レルネ「それでは本日も参りましょう、"レギュラーメンバーのドコナニ"のお時間です」


 プルトーネ《前回で"アレス"予選が終了ということで、予選での主な動向をおさらいしましょう》









 01:トラルー、イテン、マキトのチーム・ストゥルムは、何事もなくキーコード3つを揃えて本戦出場確定。

   ユーリプテルス暴走事件は、ポラリスの気持ちを立てたいというトラルーの意向でスルー。



 02:恭文、マスターコンボイ、リティのチーム・アルトは、ユーリプテルス暴走事件に巻き込まれる。

   暴走停止に貢献したことで、同じく巻き込まれたチーム・ゴッドアイズやミアキ、ヤクチもろとも、特別に本戦進出を認められる。



 03:アレックス、ポラリスのチーム・リバイバーは、特別に許可を得たパスナが加わり、

   ユーリプテルスの暴走停止に貢献したことで本戦進出を認められる。



 04:アストラル、ゼノン、ユーリプテルスのチーム・メルクリウスは、

   暴走により損害を招いたユーリプテルスを除き、イディアル総帥からのお墨付きもあって本戦進出を決める。



 05:ルアク、ブライ、ステンスのチーム・イグドラズは、無難に勝ち上がりキーコードを3つ確保。

   ダークバトルにも巻き込まれることなく本戦進出を確定させる。



 06:ナムチ、スクナ、リラのチーム・スサノオは、リラがブレイクオーバーするもののキーコードを2つ確保する。



 07:スター、カナヤゴのチーム・グランツは、ダークハウンド率いるチーム・ビシディアンと交戦。

   しかし途中でダークバトルが発生し、無効試合になってしまう。



 08:ノーヴェ、ホクト、オットーのチーム・フリゲートアルファは、チーム・セイバーズと交戦中。



 09:バラン、ミナト、シズクのチーム・ドバンは、シグナルランサー、ガスケット、アームバレットのチーム・ハイウェイズと交戦。

   途中でダークバトルになり無効試合となったが、刺客であるルシファーを共同で撃破する。



 10:オーディーン、パンドラ、フェンリルのチーム・タイニーは、キーコードを1つ確保。



 11:ハカイオー絶斗、ナイトメア、リュウビのチーム・番長連は、チーム・オクタスを一方的に撃破。



 12:クレア、ハルピュイア、レヴィアタンのチーム・ファクスは、改造シーサーペントらによるチーム・サーペンツと交戦。

   その途中、レヴィアタンが身動きを封じられる。



 13:レルネ、プロト、クロス・アインらによるチーム・ディメンジャーは、キーコードを2つ確保。

   ダークコマンダーからの襲撃でプロトゼノンとのバトルは無効になる。その際にプロトがプルトーネに改名する。



 14:ジャックプライム、スターセイバー、ビクトリーレオのチーム・ジャックは、キーコード2つを確保。

   チーム・スナイプによる連続狙撃事件を知る。



 15:はやて、リインフォースU、レクセのチーム・シュベルトは、プテラノドンヤミー3体のチームと交戦。

   同族故に特殊効果が通じないレクセが無双し、勝利を収める。



 16:アリシア、あずさ、ジュンイチのチーム・ゴッドアイズは、チーム・ボンバーズと交戦。

   ユーリプテルス暴走事件に巻き込まれたことで無効試合となるが、暴走停止に貢献したことで本戦進出決定。



 17:セイン、ウェンディ、ディードのチーム・フリゲートベータは、迷宮化した遺跡エリアで立ち往生。



 18:なのは、スバル、ティアナのチーム・スターズは、チーム・フライヤーと交戦中。



 19:フェイト、エリオ、キャロのチーム・ライトニングは、キーコード1つを確保。



 20:ロードナックル、ジェットガンナー、アイゼンアンカー、シャープエッジのチーム・GLXは、チーム・パルサーズとバトルを始める。



 21:ひより、みなみ、スピアのチーム・グラップルは、早々にインビットの群れと遭遇し、問答無用でダークバトルへ。



 22:こなた、かがみ、つかさ、みゆきのチーム・カイザーズは、ダークバトルを警戒してルートを厳選しつつ移動。



 23:ビコナ、月影丸、ノーザンのチーム・フォレスは、ノーザンが危ない意味でエキサイトしている為、まともにバトルできず。



 24:シグナム、ヴィータのチーム・ヴァンゼンは、チーム・ストゥルムと鉢合わせ。イテンとマキトに倒され、予選敗退。



 25:デビル三銃士は数々の不法行為により、アーツバトル連盟の制裁をくらい強制退場。









 プルトーネ《本戦進出を決めたチームもあれば、まだ決まっていないまま今回を迎えたチームもかなりありますね》


   レルネ「そもそも描写自体が無かった人もいますしね。

       予選で無かった出番は本戦で取り戻すと言わんばかりに、今回からは大暴れ!かも!?」


 プルトーネ《トーナメント戦という形式のおかげで、メダルチェンジがしやすくなったリティ殿にも注目です。

       あんなコンボやこんなコンボ、亜種形態も本戦で大活躍です!》


   レルネ「では、第31話をどうぞ!」


























































 

「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






「とある旅人の気まぐれな日常」






第31話:本戦Aブロック 〜メモリを束ねる器〜


































































 事件もあったけど、重症患者も出ることなく予選終了。それから一晩休んで、翌日の朝8時ぐらい。


 いよいよ今日からは本戦トーナメントが始まる。







 余談だけど、ジュンイチいわく暴走状態のユーリプテルスが放った荷電粒子の渦に消えたストラバレルって人は、


 とっさに目の前を爆破して、その爆風で逃げてたとか。


 しかもその後、ソロのままでキーコードを揃えて、本戦進出を決めたらしい。なんていうか、たくましいな。




 ただ、彼の特技らしい"見えない爆破"のカラクリについては結局不明のまま。


 となると、鉢合わせしたら厄介だね。もっとも、そのカラクリについてはなんとなく心当たりはあるけど。






 もう1つ余談。


 ストラバレルのチーム・ボンバーズと戦う時、ジャッジマンはジュンイチたちを「チーム・マサキ」って呼んだね。


 登録データでは「チーム・ゴッドアイズ」で通していた筈なんだけど、どうやらその場で言わせたかっただけらしい。


 本人いわく「一度くらい、自分の名前がチーム名で呼ばれたりとかしてみたいじゃん」とのこと。


 事情を聞いたとき、その場にいた誰もがしらけたのは言うまでもない。








 それはともかくとして、現在僕たちはデルポイ大陸中央部の土地にある闘技場にいたりする。


 何故かというと、本戦進出を決めたメンバーを集めて、予選の閉幕と本戦の開幕を告げる為らしい。


 なので当然、僕ら以外にもキーコードを揃えて本戦進出を決めたメンバーがズラリと並んでいる。


 そのチーム数は、最終的に40になった。




 目の前の台の上には、マイクを持って僕らと正対するイディアル総帥の姿が。


 昨晩に緊急会見を開いたばかりでちょっと眠気とかの心配もしてしまったが、無駄な心配だったのは一目でわかった。


 目の輝きがギラギラしてるし。彼の瞳の奥で何かが燃え盛っているように思えるんだけど、気のせいだろうか。


 なお、これから始まるスピーチも生中継。無数のカメラたちが総帥を取り囲んでいる。














 「お茶の間の諸君!先日の晩に緊急会見を開いてお伝えしたとおり、

  ネガショッカーの魔の手と断定できる事件がいくつも発生した。それに我が連盟の警備部が対処しきれなかったことをまずお詫びしよう。

  だが、しかし!理不尽なアクシデントや事件にも負けず、勝ち残ってきた精鋭たちが今!僕の目の前に並んでいる。

  この"アレス"の優勝者、それはすなわち次元世界の覇者!世界の垣根すら超える覇者ともあれば、理不尽の1つや2つは粉砕できるもの。

  そうお考えいただければ幸いである。忘れてはならない。覇者の道を競う者にある絶対のルールは、弱肉強食なのだから」













 逆にいうと、乱入の1つや2つでビビってやられるような連中に栄冠はないよってこと。


 まぁ、当然だね。どんなクソ野郎に無意味にケンカを売られようと、生まれてきたのを後悔するレベルで粉砕できるようじゃないと。


 世界をまたぐ覇者っていうのは、まぁそういうことだよ。目には目を、外道には外道をってノリで。


 ルール無用な相手には情け無用でいいのさ。割と常識だったりする。


 あと、弱肉強食ってルールは、デルポイ大陸では特に重要視されているもの。なんでも、大陸開拓時代から誰もがその身で思い知っているらしい。


 それにしてもあのイディアル総帥、ところどころですごいハウリングボイス。気のせいか、某ファウンデーションの会長を思い出す。


 声はおじさまボイスというよりは青年ボイス、身なりは小学生くらいなんだけどね。












 「さて、事件にもアクシデントにもめげずにしのぎを削り、見事にキーコードを揃えた猛者たちよ!

  僕は君たちの勇ましき姿を歓迎する。同時に期待もしている。

  この中の誰もが、その身と心に宿る欲望に大なり小なり忠実であることを!

  なぜなら、欲望なき者に明日はないからだ」












 だから、某ファウンデーションの会長ですかアナタは。












 「ここまで辿り着いたなら、最後までその欲望を貫き、頂点を目指したまえ!

