レルネ「さぁ、本日も前回のおさらいですよ〜」
プルトーネ《トラルー様たちも参加した、Eブロックの行方をおさらいしましょう》
<1回戦>
第1試合:マスカレードJの華麗な剣裁きにもひるまず、ティアナがフェイクを活かして撃破。チーム・スターズ勝利。
第2試合:技量面ではデクーOZが優勢だったが、強運を味方につけたナムチが逆転。チーム・スサノオの勝利。
第3試合:みさおは"見えない爆発"のカラクリに気づけず、ストラバレルに秒殺される。チーム・ボンバーズの勝利。
第4試合:トラルーはマトモに戦う気がなく、禁じ手と称するトランスムーブでジュンイチを瞬殺。チーム・ストゥルムの勝利。
<2回戦>
第1試合:機動力とパワーを活かしたスバルを軸とした連係攻撃でスクナとリラを撃破。チーム・スターズの勝利。
第2試合:ストラバレルのトリックに気づいていたトラルーとマキトが連係攻撃で圧倒。チーム・ストゥルムの勝利。
<代表決定戦>
開始早々に戦力を分散させたトラルーたちの作戦勝ち……とはいかず、ティアナやスバルの反撃によりマキトを挟み撃ちにする。
一時はトラルーが脱落したかと思われたが、マキトの反撃と共に復帰。スバルの反撃を受けるもトラルーが終止符を打つ。
レルネ「さぁ〜すが、トラルーたまです〜♪」
プルトーネ《勝手に何かに溺れている創主はほっといて、"アレス"も遂に決着の時!
全てが決まる第35話を、どうぞっ!》
レルネ「…………って、あぁぁぁぁぁぁぁ……」
「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録
「とある旅人の気まぐれな日常」
第35話:ファイナルバトル 〜ただ1つの座〜
「この場と、この中継を見ている全ての諸君っ!
遂に、遂にやってきた。待ちに待った、頂上決戦の時がっ!!」
ファイナルバトルも、開始前にイディアル総帥のスピーチ。
主催者ともいえる立場だけあって、いつにも増して気合と熱が入っている。声に。
短いようで長かった戦いも、終結の時を迎えようとしている。
「このファイナルバトルは、場に立つ者全てが敵のバトルロワイヤルッ!
いつにも増して入り乱れた戦いが繰り広げられるだろう…。
諸君も括目し、目に焼きつけたまえっ!その最後の戦場に躍り出る、5人の勇士をっ!!」
その言葉と共に、スポットライトが当たる。どっから出てるんだ、とか、そんなツッコミは不要である。
確かデルポイ大陸のモンスターの中に、発光能力を持ってるヤツもいたっけか。
「ただ1人でエントリーし、立ち塞がる敵全てを粉砕してきたスティア!
"古き鉄"の異名と共に幾度となく魂の剣を振るう、蒼凪恭文!
強きを挫く宇宙海賊ビシディアンの首領、ダークハウンド!
鳥の力を秘めたメモリと共に鳥の如く舞う、ステュムパロス!
規格外にもほどがある潜在能力を秘めたダークホース、トラルー!」
スポットライトが当たったのは、実際にファイナルバトルで争うメンツ。
まぁ、ステュムパロス以外は必然的にこうなるだろうことは、とっくの昔に想定内だった。
「この5人の誰が勝ち上がろうとも、決しておかしいことではない!
力、運、その両方を味方につけた者こそが、次元世界の唯一無二の覇者となりうるのだから!
5人のファイナリストたちよ、全身全霊をもって、あとくされなく戦いたまえ!!
以上ッ!」
「総帥、ありがとうございました。
ではファイナリストのみなさん、フィールドをオープンしますので、入場をお願いします。
何か準備したいのであれば受け付けますが?」
ファイナリストっていうのは、このファイナルバトルに勝ち進んだ者たちの称号。
もちろん、実際にバトルしなくても、チームメイトも含めてこう呼ばれる。尊敬と恐怖の念を込めて。
で、リリエンからの確認の質問に、誰も異を唱える者はなし。
見ただけでわかる、全員準備万端だ。僕も、リミットベストは既に外してある。
ただし、トランスムーブは使わない。連盟公認の技ではあるけど、チートすぎて「違法じゃないインチキ」だし。
2度も3度もインチキで勝利したいと思うほど、落ちぶれちゃいないのよ。人として。
「では諸君、健闘を祈るっ!!」
イディアル総帥からの言葉が終わると共に、僕ら5人は次々とフィールドへ飛び込んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「キルスティル――起動!!」
「アルトアイゼン――セットアップ!!」
「ダークハウンド、出るぞ!!」
「怪鳥霊のステュムパロス、参ります!!」
「トラルー With イグナイテッド――戦闘、開始!!」
それぞれがそれぞれの獲物をかまえ、戦闘準備完了。
スティアもいきなり本気モードだ。既にトリガーマグナムとメタルシャフトを同時装備している。
恭文もアルトアイゼンを展開、ダークハウンドは右手のドッズランサーを構え、
ステュムパロスも攻防どちらにも応じられる柔軟な構え、トラルーもサヴァイブミスティックへ移行。
全員が全員、すさまじい実力を秘めているだけに先が読めない。
特にトラルーだ。サヴァイブミスティックのデータは先ほどもらったが、アレは総合的にみると1対多の戦闘が得意に見える。
とにかく攻撃の手数を増やしておくことで、大乱戦のド真ん中に放り込まれても生き残れる可能性を追求している。
普段は武装としての姿しかないイグナイテッドも、あの状態なら武装であると同時に全周囲対応可能な多機能センサーでもある。
思考だけは2人分になっているのと、殆ど変わらない。おそらくイグナイテッドもリアルタイムで警告するだろうからな。
おそらく、状況把握力なら、イグナイテッドのサポートを随時受けられるトラルーに軍配が上がる。
他の能力についてはどっこいどっこいだが、フィールドが空中遺跡ということを考えると、
単独飛行能力を持つトラルーやダークハウンド、ステュムパロスが有利だろう。それだけ自在に動けるからな。
「アレス・ファイナルバトル。
バトルモード・ゼネラル1001、レディー・ファイッ!!」
まず動き出したのはスティアだ。トリガーマグナムの乱れ撃ちで躍り出て、手近にいたステュムパロスに飛びかかる。
ステュムパロスもすぐさま回避行動と防御動作を行い、ダメージを最小限に抑えながら羽爆弾で反撃。
羽爆弾をトリガーマグナムで撃ち落としている間に離脱し、狙いを恭文へ定めようとするが、そこへダークハウンドが飛びかかる。
早くも入り乱れたところへ、トラルーが両手のミスティックによる光弾をばら撒きながら特攻。
他4人が同時に散開し、いち早く飛び込んできたステュムパロスの飛び蹴りを左のマルチフェザーでガード、弾き飛ばす。
トラルーの攻撃範囲と切り替えの早さを脅威と見たか、ダークハウンドもアンカーショットで仕掛ける。
これは光弾で撃ち落とし、飛び込んできたダークハウンドもドッズランサーの上から蹴り飛ばす。
スティアが恭文の斬撃を回避しながら突撃し、メタルシャフトと右のマルチフェザーがぶつかり合う。
……ちなみに、この一連の流れの所要時間はわずか30秒弱。いきなり大荒れだ。
「開始から1分もたたない内に大乱戦っ!
誰もが必死!誰もが実力者!まさに誰が生き残ってもおかしくはない戦いだぁ!!」
「今のところ、若干トラルー選手が優勢でしょうか。
デバイスの補助も大したものですが、それ以上に1対多という構図に場馴れしているようです」
……実は昨日、スティアからサヴァイブミスティック時の戦闘についての考察を聞いた。
彼によれば、マルチフェザーの動きとトラルー自身の動きが、たまにバラけていることがある。
だが、バラけさせることで四方八方からの攻撃の全てに対処しているようにも見える。
まさか、既にイグナイテッドに制御を丸投げしている…?だからこそ、自分の立ち位置と攻撃方向にのみ思考を絞れる…?
提督の座にいる者として、1対多の戦闘というものはあまり経験しないが、JS事件でまさにその構図に立ち会ったのは貴重な経験。
ソニックボンバーとの縁もあって最前線での戦いも視野に入れているのだから、この戦いから学ぶものは多そうだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《マスター、倒す順番はある程度決めてますよね?》
「当然でしょ。僕らの目的は、あくまでマイクロンパネルを手に入れること。
そうする為にも、最低限ステュムパロスとダークハウンドには退場してもらわないと。
スティアは……なんか微妙だけど。そこはトラルーなりはやてなりに任せよう」
《では、私たちは……》
「うん」
ヒルメに直してもらって、更に強化パーツまで装備したアルトを見ながら、改めて確認。
アルトには刀身全体を覆うクリアグリーンのパーツが追加されていて、とにかく強度の確保が優先されていることが分かる。
理由はもちろん、ファイナルバトルの激戦による破損を回避するというのが大きいんだろうけど、
ヒルメいわくアルトはあくまでも応急処置。だからなるべくメインフレームに負荷がかからないよう、全体的にカバーするパーツを作った。
それが今アルトの刀身を覆うクリアグリーンのパーツと、それを保持する青いプロテクター状のパーツ。
これらをまとめて「アーマードセイバー」と呼ぶらしい。なお、クリアパーツにはビームガーターと同様のテクノロジーが使われているとか。
つまり、クリアパーツの素材には特殊な衝撃吸収材を粒子化したものが使われていて、非常に頑丈。
とにかくアルト本体へのダメージを回避することに特化していて、攻撃力のアップはあくまでも副産物的なものらしい。
ていうかこれ、刀身がなんとなくダブ○オー○イザーが最終決戦で装備してたGNソードVに似てるんだけど…。
ひとまず、トラルーはさすが古代ベルカ戦争の生き残り、って感じかな。
なんか次第に不規則な集中砲火にさらされてる気がするんだけど、その全てを無傷ではねのけてるし。
ともかく、マイクロンパネルを六課が手に入れるには、僕かトラルーが優勝すればいい。
逆に、ネガショッカーであるステュムパロスや状況的に部外者であるダークハウンドには渡せない。
だから、恨みはないけど優先的に叩かせてもらう!
