタロスも、多様な種族を束ねる手腕は評価するべきだろう」


 「ひょえぇぇ、途方もない情報です…」


 「ていうか、あの審判団以外に何か組織あるんか」


 「警備部という、それこそ戦闘特化の組織もある。

  かなり武装化されているらしく、主殿が聞いた話ではプレダコンズもかなり苦汁をなめさせられているらしい」



















 ほんま、何を目指す組織なんやろうね、アーツバトル連盟って。


 絶対、秘密警察とかそんな感じの任務隠してるヤツも混ざっとるで。






















 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 『っ!?』



























 ……今、なんか物凄い勢いで走る人影が見えたような気g
























 パスナは落石のワナを踏んだ!


 18ポイントのダメージをうけた。


 パスナは地雷のワナを踏んだ!


 476ポイントのダメージをうけた。


 パスナは大落石のワナを踏んだ!


 38ポイントのダメージをうけた。


 パスナは大型地雷のワナを踏んだ!


 160ポイントのダメージをうけた。
























 「おぉのるぅれぇぇぇプレダコンズぅぅぅぅっ!!!!」
























 「凄まじいな……あのワナを立て続けに踏み抜いた運の悪さもすごいが、

  それ以上にあのラッシュを受けても微塵も足が止まらないという根性も相当なレベルだな」


 「ていうか、あの人に関わったら怖そうです」


 「まー、その怖い部分はプレダコンズにしか向いてないし、ええんとちゃう?」














 ていうか、途中で力尽きそうな気もするんやけどね。


 特に大型地雷のワナって、確か踏んだ時の残りHPの4分の3をもってかれる凶悪なワナやし。


 ちなみに地雷は残りHPの半分やったっけ。その時点で凶悪やけどな。


 さっきの、大落石のワナと順番が逆やったら終わっとるね…。






















 「実際、大型地雷から大落石のコンボをくらって一度、戦わずしてブレイクオーバーしたしな」


 「思い出させないでくれへん!?」


 「道中で拾った未識別の草が"復活の草"っていうアイテムで助かったです…」



















 一応、回復アイテムもあるんは不幸中の幸いやったね…。あのコンボは二度とくらいたくないわ……。


 今リインが言った復活の草は、ライフがゼロになった時、一度だけライフ満タンの状態で復活できるっちゅースグレモノや。


 効果発動後、なんの意味もない雑草になってまうけどね。


 ただし、殆どが未識別っていうのが問題やけど。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 うーん、ゆーちゃんから忠告もあって、黒いジャッジマンについては警戒してるんだけど…。


 それだと、一向にバトルできないんだよねー。


 せめて無事なところを探すのが賢明なんだろうけど。















 「あのジャッジカプセルへ向かいましょう。無事なようですし」


 「うー、緊張しっぱなしだよぅ…」


 「今更後に引けないでしょ、いくわよ」


















 まぁ、あんまりデカすぎる相手にはトランステクター出してもらえばいいし。


 まさかあのディビジョンフリートを直接この目で見れるとは思わなかったねー。


 しかも私たちのトランステクター、全部格納しても全然広かったしねあの格納庫!


 ヒルメさんは大変スバラシイものをお持ちでいらっしゃる♪






 とまぁ、それはさておき、みゆきさんが見つけてくれたジャッジカプセルめがけていざしゅっぱーつ。



















 「……そういえばさ」


 「なんだいかがみん?」


 「いや……いつの間にかエントリーされてたらしいんだけど、日下部たちも出てるらしいのよ」


 「およ」


 「ただ……」


 「ただ?」
















 思い出したように出てきたかがみんの言葉に興味津々、


 あの人たちがねぇ…。


 で、結局どしたの?
















