レルネ「さぁ本日も参ります、レギュラーメンバーのドコナニのコーナーのお時間です」


 ?????《前回の主だった動きは以下のような感じになっております》






 1:恭文率いるチーム・アルトは、デビル三銃士に洗脳されたアレックス&ポラリスと戦闘継続中。


 2:レルネ率いるチーム・ディメンジャーは2つ目のキーコードを確保。

   間髪入れずプロトゼノンと遭遇し戦闘に入るが、ダークバトルとなり無効試合になる。


 3:スターとカナヤゴのチーム・グランツは、チーム・ビシディアンと戦闘継続中。

   ダークハウンド、ジャックエッジ、スターの3人でアタックファンクションの撃ち合いになる。


 4:トラルー率いるチーム・ストゥルムは、シグナムらチーム・ヴァンゼンを下して2つ目のキーコードを確保。

   主にジュンイチとの接触を避ける為、移動開始。


 5:ハカイオー絶斗らのチーム・番長連はチーム・オクタスと対決。

   オクタスのタコゾウの異常な弱さもあり、ハカイオー絶斗がこれを瞬殺する。


 6:クレア率いるチーム・ファクスは、改造シーサーペント3人組のチーム・サーペンツと対決。

   ハルピュイアが先手を打ち優位に立つ。


 7:ノーヴェ率いるチーム・フリゲートアルファはチーム・セイバーズと対決。

   ホクトが先制ダメージを受けるも、不利になるまでにはならず。


 8:チーム・ドバンはチーム・ハイウェイズとの戦闘を終えている。

   シズクの回想シーン真っ只中。


 9:小悪魔王ナムチ率いるチーム・スサノオはチーム・クアドラと対決。

   スクナのファインプレーもあり、戦況はスサノオ側有利。


 10:ルアク、ブライ、ステンスのチーム・イグドラズは2つ目のキーコードを確保し、移動開始。


















 ?????《こんなところですかね》


 レルネ「前回よりかはスッキリしてますねぇ…少しは短かった筈ですし」


 ?????《今回は私の主役エピソード後編です。それ以外にもいろいろあるのでお楽しみくださいませ》


 レルネ「名前が伏字になっているのは……今回で明らかになりますよ。

     では、第29話をどうぞ!」
































































 

「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






「とある旅人の気まぐれな日常」






第29話:解放されし箱 〜"白き災厄"、ここに〜












































































 プロトだけが持つ、他の機体には流用できなかったというある機能。


 創主レルネはもちろん、プロト本人も既に把握しているようだ。


 何があったというのだ…。















 「もう核心をついて発言してしまいましょうか。

  プロトのAIユニットは、パンドラたちみたいに通常のデバイスと同様の素材"だけで"構築されているワケではないのです。

  それは本来、運用に問題がなければ、以後のAIユニットにも採用しようかと考えていました」














 そう言いながら創主レルネはウィンドウを展開、データを表示していく。


 最初のうちは私も見覚えがあるものが殆どだったが、途中からが問題だった。


 おそらくプロトのAIユニットに関するデータだろうが……もし私の仮説が正しければ、とんでもないことだ。

















 「より高度に……というより、人に近い思考回路を形成したいと思い立ち、

  使える素材は何でも使いました。

  市場で流通しているような市販品をバラしたり、宇宙のジャンク屋から資材を提供してもらったり…。

  その中で、偶然発見できた"あるもの"を組み込んだところ、かつてなかった反応が得られたのです」














 実際に人に近い思考回路を構築しようとすれば、膨大な情報を処理できるシステムはもちろん、


 その情報をリアルタイムで収集し、蓄積できる巨大なデータバンクも構築する必要がある。


 更に肝心なのは、起動している限り休むことなく思考と演算処理を続ける、半永久的に機能する回路の安定化だ。


 構築はできても、作動不良があったり、他の回路などに悪影響が出てしまっては、元も子もないのだ。


 蒼凪恭文のアルトアイゼンがあそこまで饒舌なのは、長年の稼働経験によってAIユニットが自己学習を繰り返し、


 無意識のうちに自己進化を果たしていった結果であるという説もある。


 だが、結局のところ、必要なのは技術だけでなく、自己学習を繰り返す時間だ。


 即席で作れるほど、思考回路というものは単純なものではない。






















 「"あるもの"を組み込んだ途端、まだ初歩的な単語の羅列程度しかできなかった筈のAIは劇的に進化しました。

  今こうしているように、一般的な人と何ら変わらない思考と言語機能を獲得したのです。

  しかし、問題もありました。劇的な進化と引き換えに、そのAIはもはや機械の範疇を超えてしまったのです」



















 ……機械の範疇を超えた?




















 「機械では到底なしえない筈の、怨霊だの魔物だのといった魑魅魍魎の類の直接召喚と使役を可能にしてしまったのです。

  更には、コアがそれらを取り込み、有機物を無機物に変換しながら自己進化してしまうことさえも」





















 …………バカな…。


 いったい、何を組み込めばそんなことになるというのだ…。




















 《しかし、元が分かってしまえば至極当然の結果であるともいえます。

  なにしろ……》





















 プロトはそう言いながら体を緑色に発光させながら、こう告げた。













































































 《ユニクロン・プラネットフォースのカケラを移植してしまったのですからね》































































 その言葉と共に、プロトの胸から浮かび上がったのは……ミッドチルダのマーク。


 まさか、ユニクロン・プラネットフォースの内、ミッドチルダのものが使われたと…!?







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ……バトル外連続撃墜事件?









 「あぁ。なんでも、バトルしていない選手たちが、前触れなしにブレイクオーバーするって話が多発してるんだと」


 「ダメージを受けた痕跡はある上、3体チームの内の2体を仕留められた上でバトルを挑まれ、3対1で倒されるそうだ」












 ひょえー、おっかないなぁ。


 まるで、誰かに狩られているみたいじゃないか…。













 「そう、いわば"狩り"だ。

  3対1の状態になる相手にのみ攻撃を仕掛けているチームがあるんだが…」


 「チーム・スナイプ。その名の通り、3人全員が狙撃能力に優れた装備と、各々別々なCPユニットを持ってるんだ。

  状況的に、まず相手の認識圏外から狙撃して相手の数を減らして、孤立した上で攻撃を仕掛けてキーコードを集めているんだろーな」















 一応、連盟からの承認はあるんでしょ。


 通常バトルなら問題だけど、ダンジョンバトルって移動中も攻撃される可能性があるっていうし。


 それが現実になったってだけだろうね。


 でも、それだけに気をつけないと…。














 「まぁ、俺たちも残りのキーコードはあと1つ。

  ライバルを減らす意味でも、狙われる可能性は高いわな」













 フェイトたちも心配だね。


 そろそろ大詰めで、集められるチームはもう2つはキーコードを集めている筈だし…。








































































 初戦から洗脳された仲間と戦わされてる恭文たち以外。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「ほぉ〜ほぉ〜ほぉ〜!

  さっすが、ゲスちゃんの最新傑作ねぇん!」


 「オーズバッシュ必殺説を崩壊させたでマント!」


 「ドクちゃんもアクちゃんも、そんな褒めたってなにも出ないでゲスよん?」














 リティが反撃で繰り出したオーズバッシュは、何故か捻じ曲げられて回避された。


 原因はポラリス。武器をかざして、その目前で曲げられたって感じ。


 なお、ゲスちゃんはデビルポセイドン、ドクちゃんはデビルホーネット、アクちゃんはデビルブライスターのことらしい。


 彼らの本名に由来しているらしいけど、そもそもデビル〜って名前は本名じゃなかったんか。


 話が進まなくなるから今回はスルーするけど。
















 「んじゃ、親切なワシがご丁寧に解説してやるから、よぉーく聞くでゲス!

  ポラリスの武器は、変形させて連結刃としても使える打撃・斬撃武器であったベースに、

  特殊偏光装甲ゲシュマイディッヒパンツァーを搭載した、攻防両面で高い威力を発揮するパワータイプ。

  その名はベースから変わらず、"双頭大蛇そうとうおろち"でゲス!」
















 双頭大蛇……連結刃として展開した状態が2匹の蛇みたいに見えるからその名前か。


 元からかなり頑丈な素材で作られていたみたいだけど、それにゲシュマイディッヒパンツァーまで搭載とは厄介な。


 今思い出したけど、ゲシュマイディッヒパンツァーってアレだよ。名前を和訳すると禁断ってなるガンダムが装備してる盾。


 磁場に干渉してフィールドを作って、ビームを捻じ曲げちゃうんだ。















 「続いてアレックスに装備させたるは、取り回しの良い片手剣。

  展開させれば内部に隠し刃、表向きの刀身も分割した状態で使える上に大気中の魔力を吸収できるオマケつき!