「はぁっ!!」
「くっ!!」
少し上にいたけど、既に展開したフライヤーフィンで一気に距離を詰めて、右袈裟にアルトを一閃。
けど、マトリックスばりのアクロバットな動きでよけられた。さすがは鳥系?
「蒼凪恭文…ですね。こちらとしては何の恨みもないのですが、
ネガショッカーの一員として、全力でいかせていただきます!」
<バード・マキシマムドライブ>
きたっ!ステュムパロスのリミッター解除!
戦闘映像は見たけど、加速性能と旋回性能が大幅にアップするみたいだ。
正直、ラッシュに捕まりたくない!
「お前の相手は、このトラルーだぁぁっ!!」
「うわぁっ!?」
しかし、そこにトラルーがミサイルばりの勢いで突撃。
ステュムパロスもろとも、少し離れた足場に道連れダイブ。
正直、2対1にしてしまいたいのだけど、スティアが突っ込んできたからそれはなしっ!
「お、今の不意打ちを止めるのかよ。
さっすが、クロノ提督がいろんな意味で恐怖の対象にしてるだけはあるなっ!」
「恐怖の対象って、どういう意味!?後で詳しく聞かせてくれるかな!?」
「悪いな、それこそ提督殿の身のために、断るっ!」
唐竹割りの要領で繰り出したアルトと、思いっきり下から振り上げられたメタルシャフトが激突。
で、僕が思いっきり吹っ飛ばされる。って、何さあのパワー!
けど、上空からの加速も利用して、より勢いを増した一閃を叩き込む!
「さすがに力の加え方や力の利を理解してやがる!
こいつぁ……倒し甲斐があるなっ!!」
けど、キルスティルで受け止められて、真っ向から弾かれた。
ホントなに!?結構なパワー加えた筈なのに、防いだところから微塵も動いてないって!!
のけぞりすらしなかったしっ!
「そらそら、こちとらまだまだイケるんだぜっ!」
「あーもうっ!」
トリガーマグナムを連射しながら、左腕を大きく振りかぶる。
銃弾はアルトではじきながら、思いっきりバックステップして回避。
だって、左腕を振り下ろすってことは、キルスティルの裏側に連結されてるメタルシャフトも振り下ろされるってことだしっ!
防御した時のパワーからして、直撃なんてしたらと思うとゾッとするよ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さすが、参加人数が奇数のバトルロワイヤルだ。
誰か1人が余るのも、珍しくないな。
《今はお呼びじゃないんですよ!》
「それは失礼」
なので躍り出る。左のアンカーショットを発射、ステュムパロスを殴り飛ばしたトラルーを狙う。
だが、突然彼の頭のデバイスが回転し始め、自在に動く羽のようなものでアンカーショットを弾き飛ばしてしまう。
なるほどな、機能の元ネタはミステ○ックデー○スハイ○ーか。
しかも、羽のようなもの……マルチフェザー、だったか?それはデバイスであるイグナイテッド自身が操作可能。
つまり、頭数は1人でも、今のトラルーは2人分の動きができるということだ。
「どうやら、あちらさんには事情がありそうだな。
さて、誰を狙うか…」
少なくとも、現状でトラルーに突っかかっても先ほどの繰り返しだろう。
なら、違うヤツを狙うのが賢明。もしくは、このまま身をひそめ、損耗を待つというのもアリだな。
ステュムパロスはトラルーに追い回されているし、恭文とスティアは別なところでやりあっている。
……ふむ。
「あーもうっ!クロノさんの直属なら、今の六課の思惑ぐらいわかるでしょ!?
少なくとも今は邪魔しないでくれるっ!?」
「マイクロンパネルについては共通見解だ。そこは、伊達にトラルーと知り合いじゃねぇってことだ。
けどな、ここは真剣勝負の場だ!目的を果たしたかったら……力づくで、やってみなっ!!」
「めんどくさいな!本当にもう!!」
恭文の言葉に対するスティアの答えは、期待通りとはいかなかったようだ。
アルトアイゼンとメタルシャフトがぶつかり合い、火花が散る。お互い武器裁きは早いが、基本的にはその繰り返しだ。
スティアが時折混ぜるトリガーマグナムの射撃は、サイドステップなどで回避しながら対処。
やるな、"古き鉄"。伊達にヘイハチ・トウゴウの弟子ではないということか。
マイクロンパネル……今回の大会の優勝賞品。ビシディアンとしても、興味のあるシロモノだ。
ましてや、神器のマイクロンともなれば、尚更な。だが、だからこそ確かめたいこともある。
管理局については大方ロストロギア扱いだろうが、問題はトラルーの方だ。
彼については、こちらもいろいろと聞いている。彼には悪いが、その出自についても。
イグナイテッドのサポートもあるとはいえ、あの戦闘力はおそらくユニクロンの力に起因している。
もちろん、使いこなす為に膨大な戦闘経験を得ていることも、己の魂というアイデンティティを固め続けていることも、既に知っている。
だからこそ気になる。公式大会に出たことなど全くない筈の彼が、何故あぁまでしてマイクロンパネルを求めるのか。
神器のマイクロン……それに秘密があるのか?
…………ならば。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あーくそ、ホントにめんどくさいんだから!
アイゼンアンカーじゃないけど、めんどくさいとしか言えないよ!
「この戦いはなぁ、力だけを見せるんじゃない。
なんとしてでも勝ち上がるっていう、燃えたぎる魂も見せつける戦いなんだよ!
ちゃんと、自分も燃え上がるような目的をもって戦わないと、ブレイクオーバーどころじゃすまないぜ!?」
《マスター!とにかく今は、目の前の相手に集中しましょう!
生半可な攻撃で倒せる相手ではないんですから!》
「だよねっ!」
我が相棒が珍しくマトモなことを言ってきた以上、コレはマジでいかないと。
何度目かもわからないぶつけ合いから、いったん大きくバックステップして距離を取り、アルトを構えなおす。
対するスティアは、間髪入れずに突っ込んできた!突き出されたメタルシャフトをかわして…って!?
「遠くから撃つだけが、銃の使い方じゃないってトラルーとかから学ばなかったか!?」
「スティア選手、トリガーマグナムをゼロ距離で発射!
恭文選手、他の選手よりも大きくダメージを受けてしまったぞ!」
くっそ、やられた。
突撃の勢いはそのままに、控えていた右手をそのまま僕のお腹に押し付けてきた。
もちろん、トリガーマグナムは握り締めたままで。
マキシマムドライヴじゃなかっただけ不幸中の幸いだけど、もしそうだったら一撃で致命傷だよコレ。
「さすがに踏ん張るな。そうでなきゃ、張り合いがないってモンだ!」
<ルナ!マキシマムドライヴ!>
<トリガー!!マキシマムドライヴ!>
《MEMORY-ROAD!SKILL STANDBY!!》
「トリガーフルバースト!!」
うわ、ここでたたみかけるつもりだ!
放たれたトリガーフルバーストの無数の光弾を切り払うべく、アルトを構えて――
僕を通り過ぎた。
って、ちょっとまてい!僕を狙ったんじゃないの!?
いやまだわからない。思いっきり後ろから急カーブとかしてくるかも――
「なんと!トリガーフルバーストの光弾は全て、ステュムパロス選手に直撃ぃー!!
思わぬ流れ弾に、ステュムパロス選手は防御もできずに墜落ぅーっ!!」
「流れ弾……じゃないですね。寧ろ初めからステュムパロス選手を狙っていた、と考えるのが妥当かと」
マジですか。いや、何してんのあの人。
「……言ったろ?マイクロンパネルについては共通見解だってな。
こちとら、初めからステュムパロスだけは墜とす気満々だったってワケだ」
《うわ、食えないですねこの人》
「いったい誰だよ、真剣勝負の場って言ったのは」
思いっきり真剣勝負ガン無視な攻撃してくれましたけど?
不意打ちのどこが真剣勝負?
「真剣勝負だよ。自分の目的をキッチリ果たす為のな」
そしてサラッと言わないでください。いろいろ困るんで。
「ふっ、これもバトルロワイヤルでは珍しくないことだ…」
「なんかいろいろと理不尽なものを感じたんですけど!?
組織的な意味で!」
「そもそも、君だけネガショッカーだろうに」
「悪いが、お前にはここで落ちてもらおう」
<ATTACK-FUNCTION SHARK BLAST.>
「ステュムパロス選手、ブレイクオーバー!
チーム・SEKN、ここで敗退決定!!」
あ、そうこう言ってる間にステュムパロスが撃墜された。
しかも、トラルーと押し問答しているとこに、またしても不意打ちくらわされて。
とりあえず、これで最悪のパターンはなくなったんだけどさ。ステュムパロスには悪いけど。
ていうか、いつの間にそういう戦法に切り替えたの?ダークハウンドったら。
「バトルロワイヤルでは、よくある話だろう?」
「そりゃーそうだわな」
「あぁ、よくあるな」
「……アンタら、本当に他人同士ですか?」
ダークハウンドの言葉に、トラルー、スティアの2人とも特に否定せず。
いや、スティアとトラルーはともかく、ダークハウンドとのつながりは聞いたことがない。
トラルーはなんだかんだでフリーランスだから、宇宙海賊の1つや2つぐらい、出会っててもおかしくないだろうけどさ。
それとも、何か通じ合うものでもあるんか。あの3人に。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「さぁ、これで残るは4人!まだまだ行方はわからない!」
ネガショッカーの一員だってわかってるステュムパロスが脱落。
これでダークハウンドも脱落すれば、ひとまずマイクロンパネルは安泰なんやけど。
スティアが優勝した場合、クロノくんにお願いしてコッソリ譲ってもらえればええんやし。
もちろん、恭文かトラルーが優勝した方が面倒もなくて万々歳や。
「トランスムーブ、使わないですね…。使えば圧勝なのに」
「消耗が激しすぎるからな。1人か2人ならともかく、使うにしては時期尚早だということだろう。
第一、イグニッション技以外のダメージはたかが知れているしな」
リインの言葉に、レクセが説明してくれた。まぁそういうことやろうね。
もっとも、ジュンイチさんやなのはちゃん、フェイトちゃんほど手段を選ばない子じゃないんやけどね。
あんなチート技ばかり使ったって、戦ったっていう実感とかないだろうし。
確か「死を意識するからこそ、生きるということを実感できる!!」とか言うとったっけ。どこの御大将よ。
「まぁ、チートなヤツは大抵、遠くない未来で弱体化するフラグが立つんだがな」
「どんなマンガ読んでいたですか?」
「いろいろだ」
フラグて…。なんや、急に生々しい雰囲気になってもうたやん。
それに、そのフラグ理論が成立するなら、ジュンイチさんかて弱体化するんとちゃうの?