  己が生き残るという最大の欲望にまみれた、生命体同士の血みどろの争いで築かれたこの世界に、

  どんな歴史が刻まれていくのか、非常に楽しみだ!以上!」













 そして、イディアル総帥は台の上から降りていった。


 いやはや、ぶっ飛んでるね、あの総帥。でも、普通にわかることも1つある。


 きっと、人生をとことん楽しんでいるタイプだ。見習いたいね。













 「トラルー、いよいよ本番だね」


 「なんだい、ガラでもなく緊張とかしてる?」


 「う、うん。でもね、私、最後まで頑張るから…」


 「変に気張らなくていいの。大丈夫、コスモテクターのパネルがかかっている以上、負ける気もつもりもない。

  目の前の相手をブッ飛ばす……ただ、それだけだ」


 「手に入れたいっていう欲望に忠実っすね、兄貴」












 まぁね。イテンやマキトもさすがにあんな大舞台は経験ないだろうし、ここからは本腰入れないと。


 トーナメントの組み合わせがまだわからないけど、誰が相手になろうと粉砕させてもらう。


 そう、誰が相手でも。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 結局、ユーリプテルスの一件について全く首を突っ込まなかったことは気にしてない。


 それどころか、気遣っているのか、彼に関する話題はとにかく避けていたみたい。


 私は別に、そんなことで気を遣われてもありがたくないのだけど…。










 「そこはトラルーさんの気持ちを汲んであげてください。

  現に、昨晩は気持ちを整理する為に早めに就寝したじゃないですか」


 「むぅぅ、トラルー殿にはかたじけないであります」


 「彼はそんなこと期待してないだろうけどね…。

  でも、おかげさまでスッキリした目覚めを迎えられた」











 そこは本当。だから、アレックスやパスナの言うことも一理ある。


 ちなみにユーリプテルスはというと、あの後シャマルやヒルメにいろいろとチェックしてもらって、


 念のため、トランスポーター扱いになっている極輝覚醒複胴艦でおとなしくしてもらっている。


 バーサークモードの根源はなくなったけれど、当面は戦闘はもちろん武装化も避けることになった。




 アストラルが持ってきてくれたデータによると、装甲パーツの一部に生体端末が組み込まれていて、


 それがタランスからのハッキングに反応してバーサークモードが発動していたらしい。


 だから、バーサークモードを起こさない為の現時点での最大の対策は、一切の装甲や武装を持たせないこと。











 「ヒルメも警戒して、ディビジョン艦のセキュリティレベルを引き上げたようですしね。

  それにジュンイチさんがかけた"補欠な保険"もありますし」


 「飛王様、それはいったい…」


 「……本人の為にも、触れない方がいい…」












 アレックスの言った、"補欠な保険"。それは……。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ―同時刻、極輝覚醒複胴艦・ミーティングルーム―









 「なんでよ……なんで私が……」


 「どんまいどんまい」









 とりあえず、ユーリプテルス自体に端末とかがなくて何より。おかげで艦内は平和だ。


 まぁ、当面はアイツが戦闘に加わることもないだろうけど。










 じゃあ、もう1つの現実と向き合うか。


 実は今から1時間くらい前、ジュンイチが来たかと思うと、ライカや橋本など、何故かブレイカーズの面々を置いてった。


 もちろん理由を聞いたワケだが、ほら、ユーリプテルスにはまだタランスとかがマークしてるかもしれないだろ?


 だから、万が一の際のボディガードも兼用した"前線チームの補欠"として、置いてった。











 「ヒルメ……なんでアンタまで認めたのよ、こんなこと…」


 「断る理由がないんだよ。

  大会メンバーの万が一ってことは絶対に否定できないし、ユーリプテルスのこともある。

  君らには悪いけど、冗談抜きに補欠兼保険役として適材なんだよ」


 「確かに、そこらの連中が相手なら不覚を取る理由もないが…」


 「ついでにイクトの場合、方向音痴が災いして失踪されても面倒だしな」


 「…………そうだな……っ!」


 「まぁ、何かあっても何もできないなんてことは避けられるんだ。それだけでも充分だろ…」











 ライカが未だに納得していない。まぁ、実力は六課隊長陣にも引けを取らないしなぁ。


 だが、だからこそ護衛役としても適任だ。断る理由がない根拠はそれ。護衛にも補欠にもなるから。


 イクトも控え組なのは、今言った通り方向音痴による失踪が面倒だから。本人も血涙流すくらい自覚しているようなので、放置。


 橋本だけは、割とすんなり納得してくれた。実の兄である鷲悟なんて、自宅待機させられてるし。




 ……努力は報われてないけど?












 「君ら3人、いつここに来たかな?

  防犯カメラが3個ぐらい壊れてたから、昨晩の内にだとは思うけど」


 「ほう、よく気づいたな塵芥よ」


 「よぉーし、誰でもなく俺が天罰下してやるから覚悟しろ」














 鷲悟の努力、それはマテリアルズの脱走防止。ただし、当人たちは夜中に脱走してくれたようだけど。


 ヤミもライもセイカも、後でジュンイチにあーだこーだ言われるのはわかるだろうに…。


 あと、自分たちがなんで留守番命令されてるのかも知って……ないか。


 ジュンイチって、肝心要なことに限って言い含めてないという悪い癖があるからな。想定できないことでもなかったか。













 「天罰?ダメだよ、その人たち雷で焼かれて死んじゃうよ」


 「ユーリプテルス?コイツらは別に雷に打たれたって死にはしないよ。

  ライに至っては属性が雷だから効果薄いし。死なない程度にぶん殴るだけだから」














 死なない程度にってところが重要。生半可な攻撃だとすぐに回復して脱走するから。


 脱走されないようにする為にも、まずは死なない程度に叩き潰して縛り上げておかないと。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ―同時刻、柾木家の一室にて―





 「まんまと逃げられたな、あの3人に」


 「鷲悟……ドンマイ」


 「だぁぁぁもう、アイツらぁぁぁぁぁっ!?」







 あーくそっ、こんなことならゼロイクスとブイリュウとオレで3交代で見張ればよかったぁぁぁ!!






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「それではみなさん、これより本戦トーナメントの詳しいルール説明を行います。

  予選のバトルとは異なる部分もありますから、真剣に聞いてくださいね」








 ルール説明はリリエンが主導。私はあくまでも補足だけ。それで十分なの。


 だって、あの子のMSデバイスであるガレットには、リアルタイムで更新され続ける膨大な情報が入っているのだから。









 「まず、本戦トーナメントのバトルモードはゼネラルのままですが、

  試合ごとに参戦できる人数が変わっていきます。

  1回戦は1対1、2回戦は2対2、そして3回戦は3対3のフルバトルです。

  メンバーが4人以上のチームは、3回戦終了までに全員が1回以上参戦することが条件ですのでご注意ください」










 疲労の問題もあるし、見せる側としても連投じゃつまらないもの。


 1回以上参戦させることを条件にしているのは、そういう面から決まったルール。ゲームでいう縛りプレイにもなるけど。


 まぁ、殆どのチームが3人でエントリーしているし、勝ち上がれなきゃ大した問題でもない。


 実を言うと、最大人数は6人って決めてるけどね?でないと回しきれないし。











 「アイテムの使用・補充については、予選の時と同様です。必ず試合前に補充してください。

  もちろん、登録していないアイテムは使用禁止。事と次第によっては持ち出した時点で反則負けにします。

  特に予選で度々報告された、スタングレネードに偽造した荷電粒子爆弾については問答無用で全面禁止としました。

  さすがにお茶の間に流す試合で死人が出たりするのは、こちらとしても勘弁願いたいんですよ。

  同様の理由で、バトル中の非殺傷設定の解除も禁止です。ダメージカウンターによる保護も、絶対ではありませんので」











 まさかの荷電粒子を爆薬とした爆弾よ?地雷式から手榴弾タイプまでいろいろあったわ。


 共通しているのは、爆薬を入れる部分に荷電粒子を吸入・貯蓄しておいて、衝撃を受けて信管が抜けた時に爆発した荷電粒子が乱反射するってこと。


 しかもタチが悪いのは、威力を重視したかったのか非殺傷設定が全く反映されていなかったこと。


 だから、かすっただけでも後遺症が残るほどの重症になりかねないのよ。特に地雷式だと踏み抜くワケだから、負傷の度合いが酷い。


 運び込まれた患者の中には、下半身が丸ごと消し飛んでいる人までいた。荷電粒子の超高温で蒸発したのよ。




 ちなみに、ユーリプテルスも荷電粒子砲なんか搭載していたけれど、


 アレにはちゃんと非殺傷設定がかかっていたから、まぁよしということになっていたわ。


 暴走した途端に機能不全に陥っていたらしいけれど。


 そりゃあ、なんだかんだでド派手かつ負傷もやむなしなバトルモードではあるけど、人命尊重っていう理念ぐらいウチにもあるのよ?


 予選で仕掛けられていた地雷やら落石やらのワナだって、非殺傷設定をかけてライフの減少以外の効果をなくしているもの。












 「本戦でのバトルは、先に相手を全滅させたチームが勝利となり、次の試合に進むことになります。

  ライフをゼロにするか、ダメージカウンターが壊れてしまうほどの一撃でブレイクオーバーさせるだけです。

  なお、勝ち進んだ場合、一度ブレイクオーバーした人も再度戦うことができます。

  もっとも、メディカル面でいろいろ心配になるので、こちらとしてはあまり推奨しませんが」











 ダメージカウンターで傷はつかないとはいえ、体力的なダメージに換算されるから、無理は禁物。


 2回戦でブレイクオーバーした、となると、3人エントリーの場合は交代役がいないのだけど。














 「なお、バトル中のメンバーの交代は禁止です。

  ポ○モンのダブルバトルみたいなノリで考えている人は、今すぐその常識を捨て去りなさい。

  万が一、途中で勝手に後退した場合は、強制的に失格にしますので」












 もしくはプロレスのタッグマッチとかみたいな?


