プルトーネ《いやはや、前回の最後で恐ろしいことになりましたね》


   レルネ「プルトーネはなんともないんです?」


 プルトーネ《私は既に掌握しきって別物に変質してますからね。そもそも細胞でもないですし》


  レルネ「あぁ、それもそうですね。さて、ファイナルバトルを振り返っておきましょうか」







 <序盤>

 イグナイテッドのサポートをリアルタイムで受けられるトラルーが乱戦状況下で有利になる。

 途中、ステュムパロスがマキシマムドライブで恭文に挑みかかるが、トラルーに道連れダイブさせられ、

 スティアにトリガーフルバーストで不意打ちをくらい、ダークハウンドに問答無用で撃墜される。



 <中盤>

 恭文の不用意な発言によって、トラルーがブチギレて暴れん坊モードに。

 スティアとダークハウンドが連係し、必殺技の応酬の末にトラルーとダークハウンドが相打ちで脱落した。



 <終盤>

 恭文とスティアの一騎打ち。両者一歩も引かない攻防。

 途中から恭文はリーゼフォームを、スティアはエクスドライヴモードをそれぞれ発動させ、

 壮絶な攻撃のぶつけ合いの果てに恭文が勝利を手にする。







   レルネ「大盤振る舞いでしたね〜。しかし!今回はその余韻に浸る暇もなく大乱闘!」


 プルトーネ《次回以降のストーリーにも大きくかかわる展開が随所にありますので、お見逃しのないように!》


   レルネ「では、第36話をどうぞっ!」














































 

「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






「とある旅人の気まぐれな日常」






第36話:場外大乱闘 〜WONDERFULな逆転撃〜












































 さぁて、威勢よく見栄を張ってみたけど、具体的にどーするか…。


 なにしろ、そもそもトラルーだけでも最凶というか最強というか、とにかく強すぎるってのに、


 そこに三種の神器ともいわれるマイクロン3体合体の武装3つを同時に手に入れた上、


 挙句の果てにイグナイテッドの能力まで加わったとなると、怪物以外の何者でもないでしょうが。


 これはジュンイチさんの暴走態と同等、いや、下手しなくてもそれを遥かに上回るプレッシャー。


 多分、トラルー自身が知ってか知らずか溜めこんでる"鬱憤"が垂れ流される水みたいに勝手に放出されるだろうから、


 一撃の威力も尋常じゃないレベルになってると思う。










 「ドイツモコイツモ…………ブッ壊レチマエェェェェェェ!!」










 いきなりきたぁぁ!アストロブラスターの砲撃!


 全員散開して回避するけど、遅れてきた衝撃波で一気に吹っ飛ばされた。


 なにさこの威力!?覚悟の1つぐらいしてたけど、ありえないレベルでしょうが!


 一撃でフィールドの足場を複数まとめて消し飛ばすって!











 「全員わかっているとは思うけど、念のため忠告!

  当然ながら非殺傷設定は全く生きてないから、くらったらそのまま傷になる!

  もちろん、さっきの一撃をくらおうものなら死ぬどころか消滅する!

  絶対に当たるワケにはいかないぞ!」


 「とーぜんっ!」


 「普段のトラルーだって、マジKILLモードなら平気で解除しちゃうことは百も承知!」


 「そーゆーの全部込みで付き合ってるからな、オレたち!」










 最重要なので改めてでも言ってくれたアストラルの説明。


 うん、きっとユーリプテルスと同じで、強制的に非殺傷設定が解除されてるんだ。


 神器については元からないとしても、イグナイテッドによる攻撃も殺傷力抜群となるとヤバイ。


 ましてやジュンイチさんと違って超機動力特化なトラルーが元だ。


 下手に隙を見せたら、一瞬でられる。




 それでもイテン、ビコナ、スターは冷静なモンで。さすがは長年のお友達。


 ビコナだけは百年以上の付き合いじゃないみたいだけど、それでも十分だわな。









 「チクショオオオオオオオオオオ!ドコダァァァァァァァ!!」









 うわ、アストロブラスター連射してきた!……けど、なんか変。


 だって、こっちを狙ってない。光線は飛んでくるけど、狙いが荒くて回避行動に移らなくても当たらないことも多い。


 寧ろ、違う何かを狙ってるような。









 「消シ飛バサレニ、出テキヤガレヨォォ!!」









 今度はスターセイバーがくっついた右腕をでたらめに振り回し、


 何かを振り払うかのようにガムシャラに暴れまわるトラルー。


 ……もしかして。









 「ねぇアストラル、もしかしてトラルーの標的って……」


 「気づいたか。まぁ、それで正解だと思う。原因が分かったんだよ、アイツ自身も」


 「トラルーがあぁなった原因、となると、狙うなら…」


 「ご丁寧にここにはご不在の、ダークコマンダーかよっ!」


 「だろうね」










 僕の言葉にアストラルからの答えは肯定。続いてビコナ、スティアときた。


 アストラルがなおも否定しないから、確定事項でいいと思う。









 厄介な真似してくれるよ……意思細胞もどきダークコマンダーっ!!




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「あぁーあぁー、面倒連れ込んでくれちゃってモドキ野郎がっ!」







 泉先輩たちとは別方向に出撃した私、みなみちゃん、そしてやっぱり一緒になったスピア。


 スピアが苛立ちもあらわに、シャマシュで手近なファンガイアに襲い掛かる。


 シャマシュ本体が飛んでいく途中で回転、同時に出現した超高温の刃によって一瞬で細切れにされる。


 しかもヨーヨーみたいに動かせるものだから、一瞬で複数の怪人が細切れにされていった。








 「みなみちゃん!こっちも負けてられないッスよ!」


 「分かってる!」








 もちろん、私たちもアイアンフィスターやストームライダーは起動済み。


 進路上にいたイマジンやグロンギを叩き潰し、蹴り飛ばしていく。










 《そこから離れてください!散弾いきますから!》


 『っ!?』


 <ATTACK-FUNCTION RAIN BULLET.>









 横から飛んできた声にびっくりしたけど、ヤバそうだったので素直に後退。


 そしたらいきなり空から大量のエネルギー弾が降り注いで、怪人たちを次々と撃破。


 アタックファンクション、ってことは、最近流行り?の人型デバイスの誰かッスか?









 《ビビンバードレッド!》


 《ビビンバードブルー!》


 《ビビンバードイエロー!》


 《ビビンバードブラック!》


 《ビビンバードピンク!》




 《《《《《オタク文化の守護者!ビビンレンジャー!!》》》》》









 なんか戦隊ヒーローみたいなのがキターッ!?


 あ、そーいえば、ノーザンとビコナにブッ飛ばされてたヤツらも混ざってるッスね。


 忘れてたけどアイツら5体でチームだったっけ。








 《我々も加勢します!共に戦い、悪の怪人軍団を成敗してやりましょう!》


 「え、えっと、ひより…」


 「こーゆーのはノッておくのが得ッスよ。とゆーワケで、大歓迎ッス!」


 「ビビンバードの奴らったら、張り切っちゃってまぁ。

  こーゆーのって袋叩きにされない程度に暴れて、ギャラもらってずらかるモンじゃないスかねェ」


 《甘い!こういう時にこそ誰よりも目立つほどに強く立ち上がるのがヒーローだ!》









 リーダー格らしい赤いヤツが代表して参戦表明。まぁ、一気に5人も増えたんだから、手数としてはありがたいッスよ。


 それに、スペックは決して弱くない筈だし、ネガショッカー相手にはとにかく手数も必要。


 うれしい誤算ってヤツっすね〜。


 ブルーがちょっと間違った主張をしてるような気がするけど。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 おのれプレダコンズ!トラルーたまに対するあの仕打ち、許すまじ!


 いきますよ全ステップ省略の超無双合体!!







 《邪魔をするでないわ、愚か者めが!!》


 「数だけ多いのが一番タチ悪くて面倒なんですよっ!!」







 一瞬でクロス・アインたちを合体させ、ユニオンカリバーの水平薙ぎ払いで怪人たちをまとめて切り捨てる。







 「とっとと消えてもらいますよ!?

  ヤラレ役のクセにしぶとくわいてくるゴキブリみたいなヤツらめ!!」








 なおも飛びかかってくる怪人たちは、スコールピオの1〜6番全てをファングとして迎撃。


 更に周りに沸いて出る連中も振り向くことすらなく駆逐していく。


 アンデッドまで飛び込んできたけど、ユニオンカリバーによる力任せな斬撃で叩き潰す!








 《創主レルネ!先行しすぎです!

  気持ちはわからなくもないですが落ち着いて!》


 「これが落ち着いていられますかぁぁ!!

  意地でもダークコマンダーとかいうのを見つけてしばき倒してやらないと気が済まないんですよ!!

  トラルーたまを丸ごと利用して破壊の権化にさせるなんて、万死に値する!!」


 《落ち着かなくてもせめて戻ってきなさいよ!

  孤立して袋叩きにされでもしたらどうするつもり!?》








 後方にいるプルトーネやジ・エンプレスから抗議が上がるけど、断ります!


 前も後ろもわからないほどの奥まで進まなきゃ、元凶にはたどり着けないというお約束!


 強引にでも突破させてもらいます!!








 「サーチ!エヴォリューション!!」


 《ATTACK-FUNCTION CASCADE CALIBER.》








 背中のスラスターにサーチをエヴォリューション。


 実に1クール分以上も使っていなかった必殺技カスケードカリバーで眼前の群れを消し飛ばし、


 撃ち漏らしを文字通り強引に弾き飛ばしながら前進。








 鬼畜なのは何もハッカーの時に限った話じゃないこと、思い知らせてあげますよ!!




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 《大変なことになりました、突如怪人の群れが現れ、闘技場周辺で大暴れしております!》







 なんてこった、急展開なのは別に慣れないことじゃないけど、


 今回は通常ですらチート極まりないトラルーがガチで暴走しているときた。


 オマケにネガショッカーの怪人どもがワンサカ。現場とは次元の隔たりすらあるだけに、急行できないのが辛い。


 オレの重力操作があれば、大群相手だろうがかなり戦えると思うんだけど…。







 「だが、こうなれば連盟警備団も黙ってはいない筈だ。

  もうじき迎撃に当たっている選手たちに混ざって応戦しに出てくるだろう」


 「そうでもなきゃ警備団として機能してないしね」


 「それもそうだが、連盟上層部は元からこういう事態は想定していたようだぞ。

  それ故、予選のユーリプテルスの件で動けなくなったというデメリットを残しつつも、広範囲に人員を展開するという選択を取った。

  今回は想定通りの状況になっている筈。それに敵は決して幹部級とまではいえないレベルばかり。

  被害は最小限に食い止められると思う」








 ゼロイクスって結構ランクの高い立場なのか?


 上層部の思惑が結構具体的に分かってるみたいだし、少なくとも戦闘の素人ってことはないだろ。


 かといって、オレとブイリュウとアイツとで、このお茶の間から見守るぐらいしかできないんだけど。


 ……あー、でも、アイツらが脱走したのが、ここで嬉しい誤算になるとは思わなかった。








 「鷲悟、ずっと頭抱えてたもんね……セイカたちが逃げ出してた時」


 「当たり前だ、ジュンイチからある種のお目付け役を任されてたんだぞ。

  これをネタに何かほじくられてみろ……実の弟だろうが圧砕しかねなくて自分が怖い」


 「……まぁ、ジュンイチだしね…」


 「どうやら、柾木ジュンイチは身内相手でも日ごろの行いが悪いようだな……」








 ブイリュウはわかってるようでなにより。ゼロイクスは……まぁしょーがないか。けど、ある意味で身内相手の方が酷いぜ?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「ぶえっくしゅ!」


 「どうしましたか?」


 「ここにきて風邪ひいたかー?」


 「風邪じゃねーよ」


 「なんだ、そうなのか」








 多分、誰かが遠くからオレのこと噂してたんだろ。


 それより、セイカもライもヤミも、そろそろ集中しろよ……くるぜ。









 「案ずるな。あんな塵芥、我の魔法ですぐにでも――」








 「させるかぁっ!!」


 「ぬぉっ!?」








 ヤミが広域攻撃系の魔法を使おうと構えたところに、なんか見覚えある紫の液体。


 なので迷わずヤミの頭をつかんで引き戻す。やっぱお前らも出てきやがったな、アウゲイアース!









 「今の攻撃に対処できるか、さすが黒き暴君」









 その手に握るのは、ドクロの意匠が見受けられるアビリメモリ。








 <スカル・マキシマムドライブ>




 「そういえば、戦闘形態のお披露目はしたことがなかったな」








 マキシマムと同時にローブ部分が分解、灰色のボディースーツの上に白衣ならぬ黒衣をまとう。


 左胸にはメモリスロット、中にさっきの「スカル」とかいうアビリメモリ。


 戦闘形態というには釈然としないが、まぁローブで体の殆どを覆っている状態よりかは動きやすいわな。


 それに、アウゲイアースの武器はケミカルデロドンと名付けられたあの溶解液なワケで。








 「それはそうと、我ら全員の戦闘準備も万端だ。ここからが攻めの本番だと思ってもらおうか」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ディフィカルター12各員、予定ポイントへ配置完了。


 キーメモリ、マキシマムドライブ終了。ソード&シールド、ドッキング解除。


 これより、戦闘行動を開始する。










 獰獅子霊どうししれいのネメア、突き進む!」




 九頭蛇霊くずへびれいのヒュドラ、シメてやるぜ!」




 俊鹿霊しゅんかれいのケリュネイア、ぶっちぎるぜ!」




 猪突霊ちょとつれいのエリュマントス、ぶっとぶよ!」




 濁厩霊だくうまやれいのアウゲイアース、ゆくぞ!」




 怪鳥霊かいちょうれいのステュムパロス、参ります!」




 暴牛霊ぼうぎゅうれいのミノス、ぶちのめしてやるぜ!」




 怪馬霊かいばれいのディオメデス、駆け抜けようか!」




 戦女霊せんじょれいのヒッポリュテ、いかせてもらうわ!」




 猛使霊もうしれいのゲリュオン、いくよ」




 活栄霊かつえいれいのヘスペリデス、バッシャーンといっちゃうよっ!」




 獄番霊ごくばんれいのケルベロス、打ち砕かせてもらう!」









 我らディフィカルター12が同時に各所で行動を起こした場合、どれほどのことになるか…。


 その目に焼き付けるがいい。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 さて、オレもそろそろ動くとするか。


 本来なら蒼凪恭文なり隊長陣なり、エース〜ストライカー級のヤツを潰してしまいたいところだが…。


 まずは。









 「それでわらわ達を狙ってくるとは、しつこいのぅ」


 「まがい物とはいえ、オレも電王に変身できる身なんでな……ライバルは減らした方がいいだろう?」


 「ライバルって、やっぱ僕たちのこと…だよね!?」


 「いずれは本家電王も始末したいところだが、ヤツらは今回どこにもいないからな」








 メープルにサニー、ミシオといったか。どいつもこいつもネガショッカーに加わらないばかりか敵対してきやがる。


 挙句の果てに万蟲姫のイマジンとなり、仮面ライダーに変身するなど、もってのほか。


 オレのネガ電王とも、野上良太郎の本家電王とも、ワケが違う。キッチリ始末させてもらうぞ。









 「んで、そんな大所帯なワケじゃな?暇そうじゃのぉ?」


 「暇だから大所帯じゃないぞ?盛り上げつつ始末する為の手配だ」


 「そーゆーことにしとこうかの」








 オレの両サイドには、デスイマジンとワスプイマジン、上空にブルーバードイマジン、そして周りにその他大勢の怪人軍団。


 いずれも無言で万蟲姫たちを見据え、始末する時をうかがっている。


 ……実はもう1体、ウルフイマジンもつれてきていたんだが、そちらはホーネットにとっ捕まって退場済みだ。









 「アークストラッシュ!」




 「デビル・ビーム!」




 一刀断絶斬いっとうだんぜつざん!」










 そこに割って入る斬撃波2つと大きな魔力ビーム。後退して回避するが、巻き添えでこちらの部隊は8割以上やられた。


 オレ、デスイマジン、ワスプイマジン、ブルーバードイマジンは健在。だが、この減り方は少し予想外だ。


 横槍で邪魔をするか……ヴァイス族の生き残りども!









 「悪いけど、君たちを放っておくのはデルポイ大陸にとっても限りなくよろしくないのでね」


 「というワケで、遠慮なく叩き潰させてもらうわ!」


 「ついでに、オイラも忘れてもらっちゃ困るっすよ!」









 アークにアルカナ、チーム・ヴァイスの2名に加え、チーム・ストゥルムのマキト。


 よもやこちらに割り込んでくるとは。……いや、マキトだけは想定内か。


 今回持ち込んできた武器は、ヤツと因縁のあるシロモノだからな。









 「ややっ!そなたがアーク殿かえ!?一度お会いしたかったぞよ!」


 「君は確か万蟲姫、だったね。なかなか数奇な人生を送っているようだけど、たくましそうで何よりだよ」


 「たくましすぎて話聞かないとか噂立ってるっすけどね?」









 で、万蟲姫側に加わる、ということは……貴様らもネガショッカーに敵対する者と見ていいな?









 「そうしてもらおうか。個人的な恨みはないけれど、デルポイ大陸で好き勝手はさせない」


 「さぁ、変身してガツーン!と決めてやるのじゃ!」


 「不完全燃焼を完全燃焼に変えてやるもんね!」


 《Sting From》


 「覚悟なさい。アーク様とアルカと電王、この三拍子は負けない三拍子だから!」









 メープルを憑依させた万蟲姫が電王へと変身。


 確かフォーム名と通り名はスティングだったか。








 「仮面ライダースティング。さぁ、貫くよ!」


 「魔剣士アーク、1人のデルポイの民としてお相手しよう」


 綺羅星天きらせいてんアルカナ、主君の道を切り開きます!」


 「マキト With 袈津尾丸、戦闘開始っ!」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 とにかく撃ち落として回るしかない。


 幸い、ドミニオンライフルはヒルメさんの修理のおかげもあって絶好調だしな。


 早急に狙撃ポイントを確保して、あとはひたすら狙撃あるのみ。


 獣型の基礎フレーム「ワイルドフレーム」のおかげもあって、結構素早く動けるのは助かったな〜。


 ただ、数が多すぎるんだけどよ!