「アレは悪い意味で規格外だからいいだろう。本家様でそうなったならともかくな」
「生々しいです生々しいです生々しいです……」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さぁて、そんじゃ……次は誰にしよう?
「殺気!!」
「よけられたか。てへ♪」
「てへ♪っていう攻撃じゃないでしょ今の!!」
「安心しろ、狙いは君らの奥にいたダークハウンドだから」
「わざわざ僕を巻き込まないでくれる!?」
「そう考えたけど、どーせ最後は潰し合いになるんだしさぁ…」
「やっぱ腐ってもユニクロンだわこの人!!」
気まぐれにマルチフェザーによるゲロビをブッ放し、恭文たちを散らした。
あのままダークハウンドに当たればよかったんだけど、そうもいかないね、やっぱね。
さすがは巷で有名なスーパーパイロット。機獣になっても卓越した技術は健在か。
ところで、誰が『腐ってもユニクロン』だって?
《マスター、口は災いの元って言葉知ってます?》
「知ってるに決まってるでしょ!……はっ!?」
《なんで事情を知ってる身内が暴走の引き金を引くマネをするんですか。
久々にマスターに失望しましたよ》
「いや、失望してないでフォローかなんかしてくれません!?」
《無理ですよ。完璧に言っちゃいましたからね。もう止まりませんよ?彼》
ははは、やだなぁ。そう簡単に暴れん坊将軍になるワケないじゃん。
ましてや友達相手だからさぁ、こらえるべきことはこらえようと頑張っているワケですよ。
ていうかどうせお前が先駆者なんだから今更ウダウダ言ってんじゃねーよ恭文。
「完璧に殺る気だよね!?五体満足で帰す気ないよね!?オーラと目がそう物語ってる!」
「恭文が似たようなことやらかしてるんだから、今更やられたって文句言えないよ。
主に身長関係で何か言われた時の恭文は、みんなして危険人物扱いしてるんだからさぁ」
「僕が危険人物!?じょーだん!?」
「事実じゃん。だからさ、ユニクロンの端くれにブチギレられたって平気でしょ?」
「平気じゃないってぇぇぇぇ!!」
往生際悪く逃げ惑う恭文に、ミスティックの光弾を乱射しながら突撃。
往生際悪くアルトアイゼンでガードしたけど、知ったことじゃない。真っ向から殴り飛ばす。
「オレたちを忘れるなっての!!」
「そろそろお相手願おうか!?」
「だまらっしゃい!!」
両サイドから突き出されたメタルシャフトとドッズランサーをマルチフェザーでガード、
離脱される前にスティアを殴り飛ばしてダークハウンドを蹴り飛ばす。
上等だ。バトルロワイヤルなんだから、もう誰から潰しても自分が生き残れば変わんないんだよね。
なんでそれを忘れてたんだろう?アッハハハハハハ!!
ギャッハハハハハハハ!!オレぁケンカ番長だぜぇぇぇぇぇっ!!
「オイ、恭文!!なにトラルーの逆鱗に触れてんだよバカ!!」
「バカじゃないよ!それに逆鱗に触れた覚え……あるけどさぁっ!!」
「あるんだったら反省して特攻の1つでもしろ!どう始末をつけるつもりだ!?」
「知るかぁぁぁぁっ!!」
「ここにきて、様相が一変!
まるで、トラルー選手が恭文選手たちを3人まとめて相手にしているかのような構図になったぁ!
これはまさかの3対1なのかぁ!?」
「原因があるとすれば……会話の流れからすると、おそらく恭文選手のせいかと。
ユニクロン……トラルー選手の出自絡みのことでしょうね」
「と、いいますと?」
「トラルー選手の場合、自分の存在をユニクロンと同一視するという意味でバカにされるのを非常に嫌うんです。
案外、その手の事情で人柄が変わってしまった事件というのは多いんですよ?
詳細な経歴まではこちらで調べることは失礼に当たりますから、具体的な因果関係などは不明ですけど」
そうさ、結局、恭文まで僕のことなんかユニクロンと同じだなんて言いやがる。
僕は僕だ……それ以上でもそれ以下でもない。それ以外の何者でもないっつってんだろうがコンチクショォォォォッ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
何をやっているんだ……恭文……。
「あーあ、いっそのことオレがあそこに飛び込んでやりてーけどなぁ。
1回戦で瞬殺されたし」
《仮にあの場に躍り込んでも、トランスムーブなしでも瞬殺どころか惨殺されるかと思いますが。
マスターの力場も体術も、本気で激昂したトラルーさんを阻む障害とはなりえないでしょうし》
「力場はともかく、体術で負けた覚えはないんだけど」
《理屈や平常心でどうにかなる相手だとでも思っているのですか?
己の存在、確かな自己、そのアイデンティティを否定された者の怒りと嘆きは、
格上の存在さえいとも容易く粉砕してしまうほどの力を発揮するのです。
たとえ暴走し、破壊の限りを尽くそうとも、主張したい叫びがあるのでしょう》
柾木ジュンイチがよからぬことを企んでいたようだが、蜃気楼に封殺された。
アイデンティティ、か。なるほど、そう考えれば寧ろ興味深いことにも思える。
己が己であるが為に響かせたい叫び……。どこか他人事に思えない。
「なぁダークハウンドさんよぉ!」
「なんだ!?」
「ここは一時休戦して、トラルーをブレイクオーバーさせる作戦を試してみる気はないか!?」
「本当にあるというのなら、乗ってやってもいいがな!」
「お互いに優勝諦めてもいいってんなら、乗ってくれるとありがたいんだけどな!」
「…………まぁ、いいだろう!お前たちなら、優勝賞品のアレも悪用はすまい!」
「状況理解、助かる!さすが、ビシディアンはそこらの海賊とはデキが違う!」
恭文を狙いつつ、殆ど無差別攻撃と変わらないほどに激しくなったトラルーの攻撃を防ぎながら、
スティアとダークハウンドが何やら相談している。優勝を諦める……ということは、ブレイクオーバーの危険性があるということだ。
スティア自身については疑問なところだが、長い縁の知り合いということを考えると、
自分も攻撃をくらう危険性がある作戦、と考えるのが妥当だろうか。戦いぶりからして、陰湿な作戦は使うまい。
ちなみに恭文はというと、またアルトアイゼンをへし折られてはかなわないとばかりに脱兎のごとく逃げ回っている。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァ!!」
「…………行ったか」
「あまり時間なさそうだから、1回しか説明しないぞ」
「あぁ」
どうやら、トラルーは先に恭文を潰しにかかる気になったらしい。
スティアとダークハウンドを吹き飛ばし、そのまま恭文へ向けて一直線に突っ込んでいく。
「……なるほどな、確かにそれなら一気にブレイクオーバーさせることも可能だろうな」
「トラルーの基本防御力はそんなに高くない。至近距離から叩き込めれば間違いない筈なんだ」
「分かった。なら、俺とスティア、生き残った方が恭文と雌雄を決する。これでいいな?」
「あぁ。どっちが生き残っても恨みっこなしだ。なんせ、ビシディアンの首領が乗ってくれたんだからな」
「フッ…。さぁ、いくぞ!」
「頼むぜ!」
作戦会議が終わったのか、ダークハウンドが変形。
胸部から上がスライドでせり上がり、連動して頭部が隠れる。そこから背中側に90度倒れ、腰部のスタビライザー状のパーツと背中が連結。
両足の股関節部分が外側にスライド、両膝が後ろ側に折れ曲がり、更にスネだけを元の向きに戻す。
つま先をたたみ、両肩の基部が二の腕側に90度曲がり、腕ごと背中側に90度曲がることで足と平行の向きになる。
そして胸部のドクロのレリーフが開き、露出したジョイントにドッズランサーの持ち手がドッキング。ドッズランサーが機首となる。
ダークハウンドの高速巡航形態、通称ストライダー形態か。
文章にするとこれだけのプロセスがあるというのに、所要時間は1秒足らず。トランスフォーマーにも劣らないな。
「おや?これは珍しい。宇宙海賊と公的組織の連係プレーですか」
「スティア選手、ストライダー形態に変形したダークハウンド選手に飛び乗り、共に突撃ぃ!
その先にはトラルー選手がいるが、まさか2人がかりで倒すつもりかぁ!?」
「あぁん!?上等だぁ!まとめてかかってきやがれよぉ!」
「言われなくてもな――」
「そのつもりだっ!」
『フォースチップ、イグニッション!!』
急接近する存在に気づいたトラルーが、反射的にスティアたちを捕捉。
ターゲットを恭文から2人に切り替えたか、真っ向勝負の構えで突撃する。
対するスティアとダークハウンドは、ダークハウンドの変形と同時に左右へ散開。
同時にフォースチップをイグニッション。
<ATTACK-FUNCTION BIT BOMB.>
<ATTACK-FUNCTION SHOOTING STAR.>
「大サービスだ、コイツもくらいやがれっ!!」
<ヒート!マキシマムドライヴ!>
<ジョーカー!!マキシマムドライヴ!>
《MEMORY-ROAD!SKILL STANDBY!!》
「ジョーカーグレネイド!!」
「いいぜ、いいぜぇ!?それでこそ、暴れに来たって実感できらぁ!!
こっちだっていくぜぇ!?フォースチップ、イグニッション!!」
<ATTACK-FUNCTION RAISE TEMPEST.>
キルスティルとドッズランサーのチップスロットに、それぞれ地球のフォースチップが飛び込む。
解放されたエネルギーは、キルスティルから放たれた遠隔操作式の爆弾と、ダークハウンドの突撃用のパワーへと変わる。
爆発するビットだから"ビットボム"か。出現した6つのビットはトラルーに殺到し、全て爆発。
そこに2人が飛び込み、燃えたぎる灼熱のパンチと、光をまとった突撃"シューティングスター"がトラルーを襲う。
だがトラルーも負けていない。フォースチップをイグニッション、代表決定戦で決め手となったレイズテンペストを発動。
そして――すさまじい爆発が起きた。
「スティア選手とダークハウンド選手による、必殺技ラッシュ!!