 アレはリング際でのタッチが必要とはいえ、交代を認めているから。


 でも、アーツバトル連盟はそんなに甘くない。でないと、初めから1対1とか定めている理由が分からなくなるし。


 一度売ったケンカは、最後まで貫きやがれってことね。


 我らが総帥もいい趣味していらっしゃるわ。












 「最後に換装装備を持つ方々に対するルールですが、

  装備の換装自体はバトル中のいつでもOKということにします。

  換装中もバトルは止まりませんので、手早い換装と屈強な時間稼ぎ役の存在が重要となるでしょう。

  ただし、1対1のバトルとなる1回戦については、特別に換装中の一切の攻撃行動を行わないものとします。

  これも総合的な戦闘力の評価を下す一環であるとお考えください」












 具体的にいうと、割といろんな選手が使っているCPユニットの持ち替えや、


 リティ選手によるメダルチェンジとかね。


 実際の戦闘中のイメージとしては、某ライガーが某CASアーマーを換装する時のことを連想してもらえばいいわ。











 「では、ここでおさえてもらいたい事項をまとめておきましょう。

  メンバーが4人以上のチームは、全員最低でも1回は戦うようにすること。

  登録していないアイテムの使用や、非殺傷設定の解除は禁止。

  一度ブレイクオーバーしても、チームが勝ち進めば続投も可能。

  先に相手チームを全滅させた方が勝利、バトル中のメンバー交代は禁止。

  バトル中の装備換装は自由、ただし1回戦以外は換装中の攻撃も有効。


  何か質問がございましたら、遠慮なく我々審判団やジャッジマンに相談してくださいね」










 要点をかいつまんで言えば、今みたいな感じ。


 一応、攻撃の結果による負傷は仕方ないとしているけど、守ってほしいルールって意外とあるわよ?


 自己責任での参戦とはいえ、命を預かる側面だってあるのだから。


 第一ね、お茶の間にグロテスクな映像流すハメになったら大変なのよ、いろいろと。












 「トーナメントは全部で5つのブロックに分けて行います。

  各ブロックに8チームが割り振られ、ブロックごとの代表決定戦を制した5チームが決勝戦へ進出することになります。

  決勝戦ことファイナルバトルの具体的なルールは、代表が出そろった後の本戦4日目に発表します」













 リリエンのその言葉と共にガレットが投影したのは、先ほどできたばかりのトーナメント表。


 キーコードを揃えて、予選のゴール地点だったこの闘技場に辿り着いた40チームが網羅できる。


 A〜Eの5つのブロックに、均等に割り振られることになった。


 ちなみにこのトーナメント表、実はまだチームの振り分けがされていない状態。












 「みなさんもお気づきでしょうが、トーナメント表はまだ完成しておりません。

  この場でパレサさんがくじ引きで引き当てたチームから順に、対戦枠が決まっていきます。

  では、まずはAブロックで競い合う8チーム分を引いてください」










 これは些細なサプライズ。臨場感というか緊張感というか、そういうのをちょっと煽ってみたかった。


 リリエンに促されて台の上に上がり、40チーム全ての名前が記載されたプレートが入ったボックスとご対面。


 上面の真ん中にある黒い穴に手を入れて、適当に1枚を掴む。


 それを引っ張り出して、記載されていた名前を読み上げる。









 「まず第1枠は、スティア選手」










 チーム名はないの。だって彼は、何を考えたか単独エントリーだから。


 よほど実力に自信があるのだろうけど……。とにかく、相手となる2枚目。










 「第2枠は、チーム・ハイウェイズ」









 まぁそんな感じであと6枚も引いた結果……。










 「Aブロックのチームが出揃いました。1回戦の組み合わせを発表します。

  第1試合は、スティア選手対チーム・ハイウェイズ。

  第2試合は、チーム・メモリーズ対チーム・コンバッターズ。

  第3試合は、チーム・ファルケンズ対チーム・ウォリアーズ。

  第4試合は、チーム・クルセイダーズ対チーム・AMDK。

  ただいまより20分後から1回戦を開始しますので、該当チームのメンバーはスタンバイしてください」










 リリエンが結果を読み上げるごとに、トーナメント表の枠に該当チームのアイコンが追加されていく。


 B以降については、また後で順次引いて決めていくことになっている。


 名前が出ないからって変に怠けたチームには、敗北っていうオシオキが待っているわよ?






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 《相手はGBH戦役からの手練れだが、問題は……なさそうだな》


 「当然だ。平成時代の傭兵スティア様を舐めるなよ」









 トップバッターに任命されたとあって、実は少しだけ緊張していたりする。


 それに、相手のチーム・ハイウェイズの3人が、相当な手練れであることも承知の上だ。


 体格差のある相手との戦い方にも慣れているだろうし、そうなればこっちとしてもお情けはなしだ。











 「まぁじっくり見てろよ、クロノ提督。俺が……」













 「"デバイス界のワンマンズ・アーミー"と恐れられるこの俺が、どれほどのものかをな」






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 対戦枠決定の為の抽選会も兼ねた本戦説明会から少し間を置いた、午前9時ごろ。


 とりあえずAブロックで戦うことはないとわかったので、観客席で他の相手のお手並み拝見としゃれ込むことにした。


 八神はやてから「なるべくチーム単位で動いた方が」と提案されたので、恭文やリティも隣にいる。


 ちょうど、オレの右隣に恭文が、左隣にリティがいる状態だ。


 ……しかし、今更だが、ヒューマンフォームでいることにだいぶ慣れてきたな…。まぁ、便利だしな。










 「さぁ、みなさん!お待たせいたしました!

  "アレス"本戦のトーナメント第1戦が、間もなくスタートです!

  ちなみに、ここからの実況はこの"響天声"ことヒビキが、解説はリリエンさんがお送りいたします!」


 「どうも〜」











 なんだ、解説枠はパレサじゃないのか。


 まぁ、他にツッコむところはあまりない。せいぜい、実況のやり過ぎでヒビキの喉が枯れたりしないのか、とか。


 トラルーいわく、精霊だろうが精神生命体だろうが、五感だってあるし喉が渇いたりもするらしいからな。











 「Aブロック第1試合、赤コーナー!

  なんと単身でエントリーし、立ち塞がる敵全てを一人で粉砕して勝ち上がった、スティア選手だぁ!!」









 そのセリフと共に、赤い縁取りがなされたゲートから、スティアと呼ばれた男が姿を現す。


 赤いショートヘアーにコバルトグリーンの瞳、白を基調とした赤い縁取りのジャケットに半袖半裾の黒いインナー。


 両腰に箱状のホルスターらしきものを備えている。


 そして武装として目を引くのは、左腕に装備している純白の盾だ。武器は内臓しているのか、それとも体術主体か…。










 「青コーナー!こちらは3人エントリー!

  絶妙な連係と高い機動力を活用し、ダークバトルも生き残ったチーム・ハイウェイズ!

  ここではシグナルランサー選手が代表のようだ!」










 まぁ、2回戦が2対2とあれば、ガスケットとアームバレットを残すのが妥当か。


 シグナルランサーなら、連携でも1対1でも十分な戦果が期待できる。


 気合十分とばかりに少し槍を振り回しながら、青い縁取りがされたゲートから姿を見せる。










 「よかったー、これでガスケットなりアームバレットなりが出てきたら、その時点でフラグだし」


 「恭文がさりげなくヒドい」











 両サイドの漫才は無視。












 「スティア、ヴァーサス、チーム・ハイウェイズ。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」










 ジャッジマンの試合開始のコール。










 「そんじゃあ、クロノ提督お墨付きのお相手の実力、しっかり味わうとするか。

  キルスティル――起動!!メタルシャフトでお相手するぜ!」











 それと同時にスティアの持つ盾に変化が起こる。


 継ぎ目に沿って一瞬光ったかと思うと、表面が上下にスライドすると同時に内側から4枚のフィンが出現。


 フィンの内側は赤く輝いていて、盾の中心部が「X」を描くような形状に変貌した。


 更に飛び出してきたのは、基部と思しき中心部が赤い、銀色の棍。アレがメタルシャフトか。










 「開始早々に、槍と棍のぶつけ合いぃ!

  体格差などものともせず、両者のパワーは拮抗している!」











 実況の声が響く中、スティアもシグナルランサーもそれぞれの武器をぶつけ合う。


 スティアの方も、自分より大柄な相手との戦い方を心得ているようだ。


 パワーでは負けていないようだが、体格差を利用した体重移動を警戒していることが見て取れる。


 うまく武器の軌道を曲げたり衝撃をいなしたりして、致命傷を避けている。


 対するシグナルランサーも、決して反撃の隙を与えまいと攻撃の手を緩めない。


 突きからの振り下ろしや薙ぎ払い、切り上げなどをうまく使っている。










 「二人とも、これはどう見る?」


 「うーん、実力は互角っぽいけど、スティアの足取りが妙に軽いように見えるんだよね」


 「やはり、それが気がかりか」


 「余力を残してる…とか?」










 リティからの質問に、恭文とオレは同じ結論を出す。


 シグナルランサーの攻撃も、決して甘いものではないし、一歩間違えば一撃くらった途端に連撃に持ち込まれる。


 そうなれば、キルスティルとかいうあの盾がよほど頑丈でもない限りひとたまりもないだろう。


 だが、それを考えても、スティアのフットワークが妙に軽いんだ。余裕を見せているようにも見えないが…。













 「さすがはクロノ提督お墨付き、見事な槍裁きだ。

  正直、アビリメモリで細工してなかったら危なすぎるレベルだ」


 「何?」


 「悪いな、フットワークを軽くする為にアビリメモリ使ってるんだよ、既に。

  さて、そろそろこっちの番なワケだが……耐えきれるか?コイツに!」


 <ルナ!>


 <メタル!!>












 シグナルランサーの槍をかわしながらスティアが取り出したのは、USB端末状のアイテム。報告によればアビリメモリといったか。


 黄色と銀色。それらを上に放り出すと、それぞれがまるで操られたかのようにスティアの元へ飛んでいく。


 狙いたがわず黄色のアビリメモリがキルスティルのフィンの1枚に、銀色のアビリメモリがメタルシャフトのスロットに飛び込んでいく。











 <ルナ!マキシマムドライヴ!>


 <メタル!!マキシマムドライヴ!>


 《MEMORY-LOAD!SKILL STANDBY!!》



 メタルイリュージョンッ!!」










 装填されると自動的にそう発声する仕組みなのか、2本のメモリそれぞれがアナウンスを発し、


 突然メタルシャフトの両端が柔軟性を得て、ムチのようにしなり始めた。


 スティアはそのまま振り回して連続打撃。シグナルランサーをはねのけ、更に振り回して空中に円を描く。


 それはエネルギーリングとなり、6つのエネルギーリングがスティアの叫びを引き金にしてシグナルランサーへ殺到。


 変則的な軌道を描いたこともあってさばききれずに全弾直撃をもらい、大爆発が起きた。











 「バトル、オールオーバー。バトル、オールオーバー。

  ウィナー、スティア」


 「……まぁ、運がなかっただけだと思っときな」






 「なんて威力だよ……シグナルランサーだってタフだってのに」


 「それに、遠心力でかなり振り回されそうなのに、動きが全くブレてなかった」


 「おそらく、かなり使い込んでいるんだろうな」









 シグナルランサーは耐えきれずにブレイクオーバー。決め台詞まで残してくれたスティアの勝利が確定した。


 恭文も驚くあの威力に、リティが指摘したコントロール。なんとしても至近距離での直撃だけは避けたいところだな…。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 《……そっか、あの子はクロノ君直属のエージェントなんか》