 《ったく、次から次へと湧いてきやがって!》


 <ATTACK-FUNCTION HAWK EYE DRIVE.>








 とにかく湧いて出てくるイマジンやらアンデッドやらインビットやら、まとめて撃ち貫く。


 ミアキのレーザーカッターとかあると、結構ラクチンなんだろーなー。


 けど、こちとら機動性込みの狙撃をウリにしてるワケだしな。








 「いつぞやのお返しをしてやるっ!」


 《またお前かよ!》








 今度はエリュマントスかよ…面倒な時にきやがって!




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「さぁ、あたしらもいくぜあやの!」


 「ま、待ってよみさちゃん」







 今度こそ初お披露目!そして活躍してやる!


 あたしとあやの専用のデバイスで、撃墜数稼ぎまくってやるってヴァ!







 「ターボインファイター!」


 「アームズプロテクター!」




 『セットアップっ!!』








 あたしが掲げた「風を切る格闘家」を描いたバッジと、


 あやのが掲げた「水を切る防衛者」を描いたバッジが、それぞれ光を放つ。


 んで、そのままバリアジャケットと基本装備の展開。




 あたし専用の「ターボインファイター」、ジャケットは黒のインナースーツの上に黄色のベスト、


 グレーのショートパンツ、肘と膝にボクシングとかで使うプロテクター、あと両手に手甲と、タービンみたいな形した武器。


 確か「ブーストナックラー」っていう装備で、ジェット機みたいな推進力で殴ったりできるんだよな。


 コイツをストラバレルとかゆーヤツにお見舞いしたかったんだけどなー。




 あやの専用の「アームズプロテクター」、ジャケットは黒いインナーの上に足の丈が膝まで届くタイプのグレーのツナギ服。


 その上にブロードサイドの両手みたいな形したでっかいグローブと、裏側にアンカーまでついたブーツ。どっちもマジで固いんだ。


 上半身の鎧にもなってる背中の装備「マルチプルランチャー」で、ビームとか大砲とか撃てる。


 ターボインファイターもそうだけど、ゴッドオン状態での戦い方と似た装備だっけか。いーなー、使いやすくて。








 「似た装備っていうけど、寧ろ戦い方が似たものになるように設計してもらったんだよ?」


 「あ、そうだっけ?」


 「スタースクリームにまで無理を言って、1週間以内に作ってもらったんだもん。全く新しいのなんて無理だって」


 「あー」








 レルネ1人で作ったんだっけなー、コレ。








 「とにかく、私も援護するけど、あまり突撃しすぎちゃダメだよ?みさちゃん」


 「分かってるってヴァ!」








 イマジンだろーがファンガイアだろーがアンノウンだろーが、まとめてかかってこい!


 返り討ちだってヴァ!!




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「はぁぁっ!」


 《くっ!》






 ディオメデスが繰り出した刃をかわしつつ、ホープ・エッジで手近なグロンギを切り捨てる。


 けど、もう一方のグロンギのハンマーで左腕のホープ・エッジを叩かれて、バランスを崩してしまう。


 腰のスタビライザーに内臓されてるバーニアで急加速して距離を取ったけど、ちょっと危なかった。







 「孤軍奮闘とはこのことか…。

  そんなリーチの短いダガーだけでここまで僕らを追い詰めてしまうとは」


 《この一帯だけで30体以上の怪人を投入しておいて、よく言うわ…!》


 「ネガショッカーの組織規模の大きさゆえ、かな?」








 今度は後ろからファンガイアが剣を振りかざして襲い掛かってきた。


 素早く身をひねって紙一重でかわして、そのまま右のホープ・エッジでカウンター。


 2方向から飛び込んできたモールイマジンとオルフェノクを回し蹴りで一蹴。


 けど、更に違うイマジンから攻撃が飛んでくる。


 ハッキリ言って、攻撃の激しさなら以前の刑務所跡での戦いの比じゃないわ…。








 《こんなにたくさん……無茶よ!》




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「ジェットガンナー、ランスター二等陸士と共にトランスポーターの防衛行動に入る!」


 「今回は数が多すぎる……気を抜くんじゃないわよ!」







 とにかく手数を増やしたくて、ジェットガンナーとのゴッドオンはなし。


 あらかじめ作っておいたクロスファイアで先制攻撃し、できた穴に飛び込んで混乱する敵を各個撃破していく。


 けど、だからといって極輝覚醒複胴艦から離れすぎないことは忘れない。


 ジェットガンナーが言った通り、あくまでも当面の目的は今回唯一のトランスポーターであるアレの防衛なんだから。


 アレを壊されると、ミッドに帰る手段が無くなっちゃうし。








 「スバル!あんまり離れたら怒るから!」


 「わ、分かってるよティア〜!」








 スバルはこっちで一緒に行動。ロードナックルの修理が間に合ってないし、フォワードは連携してこそ強みが出るし。


 …………まぁ、模擬戦するようになってからすぐに、トラルーから「執務官志望なのにそれでいいの?」って否定的な疑問が出てきたけど。


 ある意味、今の不利な状況って、その典型的なパターンなんじゃ。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「アイゼンアンカー、そっちをお願い!」


 「めんどくさいけど了解!エリオの為だし!」


 「で、結果的にみんなの為なのでござるな」


 「さーねっ!」






 スバルさんとティアさんとは別エリアで、私とエリオくん、シャープエッジ、アイゼンアンカーで防衛。


 今は広域火炎攻撃ができるフリードを中心にして陣形を作って、こっちに迫る敵をエリオくん達が撃破してる。


 でも、あの数はちょっと多すぎる。いっそヴォルテールに…。







 「残念だけど、それは無理だ」


 「青木さん?」


 「このデルポイって世界とミッドじゃ、次元の隔たりがあって、召喚術の効果がシャットアウトされちまうんだ。

  だから、アルケミックチェーンとかはともかく、ヴォルテールをここに呼び出すのは無理。

  フリードだけでも連れてきてたのが不幸中の幸いだよ」







 次元の隔たり…。でも、地球に来た時には他の召喚術も…。








 「おそらく、単に管理世界って呼ぶだけじゃ足りないくらい強くて大きな境界線。

  決してこじ開けられない開かずの扉。そういった感じだ。で、その開かずの扉に召喚が阻まれてしまう」


 「そんな…」


 「だから、今回はヴォルテールには頼めない。今の戦力だけでしのぐしかないんだ」








 そう言って青木さんは、スティンガーインパクトで手近にいたグロンギを手早く倒す。


 でも、できないってわかった以上は、出来る範囲で何をするべきか考えなくちゃ!



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「数が多すぎる……コンボを使うには不都合か」


 「いや、そうでもないみたいだぞ」


 「なに?」







 確かに、いくら数が多すぎるからって、すぐにコンボを使うのはダメだってわかる。


 俺がコンボを使うと、本来の力を発揮できる代わりに、消耗が激しすぎるんだ。だから、簡単には使えない。


 ……んだけど、本当は寧ろ適任なコンボがある。だから、ステンスのぼやきは軽く流して、すぐに頼むことにする。







 「ルアク、君のコンボを使いたい」


 「リティ?」


 「ガタキリバのアレなら、寧ろ戦いやすくなるんじゃないか?」


 「そっか、アレだね!」







 すぐに分かってくれたルアクが、自分のメダルの内「クワガタ」と「カマキリ」の2枚を俺に渡してくれた。


 もちろん、すぐにオーメダルトレイサーにセット、そのままオースキャナーでセタッチ。







 <クワガタ!カマキリ!バッタ!ガ〜ッタガタガタッキリッバ、ガタキリバ!!>








 ルアクのトレイサーの名前でもある、ガタキリバコンボ。昆虫系コンボだ。


 けど、俺とルアクとでバリアジャケットの意匠の一部が違う。まず頭のクワガタの顎みたいな部分が、V型からH型のヘッドギアタイプに。


 口元を覆うように緑のスカーフが追加され、ルアクの時は露出してた腕、足、お腹を隠すようにグレーのインナースーツが。


 カマキリソードとバッタレッグも鋭さを増した形状になって、より攻撃的な輝きを放つ。


 髪の色は黄緑になって、いつもは後ろで束ねて1本にしている後ろ髪が2つに分かれ、マフラーみたいになびく。瞳はオレンジになる。



 そして、俺が使うことで真価を発揮する、ガタキリバ固有能力といえば…。







 《ブレンチシェイド、最大出力!》







 実態を持った分身を作り出せるブレンチシェイド。ただし、一度に最大50人まで分身できるようになった。


 ルアク単体だとパワー不足で、2体ぐらいが限度だったんだけどね。


 というように、俺がコンボを使う利点としては、主にコンボ固有能力の真価を発揮できることにある。


 逆に俺の消耗が激しいのが弱点だけど。








 「よし、いくぞ!」


 「せいやっ!」


 「はぁっ!」


 「てやっ!」


 「せいやー!」









 分身たちは、スペックだけじゃなく意思も本体とほぼ同等。だから、安心して戦闘を任せられる。


 決して猫の手なんて比喩されるほど弱くはない。きっと。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「取り敢えず、恭文とスティアは後方だ。

  さっきのバトルのダメージが大きすぎるからな」


 「ダークハウンドは?」


 「心配ない。優秀な仲間によってリペアは完了している」









 オレの言うことに恭文から別方向で質問が来たが、


 ダークハウンド本人がその心配を吹き飛ばしてくれた。


 ま、ブレイクオーバーした時点でステージから強制転送されて、各チームの控え場所に飛ばされたのが見えたしな。


 ステュムパロスが脱落した途端に消えたからどーしたかと思って、ソナーに調べてもらってたんだなーコレが。









 「んで、具体的にどーすんだアレ。

  物理的な攻撃は全部NGとして、遠距離攻撃だけじゃ隙を作るのは難しいんじゃないか?」









 まぁ心配すんなってスティア。オレらだって別に策なしで来たワケじゃねぇから。










 「先に言っておくけど、今のトラルーにガス欠は期待しないことだね。

  神器3つが同時に融合している、つまり疑似的にではあるがユニクロンの動力事情と同じ状態になっている。

  無限動力機関と化している神器たちからエネルギーが供給されて、トランスカウンターも無制限で使用可能だ」


 「けど、逆を言えば、1つでも神器を引き離せば供給率は落ちる筈だ。

  アイツらには申し訳ないが、強引に切り離す。具体的には、何人かが注意を引いて、恭文の魔力斬撃で切り落とすって形だな。

  他にはイテンのトレントブレードもレーザーでコーティングするし、ダークハウンドのビームサーベルもOKだ」


 「つまり、僕は一瞬の刹那にだけ斬撃するよう心がけろ、と?」


 「そうなるな。ただでさえ、さっきのバトルで魔力の消耗も激しいだろうしな」









 アストラルからの注意事項だって、とっくに了承済みだぜ。


 神器同士の反発効果。それを強引に押しとどめることで、膨大なエネルギーを得ることができる。


 それを動力炉として転用しているのが、ベクターメガトロンたちの時代のユニクロンであり、今の暴走トラルーってワケだ。


 ただ、バグジェネラルの存在がどう関与してるんだか…。










 「バグジェネラルは、3つの神器を反発エネルギーもろともトラルーに融合させる役割を果たしているんだろう。

  自身の体を分解され、トラルーや神器にまとわりついている異物に変換されている。

  もっとも、スパークまでは別で、某太陽炉のカバーみたいなドーム状のパーツが背中にあるみたいだけど」


 「バグジェネラルのスパークって太陽炉?」


 「いや、あくまでも位置的な意味での話でおじゃるよ?」


 「だな」









 イテンのボケは天然か意図か。まぁ、ボケれるだけ精神的には落ち着いてるってことにしとく。


 だからビコナ、そこは華麗にスルーしてもいいと思うぞ?









 「大まかには、接近戦を得意とする者が神器を切り落としてトラルーから引き離す。

  他の面々……特に射撃が得意な者か。そちらが援護に回ると」


 「そういうことだ。まぁ、できれば明確な分担をつくっておきたいかな」


 「なら、俺は切り離し役を受け持とう」


 「オレは援護役だな」








 ダークハウンドのまとめから、役割分担の話に。で、ダークハウンドは率先して切り離し役を買って出てくれた。


 オレは……切り離し役は迷わず辞退した。


 いや、ビームサーベルないし、ハンマーモードのルディンとブロウクンファントムじゃ無理あるし。


 切り離されたヤツを弾く、ぐらいはできそうだけど。









 「恭文は言うまでもなく切り離す役。魔力は斬撃のみに」


 「まぁ、しょーがないね」


 「私は援護役でおじゃるね。魔力斬撃もできないワケじゃないけど、トラルー相手だと効率悪そうだし」


 「オレも援護役に徹するか。斬撃装備は持ち合わせてないし、トリガーマグナムは無事だったからな」


 「僕はチャクラムビットで射撃も斬撃もできる。二役分の働きもできるかもしれない」


 「……で、イテンはどうする?」










 恭文についてはアストラルからご指名された。まぁ、オレも切り離し役を押し付ける気マンマンだったけど。


 ビコナとスティアは援護役、アストラルは両方。ホント味方に回れば便利なシロモノだよな、チャクラムビットって。


 で、オレは問うワケだ。ボケたかと思えば沈黙し始めたイテンに。











 「まぁ、気持ちはわからないでもないぜ。

  愛人に刃突き立てるマネなんて、ホントはしたくないだろうしな。

  けど、自分の武器の特性ぐらい自分がよく分かってる。だから一緒に来たんだろ?」


 「安心していい。僕やトラルーは、冥土と閻魔と死神に最も嫌われた存在だからね。

  殺したって死にはしないさ。だが、愛する者に刃を向けるのは、本来は狂気の沙汰だ。

  無理強いはしたくない」











 ファイナルバトル前夜、ポラリスがアストラルのことを敵と思いたくないって言ってたな。


 ユニクロンから意図的に生み出されたのに、かつてのノイズメイズとかとは違って、悪意が薄い。


 それどころか、今はイテンの心情をくみ取っている。


 無理強いはしたくないって、お前…。










 「愛する者に殺されるなら本望、というのはよく聞くが、

  殺した側からすれば後味が悪すぎる。ましてや、今回の場合はトラルー自身の意思ではないだろう。

  意思に反する殺し合いなんて、愚かしい話だ。ここで引き下がったところで、非難する理由も権利もない。

  だから、結論は自分で出さなきゃ意味がないんだ」


 「後悔しない為にも、な」









 トラルーがアストラルに敵意を向けない理由、なんかわかるな。


 立場さえなければ、フツーに仲良しでやっていけるんじゃないかってくらいにな。


 それはまぁ、また今度でいいだろ。








 「イテン、どうする?」


 「…………何も言わなくていいよ……」


 「やはり、既に結論は決まっていたか。無駄な質問だったかな、失敬」


 「ううん、アストラルがイイ人だってわかったから、それでいい」








 答えは、両手に握りしめられたトレントブレードの存在だけで十分だったみたいだ。









 「自分の願いは、自分で叶えなきゃ意味がないからっ!!」









 刀身をエネルギーコーティングし、誰よりも早く飛び出した。


 よし、やるか!




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 グロンギの刃をビームガーターで受け止めて、リタリエイターで素早く切り倒す。


 ファンガイアやアンデッドも切り倒しながら突破、別なグロンギを踏み台にしてオルフェノクの胸を刺し貫く。


 そのオルフェノクを蹴り飛ばしてアンデッドをもう一度切り倒し、それを踏み台にしてジャンプ。







 <ATTACK-FUNCTION JET STRIKER.>







 フォースチップをイグニッション、飛行形態に変形してJETストライカー。


 これで密集していたインビットを一網打尽に。


 効果終了と同時に変形、飛び込んできたイマジンの攻撃をビームガーターで防ぎ、切り倒す。


 後ろから飛び込んできたショッカー戦闘員は右回し蹴りで退場。


 ……そういえば、戦闘員まだいたんだ…。







 《さすがだな、"アキレス"の頃から戦闘経験を積んでいるだけのことはある》







 その声と共に飛んできたビームはサイドステップで回避。







 《考えてみたら、こうして鉢合わせするのは初めてだったな》


 《お前が、アキレス・ディード!》








 飛行形態でないと飛行はできない俺と違って、


 アキレス・ディードは変形も追加装備もなしの自力で飛行できる。


 だからか、シルエットは俺よりもよっぽど"アキレス"に近い。


 名前もその名残かな。


 けど、今は俺とあいつは敵なんだ。ネガショッカーなんかに入って!








 《……どうやら貴様は誤解をしているようだ》


 《なに!?》


 《私は別にネガショッカーに手を貸しているワケではない》


 《なら、なんで六課の敷地内に忍び込んでた女の子を逃がすマネを!》


 《私にとっては、ネガショッカーも管理局も等しく敵だからだ》


 《どういうことだ!?》


 《これ以上は答えかねる。だが、1つだけ教えてやろう》








 そう言うと、片手銃の銃口をこちらに向けて――








 《私と貴様が敵同士なのは、貴様が管理局の組織に与しているからだ!》








 その引き金を引いた。けど、当たるワケにはいかない!


 サイドステップでかわし、連射されてきた光弾も更にサイドステップとビームガーターの防御でしのぐ。


 ……アイツも特殊モードを持っていて、発動中の武器の威力は強烈だって報告があった。


 なら、出し惜しみしていたらやられる!







 <EXTREME MODE.>







 俺の動力部のリミッターを解除して、全身が金色に輝き始める。


 "エクストリームモード"、その名の通り、出力の臨界点ギリギリで活動する極限状態だ。


 このパワーなら、いくら相手が射撃1発で隔壁を破壊するようなヤツだって!