 「あの二人……後輩たちと違って、いつの間にデバイス調達したんだろうって」


 「あー」















 そーいえばそうだね。


 ひよりんたちみたいにレルネに作ってもらったってワケでも……。


 …………ない、とは言い切れないんだよねー、あの子が相手の場合。


 だって、本当に一夜漬けレベルでデバイス作っちゃうワケだし。

















 《しかしレルネが相手の場合、報酬が必要なはず。

  さすがにあの二人がトラルーとレルネの関係を知っているとも思えませんが》


 「だよねー。少なくともレルネの居場所、ギガントボムのアジトにいるってことは知らないはずだし」


 「いや、そもそもレルネと面識があるかさえ怪しいっての」


 《少なくとも、我々が知る限りでは面識はないはずです》


















 ひよりんたちだって、レルネと直接会ったのはつい昨日だし。


 そんでもって日下部さんたちはあの模擬戦には参加してないし。


 妥当な線は、スタースクリームとか?








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「さーて、どうだかね」


 「ヒルメさん、何か言いました?」


 「いんや、何も」
















 ゆたかちゃん、世の中には、心の声とか地の文とか天の声とか、


 時に不可侵の存在であり、時に密接な存在である謎のテレパシー現象というものがあるんだ。


 ……と話したところで(彼女の性格的に)分かってもらえそうにないのは明白なので、黙っておく。


 いやー、自作デバイス第2号・第3号があんな急ごしらえでロールアウトするハメになるとは、


 まったく数奇な運命だ。知れる範囲で戦歴見てみたら、それこそトランステクターと数奇な出会いをしてるワケだし。















 「ところで、今みなみちゃんたちが戦ってるあのロボット、ヒルメさんはご存じないんですか?」


 「随分と型は変わってるけど、アレはインビット。

  管理局ではW型とかいわれてるあのガジェット、アレと同時期に設計と開発はされていたらしい。

  簡単に言えば、AIで勝手に行動する、自立式戦闘ロボットといったところか」















 根本的な型が違うとはいえ、あの形状はフェンリルのような系統の機体に近い。


 レルネが言うには、オーディーンたち独自のデバイスフレームは、インビットと同時期に設計されていたデータを基にしているらしい。


 つまり、逆に考えれば古代ベルカ時代には、オーディーンみたいな技術で生まれた自立式メカがもっとひしめいていたことになる。


 もっとも、レルネ作のものについては他者とユニゾン、合体できるパワードデバイスの自立稼働型っていう設計概念があって、


 根本的な構造については完全に別物になっているらしいけどな。


 逆に流用されているのは、主に外骨格の形状や、実は互換性があるアーマーの企画といったところか。


 バランスが乱れる恐れがあるから、オーディーンたちはなるべく自分たちのパーツで通しているらしいが、


 やろうと思えばパーツの交換もできる。


 たとえばパンドラとフェンリルの腕を交換する、って具合にだ。


 オーディーンも可能なんだが、違うパーツを使ってるとある技が使えなくなるから、実力を発揮しきるには無改造でなきゃいけないんだそうだ。










 インビットに話を戻すが、同じAI搭載型とはいってもオーディーンたちとはワケが違う。


 元々小柄な体格を活かして、狭い場所などの警備に使われる目的で設計されている。


 ……というのは建前で、時には大規模な軍事攻撃の際に遠隔コントロールで大量派兵、武力制圧する際にも使われる。


 警備任務にしたって、発見した侵入者は見境なく攻撃する。だから、待ち伏せ型の襲撃者、とでもいうのかな。


 とにかく、AIに感情はプログラミングされてなくて、ただ目の前の敵を破壊することしか行動方針を持たないんだ。















 「じゃ、じゃあ、一歩間違えばみなみちゃんたちは…!」


 「最悪の可能性もないワケじゃないな。メイン武装である両腕のクローなんか、特に殺傷力高めだから」

















 あの両腕、5本の指のような爪も脅威だが、内臓されているビームガンで射撃もできる。


 そんでもって、当然ながらアイツらに非殺傷設定なんて概念はない。打ち所が悪ければ、本当に死んでしまう危険性もある。


 元々警備用なだけあって、暗い場所でも暗視センサーでバッチリだ。