  名前はベースが"炎帝えんていつるぎ"、現在は"炎帝翼剣えんていよくけん"でゲス!」















 炎帝翼剣……それって、ベースの時点でアレックスが使うことを前提にしてる気がするけど…。


 名前からして炎属性の魔力とか使うみたいだし。


 ていうか刀身展開して隠し刃って、なんかどっかで見たなソレ。


 あと、大気中の魔力を吸収できるって、存在自体がスターライトと同じシステムかアレは!

















 「あと、ポラリスはともかく、アレックスは防御力が低そうだったでゲスから、

  デバイス化のオマケで専用バリアジャケットも作ってみたでゲスよ」


 《デザインは誰だよ》


 「それはぁ、古代ベルカの資料をあさって見つけたのよぉ〜ん」


 「なんかベルカ戦争当時の正装がお前らも見たあの服で、戦闘時には今の感じな薄手の鎧を着てたみたいでゲスよ」
















 オメガからの質問の回答で、連中が古代ベルカに関する情報を得ていることが判明。


 マジか。


 とりあえず、面倒だからどうやって調べたとかそんなことは置いとく。


 でも、古代ベルカの情報を得たってなると厄介かも。今回みたいにデバイス自作できるようになったみたいだし。


 カートリッジシステムもあるのかな…。
















 「そいつは戦ってみてのお楽しみ。まだまだこれからでゲスよ!」


 「さぁ、アイツらをやっつけるでマント!」
















 デビルブライスターの言葉を合図に、アレックスとポラリスは再び武器を構えてしかけてきた。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 あー、しかし、とんでもないことだよな。










 歴史上ではとっくの昔に黄泉の国に旅立った筈の王様が二人、いきなり現世に甦ってるんだぜ?


 それだけでビックリ仰天だっつぅのに、デビル三銃士が二人を洗脳してるときたもんだ。


 黄泉の国にいる間に腕鈍ってたのか……とか考えたくなるんだが、今は忘れよう。


 問題は、どうやってこの問題に収拾つけるかってことだ。









 さっきデビルブライスターをブッ飛ばしたみたいに残り二人もブッ飛ばせばそれでいい……ってワケでもなさそうだしな。














 「ふぁああぁぁぁぅぅっ。もういいじゃん、チーム・ダスターの勝ちでぇ」













 ここのダークジャッジマンって、ダルそうだな。下手すると連盟のジャッジマンより個性あるんじゃねぇの?


 まぁ、プレダコンズびいきなところは変わらないだろうから、なんの期待もしないけどよ。


 のんきにアクビまでしちゃってまぁ。












 「……どわっ!?っととと……。ぉ?……ゲェッ!!」












 とか思ってたら、ダークジャッジマンが突然揺れた。足に何か引っかかったようだが…。


 待てよ。なんでジャッジカプセルに引っかかる部分なんかあるんだ?それに、なんか青くね?





























































































 「この私がいる限りっ、正義はっ、必ずぅ、勝ぁつ!」


 「なっ、なんだオマエ!ォア、ァア、ワワワワワ……!」






















 ……あー、マジ?







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ―チーム・ハイウェイズVSチーム・ドバンの回想……の続き―








 「ほんじゃ、こっちも始めるっすかね。

  シースタースパイク、ポジション・レフトニー!」










 ミナトの声に合わせてシースタースパイクが変形。


 ヒトデの5本のトゲの先端部が前を向いて、クローというかスパイクみたいな形状に。


 その状態でミナトの左ひざのプロテクターにドッキング。


 はたから見ると変かもしれないけど、これがミナトにとっては基本スタイル。


 とどのつまり――














 「とりゃーっ!!」


 「でぇぇぇぇっ!!」
















 スパイク付のトゲトゲニードロップが彼の得意技ってことですよ。


 実際、当たったら尋常じゃなく痛いの。ていうか、その、手合せの時にくらって……私、泣きました。


 痛すぎて。別に恨んでたりとかはしてないし、手合せでのことだから仕方ないんだけど、痛かったなぁ…。






 それにしても、ガスケットってホントすばしっこいね。



















 「まぁ、伊達にスピーディアで暴走族まがいなことをやっていたワケでもないからな。

  敵対していた頃から、機動六課のエースたち……隊長陣にとっても厄介な相手ではあるんだ」


















 シグナルランサーは、タフだね。結構思いっきり叩きつけたつもりだったんだけど…。
















 「あいにく、JS事件中に惨敗を喫したマグマトロンに比べれば、まだまだ手ぬるい。

  アレはハッキリ言って死んだかと思ったぞ」


 「マグマトロン…。確か、ジェイル・スカリエッティが開発したトランステクターの13号機であり、

  マスターマグマトロンと呼ばれる完成形のデータを集める試作機であったそうだな」


 「ほう、よくご存じだ。私も、マスターマグマトロンとは手合せしていないが、かなりヤバイ相手だったようだ」














 うーん、私、新聞読んだ方がいいのかな。マスターマグマトロンとか全然わからないんだけど。














 「名前は公表されていたワケではないからな。

  似たような機体のシルエットや目撃情報が数件取り上げられたくらいだろう」













 それにしても、とんでもない槍裁きだね。


 さっきから淡々と答えながら、私が繰り出してる鉄球、全部いなしてるじゃない。


 正直、だんだんこっちがつらくなってくるんだけど。師匠の目の前だから。












 「あいにくだが、これも勝負。こちらとしても、それなりの戦果を上げないと隊長に何をされるかわからないのでな。

  いきなり全滅するようなザマだけは見せられないのだ。

  ……というワケで、アームバレット!」


 「待ってましたぁ!アーム、バズーカァ!!」


 「えええぇぇぇぇぇぇっ!?」












 そーいえば、いつの間にかいなくなったと思ったら…。


 ドサクサに紛れて背後に回り込んでた!?














 「ぬぅ、見事な一撃!シグナルランサーとやらの槍裁きにすっかり気を取られておったわ!

  シズクはまだ健在か!?」


 「は、はいぃぃ…」















 とっさにアンカーズメイスの錨の方でガードしたけど……思ってたよりいったぁい…。


 爆風で思いっきり吹き飛ばされて、周りに障害物がなかったせいで私はゴロゴロと地面を転がり、やっと停止。


 幸いブレイクオーバーまではいかなかったけど、ライフが半分に…。


 やっぱし、イグニッション技を真っ向から受け止めるっていうのはしない方がいいね…。師匠じゃあるまいし。













 「……ふむ…」


 「……?」

















 って、シグナルランサーが何か考えてるみたいなんだけど、どしたの?


















 「あぁいや、髪型や服装が違うとはいえ、どうにもうちの協力者に似ているなぁと」


 「それって、誰なんだな?」


 「ポラリスっていう、トラルーからの人脈で合流してきた女子がいただろう。現在洗脳中だが」


 「あぁ!あのムチみたいな武器振り回してる緑の女かぁ」


 「あ、その人、私のご先祖様だよ」


 「そうか、ご先祖様かなるほど……って何!?」














 アームバレットに説明したシグナルランサーが私の言葉にすごい驚いた。


 気持ちはわかるよ?私だって、さすがに現世でまたその姿を見るなんて思ってなかったもん。中継映像の1つ見てビックリしたわ。




 ポラリスさんって、私の直接のご先祖様に当たる人なの。


 瞳の色も赤だし、髪の色だって似てるでしょ?















 「なるほど、言われてみれば確かに。となると、その怪力も遺伝か……恐ろしい


 「ねぇ、今なんか小声で付け足さなかった?」


 「いや、なんでもない」
















 なぁんか言われたような…。














 「シズクー!そっちいったっすよー!」


 「へっ?」


 「どいたどいたぁ!エグゾーストショット!!」


 「またぁっ!?」
















 なんか私、集中的に狙われてない!?


 さすがに今度は対応が間に合って、投げつけた錨でガスケットのビームが乱反射した。


 直撃は避けられたねー。あっぶなー。
















 「んもう、こっちだってさすがに反撃するからね!?」


 「その意気だシズク!1発見せつけてやれぃ!」


 「フォースチップ、イグニッション!!」















 もちろん、門下生として、一人のファイターとして、やられっぱなしじゃ終われない。


 バラン師匠からの後押しも得て、フォースチップを召喚。もちろん、アンカーズメイスの錨部分にあるスロットにイグニッション。

















 <ATTACK-FUNCTION GALAXIAN TEMPEST.>















 必殺技のアナウンスに続いて、アンカーズメイスの鉄球と錨を同時に振り回す。


 フォースチップのパワーが分配されて、両方にすごいパワーが集まってるのがわかる。


 それをとにかく思いっきり振り回して、相手3人まとめて吹き飛ばしてあげる!