 《ハンター牙!鬼クノイチ!ヤツを抑えろ!》


 《邪魔だぁぁぁっ!!》








 アキレス・ディードの言葉で突然襲い掛かってきた黒いハンターと黒いクノイチ。


 けど、そんなの関係ない。3倍相当の出力を得た今の俺の一閃で、出てきた6体を一気に破壊。







 《えぇい、創主レルネの純正品はバケモノか!!》


 《お前が言えたことじゃないだろ!?》








 どうやらチャージしていたらしい。こっちにまっすぐ放たれた、アキレス・ディードのチャージショット。


 弾速が早くて回避が間に合わないから、仕方なくガード。けど、ビームガーターにも弱点がある。


 ビームバリア発生器も兼ねている本体の強度が、どうしてもビームバリアより劣ってしまう。


 多分、それを突かれた一撃だったと思う。防いだところに、通常弾の連射を大量に叩き込まれて、チャージショットの光弾が炸裂。


 持っていた左手は大丈夫だったけど、ビームガーター自体は耐えきれずに爆散。


 正直な話、やられたって思う。けど、それで引き下がれるもんか!








 《フォースチップ、イグニッション!》


 <ATTACK-FUNCTION JET STRIKER.>




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 爆発!?あの方向は、確か…!






 「オーディーンが戦闘しているエリアの筈っすね」


 「まさか、やられた…!?」


 「いや、反応が消えていない以上は大丈夫な筈であります!

  ポラリス様、援護に向かう許可を!」






 ひよりが言ってくれた通り、オーディーンが戦闘開始したエリア。


 みなみの心配は、ワイルドウィーゼルのレーダー機能をフル活用中のパスナが解消してくれた。


 パスナは援護を買って出てくれたけど…。







 「こっちも敵の数が多すぎる。迂闊に戦力は割けない」


 「むぅぅ……あ、こちらから向かう必要はなさげでした」


 「え?」


 「向こうからこっちに突っ込んできますよ?」


 「っ!」







 気づけば、ジェット機のような轟音と共にこちらに急速接近する気配。


 そちらに目を向けたのとほぼ同時に、金色に輝く飛行形態のオーディーンとアキレス・ディードが飛び込んできた。








 《やはりこれが狙いか!私を味方勢力圏内に放り込み、一網打尽にすると!》


 《だったら!?》


 《ならば、無理に力比べをする必要はなかったと後悔したところだ!》








 どうやら変形したオーディーンの突撃を受け止めたら、


 そのままここまで押し込まれてきたらしい。


 オーディーンは金色だったけど、元のカラーに戻った。同時にパワーが弱まるのを感じた。多分、特殊モードも使っていたんだと思う。


 パワーダウンしたオーディーンを右足で思い切り蹴り飛ばして体勢を立て直すアキレス・ディードに、


 さっそくパスナの集中砲火が迫る。







 《その程度で!》


 「っ!?新手でありますか!」


 《遠隔転送できるようにしておいて正解だったな。

  ご紹介しよう、ハンター牙に鬼クノイチだ》








 結論から言うと、パスナのビームやミサイルは全て阻まれた。


 ハンター牙の射撃と鬼クノイチの切り払いで。


 3機ずついるけど、量産機にしては少々スペックが高い気がする。


 確かレルネから聞いた話だと、ハンターはフェンリルの、クノイチはパンドラの先発機だということだけど…。








 《さすがは鎧王、情報が早い》


 「ジャンク屋のところのメカニックから聞いたのみだけどね」


 《創主レルネか》







 やはり、アキレス・ディードもレルネが開発した機体…!







 《創主は元気そうだが、今日は少々手荒なようだな》


 「ま、まぁ、心酔している人が暴走させられたりしたら……」


 《だろうな。創主の性格を考えれば、容易に想像できる》







 どうやらレルネが荒れ狂っている理由についてはアレックスと同じ考えらしい。


 というより、トラルーとレルネの関係は知ってたんだ…。








 《私の開発自体、創主レルネがジャンク屋の居候になってずいぶん後のことだ。

  トラルーも時折姿を見せていたので、記憶に残らないことはない。

  さて、雑談はこれぐらいにしようか。貴様らも機動六課に、管理局に与するのであれば…!》


 「な、そうだったでありますか!?」


 「パスナ、まさか今までわかってなかった…?

  いや、管理局に与するっていう認識も半分間違っているけど…」


 《半分?》


 「そう、半分。私たちは、あくまでもトラルーたちの縁でここにいる。

  管理局についてはあまり好印象は持ってないし、機動六課に協力することになるのもあくまで結果論。

  トラルーからのお願いでこうして集まっているに過ぎない」


 《……その気になれば、いつでも縁を切ってしまえるということか》


 「少なくとも、トラルー辺りならバッサリと切ってしまうでしょうね。

  機動六課に協力してるのだって、ボクたちもみんなイイ人たちだと信頼しているからなワケですし」







 根本的な意味で管理局の一員になっているワケじゃない。


 トラルーの縁で、こうして集まっているだけ。機動六課が面白いところだっていうのもあるけど。


 あとの大まかな理由はアレックスが付け加えた通り。


 同様の理由で、陸士108部隊になら尋ねてみてもいい気はする。







 《理念までは一致しない、ということか…。

  だが、私にも通さねばならない筋というものがある。

  それを通す為に、荒いやり方だがこの戦場を利用させてもらうぞ!》







 その言葉と共に引き金を引く。


 ただ、妙なのは放たれたビームの行先が、今しがたみなみと交戦中だったモールイマジンだったこと。


 そして、続けざまにみなみにも発砲したこと。


 六課にもネガショッカーにも攻撃…?








 「これじゃまるで、どこぞの施設武装組織さながらの武力介入じゃないですか」


 「まさか、六課ともネガショッカーとも敵対するつもり!?」


 《その通りだ。私にとっては、管理局も、ネガショッカーも……》









 《特別な力を持つからと一般人を狙う者は、等しく敵だ!!》







 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 アキレス・ディードのヤツ、管理局相手に何があったんだよ…。


 まぁ、ボコって聞き出せば手っ取り早いんだけど――







 「『やっぱり、簡単に気づいたね」』


 「よく言うぜ」








 後回しだな。この前オレをフルボッコにしやがったそっくりさんのお出ましだ。


 半分暴走したとはいえアイツを惨殺できたトラルーに頼めばいいんだろうけど、そのトラルーがマジ暴走の真っ最中だしなぁ。


 ……もっとも、最優先で潰すべき元凶だけは認識してるようだけど。








 「またお前んトコのボスの仕業か?

  トラルーのパートナーマイクロンについてもそこそこ知ってるみたいだったし。

  ていうか他に干渉できそうなヤツが見当たらないしな」


 「『ダークコマンダー様のことかい?それはご名答」』








 どーやら当たったらしい。


 話によれば、オレらの時代とは違う時代のユニクロンの意思細胞だったヤツだっけな。


 それならマイクロンに干渉するってのもできるわな。









 「『これで君たちを駆逐し、あのトラルーを連れ帰れば、そのまま神器も全て僕らのものさ」』


 「ジョーダンじゃねぇ。またユニクロン復活させられてたまるかよ。

  それに、第一どうやって制御するつもりだよ?アレ」


 「『連れ帰るのは僕の役目。それ相応に鍛えなおしてきたつもりだよ」』


 「あーそうかい。その前にオレにぶちのめされるんじゃねーの?」








 オレの殺気を感じ取ったか攻撃の構えになったアイツを見据え、


 両手に炎を出しながら一歩踏み出す。








 「この前のリベンジ、ちょいと早いがさせてもらうぜ!」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「レイジングハート!」


 「アイゼン!」






 ブリッツシューターにシュワルベ・フリーゲンか。だが、その程度で!







 「落とされた!」


 「しかも、ミスショットなしかよ!」









 あいにくだが、私は元より空中戦ドッグファイトを想定された機体設計がなされている。


 それ故、射撃がブレやすい空中での姿勢制御についても、そこらの機体を遥かに上回る高精度なものになっている。


 更に私自身の実戦経験データも掛け合わせれば、シューター系の30発や40発、問題ない。









 「だったら!ギガントシュラークッ!!」


 《馬鹿の一つ覚えがっ!!》


 <ATTACK-FUNCTION RISE SHOT.>









 交戦経験自体はこれが初めての筈なのだが、何故こうにも「見飽きた」感が強いのだろう。


 ヴィータ・ハラオウンが突撃思考だからなのか、それとも"通常状態で使える"持ち技が少ないせいなのか。


 取り敢えず、放っておくと鬱陶しそうなのでさっさと墜とすことにした。




 大型化されたハンマーの一振りを最小限のモーションのみでかわし、


 その勢いのままサマーソルトからのカカト落としで地面に叩き落とし、すぐにダークシューターで思いっきり殴る。


 殴られた反動で浮き上がったその下に飛び込み、どこぞのラストシューティング的な構図でダークシューターを連射。


 一瞬で大量に撃ち込まれたエネルギー弾が炸裂し、ヴィータ・ハラオウンを吹き飛ばす。


 銃で殴って浮かせ、そこに銃を連射する。それが"ライズショット"と呼ばれたアタックファンクションだ。










 「よくもヴィータちゃんを!」


 《チャージ済みのなの姉の砲撃で吹き飛べばいいよ!》


 《Ignision Punisher!》











 アタックファンクション発動で、少し動きが鈍ったところに砲撃を叩き込む魂胆か。


 下手な回避は直撃になりかねん。これは防御に徹するか。










 《……って、そんな!?》


 「イグニッション・パニッシャーが……全く効いてない!?」









 ふむ、上手く持ちこたえてくれたようだ。


 左手に装備している盾・ダークシールドは、高町なのはのイグニッション・パニッシャーにも耐え抜いた。


 なにせ、乱入する戦場が戦場だからな。防御力の底上げも急務だった。


 盾自体の重量は底上げ前の2倍になってしまったが、これは私自身の基礎出力を向上することで帳消しにしている。


 基礎出力の底上げにより、盾を保持する為の腕力も向上させることで、機動力をカバーしようというワケだ。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「てぇぇぇいっ!!」






 イテンがトレントブレードUを射撃形態で使用、光弾連射でひるませたところに通常形態に戻して飛び込んで一閃。


 けど、さすがに反応がやたら早い。斬撃をすばやくスターセイバーでガードし、そのまま押し返された。







 「足元と腕を狙え!動きを鈍らせるんだ!」


 「おう!」


 「任せろ!」








 左手にビームサーベルを握ったダークハウンドが駆け出し、


 アイツの指示通りにオレとスティアがトラルーの腕や足を狙って連続射撃。


 防御されるなら、敢えてその防御する為の場所を落とせってな。









 「まさか、こんな形で再戦する羽目になるとは!」


 「戦ったことがあるでおじゃるか?」


 「ユニクロンから脱走する時の1回こっきりだけどね!」


 「結果は?」


 「負けたよ!死なずに済んだのが不思議なくらいのフルボッコだったよ!

  チャクラムビットだって、トラルーへのリベンジの為に2基から10基に増やしてきたんだ!」


 「ご愁傷様」









 それぞれチャクラムビット2基とゲッコウサクヤを手にトラルーの背後に回り込むアストラルとビコナ。


 けど、こんなところで雑談しなくても。いや、興味深い話だったけどさ。


 ていうか、チャクラムビットの増設ってトラルー対策だったのかよ。









 「猛特訓の成果、見せてやる!いけよビット!!」









 ファングじゃないのが惜しい気もするが、やることは似てるしいいんじゃね。


 ともかく残り8基のチャクラムビットがトラルーに殺到、


 一定の距離を保ちつつビームを発射して、回避ポイントを奪いつつ釘づけにする。









 「で、こうしてみるとか?」








 動きが止まったところにビコナがバックアタック。


 魔力コーティングで威力の底上げと接触融合対策をしたゲッコウサクヤの二刀流で斬撃。


 いくら気配に気づけたって、アストラルやオレ、スティアの援護射撃を加えてのビコナの奇襲攻撃で、


 反応しきれるワケg








 「っ!?」








 ……しやがったよ。背中に合体してるコスモテクターが急に向きを変えて、ビコナの斬撃を止めた。


 更に力任せにブッ飛ばし、振り向きざまにアストロブラスターの銃口を向ける。おまけにチャージ済み!?








 『させるかっ!!』








 オレとダークハウンドが動いた。


 まずダークハウンドがアンカーショットでアストロブラスターをからめとり、更に電撃でトラルーを麻痺らせる。


 そこにブロウクンファントムを飛ばし、スターセイバーをかちあげてバランスを崩させて転ばせた。








 《マスター!》


 「分かってる!チャンス到来っ!」








 すかさず恭文が飛び込んで――









 「鉄騎一閃!!」










 お得意の鉄騎一閃。今度こそクリーンヒット間違いなs








 「ぐはっ!?」








 コスモテクターで殴られた。ていうか、オイオイ…。









 《やってくれますね…!》


 「コスモテクターだけアーム式かい…!」








 さっきのビコナへのカウンターもそうだ。


 コスモテクターだけは背中から伸びるアームみたいなので繋がってて、自在に動かせるんだ。


 くそっ、冗談じゃないぜ…。いや、トラルー攻略の難易度の高さは今に始まったことじゃないけど。


 やっぱ神器フルセットのアドバンテージがデカ過ぎだろ。


 特にコスモテクターだ。攻撃能力は皆無とはいえ、防御時に発するエネルギーの圧力は十分攻撃に転用できる。


 それに第一、同じ神器でさえ突破できない、文字通り最強の守り。防御範囲外から攻めるのも、トラルー相手だとかなり厳しくなるな。









 「せめて、あのアームだけでもどうにかできりゃいいんだがな…!」


 「最強の矛盾を同時に手にし、更に機動力まで一級品……攻め落とすのに骨が折れる、どころの話ではないな…!」


 「あーくそっ、魔力が疲弊しきったタイミングでコレって、いくらなんでも状況不利すぎでしょ」










 恭文のカバーの為に、スティアとダークハウンドが牽制射撃。



 ていうか、まだアンカーショット絡めたままなのか。電流流されたままでよく動けるよな。


 ……人体用の低圧電流?








 「いや、怪物化していることを考慮して、対機動兵器用の高圧だ。

  しかし、それでもひるませるのが精一杯とは」


 「あー、存在自体ある意味で怪物だけどな。自負までしてるし」


 「もちろん、ユニクロンとは違った意味で、でしょ?」


 「当然だ。同類扱いなんかしたら惨殺どころじゃすまないぞ」










 風属性の斬撃波で牽制しつつ後退してきたビコナにアストラルが加わってきた。


 だよな。撲殺も惨殺も通り越して駆逐だもんな。


 今までに何人駆逐してきたのか、多分数えてないぜ本人も。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「前方の敵部隊に集中砲火!てぇーっ!!」







 闘技場の外側に設けられた、アーツバトル連盟警備部による防衛ライン。


 本来は蛮行に走った連中が闘技場から外に出て、一般居住区とかに流れ出すのを防ぐ為。


 もう1つ、外からモンスターが襲撃した時の壁役でもあるんだけど、


 現在はネガショッカーの連中が大挙して押し寄せてきた為、現在は他のファイターたちと協力しながら迎撃中。


 私・シアンも含め、警備部や審判団なんかの主だった戦闘メンバーは、CPユニットを装備した戦闘部隊を指揮しつつ戦闘に。




 ちなみに、私たちの部隊は南西方向にあるポイントで戦闘中。


 主な敵はファンガイアにアンノウン、あとインビット。まぁ、前者2つも下級クラスばかりだし。


 アーツバトル連盟自慢の警備部戦闘部隊がそうそう後れを取る相手じゃないだろうけど。








 「シアン殿!敵軍の中に、ユニゾンデバイスと思しき存在を確認!

  我々も奮戦していますが、勢いを抑えきれません!」


 「数は?」


 「2体です!」







 ふぅん。だったら…。








 「3個小隊、こっちについてきて!」









 アーチェリー型の武器「アーバレスト」を左腕に装備、更に右手に接近戦用のビームサーベルも持って、


 ユニゾンデバイスらしき相手とやらがいる方向へ移動開始。


 3個小隊は周辺のザコ掃除用。まぁ、私だってザコ掃除ぐらいするけどね?








 「ファイヤ!」







 飛行しながらアーバレストを前に向けて、チャージ済みのエネルギーを解放。


 通常のアーチェリーと違って、弓と矢が一体化したような形状を持つアーバレストは、先端からビームを撃つの。


 ただし、ビームはビームでも、曲がって飛んでいく湾曲ビームだけど。








 「曲がるビームとは、厄介な!」


 「面倒な相手に当たったね…」


 「どーぉ、アーツバトル連盟に下手なケンカ売るとどうなるか、少しはわかった?」


 「曲がるビームを撃てるヤツがいるなんて、聞いてないぞアーツバトル連盟…!」








 湾曲ビーム1発で眼前の敵数体を薙ぎ払い、ほどなくターゲットを確認。


 確か、ケルベロスにゲリュオンだっけ?







 「悪いけど、僕もいたりするんだよね」







 姿を揺らめかせながら、新手。あ、私と同じ水色系だ。


 多分、光学迷彩系のステルス能力で隠れてたんだろうけど……







 「…………誰?」


 「リートだよっ!あぁもう、やっぱり覚えられてない!エントリーして戦闘までしたのに!」


 「お茶の間の誰も見てないと思うんだけど」


 「あぁ見てないだろうさ!予選開始早々にストラバレルに爆破処理されたから!」







 あぁ、要するに日下部みさお選手と同じような末路を辿っていたと。







 「えぇい、ただでさえ出番がなかった上に出てきたらコケにされるとは…!