 「厳密には、エージェントであると同時に試作装備のテスターでもあるがな」










 はやてからの通信で、僕はそう答えた。


 さすがにシグナルランサー相手に最後は圧勝してしまったスティアに、興味のようなものがわいたのだろう。


 真っ直ぐにこちらに聞きに来たのは、当然ながらスティアが僕の名前を出していたからだ。


 まぁ、提督にもなればただでさえ名前が知れるところもある。別に大した影響はない…と信じたい。


 彼は忍者でもないのに隠密行動も得意だしな…。












 《あの子の持っとるアビリメモリなんやけど…》


 「アレはプレダコンズのリア・ファルたちから偶然にも奪取できたものらしい。

  それで解析してみれば、現行のデバイス技術にも適応可能であることが分かった」


 《せやから、本局の技術部がアビリメモリ対応型のデバイスを作った。

  それが、あのキルスティル》


 「正解だ」










 加えてキルスティルは、アビリメモリ対応型デバイスの実験機でもある。


 複数のメモリを同時に使用した際に、どれほどのパワーが出て、どこまで安定した運用ができるか。それが命題だ。


 もっとも、デバイス自体は耐えられても使用者が耐えきれないという問題が生じた為、


 メモリの最大使用数を1個に減らし、代わりに浮いた処理容量を光学迷彩機能に回した2号機が作られた。


 リートが使っているラスティエルがそれだ。











 《じゃあ、スティアとリートのデバイスが似たり寄ったりな姿をしとるんも、

  ラスティエルだっけか、アレがそのメモリ対応型デバイスの2号機やからってことやね。

  でも、なんで局員でも協力者でもないリートが持っとるん?》


 「ラスティエルが作られた際、当然ながらそちらにも使用適正を持つ者がいるか調べる必要があった。

  ロールアウト当時のスティアはキルスティルで手一杯だったから、他にテスターを探すことになったのだが、

  その時、名乗り出たのがリートだったそうだ。調べてみたら、当時の彼は嘱託魔導師だった」


 《……ということは、嘱託魔導師だった頃にラスティエルのテスターを引き受けて、見事に使いこなした。

  けど、その後に何かしらの事情で管理局を離れて、巡り巡ってプレダコンズに?》


 「そういうことになる」










 ただ、ラスティエルを持ったまま離れていったのは、当時のリートの上官の不手際も原因だった。


 元々リートの嘱託魔導師としての立場には期限があって、テスターを引き受けた頃には任期満了までわずか1か月しかなかった。


 その上官は無限書庫の中堅スタッフでもあったから、あまりにも多忙だった。……心が痛む。


 多忙すぎたせいか任期満了までの期日のことを完全に忘れていたらしく、いざ任期満了の話が出た時に何のことかわからなかったそうだ。


 もちろんリート自身も直談判してわからせたのだが、嘱託とはいえ組織に属する身、ましてや結構な働きをしてくれた。


 だから当然ながら退職金なり報奨金なり用意してやらなければならないのだが、その為の手続きが全くできていなかった。上官から人事部へ届いていなかったんだ。


 更にリート自身がラスティエルに愛着を持ち始めていたのもあって、彼は上官にラスティエルを無条件で受領させるように要求。


 負い目があるせいで上官に選択肢はなく、要求はそのまま人事部まで通ったそうだ。










 《……要するに、ラスティエルは退職金代わりに持ってかれたんか》


 「現金の要求が本当に来なかったから、おそらくそうだろう」











 状況的に、退職金ともいえるが手切れ金ともいえるな。愛想が尽きたと。


 結局、その原因になった上官は懲戒処分を受けて、減俸処分の上に無限書庫の下級スタッフに落ちぶれたと聞いている。


 デチューン仕様とはいえ実験機の側面が抜けていない虎の子を、無料で持ち出されてしまったワケだからな。


 情報漏洩などのリスクを考えれば、責任がかなり重いものであることは容易に想像がつくと思う。


 特に会社員になったことがある者ならば、常識中の常識だろう。











 《プレダコンズに流れ着いたのが偶然か運命のいたずらか…よぅわからんね》


 「皮肉にも、アビリメモリ対応型という点が最大限に活かせるスポンサーまでいるからな」










 リア・ファル、メディア、アムリタの、通称三元帥といわれる連中だ。チームとしてはチーム・メモリーズか。


 彼らも自身のアビリメモリを保有しているばかりか、ユニゾンデバイス付きで製造できることもわかった。


 こなた達カイザーズが一度ひどい目に遭わされたこともある。警戒しないワケにはいかない。










 《話をスティアに戻すけど、六課に協力させるっちゅうんは難しいんか?

  アビリメモリにある程度でも精通しているなら、対策も練れるかも》


 「……スティア本人が気乗りしてくれれば、送り込んでやりたいんだがな」


 《気が向かない?》


 「上官命令まで聞かないほどではないが、彼もなかなかに気まぐれでな。

  どこかの部隊に常駐するスタイルはとらず、独自調査という形で動いている。だからこそのエージェントなのだが」


 《あー、そっか。どっちかというと恭文に近いんかな。あの子も嘱託って立場で落ち着いて、好き勝手にやっとるし》


 「もっといえば特派員みたいなものだ。あくまでも拠点としてクラウディアに戻ってくるだけだ。

  普段は独自行動をとって、指名手配犯の捜索・追跡や、試作装備のテストを引き受けている」


 《クロノ君直属ってことを考えると、正社員扱いかつ特派員かぁ。

  随分と待遇えぇやん。もちろん、管理局が人手不足ってことを考えても、やで?》










 正直、僕も同じことを考えていたりはする。言っては何だが、随分と待遇がいい。


 もちろん、それに見合った仕事はしてくれるし、緊急招集にも応じてくれる。


 普段は使わないような装備品のテストも進んで引き受けてくれる。


 妥当な扱いともとれるが、やはりキルスティルの実質的なマスターであることもあるだろう。


 キルスティルのようなデバイスの存在は、管理局にしてみればまだまだ貴重なものだ。量産もきかないしな。










 《量産できへんの?》


 「残念ながら、2本以上のメモリを使うシステムにしようとすると、どうしてもコストが高騰してしまう。

  1本分のエネルギーの制御回路を作るだけでもかなりのコストだと聞く。

  あとは、メモリのパワーに耐えられるだけの強度と耐性を持った素材が、非常に少ないんだ」


 《それこそ、ワンオフ機にしか使えへんほどに希少な?》











 ある意味、キルスティルを1号機とするメモリ対応型デバイスの最大の課題は、素材の確保だ。


 レアメタルもそうだが、メモリのパワーに耐えるには、単純な強度だけでなく耐熱性なども必要になり、


 それらの条件を全て満たせる素材というのは非常に希少なもの。


 だから、いくら設備や資金があっても、素材がないのだから作れない。当然、量産なんて不可能だ。






 ……ましてや、最大4本同時に扱えるキルスティルともなれば、必要な素材の量も段違いだ。量産どころか複製すら不可能に近い。


 ただし、この部分は黙っておく。スティアに睨まれると軽く命の危機だからな。











 《カートリッジシステムの負担も相当なモンやけど…》


 「魔力制御の基礎はインテリジェントデバイスもパワードデバイスも、アームドデバイスだって変わらない。

  問題なのは急激な解放による衝撃や反動であって、それはレアメタルでなくても解消できた。

  だが、アビリメモリの場合、そもそもエネルギーは魔力じゃない。必要な耐性も違ってきてしまうんだ」


 《エネルギーによる加熱の危険性もあるから、さっきの素材の話で耐熱性とかも出たんやね。

  でもそうなると、管理局にとってはちと専門外なような…》












 まぁ、確かにある意味で専門外だ。普通に作れば、定義でいうと質量兵器になってしまうからな。


 キルスティルとラスティエルは、解放したエネルギーを魔力に変換してから放つシステムを組み込んでいるから、


 質量兵器の定義からは外れることになった。ただし、その変換システムは敢えて無効にすることもできる。












 《……それって、瘴魔獣とかに対する警戒?》


 「だろうな。しかも、こちらで考えるよりも先にスティアが提案してきた。

  『魔力だけで戦場を生き残れると思ったら大間違いだ』とな」











 トラルーとも知り合いらしいので後で彼に聞いてみたところ、彼も生粋のソルジャーらしい。


 いわば、魔力を使わない戦場での戦いも続けてきた歴戦の猛者だ。


 今にして思えば、その身で培ってきた経験によって絶対的な説得力を持った提案だったと思う。


 そして、法律に抵触することも覚悟でその提案を採用したのは大正解だった、とも。







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 スティアのヤツがド派手に決めてくれた後は割とすんなりって感じで試合は進み、


 Aブロック1回戦は意外とあっという間に終了。


 ブロックの代表が決まってから次のブロックへ移るらしく、そのままAブロック2回戦へ。










 「……姐さん、ポップコーン食べ過ぎじゃないっすか?」


 「ふぇ? ふぉんあふぉふぉふぁいおそんなことないよ?」


 「食べ過ぎっす。ていうか頬張り過ぎっすよ。ハムスターじゃないんすから」










 イテンはやはりお気楽です。マキトが呆れてる。


 それで、定番なツッコミだけど、食べながら話すのは行儀悪いよ?