 「今こそ、ひそかにガスケットと練習してたアレの出番なんだな!」


 「おう、やったれ!」


















 残念だけど、この技はトランスフォーマー相手だからって簡単に止められるワケじゃないよ!


 迂闊に触れて腕とかへこんだりしても知らないからね!


















 「アームバレット、11時方向から鉄球くるぞ!」


 「がってん!!おりゃあああああああ!!」


 「アームバレット選手、シズク選手の必殺技"ギャラクシアン・テンペスト"に真っ向から対抗!

  鉄球を真正面から受け止めたァ!!」





















 そんな、止められた!?




















 「おぉっと、これでその技は敗れた。遠心力をつける為とはいえ、振り回すだけの時間が長すぎたな」


 「今度はシグナルランサー選手が、地面に突き刺した槍を利用して錨側の鎖をひっかける!

  チーム・ハイウェイズ、見事な連係プレーです!!」




















 そ、そんなぁ!?



















 「なんか巷で『飛び要員』とか言われているガスケット選手とアームバレット選手の健闘もあり、

  チーム・ドバンが思わぬ苦戦を強いられております!これがスピーディアの暴走コンビの本領発揮なのでしょうか!」


 「取り敢えずその『飛び要員』っていうのヤメろーっ!!」


















 ミソギさんの実況にすかさずツッコむガスケット。アームバレットは…手がしびれたのか、それどころじゃないみたいだけど。


 えっと……あの二人って、ヤラレ役なの?私、なんだかんだで振り回されてるんですけど…。


















 「どあぁぁぁぁ!?」



















 って、アレ?





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「くらえっ!!」


 《Hound Shooter》


 「こっちもっ!」


 《Icicle Cannon》









 マスターコンボイのハウンドシューターに合わせて、僕もアイシクルキャノン。


 狙うは、より機動性の高いアレックス。少なくとも足止めにはなるハズ!















 「ゲシュマイディッヒ――」


 「させない!」


 <ATTACK-FUNCTION DAISHINKUZAN.>


 「――ッ!?」


 「再度ゲシュマイディッヒパンツァーを使うつもりだったポラリス選手だが、

  リティ選手が"大真空斬だいしんくうざん"で阻止!物理攻撃だから磁場による回避もできない!」














 ポラリスの援護防御はリティが阻止。


 ていうか、メダジャリバーでも使えるのかアタックファンクション。


 そこはともかく、おかげでハウンドシューターとアイシクルキャノンはアレックスへ一直線。


 回避はされたけど、大きく引き離せた。分散させてしまえば、あとはどうにでもなる!
















 「洗脳されたアレックスとポラリスを相手に、チーム・アルトが大奮戦!

  ここで数の差がモノを言い始めた!」


 「ちょっとちょっと、何やってんのよ!しっかりしなさいよ!」


 「気合が足りないでマント!かくなる上は…!」
















 ところでユウサさんや、あんたはずっと実況し続けるつもり?


 なんかデビルブライスターが今にも乗り出してきそうなんだけど?



















 「貴様らー!!乱入しようったってそうはいかないからな!!」


 <ATTACK-FUNCTION RISING PULSAR.>


 「一人だけ星になるでマント〜ッ!!」




















































 キランッ☆















































 「アクちゃんが星になっちゃったわよぉ〜!?」


 「えぇい、アレックス!ポラリス!早い内に片付けるでゲスよ!」
















 デビルブライスターがいきなり星にされた。


 見た目は弓…かな。両手でも片手でも構えられるように3か所に取っ手がある弓、アレが「ガノッテ」。


 いきなり必殺技ぶっ放したけど…いつの間にイグニッションを?















 「先制攻撃で鎮圧できるように、1回分のイグニッションは済ませてある。

  あとはトリガーを引けば炸裂するってワケだ。1回だけな」


 《つまりイグニッション自体はするのかよ》


 「デバイスとしては主流になりつつあるシステムだからな。審判団に限らず連盟のデバイスってみんなそうだぜ?」















 そうなのか…知らなかった。


 ていうか、ポラリスはともかく、アレックスがさっきから少し妙だ。


 なんか、タイミング図られてるような…。















 「思考に隙ありです!」


 「ってオイ!?」















 さっきからずっと不意打ち狙ってるってこと!?


 パワー勝負ではせいぜい相殺が精いっぱいだからってそうくる!?


 ポラリスに意識を集中させて、その隙に横槍入れたりとか考えてるの!?タチ悪いっ!


 模擬戦で小細工ばっかしてるジュンイチさんじゃあるまいし!
















 「仕方ない、こうなったらポラリスだけでもゴリ押しで!」





 《タカ!カンガルー!バッタ!》





 「おぉっと!ここでリティ選手がメダルチェンジだ!

  児童誌の付録DVDか何かにしか出なかったヤツを出してきた!

  格闘戦形態の1つ、"タカガルバ"だぁ!」


 「ちょっちょっ、カンガルーって何よカンガルーって!」


 「知ってる人どれだけいると思ってるでゲスか!?」

















 うん、正直僕もツッコみたかった。カンガルーなんてメダルあったっけ?


 なんか、腕に見事なボクシンググローブがくっついてるんですけど。


 いきなり実況に戻ったユウサは"タカガルバ"って言ってたけど…。亜種形態の1つ?
















 「ちょっと女の子相手には手荒だけど…ねっ!」


 「ラッシュラッシュ!自分の胸ぐらいありそうな大きなボクシンググローブでラッシュ!

  双頭大蛇でガードするポラリス選手だが、ラッシュの勢いを殺しきれない!」


 「恭文、アレックスの方は任せるぞ!オレもリティのラッシュに加わらせてもらう!」


 《よし、やっちまえボス!》















 なるほど、メダジャリバーとかの手持ち武器が使えなくなる代わりに、パンチ力を徹底的に上げる形態なんだ。


 それも、重量系コンボのアレとは違って、スピードも追及してる。


 そういえば、カンガルーって足技だけじゃなくてパンチも強烈な生き物だっけ。



 そこにマスターコンボイもオメガで追撃。


 リティのパンチに上手く割り込んでその刀身を双頭大蛇に叩きつける。


 これにはたまらず、ポラリスが徐々に押されていく。
















 「やってくれます…。そのメダルは僕の情報にもありませんでしたよ」


 「だろうね、僕だって初めて見たし」














 アレックスと切り結びながらも遠ざけることは忘れない。


 しっかし、なんでユウサはカンガルーメダルのことを知ってたんだろ。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 《さぁ、その華奢な体のパワーでこのボディにどんだけダメージ与えられるか、試してみろよ!》


 「言われなくってもね、そのつもりよ!」








 ハルたんやクレアとは違って、こっちは既に水中戦に突入。


 マナナーンは既にセットアップも済んでる。向こうもランチャー構えてやる気満々だけど。


 けど、水中での機動性には自信あるのよ?











 「それに、パワーだけに頼らなくてもね、十分なのよ!」











 ランチャーの弾幕をくぐりながら、関節部を狙う。


 だって、認めたくはないけどあの装甲にダメージを与えられそうなのってクレアだけだもの。


 まぁ、関節部を狙うこと自体はそう難しくなさそうだし、さっさと終わらせちゃおうかしらねー。













 《くらえぃ!》


 「そんなの…って、きゃあああ!?」













 今度は両肩の赤い点々模様から弾が。


 でも、ビームとかじゃなくて……ネット!?


 しかも物凄い広範囲で……からまっちゃったじゃないのよ!
















 《だぁーれがお前みたいなヤツとスピード勝負なんてするかよ!

  細身のヤツはそれだけ空力や水の抵抗も少ないからな、強度重視のオレらじゃ追いづらい。

  ならどうするか?そりゃあ、動けなくするに決まってるだろ!》













 「レヴィアタン選手、サーズ選手が放った仕込みネットに捕まった!

  身動きが制限された中、打開できるのか!?」














 しまった、これってお茶の間にも生放送!


 つまりこの羞恥プレイがお茶の間にも瞬く間に広まっていくってことじゃないのよ!


 あぁ、なんてことかしら!こんなの愛しのダーリンぐらいにしか見せられないのに!