  どこまで僕の顔に泥を塗れば気が済むんだ、偉い人作者ぉ!!」








 ……ところで、なんでゲリュオン以外はそろってグ○ハム風のセリフに走ってるんだろ。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「いっでぇっ!?」


 「ケリュネイア!?」







 よし、命中。


 まったく、とんだ茶番よね。私のMSデバイス「ガルッズ」のマトモなお披露目の相手が、こんな連中だなんて。


 一撃で墜とした……かはまだわからないけど、とりあえず先制攻撃としては有効打な筈。


 さーて、移動移動…。







 「ちっくしょ、どこから撃ってやがる!?」







 まぁ、せいぜい挙動不審になってなさいな。


 わかる筈がないもの。少なくとも、ネメアやケリュネイアみたいな単細胞タイプには、ね。








 あ、そうそう。ここは連盟警備部が形成している防衛ラインの内、南東のエリア。


 その仮拠点に当たるポイントのすぐそばにある密林に陣取って、右腰のランチャーと左腰のライフルを連結。


 ライフルを前にして連結した状態の「収束狙撃モード」で発砲して、ケリュネイア他ネガショッカーの面々を撃墜しているところ。


 ガルッズについては、ステルス機能を追加したバ○ターガ○ダムの武器を流用したものだと思えばいい。


 もちろん、排熱効率については徹底的に改良させてもらっているけどね?


 連結した状態でも、3秒ぐらい待てば再発射できるぐらいには。








 「あぐぁっ!?」








 ケリュネイアを撃った時とは別な位置から、収束狙撃モードのままネメアに発砲。


 今度は背中にクリティカルヒット、手ごたえあった。いや、ケリュネイアの時も手ごたえはあったけど。








 「だーくそぉっ!!」







 あ、地味にしぶとい。それに、ファンガイアやらワームやら、ぞろぞろ湧いてきたし。


 じゃあ、こっちの出番ね。








 「チクショー、いきなりいってぇのが飛んでくるしどうなっt」








 まだ復帰し損ねているケリュネイアや何もわかっていない怪人軍団もろとも、ネメアを多数の散弾の光が吹き飛ばした。


 ランチャーを前に、ライフルを後ろにして連結した「拡散砲撃モード」なら、こういう風に多数の敵をまとめて撃破できる。


 もっとも、拡散する光弾の1つ1つが高い威力を持っているせいか、1発で大量のエネルギーを消費するから、


 エネルギーの再チャージに時間がかかりすぎるのよね……拡散砲撃モードだけは。



 …………あ。









 「ステルスに回すエネルギーが……」








 とりあえず本気で身を隠しておこうかしらね。ステルスの再使用が可能になるまでは。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「どぉりぇあああああ!」


 『だぁぁぁっ!?』







 ギュイィィィィン!ってすごく物騒な音を立てながら高速回転するホイールが、


 さっきまでヒュドラやヒッポリュテがいた場所の地面を粉々にした。


 で、すぐに自分の手元に戻ってくる。


 ちなみに、ここは北東エリア。








 「ったくよー、なんだよそのトンデモホイールは!?」








 トンデモホイールとは褒め言葉を。







 「褒めてねぇよっ!?」


 「武器としては褒め言葉なんでしょうけど…ねぇ…?」









 今しがたヒュドラにトンデモホイールなどと褒められたのは、


 自分専用のデバイス「シェラークス」のこと。


 円盤状の本体の対角線上に4枚のプレートを配置。プレートはそれぞれエネルギー発振器。


 発振器それぞれを独立作動させたまま本体を高速回転させることで、ビームカッターとしての側面を持たせることができるのだ。


 もっとも、タイヤ並みの厚さと少々重量が大きいことで、鉄球の如き質量武器としても使えるが。


 あと、持ち手の部分にはワイヤーも仕込まれていて、鎖鉄球のように振り回すこともできる。


 さっきヒュドラたちを狙った時も、それを利用している。








 「決め口上やって早々に潰されてたまるかよ!」


 <ダミー・マキシマムドライブ>








 ダミーメモリによる怪物化。そして得意技は砲撃だったか?








 「くらえっ!!」








 9つの蛇の頭それぞれから、高密度のビームが放たれる。


 もちろん、直撃なんざしようものなら撃墜必至。


 しかし。







 「うぉいっ!?」


 「真っ向から!?」








 4つのプレートをそれぞれ縦に2分割し、本体部分も中央のハッチを開いて防御形態へ。


 この状態のシェラークスなら、バリア貫通などの特殊効果でもない限り、大抵の攻撃は無力化できる。


 今の砲撃も、分割されて8枚になったプレートと中央に隠されていたクリスタルユニットから発せられるエネルギーフィールドで、


 一切の衝撃も伴わず完全に無力化することに成功している。


 そう、本来シェラークスは防御特化型のデバイス。投擲武器としての性質は、耐久性向上の結果による副次的なものにすぎない。








 「鉄壁殴打!!」


 「ぶっ!?」








 防御形態のままシェラークスを持ってジャンプ、


 砲撃直後で防御ガラ空きなヒュドラの顔面にキツイ鉄拳代わりの一撃を叩き込む。


 盾で殴ることも、決して珍しいことではないのだ。








 「理屈はわかるけど、フツー女の子の顔面を殴打する…?」


 「弱肉強食の掟に、男女差などない」








 この掟の下では、文字通り生き残ることだけが勝利条件だし。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《照準誤差修正、エネルギー再チャージ開始》


 「ん。敵との距離は?」


 《推定30メートルほど》







 水平連結して大出力砲撃モードにしたガノッテで、極輝覚醒複胴艦から砲撃。


 スターから「砲台になってくれ」って頼まれたから。


 あと、サンダーはエヴォリューションさせてない。コンステレーションガッデスは連射できないし、砲身への負担も大きいし。


 近づいてきた敵はスバルたちフォワードに任せればいいから、後続を断つ砲撃をしろって言われた。ヒルメに。


 私、そんなにトロい?








 《いえ、マスターの場合は砲撃に専念していただいた方が効率的だと判断されたのでしょう。

  ステータス的には攻撃力重視な能力値になっていますから。

  それに、機動性重視のガンナーならティアナ氏やらウェンディ氏やらがいます》








 なんか、丸め込まれてる気がする。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《ったく、数だけはいやがる!》


 《なんだ、もうヘタれたのかい?》


 《ンなワケねぇだろ!こっからだよ!》







 絶・破岩刃を振り下ろしてグロンギを真っ二つに。


 ナイトメアからの口出しに返しつつ、迫ってきていたオルフェノクの頭を鷲掴みにして地面に投げつける。


 その後の末路は、やっぱり絶・破岩刃で真っ二つだ。







 「ちょっと、ハカイオー絶斗もナイトメアも先行し過ぎ!

  すぐに後退!でないと……腕か足もがれるよ?」


 《らけーてんばれっと!》


 《って、オイ!?》







 嫌な殺気がしたから左に飛びのいてみりゃ、アリシアのヤツ、ラケーテンバレットで突撃しやがった!?


 勘弁してくれよ。いちいち俺に攻撃の飛び火がくるのは、ナイトメアだけで十分だぜ。







 《失礼なヤツだ。俺がそんなぶっきらぼうな攻撃をするとでも?》


 「たまにナイトメアズソウルで殴り飛ばした敵が飛んでくることがあるんだけど」


 《気のせいだ》







 とかいいつつ、またこっちに飛んできたぞ!?


 誰かさんが殴り飛ばしたモールイマジンとかよ!








 《とにかく、さっさと片付けるぜ!》


 《お前が仕切るなよ》





 《《フォースチップ、イグニッション!!》》





 <ATTACK-FUNCTION CHO GAO-CANNON.>


 <ATTACK-FUNCTION DEATH SCYTHE HURRICANE.>







 超我王砲の閃光とデスサイズハリケーンの暗黒突風が、俺たちの前にズラリと並んでた怪人どもをまとめてブッ飛ばす。


 さて、他んとこの援護にでも…








 「残念っ!」


 「ヘスペリデス!」







 とか思ったら新手が来やがった。


 ヘスペリデスに連れられて、今度はインビットまでいやがる。








 「ふっふーん、早速いくよ!マリナーz」


 《させるか!》


 「あっれぇぇ!?」







 右手にアビリメモリを出したが、起動しようとした途端にナイトメアズソウルが飛んできて弾かれた。







 「ちょっとー!なんつーモン投げてくれるのさっ!」


 《水の針とか平気で飛ばしそうなヤツが言うことかねぇ?》


 「ムキーッ!なんか腹立つー!」








 あぁ、この分じゃヘスペリデスがナイトメア相手にマトモに話せそうにないな。








 「そういう意味じゃ、よくもまぁ相方になれたよね」


 《ま、いろいろあったんだよ、こっちもな》








 ロールアウト直前の頃からケンカばっかしてたな。


 主にバトルで。









 《ところで、リュウビはどこいったんだ?》


 「えっと、それが…」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 モールイマジンのクローを剣で受け止めて、迫っていた幼虫のワームを左足で蹴り飛ばす。


 オルフェノクが繰り出したロングソードも剣で受け止める。






 《くっそ、数が多すぎて…!》


 「けど、それはみんな同じ……僕たちも踏ん張らないと!」







 ……とはいうものの、やっぱり数の差が重くのしかかる。さすがにキツ…








 《大技を撃ちます!すぐに後退してください!》


 『なっ、えっ!?』


 「と、とにかく下がるよ!」




 <ATTACK-FUNCTION POWER SLASH.>




 「っ……リュウビ!」


 《そちらに加勢します!》








 僕と力比べになっていたモールイマジンとオルフェノクは、


 リュウビが放った"パワースラッシュ"で吹き飛ばされ、一撃で倒された。


 けど、君のマスターは…








 《心配ないですよ。なにせ、機動六課の頼れるエースの1人だし、頼れる同胞が二人もついてるんですから》








 リュウビのマスター、アリシアさん。それにリュウビの同胞ってことは、多分ハカイオー絶斗とナイトメアだ。


 あの2体の実力は見せてもらってるから断言するけど、確かに心強くて心配なさそうだね。








 《さ、僕たちは僕たちでここを突破、一度味方勢力圏まで後退しましょう》


 「そうだね。イリアス、まだ頑張れるよね?」


 『当然だぜ!』




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「少しはおとなしくしろっての!」


 <ルナ!マキシマムドライブ!>


 <トリガー!!マキシマムドライブ!>


 トリガーフルバースト!!」






 実に便利度が高そうな技、トリガーフルバースト。


 スターたちの包囲連係攻撃を受けても全然ひるむ様子がないから、しびれを切らしたみたい。


 発射と同時に炸裂した大量の光弾が、四方八方からトラルーの腕や足に襲い掛かる。







 「でぇぇぇいっ!!」


 《スコールピオ、全機ファング!》


 「こいつはチャンスとみた!いけよビットぉ!!テイク2!」








 あ、いきなりレルネが乱入してきた。


 合体剣であるユニオンカリバーによる背後からの一撃はコスモテクターに止められたけど、


 おかげでがら空きになったトラルー本体に6基分のファングと化したスコールピオとトリガーフルバーストの光弾、


 更にアストラルの操作でチャクラムビットまでもが一気に殺到。


 スコールピオの方が2基、チャクラムビットの方が3基ぐらいスターセイバーやアストロブラスターで破壊されたけど、


 殆どが両腕と両足にクリティカルヒット。更にチャクラムビットのビームがトラルーの頭に……って、さり気なくエグいことを。








 「というより、いつの間にここに。ユニオンカリバーを振るう直前まで姿すら見えなかったが」


 「トラルーたまへの愛ゆえですっ!!」


 《説明になっていないので代わりに説明すると、

  創主レルネのISである"メルツダイバー"で光学迷彩を使いつつ地面に潜行、

  至近距離まで近づいたところで光学迷彩を維持しつつ飛び出し、一撃をくらわせてやった、というワケだ。

  わかったか愚か者どもめが》








 マスターコンボイからの問いには、暴走気味なレルネに代わって彼のデバイス…クロスディメンジャーだっけ。が答えてくれた。


 そういえば、レルネはセインの性転換した上での生き写しだったっけ。


 そりゃあISだって持ってたりするよね。しかし、光学迷彩を併用するなんて、どんだけ隠密性向上してるん?









 「ウラァァァァァァァァッ!!」


 「っ!!」









 って、アストロブラスターこっちに撃ってきた!?


 とにかく散開!距離をとるに限る!









 「……って、今の射撃方向は……ブラックアラクニア、南無」








 え、ブラックアラクニアって確か、プレダコンズんとこの蜘蛛女でしょ?


 アストラル、なんでそいつに南無?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「こんにゃろっ!!」


 「乙女としてどうかとは思うけど、腕力勝負には自信がある!」







 くっそ、一度死んでも鎧王は鎧王かよ!


 こちとらようやっと最終調整が済んだアグニトレイダーにゴッドオンしてブローンになってるってのによ、


 あんの鎧女、完璧にこっちをあしらうパワー発揮してやがる!








 「残念ながら、ユーリプテルスとアレコレつるんでいれば腕力か脚力ぐらいは嫌でも磨きがかかる」


 「うげ、あの無邪気バーサーカーかよ」


 「バーサーカーになったのはある意味でそちらのせいでもあるんだけどな!」


 「ぐげはっ!?」








 ユーリプテルスのヤツ、そーいや今はどうしてんだ?


 予選でアストラルと一緒に出てったっきり、見なくなっちまったんだが。


 ……なんて思ってたら、ムチみたいにしなる武器で思いっきりブッ叩かれてた。


 くっそ、生身でトランスフォーマーすら振り回すパワーって!









 「怪物だとあざ笑うか?けど、何かしらの意味で怪物な一面を持っていないと、古代ベルカの王族としては生き残れないんでね。

  それに貴様が相手なら、細かい理屈は必要なようで不要だろう――圧倒させてもらう!」


 《Tempester Form》









 だーくそっ、少し離れたところじゃ"Xカイ"が柾木ジュンイチとドンパチやりあってる最中だし、


 連れてきた怪人どもやインビットどもは機動六課の連中に軒並み潰されてるし、


 せっかく復帰したルシファーは飛王に釘づけにされてるよーなモンだし、


 オレはムチみてぇにしなる二刀流相手にがんじがらめ寸前だs








 「超高密度ビーム!?しかもこのビーム、まさかアストロブラスター!?」


 「いぃっ!?」








 青白いゲロビがいきなりこっちに飛んできやがった!?









 「部隊長殿!北〜東側のメンバー全員に回避命令を!!」


 「って、あ、おいっ!?」








 いきなりムチの刃が引っ込んだかと思ったら、鎧王のヤツ逃げた!?


 ていうか……








 「な、なんじゃそりゃああああっ!?」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《北〜東側の全メンバーに緊急通達や!

  北西より超高密度ビーム接近、すぐに回避行動とって!》






 は!?







 《接近中のエネルギーは、アストロブラスターから放たれたものと思われます!》


 「マジかよオイっ!?」








 アストロブラスターなら、ヒット=該当部位消滅じゃねぇか!


 現場でエネルギー計測ができたフェンリルから情報をコピーして蜃気楼に登録しててよかったー!


 回避以外の何もやる気ねぇよ!オレの力場なら防げるだろうけどさっ!


 仕方なくオレのそっくりさんと距離を開ける形で、割って入ってきたゲロビを緊急回避。


 うわ、あっぶねー!はやてからの回避命令が無かったら、下手したら消し炭になってたかも。


 爆天剣は刀身の上半分が消えたけど。








 「さぁて、どうする?大きすぎる水が入ってきたけど?」


 「『くっ……このダメージでは、さすがに…!」』








 どうやらそっくりさんは回避し損ねたみたいだ。


 顔以外の右上半身がかなり吹き飛んでる。下半身が残ってるのが奇跡的だな。


 とはいえ、そんなハンデを負った状態でオレと戦えるワケないよな?








 「『まさか、こんな形で任務失敗になるなんて…!」』


 《……敵の撤収を確認。各センサー、いずれも敵の生体反応を察知できず》


 「オーケイ。撤退してくれただけ上出来だ」








 向こうも状況判断は早いな。あっさりと転送で逃げた。


 しっかし、アストロブラスターだったとなると、犯人はまさかトラルーか!?


 なんだ、オレに対する恨みが!?








 《いえ、おそらく明確な意思のもとに放った一撃ではないでしょう。

  こちらの被害状況も確認しなければなりませんが、ネガショッカー側にも少なからず被害が出たようです》


 「本気と書いてマジでの敵味方無差別かよ……ホントに暴走してやがる」









 随分と厄介なヤツを暴走させてくれたモンだよな。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《い、いったいなんだ!?》


 「アストロブラスターの砲撃――!?」







 僕のヘブンズエッジと飛王の炎帝翼剣で切り結んでいたところに、


 突如膨大なエネルギーの奔流が襲い掛かってきた。


 仕方なく鍔迫り合いの状態から弾かれるように後退、かろうじて直撃は免れた。







 「しかし、左半身を失った状態で、マトモに戦えると思いますか?」


 《くっ、傷つきながら戦うこともまた美しいが、これはさすがに限度を超えている…》








 もっとも、直撃を免れたというのはあくまでもAIユニット周辺、つまりボディ周辺の話であって、


 左腕、左ブースター、左足、と、左側のパーツをごっそりと持っていかれた。


 ヘブンズエッジが健在である以上、戦えないことはないが――








 《いずれ、仕切り直しの機会があることを願おうじゃないか》


 <ATTACK-FUNCTION DEVIL SWORD.>


 「っ!!」








 幸いチップスロットも健在だったので、迷わずフォースチップをイグニッション。


 美しきミッドチルダのフォースチップの力で放つデビルソードの一閃。


 当たった手ごたえはない。だが、今回はそれでもいいだろう。





 さすがに、フルパフォーマンスを発揮するどころか半壊した状態でまで、


 古代ベルカの王族とやりあう気はないからね。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 やはり、大技を利用しての撤退…。


 報告にあったセラフィックモードとやらの発動はなしですか。






 「飛王殿!大丈夫でありますか!?」


 「パスナ。僕はご覧のとおり健在ですよ。それより、被害状況は…」


 《それについてはこっちから教えるで》


 「はやて部隊長殿!」







 いち早くこちらに合流したパスナのウィーゼルユニットを介して、


 はやてさんから通信。あぁそうか、オペレートなどを受け持つロングアーチの実質的な隊長でもありますからね。


 それに、彼女の持つ夜天の書とセットアップによる能力も、後方支援向きですし。








 《まず、敵さんの方は極輝覚醒複胴艦周辺に群がってたのがごっそり消えた。

  おかげで戦力半減しとる。そっちでも確認できた?》


 「そうでありますね。いきなり襲ってきたビームに、怪人軍団は対処しきれたとは思えないであります」


 「こちらでルシファーの撤退を確認しました。

  もっとも、機体が半壊してましたから、次に来る時は大なり小なり強化されていそうですが」


 《シグナルランサーたちから聞いたけど、かなり厄介な相手みたいやね。アレが強化される……堪忍やなぁ》







 少なくとも、変形なしでの単体飛行戦力という意味では、既にアドバンテージを得ている筈ですが…。


 強化されるとすれば、攻撃力か防御力でしょうね。







 《ほんに突然で、しかもビームの発生元はアストロブラスター。

  こっち側の死人が無くて、ほんによかったわ》


 「やはり…!では、こちらの被害は?」


 《死人が出なかったとはいえ、戦力は結構削られとるね…。たとえば――》




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「下手こきやがって、おセンチ野郎がァ!」


 「おセンチ野郎って、誰?」


 「取り敢えず言ってみただけですよォ!」







 突然ぶっ飛んできたビームに巻き込まれて、右腕に大ヤケド級のダメージ受けるわシャマシュの片方が消し飛ぶわ、


 いきなり散々ですぜェ?