トラルー選手も必殺技で対抗したが、これは効いたかぁ!?」
「アタックファンクション1つをただの目隠しとして使うとは、スティア選手らしいですね。
一撃の破壊力と鋭さを同時に追求したダークハウンド選手もお見事。
トラルー選手の反射神経の鋭さも恐るべきものですけど」
未だに空中で立ち込める煙。そこから、2つの影が中央の足場へと落下。
……ほう。
「トラルー選手とダークハウンド選手、同時にブレイクオーバー!
さすがはファイナルステージ、壮絶な相打ちです!!」
「生き残ったスティア選手も、ダメージを受けているようですね。
恭文選手との戦いで響かなければいいのですが」
「ファイナルステージも一気にクライマックス、残るは恭文選手とスティア選手の一騎打ち!
この戦いに生き残り、覇者の座とマイクロンパネルを手に入れるのは、いったいどちらなのかぁ!!」
2つの影の正体は、ブレイクオーバーしたトラルーとダークハウンドだった。
両者ともに車田落ちで落下、足場に墜落してそのまま沈黙。
さて、恭文はこの漁夫の利を活かしきれるか?なにせ、相手はあのスティアだからな…。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―チーム・ストゥルムのセコンド席にて―
「うぉぉぉぉぉ〜ん!トラルー!!」
いや、姐さんが号泣したところで何もならないんすから…。
それに不幸中の幸い、生き残ったのがスティアと恭文さんだから、マイクロンパネルも安泰じゃないっすか。
優勝自体が目的じゃなかったんだし、あとは恭文さんを応援するっすよ。
「…………恭文も巻き込まれて撃沈してればよかったのに……」
黒い。黒いっすよ姐さん。理由はわかるけれども。明らかに恭文さんの自業自得だけれども。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―チーム・SEKNのセコンド席にて―
「うぅ、酷いです……」
「あー、まぁ、相手が相手な上に不意打ち2連ときちゃあ……ねぇ?」
「今回は同情するぜ……」
不意打ち2連続でズタボロにされたステュムが、回復用のポッドの中ですすり泣いていた。
これにはメディア様やアムリタ様も合掌。ボクも合掌。さすがにむごいよ。
「しかし、薄情な言い方かもしれないが、あぁいう光景もまた戦場では現実だ。
不意打ちに次ぐ不意打ちのバーゲンセールの中を駆け抜けたような連中も、宇宙には大量にいる。
今回は相打ちで終わったトラルーやダークハウンドも、そんな連中の一部だろう」
ポッドの操作を終えたリア・ファル様からの言葉は、三元帥の中でも随一の説得力があるってケルベロスが言ってた。
まぁ、この前見た戦争の本にも、そんな感じのことが書いてたし。
アストラルも「戦場にルールなんてねぇ!」って、若干ネタ気味だけど力説してたっけ。
その時にわざわざタンメン食べようとしてたヘスペリデスは何だったんだろう?
「ところで、なんで今ここにケリュネイアとネメアがいねぇんだ?」
「失格処分が下された上に、アーツバトル連盟の警備部によって強制的に追い出されてしまった」
「……あぁ〜、観客席とジャッジカプセルまで壊して回ったものね、あのおバカたち」
アムリタ様の疑問の答えは、リア・ファル様が言った通り。理由はメディア様の言葉で大体正解。
実は代表決定戦の後、審判団のトップらしいパレサがやってきて、お話された。
「器物損壊及び一般人傷害罪により、闘技場内部での一切の行動を許可できなくなった」とのこと。
で、いかつい盾を装備した警備部の人たちに捕まって、闘技場から追い出されちゃった。
あ、そうそう、器物損壊っていっても、別にバトルフィールドを壊してもそれは罪じゃない。
観客席とかジャッジカプセルとかを傷つけるとアウト。で、ケリュネイアもネメアもぶっちぎりでアウトなワケで。
サッカーでいうところの一発レッドカードが出ちゃって、今に至る、と。
ある意味で勝利の立役者だけど、いちいち仲間割れで観客席破壊されたくないよね。
わかってたよ?うん。ステュムが毎日のようにあの2人のことで頭抱えてるもん。
「……ねぇ、三元帥?何故ボクは除外されたの?せめて多数決とか…」
「勝ち残った他の4人を相手取って、互角以上に戦えそうなのがステュムパロスだけだからだ」
「エリュマントスも傑作ではあるわよ?けど、メモリのロケットの如く直線的だし」
「ステュムパロスと比べると、どーしてもバトルロワイヤルじゃ勝ち残れそうにないって結論になったんだよ」
「がびーん!」
じゃあなんで、基本装備をランチャーにしたのさぁ!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「さぁ、ファイナルバトルもいよいよ大詰め!
最後の栄冠を手にするのは、スティア選手か!それとも恭文選手か!」
殺戮の修羅と化したトラルーは、スティアとダークハウンドの連係攻撃でブレイクオーバー。
同時にダークハウンドもブレイクオーバーしたので、僕とスティアの一騎打ちということになった。
アルトを構えなおし、少し魔力伝達。刀身に注がれた魔力に反応して、クリアパーツの刃が光を放ち始める。
対するスティアもアビリメモリを1本取り出す。連係攻撃でも使った「ジョーカー」だ。
ガイアな方のメモリと同様なら、確か使用者の身体能力を強化することに特化したメモリの筈だけど…。
「そのクリアパーツとプロテクター、ミッドの技術じゃないだろ」
「まーね。じゃあなんだと思う?」
「そのクリスタルパーツの技術は、古代ベルカの鎧王軍が実用化にこぎつけていたものだ。
それに、そっちのトランスポーターはガチな古代ベルカ製。判断材料としてはそれだけで十分だ」
「……それもそうだね」
どうやらアルトの強化パーツに使われているクリアパーツは、正式には「クリスタルパーツ」というらしい。
で、またしても出ました鎧王軍。ポラリスんとこってどんだけ機械技術すごかったの?
まぁ、その辺はまた今度聞けばいいか。今はバトル中、知識問題は余談に過ぎないのだから。
<ジョーカー!!>
「さぁ、こっからは小手先ナシだ!」
ジョーカーのメモリをキルスティルに装填、同時にトリガーマグナムを空高く放り出した。
そのまま恐るべき瞬発力とダッシュ力でこちらに急接近。
空いた右手を握り締め、ストレートで殴り掛かってきたっ!
「キッチリ反応してきたか!ヘイハチ・トウゴウの弟子ってのも大変だよなぁ!」
「先生のこと知ってるの!?」
「忘れたか!?オレだって管理局の一員だ、ヘイハチ・トウゴウの噂ぐらい聞くっての!」
「それで!?」
「これぐらいできなきゃ、今頃修行で死んでるレベルだろーなってことだ!」
ラウンドシールドを展開したアルトで拳を受け止め、弾く。
けど、それだけじゃスティアは止まらない。余計にラッシュをかけてきた。
ラッシュの間の会話で、スティアも先生のことを少しは知ってることはわかった。
それと、ハチャメチャな部分は結構聞いてそうってことも。
「そーゆースティアだって、先生とは別な意味で大変だけどさっ!」
「褒め言葉ってことにしておくぜ!」
アルトで拳を弾きつつ一回転、そのまま切り払う。けどよけられた。
あの一瞬の刹那でマトリックス回避なんてしてくれたものだから、僕は一瞬青ざめた気がする。
起き上がる勢いで繰り出されたパンチはジガンで防ぐ……けど、ジガン越しでも痛い!
「今度はどうだ!?」
<ルナ!マキシマムドライヴ!>
<ジョーカー!!マキシマムドライヴ!>
《MEMORY-ROAD!SKILL STANDBY!!》
「ジョーカーストレンジ!!」
「スティンガースナイプッ!!」
《Stinger Snipe》
スティアが少しだけ後退、すぐさま「ルナ」メモリをキルスティルに装填。
ルナのマキシマムドライヴに反応したジョーカーもマキシマムドライヴを発動させる。
そしたら……スティアが分身したっ!?いや、違う!蜃気楼みたいな、本体以外はゆらめいてるって感じ。
で、本体だけでなくゆらめいてる分身からも手が伸びたっ!ムチみたいにしなってる!?
とはいえ、多重攻撃が相手なら一気に撃ち落とす。スティンガーを生み出して、しなる腕のそれぞれに発射。
さすがに生身のまま伸びてる……って感じだし、くらえば痛いでしょ、と思ったけど無傷。
多分、アビリメモリから生じたエネルギーを薄い膜みたいにまとっているんだ。
スティンガーでダメージを期待したワケでもないし、そこはいい。
《Flier Fin》
「鉄騎、一閃っ!!」
<ヒート!マキシマムドライヴ!>
<メタル!!マキシマムドライヴ!>
《MEMORY-ROAD!SKILL STANDBY!!》
「メタルブランディング!!」
フライヤーフィンの最大加速でスティアの背後に回り込んで、お馴染みの鉄騎一閃。
けど、スティアったらこれにも対処してきた!
しかも、破壊力抜群なメタルブランディングかいっ!!
チャージされていた魔力と2つ分のアビリメモリから生じたパワーが、それぞれの得物と共にぶつかり合い、
僕もスティアも大きく吹き飛ばすほどの大爆発を起こした。
「必殺、必殺、必殺技のラッシュ!
しかし、それでも両者攻めきれないぃー!!なんなんだ、このバトルはぁーっ!!」
「魔力やエネルギー切れの概念は無視していいとしても、
このド派手なバトルに耐えきる装備品たちも恐ろしいレベルですよ。
あんな必殺技の応酬を経てもヒビの1つすら入ってないなんて」
リリエンの言うこともごもっとも。なにせ、アーマードセイバーのおかげもあるとはいえ、アルトは無傷。
いやもう、アルト自体は応急処置でしかないなんて状況だから、
トラルーに追い回された段階からいつまたアルトを壊されるかってヒヤヒヤしてるもの。
鎧王軍技術、ちょっとすごすぎ。……キルスティルとメタルシャフトの具合から見て、管理局の技術も捨てたもんじゃないようだけど。
《マスター、ここまできたら、そろそろ本気でノリにいかないと…》
「やっぱ、"アレ"なしで乗り切れるワケもないか」
考えてみたら、AAA+ランクの試験以降ちっとも使ってなかったんだけど、
相手も相手だし、使い時は今かも。
スティアも、さすがに"アレ"を使った僕の実力までは予測しきれないでしょ。
《さぁ、いきましょうマスター。マスターコンボイたちが不在ですけど》
「そうだね。マスターコンボイたちには悪いけど、ソロプレイもたまには悪くないでしょ」
"アレ"を発動する為の、剣を持った巨人のレリーフが刻まれた、あのカードを掲げる。
《Standby Ready》
「変身っ!!」
《Riese Form》
いろんな人たちとデバイスたちの想いがこもった形、リーゼフォームという名の騎士甲冑!