 《……なんか大変そうだな、お前のダーリンって》













 今なんか言った?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 さぁて、タコゾウとかいうクソガキは一発でブッ壊れたし、あと二人か。


 派手にケンカ売ってきやがった割には、弱すぎるだろコイツ。














 《手ごたえがなさすぎるねェ。つまらないバトルだ》


 《今までの模擬戦に比べたら、異常なくらい楽勝ですよ》


 《なんだ、そっちも終わりか?》













 どうやらナイトメアやリュウビも気合入れたところに肩すかしくらったみてぇだな。


 こんなの、アタックファンクション使うまでもねぇな。さっさと片付けるか。


 もちろん……













 《てめぇら全員、バラバラに切り刻んでタコ料理にしてやるから覚悟しやがれっ!!》


 《それはさすがにマズくないですか!?》


 《別にいいだろ。どうせコイツらは選手に紛れ込んだイマジン。

  サリエルの情報だと、以前にも強盗だの窃盗だの繰り返した挙句、ネガショッカーの一味になってるヤツらなんだと》


 《てなワケだ。覚悟はできてんだろうな!?》













 ナイトメアの言うとおり、目の前にいるタコどもはイマジン。


 名前は特に決まってないそうだが、電王やゼロノスの敵であることだけは間違いない。


 なら、過去に飛ばれる前にブッ壊してやった方がいいだろうが。



















 俺が絶・破岩刃の刃をうならせてからタコどもが悲鳴を上げるまでに、大した時間はなかった。


















 《イマジン狩りだなんて、ご苦労様ね。

  一部例外を除き、イマジンは現在アーツバトル連盟も警戒対象にしているわ。

  USPも動いているくらいだし、時の電車以外にもそういう手があるのはいいことね。

  騒いでる大半はネガショッカーの一味だけど。まぁそんなワケで、キーコードは通常通りあげるわ。勝利扱いでね》


 「バトル、オールオーバー。バトル、オールオーバー。

  ウィナー、チーム・番長連」
















 パレサの通信と同時に、ジャッジマンが勝利コールしてキーコード送ってきやがった。


 まぁ、ミッドを中心に騒ぎ起こしてるみたいだしな…。


 こっちはキーコード手に入ったし、別に問題ねぇけどな。


















 《ネガショッカー、どこまで勢力広げてるんだろう…。場合によっては、僕たちも只事じゃないですよ?》


 《ま、なんとかなるだろ。六課はイマジン事件も追いかけてるんだぜ》


 《俺たちも、その六課に巻き込まれるかもしれないんだけどねぇ》
















 ヒロリスが首突っ込んでるんだから、巻き込まれたら巻き込まれたで付き合えばいいじゃねぇか。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「レディー、ファイッ!!」











 ジャッジマンのお馴染み試合開始コール。


 我々の2つ目のキーコードの相手は……私にとっては久しい感覚だ。


 単刀直入に言おう。どういうワケか、プテラノドンヤミーがオス2体メス1体のチームを作っていたのだ。


 現在、私が持つ3枚以外に紫のメダルは失われている。


 ヤミーは、コアメダルの力無くして生み出すことはかなわない。同じ系統のコアメダルの力が無ければ。


 もっとも、残党という可能性もなくはない。それに……。











 「私だけで問題ない。メダガブリュー!」










 地面に右腕を突っ込み、"紫の力"を流し込んで瞬時に取り出す。


 恐竜の頭と斧を組み合わせた形状をしている固有武装、メダガブリューだ。


 実戦は久しいな。












 「私らだって戦うで。見てるだけっちゅうんはカッコ悪いからな」


 「そうです!リインたちだって戦うですよ!」


 「やめておけ。スペックだけを見れば勝てる相手だが、連中の特殊能力に耐えられるかが問題だからな。

  同類の私も、さすがにミッドチルダやベルカのデバイスについては未検証故にわからん。

  主殿たち以上に酷いダメージを受ける可能性もある」











 紫のメダルには、他の系統(アラリアの系統については未検証)のメダルを麻痺させ、一時的に使用不能にする力がある。


 それはいわば眷属ともいえるヤミーにおいても変わらない。


 共通能力としてメダルを麻痺させる力がある為、主殿は当初私の力に頼りきりになってしまったことがある。


 後に私の力をコントロールするどころか掌握して、克服してしまったがな。












 「そんなん、やってみなけりゃわからないモンやで。

  リイン!」


 「いくです、フリジットダガー!」













 氷の刃と化した魔力弾か。大量生成とコントロールができるようだが、ダガー系統の技はベルカでは割と見かけたな。


 もっとも、ミッドでいうとシューターに置換されてしまうワケだが。












 『欲望は、我らの前では無意味!!』













 かき消された。あの衝撃波だ。実は、紫のメダルが他の系統のメダルを麻痺させてしまうことにも、カラクリはある。


 紫のメダルは"無"を司る。そしてその本質は、欲望を消し去ることにある。


 つまり、厳密にいえば、他の系統のメダルは麻痺するのではなく、力を消されてしまい使用不能になるということだ。


 世界に無限に等しく満ちる欲望を少しずつ吸収することで復活しているようだがな。






 今回、全く別系統である筈のフリジットダガーにも効果が適用されてしまった理由は、ある意味で明快だ。


 その技に使われる魔力に宿る感情は一種の欲望でもある。守りたいと思うのであれ、倒したい、壊したいと思うのであれ。


 何であれ、感情の1つ1つもまた欲望だ。生命体は常に、何かしらの欲望に従うことで生きているのだから。


 そして、紫のメダルの欲望消去能力に「魔力=欲望」と認識されてしまったのならば、問答無用で消されてしまう。


 元々コアメダルも、錬金術で生み出されたもの。形式などは違えど、確かに魔力を宿している。欲望で無限増幅する形ではあるが。


 その増幅された魔力を戦闘力に変換するのが、我らの共通装備であるオースキャナーであるワケだ。







 話が少し逸れたが、とどのつまりミッドやベルカの魔法もまた"消すべき欲望"と認識されてしまう。


 だから、紫のメダルの力を持つヤミーには、殆どの技が通じないことになる。


 スターライトブレイカーのような超広域攻撃なら話は別だがな。


 となると、精霊力についても少々疑問になってくるな。我ながら反則的な特殊効果だな…。














 「ウチらの魔力攻撃もカウントされるん!?じゃあどないせぇっちゅうんや!?」


 「諦めて下がっていろ――そういうことだ」












 というワケで、結局私の独壇場と化すことになった。


 いくら反則的な特殊能力を持つとはいえ、同類相手には効果が無いことは連中も知っている。同類だからな。


 実際、最初に連中を倒した時も、同類が相手故にある意味で最大の特殊能力が封じられたような状態だった。


 あとは単純にスペック差になってしまう。そうなれば"オーズ"が不覚を取るような相手ではない。













 「この力……我らの同類」


 「残っていたのか……同類よ」


 「同類にして……忌むべき敵!」














 主殿の体を初めて借りた時もそうだったな。


 我らは同じ錬金術の元に生まれた存在だった筈だが、持ち主の意思の違い1つで簡単に殺し合う関係になる。


 もっとも、そもそも"オーズ"は欲望の権化どもを時に従え、時に滅ぼす為に存在する王なのだがな。















 「まったく奇遇だな……私もお前たちを敵だと認識しているところだ」




 <プテラ!トリケラ!ティラノ!プットッティラ〜ノザウル〜ス!!>















 メダガブリューを左手に持ち替え、素早くオースキャナーをベルトにセタッチ。


 両腕の籠手と両足のブーツが変貌、それぞれトリケラトプスの頭部とティラノサウルスの足を模した形状になる。


 籠手には1本ずつ、鋭いトゲ「ワイルドスティンガー」が備えられている。


 更に腰から下にかけて、たくましい尻尾「テイルディバイダー」が出現。


 頭部の両側面には、プテラノドンの翼を模したパーツ「エクスターナルフィン」が装着される。


 そして胸部の円盤プレートは「オーラングサークル」に変化し、上からプテラ、トリケラ、ティラノを模したマークが描かれ、厚みが増す。


 私が単独でコンボを使うと、このような武装形態になる。これは主殿を除く他の仲間たちも同様だ。


 主殿が私のメダルと使うとまた違う姿になるのだが……それはまた機会があれば教えよう。
















 「私が言えた義理でもないが……こんな辺境の世界までご苦労なことだ」














 エクスターナルフィンを展開、翼のように羽ばたかせて空を舞う。


 両腕を羽ばたかせて、一足先に空を舞っているヤミーどもを叩き落とす為だ。


 速度でもヤミーに劣ることはない。














 「貴様らも、同族どもが辿ったのと同じ末路を辿らせてやろう…!」














 テイルディバイダーに"力"を流し込み、ひねりを加えながら1体ずつ的確に叩きつける。


 天井からバウンドするボールの如く勢いよく落下していくのを尻目にもう1体、更に残り1体も同様に叩き落とす。


 このパワーもヤミーにはない。コアメダル3枚を共鳴させる"コンボ"だからこそ発揮できる。















 「貴様らに見せ場はない。一気に終わらせてもらう」


 《スキャニングチャージ!》


 <ATTACK-FUNCTION BLASTING FREEZER.>














 着地と同時にオースキャナーをベルトにセタッチ。


 メダルが飛び出て戻るエフェクトと共に流れるアナウンスの直後、両腕の籠手からワイルドスティンガーを伸ばす。


 オス1体に突き刺して動きを封じ、エクスターナルフィンから巻き起こす局所的な吹雪で氷結。


 氷結の直前にワイルドスティンガーを戻し、あとはテイルディバイダーの一撃でそのまま粉砕する。


 これが私の必殺技の1つ、名は"ブラスティングフリーザ"