 あと、モロに巻き込まれたひよりはアイアンフィスター全損で戦闘不能、


 避けきれなかったみなみも左腕にオレと同じようなダメージ。


 まぁ、大ヤケド級とはいうけど、物理的な意味でのヤケドじゃなくて済んだのは不幸中の幸いかァ。


 これにはアーツバトル連盟に感謝っすねェ。


 ダメージカウンターのダメージ変換技術がチート級だから、ひよりも生き残ったワケで。







 「けど、実質腕が無くなったものだというダメージを再現してるせいで、動きに制限が…」


 「まったく、予想外だけどしくじったっすよねェ!」







 生き残ってたファンガイアやグロンギを死にもの狂いで返り討ちにしているところ。


 みなみは足をやられなくてよかったっすねェ?得意技は蹴り技みたいだし。







 「取り敢えず、ひよりが心配……身を隠せそうな場所があればいいんだけど…」


 「どーせ最前線での戦闘は危険なダメージだし、いったん引き返すかァ」







 往生際悪く飛び込んできたファンガイアを残ったシャマシュで真っ二つにして、


 戦闘不能になったひよりを無事な右腕で支えて移動し始めたみなみについていく。


 ミドルレンジでの攻撃もできるオレがしんがりを務めるしかないっしょ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「ティア!」


 「こんのぉ!」






 飛び込んできたスバルに殴り飛ばされた怪人に魔力弾の追撃、これでアイツはご臨終。


 ただね、さっきいきなり飛んできたゲロビのせいで、こっちはてんやわんやよ!







 「ジェットガンナー、大丈夫!?」


 「大丈夫、と言いたいところだが…!」







 ジェットガンナーが回避し損ねて、右半身がゲロビに飲まれて消し飛んだ。


 更に爆弾くっつけたイマジンがKYな特攻なんかしてくれて、5体中私とアイツが撃ち落とし損ねた3体が直撃。


 残っていた左腕まで破壊されて、損傷甚大で戦闘不能。


 で、特攻兵器みたいになったイマジンどもを、私とスバルで叩きまくってるワケよ。







 光翼斬こうよくざん!!」








 いきなり回転する魔力刃が飛んできて、今まさにスバルがブッ飛ばそうとしたファンガイアを真っ二つに。


 ていうか、この技は…。







 「やっほーい!強くて凄くてカッコいいボク、参上!」







 やっぱり、ジュンイチさんトコのライ!







 「ジュンイチが"援護に向かってほしい"と指定したポイントに来たところ、苦戦しているようでしたので」


 「スピードに優れるボクが一番乗りで、先制攻撃!」


 「……というワケです」







 少し遅れてセイカとヤミも合流。ジュンイチさんの差し金ってことは、もしかして一緒にいた?






 「その通りだ!」


 「ヒルメさんの追撃を振り切って?」


 「お、思い出させるな塵芥!!」







 誇らしげに言うヤミだけど、スバルからのさり気ない一言で急に震え上がった。


 どうやら侵入が判明したあの日に、相当キツめにシメられていたらしい。








 「と、とにかくだ!我々が手を貸すのだ、ありがたく思え塵芥ども!」


 《帰ったらもう一度シメ直すから、覚悟しとけよ?》


 「!!!!」








 あ、ヒルメさんに通信越しに釘刺された。それも、かなり強靭なヤツが。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「できれば蒼凪恭文辺りと戦うまで温存しようと思っていたが、

  塚原真希鍍つかはらまきとが来たというなら話は別だ」


 「ほほう?じゃあ、今更詳しく言わなくてもわかってそうな物言いっすね?」


 「大方、"コイツ"の存在を感じてここに割り込んできたんだろうしな。

  見せてやるよ。今回のオレの新しい力」






 塚原真希鍍?確か、マキト君の正式な名前の筈だが、ネガタロスは何故そちらで呼ぶのか…。


 それに、左手に新しく握りしめたあの剣、いや刀か?何か嫌な感じがする。


 別に邪気があるとか、そういうワケじゃない……ただ、これから起こりうる可能性の中に、どうしても嫌な感じがよぎる。


 なんだ、この違和感?






 「……今日、マキトが死ぬ」


 「冗談!!」






 しまった、気を取られた隙に加勢を許したか!


 けど、それはマキト君が対応できた。ネガタロスの元々持つ剣とつばぜり合いをしていた袈津尾丸を引き戻し、


 水平薙ぎ払いで迎撃した。


 本人でなくとも、そんな不吉な宣言は大外れにしてもらわないと困る。







 「悪いが、今回ばかりは大当たりとさせてもらう。

  とくと見るがいい、これが地球に眠っていた武宝、"一騎当千・シュンジントウ"だ!」


 「武宝だって!?」







 まさか、ネガショッカーが武宝の力を手に入れた?


 扱えるというなら、かなりの脅威になりそうだ。それは本戦トーナメントなどでも何人かの戦国精霊が披露したとおり。







 「やっぱり…!ネガタロス、それをどこで手に入れたっすか?」


 「悪の組織らしく、墓荒らしをしてな。塚原真希鍍、お前なら場所ぐらいわかっているだろう?」


 「荒らしたんすか……オイラの、唯一無二の師匠の墓をっ!!」


 「ま、マキト君!?落ち着くんだ!あの武宝に何が…」








 ネガタロスが手に取った武宝・シュンジントウを見て、いきなりマキト君が激昂。


 デスイマジンの鎌をティルフィングではじきつつ、事情だけでも聞いておこうとマキト君に近づいてみる。








 「その武宝を……シュンジントウを今すぐ手放せっ!!」


 「力づくでやってみろ!」







 しかし、話しかけるより先にマキト君がネガタロスに斬りかかった。


 ネガタロスは武宝ではなく元から持っている剣の方でガードするが、そのまま押しつぶすようにブッ飛ばす。








 「シュンジントウは、塚原卜伝以外の誰一人として持ってちゃいけないっす!

  ましてや、ネガショッカーみたいな連中になんか、絶対に使わせられないっ!!」


 「だがもう遅い。シュンジントウは今や、オレの手に握られている!」








 マキト君の斬撃を弾くと、刀身に力を流し込んで、斬撃波を飛ばす。


 袈津尾丸を盾にしたことでマキト君は難を逃れたが、そらされた斬撃波が周辺に残っていた怪人軍団をまとめて消し飛ばした。








 「ちょっ、なんなんですかアレ!?斬撃1つで、切り倒すどころか消し飛ばすって!?

  あんな武器、アルカは知りませんよ!?」


 「ボクだって、あの武宝については何も知らない。ただ、かなり厄介な代物みたいだけどね」








 刀身に亀の甲羅のような模様が刻まれた赤い魔剣と、


 波のような模様が刻まれた青い魔剣がセットになった「干将莫邪かんしょうばくや」を両手に持って応戦中のアルカがこっちに来た。


 ちなみに赤い方が「干将」、青い方が「莫邪」で、それぞれ炎と水の属性を宿している。


 ただし、両方揃って初めて魔剣としての威力を発揮できるので、実質上2本1セットで運用することが前提になっている。


 アルカは炎と水、両方の属性を持っているので、問題なく使用可能。


 逆手持ちの二刀流で、青い鳥のようなイマジンを初め怪人軍団と戦っている。


 ちなみにボクや本人は「アルカ」って言ってるけど、あくまであだ名。ちゃんとした名前はアルカナだよ。








 「それに、そもそも何者なんでしょう?この怪人軍団は」


 「ネガタロスイマジンをリーダーとした悪の組織、ネガショッカー。どうやら多種多様な怪人たちが同居しているようだね」


 「デルポイ大陸には、全くいなかった筈です。アルカやアーク様が生まれたばかりの頃から、ずっと…。

  なのにどうして今になって、こうもたくさん…」


 「そりゃあ、デルポイ大陸にいるワケないっすよ。

  なにせコイツら、ミッドチルダや地球で生まれた怪人ばっかりっすからね。ネガタロスもそうだし」








 なるほど、どうりでボクらが知らない連中ばかりな筈だよ。


 とはいっても、こちらの攻撃が通用するなら戦いようはいくらでもあるし、


 やってきた理由も大方予想がつく。








 「このデルポイ大陸での"アレス"開催に合わせて開かれる転送門。ワープゲートともいうか。

  それをどこかで探し当てて、大会が終わるタイミングを見計らって転送門からこっちになだれ込んできた。

  この騒ぎを起こした理由は図りかねるけどね」


 「やるじゃないか、攻め口としては半分正解だ。オレたちの場合、トランスポーターにできそうなヤツもなかったしな。

  どうせすぐにバレるだろうから、残り半分も教えてやろう。別働隊を、ケルベロスってヤツの転送能力で一気に展開した。

  ディフィカルター12を筆頭とした精鋭部隊だ。連盟警備部にリンチにされている連中よりは戦えるだろう」


 「おや、随分と親切じゃないか。なら、騒ぎの目的とかも教えてくれると実にありがたいんだけどね」


 「簡単なことさ……時空管理局の中でも精鋭部隊に数えられるであろう機動六課、それを叩き潰せば、

  我らがネガショッカーの有用性は証明され、他の悪の組織からも一目置かれるようになるだろう。ざっくりいえばそんなところだ」








 つまりは、ネガショッカーの存在と実力を世界規模でアピールしたいというワケか。


 困ったものだよ、巻き込まれる側としては。第一、デルポイ大陸でそれを果たしてどうなるというんだい?


 寧ろそれならミッドチルダや地球でやった方がいいだろうし、優勝賞品に興味があったワケでもないようだし…。








 「時に悪の組織ってのは、一見攻め込まれそうにないようなイベントの最中にもやってくるものさ。

  ましてや、相手は天下の時空管理局に属する部隊…。アピールの場には事欠かないだろう?」


 「さっきから何?じくーかんりきょくって?」


 『…………は?』








 いや、待ってくれるかなアルカ?今、なんて?








 「だから、じくーかんりきょくってなんなんです?アーク様」






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 「アルカ」


 「はい」


 「次元新聞を、もっとちゃんと読んだ方がいい」


 「えぇーっ!?」


 「いや、常識だろう?アーツバトル連盟にだって知れ渡ってる名前だというのに」


 「地球ではまだ認知度低いっすけどねー」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《フォースチップ、イグニッション!》


 <ATTACK-FUNCTION HAWK EYE DRIVE.>






 本日2回目のホークアイドライブ。これでまた敵の数を減らす。






 「あーもうっ!ボクが連れてきたヤツら全滅じゃんか!」


 《こっちだって必死なんだよ!》







 垂直ジャンプで回避してたエリュマントスにドミニオンライフルの光弾を浴びせまくる。


 アイツ自身には当たらなかったが、武器のバズーカには連続ヒット!


 しかも爆散。これでアイツの攻撃手段は減ったよな、オレってばグゥレイト!







 「その瞬間を待っていた」


 《――っ!?》








 知らない声が聞こえたのと、オレのボディを上からビームサーベル的なもので貫かれたのに気づいたのは、ほぼ同時。


 なん、だよ、こr



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「なんだよー、せっかくボクが反撃してやろうと思ったのに」


 「メイン武器を失っておいて、よくもいう」






 フェンリルにビームサーベルを突き刺して、爆発させるほどのダメージでブレイクオーバーさせたのはボクじゃない。




 ラベンダー色のショートヘアーに、鮮やかな紅色の瞳。スマートというかスレンダーの領域だけど、ちゃんと男だって言っとく。


 黒いインナースーツの上に纏うアーマーは黄緑と若葉色を主体としていて、肘から下、肩、腰のスカート部分、胸部と背部、膝から下にそれぞれ配置。


 襟や肘のカッター、ブーツの真ん中辺り、頭にあるバイザーのラインセンサーが赤。


 そして灰色がかった黒の大きなビームランチャーを腰に、ラグビーボールみたいな形状のユニットを背中に。両手のグローブにはビームバルカンもあるっけか。


 大会の少し前にひそかに入っていた新入りで、確かリヴァイブとか言ってたっけ。


 バリアジャケット代わりにアーマーを作り出すのは、3つの細長い柱を合わせたような形状のビームランチャー。これ、実はデバイスで、名前は確か…







 「あぁ、言ってなかったか。デバイスの名前は"ガデッサ"だ。

  悔しかったら、私みたいにビームサーベルの1本でも作ってもらえばいいのに」


 「リア・ファル様に頼んだよ。そしたら予算不足って切り捨てられたよ。悪いか!」


 「あぁいや、別に嫌味とか込めたワケじゃないんだ、すまなかった」







 くそぅ、今リヴァイブが左手に持ってるビームサーベル、欲しいなぁちくしょー。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 <ATTACK-FUNCTION SOUKEN RANGEKI.>






 ディオメデスもろとも倒してやろうと放った蒼拳乱撃。けど、ディオメデスにだけは当たらなかった。


 随分と厄介な機動力ね…!







 「貴女がそれを言うか。散々こちらの軍勢をかき乱し、残されたのは結局僕だけだというのに」


 《ともかく、そろそろクレアたちが心配だから……通させてもr》


 「アハハ、それは無理無理♪」







 え、う、ウソ……?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 おや、もう来てしまったのか。


 予定時刻より少々早いように思えたのだけど。






 「んもう、助けてもらっておいてその言い草?」


 「いやいや、正直ありがたいタイミングではありましたよ?ヒリング」






 僕と正対していたパンドラを背中から切り倒した襲撃者。




 鮮やかな黄緑色の、少しふんわりした感じのショートヘアー。少し無邪気さも感じられる紫の瞳。女性らしいスレンダーな体。


 身にまとうアーマーは鶯色と薄めのグレーを基調とし、肩、腰のスカート、胸部と背部一体型、膝から下を構成。肘にはカッターを備えたプロテクターもある。


 頭部には頭上から見ると水滴状の形をしているヘッドギア、背中にはラグビーボールのような形状をしたユニット。


 グローブ部分は指のそれぞれからビームサーベルを発生させるタイプで、手首部分のリングには小型の光弾をばら撒くバルカンを内臓。


 肩アーマーは左右で形状が違っていて、右側は2本の大きなスパイクが特徴的。左側はシールドと一体化している。


 襟とカッター、ブーツが赤になっている点は、同じ時期に参入したリヴァイブと同じ。なんでもこの二人が使うデバイスは兄弟機なんだとか。


 で、ヒリングのデバイスは"ガラッゾ"。ケリュケイオンやアスクレピオスと同様、グローブ部分が本体らしい。




 ヒリングが女の子だからか、アーマーの面積が減って、美しいボディラインがある程度強調されている。いいんじゃないかな?







 「で、どーすんだっけ?コレ。半殺しに留めてはおいたけどサ」


 「端的にいえば鹵獲ですよ。我らが三元帥も是非とも参考にしたいから生け捕りにしろと」


 「相手は純粋なメカなのに生け捕り?」


 「ただの機械ではなく、心を持っていることぐらいは聞かされているでしょう?」


 「そうなんだけどサ」







 たとえ体が機械でも、心を持っているなら生きている者として扱うべきだ。


 ……これはアストラルさんからの教えなんだけどね。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《おい、クレア!》


 「どうしたの?」


 《パンドラとフェンリルのシグナルが消えた!》


 「えっ!?」







 イリアスから教えられた異変は、パンドラとフェンリルが消息不明になったと察するには十分なことだった。


 そんな……!







 「なんだよ、あっちはもう終わりか!?」


 「まぁ、アタイたちがもたついてるってことでもあるんだろうけど…」







 僕は今、ヒュドラとヒッポリュテのコンビと交戦中。


 で、怪物形態になってるヒュドラの砲撃に苦戦しているところ。







 「なら、アタイたちもそろそろマジメにやんなきゃね」


 「うへぇ。まぁ。三元帥に叱られるのは嫌だし、しょうがねーな」








 ヒッポリュテもメモリを出した。マズイ!