 「せめて兄貴みたいに、完食してから話すべきっすよ」


 「それはアレか、僕も食べ過ぎだと言いたいのか」


 「だってそのイカ焼き、既に5本目じゃないすか…」









 いやー、なんかやみつきになっちゃってね。イカ。










 「揃いに揃ってお気楽なモンよね、アンタら…」


 「そうかなー?別にアレでもいいと思うけど?ティアはお堅いなー」


 「同罪なアンタにだけは言われたくない」


 「まぁまぁ、きっと精神的な余裕の表れだよ」











 近くにいるのは、チーム・スターズ。ティアナ、スバル、なのはだね。


 精神的な余裕の表れか。魔王のくせにいいとこ突くじゃん。


 実際、余裕だけど。相手が分からないんじゃ、緊張のしようもないし。いつも通りに過ごすだけさ。


 緊張感持つのもいいけど、緊張しすぎて鈍ったりしたらアウトだし。それならいっそリラックスしてた方がいい。お気楽なくらいに。













 「さぁ、Aブロック2回戦の第1試合!

  赤コーナーは、アビリメモリのパワーを活かして見事に勝ち上がったスティア選手!

  青コーナーからは、こちらもアビリメモリを活用して勝利をもぎ取ったチーム・メモリーズのメディア選手とアムリタ選手!

  これは同一テクノロジー同士の対決となったぁ!」










 ヒビキの声が響く中、それぞれのゲートからスティア、メディア、アムリタがバトルフィールドへ上がる。


 アビリメモリ使い同士の戦い。これは単純に、メモリの使い方が勝敗を分けるね。


 スティアが2対1程度のハンディで後れを取るワケがないし。











 「本当にのんきに観戦してるわね…。警戒とかないワケ?」


 「警戒ぐらいしてるさ…。どうせ、勝ち上がればアイツとも戦うだろうし」


 「え、トラルー君的にはスティアが勝ち上がること前提?」


 「まぁねー。だって、アイツの実力はよぉーく知ってるし。一時期は組んでたこともあるからね」












 ティアナからのツッコミに対する答えで、なんか魔王が目を見開いて驚いた顔してるけど、どうってことはない。


 ていうかね、君らって僕から見れば「井の中のかわず」状態なことこの上ないんだけど。


 どんだけ管理外世界の猛者に対する精神的な耐性がないんだよ。











 「いや、そうじゃなくて、なんでクロノ君のエージェントな子と組んでたのかって」


 「あ、そっち?簡単な話だ。古代ベルカ戦争のあともしばらくは戦場暮らしでさ。

  『肉よこせやオラァーッ!』ってたまたま紛れ込んだ戦場で出会って、理念の一致で組んでたってだけ」


 「そ、そうなんだ…」


 「戦場に紛れ込む動機が…なんていうか…」


 「手に職がないんだもの、戦場でいろいろ拾って売り払って生計を立てるのが手っ取り早い。

  拾ってく過程で腹も満たせるし。獲物の肉で」













 スターズの3人から一斉に血の気が引いたのが分かる。


 まぁ、所詮君ら程度の実戦経験では想像しただけでグロかろう。というより、そこまで想像できただけ大したもんだ。


 とどのつまり、そこらへんの兵士とか惨殺して、所持品は売り払ってお金に、屍は肉をおいしく焼いて腹の肥やしにしていたワケだ。


 実質上、得るものを得るのに必要なのは己の体力のみ。そこそこ金がたまったらいい宿とって遊んで…って暮らしをしていた。


 運送会社オービットのスタッフという職をつけたのは、実は今から2年前と比較的最近だったりする。












 「さぁ、アビリメモリの保有者同士という因縁の戦い!

  いよいよゴングです!」


 「チーム・スティア、ヴァーサス、チーム・メモリーズ。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」













 試合開始のコールと同時に、まず動いたのはアムリタ。


 ……今気づいたけど、アムリタのアビリシャフトとスティアのメタルシャフトは形状が似ている。先端部が違うくらいだ。


 破壊力では上回っていそうなアムリタの方が仕掛けるけど、キルスティルを起動したスティアは真っ向から防御。












 「相変わらず、お前ら自身だけじゃ二流だよな。少なくとも、オレぐらいのヤツを相手にするにはな!」












 次の瞬間には、回り込んでいたメディアが吹っ飛ばされていた。


 カラクリはわかってる。単に、キルスティルからトリガーマグナムを取り出して、後ろに撃っただけ。


 当たらなくても牽制にはなること間違いなしな軌道。ていうよりは、回り込む位置を読んでいたというべきだ。


 スティアには元々、一歩二歩先を読む力がある。


 攻撃の軌道はもちろん、その次に残りの敵がどう動いてくるか、どのようなコースで攻撃してくるか。












 「ゴチャゴチャと武器を持ってエラそうに…!」


 「今の場合、アムリタの攻撃を受け流して同士討ちさせることだってできたんだ。

  攻め方の時点で二流どまりなんだよ」


 「あ゛〜っ!!いっつも腹が立つ言い方しやがる!」


 「だったら、目にもの見せてやるわ!」




 <インビジブル・マキシマムドライブ>




 「アビリメモリを使ったメディア選手が消えたぁ!!」


 「今使った"インビジブル"は、一定時間だけ使用者を透明にしてしまうメモリですね。

  公式試合でもこれを活かした奇襲攻撃で高い勝率を叩き出しています」












 うめくメディアに挑発的なスティア。で、アムリタまで腹を立てた。


 まぁ、所詮は二流ってことでしょ。


 ヒビキの実況とリリエンの解説が聞こえる中、スティアは迎撃にかかる。











 「姿を消したからって有頂天になってどーするよ」


 <ルナ!マキシマムドライヴ!>


 <トリガー!!マキシマムドライヴ!>


 《MEMORY-LOAD!SKILL STANDBY!!》



 トリガーフルバースト!!」













 キルスティルにルナ、トリガーマグナムにトリガーのアビリメモリを装填。


 無数に分裂する炸裂式の誘導弾を放つ"トリガーフルバースト"の組み合わせだ。


 メモリを装填して変形させたトリガーマグナムの銃口を上に向けて、頭上に発射。


 直後に散弾し、スティアの周囲を一気に爆撃する。












 <ヒート!マキシマムドライヴ!>


 <トリガー!マキシマムドライヴ!>


 《MEMORY-LOAD!SKILL STANDBY!!》



 トリガーエクスプロージョン!!」












 爆撃により煙が上がり、煙幕になる。


 すぐさまキルスティルの別なクリスタルフィンにヒートのメモリを装填。


 トリガーマグナムも銃身を「へ」の字状の通常形態に変形させ、トリガーのメモリを装填しなおす。


 ゲロビ級の火炎放射である"トリガーエクスプロージョン"の組み合わせ。


 今度は照準を前方に向けて、発射と同時にコマのように回転。


 なるほど、フルバーストで足止めして、エクスプロージョンで薙ぎ払ってしまおうってワケか。


 とりあえず、アムリタは直撃確定。爆煙が生じてからずっと止まってたし。













 「ま、二流相手じゃこんなもんだろ」


 「バトル、オールオーバー。バトル、オールオーバー。

  ウィナー、スティア」


 「メモリ技の連発により、あっという間にチーム・メモリーズの二人がブレイクオーバー!

  強い!この男はどこまで強いのかぁ!今後も目が離せないっ!!」















 どうやらメディアも足止めくらったとこで直撃をもらったらしい。


 透明化していたが故に明確なダメージ描写もないままブレイクオーバーしていた。


 そーいえば、ヒートのメモリを使う技って攻撃力重視だったっけ。












 「マキシマムドライヴ2連発……しかも技と技の間のタイムラグがほとんどない。

  それこそ、メモリを装填する時間だけだし、やりようによっては一瞬でできるかも…」


 「最初の散弾の役割は、足止めと目くらまし、同時にメモリの再装填の時間を確保することか。

  なかなか厄介な戦術を使ってくるな」










 恭文とマスターコンボイが冷静に分析中。


 まぁ、スティアにとっての最大戦力はメタルシャフトやトリガーマグナムといったアビリメモリ対応型の武器だもの。


 キルスティルの方にはアタックファンクションもあるっていうけど、そこは僕も未確認。


 メモリの装填っていうタイムラグはあるけど、それを補い余りある戦闘技術はまさに驚異。


 連携組んでた時も、スティアを相手にマトモに戦えたヤツはあまりいなかった気がする。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 ……ちょっとしたインフレやな。


 いや、こなた達の場合はリートのステルス効果による奇襲があったっちゅうんを差し引いてもよ?


 透明化した相手を地形ごと吹っ飛ばして、更にゲロビで焼き払うって。


 どんだけエネルギーすごいんよアビリメモリ。そりゃあ、武装側の耐久性も特級でないとアカンわ。










 「我々のオーメダルトレイサーについては、もはやオーバーテクノロジー扱いだしな」


 「それはコアメダル自体が古代の遺物だからですよ。きっとロストロギア指定受けるです」


 「少し面倒だな。下手すると勝手な因縁で付け狙われる。

  特に地上本部は躍起になって嗅ぎまわるだろうよ。そうなったらこちらとしては死なない程度に返り討ちにするしかない」


 「過激すぎですよ。余計に躍起になるですよ?」


 「だが、こちらからすれば勝手な理屈で追い回されるんだ。寧ろ正当防衛だと思うが?」













 なんかレクセがリインの発言にすごく物騒なコメント返しとる。


 けどなぁ、公務執行妨害ってゆうたって、レクセたちは管理外世界の出身である上に管理局に敵対してない。


 それなのに「ロストロギアだからよこせ」なんて理由だけで襲おうものなら、それこそ全面戦争に発展する可能性すらある。


 万が一にもそうなったとして、現状の局員でどれだけの人が彼らに対抗できる?


 特にリティがコンボ使って、更にプトティラで暴走なんかされたら手におえへんで?