 「こちらの世界で倒してもセルメダルは出るか…。なら供給も可能か」


 《ゴックン!プットッティラ〜ノヒッサ〜ツ!!》


 <ATTACK-FUNCTION GROUND OF LEIGH.>










 メダガブリューに先ほどのオスから出たセルメダル1枚を"食わせ"、今度は"グランド・オブ・レイジ"を発動。


 手近にいたメスめがけて突進、そのままセルメダルのパワーを増幅させて刀身にまとわせたメダガブリューの刃を力任せに叩きつける。


 セルメダル1枚でも、メダガブリューの圧縮増幅機能をもってすれば、ヤミーを一撃で爆散させる威力になる。


 周囲の地面までえぐってしまうほどにな。














 「貴様で最後だ」


 《ゴックン!プットッティラ〜ノヒッサ〜ツ!!》


 <ATTACK-FUNCTION STRAIN DUHM.>














 先のメスから得られたメダルを"食わせ"、今度は柄を90度曲げて刀身にもなる口部分を閉じ、


 斧の「アックスモード」から両手銃の「バズーカモード」に移行。


 変形完了と同時に必殺技のアナウンス、並行して銃口となった刀身下部のポッドにセルメダルのパワーが圧縮充填されていく。


 当然、狙いは残ったオス1体。引き金を引き、放たれた紫の奔流はオスを跡形もなく吹き飛ばした。


 バズーカモード時の必殺技、"ストレインドゥーム"












 「バトル、オールオーバー。バトル、オールオーバー。

  ウィナー、チーム・シュベルト」











 特にダークバトルになることもなく、2つ目のキーコードは無事確保。


 まさか同類と鉢合わせるとは思ってもいなかったが、この分なら問題あるまい。


 ネガタロスの差し金だろうがな…。














 「レクセの同類、厄介どころの話とちゃうね。

  マスターギガトロンの"支配者の領域ドミニオン・テリトリー"のトラウマ再びって感じや」


 「紫のメダルって、チートくさいです」


 「まぁ、他のメダルを無力化するどころか、コアメダル全てを破壊することも可能だからな」














 そう、紫のコアメダルには、同系統も含め全てのコアメダルに対して絶大な攻撃力を持つ。


 本気で一撃を加えれば、宿るコアメダルを直接破壊することも可能なのだ。


 コアメダルの力で不死にも近い存在である筈のグリードとて、この破壊能力の前では正真正銘の死に怯えることになった。


 欲望を消し去る性質といい、他の系統のメダルに対するセーフティの意味合いもあったのかどうかは、わからないが。














 もっとも、今となっては大した問題でもあるまい。現存するコアは、アラリア以外は全て持ち主が所持している分しかないからな。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 戦闘開始からだいぶ経つようなそうでもないような。


 とにかく、いい加減状況を好転させたいワケですよ。


 けどね、ポラリスはタフだしアレックスは飛行能力をうまーく利用して逃げ回るしで、ダメージを与えづらい。


 特にアレックスだよ。くっそう、ただでさえ恨めしく思えることさえある翼を4枚も持ってからに!


 おのれはガチで鳥人間かっての!












 「そりゃあ仕方ないでゲスよ。アレックスは元々鳥人間的な種族の生まれでゲスからねぇ」


 「あぁそうですか!」











 上空から高みの見物を決め込んでるデビルポセイドンに殺気混じりで返す。


 まぁ、そんなことしたからって事態が好転するワケないんだけどさ。














 「マスターコンボイ、少しの間お願い!」


 「おう!」


 《スキャニングチャージ!》


 <ATTACK-FUNCTION CORE CHARGE PUNCH.>













 ポラリスへのラッシュを一時中断、僕と鍔迫り合いし始めたアレックスに狙いを変えたリティがスキャニングチャージ。


 大ジャンプしながらこっちに飛び込ん……で……!?












 「セイヤーッ!!」


 <ATTACK-FUNCTION FLAME STORM.>


 「鉄騎一閃!!」













 いきなり僕を蹴り飛ばしてリティに向き直って、またアタックファンクションを放つアレックス。


 その背中目がけて僕も鉄騎一閃を放つ。
































































 「このバトルは、無効である!!」






















































 ……って、あれ?なんか今、聞き覚えのある声が。


 思わず僕もリティも、そして炎帝翼剣に炎をまとわせたアレックスまで急停止。


 ただし、それぞれが勢い余って……暴発。3人とも爆発で吹っ飛ばされる。


 まぁ、みんなブレイクオーバーにはなってないけど…。















 「ちょっとちょっと、いきなりなんなのよ〜…」


 「今、聞き覚えのある声が聞こえたでゲスよ…?」
















 デビルホーネットやデビルポセイドンも同様に驚いたらしい。


 ガッチリ鍔迫り合い中だったマスターコンボイやポラリスも、同じように動きを止めてしまう。
















 「現在行われているっ、このバトルはぁ!正規のルールを逸脱した不法なものでありぃ!

  私が健在である限りぃ!承認されはしないぃぃぃぃい!!」


 「いだいっいだいっ、いだいだいだいだいっ」

















 誰かと思ったら、ジャッジマンだった。そーいや、潰されてたっけね。


 しかし、ジャッジカプセル潰された後で這い上がってきたのか彼は。凄い根性だ。


 そして、知らん内にダークジャッジマンを締め上げていたらしい。


 ダークジャッジマンは今も締められて悲鳴あげてるけど。
















 「それがどうしたでゲスか!連盟のルールなんてクソくらえでゲス!ベ〜ッ!」















 デビルポセイドンがあっかんべーまでして反発。まぁ、そんなでもなきゃダークバトルなんでするワケないし。














 「フンッ!」


 「ァアー!」


 「アーツバトル連盟はっ!」


 「イァー!」


 「アレックス選手及びポラリス選手の行ったっ!」


 「ホァー!」


 「登録更新申請によりっ!」


 「ヒィァーッ!」













 とうとうダークジャッジマンの腰をストンピング(?)しながら話し始めたよ、あのジャッジマン。


 潰されたジャッジカプセルから這い上がってきたことといい、随分とタフじゃないですか。


 そして踏みつけられる度に、ダークジャッジマンが仰向けのエビの如く体を跳ね上げてる。


 ていうか4回目の悲鳴の時に「シェー!」のポーズしてなかった?
















 「デバイスリーダーをデバイスにセットする……」













 そういえば、戦闘開始直前、デバイスリーダーをセットしてたっけ?


 いきなり襲い掛かられたものだから確認しきれなかったんだけど。


 デバイスリーダーは、登録されていない装備にセットすると自動的に更新手続きに移行してくれる便利機能がついてる。


 ……ってことは…?














 「炎帝翼剣および双頭大蛇をぉっ!」












 あ、ダークジャッジマンを持ち上げた。












 「正式に、アレックス選手及びポラリス選手の登録装備として認可すると共にっ!」













 そして両腕で天高く掲げて……














 「両選手の、機動六課に所属するチーム・リバイバーへの復帰もぉ!認可したぁッ!!」











 ガシャアァッ!!(ダークジャッジマンの腰が砕け散る音)













 宣言すると同時に自身の首と背中の間にくる位置に叩きつけた。俗にいうブリーカーじゃないですか。


 認可してブリーカーするって、どんだけ肉体派な審判ロボなワケ?


 逞し過ぎて逆に怖いんですけど。















 《もしかすると、今までに潰された同胞たちのスピリチュアルな何かがあのジャッジマンに力を与えたとか》


 「純粋なロボですけどっ!?」


 《何を言いますか。勇者シリーズを見返して御覧なさい。

  特に太陽勇者とか黄金勇者とか。科学では証明できないスピリチュアル極まりないパワーで奇跡を起こしたじゃありませんか。

  監督が集大成と銘打っているだけに、勇者王もなんだかんだで科学とは言いづらい何かが勝利の鍵になったりしましたし》


 「いや、そりゃそうだけど!」












 おのれアルトめ、ちょっとおとなしくなったかと思いきや…!














 「ぐぬぬぬぬ……言わせておけば勝手なことを!