 《そうはいかん!》


 「でっ!?」


 「うっ!?」








 けど、メモリが使われることはなかった。でも、どうして…。








 《まったく、こうも広範囲に展開されては、ダークハウンドの救援にもいけやしない》


 「プロトゼノン!?」








 あの金色のメイス、悪魔的なフォルム、そしてゼノンに似た顔とカラーリング。間違いない、プロトゼノンだ。


 メモリを使われる前に、メイスで弾き飛ばしたんだ。更にヒュドラも含め、にらみを利かせてる。







 《試合映像は見せてもらった。やはりアビリメモリを使われると厄介だな。

  破壊させてもらう》


 「冗談じゃねぇっ!メモリを壊されたら説教どころじゃすまなくなる!」


 「アンタらの武器みたいに量産できないんだからっ!」


 《なら余計に好都合だ。まとめて吹き飛ばさせてもらう!》


 <ATTACK-FUNCTION IMPACT KAYSER.>









 プロトゼノンの方が数段早い。フォースチップを背中のブースターのスロットにイグニッション。


 解放されたエネルギーを全てあのメイスに集中させて、地面に叩きつける。


 それによって地面に流し込まれたエネルギーが一気に拡散して、地割れを起こしながら炎を噴出。


 一直線にヒュドラとヒッポリュテに向かっていき、二人は回避もできずに炎に飲み込まれ、爆発の中に消えた。


 "インパクトカイザー"……レルネの話だと、確かゼノンにも与えられていたアタックファンクションだっけ。









 「た、助かりました、その…」


 《礼には及ばない。私はあくまでも海賊、ビシディアンの一員だ》


 「それでもです。正直、かなり危なかったですから」


 《そうか、ならその気持ちはありがたく受け取っておこう》








 宇宙海賊だからって、関係ない。お礼はお礼だから。それに、悪い人でもないし。









 「あぁ〜あ、何やられちゃってんのサ。面倒増やさないでよね〜」


 「そう言うな。相手が悪い」


 「どこがぁ?」


 「さっきの望遠映像を見てなかったのか…?」









 上から声がして、見上げてみるとラベンダーの髪の男の子と、黄緑色の髪の女の子が。


 装備は……系統的には、ハルピュイアやレヴィアタンなんかと同系統の技術かもしれない。


 女の子の方がめんどくさがっているような素振りを見せてるけど、男の子の方は冷静さを崩さない。


 相手が悪い……ま、まさか僕とか?









 「リヴァイブ〜、その慎重さが仇になるってアムリタから言われてるでしょ〜?

  こーゆー時こそ、アタシ達の連係攻撃でかかればいいんじゃないの?」


 「2対1という状況も、本当に優位となるかどうかは怪しい。

  プロトゼノンとはそういう男だ。ここは撤退するぞ、ヒリング」


 「ちぇ〜」


 「ヒュドラとヒッポリュテを回収、離脱する」


 「りょーかい」








 すぐに攻撃の構えをといて、黒焦げになってたヒュドラとヒッポリュテをつかんで撤収していった。


 ていうか……








 《アイツらが言ってたの、プロトゼノンだったな》


 「デスヨネー」







 うん、分かってはいたよ?ヒュドラたちを倒したのもプロトゼノンだったし。








 「クレア選手、礼が遅れたでありますが、こんな離れたところまでご協力感謝であります」


 「え?」


 《なんだ、気づいてなかったのか…。クレア、君はアーツバトル連盟が形成している北東の防衛拠点まで来ていたのだ。

  確か、極輝覚醒複胴艦から最も近い位置ではあるが、かなり突っ走ってきたようだな》


 「え、えぇ〜!?」







 レリィだよね、あの赤い髪の人。円盤型のユニット持ってるし。


 で、えっと、待って。極輝覚醒複胴艦の位置は…







 《デルポイ大陸中央と、大陸外周の北東の防衛拠点、その中間点にある。

  君たちは、極輝覚醒複胴艦の後方を守る部隊じゃないのか?》


 「そ、そうだった…けど、離れすぎたぁぁ!」






 つまり僕とイリアスは、敵の数を減らそうとするあまり、いつの間にか突っ走ってしまっていたらしい。


 まぁ何が言いたいのかというと……極輝覚醒複胴艦から離れすぎたってことで…。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「てぇぇいっ!!」


 「曲がるビーム……!」






 アーバレストから放った湾曲ビームが周辺の怪人を薙ぎ払うけど、ロックオンしてたリートには防がれた。


 うーん、そこは素直にガードときたかぁー。


 とりあえず、そのおかげで相手のシールドの防御力は知れたけど…。







 「はぁぁぁ!」


 「くらえっ!」







 既にデーモンズアームを装備したゲリュオンと、装備を展開したケルベロスの挟み撃ち。


 けどね、そんなのに対処できない私じゃないよ!







 「2人とも、すぐに下がれ!防御と反撃が同時にくる!」


 『っ!?』


 「もう遅いよっ!」







 リートの警告より、私の動きの方が早い。


 ゲリュオンのアームとケルベロスの鍵型の剣をアーバレストと右手のビームサーベルでいなして、


 そのまま1回転してアームと剣を両断。更にバックステップで後退しつつ湾曲ビームで迎撃。








 「そんな、デーモンズアームが!?」


 「ビームサーベルのみならず、あのアーチェリー型の武器にも斬撃能力があったか!」








 ケルベロスの指摘は正解。アーバレストのビーム発振器である先端部は、


 発射装置としてだけでなくビーム刃としても使用可能。つまり、間合いや構え方は違うけど、ビームサーベル二刀流みたいなことになる。


 これぐらいはできないと、アーツバトル連盟のエースは務まらないしねー。








 「ケルベロス、追加召喚の準備をして。数で一気に…」


 「いや、それこそ命取りだろうね……ほらきた!」


 「くっ!?」








 攻撃能力を失ったらしいケルベロスをかばうようにゲリュオンとリートが前に出るけど、


 そこには私が連れてきたCPユニット装備型の警備団員3個小隊による集中砲火。


 ブースターとライフルの機能を一体化させた「フレキシブルブースターユニット」を装備した部隊ね。


 機動力重視での選択だったけど、やっぱり火力との両立ができてると効率イイねー。









 《警告。味方損耗率90%突破。戦線維持は困難と判断します》


 「あらら……そういやリヴァイブとヒリングもさっさと引き上げてしまったようだし、こっちも撤収しようか」


 「なっ、やられっぱなしで帰れっていうの?」


 「ヒリングはともかく、リヴァイブの戦況判断能力は立派なものさ。

  それに、さっきまでに確認できたところだと、ルシファーやファーヴニルも損傷甚大で撤収したようだし、

  君らのお仲間も既に半数以上が撃墜されたか撤収したかで、既に戦線離脱済み。

  なら、こちらとしても長居は無用だ」


 「今回はメディア様の転送補助もない。自力で撤収するしかないなら、早い方がいい、そういうことか」


 「破壊されたのが装備だけでよかったと思って、ここは逃げるが勝ちだよ」









 リートのデバイス、確かラスティエルだっけね。アレから発せられた警告が、リートに撤退という判断をさせたみたい。


 リヴァイブにヒリング?なんか気になる名前が出たけど……登録ファイターじゃないことだけは確か。


 多分、ネガショッカー側の新手のことだと思う。


 ゲリュオンが納得してないみたいだったけど、リートとケルベロスに説得されて後退し始めた。








 「逃がすものか!」


 「やめやめ」


 「シアン殿!何を言いますか!追撃するチャンスです!」


 「それに、連中を捕獲できれば、ネガショッカーの情報も多く入るでしょうし!」


 「君たちさぁ、"二兎を追う者は一兎も得ず"って言葉を知ってる?」


 『っ……』








 部下が何人か息巻いてたけど、そこはキッチリ黙らせる。


 確かに、アイツらを連行できれば収穫は多いとは思うよ?けどね、だからこそ慎重にならなくちゃ。


 けど、あれだけ大規模に展開されていたなら、おそらく足止め用に怪人なりインビットなりをよこしてくる可能性が高い。


 その時に突出して孤立したら、文字通りの袋叩きで最悪ご臨終だよ?


 私たちがリートたちを見つけて迎撃に出たのも、すぐ後方に援護を依頼できる部隊を置いてあるから。


 そう、いうなれば連行によって「敵の戦力ダウン」と「敵側の情報収集」という意味で「二兎」、


 だけどそれをむやみに追いかければ私たちの方に損害が出て、どっちもパー。だから「一兎も得ず」。


 地球の日本だっけね。あそこのことわざは的を得ていることが多くて面白いねー。







 「シアン殿、ヘイル殿とレリィ殿から戦況報告の通信が入っておりますが」


 「はいよー」







 追跡攪乱の為か、リートがゲリュオンやケルベロスをつかんだ状態でステルス発動、姿を消した。


 まぁ、アーバレストにはステルス状態の相手も探知できる特殊センサーもあるんだけど、


 今回は二兎を追う者は一兎も得ずの法則に従って追跡はなし。


 まだ敵は残ってるし、防衛拠点の方に戻らないと。通信にも出なきゃいけないしー。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「おりゃあーっ!!」






 右腕のブーストナックラーによる急加速パンチが、みさちゃんの目の前にいたインビットを粉々に粉砕。


 後ろから来たファンガイアの攻撃は左腕のブーストナックラーで急加速して回避。転身して蹴り飛ばした。


 周りにはまだインビットとかファンガイアとかイマジンとか、いっぱいいるけど……







 「みさちゃん、伏せて!」


 「おぉうっ!?」







 それは私がまとめて対処。


 マルチプルランチャーを展開、圧縮エネルギーを解放して、みさちゃんの上を通るような射線で魔力ビームを発射。


 続けざまに2射、3射。爆風が立ち込める中、それを突っ切って飛び出したインビットが1体。


 けど、カイテンオーを元にしたバトルスタイルのアームズプロテクターなら…!






 「そんなの!」


 「あたしらには効かないっての!」







 両腕を交差させ、大型グローブから発生させた防御フィールドでインビットのクロー攻撃をガード。


 そこにみさちゃんが飛び込んで、真横から左ブローを叩き込んで粉砕。







 「よっし、この辺の敵は全部潰したな!」


 「待って、まだいる」


 「へ?」








 アームズプロテクターのAIが、接近する影をとらえたの。


 その数はざっと20、その内2つは、確かステュムパロスにミノス!








 「おうおう、オレらのこと知ってるのかよ!」


 「僕たちは"アレス"以前から交戦経験がありますし。

  ともかく、こちらのノルマを果たしますよ」


 「久々の単身出番だ、腕が鳴るぜ!」








 両者ともにアビリメモリによる変身は済ませているみたい。


 ステュムパロスはハーピーみたいになってるし、ミノスはガチムチな風貌になってるし。








 「今回はそれだけじゃねぇ。ガチで潰させてもらうぜ!?」


 <バイオレンス・マキシマムドライブ>


 「あっ、ミノス?」








 いきなり声を張り上げたミノスは、更にパワードスーツ的なものまで装備。


 でもなんでだろ、あの風貌は頭以外が某フ○ンキーになったみたいな感じにしか見えない。








 「おらおらおらおらおらおらぁぁぁ!!」


 「うぐっ!?」


 「あやの!こんにゃろっ!」


 「おらよぉ!」


 「くっそ!?」







 いきなり突進してきて殴り掛かってきた。また両腕をクロスして防御フィールドで守るけど、衝撃が伝わってくる。


 やっぱり、あの大きな図体は伊達じゃないみたい。


 群がってくるインビットの群れを突破して、みさちゃんがミノスに殴り掛かる。


 でもダメ。左腕で叩き落とされる。そこにインビットが畳み掛けてきた。









 「みさちゃん!――いい加減にぃっ!」








 両肩にかかる形で装備されてるマルチプルランチャー、


 その右側をみさちゃんを襲ってるインビットに、左側をミノスに向けて発射。


 ミノスはたたらを踏んで後退、みさちゃんもインビットが消滅したおかげで立て直せた。








 「みさちゃん、長期戦はやっぱり不利。一気に決めちゃおう!」


 「おうよ!」








 『フォースチップ、イグニッション!!』








 ターボインファイターもアームズプロテクターも、背中にチップスロットを設けてる。


 そこにセイバートロンのフォースチップをイグニッション。


 装甲が継ぎ目に沿って展開され、トランステクターでいうフルドライブモードに入るのも一緒。








 「あったれぇぇ!!」


 <ATTACK-FUNCTION BURST BLASTER.>







 アームズプロテクターの場合、マルチプルランチャーがそれぞれ外側に90度倒れ、


 グローブと一体化しているフィールド発生器の後部に連結。連動して、内臓されていたバレルが展開。


 急速充填された圧縮魔力を完全開放、目の前にいたミノスごとインビットの群れを焼き払う。


 技名は"バーストブラスター"








 「いくぜぇぇぇっ!!」


 <ATTACK-FUNCTION DIVING SMASHER.>







 ターボインファイターの場合、ブーストナックラーが変形。


 2つに割れて、内部に隠されていた三角形の推進器が露出し、密着するように畳まれていたウイング状のパーツが展開される。


 みさちゃんのジャンプから、更に推進器から発せられるエネルギーで急上昇。


 推進器のパワーは継続させつつ軌道変更、眼下のミノスめがけて一直線に急降下。


 こっちの技名は"ダイビングスマッシャー"









 「この……オレ様がぁぁぁぁっ!?」


 「往生際、悪いんだってヴァ!!」









 反応が間に合ったミノスは真っ向からガードするけど、それこそが本命の引き金。


 ぶつかった衝撃によって、両手に溜めこまれたフォースチップのパワーが一気に炸裂。


 さすがにこれには耐えきれず――










 「ちっくしょぉぉぉ!」


 「へへん、おとといきやがれってんだ!」









 着地して勝ち誇るみさちゃんの前から吹っ飛ばされ、お空の星になっていた。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ミノスがやられた――まぁ、既に分かり切ったことではありますけど。


 僕らのノルマは、あくまでも機動六課のトランスポーターを破壊すること。あるいはその先鋒を務めること。


 それを忘れて目先の獲物に気を取られるようでは、やはりというか僕が任せられた奇襲任務には向かないようですね。


 リア・ファル様、どう考えても人選ミスだった気がするんですけど。







 「で、そうやって戦う前から仲間に見切りをつけちゃうって、どうかと思うけどな」


 「言ってしまってはアレですが、僕なりに今の職場には不満タラタラですので」


 「…………なんで続けてるの?」


 「上下関係のせいです」


 「またバッサリと…」







 いっそのこと、貴方みたいに流浪の旅でもできれば、僕も少しは満たされた生き方ができるかもしれませんね。


 ねぇ、リティさん?何やら色と風貌が違ってますけど。








 「まぁ人付き合いで泣いていることはわかったけど、こっちも事情があるんだ。

  悪いけど……すぐにお引き取り願おうかな」


 《気の毒だけどね?》


 《スキャニングチャージ!》


 <ATTACK-FUNCTION GATAKIRIBA SLASH THREE.>









 え、そんな躊躇なく…。








 しかし、そうと分かった頃には遅かった。突然地面にもぐったかと思うと、僕の斜め下から飛び出して、


 クワガタの顎みたいなヘッドギアで挟み込まれる。で、電流流しのオマケ付きで空に飛び出し、大回転を加えて投げ落とされる。


 これだけでも充分に痛いのに…………両腕のソードを展開して滅多切りにされ、一瞬の刹那に戻した右腕のソード先端が、ひじ打ちの要領で僕の腹部を突く。


 先端部に込められていたらしいエネルギーが炸裂して……僕はボロ雑巾のように宙を舞い、崩れ落ちていた。









 《どうだ、これぞボクとリティの2人で1人な必殺技、"ガタキリバ・スラッシュ・スリー"の威力だ!》









 エコーのかかったもう1人……多分、ルアクの声が聞こえる。


 ふ、ふふ……このまま、六課に生け捕りにされるのも、悪くはなさそうですけどね……。









 「何言ってるのさ、そうなられたらエリュマントスとかボクとかすっごく心配しちゃうんだゾ?」


 「だから一緒に帰るの!」








 ヘスペリデス、エリュマントス…。








 「あ、あれ、攻撃しないのか?」


 「そっちがくるつもりなら攻撃するさ。けど、そうじゃないだろ?」


 『…………』


 《ほらほら、リティの気が変わる前に》


 「そ、そだね、いこっ」


 「あぁ、待ってよエリュマントス〜」








 僕をおんぶしたエリュマントスが離脱、ヘスペリデスもついてくる。


 一方のリティは……動きなし?まさか、本当に見逃すつもりだというのですか……!?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《……ねぇ、本ッ当によかったの?アイツらそのまま帰らせちゃって》


 「いいんだよ、これで」







 俺の"中"からルアクが問いかけてくるけど、今更意見を曲げるつもりはない。


 いいんだ。今ここでステュムパロスたちを逃がしたところで…。







 《やれやれ……我が主ながら、随分とお甘いことだ》


 《レクセもやっぱそう思うよね?》


 《どうせやるなら、完全撃破だ。ましてや相手はネガショッカー。情けをかける必要性が見つからない》


 「俺はそうでもないよ」


 《《?》》








 レクセとルアクが意気投合してるようだけど、それでも異を唱える。


 情けをかける必要性……あるさ。組織なんて関係ない。少なくとも、ステュムパロスについてはそう思う。


 根拠は……本人がダダ漏れさせちゃったしね。








 《職場に不満があるとかいうアレか?》


 《そういうもんかなー?》


 「アレが演技とかじゃないってのは、すぐに分かったよ」







 それに、演技と見るには言葉にこもってた気の重さというか、そういうのがありすぎた。








 「職場に全く不満を持たない人ってのも珍しいけど、

  かといって心の底からため息をつきながら不満を垂れ流す人も珍しいだろうし、相当なことだと思う。

  それに、パスナが目撃したっていう仲間割れの話、アレの中にステュムパロスがいた。

  なんか一方的にブッ飛ばされたみたいだったし……あぁいうのって、今も昔も変わらない上下関係の迫害だと思う」


 《…………言われてみれば、今回のヤツの動きには、手を抜いているというよりは気が全くといっていいほど入ってなかったな。

  だから、あそこまで必殺技が見事に命中し、抵抗する力さえ残せなかったのだろう》


 《心そこにあらずっていうか、なんていうか…》


 「取り敢えず、今の立ち位置で何かを成し遂げようっていう気持ちじゃないのだけは、確かだよ」








 ディフィカルター12、だっけ。あのチーム、もしかすると結構基盤が弱いんじゃ…。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 我々は今回、前線には出なかったが……思いのほか激しい抵抗を受けているようだな。


 これはこちらの計算違いか。アーツバトル連盟、機動六課……ヤツらの底力、恐るべきものだ。


 だが、他にも恐れるべきものはある。どうやら洗脳は不完全、狙いもガムシャラなようでこちらを探しているようでもある…。


 先ほどのアストロブラスターの一撃も、単なる暴走ではなく、こちらを狙ってのことだとすれば…!