 更に更に、あの子らはトラルーの友達や。トラルーも絶対黙ってへん。そうなったら管理局も終わりや。







 ……いやな、トラルーのリミッターの話、前にスターから聞いてるんよ。アレでもかなりのリミッターがかかってるって。


 現状で六課の前線メンバー……隊長陣も含めて終始圧倒してるんは、あくまでもリミットが緩い機動力と小手先でリードするから。


 でも、リミッターを解除すると、攻撃力や防御力がチートと化す。あのジュンイチさんまでチートいうんやから間違いない。


 マッハたちの攻防戦で見せた暴れん坊将軍さながらの大暴れは、リミッターを解除した結果の一部なんや。


 リミッターは2つ。1つは、パートナーであるバグジェネラル。エヴォリューションすることで解除できる仕組み。


 もう1つは、あの子がいつも着ている上着の「リミットベスト」や。特にこっちがリミッター効果が強い。


 このリミッターを2つとも解除したら、どうなるか……それを、一度ジュンイチさんが興味本位で実験したことがある。


 オマケにトラウマえぐって挑発っていうオマケ付きでや。そうしたら、どうなったと思う?







 あのジュンイチさんが、10分と経たない内に20回は殺されとったわ。







 ウソやと思うやろ?でも、そうでもないんよ。チートにもほどがあるで、アレ。










 「トラルーという存在は、いわば破壊神ユニクロンがスケールだけ下げたようなものだ。

  絶大すぎる破壊力は元より、ユニクロンでは実現不可能である超高速機動も、プライマスに匹敵する力を得てこそだ」


 「暴発ってことは、生み出す時の調整が全く効いてないから、あんなチートになったですか?」


 「典型的すぎる例だがな。それに、圧倒的な力も、それを自分の意思でねじ伏せられるものがあって初めて圧倒的となる。

  ベルカ戦争当時はまだ『べらぼうに強い』程度のレベルだったんだがな」


 「制御しきれてないから、必然的に出力も下がってたってことやね」


 「そうだ」










 あの子のリミッター解除によるチート技は、大きく分けて3つ。


 どれも名前に"トランス"ってつくらしいんやけど、さすがに詳細までは教えてくれへんかった。まぁ、当然やけど…。


 あの子が敵になったりしたら、かるーく世界の1つや2つは滅亡するで。きっと。


 まぁアレやな、リミッター解除でとにかく攻撃力と防御力が破滅的になるっちゅうんは火を見るより明らかやった。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 本戦が始まったようだな。


 現在はAブロックの代表決定戦直前、といったところか。


 スティアが随分とハイペースで勝ち進んでいるが、疲弊している様子は特に見られない。


 これで私と同様に特殊モード持ちなら、ますます厄介だな。









 《さぁさぁ、みなさん!Aブロック代表が、遂に決まる!

  代表決定戦が、間もなくスタートです!!》










 なお、今の実況はあの角馬王将に代わっていたりする。代表決定戦とファイナルバトルは彼が実況するそうだ。


 実況の声が響く中、赤いゲートからスティアが、青いゲートからケルベロス、アウゲイアース、ディオメデスが入場。


 代表決定戦の舞台は、崩壊した神殿といったところか。


 規則的に並んだ西洋風の柱は、障害物として利用できそうだ。











 《赤コーナーからは、単身エントリーでここまで勝ち上がった猛者!スティア選手!!

  青コーナーからは、アビリメモリを利用した連係プレーで勝ち進んだチーム・AMDKから、

  ケルベロス選手、アウゲイアース選手、ディオメデス選手だ!!》


 《2回戦第1試合のように、アビリメモリ同士の戦いになりそうですね。

  しかもここでは3対1、スティア選手のフットワークも重要になるでしょう》











 実況の角馬王将による紹介と、リリエンによる直前解説。本戦からはお馴染みになった流れだ。


 ケルベロスたちのチームとしての戦いぶりだが、まずケルベロスは司令塔として最後まで残してきた。


 1回戦は、溶解液「ケミカルデロドン」を持つアウゲイアースが、高い攻撃力を活かして快勝。


 2回戦は、破壊力に特化しているミノスを基軸にして、高い機動性をウリにしているディオメデスがフォローすることで勝利。


 そして、この3回戦ではケルベロスも出場し、司令塔を得たというワケだ。


 ミノスを控えさせたのは、おそらく2回戦の連携をスティアに警戒されていると思ったからだろう。











 「なんか、ちょっと楽しそうにしてるね?アキレス・ディード」


 《まぁ、な。私とて、その根源はいわば"自ら高みを目指すデバイス"なワケだからな。

  戦況を見るというのは、いい勉強になる》











 隣でモニターを眺めているミスリルからの指摘には、そう答えておく。


 別に、その言葉に偽りがあるワケではない。本来であれば、私もフリーで出場し、少しは暴れてみたかったほどだ。


 しかし、管理局の愚か者どもがミスリルを付け狙う以上、今大会でそれを楽しむことはできない。


 予選で捕獲されたというバルケル・バロードのような者さえいなければ……いや、管理局が地球に目をつけさえしなければ……。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 「チーム・スティア、ヴァーサス、チーム・AMDK。

  バトルモード・ゼネラル1001、レディー…!」






 「獄番霊ごくばんれいのケルベロス、解放する」


 濁厩霊だくうまやれいのアウゲイアース、ゆくぞ!」


 怪馬霊かいばれいのディオメデス、駆け抜けようか!」






 「ファイッ!!」










 ジャッジマンによる威勢のいいコールと共に、Aブロックの代表を賭けた戦いが始まった。


 まず仕掛けたのはチーム・AMDK。


 ディオメデスを先頭にして、間にアウゲイアース、その後ろにケルベロスが並んで……











 「これは!アーツバトル連盟公認のフォーメーションの1つ、ジェットストリームアタックだぁ!!」










 やっぱり。ていうか、連盟公認なのかアレは。もはや伝説級か。










 「さぁ、勝負といこう!」


 「さっさとかかってきな!」









 先頭のディオメデスは、ロングソード並みに長いレイピア「スラストゥルスピア」をかざして、フェンシングのような動きでラッシュをかける。


 対するスティアは、その一太刀一太刀を冷静にキルスティルで防御。


 しかし、既に右手はその裏側に潜み……










 「先制ダメージ、いただくぞ!」


 「簡単にくれてやるワケないだろが!」










 スティアの頭上をとる形でアウゲイアースがケミカルデロドンを放つが、


 素早く取り出したトリガーマグナムで全て吹き飛ばす。












 「後ろに一人ぐらいくるって、簡単に分かるぜ!?」


 「っ!?」











 そのまま休むことなく後ろを振り向き、


 今まさに攻撃を加えようとしたケルベロスに足元を狙って威嚇射撃。


 ケルベロスは後退、ディオメデスもキルスティルではねのける。










 《……アストラル、あの立ち回りは…》


 「1対多の状況下ではよくあることだけど、ジェットストリームの連携をすんなり崩すとはさすがだ。

  ゼノン、ジェットストリームの落とし穴に気づいたかい?」


 《一直線上に並んだ3人が相手とのすれ違いざまに攻撃を繰り出して体勢を崩す。

  だが、最初の1人が抑え込まれると、2人目、3人目の攻撃は同士討ちを避ける為にも攻撃する位置を変えなくてはならない》


 「スティアは、そこを突いたワケだ」










 ジェットストリームのフォーメーションを組んだ場合、狙うは時間差での3人一斉攻撃による撃破。


 それも、同じ方向から叩き込むことで、固い防御も突破してしまおうってワケだ。要は3人目が本命ってところかな。


 単純な攻撃力でいえばアウゲイアースが最大だし、パワーでいえばミノスの方が適任だけど、


 ケルベロスはそれでも自分が出たんだ。


 スティアを相手に、自分たちの保有戦力では一撃必殺となりうる技や武器がないからだ。




 非殺傷設定の概念にかけた場合、ケミカルデロドンと名付けた溶解液は、当たった時の体力的なダメージに変換され、


 それはかすっただけでも非常に大きなダメージになる。


 けど、それでも本戦の代表決定戦まで勝ち残るほどの猛者が相手では、必殺の一撃とはなりにくい。


 1回戦の相手でさえ、4回ほどは直撃させないと倒れないほどのタフさだった。





 んで、ジェットストリームの落とし穴っていうのは、ゼノンが言った通り。


 要するに、同士討ちを避けようとして攻撃の方向を変えることで、連係攻撃のタイムラグができてしまうんだ。


 そのタイムラグは、ディオメデスの攻撃がキルスティルで完全にガードされた時点で発生。


 トリガーマグナムを取り出す時間を与えてしまい、アウゲイアースの追撃も失敗。


 しかもこの場合、ケルベロスがスティアの背後に回ったのもマズかった。


 背後に回るまでの間に、追撃後の攻撃の準備時間まで与えてしまったんだ。


 さっきの攻防によるスティアの攻撃や反撃は全て、生じてしまった連係攻撃のタイムラグを利用したもの。











 「さぁさぁ、その程度で一息ついてんじゃねぇぞ!」


 「当然だ!足元をすくってやろう!!」






 「アウゲイアース選手、ケミカルデロドンを乱射し、スティア選手もろともステージの床を溶かし始めた!

  床を穴だらけにすることで、機動性を封じる戦法かぁ!?」


 「選手自体にはダメージ判定だけとはいえ、それ以外は溶かしてしまいますからね。

  当たれば最後、おそらくキルスティルといえどひとたまりもないでしょう」











 チーム・AMDKの初戦でも使っていた戦法。


 ケミカルデロドンを拡散させながら放つことで、床を穴だらけにして相手の転倒などを誘う手だ。


 初戦の相手はひっかかって、穴の1つに片足を突っ込んだ拍子にバランスを崩し、立て直す隙にケミカルデロドンを浴びせられてご臨終。


 しかし、相手はトラルー並みに百戦錬磨なスティアだ。ひっかかったとしても、勝負の決め手にはなりづらそうだが…。









 <キー!マキシマムドライヴ!>


 「アウゲイアース!ディオメデス!しばらく任せます!」


 「いいだろう!」


 「オーケー!」




 「ケルベロス選手、鍵状の剣と扉のような形をした盾を用意!