 そして、装甲は極めて堅牢。オーディーンやフェンリル、ハカイオー絶斗はともかく、パンドラやナイトメアは苦労するかもな。


 特に攻撃力が低めな傾向にあるパンドラは、弱点を直接つぶすしかない。蒼拳乱撃を使うなら話は別だけど…。


 あと、ナイトメアについては、ハカイオー絶斗にも匹敵するパワーを遠心力とかで活かせればどうとでもなるかも。


 ご丁寧に基本装備のナイトメアズソウルがハンマー系だしな。

















 「弱点……関節部、とかですか?」


 「お、いいところ突くね。確かに関節部、特に腕の付け根を落としてしまえば武器はなくなるから無力化できる。

  ただし、弱点は他にもある」





















 生産性を高める為に、設計段階でほぼ唯一犠牲にしたもの。


 オーディーンたちにはあって、インビットにはないもの。


 感情を持つメカと、持たないメカ。


 それは……








 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 <ATTACK-FUNGTION GUNGNIR.>




 《貫けぇ、グングニル!!》















 「バトル、オールオーバー。バトル、オールオーバー。

  ウィナー、チーム・タイニー!」














 私とフェンリルでフォーメーションを乱して、崩れたところを各個撃破。


 作戦大当たりね。


 トドメはオーディーンお得意のグングニル。ドリル状の炎の渦が、見事に相手のど真ん中にクリティカルヒット。


 相変わらずの威力ね。当たった相手、確かまだ一撃もダメージ受けてなかった筈なんだけど。
















 《まー、数々のシミュレートプレイの結果、

  ジェノサイダーだの破壊神だの、散々な言われようだったからな》


 《そうだったの!?》


 《知らなかったのかよ…》

















 そうねぇ、そりゃあさすがに全部一撃ってワケじゃないとはいえ、ぶつけた相手みーんな爆散だものね。


 それこそ非殺傷設定かけられなかったら、対戦とかじゃ使えない禁じ手になるわよ絶対。


 もちろん、くらったら怪我どころじゃすまないから。私たちがデバイスの仲間で、ホントよかったわね。




















 「第1のキーコードを送信する」


 《……キーコード受信。これであと2つだ》


 《あと2勝か…。早いところ片付けたいところだな》




















 キーコードはオーディーンに。


 フェンリルのいうことはもっともなんだけど、もう既にダークバトルが発生してるエリアも多いみたい。


 私たちも、その内ダークバトルに巻き込まれるかもね。


 あと2勝……いくらインターバルはできるとはいっても、相手が得体のしれない戦力を持っている、となると…。


 ゴールできるまで、油断できないわね。






















 「現在、全体の3割ほどの同胞との連絡が途絶えている。

  音信不通となったジャッジカプセルの位置データは送っておくが、気をつけたまえ」


 《あ、ありがとうございます》























 位置データを確認…っと。


 でも、もう既に3割だなんて…。さすがにネガショッカーに加勢してるだけあって、規模も展開速度もかなりのものね。
























 《……こっからだと、北の方が効率よく回れそうだな》


 《移動距離はかさむけど……いくしかない》


 《ねぇ、それなら少し北東の方に迂回したらどうかしら。

  万が一ダークバトルに巻き込まれても、仲間のチームが遭遇したりするかも》


 《そういうことなら、東寄りに動いてみるか?ほら、この辺のジャッジカプセル、まだバトルになってない》



















 フェンリル、なかなか冴えてるわね。


 基本的に、ダークバトルが起きるのは既にバトルが発生しているエリアにダークジャッジマンが降ってくるパターン。


 それは、この"アレス"でも変わらないみたいだし、少しだけど東側に他の勢力のチームが偏ってる。


 これなら、ダークバトルに遭遇するリスクは結構減らせるかも。


 特に、まだ戦闘状態になってないジャッジカプセルなら、ダークバトルにされる可能性は少しは低くなるし。


















 《じゃあ、北東に進もう。そのまま2勝して、早いうちにゴールに辿り着くんだ》


 《えぇ》


 《おう》



