  戻ってくるでゲス!アレックス!ポラリス!お前たちはもうプレダコンズの、否、デビル三銃士の傘下でゲスよ!!」












 あ、遂にデビルポセイドンがなりふり構わなくなった。


 まぁ、単純に洗脳しただけじゃなくてデバイスまで作ってるしなぁ。採算が取れないって理由もあるのか。


 いや、採算云々は抜きにしても、浮かばれないっていうかね。


 こっちとしては、知ったこっちゃないけどさ。














 「ふっ、全く、何を言っているのですかね。

  こちらとしては、あなた達に壊された武器と戦闘装束を弁償してもらったまでですよ?

  お笑いトリオに興味はありません♪」













 ……オイ。













 「アレックス、もしかして……洗脳されてたの、ウソ?」


 「ポラリスは洗脳されてしまいましたが、僕は精神干渉系の魔法の対策も心得ていましたからね。

  拉致された時に装備も壊されてしまいましたし、いっそのこと利用していただけなんです。面倒をかけて申し訳ない」


 「まったく、その回りくどいやり方、柾木ジュンイチに似ているんじゃないか?」


 「冗談よしてくださいよ。僕はあんなデリカシーのカケラもないような生き物じゃないので♪」


 『あらヤダいい笑顔ッ!!』













 とりあえず、アレックスは確信犯だった。デビル三銃士に利用されるフリして利用してたよ。


 デバイスまで作らせるってすごいなぁ。しかもそれを強化改修とかじゃなくて"弁償"扱いにしているところがまたエグい。


 そして何より、さっきからスバラシイ笑顔と共に毒舌吐きまくってるんですけどこの人。


 ジュンイチさんの評価については、昨晩の事件のせいで周知の事実となってしまったので、誰にも弁護できないけれど。


 しかし、デリカシーのない"生き物"って。"人"とすら認識してないんですかアナタわ。
















 「彼、最近は自分で『人間やめてる』とか平気で言っているじゃないですか」


 「いや、そりゃそうなんだけど…」
















 うん、リティが心底困るのも無理ないよね。


 ていうか、いつの間にみんなの発言記録とか調べたんだろ、この人…。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 《よもや、ユニクロン・プラネットフォースを利用しているなどと誰が予想できたものか》


 《まったくです。創主レルネの神経を疑う、最大の要因といえますね》


 「神経疑うってどーゆー意味ですっ!?」










 普通は疑うだろう。なんでAI開発にプラネットフォースを使おうと思いつくのだ。


 しかも、よりにもよってユニクロンのものを。


 ダークコマンダー辺りにいらない因縁つけられたりしたら、どうするつもりなのだ。










 《ご心配なく。とっくの昔に手遅れでしたので》










 手遅れなのか…。











 《先ほどのインビットも、どうせプレダコンズからの差し金です。

  今更、どうにも感じませんよ。弱すぎて》












 ……弱いのか…?量産型とはいえ、スペック上は管理局の一般魔導師を血祭りにあげられる程度の実力はある筈なのだが。











 《もう、私の"中"にあるものについては、ただの塊ですし。

  ユニクロンの意思が宿っていたなら、今頃私は別な何かに変貌してますよ》










 まぁ、確かn





























































 「それは違うな」


























































 ――っ!!





 突如割り込んできた声、私も聞き覚えがある。


 貴様か――ダークコマンダー!














 「いかにも。まさか、ここで再開できるとは思ってもみなかったぞプロトゼノン。

  そこの機械人形よ。貴様が自覚している通り、そのAIにはユニクロン・プラネットフォースの一部が宿っている。

  願わくば、私に献上してもらえないだろうか」













 献上……よくもいう。


 あいにくだが、ビシディアンとしても貴様がユニクロンと密接な関係を持つことは掴んでいる。


 やすやすと渡してやるつもりはない。















 《結構ですよ、出しゃばらなくて。私一人で十分です》


 「いきなりやってきて何を言い出すやら。プロトはボクの大事な秘書ですよ?

  お前みたいな胡散臭いヤツに、誰が渡すものですか。このスコールピオで病院送りにしてy」


 《創主レルネも引っ込んでください。ていうかさっさとクロス・アインたちのリペアをしてください。めんどくさいですから》


 「えぇーっ!?」














 あ、自らの創造主に毒を吐いた。













 「随分と見上げた度胸だな。本気で私にかなうと?

  たかだか、オーディーンらと同程度のスペックしか持っていない分際で?」


 《まったく、バカですか》

















 ダークコマンダー相手にバカ呼ばわりしたぞ。
















 《ユニクロンであれプライマスであれ、プラネットフォースの一部が宿っているんですよ?

  オーバースペックの1つや2つ、生じないワケがないでしょうが。

  JS事件中、主に破壊大帝の一部がそれを実証したというのに……バカですね》















 2回もバカと言った…。しかも平然と。
















 「少々、手荒な方が好みk」

















 瞬間、プロトの姿が消えた。同時に、ダークコマンダーの右腕が(ヤツのセリフの途中で)落ちた。


 ……何事だ!?



















 《残念ですね。まぁ、あなた相手に交渉も何もあったものじゃないですけど。

  これで少しは理解できましたか?》



















 次の瞬間には、ダークコマンダーの"頭の上に"プロトがいた。


 ホープ・エッジを構えているところを見ると、一瞬で右腕を根元から切り落とした、ということか…?


 だが、そのホープ・エッジと、後頭部の5枚のフィンが妙だ。


 水色から、淡いが青竹色に変色している。


 同時に、スネの後ろ側、腰背部のスラスター、頬のラインなど……水色だった部分が全て同様に淡い青竹色になっている。


 青竹色は緑系統の色だが……ユニクロン・プラネットフォースの影響か…?



















 《それと、特別にオーバースペックその2も披露してあげましょう。

  二度と私を直視できなくなるように》





 <DEVILISM MODE.>





















 システムアナウンスと共に、プロトの機体が緑の光を放ち始める。


 更に機体自体の色も変貌し、白い部分がピーコックグリーンに染まっていき、発光し始める。


 そして後頭部のフィンとホープ・エッジの刃が変形。


 フィンはより長くなびくような形状になり、刃は肥大化すると共に切っ先が鋭くなる。

























 《これが、ユニクロン・プラネットフォースの力を掌握・吸収した私のオーバースペック。

  名付けて"デビリズムモード"……!》














 デビリズム……英語で「魔性」という意味か。


 大きさと鋭さを増したホープ・エッジの切っ先を脳天に突き付けながら、宣言した。










































































 《そして今より、"魔性の獄番ごくばんプルトーネ"と名乗らせていただきましょうか!》






































































 堂々と宣言し、プロト改めプルトーネは、回避行動に移っていたダークコマンダーの後頭部をいきなり蹴り倒した。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「ここで、なんとウチのジャッジマンが復活&逆襲ゥーッ!!

  ジャッジカプセルはオダブツになるも、バトルの審判権を奪い返したァーッ!」


 「なお、この決定におけるデビル三銃士の抗議は一切認めない。

  更にデビル三銃士の選手登録を抹消する!」












 そうだ、まだ問題は残ってる。


 ユウサの実況で思い出し、ジャッジマンからの通告で選手登録を消され、ただの野蛮人に成り下がったデビル三銃士がいるじゃん。


 もっとも、デビルブライスターは先に星になったけど。












 「ぬぁーっ!!ふざけんなこの裏切りモン!!

  こうなったらお前ら全員、木端ミジンコでゲス!!」
















 デビルポセイドンの声と共に、何やら見慣れないロボットが多数出現。


 えっと……なにこれ?
















 「それは、インビット!?」


 「なに?」

















 え、アレックス知ってるの?



















 「僕よりもポラリスの方が詳しいのですが、

  確か、古代ベルカ時代に開発中だった、AIによる完全自立型のロボットのことです。

  一説では、パワードデバイスの機能も搭載されるとか…」


 「なるほど、最近六課にやってきたオーディーンたちと同系列、かつ原型か」


 《おそらく、脚部形状的にフェンリルが最も近いのでしょうね》














 アレックスからの答えにマスターコンボイが真っ先に理解。


 アルトもいうように、同系列だとすればフェンリルが1番その流れを汲んでるんだろう。


 もっとも、腕はクローじゃないけど。













 「こうなったらもう、ワシらも戦うでゲスよ!」


 「しょうがないわねぇん。いっそのこと派手にやっちゃいましょ!」
















 あ、遂に三銃士も実力行使に。そこにポラリスが加わって、多数のインビット。


 勝てない相手じゃないし、ポラリスさえ抑えられればいいとは思うけど……インビットの数が多すぎない?


