 「アムリタ、ファントムアークの損傷は」


 「心配すんな、掠りもさせなかったっての。冷や汗ダバダバだけどな」


 「けど、理由はどうあれ、完璧にこっちを向いてたわよ?さっきの銃撃」


 「やはりな…。トラルーめ、さすがは地獄と閻魔と死神に嫌われた男だけのことはある…」


 「縁起でもねぇけどな…」








 我々三元帥は、今回はファントムアークに常駐し、私が総合管制、アムリタが操舵、メディアがオペレート役になっている。


 ダークコマンダーは不在だが、おそらく戦況はモニタリングしているだろう。


 それより、問題はこちらの戦線が徐々に崩れ始めていることだ。


 "Xカイ"やルシファー、ファーヴニルまでも投入し、ディフィカルター12を合わせて幹部級の戦力は十分だった筈。


 同等以上の敵戦力の足枷になるよう、無数のインビットや怪人軍団まで転送して送り込んだ。


 アキレス・ディードも独自に軍勢を作って戦況を混乱させているようだし、割と容易く目的を果たせると思っていたのだが…。








 「逆に無茶ブリだったかもしれないわねぇ。

  ……っと、リヴァイブとヒリングが帰投してきたわ。補給の要請を出してる」


 「ブラックアラクニアに、すぐ応じるように打診しておけ。損傷は皆無なんだろう?」


 「あの二人はデバイスのエネルギーチャージだけでいいわね。

  ただ、ヒュドラとヒッポリュテが黒焦げになってるんだけど。これはもう再生カプセル直行ね」


 「オイオイ、さっき回収されてきたケリュネイアとネメアもそうだけどよー、不甲斐なさすぎじゃねぇの?

  ノルマ果たすどころかズタボロにされて帰ってくるなんてよ!」


 「そう言ってやるな。今私が言っただろう、奴らの底力は恐るべきものだと」








 ケリュネイアとネメアに続き、ヒュドラとヒッポリュテも撃墜か。


 やはり、リヴァイブとヒリングを後衛に残しておいて正解だったようだ。


 彼らまでディフィカルター12らと同タイミングで投入していたら、それこそ全滅に等しい損害が出ていたかもしれない。


 恐るべき相手だ…。致命的なまでに読み違えていたようだ。


 「不甲斐なさすぎる」と息巻いているアムリタの意見も汲んでの今回の布陣だったのだが、


 ヤツらからすれば相当ナメられていたようなものだった、ということか。これは我ら全員が油断しきっていたという何よりの証拠だろうな。


 先ほどこちらにあげられてきた、鹵獲に成功したパンドラとフェンリル。その功績とて、リヴァイブたちを後衛に残し、奇襲要因に切り替えたからこそだ。


 真正面からやりあえば、あそこまで綺麗に鹵獲できたとは思えない。







 「あら、エリュマントスとヘスペリデスも戻ってきたわ。

  こっちはエリュマントスから補給要請、あとステュムパロスの収容ね」


 「ステュムパロスも墜とされたか…」


 「あの子はしばらく無理ね。かなりダメージが深い。メモリを壊されなかったのは不幸中の幸いかしら」


 「マジかよ……どーする?リア。これじゃ総崩れだぜ?なんなら今からでもオレが…」


 「いや…やめておけ。お前にまで深手を負わされたらかなわん」








 一応、最終的な現場判断についてはダークコマンダーから任されてはいるが…。


 ギャンブルでなくとも引き際が肝心、か。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あーくそっ、いい加減に!






 「――っ!!」


 「くそっ!」







 アストロブラスターを切り落としてやろうかと思ったけど、やっぱりダメだ。


 コスモテクターがすぐに動いて、アルトでの斬撃がまた阻まれた。


 まったく、敵に回るとどうしてこんなに手におえないかね!








 「連携がとりにくい…!」


 「本能的に連携を阻止しようって動きをしてしまうんだろうな。

  厄介なことだ!」


 「かといって、接触融合を避ける為にも物理的に押さえつけるのは不可能……って!?」


 『っ!?』







 実は、さっきからアストロブラスターやらスターセイバーの斬撃波やらを乱射しまくってる。それで分断されてるんだ。


 アストラルでさえ舌打ちをするんだから、本当にとりにくいんだろう。


 ダークハウンドの言うとおりに本能レベルでの動きなら、鋭すぎて鈍らないわ。


 さてどうしたもんかと僕も悩む中、突然、トラルーの足元を無数のかまいたちが襲った。


 きっと、イテンのカリーシュダイブだ。


 けど、僕らを驚かせたのはそれじゃない。その直後に飛び出したイテンのとった行動だ。


 真正面から抱きついたぁ!?









 「オイオイ、何やってるよイテン!?接触融合で取り込まれたら…!」


 「かまわないで!ていうかそうなる前に!」


 「ま、まさかイテン殿、接触融合を逆利用する気でおじゃるか!?」








 ちょっとちょっと、何ヤケ起こしてるのあの子は!?


 さすがのスターやビコナまでパニック。








 「要は、背中にあるバグジェネラルのところを潰せばいいんでしょ!?

  だったら、正面にかぶさってしまえば視界を奪えるし、こうすれば……!」


 「――!?!?!!?!!?いだいいだいだいだいだいだいだいだいぃぃ!!」


 「いぃ〜やぁ〜!イテンたまがトラルーたまを刺してる光景だなんてぇ〜!」


 「早く!!」







 とりあえず、現状を整理するとこうだ。


 イテンが真正面から抱きついて、自分の体で覆いかぶさることで、背中に戻そうとしてたコスモテクターを動かせなくする。


 更に逆手にしたトレントブレードをトラルーの両腕にビームコーティングして突き刺すことで動きを鈍らせ、


 っていうか痛みで動かすどころじゃなくして、さっきのカリーシュダイブの影響で足を傷つけられて浮ついた体を思いっきり抱きしめて、


 もうそのままジー○ブリーカーかましてんじゃないのってくらいキッツイ、ボディホールドしちゃってるんです。イテンが。


 相手が愛しの彼氏だからって、接触融合覚悟でそんなことするかね。あぁでも、トレントブレード突き刺す辺り、ヤンデレな気もしなくはない。


 …………いやいや、そんなことより!刺された痛みが酷過ぎたのか、トラルーの素の声で悲鳴が聞こえてるし!








 「と、とにかくなんとかしちゃいましょうよぉ〜!

  アレ、もしかしなくてもトラルーたまの素の悲鳴ですよねぇ!?ガチ泣きしてますよね!?」


 「だろうな!いろんな意味でトラルーの為にも、早く背中に集中砲火だ!」








 「困るな」


 「ダークコマンダーか!」








 うわ、邪魔な時に出てきてくれたよ!厄介なのが!








 「人の恋路を邪魔するヤツは、神器の光に飲まれて死んじまえー!!」


 「ぬぉぉ!?」








 刺された痛みでガチ泣きしてるトラルーが、アストロブラスターをぶっ放そうとしてたんだ。


 その銃口をイテンがダークコマンダーに向けさせて、直後に発砲、と。


 イテンのおかげとはいえ完全にダークコマンダーを狙ったおかげで、味方側の被弾はゼロ。


 ダークコマンダーも急所への直撃はしなかったようだけど、上半身が左半分消し飛んでるよ。恋する乙女のパワーってすごい。







 <タカ!クジャク!コンドル!タァ〜ジャ〜ドルゥ〜!!>


 「ここは撤退してもらうよ!」








 そこへタジャドルコンボに変身したリティも乱入。


 そのバリアジャケットはステンスのものと細かいところが違う。


 頭のヘッドギアは戦闘機のヘルメットみたいな形状のバイザーになり、


 ステンスでは露出していた部分も含め肌は黒いインナースーツで覆われ、腕と足には鋭利なカッターも備わったアーマーが追加。


 その上に纏うコートの長さが多少短くなって、ステンスでは膝の下ぐらいまで届いていたものがリティの場合は太ももまでになっている。


 あと、ステンスでは本物の鳥のような翼だけど、リティの場合は多少メカっぽくなった翼に。飛翔能力については五分五分らしいけど。


 髪の色は赤に、長さはタトバの時と同じ。瞳は黄色に、まぁ顔にクリアレッドのバイザーがかかるから、赤にしか見えなくなるけど。


 変身完了と同時に左腕に召喚装着したタジャスピナーから発する火炎弾で牽制、飛び蹴りで吹っ飛ばす。








 「時間がない、一気に!」


 《一撃でブッ飛ばしてみせろ、リティ!》


 《スキャニングチャージ!》


 <ATTACK-FUNCTION TAJADOL FLAME THREE.>







 続けざまにベルトにオースキャナーをセタッチ、"タジャドル・フレイム・スリー"と呼ばれる必殺技へ移行。


 タジャスピナーをダークコマンダーへ向けて、ノーモーションで火炎弾を連射。


 直撃でふらついたところへ、火炎をまとった左ストレート。そこへ、最大チャージした火炎弾をぶっ放し、これも直撃!








 「……ギガスキャンでなくともこの威力…恐るべき男よ…!」


 《ちっ、逃げたか》


 「それより、今はあっち!」


 《エヴォリューションを解除させるには、確か強大なダメージを合体部に与えるのも有効だったな。

  ましてや相手は規格外……おい、タジャスピナーにメダルは入れてきたんだろうな?》


 「入れてはあるけど……」


 「迷っている暇はない。イテンが接触融合のリスクを伴いながらも動きを止めている今しかない」


 「……だよね」









 リティの"中"から聞こえるステンスの声。タジャスピナーの話ってことは、おそらくギガスキャンの技だろうけど…。


 マスターコンボイの後押しも受けて、改めて一斉攻撃の構え。


 特に巻き添え確定なイテンが死ぬほど痛そうだけど……我慢してもらうしかないってことで。









 「みんな、イグニッション技のエネルギーを、

  これから俺たちで撃ち出す一撃に上乗せしてほしいんだ。そうすれば、きっと」


 「何する気か知らないけど、任せるぜ」


 「どうせ、何かしらの技を媒介にして一点に集中させるというのは前提だったし」


 「他のエネルギーを1つに束ねることに優れるタジャスピナーの技なら、いける筈さ」








 スティア、ビコナ、アストラルを筆頭に、全員乗り気ってことで。








 「あぁそうだ、どうせならもっとでっかくいこうぜ?ビコナ」


 「でっかく、って…まさか」


 「こーゆー時の為に、レルネに無理言ってやってもらったんだ。お披露目にはちょうどいい」


 「……それもそうでおじゃるね。暴れ馬がまた暴れだしそうだし、ちょいとおとなしくしてもらわないと」


 「じゃあさ、私たち3人同時にやっちゃお!」




 『フォースチップ、バーストドライブッ!!』


 《《《BURST MODE,START!!》》》







 って、えぇぇぇぇ!?スターもビコナもイテンも、なんでバーストモード使えるワケ!?


 どっかの所長じゃないけど、そんなの聞いてない!









 「そりゃあな!いわゆる隠し玉ってヤツだ、使わないのに教えられるかっての!」


 「切り札のお披露目は、本当の本当にここぞって時までとっておくものでおじゃる!」


 「ていうか、隠し玉が多い恭文とかに言われたくないんだけどね!」








 ブリッツスカイ、ゲッコウサクヤ、そして刀身が若干侵蝕され始めたトレントブレードのチップスロットやコアにフォースチップ。


 そのエネルギーでポテンシャルを引き上げる、ジュンイチさんやスバルとかが使う奥の手・バーストドライブ。


 なんでそれをスターたちが持っているのか……はまた今度聞くしかないか。




 某トランザムさながらに全身を赤く輝かせ、残像すら残るほどのスピードでトラルーに急接近。


 トレントブレードの侵蝕箇所である先端部を無理矢理引きちぎるという力技に出たイテンも攻撃に加わり、


 スターがライフルモードに切り替えたルディンのビーム連射でトラルーの動きを止めて、


 イテンは射撃形態に切り替えたトレントブレードで超至近距離射撃。ていうか、狙うのが首元ってまたエグイ。


 それはともかく、すかさずビコナが懐に飛び込み、扇二刀流のゲッコウサクヤで2つの斬撃。


 Vの字に切り付けられ、先にイテンに突き刺されていた分のダメージもあってか、トラルーがメチャクチャ泣いてる。


 うん、今のラッシュで顔周辺の物質がはがれて、トラルーの顔見えたの。で、すっごく泣いてるの。



 いやもう、こうするぐらいしか方法なくてゴメンナサイ。







 「みんな!傷が塞がらない内に、一撃必殺で!」








 で、実は密着してた両足も既に侵蝕され始めたからか、二人羽織りみたいな感じでイテンがトラルーを抑え込んだ。


 巻き添え確定なのが申し訳ないけど、唯一にして絶好のチャンス!!








 『フォースチップ、イグニッション!!』





 <ATTACK-FUNCTION BLAZING RAISER.>


 <ATTACK-FUNCTION GOKUEN GEKIRYU RANBU.>


 <ATTACK-FUNCTION CASCADE CALIBER.>


 <ATTACK-FUNCTION SHARK BLAST.>


 <ATTACK-FUNCTION FULL-BIT BURST.>




 <ヒート!マキシマムドライヴ!>


 <トリガー!!マキシマムドライヴ!>


 トリガーエクスプロージョン!!」




 「エナジー、ボルテクス!!」


 《Energy Voltex》




 「アイシクルキャノン!!」


 《Icicle Cannon》






 接触融合によって離脱できないイテンを除く全員で必殺技。


 スターのブレイジングレイザー、ビコナの獄炎激流乱舞ごくえんげきりゅうらんぶ、レルネのカスケードカリバー、


 ダークハウンドのシャークブラスト、アストラルのフルビットバースト、スティアのトリガーエクスプロージョン、


 マスターコンボイのエナジーボルテクスに僕のアイシクルキャノン。


 そして、それを一点にまとめ上げるのは……







 「みんな、力を借りるね」


 《ドーンと任せちゃって!》


 《さっさとやっちまおうぜ!》


 《ギガスキャンで、どっかーん!》


 《たまには張り切らないとね》


 《いつでもいいぞ》


 《さぁ、参りましょう》


 《ぶちかませ……リティ!!》








 リティ以外の声は、何故かタジャスピナーから。


 いや、違う、声をかける為なのか、リティがハッチを開けていたから確認できた。


 きっと声の元は、既にタジャスピナーにセットされているコアメダルからだ。


 ルアク、ブライ、グラティ、スリア、レクセ、アラリア、そしてステンス。







 <タカ!クワガタ!ライオン!サイ!シャチ!プテラ!コブラ!ギガスキャン!!>


 《ATTACK-FUNCTION WONDERFUL BLAZE.》







 セタッチされたオースキャナーが7枚のメダルを読み込み、ギガスキャンを発動。


 技名は、アナウンスからすると"ワンダフルブレイズ"か。


 それぞれのメダルが放つパワーを増幅し合いながら、メダルのオーラが円陣を組みながら高速回転。


 今しがた僕らが放った技に混ざり、いや、取り込んで、より凄まじいパワーを凝縮しながら飛翔、


 バーストモード継続中のイテンに取り押さえられたトラルーを彼女ごと飲み込み、凄まじい閃光と共に大爆発を起こした。







 「うぉぉ、眩しすぎるッ!」


 「もっともな感想は後にしろ!この閃光の後、何があるかわからんぞ!」








 僕らみんなの必殺技まで巻き込んで威力を上げまくったワンダフルブレイズの光の円。


 それは間違いなくトラルーの背中、マイクロンたちとの接続点にされているバグジェネラルに直撃した筈。


 これでなんにもならなかったら、それこそお手上げに近いんですけど。








 ………………あ、あれ?


 違和感を感じたのは、光が収まってからのこと。


 爆発地点には、おそらく接触融合から解放されたのだろう、よく分からん物質が体から剥がれたイテンが転がってるだけ。


 トレントブレードについては、刀身が殆ど吹き飛んでたけど修復可能そうなのでまだよし。


 ただ問題は、トラルーもマイクロンも、そこにいなかったこと。








 《サーチをかけてみましたが、この辺りに反応はありませんね。

  かといって、瞬間転送された痕跡もありませんし…》


 「オメガ」


 《こっちでも同じだ、ボス。ミスタ・トラルーもマッハたちも、完全に反応が消えてる》








 アルトやオメガのサーチもダメらしい。


 となると、デルポイ大陸のどこかにいるのだとしても、結構遠くまで飛ばされたことに…。


 まさか、ワンダフルブレイズの爆発で?







 「そうと考えるのが妥当だろうな。

  爆発の後、別に9つの光が飛び散るのが見えた。おそらく、マッハたちも解放と同時に散り散りに飛ばされたのだろう。

  ただ、トラルーについてはよく分からなかった、すまない」


 「いやいや、ダークハウンドのせいじゃないでおじゃるよ」









 うーん、これってどういう……あれ?そういえばアストラルは?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「リア・ファル」


 「随分と酷い帰りだったようだな」


 「否定はしない」







 ダークコマンダーが、左上半身を消し飛ばされた姿でファントムアークのブリッジに戻ってきた。


 まったく、プルトーネに腕を切り落とされるわ、アストロブラスターで体の一部を消されるわ、


 最近はどうにもロクな目に遭っていないように見えるんだが。


 まぁいい、ダークコマンダーがこうして戻ってきたのなら……潮時ということだろう。


 目的の全ては達せられなかったが、だからといって負けたワケでもない。







 「メディア、味方全員に緊急通信。

  現時刻を持って作戦は終了、ファントムアークごと我々はデルポイ大陸から離脱する」


 「仕方ないわね、こっちの損害がこれじゃあね」


 「アムリタ、次元転移の準備を。プレダコンズメンバーを全員収容した時点で動けるようにな」


 「分かった」








 ネガタロスには私から話しておけばいいとして……問題は、神器を確保するどころか、逆に散り散りにしてしまったという、今回の結果か。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「てぇいっ!」


 〔いけいけー!そのまま成敗するのじゃ!〕


 「もちろんだよっ!」


 《Full Charge》






 仮面ライダースティングことメープルの猛攻で、ワスプイマジンが吹っ飛ばされる。


 そこに飛びかかり、ライダーパスをベルトにセタッチ。フリーエネルギーの放出が確認された。


 マズイな……ここで頭数を減らされると苦しくなるんだが。






 〔い、いかん!すぐに後ろへ下がるのじゃ!〕


 「え!?今いいとこ…」


 〔いいから早く!〕


 「って、うわぁぁぁ!?」







 だが、スティングとワスプイマジンめがけて、極太のビームが入った。


 スティングは万蟲姫のおかげで間に合ったが、ワスプイマジンが結局爆散した。


 このビームの色には見覚えがあるので、早速問わせてもらおうか。







 「ふっふふ♪そっちとは射程がダンチなのよねぇ♪」


 「その段違いな射程のおかげでこちらの戦力を減らされたら、たまったものじゃないんだがな!」


 「って、うそ!?」


 「ランチャーの射角がズレていたようだ…」








 やはりな、ヒリングにリヴァイブ。そして今の砲撃は、ガデッサのビームランチャーによるものだな。


 射角がズレていたとか、そういう問題ではないと思うんだがなぁ?