 さーて、まずは北東に通じる山脈地帯を超えなきゃね。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







 「今頃は、トラルーたちが2つ目のキーコードを手に入れてる頃か」


 「既にチーム・ヴァンゼンの負けは確定か」


 「いや、イテンやマキトは突破できても、あの二人じゃトラルーにまでは勝てないって」


 「身もふたもない気もするが、まぁそういうことにしてやろう。

  それより…くるぞ」
















 わかってるって。だからこうして……
















 「ぐふぉぁっ」

















 黒ずくめな敵さん一人をアッパーカットで沈めてるんじゃないか。


 ちなみに今俺たちチーム・グランツと戦ってるのは、なんと宇宙海賊のチーム。


 ただし世間的にはそんなに評判は悪くない、ていうか俗にいう義賊集団である"ビシディアン"からの出張だ。


 ていうかチーム名がそのまんまチーム・ビシディアンで通してるって、アーツバトル連盟もアイツらのことは知ってるだろうに。


 あ、知ってるから容認してるのか。決して根っからの悪者じゃないから。



















 「そういってもらえるのは、光栄と思うべきかな!」


 「光栄だと思うぜ、少なくともオレは!」


















 今オレに突っ込んできたのは、これでもかってくらい海賊っぷりが出てる風貌の黒いGUNDAM、


 名前はまんまダークハウンド。独特なGUNDAMフェイスを残しつつ海賊帽のような形状をしてる頭部、


 両肩にはマントのようにも見える薄くて幅広なバインダーと、固有装備のロケットアンカー"ワイヤーフック"。


 右手には銃剣ならぬ銃槍"ドッズランサー"、腰にはお約束のビームサーベルも隠されてるときた。


 額と胸部にドクロのレリーフがあるが、悪人っていうよりダークヒーローだよな。どっかの暴君と違って真っ当な。


 ちなみに人格は某AGE-2のパイロットなアイツ(海賊移籍後)を連想してもらえればOK。









 引き連れてる内、オレがアッパーカットでブッ飛ばしたのはジャックエッジ。


 もう一方、カナヤゴさんと交戦中なのはGサイフォス。


 外観詳細についてはどっちもフルネームで画像検索すりゃ出るだろうから略ッ!


 なお、ジャックエッジはよくいるオラオラオラオラァ!な雰囲気の男。多分殴り合いしたらムダムダムダムダァ!ってなりそうな感じだ。


 Gサイフォスの人格については、某AGEの外伝マンガに登場する主人公がベース。パイロットだしな。


 武装については、Gサイフォスは原作そのままだが、ジャックエッジはカスタマイズされてるのか多連装ミサイルランチャーを装備。


 左腕についていて、かまえた方向にまっすぐ飛ぶ仕組みのようだ。














 「さぁーさぁー!ダークハウンド率いるチーム・ビシディアンに対するは、

  なんとあの古代ベルカ戦争時代の強烈傭兵コンビ!チーム・グランツだぁ!」















 で、ここの実況担当は、外観どころか名前まで少女時代のままひっさげてきたアリーサときたもんだ。


 審判団員らしいけど、解説によると警備部隊も兼任してるらしい。まぁ、実況担当が直接出向ける方が効率はいいだろうし。


 外観説明……略させてくれ。尺がヤバイんだ。


 某AGEア○ム編時代の、少女のアリーサを連想してくれれば。わからなけりゃ画像検索してこいっ!

















 「説明が投げやりだぞ」


 「いや、だってこの人たちみんな原作まんまだしさ!ダークハウンドたちは人間サイズの機獣になってるけど!」

















 そう、まんま。見た目が変わらずに人間サイズに縮んだって感じだ。


 あまりにもサイズ以外に変更なさ過ぎて吹いたっての。


























































































 「スター……撃墜してでも、私とぉぉぉぉ!!」


 「ダメでおじゃるっ!今はまだバトル中ー!!ていうか仲間割れ自体ダメでおじゃるよぉぉー!!」


 「こらぁー!チーム・フォレス!バトル中の乱入はルール違反で失格にするぞー!?」






 「少し、ハッパをかけすぎたでござるか…?」





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「すいませんねぇ姉御ぉ、ちょっとばかし転送回線が混み合っちゃいましてねぇ」