 「…………ポラリス、ごめん!」


 《スキャニングチャージ!》


 <ATTACK-FUNCTION CORE CHARGE PUNCH.>


















 スキャニングチャージによって両腕に力が集束され、元から高いフットワークを活かして一瞬でポラリスの懐に。


 そこから今度はアッパーカット。気づいたポラリスの双頭大蛇を回避してのカウンターだ。


 ダメ出しで空いていた左拳もボディに叩き込んで、思いっきりブッ飛ばす。


 ……しぶといなぁ、今度は正真正銘の直撃だってのに。















 「ツッコむところはそこなのか!?」


 「え、だってポラリスはまだ洗脳中だし」


 「……あー、もう解決しましたね」


 「は?」


 「気づきませんでした?首元をよく見てください」
















 マスターコンボイになんか言われるけど、至極真っ当な言い訳をする。


 で、アレックスに促されて、ポラリスの首元を見る。


 ……ん?なに、あのヘンテコなチョーカーは。


 しかも割れたよ。
















 「……う……あ、あれ…?

  ここはどこ?それに、なんで双頭大蛇が新品同前な姿に?」


 「……アレックス、これ、洗脳とけたってこと?」


 「見事な攻撃でしたよ、リティさん。

  おかげで洗脳アイテムであったチョーカーが外れて、ポラリスも晴れて復帰ですよ」


 「アレで洗脳されてたの!?安っぽいシステム!!」


 「ちなみに僕は洗脳対策の魔法でとっくに無力化してましたけどね。

  今つけてたのはマネしたお飾りです」


 「アンタはアンタで何してたのマジで!!」












 ホントにもー、この人は…。


 わざわざお飾りつけてくるなんて、どんだけ手の込んだ芝居打ってたワケ?


 まぁ、ブレイクオーバーさせなくても元に戻せるなら別に…。













 「いや、アレはブレイクオーバーしないと通常は外れない仕組みなんだ。

  多分、何かとても強い衝撃を受けて、つなぎ目が壊れたからなんじゃ…。

  ていうか、今とってもお腹が痛いんだけど、誰か説明してくれないか…?」













 ポラリス、あのチョーカーのこと知ってたんかい。てことは、古代ベルカあたりで資料残ってるかも。


 それにしてもキャラがブレる人だなぁ。少し前にはいまどきの女の子っぽいしゃべり方してたと思ったら。


 それとも、素の時点で不安定なのか…。













 「あー、ごめん。どうも王としてふるまっていた頃の癖が出てしまうようで…」


 「あぁ、そういうことか」


 《演技も年季が入ると癖になってしまうって感じでしょう。王様経験者というのも大変ですね》


 「取り敢えず、もう喋り方にはこだわらなくていいんじゃないかな…?

  ほら、トラルーだってその辺は全然こだわらないでしょ?」


 「そ、そうかな…?」


 「それでいいと思いますよ。昔の素と今の素が同じである必要もないでしょうし」













 そういえば、鎧王の頃はもっぱら男口調だったってトラルーが言ってたっけ。


 口調をあからさまに変えるってのも大変だなぁ…。


 とはいえ、リティのアドバイスがきいたみたいだし、今後はもう少し安定するかな。


 アレだ、僕らの近くでいうとセインっぽい感じだと思う。













 「あんたらねぇ!完全にアタシたちを忘れてなごんでんじゃないわよぉ!」


 「こんな放置プレイは初めてでゲスよ!」














 あ、忘れてた。














 「あったまきたわ!サンダースキャン!」


 「ブリザードスキャン!」













 それぞれが目から光線を放ち、インビットに当てる。


 報告によると、アレって…。














 「サンダースキャンシュートぉ!」




 「ブリザードスキャン、シュートッ!」













 目から放つスキャン光線でスキャンしたものをイメージした誘導弾、ビーダロイド弾を放つ。


 ただでさえ多いインビットを増やしてきた!?


 その数、ざっと数えて……50以上いるよね絶対!














 「えぇい、大量に作ればそれでいいと思って!」


 「やれ、やれ!木端ミトコンドリアでゲス!」


 「さっきからつまらないんですよ!」












 そのインビットたちが一斉射撃。武器を盾代わりにしてしのぐけど、数多すぎるって。


 ていうか、さっきからデビルポセイドンはギャグのつもりで言ってるの?


 アレックスもツッコんだけど、つまらないからね?
















 「ビーダロイド弾の方は雷属性と氷属性ですか…。なら問題ないですね。

  ポラリス。雷属性の方は頼めますか?」


 「あぁ、問題ない!」















 ていうか、ポラリスはタフすぎると思うんだ。


 必殺技の直撃くらってもフツーに動けるとかどんだけですか。


 どんな修羅場くぐってきたらそんな風になれるんですか。
















 『フォースチップ、イグニッション!!』













 武器をかまえ、アレックスがスピーディアの、ポラリスがギガロニアのフォースチップを呼び出す。


 ……気のせいかな、あの二人のフォースチップ、淵が銀じゃなくて金色に見えたんだけど。















 《Feathers Form》


 <ATTACK-FUNCTION BURNING BRAID.>


 「バーニングブレード!!」













 アレックスの炎帝翼剣は、鍔にあるチップスロットにイグニッション。


 同時に赤い刀身が中央のラインに沿って分割されて、内部の真っ直ぐな刀身が現れる。


 "フェザーズフォルム"…だっけ。羽…っていうか、分割された方の赤い刀身が斜めに開いていて、上から見るとなんとなく尾羽っぽいね。


 更に鍔を軸にして高速回転、3本になった刀身がどんどん光を帯びていくのがわかる。


 やがて炎の渦を宿した炎帝翼剣を大きく振りかぶって、まるで撒き散らすように勢いよく水平に振り払う。薙ぎ払いの動作だ。


 剣の薙ぎ払いに連動して炎が拡散され、デビルポセイドンが作ったインビットがまとめて吹き飛んだ。


 技名"バーニングブレイド"。さっき使った"フレイムストーム"といい、ホントに炎属性の技がすごい。















 《Tempester Form》


 <ATTACK-FUNCTION GROUND DRIVE.>


 「グランド、ドライブッ!!」













 ポラリスの双頭大蛇は、刀身の下にある円状の部分にあるチップスロットにイグニッション。


 同時に両方の刀身が分割され、強靭なワイヤーで繋がった連結刃になり、更に中心から切り離して両手に構えて連結刃の二刀流に。


 アナウンスからすると、この状態は"テンペスターフォルム"かな。フォースチップのパワーが両方の刀身に一気に集まっていく。


 まるで舞い踊るように左回転しながら振りかぶって、まず右手の方の連結刃で横一閃。続けざまに左手の連結刃でも横一閃。


 一閃する度に、まるで大蛇がその体をうねらせるかのような大きな軌道を描きながら斬撃が舞う。


 2度の大きな斬撃が、デビルホーネットが作ったインビットをまとめて粉砕する。


 こちらの技名は"グランドドライブ"。これは普通に分割しない状態で使った"グランドウェーブ"の発展技だね。















 「んまぁ〜っ!?」


 「さぁすが、このデビルポセイドン特性のデバイスたちでゲス!」


 「って、感心してる場合じゃないわよゲスちゃん!」






 「アーツバトル連盟の決定は絶対である。その決定に逆らう者は」













 えっと、あまりにも過剰な違反行動をしたヤツって、連盟直々に制裁されるって聞いたけど…。













 《衛星軌道上に、高エネルギー反応を確認。ジャッジサテライトからのものだと思われますが…》


 「ジャッジサテライトって、カプセル落っことしてくるあの衛星?

  ……あ」













 アルトの言葉で思い出した。トラルー言ってたじゃん。


 ジャッジ衛星は武装化された衛星で、それによる直接砲撃ができるって。





























































 「王の名において――制裁!!」






















 ジャッジマンのその言葉と同時に、三銃士とインビットに極太レーザーが大量に降り注ぎ始めた。


 これがジャッジサテライトからの砲撃!?制裁どころか殺す気満々じゃないのちょっと!?


 人間サイズ相手にはちょっとオーバーキルじゃないかと思うんだけど!?














 「心配すんな。破壊力は抜群だが、ご丁寧に非殺傷設定付きだ。

  命に別状はないからほっとけ」


 「うわぁ」














 ユウサにあっさりと言われてしまった。





















 「バトルフィールドではこの私が、あ、法ぅ〜律ぅ〜だぁ〜!!」


 「いよっ、名奉行!」















 このジャッジマンはアレか、遠○の金さんか。


 ユウサもノリがいいことで…。



















 「アクちゃ〜ん!多分そっちに飛んでくわぁ〜!」


 「そんなカッコつけても人気なんざ出ないでゲスよぉ〜!」


















 一方で、デビルホーネットとデビルポセイドンは、捨てゼリフを残しながら星になった。


 とりあえず、そっちにデビルブライスターも飛んでったっけか。




















 「……それにしても…」


 「どしたの?」


 「いいのかな…?双頭大蛇、アイツらが作ったものだってことは今アレックスから聞いたけど…」


 《……いいんじゃないですか?アーツバトル連盟のお墨付きなんですし。

  それに、デビルポセイドンも後半は半ばヤケになって襲ってきましたし、この際ですから頂いてしまいましょう》


 「良かったじゃないですか。タダで直してもらえたようなものなんですから」



















 ポラリスが、結構律儀な人だってことはわかったよ。うん。


 アルトも言うとおり、もうアーツバトル連盟が選手情報に登録しちゃったし、所有権は主張して大丈夫だと思うよ?