とっておきの切り札、できればマスターコンボイとのデュエットでやりたかったけど、代表決定戦の時はそれどころじゃなかったし。
《The music today is "TRANS-AM BURST"》
更にサウンドベルト!今回はノリもそうだけど緊張感も凄まじい場面だから、敢えて某ダブルオーのBGM。
アルトの強化パーツのある意味で元ネタにも通じるし、たまには電王以外からでも!
……寧ろトラルー辺りが使いたがるだろうな〜、とか思ったのはここだけの話。
ちなみに、今回の音楽発動時間は2分40秒。
このバトルのレベルを考えると下手すりゃ1分しない内に撃墜されそうだし、寧ろ長い方かも。
「変わるんだ!押されてる僕らから、押し返す僕らへ!」
《当然です!》
試合前、ヒルメから応急処置なのでフォームチェンジまではできないって注意は受けた。
けど、今までの一連の攻防でアーマードセイバーの有用性はバッチリ証明された。だから、このままでも充分っ!
勝利の確信と約束を胸に、クリスタルパーツまで青色に染まって輝き始めたアルトを握り締め、
未だに立ち込める煙の向こうにいるであろうスティアめがけて突撃っ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――気配でわかる。向こうが「切り札」きってきた。
それと、BGMか?確かサウンドベルトだったか、アレで流してるようだな。にしても、ここで「TRANS-AM BURST」とは、ニクい演出じゃないか。
隠し立てはなし、だな。だったらオレだって、現状で発揮出来うる最大戦力で迎え撃ってやる!
出し惜しみなんて言葉は、今は捨て去る!!
<サイクロン!マキシマムドライヴ!>
<トリガー!!マキシマムドライヴ!>
《MEMORY-ROAD!SKILL STANDBY!!》
「氷花、一閃っ!!」
「トリガーエアロバスター!!」
煙の向こうから一直線に飛び込んできた恭文の刃を、トリガーエアロバスターの弾丸が迎え撃つ。
基礎スペックを強化されたアルトアイゼンが相手だから、勝てると思って撃ったワケじゃない。
案の定、数秒の拮抗の後に真っ二つになって爆発した。
ちなみにトリガーマグナムは、メタルブランディングと鉄騎一閃の激突で生じた爆風で吹っ飛んだ先に落っこちてきたのを拾った。
そう、落っこちて"きた"。放り出してからずっと宙を舞ってたんだ、あの激突の時まで。
「――だぁぁぁぁっ!!」
「このぉぉぉっ!!」
なおも突っ込んでくる恭文の刃を、メタルシャフトで受け止める。
ガチなぶつかり合いの証拠である火花が散る中、トリガーマグナムの銃身の上部・前半分を左腕に押し付けて通常形態へ変形させ、
既にキルスティルのフィンの内の1ヶ所に装填済みであるヒートメモリを抜いて、再装填。
すぐにキルスティルのヒートメモリが装填されてるフィンに下部を押し付けてもう一度マキシマムドライヴ形態に変形。
<ヒート!マキシマムドライヴ!>
<トリガー!!マキシマムドライヴ!>
《MEMORY-ROAD!SKILL STANDBY!!》
だが、向こうも既に備えてた。空いてる左手に、青い魔力弾が形成されていく。
で、それをこっちに向ける。アルトアイゼンとメタルシャフトの鍔迫り合いを続けている状態で、だ。
だからこっちも迷わずにマキシマムドライヴ形態のトリガーマグナムの銃口を相手に向ける。
「トリガーエクスプロージョン!!」
「アイシクルキャノン!!」
《Icicle Cannon》
ほどなくトリガーエクスプロージョンとアイシクルキャノンも相殺。
またしても巻き起こる爆発。爆風でもう観客席からじゃ戦況は見えないんじゃないか?
まぁ、こちとらそれどころじゃないが。
そんでもって、こっちも全開戦闘といかせてもらう!
キルスティル!!
《ALL SLOT LOADED, FULL DRIVE!!》
<サイクロン!マキシマムドライヴ!>
<ヒート!マキシマムドライヴ!>
<ルナ!マキシマムドライヴ!>
<ジョーカー!!マキシマムドライヴ!>
《EX-DRIVE MODE, START!!》
キルスティルの中心に備えられた4枚のクリスタルフィン、その裏側にある4つのメモリスロット。
その全てにメモリを装填した状態でのみ発動できる、いわゆる特殊モード。
「極限」を意味するエクストリームとお馴染みマキシマムドライヴをかけた、「エクスドライヴモード」だ。
発動と共にキルスティル本体が真紅に染まる。一方でクリスタルフィンは鮮やかな緑の輝きを放ち始める。
まぁなんだ、フィンの輝きについては「エェークストリィィーム!!」な、あの光をイメージすりゃ大体わかる。
で、アビリメモリ4本分のパワーを同時に引き出すから、反動がすごくてあまり使いたくないんだがな。
<トリガー!!マキシマムドライヴ!>
「くらえぇぇぇっ!!」
「はぁぁぁぁっ!!」
《Icicle Cannon》
もう名前なんてつけない、ぶっきらぼうに言えば力任せなトリガーメモリのマキシマムドライヴ。
それに恭文はもう一度アイシクルキャノン。それも、さっきと同じく至近距離でだ。
属性すら持たない、純粋なトリガーメモリだけのマキシマムで引き出されたパワーで放たれた閃光の渦が、
アイシクルキャノンの光と激突し、また爆発を起こす。
ただ、恭文もかなり力を込めてやりやがったな?おかげで爆発も爆風もすごくて、トリガーマグナムが吹っ飛ばされたじゃねぇか。
しかも結構高く遠く飛んでった。こりゃ下手すると試合終了まで回収は無理かもな。
「鉄騎っ、一閃っ!!」
<メタル!!マキシマムドライヴ!>
もう何度目かもわからない鉄騎一閃。恭文の決め技でもあり、主砲でもある。
どっちの意味を持つかは、相手によって変わるって感じか。で、オレとの、いや、ファイナルバトルでは主砲となった、と。
より輝きを強めて袈裟に振るってきたアルトアイゼンの刃を、
メタルメモリのマキシマムドライヴでパワーアップさせたメタルシャフトで真っ向から激突。
火花だけでなく放電まで数秒間ほとばしった後、どちらともなく吹っ飛んだ。
原因はもちろん、メタルシャフトも、アルトアイゼンの強化パーツも、その激突の衝撃に耐えかねたからだ。
強化パーツのクリスタルパーツが砕け、メタルシャフトも吹っ飛んだ上に片方のシャフトの根元が割れた風船みたいに砕けた。
パッと見、メモリスロットも兼ねてる基部のダメージは軽そうだから、まだ修理はしやすそうだが…。
えぇい、今はそれどころじゃないっ!!
トリガーマグナムもメタルシャフトもない!だったら、今のオレに残された武器はもう、キルスティル自体だ!
もう一度オレを狙ってきたアルトアイゼンの刃を、キルスティルで真っ向から受け止める。
更にジョーカーメモリの身体能力ブースト効果も活かして、刃を受け流した直後に恭文を殴り飛ばす。
「クレイモアッ!!」
けど、向こうも対応が早い。至近距離で魔力弾を炸裂させやがった。
しかも拡散弾。キルスティルでガードするが、動きを止められた。追撃はできなかったか。
限界時間は――よし、まだいける!
「キルスティルっ!」
<サイクロン!ヒート!ルナ!ジョーカー!!マキシマムドライヴ!!>
<ATTACK-FUNCTION QUARTET BURST BREAK.>
「アルトっ!」
《問題ありません!》
もう一度装填済みの4本をマキシマムドライヴ。これで今度は専用アタックファンクションを発動。
4本同時ってことで四重奏を意味する"カルテットバーストブレイク"ときた。
止められるモンなら……止めてみろぉっ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
4本のアビリメモリから発せられる、もはや虹色のような輝きを伴う強烈なパワーが分かる。
アビリメモリを扱うこと、それ自体が武装に対して負担を強いる。1本でも自壊する危険性がある。
そんなのを4本同時にやって、使用者だってタダじゃすまない筈だ。
けどスティアは、そんな「タダじゃすまない」技を使うことを選んだ。
あの目に迷いはない。だったら、こっちだって迷ってられない!
向こうが最大攻撃で来るなら、こっちは最大奥義でお返しするだけっ!
「おぉぉぉぉぉっ!!」
解放されたパワーの全てをのっけたキルスティルでの直接打撃。
それを、アルトの刃で受け流しつつ右腕のジガンのコピーで受け止める。
複製ジガンにぶつかると同時に、ミッド式特有の円形魔法陣が展開。
強烈な衝撃。危うくアルトを落としそうになった感じもあったけど、踏ん張る。
ほどなくのっけられたエネルギーが炸裂して、複製ジガンを粉砕する爆発。
……とんでもないね。複製ジガンは粉微塵だし、騎士甲冑の上半身右半分まで吹っ飛んだんですけど。
――だけどっ!