 「あんたにしては珍しいミスね。ま、合流早々に1勝もぎ取ってくれたから、それで良しにしてあげるわ」


 「その懐の広さ、さすがは姉御!」













 今こうして私と話してるのは、元々合流予定だったのが少し遅れてたらしいスクナ。


 薄い小麦色の短いツインテールの髪、その上にこじゃれた鳥帽子。服はそれこそ江戸時代の朝廷の連中が着てそうなヤツね。


 基本カラーは白、腕よりも明らかに長い長袖で、下はエプロン付きの赤いミニスカ。


 私は主に猿子って呼んでるけど、世から与えられた二つ名は"太閤娘たいこうむすめ"なんていうたいそうなもの。


 ……と、ここまでは私たちが元々いた世界から持ち越した身なり。違うのは、主に武装。


 猿子の武器は、手でわしづかみできる程度のサイズの鉄球が両端についた鎖……"双流撃鉄そうりゅうげきてつトモエゲキ"


 さっきのバトルも、アレを使ってひっかけたり、敵の腕とかに巻きつけて跳ね回って翻弄して撃墜数2。


 残りの一人はリラが切り伏せて終了。



















 「チーム・スサノオ、第1のキーコードを送信する。デバイスリーダーを開きたまえ」


 「……キーコードの受信、確認しました」



















 デバイスリーダー?あぁ、武装登録時にセットでもらったヤツね。


 なんでも、武器にくっつければ選手の証明とかいろいろできるらしいわ。


 まぁ、その辺の管理はリラに任せてるけど。で、キーコードはあと2つだったかしら?















 ……仮にこのメンツにビコナも加わってれば、日本史で言うところの天下統一の三代将軍家揃い踏みだったのに。


 そのビコナは月影丸だけでなく、なんか変わり者な女の子とチームになってたわね。


 まぁ、バトルになったら遠慮ナシで叩き潰してあげるけど?




















 「さすがは姉御、自分の天下のためとあらば容赦も情けもあったもんじゃないっ」


 「……それ、褒めてるんですか…?」


 「いやいや、それだけ自分の目標に熱心な人だってことで」





















 そういうことなら悪くない響きね…。さすがは猿子。


 え、私?

















 "小悪魔王"っていえば、わかる人はわかっちゃうんじゃないかしら?






















 (第28話に続く)





















 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―







 ステンス「オレたちの出番がない」


 リティ「いや、他にツッコみどころありまくりだろ」


 ステンス「出番があったらツッコむ。出番がなけりゃツッコめない。それだけだ」


 リティ「……」


 ステンス「今回は"ダンジョンフィールド"について教えてやる」







 ステンス「ダンジョンフィールドは、アーツバトル連盟が"アレス"などの大規模な大会の為に開発したものだ。

      多数のジャッジカプセルからそれぞれでディバイディングフィールドのような戦闘用フィールドをつくりだし、

      元の土地の安全を空間湾曲によって確保したうえで廃都市や密林などの疑似フィールドを展開、

      それらを他のジャッジカプセルのフィールド同士リンクさせることで1つの巨大なダンジョンとして成立させる。

      参加者はそれぞれのフィールドを移動しながらバトルを繰り返し、

      特定の条件を満たしたチームにだけゴールへの道がわかるように仕組まれている。今回の場合はキーコード3つだな。

      既にダークジャッジマンが何か所もジャックしているようだが、フィールドはそのまま維持されているな。

      ヒルメの分析によれば、ジャックすると同時にシステムをハッキング、同じフィールドを展開しているようだ。

      あと、フィールドは1つ1つがかなり広い。これは統一規格らしいが、カプセルを中心に直径30キロらしい」









 リティ「直径30キロ…。どうりでジャッジマンを見つけるのが大変な筈だ」


 ステンス「もっとも、ジャッジマン本人の管轄はバラバラで、最大でも直径10キロになってるがな」


 リティ「えーっ!?」


 ステンス「遭遇戦だのワナだの、いろいろと戦略を練れるようにってハラだろうな」


 リティ「ではまた次回!」







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 <次回の「とたきま」は!>




 プロト《プロトです。"アレス"は開催早々に敵味方入り乱れての大乱戦!