  更に力を溜め始めているが、何をするつもりだ!?」











 ケルベロスが持つ"キー"のメモリには、"扉を開く"力がある。もちろん、物理的な扉じゃない。端的にいえば、空間ゲートだ。


 ヤツはその力を利用することで、即席の転送ゲートを作り出すことができる。


 その媒介として用意されているのが、鍵のような形をした剣「セーフティソード」と円形の扉状の盾「ゲートシールド」。


 ただし、大人1人の平均身長と同程度の直径のゲートを作るだけでも、力を練り上げる為の時間が必要。


 他のアビリメモリと違って、装填してすぐに効果が発動するタイプじゃないんだ。












 「はぁぁぁぁ!!」


 「えぇいっ!!」




 「ディオメデス選手とアウゲイアース選手、スティア選手の逃げ道を奪いながら追い込んでいく!!

  対するスティア選手、攻撃の直撃を避けるのに手一杯か!!」











 いつの間にか飛び出したアビリシャフトを左手で持ちながら、


 ディオメデスの連続突きとアウゲイアースの溶解液の嵐を避けまくる。


 突きはメタルシャフトやキルスティルで、溶解液はトリガーマグナムの弾丸で相殺してるって感じ。


 でも、スティアの目つきが変わった。これは状況が動くぞ。












 「ケルベロスに大技控えさせて、自分たちの連係攻撃で動きを封じようとして……。

  その程度で調子に乗るんじゃねぇぇぇ!!」




 <ヒート!マキシマムドライヴ!>


 <トリガー!!マキシマムドライヴ!>


 《MEMORY-LOAD!SKILL STANDBY!!》



 トリガーエクスプロージョン!!」






 「強烈な火炎放射が、溶解液ごとアウゲイアース選手を飲み込んだぁぁ!!」









 目つきを変えて、激昂して、左手でヒートとトリガーのメモリを起動。


 ていうか、メタルシャフトはキルスティルの裏側に連結されているままだったのか。今気づいた。


 放り出され、ヒートはキルスティルのフィンの1つに、トリガーはトリガーマグナムのメモリスロットに。


 メタルシャフトの突きでディオメデスを突き飛ばし、振り向きざまに極太の火炎放射。


 一直線に放たれた業火は、まだ宙に浮いていた溶解液ごとアウゲイアースを丸焼きにして……







 「まだまだいくぞ!!」




 <サイクロン!マキシマムドライヴ!>


 <トリガー!!マキシマムドライヴ!>


 《MEMORY-LOAD!SKILL STANDBY!!》



 トリガーエアロバスター!!」




 「間髪入れず、ディオメデス選手を疾風の弾丸で撃墜ぃーっ!!」




 「次っ!!」









 反撃を試みるディオメデスは、"トリガーエアロバスター"の風の徹甲弾で封殺。


 見た目はシンプルだけど、その分1発の威力は申し分ないし、弾速が非常に早い。


 そんなの至近距離で撃たれたら、よほど上手くマトリックスでもできなきゃ避けれないわな。


 で、あっさりブレイクオーバーするディオメデスや丸焼きにされたアウゲイアースには見向きもせず、


 少し離れたところでチャージ中のケルベロスへ向かう。











 「なんという攻撃力…。ですが、こちらとて準備は整いましたよ!」



 「ここで、頭数をそろえるかのように転送反応!

  出てきたのは……ホースオルフェノクに、牛鬼ぎゅうきだぁ!!」










 展開されたゲートから姿を現したのは、ネガショッカーに在籍する強力な怪人2体。


 その名の通り、馬をモチーフとしたホースオルフェノクに、荒ぶる猛牛を彷彿とさせる魔化魍の牛鬼。


 単体スペックは非常に優秀だ。さぁ、スティアはどうする?











 「往生際が悪いんだよ……最後くらいガツンとぶつかってきやがれってんだっ!!」


 <サイクロン!マキシマムドライヴ!>


 <メタル!!マキシマムドライヴ!>


 《MEMORY-LOAD!SKILL STANDBY!!》



 メタルツイスター!!」













 トリガーマグナムをメモリが入ったまま頭上高く放り投げて、サイクロンとメタルのメモリを起動。


 素早くキルスティルのフィンの1つとメタルシャフトのメモリスロットに装填する。


 キルスティルごとメタルシャフトを暴風が包み込み、スティア自体が回転しながらシャフト部分でケルベロスら3体を殴りつける。


 1回だけじゃなく、4回連続で殴りつけ、5回目で大きくブッ飛ばした。


 落ちてきたトリガーマグナムを右手でキャッチしながら、周囲で荒れる風を吹き飛ばすように左腕を払う。


 空中で爆散する怪人2体や、飛ばされながらダメージカウンターの爆発に飲まれたケルベロスには見向きもせずに。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「Aブロックの代表は、必殺技の圧倒的な威力をフル活用して勝ち進んだ、スティア選手!

  対抗できるチームは、現れるのかぁー!?」










 ほーら、やっぱりスティアが勝ち残った。


 角馬王将のハウリングボイスが、スティアが勝ち抜けたことを告げる。


 まぁ、Aブロックの他の選手データ見た時点で、分かりきってたことだけどねー。


 やはり、優勝する為にはヤツをも倒さなければならないか…。











 《とはいえ、まずは我々がブロック代表にならなくては》


 「心配ご無用っす!なにせ、兄貴には自分と姐さんがついてるっすからね!」


 「まだまだ頑張っちゃうよ!」










 しかし、こちとら勇ましいチームメイトが二人もついている。


 ベルカ戦争当時とは違って、イグナイテッドという頼もしい相棒もいる。負ける気はない。


 たとえカナヤゴさんとスターが相手になっても突き進むだけだ。


 もちろん、ジュンイチさえ超えなきゃいけないけど。











 「さて、Bブロック及びCブロックの対戦表を作るくじ引きをもって、本日のスケジュールは終了とします。

  該当したチームは特に、明日に備えて英気を養ってくださいね」











 明日以降は、BとC、DとEといった具合に進むスケジュールらしい。


 さぁて、組み合わせはどうなってくるかな…?











 「ではパレサさん、一気にお願いします!」


 「じゃあ、Bブロックからいくわよ…」










 で、Aブロックの時と同様にくじ引きが行われた結果は……。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 Bブロック1回戦


 第1試合:チーム・アルト VS チーム・リュウジン


 第2試合:チーム・バンカー VS チーム・タクティス


 第3試合:チーム・キャノリー VS チーム・リバイバー


 第4試合:チーム・メルクリウス VS チーム・イグドラズ




 Cブロック1回戦


 第1試合:チーム・ビシディアン VS チーム・グランツ


 第2試合:チーム・ドバン VS チーム・フリゲートアルファ


 第3試合:チーム・ライトニング VS チーム・番長連


 第4試合:チーム・GLX VS チーム・GH3







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 「リティ」


 「ん?」









 くじ引きで対戦表が決まって、今日はひとまず解散。


 俺たちチーム・アルトは明日のトップバッターだから、早めに休もうと思ってた。


 さぁ布団にもぐろうかってところで、ステンスが声をかけてきた。









 「どうせ明日じゃ話す暇がないだろうからな。

  先に話しておきたいことがある」


 「話しておきたいこと?なんだよいきなり?」


 「試合中の、メダルチェンジの話だ」










 あぁ、そういえば本戦の試合中はメダルパスありなんだっけ。


 換装って扱いだから、やり方はこっちに来る前とあまり変わらないだろ。










 「違う。お前、コンボを使っても大丈夫なのか」










 そっか。そういえば、タトバ以外のコンボはしばらく使ってない。


 恐竜系のプトティラについてはレクセがつく必要があるからあまり問題ないとして…。


 他の、5系統のコンボ。いや、今はアラリアもいるから、6系統か。









 「大丈夫じゃないか?

  ステンスたちと別れた後の旅でも、たまにプトティラ使ったことあるし…。

  なんだかんだで鍛えられてると思うし」


 「ならいい。が、あまり無茶するな。組んでいて間違いなく得するお前に消えられると困る」


 「分かってるよ。消えるつもりもないし」










 ステンスがなんだかんだで俺とつるんでいるのは、アイツにとって俺と組むことが得になるから。


 まぁ、俺が戦う場合って大抵はメダル絡みだし、ネガショッカーにもヤミーがいる以上は……。


 とにかく、アイツの最大の欲望は"命を持つ"こと。それはもう、かなっているんだけど…。










 「命を持ったなら、次は生き続けることだ。欲望に終わりなんてない」


 「だよね」










 ステンスはもちろん、元々はただのメダルだった筈のルアクたちはみんな、命を持った。


 生き続けることが欲望だっていうなら、確かに終わりなんてないや。


 ある意味、生き物はみんな無限の欲望を持っているのかも。当たり前に感じていることさえ、欲望になるから。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 「さすがはやっさん、当たり前のように勝ち残ってきたな」