「ひとつっ!」
そこから横に一回転して強引にアルトを袈裟に振るって、
まだパワーを残しているらしいキルスティルの側面に叩きつける。
キルスティルは壊れない。けど、もう防御態勢には移せない。移る前に終わるから。
「ふたつっ!」
すぐさまアルトの刃をかえして、逆袈裟に斬り上げる。
更にフライヤーフィンの力で空中で身をひるがえして――
「みっつっ!!」
がら空きになったボディに大本命の一撃。必殺に必殺に加えた、超をつけてもいいレベルまで強化した一閃。
斬撃と共にスティアの背後に駆け抜ける。
「氷花一閃、瞬・極」
そのまま、スティアは斬撃の衝撃からか、仰向けに吹っ飛んで落下、沈黙。
アーツバトルで倒された時のお約束な光が発せられるのが見えた。
「バトル、オールオーバー。バトル、オールオーバー」
浮遊巡回型に改良されたらしいジャッジカプセルに乗るジャッジマンから、声が。
「ウィナー、チーム・アルト!」
丁度サウンドベルトが「TRANS-AM BURST」のメロディを終えたと同時に告げられたそれは、
僕の、僕らの勝利を告げる言葉。終了宣言であると同時に勝利宣言。
……ぃよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
蒼凪恭文が勝利を手にしたか。
辛勝といったところだが、実に見ごたえのあるバトルだった。
他にも、ファイナルバトル全体を通して参考にできる部分は多かった。
……今すぐにでもな。
「壮絶すぎるファイナルバトル!
その中で最後まで生き残ったのは、蒼凪恭文選手だぁ!!」
角馬王将のハウリングボイス。これもしばらくは聞き納めか。
蒼凪恭文に対し、観客席から惜しみない拍手と声援が送られている。
もっとも、対する彼は立っているのもやっと、といったところのようだが。
さて、そろそろもう1つのメインイベントか。
「おめでとう、蒼凪恭文くん。君こそ、次元世界の覇者だ!
覇者という名の肩書を得た、新しい恭文くんの誕生だよ!スバラシイッ!!
ハッピーバァースデェイッ!!」
そこに舞い降りたのはイディアル総帥。
お約束、しかしながら新鮮さとインパクトを同時に与える祝辞。
「さぁ、約束だ。この輝かしいマイクロンパネルを、受け取りたまえ!」
差し出されたのは、間違いなく優勝賞品である黄色のマイクロンパネル。
神器の1つ、コスモテクターへと姿を変える3体のマイクロンの内の1体だ。
パネルを受け取り、上へと掲げる蒼凪恭文。同時に、パネルが輝く。
この場で覚醒する……ということは。
「このマイクロンは…」
「おぉ、噂と伝説に聞く"スピン"ではないか!実にスバラシイッ!!」
グレーを基調としたプロトタイプカーから車体後部に3本の光が走り、左右が展開して両腕に。
残った中央はそのまま半分になり脚部に、そこから更に下方向・車体前部側に倒れ、腹部〜下半身を形成。
最後に運転席部分が開いて、その顔をあらわにする。
このマイクロンこそ、コスモテクターを形成するマイクロンのリーダー格・スピンだ。
「うわっ!まぶしっ!」
《何事ですか!?》
ロボットモードへと変形したスピンが、突如輝きを放った。
何事か?私も知りたい。
「共鳴反応だ。時にマイクロンは、範囲に制約されない共鳴によって仲間を目覚めさせる。
そして、リーダー格となったマイクロンの元へと導かれるんだ」
種明かしをしてくれたのはトラルーだった。
まぁ、ブレイクオーバーしたところで復活するには十分な時間だっただろうな。
それより、ユニクロン扱いされたことについては、もういいのか?
いいから並び立っているのか。そういうことにしておこう。
導かれたマイクロンは2体。
インディーカーから変形、運転席の左右のブロックを後輪ごと展開、車体前部を反転させて分割、先端部を倒してつま先として足になり、
展開された後輪を肩に、ブロックを腕に。そして後部上面に位置するウイングを下げて頭部を見せる。
名前は「インディー」。
ラリーカーから変形、運転席ごと車体前部が引き出されて分割、足となり、
車体後部の両サイドから腕が展開、シャーシ内部に隠されている頭部がアームごとバック部分に移動。
名前は「ドリフト」。
更にそこから3体が同時に変形。
インディーはビークルモードに。ドリフトはビークルモードから車体を真っ二つに開いて内部のウイングを展開。
スピンは腕以外をビークルモードの状態にして、腕は車体前部に水平に連結して拳部分にあるウイングを展開。
そしてドリフトの前側ジョイントにインディーが、シャーシ部分のジョイントにスピンの車体後部が合体。
更に発光と共に大きな形状変化を起こし、より一体感のある形状の盾へと変貌する。
「スピンが覚醒して、いきなりエヴォリューションとはね」
「じゃあ、アレが」
「そう、コスモテクターだ」
《この時を待っていたよ、ご苦労だったね愚民ども!》
蒼凪恭文の上空に滞空するコスモテクター。だが、それは奪われた。
一瞬の刹那にルシファーが飛び込み、かっさらっていった。
さて、私も出るとしよう。
《ハンター牙、鬼クノイチ、全機起動!》
身を隠していた闘技場の外壁内部、それをダークシューターで破壊しながら飛び出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ダークコマンダー様、コスモテクターを確認したっすよ」
「アストロブラスターとスターセイバーは」
「どっちもミッドに紛れてるみたいっすね」
「ならば問題ない。私の力でどうにでもなるのだから」
「了解っす」
遂に時はきた。ここまでは予定外な出来事の数々で撤退も繰り返してきた。
だが、今度ばかりはそうもいくまい。なにせ、役者が役者だからな。
さぁ、付き合ってもらうぞ……バグジェネラル。
タランスにファントムアークのブリッジの留守を任せ、
甲板へと移動する。地平線しか見えない先を見据え、右手をかざし、"力"を放った。
ユニクロンの意思細胞から変質したという出自を持つ私にしか使えない、私とユニクロンしか持ちえない"力"を。
あの細胞から生まれ落ちた全てのマイクロンを支配できうる、"命令"を。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
やれやれ、ダークコマンダーも無茶をするよ。
すぐに動かせるスペアボディがあるからって、命からがら回収できたAIユニットを移植してすぐに出撃させるなんて。
こちとら、戦闘データのコピーぐらいはしときたかったんだけど。
《じゃあ、あのルシファーは》
「そ。僕が回収したAIユニットをそのまま移植した状態。
まぁ、スペアボディはあくまでも緊急用で、セラフィックモードまでは使えない筈だけど」
ゼノンの問いに正直に返す。
え、どうやって回収したかって?グリームニルに役立ってもらった。
微細なナノマシンの密集によって使用者を別なものに偽造するグリームニルだけど、
何も他の人物や武装を構築するだけが本領じゃない。
光学迷彩みたいに、周りの景色をリアルタイムで偽造し続けることでカモフラージュにも使える。
まぁその場合、グリームニルのAIだけじゃ処理速度が追いつかないから、クヴァシルとリンクして強化する必要があるけど。
ビヴリンディとの連携も必要になるかもと思って、グリームニルの開発と並行してクヴァシルのAIも改良してたりする。
で、ドバン・インパクト直撃の直前に、チャクラムビットでボディの中央部を切り取って回収したワケだ。
「ゼノン。これから先をどう生きるか、覚悟を決めろ」
《なに?》
「極端な話、このままネガショッカーに居座るか、これと縁を切って創主さんの元へ戻るか、だ」
《…………まさか、お前は…!》
「選択次第では、今後君と組む相手は僕じゃない誰かになるってことさ。
悪いけど、選択拒否って答えは聞かない」
さすがに戸惑うゼノンだけど、かまってる余裕はもうない。
これから起こること、というか、ダークコマンダーがしでかすことを、既に知ってしまっているから。
そして、その行いを、同じユニクロンの眷属であっても許すことはできないから。
「もう一度だけ言う。これからお前がどう生きるか、覚悟を決めろ。
僕は――」
この先を憂いてか曇り始めた空を見つめて、誰に言うでもなく声に出した。
「裏切りに近いストライキを起こしてくる」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
コスモテクターがルシファーにかっさらわれてからすぐ、何かが飛んできてルシファーをブッ飛ばした。
悲鳴を上げる間すらなく吹っ飛んでいったルシファーは無視。
なぜなら、ブッ飛ばした本人が問題だから。
「バグジェネラル!」
エヴォリューションすることなく終わってしまったが、バグジェネラルもちゃんと"アレス"に連れてきた。
で、暇だったからか周辺警戒をしていたらしい。ゴメンね出番作れなくて。
……冗談はやめよう。直感でわかる。今のバグジェネラルはおかしい。
バグジェネラルがコスモテクターを侵食してるんだから。
「ちょっとまてい!なんでマイクロンがマイクロンに融合し始めてるワケ!?」
《確かエヴォリューションという現象自体、ユニクロンの細胞ゆえの性質の応用だということは聞きましたけど、
マイクロン同士が合体というより融合するっていうことはあります?》
ないね。少なくとも、ベクターメガトロンたちがドンパチやってた頃はない。
もっとも、バグジェネラルはユニクロンのガードマイクロン・バグの上位種であると同時に変異体だから、
「変調」効果も相まって何が起きても不思議じゃないんだけど…。
まさか他のマイクロンと融合し始めるとは。
「って、また光!?今度は何!?」
《今、2つに分かれましたけど同じ方角に飛んでいきましたよ?》
「……何があるのかわからないけど、とにかくバグジェネラルを引きはがす!」
《正気ですか!?下手するとマスターまで融合される恐れが!》
「マルチフェザーで切り落とす!」
《なるほど》
恭文からすれば、ちょくちょく光って何が起きてるのかもうわからんことだらけだろう。
けど、残念ながら説明することはできない。だって、僕も初めて見るケースだから。
とはいえわかることもある。このままバグジェネラルとコスモテクターをくっつけておくのは、後々よろしくなさそうってこと!
幸い、マルチフェザーにはどこぞのGNソードみたいに本体をビームコーティングすることで外部接触から保護する機能もある。
ビームコーティングされていれば、ユニクロン細胞だってすぐには取り込めない。ついでに切断力抜群だ。
ジャベリンフォルムのイグナイテッドを振りかざし、なおも空中で融合を続けるバグジェネラルへ接近。
文字通り切り離すべく、ビームコーティングしたマルチフェザーの刃を振り下ろs
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
バグジェネラルを切り落とそうとしたトラルーが、いきなり飛んできた2つの光に飲み込まれた。
いったいどうなってるワケ?説明してくれる……というかできそうな人がいないんですけど。
「恭文。今飛んできた光は、スターセイバーとアストロブラスターのマイクロンたちだ」
「はっ!?なんでわかる!?」
「少なくともアストロブラスターは確定だろうよ。
なにせ、とあるスペースでお留守番させてた筈のマイクロンたちが、いきなり行方不明になった。
その時に生じたっていう光が、さっき飛んでって戻ってきた光と同じだったからな」
《あ、防犯カメラ》
「神器なんて大物を、なんの警戒もなく持ってるワケないだろ?」
「そりゃごもっとも」
スティアからの説明で少しだけ真相解明。
つまり、今の2つの光は、バグジェネラルから発せられたトラクタービームみたいなもんで、
遠く離れた仲間の神器、つまりスターセイバーとアストロブラスターも呼び込む為に発せられた。
で、一瞬の内にそのマイクロンたちをかっさらってきたワケだ。
ということは、今カオスプライムが引き受けてるらしいマッハたちも…!?