     きっとお茶の間の人たちも手に汗握る戦いでしょう》




 ビコナ「あのー、誰かうちのノーザンを止めてください。どっかのおバカ忍者のせいですっかりヤンデレに…」


 月影丸「何を申しますか姫様。あのままうつむきっぱなしでいられるよりかは」


 ビコナ「今現在、乱入未遂で失格寸前のギリギリラインにいることのどこがマシでおじゃるか!?」





 プロト《まぁ、ノーザンさんについては当事者同士で解決してもらうことにして》




 ビコナ《なんか最近、私の扱いヒドくないでおじゃるか!?これはボイコットものでおじゃるよ!!》




 プロト《置いといて、次回はこの私が主役っ!しかも2話かけてっ!》











 第28話:封じられし箱 〜アレス戦線、陰アリ〜











 プロト《創主レルネさえ置き去りにして主役を張ります!》


 レルネ「主のことを忘れないで!!」





















































 あとがき






 遂に始まりました。第3クールがお祭りクールと名付けられそうな気がしないでもないメインイベント"アレス"がスタートです。


 次々と決まっていく対戦カード、戦闘中のメンツもいれば既に次のキーコードへ…ってメンツ、はたまた立ち往生中なメンツも。


 はたして六課組は何チーム勝ち残るのか?そして最近かませ犬フラグにつぶされがちなヴィータに明日はあるか!?(マテ)


 …って、既にブレイクオーバーしてるっちゅーねん(オイ)


 同一チームということで、次に苦労するのはニート侍で確定。3対1どころか2対1で倒されそうな気がしますが、どうなるかはお楽しみに。







 一方で、いきなり洗脳されて参戦となったアレックスとポラリス。


 次回の主題の片方なので、そこそこ描写は多くなります。ただし、実は彼らを巡る話には元ネタが。


 その元ネタのヒントは……デビルポセイドンの中の人がチョー(旧芸名:長島雄一)さんであること、それとジャッジマンの元ネタ、です。


 ご丁寧にダークバトルの中で戦闘っていう点もヒントですね…。わかる人にはわかっちゃうかも。







 で、もう片方の主題は次回予告にある通り、レルネの秘書であるプロト。


 パンドラと同一規格のAIってことで女性人格なプロトですが…マジで主のレルネさえ置き去りにして主役を張ります。







 関係ないところでメチャクチャ濃いキャラが登場してるけど気にしないッ!(ぇ)





 というワケで、次回もお楽しみに。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 ついに始まった“アレス”。
 まだまだ序盤なのにもりだくさん。瞬殺要員も含めて大所帯でやってるからなぁ。
 ともあれワクワクしながら楽しませていただきましょうか。主に一部メンバーの(notシリアスな意味での)暴走とかで(マテ

>デビジョンフリート

 のっけからこれかい(笑)。
 着実に勇者シリーズが侵食しつつあるなぁ……あ、『ブレイカー』がすでにオリジナル“勇者”シリーズだ(爆)。

>マテリアルズ

 ちゃっかり出演。本流では出したいのに出しそびれてるのに(苦笑)。
 そして“アレス”出場見送りの理由はジュンイチの気遣い。愛されてるなー(ニヤニヤ)……いろいろと影響受けてるっぽいけど。特にセイカ(汗)。

>ルナ族

 『古き時代より月に住むという』……ハッ!?
 まさか耳長族か!? 魔動力か!? おもしろマジカルか!? ドーマキサラムーンか!?(落ち着け

>角馬王将
>某LBXアニメにも出張してるでしょうに

 あー、そーいや劇場版で共演でしたっけ。予告編でガチ対決していてビックリしました。
 何あのレベルファイブの本気。あの本気をどうして『ガンダムAGE』に……(そーゆー問題ではナイ

>暴走したトラルーに対抗できるのは暴走した柾木のみ

 暴走停止と引き換えに周囲一帯が焦土と化した絵しか思い浮かばない(汗)。
 どっちも戦闘能力的な意味でチート全開だからなぁ……