 でも、アレックスはあざといっていうかあくどいっていうか、とりあえず三銃士は後悔しただろうなぁと思ってみる。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 最近は計算違いなことが割と多くなってきたな…。


 よもや、ユニクロンのプラネットフォースを、一部とはいえ完全に掌握してしまうとは。


 掌握したことによるものか、機体自体が変質し、もはや独立した存在となっている。


 これではもうプラネットフォースとしての力は残っていまい、執着するだけリスクが高まるのみか。












 《お立ち退きいただきましょうか。今すぐに!》


 「あぁそうだな。貴様を変質させたプラネットフォースはもはや貴様と完全に同化している。

  もう既にユニクロンのリンクはなく、かといってこちらでどうこうできる問題でもなくなったのでな…」














 ひとえに、"そのもの"ではなく"断片化された一部"を取り込んだ故に制御してしまったのだろう。


 しかし、まさかただの機械が…。全く、"我が一部"であった筈なのに、どうしたというのだ。


 JS事件中には一部の破壊大帝がその力を利用してしまう話もあった。マイクロンといいプラネットフォースといい……。















 どうしてこうも、予測不能な変化を見せてくれるのだ。
















 《失せなさい……我が主の目の前から、跡形もなく!!》












 そして……プルトーネ、貴様にたぎる力はユニクロンにあってユニクロンにあらず。













 《フォースチップ、イグニッション!!》



 <ATTACK-FUNCTION SPIRITUAL DEAD END.>













 背中のチップスロットに、ガンメタルの縁があるミッドチルダのフォースチップをイグニッション。


 同時に全身のラインに沿って装甲が展開、解放されたパワーがホープ・エッジの刃に集まる。


 アクロバティックな跳躍と共に2本の刃で円を描き、更に素早く八芒星を描く。


 それを空間ゲートとし、無数の悪魔が姿を現し、2本の刃に次々と宿っていく。


 黒みがかった緑の光を放つそれは、いずこかより集められた無数の悪魔が結集し作り上げる魔性の凶刃。















 そして気がついた時には、私の左腕と右足が粉微塵になっていた。















 「く……またしても想定外か……!」















 かろうじて発動した転送により、なんとかこの場を離脱することができた。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ダークコマンダー、帰っちゃいましたね。








 《プロト…じゃなくてプルトーネの姉さん、トンデモナイことになったッスね》


 《プラネットフォースが変質したAIがオイラたちの先祖?》


 《ぬぅぅ、我らのことながら面妖な》










 クロス・アインたちもさすがに動揺しますよねー。


 いや、こうなるならとっとと話してしまえばよかったですね。


 あまり取沙汰にしたくなかったから黙ってましたけど。












 それにしても、あのアタックファンクションはプログラミングしていないハズ。


 ボクにさえ内緒で特訓して、力を制御して……その末にあの"スピリチュアルデッドエンド"を編み出したと…。


 ていうか、八芒星作ってそれを魔物召喚のゲートにするとか、ホントに霊的ですねー。


 あぁ、だから"スピリチュアル(霊的)"ってワケですかなるほど。
















 …………怖いですよ!!



















 《いきなり泣き出した!?》


 「だって、悪魔でしょ!?身内が悪魔化するなんて誰が考えます!?」


 《ユニクロンのプラネットフォースに手を出した時点で考えろ!》


 「うわーん!技術的好奇心を否定されたぁぁぁ!」


 《えぇい、駄々っ子か貴様は!?》
















 トランスフォーマーが転生する話は聞いてましたよ!


 でも、機械が悪魔になるなんて考えるワケないじゃないですか!


 プロトゼノンの分からず屋!!
















 《まさか、創主レルネにこんな面倒くさい一面があったとは…》


 《オイラたちも、あんな泣きじゃくる御大将は見ないぞ?》




















 《創主レルネ、落ち着いて、真っ直ぐに聞いてくださいますか》


 「……ふぇ?」


















 プロト……じゃなくて、プルトーネ…?




















 《確かに、私のAIはあなたの好奇心によって悪魔とも呼べるものに変貌しました。

  しかし、それ故に今の私の人格があるのだとすれば、それは決して不幸なことでも、忌むべきことでもありません。

  何より第一に、私は貴方によってこの世に存在を得て、"思い出"というものを学びました。どういう形であれ、私はそれが嬉しいのです。

  ですから、誰に何と言われようと、私はずっと、貴方を支え続けます。"最初の申し子"として!》


 「…………プルトーネ……。なら、僕からも一言」


 《はい》
















 それは、プルトーネのAIを誕生させ、ボディを与えたその日と、敢えて同じ挨拶。


 でも、同じ挨拶だから、改めて手を取り合えるような、そんな気がしたんです。






































































































 「これからよろしくお願いしますね、プルトーネ!」


 《はい♪》



























 (第30話へ続く)










 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―



 リティ「イイ話だなぁ〜」


 ステンス「おい、この作品ってこんな雰囲気の物語だったか?」


 リティ「甘いなぁ。お前が好きなアイスバー並みに甘い。クレアがパンドラと出会った話とか見返してみなよ」


 ステンス「チッ……まぁいい。今回は"デビリズムモード"について教えてやる」




 ステンス「デビリズムモードは、プロト改めプルトーネが使う特殊モード。

      発動すると全身から緑の輝きを放ち、機体の白い部分もピーコックグリーンという緑系統の色に染まる。

      出力も通常時の数倍になり、一瞬でダークコマンダーの片腕を切り落とすなんて芸当もできるようになるワケだ。

      他の特殊モードとは違い、発動時には後頭部のフィンとホープ・エッジの刀身部分も変形する。

      デビリズム(=魔性)という名の通り、ユニクロンのプラネットフォースに宿っていた魔のパワーが原因だろうな」




 リティ「でも、一部とはいえプラネットフォースのパワーを、あんな小さなボディで制御するなんて…」


 ステンス「核ともいえるAI自体が変質しているからな。これ以上のことはプルトーネ自身でもないとわからないだろ」


 リティ「では、また次回!」





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 <次回の「とたきま」は!>




 トラルー「苛烈を極める"アレス"予選も、あっという間に終盤戦!」


 アレックス「キーコードを集めようと躍起になるチーム、相手を吟味して慎重に動くチーム、はたまた既にゴール寸前なチーム…」


 ポラリス「私とアレックス、あと恭文たちは躍起になるチームなワケだけど」


 トラルー「一方で、新たに動きを見せる新キャラもいたりいなかったり!?

      本戦トーナメントまでに何が起きる!?」












 第30話:予選終幕 〜勝ちどきを上げるのは誰だ〜












 トラルー「ちなみに、本戦進出組の中には、第4クール以降のレギュラーもいるらしいです」


 イグナイテッド《気が早いことで》





































 あとがき



 てなワケで、第29話です。

 今回は思い切って、「チーム・アルトVSアレックス&ポラリス」と「プロト→プルトーネ」という2大テーマに絞って書きました。

 アレックスとポラリスは味方に戻り、「チーム・リバイバー」として戦線に加わります。



 一方で、間を挟んでシズクによる回想の続きなども。

 普段は星にされるなど不幸な扱いを受け続ける暴走コンビが珍しく大活躍。

 陰に薄れることなく活躍に拍車をかけるシグナルランサーは縁の下の力持ちなイメージでこうなりました。



 次回で第3クールも折り返し地点。

 非常に広大な予選も決着を迎え、本戦トーナメントへと戦いはシフトしていきます。

 あと、次回予告のつけたしにもあるように、本戦進出メンバーの中には第4クールからの新レギュラーも紛れていたり。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 プロトに使われたユニクロン・プラネットフォースのカケラとかいろいろツッコむべきところはあるんだろうけど、モリビト的にはチーム・ハイウェイズの健闘に万歳三唱。
 『MS』ではジュンイチのところに転がりこんだガスケットに半ば持っていかれて、アームバレットやシグナルランサーは後半霞んでたからなぁ。こっちで出世してくれてうれしい限り。

 そして原作でもやった“ダークジャッジマンへのリベンジ”を無事果たしたジャッジマン。
 そーいや原作でも主役張ったエピソードすらあったぐらい自己主張激しかったっけなぁ。やはり侮りがたい審判ロボです。