《やっさん、聞こえるか!?》
「ヒロさん?」
《たった今、ロングアーチ経由で緊急情報が入った!
マッハたちが光に包まれて飛び去ったって!そっちに行ったのは移動方向から確認した!》
「やっぱしですか!今さっきスティアからそんな話を聞いたばかりですよ!」
本当でした。てことは、スターセイバー、コスモテクター、アストロブラスター、神器が勢ぞろいじゃん!
でも、なんでまた!?
「共鳴反応を増幅し、正確に神器のマイクロンだけを呼び寄せた…。
もしかすると、プレダコンズのダークコマンダーの仕業かもしれないな」
「根拠は?」
「ダークコマンダーがユニクロンの意思細胞から変異した存在であることは、前の首領が掴んでいたんだ。
さすがに証拠映像や写真までは無かったが、そう思わせるに十分な情報はごく一部のルートで確認できたからな」
今度はダークハウンドから説明が。
ビシディアンはビシディアンでいろいろ知ってたらしい。すごいな。
どんどん管理局がみじめになっていくじゃないか。
「む?変形するぞ」
「まさか、神器に合体するつもりか!」
ダークハウンドとスティアが見やった先では、呼び寄せられたマッハたちがスターセイバーに。
更にもう一方、アストロブラスターに合体するマイクロン・アポロたちも変形開始。
青い衛星型のビークルモードから、2枚の長方形パネルが折りたたまれて両足に。本体左サイドの長方形ブロックが下方へ。
本体の前と後ろが下に倒れて、長方形ブロックを挟み込むように合体。その時に方向を変えずに展開していた両サイドのブロックが両腕に。
上下を入れ替え、右腕がタンク状のユニットになっているロボットモードへと移行。名前は"ミール"。
白いロケット型のビークルモードから、エンジン部分が左右に分割、本体下部の一部ごと上方に倒れ、90度右回転。
機首部分とエンジン部の変形後も残っている中央のノズル部分が下方へ倒れ、180度回転。
上下を入れ替えて、右腕が機首、左腕がノズル部分になっているロボットモードへ。名前は"アポロ"。
黒いロケットトランスポーター、かな。運転席部分が左右に開き、逆L字型のパーツが車体後部へ移動、そこから180度回転して両足に。
車体後部は中央を囲むようになっている部分が下方へ倒れ、更に両サイドが分割されて腕になる。
逆L字のパーツが背中になって、車体下部が正面を向いたロボットモードへ移行。名前は"ムーヴ"。
リーダー格らしいアポロを中心にして、更に変形。
ミールは上半身だけビークルモードに戻して、左腕だった部分がL字になる。アポロは右腕に当たる機首部分を倒したままビークルモードへ。
ムーヴは両足を後方に曲げて、そこから180度反転。
アポロの機首側にミールが、右サイドのジョイントにムーヴがそれぞれ合体。
更に一瞬だけ発光して、より一体感を増した形状へと変化。けど、コスモテクターほど大きな変化じゃない。
トラルーから画像を見せてもらってたから、すぐに分かった。これがアストロブラスターなんだ。
……で、こっからどうなる。
「っ!?いかん、気をつけろ!」
「へっ!?」
「なんだっ!?」
バグジェネラルからなんか伸びてきたっ!?
しかも、アルトの鍔部分に残ってるアーマードセイバーのプロテクター部分にくっついて……!?
《プロテクター部分が侵食!?取り込まれるっ!?》
「恭文!そのまま動くな!」
「今度はなにっ!?」
アルトがすぐに異常を報告。けど、それとほぼ同時のタイミングでダークハウンドが急接近。
左手に持ったビームサーベルで、プロテクター部分だけをアルトから切り落とす。
いやいや、いやもう、急展開すぎるってば!!
「よく見てみろ」
「え、コレを……うわっ」
《なんかよく分からない物体に成り果てましたけど》
「ユニクロンの細胞には他の物体と接触することで融合する性質がある。
融合というよりは、このプロテクターの成れの果てのように侵食といえるがな」
「……これが、人体だろーがメカだろーが関係なく起こる、と」
「あぁ。接触されたら最後、その物体が存在を保つことはないだろう」
そうか、だから侵食の度合いが低い内に侵食箇所を切り落としたんだ。
あと、切り離した後にビームなどで破壊しておくのも忘れちゃいけないらしい。
百聞は一見に如かずとでも言いたげなダークハウンドは、説明してからドッズガン連射で破壊したし。
とりあえず、どこぞの変異性金属生命体と同じような対処法でよさそう。
…………となると、ただの斬撃でも魔力付与によるコーティングが必要になるけど…。
「もっとも、それだけで済めばまだよかっただろうが」
「…………あー、確かに……」
「かなり面倒なことになってないか?いや、理屈はなんとなくわかったけどよ」
ダークハウンドが見やる先にたたずむ"なにか"は、怪しげなオーラ全開でどこともつかないところを見ている。
スティアが言うとおり、とんでもなく面倒なことになってるよ。
理屈?まぁなんだ、アイツもユニクロンの細胞から生まれ落ちたんだってことを思い出した途端に疑問が解決したよ。
考えてみたら、ユニクロンの細胞同士で組んでたパートナー関係だったわな。
で、くっついちゃったアレらも立派にユニクロンの細胞なワケで。
宇宙最強の3種の神器を、ジュンイチさんすら瞬殺できるようなチートが全部まとめて装備したら、勝てると思う?
"なにか"、それは、全身メタリックブルーのよく分からないものに全身タイツみたいな感じで包まれたトラルー……らしきもの。
右腕にスターセイバー、左腕にアストロブラスター、そして背中にコスモテクターとバグジェネラルがくっついている。
ただ、神器についても持ち手というか基部に当たる部分が侵食されて、それぞれの腕に境界線が分からないくらい融合してる。
……で、頭からは特徴的な縦長で五角形の物体が。全体がメタリックブルーなよく分からないものに覆われてるけど、イグナイテッドだ。
もしかしなくても、まとめて融合されてる!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「な……なに……アレ……!?」
「いったいぜんたい、どうなってるでおじゃるか…!?」
神器3つとバグジェネラルまでくっついた、トラルー的ななにか。いや、トラルーだってのはわかる。
ただ問題は、あぁなってる原因がおそらくバグジェネラルだってことだ。
あと、きっと触れただけでこっちまで侵食されて取り込まれる。
イテンもビコナも、そーいやユニクロンのアレコレについては知識と映像記録からしか知らないんだったな。
もちろん、証拠映像がとれなかった「侵食→融合」の特性については、噂程度にしか知らない筈だ。
「ねぇ……スター、アレいったいどうなってるの!?何か知ってるなら教えてよ!?」
「落ち着けって!具体的なことはオレも…」
「だったら、僕が教えてやるよ」
まぁ、イテンにとっちゃ超第一級非常事態だから、取り乱すのをとやかく言う気はない。
で、アストラルならいろいろ知ってそうだよな。いつ来たのかって指摘は略な。
「まぁそう身構えないでよ。今回の件については確実に君らの味方だから」
「というと?」
「僕だってユニクロンから生み出された精神生命体、いわばトラルーと同類かつ同族だ。
そんな人が他人のエゴで人格否定されて、『ハイそうですか』って容認できるワケないだろ」
「……ダークコマンダーとやらでおじゃるか」
「大正解」
ユーリプテルスの件といい、いらないことばっかりしてくれるよな。
ていうか、アイツ確かユニクロンの意思細胞だったヤツだろ?
いっぺんトラルーにコアを破壊されたことさえあるってのに、よくもまぁ懲りないこった。
んで、今回の一件はダークコマンダーがトラルーの人格を否定することで、
それにアストラルもご立腹ってワケだ。
「コアを破壊した云々は本人からの思い出話か?