 「とはいえ、ユーリプテルスの暴走に巻き込まれた時にはヒヤヒヤしましたよ」


 「あー、アレはなー。で、そのユーリプテルスってのはどうしたよ?」


 《現在、ポラリスさんと一緒にシャマル先生のところです。

  メディカルチェックも必要ですし、暴走した原因がまだ残っていないか調べる必要もありますから。

  随分とおとなしいものですよ、拍子抜けするほどに》








 ヒロさんからの軽い祝福をありがたくいただく。


 けど、ユーリプテルスの騒動で内心冷や汗流してたのは事実。


 だって、荷電粒子砲なんざ叩き込まれたら、アルトでも蒸発しかねないもの。非殺傷設定がないなら、なおさら。


 アルトが言った通り、ユーリプテルスも今はおとなしいんだけど。






 そういえば。









 「ヒロさんたちは知ってます?チーム・タクティス。

  聞いてない名前なんですけど…」


 「寧ろやっさんたちが聞いてないのが不思議なんだけど…。

  ユーリプテルスの騒動で、戦国精霊が二人いただろ?」


 《ミアキさんにヤクチさんですか》


 「あぁ。あの二人、チームメイトがご臨終になってた。木端微塵でな」


 「うげ」










 僕からの問いに、サリさんがなんか呆れながら返してきた。


 そりゃあ、ミアキやヤクチについては知ってるけど…。


 ていうか木端微塵て、ヒロさん、そんな言葉を迂闊に使わないでくださいよ。怖いですから。











 《いえ、チームメイトはどちらも自立稼働型パワードデバイスの量産型でした。

  レルネ殿が流通させているものと思われます》


 《そんなことしてたんですか。あのトラルーさんゾッコンオタクは》


 《他にも、シーサーペントだのデクーだの……量産型のジャンルは結構多い。

  アストラルもそのテクノロジーを手に入れているってなると、下手すると代表決定戦が面倒になるぞ?》













 金剛の捕捉で納得。あぁ、木端微塵てそういうこと。


 アルトじゃないけど、レルネが何をしているのか非常に問いただしたい。


 それに、アメイジアが言ってたシーサーペントって、クレアさんのチームが戦ってた相手じゃないか。


 本人からの報告によると……分厚い装甲に阻まれて、レヴィアタン以外は相打ちK.O.だったらしい。


 レヴィアタンは水中で身動きできなくなって、そのまま集中砲火されたそうな。


 で、うまく装甲の隙間を突く作戦で1体は倒したハルピュイアと、イリアスとユニゾンしたクレアさんは、


 残り2体のシーサーペントを相手に激突。


 で、今言った通り、分厚い装甲のせいでうまくダメージを入れられないままライフを削られて、


 最後はアタックファンクションとイグニッション技の相打ちによって共倒れしたんだって。


 水中戦対応型なせいか、装甲強度が量産型の割には随分と高かったそうで。





 そんなの売りさばいていたのかレルネは。









 「で、話を戻すけど、そのヤクチとミアキはとあるチームと結託。

  イディアル総帥の特例で許可が出たんだと。まぁ、その辺のノリはポラリスたちと合流したパスナと同じ扱いだろ」


 「チームメイトがいないのはお互いのバトルの結果でしょうに…」


 「その点は総帥殿も理解してる。あと、その結託したチームのリーダーが申し込んだそうだ。

  『同じ戦国精霊の同士を、みすみす野放しにする手はない』ってな」


 《戦国精霊のチーム……スサノオはないですね。あとは……》









 ユーリプテルスの騒動の後、そんな動きしてたのか。


 こちとらはやてたちに報告する為にてんやわんやで、さっぱり気づかなかった。


 ヒロさんやサリさんの話で、大体の事情は見えてきた。


 しかしまぁ、ライバルになるような相手に手を差し伸べて引き込んじゃうなんて、お人よしなことで。


 ただ、チーム・スサノオについては可能性はなし。織田信長が依元だっていうなら、寧ろ潰しに行くでしょ。








 「元々のチーム名はチーム・タケミナ。リーダーは戦国精霊のミナノだ」


 《彼女は尼子家の武将・尼子晴久あまごはるひさを依元としていることが分かっています。

  所持する装備品は刀型の武宝。なんでも、一振りで疾風を巻き起こす魔性の刀という噂もあるようで》


 「名前は?」


 《……ありましたね。"旋風黒刀せんぷうこくとうシップウジン"です。

  形状はまさしく日本刀ですが、刀身は黒という珍しい型ですね》









 サリさんと金剛が説明してくれた。


 ていうか、戦国精霊はどうやってこの大会を知ったんだろう。何か裏ルートでもあるのかな。


 それはそれとして、疾風を巻き起こす黒い刀…。うわ、これは相手にすると厄介そう。


 オマケに炎や雷も操れるヤクチと射砲撃のやり手であるミアキが組んだとなると、余計に。












 「向こうも勝ち進むなら、やっさん達とぶつかるのは2回戦。連携が重要になるな」


 「となると……ちょっと考えた方がいいかも。1回戦を誰が戦うか」


 《魔力の回復ができる時間、あまりないでしょうしね…》











 ヒロさんの言葉に、真剣に悩み始める僕とアルトだった。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 《まぁそんな感じだからよ、鷲悟兄はお茶の間でゆっくり見てればいいさ》


 《鷲悟ー!やったぞー!観客席で生で観戦だー!》


 「お前らなぁ……お前らなぁ……!」










 夕飯前、ジュンイチから通信がかかってきた。


 もしやとは思ってたけど、本当にヤミたち3人が向こうに行ってるって話だった。


 ……ライをはじめ、3人が全身包帯だらけなのがすごく気になるけど。












 《んで、逆に聞きたいんだけど……誰だよそいつ》


 「申し遅れた。俺の名はゼロイクス。現在はアーツバトル連盟のパレサに雇われている身だ」


 「お前がフルパワーで暴れられないように、こっちでブイリュウを監視するんだと」


 《なんでだよ》


 「貴様が調子に乗って暴れると、本来は出るはずのない修理費ばかりが高騰するからだ」













 まぁ、管理局でもジュンイチ対策の費用が別予算で組まれてるくらいだし、


 アーツバトル連盟としても第一級警戒対象にされてんだろ…。


 ジュンイチが暴れることでどんだけの被害が出るかってのは、その辺の情報をあさればすぐに分かるだろうし…。












 《失敬な》


 「否定するな。巷では貴様の大暴れのせいで無駄に金がかかると嘆くエリアが非常に多いんだぞ」


 「そ、そうなの…?」


 「フルパワー出されなくても被害が酷いんだ、貴様だけは例外処置として出力制限付きで参加してもらう。

  それがイディアル総帥と連盟全体の意思だと知れ。文句は許さん」












 ジュンイチに少しでも口ごたえさせたら、それこそ空気が炎上するしな……相手の怒りの炎で。



























 (第32話に続く)







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 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―







 ステンス「さて、とうとう本戦トーナメントが始まったワケだが」


  リティ「スティアって人、随分と圧倒的だったなぁ」


 ステンス「2回戦3回戦とメモリ技の応酬だったワケだが…。

      今回はアイツも使う"アビリメモリ"について、もう少し説明してやる」





 ステンス「アビリメモリは、まぁ本編中でリートも言っていた通り、ガイ○メモリを元ネタにしたアイテムだ。

      本家が様々な事象の"記憶"を宿しているのに対し、アビリメモリは属性や技をシステム化したものだな。
 
      本体のボタンを押して起動させて、専用のスロットに装填するだけで、あらかじめプログラミングした技が使える。

      ただ、この専用のスロットが技術的に難題でなぁ。

      技発動時に生じる膨大なエネルギーだけじゃなく、それによる高熱などにも耐えられる必要がある。

      そんな条件を同時に満たす素材なんざ非常に貴重。アビリメモリ対応型の装備品"メモリウェポン"を持ってるヤツなんざ殆どいない。

      ただし、スロットの方を使い捨てにするっていうなら話は別だがな。

      最大の利点は、技を使った時の反動が殆どなく、エネルギーも自動的に再充填するから、1回の戦闘で何度も使えるってことだ。

      更に、メモリ同士の組み合わせでより強烈な必殺技も使えるってこともあるな」





  リティ「スティアが使ってた技とか、ネメアとケリュネイアが使ってたっていう"ほむら崩し"とか」


 ステンス「"焔崩し"を発動させる"ダブルドライヴ"については、リア・ファルたちも実験段階らしいがな。

      同じ実験段階とはいえ、キルスティルとメモリウェポンの同時運用はかなり完成度が高めらしいなぁ」


  リティ「じゃあ、また次回!」





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 <次回の「とたきま」は!>




  リリエン「遂に始まってしまいました、"アレス"本戦トーナメントっ!!」


   パレサ「次回はBブロックね……いよいよオーメダルの本領発揮かしら?」


  リリエン「新たに組み合わせの決まった2つのブロックも、目玉チームが満載ですよ〜」


 イディアル「んん〜、実に興味深い対戦カードができているね。

       素晴らしいよ、実に素晴らしいっ!!」


   ヒビキ「次回もバリバリ実況してくぞーっ!ファイヤーッ!!」







 第32話:本戦Bブロック 〜古き鉄 VS 暗躍者〜







  ノーヴェ「あたしらの出番……!」


   ホクト「だ、大丈夫だよ!後でちゃんと出れるから!!」



























 あとがき


 第3クールまるごとかけて行われる"アレス"も本戦Aブロックまで終了。

 次回以降はなのは達管理局組もあちこちで猛者と戦います。

 しかし、管理局のエースたちをあざ笑う強さを持つ鬼レベルな強さのツワモノが次々と…。

 誰が生き残るか、新たに判明したトーナメント表から予想しながらお待ちください。



 今回はまさにスティア無双な話。同時に彼のバトルスタイルを大きく取り上げた話でもあります。

 クロノ経由で管理局に協力している形ではありますが、言動はなかなかにデストローイなタイプなので危ないです。

 が、実は野放しなようで上手く舵取りできていたりします。



 今回もチラッと触れた、本気を出したトラルーの戦闘力のインフレ具合。

 伊達に破壊神が母体になってないよって話ですが、後ほどヤヴァイ問題に発展します。

 前回のユーリプテルスの暴走に絡んでいたヤツがヒントです。



 次回は恭文も本腰入れてのバトル。リティの他系統のコンボ形態や亜種形態も登場する予定です。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 うーん、マテリアルズがいるだけでニヤニヤが止まらない。
 『とコ電』でも動かしてあげたいけど……うん、“ヤツ”が帰ってきてくれないとムリなので(意味深&苦笑)。

 そしてスティア無双が止まらない。
 ただ、ジェットストリームアタックは「オレを踏み台にした!?」で破ってこそだと思う今日この頃(贅沢言うな)。

『肉よこせやオラァーッ!』

 この一言で『モンハン3』の思い出が脳裏をよぎった自分。
 モガの森でスタミナ減る度にアプトノス追い回して肉はぎ取ってました。特に『3G』なんてスタミナ命の弓使いだったもんだから……(遠い目)