まぁそこはいいさ。とりあえず、ざっくりとカラクリを話してやるからよぉーく聞いときな」
とか言いつつ、展開したウィンドウを操作。一気に回線を開いていく。
いろいろな連中に向けてるみたいだな。
「あーあー、今この通信を聞いてるヤツ全員に告げる。
今フィールドの中央に浮いてるよく分からんヤツについてだ。
カラクリはある意味で簡単だよ。ダークコマンダーっていうユニクロンの意思細胞が変質したヤツのせいだ。
アイツが特殊な電波的なモンをバグジェネラルに飛ばして、強制的にコントロール。
更にバグジェネラルに神器とトラルーとイグナイテッドを強制的に融合させて、あぁなるように仕組んだ。
ちなみに、融合させられた連中の意思は封殺されているので、無差別攻撃してくる。
死にたくないヤツはとっとと消え失せるんだな」
そういや、ユニクロンは自分の細胞で生み出したマイクロンたちの精神に干渉して、
意思を封殺した上で体をコントロールすることができるって話も聞いた。
融合された時も一緒だ。取り込まれた連中の意思は封じ込められて、ユニクロンの思い通りにされる。
今のトラルーたちの状態はまさにそれ。しかも、バグジェネラルがいつの間にかダークコマンダーにコントロールされたのが直接的な原因か。
「……さて、どうする?トラルーたちを解放するには、
アレと直接戦うしか方法がないんだけど」
「愚問ってヤツだな。それをオレやイテン、ビコナに聞くか?」
「そうそう!怖いけど、だからって黙ってられないよ!」
「加勢するでおじゃるよ!」
決まってるさ。自分の力を暴走させたことは、アイツ自身が1番覚えてる。
それが自分の感情だろうが、他人のエゴのせいだろうが。今回もその限りかはわからないけどな。
まぁとにかく、このままほっとくワケないだろ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
各ゲート、リンク完了。出力正常。
セーフティソード及びゲートシールド、リミッター解除。
<キー・マキシマムドライブ>
キーメモリ装填、ソード&シールド、ギミック発動。
各ゲート、封印解除。転送プロセス開始。
「ケルベロス、ミッション実行!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
トラルーのことも心配だけど、かといって現場に急行できる余裕はないらしい。
おそらく、というか十中八九ネガショッカーの仕業だろう。
イマジンやらファンガイアやらグロンギやらミラーモンスターやら、いろいろな怪人たちが一斉に出現した。
双頭大蛇や炎帝翼剣のメンテは完了していたので、同じくデバイスのメンテが終わったカイザーズの面々も引き連れて、
私とアレックスはヒルメ周辺に迎撃ラインを作っていた。
「えっと……ポラリスさんもアレックスさんも、判断がお早いですね?」
「一応、これでも王様兼軍人だったからな。軍の総合的な指揮だってしてたんだ」
「なので、素直には喜べませんがこういうことには慣れっこなんですよね」
つかさからの話に私とアレックスが順番に返す。
そう、私もアレックスも王様であると同時に軍人、それも最高階級に位置する人物だったワケで、
兵法なんかもいろいろと教え込まれていたりする。ついでに、「生兵法は怪我の元」という言葉についても。
日本のことわざはいろいろと感慨深い。気持ちは複雑だけど。
《ふふふ……機動六課のトランスポーターに狙いを切り替えてみれば、そうそうたるメンバーじゃないか》
その言葉と共に飛来したのは、ネガショッカーで作られたという人型デバイスのルシファー。
戦線復帰してきた……理由は2つに1つ。
元々AIも同じ仕様にしている予備を持っていたか。それか、AIは回収されて予備のボディに組み込まれたか。
もっとも、あの手のAIユニットを開発するのは非常に大変なので、後者だと思うけど。
《しかし、この大軍勢を相手にして、君たちだけで生き残れるかな?》
「ゴタクはいらないわ。さっさとかかってきなさい」
「絶対に通さないけどねっ」
ルシファーからの言葉に、誰もひるんでいる様子はない。
……つかさを除いて。
《"粛清の堕天使"ルシファー、君たちを排除する!》
背中のブースターの翼をはためかせ、ヘブンズエッジを振りかざしてルシファーが襲い掛かる。
しかし、この場で翼を持つのは何もルシファーだけじゃない。
「ルシファーは僕が相手をします。他は頼みます!」
「お願いします!」
アレックスも、赤い翼を2対4枚持っている。炎帝翼剣を鞘から引き抜いて、炎と共にルシファーへと飛翔。
みゆきもデバイスを起動してバリアジャケットを装着、同様の流れを終えたつかさと共に駆け出す。
それに追随するのは、列車型のトランステクター。
『ハイパーゴッドオン!!』
つかさがレインジャーに、みゆきがロードキングへとゴッドオン。
この二人は等身大戦闘には向いていないので、ゴッドオンによる援護射撃に専念してもらうようお願いしておいた。
特にレインジャーの大火力は、こういう多数の敵を相手にする時に有利になる。
撃ち漏らした敵の排除が、私、こなた、かがみの役目になる。
……もっとも、迎撃ラインに参加しているのは、当然ながら我々だけじゃないんだけど。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《ネガショッカーの大軍団だ!また数の暴力のワンパターンかよ!》
《そのワンパターンで殺されかけた身分で言いたくはないけどね》
《とにかく、いこう!》
闘技場周辺で複数の大規模召喚の反応があったって話で、
もしかしたらと思ったらネガショッカー所属らしい怪人たちがウヨウヨ。
どうやら、また物量作戦らしい。フェンリルがグチるのもわかる。
けど、パンドラがいうこともまたしかりっていう…。
ともかく、迎撃しないことにはどうしようもない。
修理が済んだビームガーターも装備して、俺、パンドラ、フェンリルも出撃。
迅速に現場へ急行する為に、俺が飛行形態になってウイングにフェンリルを乗せている。
飛行形態の方が速いと思って…。あと、パンドラはクレアとパワード・クロスしてる。その方が機動力も上がるとか。
今回は後続としてハカイオー絶斗、ナイトメア、リュウビもいる。
あの3体については、悪いけど自力で移動してもらってる。まぁ時間差攻撃とか、そんな感じってことで…。
《……攻撃予定ポイントについたわ》
「みんな、気をつけて」
《まぁ、死ぬ気はないっての!》
《いくぞ!》
とにかく相手の数が多すぎるから、手数を増やす為にここでパワード・クロスを解除。
ユニゾンは継続したまま、クレアからの心配の声。でもフェンリルの言うとおり、やられるワケにはいかない。
生き残る為に、仲間を守る為に、俺たちは方々へ散っていく。
《……絶対に、生き残るんだ!!》
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
融合、そして変質。それによって変貌したトラルーの目が開いた。
いや、顔もよく分からないものに覆われてて、あの赤い目がカメラアイみたいに見えちゃってるけど。
《マスター、我々全員、先ほどの戦闘でかなり消耗しています。
フルスペック、フルパフォーマンスで戦えることなど殆どないと思いますが…》
「それでも、やるしかないっしょ」
「恭文!オレたちもそれに混ぜてもらおうか!」
アルトを構えたところに、スター、イテン、ビコナのお友達トリオが乱入。
しかも、今回はなんとアストラルまで一緒だ。
「休戦協定、とでもいっておこうか?
これでも僕だってトラルーとは付き合いの長いダチなんでね。
アイツの人格や意思を頭ごなしに否定するようなヤツにはイライラするんだよ」
「で、今回は一緒に戦うと?」
「まーね。……ストライキどころか裏切りだから、ネガショッカーに戻るつもりはないけど」
《確信犯ですか》
どうやら、裏切りとわかっててやってるらしい。
それだけトラルーの方が大事ってワケね。
「俺たちも協力させてもらおうか。現場立会い人なんでな」
「神器3つを一度に手に入れた怪物だ。挑む精鋭は多い方がいいだろう」
「あー、こっちはこっちで数の暴力か」
スティアやダークハウンドまで乗り気だ。こりゃ止める方が野暮だわ。
既に各自武装展開済み、戦闘準備万端。これだけの精鋭をまとめて相手にして……勝ち誇れそうってのが怖いわ。
さすが、禁じ手を使ったとはいえジュンイチさんをも瞬殺できる男。
底知れぬ敗北感が早くもこみあげてる感じさえするけど、それをかなぐり捨てる。
理不尽を切り開くのが、僕とアルトの取り柄であり信条だし。
んじゃあ、こっちもいい加減に腹をくくるとしようか!
(第36話に続く)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―
リティ「うわぁ、大事件発生」
ステンス「チートなヤツにチート極まりない武器と盾がくっついた挙句、敵味方の概念なしな暴走状態だからな」
リティ「しかも迂闊に触れられないのがなぁ…」
ステンス「今回は、その原因である"ユニクロンの細胞"について教えてやる」
ステンス「ユニクロンの細胞には、他の物体と接触した時にそれと融合しようとする性質がある。
まぁ、ユニクロンの体内だからって全部が全部ってワケでもないようだがな。
原作だと触手に絡みつかれたものが取り込まれるって演出だったが、
ある話でマイクロンたちが見せたヴィジョンだと、壁や天井などにめり込んでいる状態になっていた。
融合された成れの果てかはともかく、なかなか気色悪い光景だ。
で、対策についてだが、まず触らないこと、ビームなどでコーティングして物理的に接触できないようにすることだな。
コーティングできれば斬撃などの物理的な攻撃も有効だが、手っ取り早いのは射撃系だな」
リティ「恭文がツッコんでいたけど、なんか某ELSみたいだ」
ステンス「対策については特にな。やることが接触融合ということで共通してるせいだがな」
リティ「対話については、無理なんだろうな……また次回!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
<次回の「とたきま」は!>
ジュンイチ「ユニクロンの細胞がどっかの変異性金属生命体に思えるってだけだな」
スター「何が言いたい?」
ジュンイチ「いや、対処法が見え見えでラクチンに解決できるんじゃねーかと」
アストラル「暴走してなくたって惨殺された事件すらあるのに、その自信はどこから…」
ジュンイチ「人間やめてるから?」
スター「トラルーはそもそも生まれた時点で人間じゃないんだけどな?」
タランス「タランスっす!次回は別な意味で大暴走なトラルーが大暴れ!
他にもネガショッカーの大反撃っすよ!」
ゼノン「それはどうかな?」
第36話:場外大乱闘 〜WONDERFULな逆転撃〜
イテン「話はシリアスなのに予告だとシリアスになりきれないね。このシリーズ」
アストラル「何の話?」
イテン「いや、コレも結局『とまコン』シリーズの外伝、つまり流れを汲んでいるワケだし」
アストラル「あー、確かに…」
あとがき
ということで、遂に"アレス"の優勝者が決まった第35話でした。
恭文とトラルーのどっちを優勝させるかで悩みましたが、大元が『とまコン』ということで、本筋の主人公である恭文に華を持たせました。
リーゼフォームの起用については、初登場のAAA+ランク試験以降はまるで使われてなかったよなー?とか考えたので。
散々予告してた「事件」が遂に発生。トラルー+バグジェネラル(暴走)+イグナイテッド+3種の神器=名もなき異形の怪物。
存在自体が規格外もいいところなものだけが合体してしまったので、スペックが凄まじすぎることに。
次回で解決するんですが、その解決方法を予想しながらお待ちください。
ステンスのコーナーとかを書いてる間も思ったんですが、ユニクロンの融合能力とELSの接触融合ってよく似てる気がします。
まぁ、その融合する「目的」が違い過ぎるので、似て非なるものなワケですが。
次回で第3クールが終わり、第4クールへ移る為のちょっとしたイベントも入ってきます。お楽しみに。
管理人感想
放浪人テンクウさんからいただきました!
恭文、優勝おめでとーっ!
最強じゃなくてもさすがは主人公っ! 決める時は決めてくれますっ!
しかし、優勝の余韻も冷めないうちにダークコマンダーが余計な横槍を。
notシリアスならジュンイチすら瞬殺できるトラルーが暴走とか、どれだけ凶悪な。
こうなったら目には目を、歯には歯を、チートにはチート……逝け、ジュンイチ!(←誤字に非ず