 「まぁいきり立つな。どうせ代わりのイマジンなんて簡単に調達できるだろう?」


 「それより、アタシら撤収命令出てるから。あとはそっちの好きにすればいいサ♪」


 「なに?」








 撤収命令だと?ということは、ダークコマンダーがこの戦闘に見切りをつけたか?


 ふと見渡してみれば、ファントムアークの方を目指しているのだろう、プレダコンズ側の残存戦力が撤退していくのが見える。


 一部、生きているのが不思議そうなダメージを受けているヤツも混ざってるが…。








 「1つだけ聞いておく。ダークコマンダーからの指示か?」


 「現場判断はリア・ファルに任されていたようだが、大まかな打ち合わせはしていただろう」


 「引き際ってヤツね」


 「なら、こっちはこっちで対処させてもらうまでだ」







 ダークコマンダーの指示にしては、少々味方陣営の被害が大きかった気もするがな?


 まぁいい。






 「塚原真希鍍。このシュンジントウを賭けた勝負、またいずれ……」


 「預けさせると、思ってるのか!?」


 「ぐっ!?」






 シュンジントウを持って撤収しようとしたところ、塚原真希鍍が突然飛び込んできた。


 勢いよく突き出された袈津尾丸の一撃はシュンジントウを的確にとらえ、あらぬ方向へと弾き飛ばしていた。


 デスイマジン!







 「そうは問屋が何とやら、よ?ネガタロス」







 しかし、水のムチで絡めとられたシュンジントウは、ミシオの手に。


 いつの間にか見当たらなくなったと思ったら…!







 「あっちいけぇ!」


 「ちょっ、なによザコの分際で!」


 「そんな低スペックで、この私に挑もうなどと!」


 「失礼だなもう!」








 サニーも、ヒリングとリヴァイブの封殺を目論んで奮戦。








 「鬱陶しいのよ!」


 「お前たちに構うほど暇じゃない!」







 まぁ、ものの数秒で一蹴されたが。とはいえ、今からシュンジントウを奪い返そうとすれば面倒だ。


 仕方ない、このまま撤収するとしよう。







 「メープル、ちょっと代わってもらえる?」


 「しょーがないなー」


 《Hunter Form》








 おっと、ただで逃がしてくれるつもりはないか!


 万蟲姫のイマジンが交代させ、メープルのスティングからサニーのハウンドへと姿を変える。


 だが、狙いはこちらではない…?







 「お前たちがフェンリルさんやパンドラさんに何したのかは知らないけど!」








 素早くデンガッシャーを組み換え、ライフル形態に。その銃口は素早く、リヴァイブに向いた。


 ……あぁ、そういうことか。サニーめ、リヴァイブともみ合った時にフェンリルの匂いでも感じたか。


 それぐらいしか、つじつまが合いそうな理由もないしな。







 「だからどーしたってのよ。人間と飼い犬の分際でぇっ!!」


 「っ!!よせ、ヒリング!」


 「この、"眷属霊けんぞくれい"であるアタシが後れを取るワケない!!」


 「――なんか1発叩き込んでおかないと、気が済まないんだよね!!」


 「うぐぁあっ!?」







 グローブの指それぞれからビームサーベルを発生させてヒリングが斬りかかるが、


 斬撃の直前で大振りになったところ、つまりガラ空きになった腹部に、デンガッシャーのエネルギー弾が撃ち込まれる。


 しかも、電王のガンフォームと違って、アレは一撃必殺型だ。至近距離で直撃でも受けようものなら…!








 「だからよせと言ったんだ…!

  ネガタロス、後日また会おう!こちらはすぐに撤収する!」


 「あぁ、後日な」







 至近距離での直撃弾。その衝撃の凄まじさで意識を刈り取られたか、ヒリングが一撃で沈黙。


 やむなく彼女を空いている左腕で抱きかかえ、リヴァイブも撤退。


 さて、オレたちも撤収させてもらおう。これ以上の戦闘は意味が無さそうだ。







 なにせ、今回の戦闘はダークコマンダーが主導で計画したものだからな。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 さぁどうした、ネガショッカーの塵芥!


 このヤミ様の前には、貴様如きがかなう筈もあるまい!






 「まったく、3対1の戦闘がこうも長引くとは……む、撤収命令?」


 「逃がしませんよ」






 む、なんだセイカ。我の手柄を横取りする気か?


 ――っと!






 「エルシニアダガー」






 90度右側に転身、同時にかざしたエルシニアクロイツを中心に大量に形成した魔力弾を発射。


 近くまで迫っていたモールイマジンやらファンガイアやら……まさしく塵に等しい連中をまとめて打ち砕く。


 まったく、我は闇統べる王だというに!頭が高いわ塵芥の中の塵芥ども!


 ――などとツッコんでやる暇もなく、また右90度転身。






 「アロンダイト!」






 エルシニアクロイツで指し示した新たな標的に向けて、紫の魔力砲撃。


 放たれた奔流が敵の機械人形インビットを数十機まとめて消し去り、その衝撃で発生した衝撃波が残りの塵芥オルフェノクを吹き飛ばす。


 ふん、塵芥ふぜいが何人でかかってこようと、我らの敵ではないわ。








 「こちらもいきます」


 「えぇい、上から撤収命令が来るわ、敵は自由奔放に暴れるわ……厄介な相手に鉢合わせたものだ!」


 「パイロシューター!更にブラストファイアー!!


 「火力密度が濃くないか貴様!?」








 アウゲイアースとかいう輩にはセイカが猛撃。


 炎の力を加えた炎弾の嵐、それを巻き込んで押し寄せる火炎砲撃。


 さすが、オリジナルがオリジナルならセイカもセイカだな…。


 あの塵芥の苦言も、なんとなく理解できる。







 「しかも貴様、私がケミカル系、ひいては薬物系の特性を持っているからと、

  初めから焼却目的で割り込んできただろう!?」


 「おや、分かりましたか」


 「あれだけの火炎魔法を放たれたら嫌でも理解するわポーカーフェイスめ!!」







 とかいいながら、パイロシューターは溶解液で迎撃、ブラストファイアーも余裕で回避したではないか。







 「内心冷や汗ダラダラだわ!貴様らに付き合っていたら文字通り焼却されそうで怖いわ!!」


 「あー!逃げた!」







 そういえば撤収命令がどうのこうのと…。ネガショッカー側は目的を果たしたということか?


 釈然としないが…ライ、むやみに追わなくていい。これ以上ジュンイチたちに心配されるのは御免だからな。







 「やれやれだねー王様」


 「ひとまず、防衛目的は果たせたでしょうか」


 「おそらくな」







 極輝覚醒複胴艦は無事なようだ。ちりあk……ヒルメも無事であろう。








 「あ、珍しい〜。王様が他人のこと塵芥って呼ばないなんて」


 「まぁ、彼……否、彼女のオシオキは本当に死ぬかと思いましたからね…」


 「思い出させるなというに…!!」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「なんやて、撤退していく?」


 「は、はい……各方面でネガショッカーのメンバーが撤退を始めているんです。

  ネガタロス側がやや遅れてではあるんですが、向こうには黒いオーロラがありますし…」


 「そして、トラルーとマイクロンは行方不明、か…」






 シャーリーからの報告で、この戦闘が終息を迎えているのはわかった。


 けど、アイツらが今回何をしてったんや?トラルー暴走させて混乱させるだけ?にしては投入された戦力が多すぎる。


 少なくとも、アーツバトル連盟まで相手取ってケンカするほどの戦力は必要なかった筈や。


 撤退する理由があるとすれば、主力となりうるメンバーが痛手を受けたから、やろうけど…。







 「現在、アキレス・ディードとそれに率いられた部隊だけが戦闘を継続しているようです」


 「戦力は?」


 「先日レルネさんからデータを提供していただいたハンター系が34、同じくクノイチ系が39。あとは指示系統から外れたらしいインビットが20ほど」


 「アキレス・ディードも含めれば、ざっと1個大隊は作れそうな戦力だが……それらは全て極輝覚醒複胴艦の周辺に?」


 「そのようです。クレアさんやスターさんたちを呼び戻していますが…」








 ルキノにはこの極輝覚醒複胴艦周辺の状況を調べてもらっとるんやけど、


 ビッグとの話からすると、こっちはこっちでヤバそうやね…。


 恭文たちが戻ってくるまでにはしばらくかかるだろうし…。








 「こちらに向けて急速接近中の反応をキャッチ。なぎくんたちです!」


 「なんやて!?」








 うっそ、あんな機動力ある!?


 トラルーとドンパチやりあってた闘技場からこの艦までの距離、ざっと15km以上はあるんやけど!






 「なぎくんから通信です!」


 「すぐに開いて!」


 《はやて!》






 恭文が通信してきたってことは、どーやら無事みたいやね。







 《まぁね。ただ、辿り着く頃には戦力ダウンするけど》


 「はい?」


 《すぐに着艦できそう?》


 「それはなのはちゃんたちが頑張ってくれとるから問題ないで?」


 《じゃあ着艦エリアだけ確保して人払いさせた方がいいよ?

  あ、あとクッションも大きめの用意しといて。多分"墜落"するだろうから》


 「はいっ!?」







 墜落って、何があってん!?



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 何が、っていわれても、僕もまだ整理しきれてないんだけどさ…。


 墜落しそうってのは確かなんだよね。なりふりかまわないから。






 「――くそ、バーストモードの限界時間か…!」


 「こっちも、でおじゃるね…!」







 実はあの戦闘の後、イテンを運び込むってこともあって緊急帰還することになったんだけど、


 ビークルモードのスターとストライダー形態のダークハウンドに乗ったりつかまったりして、バーストモードの出力上昇効果で超加速中。


 スターは自分で、ダークハウンドについては、ビコナが自分の体を仲介させる形でゲッコウサクヤのバーストモードのパワーをダークハウンドに伝えてる。


 なので、本来バーストモードを持っていないダークハウンドも、ビコナがゲッコウサクヤを括り付けた手を離さない限りバーストモード状態。


 スターの上には僕、マスターコンボイ、タジャドルコンボ継続中のリティ。ばたんきゅーなイテンはあらかじめバインドでスターの上に括り付けてある。


 ダークハウンドの上にはビコナがいて、その両サイドのフックに引っかけてもらう形でレルネとスティア。


 しっかし、スバル&マスターコンボイとの模擬戦で味わったからわからなくはないんだけど、バーストモードのパワーって凄すぎ。


 15km以上の道のりを2分かからずにぶっ飛んでいくって、ジェットコースターもビックリだ。







 「極輝覚醒複胴艦が見えたぞ」


 《着艦ポイントを確認した。ブリッツスカイとミスタ・ダークハウンドに転送すればいいんだな?》


 「助かる」


 「頼む」








 敵の数は減ったのか減ってないのか、まだ交戦中みたいだけど無事みたいだ。


 艦本体ともいえる中央ブロックの上面が着艦ポイント。あ、要望通りでっかいクッション置いてくれてる。


 ……さて。








 「僕らはこのまま降下して戦闘開始。

  スターとダークハウンドはあのクッションめがけて突っ込めばいい。

  ……んだけど、マジでスターとビコナも出られないの?」


 「申し訳ないけどな…!」


 「まだ私たちには、バーストモードの制御に、かなり負担がかかっちゃって…!」


 「無理もない。オレやスバルだって、ハイパーゴッドオンを経験しているおかげもあって消耗を抑えた制御ができる。

  それにスターたちの場合、半ば無理矢理システム化したんだろう?なら負担が大きいのもうなずける話だ」


 「ボクもまだまだですよ〜。もっと精進して、スターたま達の負担を減らせるようにならなくては」








 まぁ、分からなくもないんだけどね。膨大な力の制御には、同じく膨大な集中力やら精神力やら必要。


 体力があればいいってワケじゃないしね。イテンは体力的にも武装的にも戦闘不能だし、トラルーの仲良しトリオはこれで全滅か…。


 あ、ダークハウンドは?








 「俺は問題ない。増大したパワーもその制御も、全てビコナとゲッコウサクヤが肩代わりしているからな…」


 「というより、ゲッコウサクヤがバーストモードによって増幅させたエネルギーを伝達させているだけですから、

  その伝達相手には殆ど負担がないようにはなっているんです。実験段階でしたから、こうも上手くいってくれてありがたいですけど」








 そもそも、どうしてレルネがバーストモードをシステム化できているのかって話もあるんだけど、


 どうやらジュンイチさんとこのイレインと技術取引をして、その根本的な部分の技術を手に入れたらしい。


 で、あとはそれを解析して、デバイスにも組み込めるように新しいシステムを構築した、と。


 いつの間にかノーヴェとかからも話を聞いて、参考にしていたらしいけど。


 ちなみに、スターたちのバーストモードは、最大で180秒が限界らしい。








 「進入コースよし、着艦するぞ」


 「よし、降下開始!」








 ダークハウンドからの声で思考を切り替え、戦闘態勢に。


 アルトはまだ健在。それだけで戦いようはいくらでもあるさ。


 僕の声と共に、マスターコンボイ、スティア、レルネがそれぞれ地上に降下。リティも翼を広げて飛び出した。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「こちらダークハウンド、緊急で申し訳ないが着艦させていただく!」






 恭文から話は通してもらっているが、そこは通過儀礼というか、やっておかなければならないことだ。


 あくまでも人様の艦なのだから。


 なるべく水平を維持しつつ、用意されていたクッションめがけて降下。スターと共に極輝覚醒複胴艦へ着艦。


 それと同時、増大していた分のパワーがなくなり、通常時のレベルまで出力が戻るのを感じた。







 「……やはり、限界を超える瀬戸際での制御だったか…」







 バーストモードの制御で体力を使い切り、ビコナが俺の上から崩れ落ちたからだ。


 すぐにロボット形態に変形、周囲を確認。


 同様にバーストモードが終了したスターからも応答はない。おそらく、ビコナ共々体力を使い切って気を失っているんだろう。


 もちろん、このままにしておくつもりはない。できれば艦内の案内役がほしいところだが…。







 「……あなたは、ダークハウンド…?」


 「あぁ、君は確か…」


 「ノーザン。ありがと」


 「ん?」








 慌ててはいない、しかし急いでいるといった感じの足取りでやってきたのはノーザン。


 そういえばビコナとチームを組んでいたな。スターやイテンとも付き合いはあるというし、彼女に任せればいいだろう。


 しかし、いきなりお礼?







 「スターたちをほっとかないでくれたから」


 「…そうか」







 機獣故に、人間のように表情は浮かべにくい。だが、相手の表情はわかる。


 そして、表情に表しにくいなら、せめて声色で表そう。


 とにかく自分なりにやさしさを込められるだけ込めて、彼女の言葉に声を返した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《今の今までロクな接点もなかった相手だというのに、

  緊急着艦の許可はおろか、補給と武装の応急整備までしてくれるとは…。感謝する》


 「いやいや、こっちこそお礼を言わないといけないし。

  恭文たちの援護をしてくれたばかりか、ここまで送り届ける足にまでなってくれるなんて」






 ほんまやで?宇宙海賊ゆうからちょっと物騒な感じもしとったんやけど、話してみればフツーにえぇ人やん。


 噂に聞く評判以上にできた人やで?このダークハウンドて男は。







 《既に理解していることとは思うが、今から搬送する3名はしばらく安静にする必要がある。

  それと、イテンの侵蝕されていた箇所が元通りになっていることについては、何かご存じか?》


 「うぅ〜ん、そこを突かれるとこっちとしても弱いんよ。誰か詳細を知ってそうな人が残ってればいいんやけど…」


 《それなら、僕が答えておこう》


 《アストラル?》







 突然こっちの通信に割り込んだのは、敵か味方かいよいよわからなくなってきたアストラル。


 まぁ、多分味方ととらえた方がええとは思うけどね。








 《なぁに、今回のダークコマンダーのやり方が気に食わなかっただけさ。

  僕からしてみればトラルーは同胞であると同時に友でもある。友達をないがしろにされたら、誰でも怒るだろう?》


 「せやねぇ。ジュンイチさんかてウチらに何かあったら恐ろしいことになるもん。

  それはさておき…」


 《そうだね。イテンの侵蝕箇所が元に戻っていることについてか。

  可能性として考えられるのは、僕らの集中攻撃でバグジェネラルを失い、マインドコントロールから解放されたマイクロンたちだ。

  一度融合されたマイクロンでも、自我を取り戻して独立した場合、元通りの体で出てくることを確認している。

  おそらく、イテンの場合もそれと同じケースだと思う。その辺はベクターメガトロンだっけ、彼も知っているだろう。

  なにせ、体験者の1人だし》


 「なるほどなぁ…。んで?アンタはこれからどないするん?派手にネガショッカーにケンカ売ったも同然やで?」


 《厳密にはユニクロンに、だけどね。僕は僕で独自行動させてもらう。

  何かしらの縁でまた会うこともあるだろう。その時はゆっくり話せる状況であることを願うよ。

  あと、言えた義理ではないけれど、ユーリプテルスとゼノンのことを頼む》







 情報とお願いだけおいて、さっさと通信を切ってもうた。忙しいやっちゃなー。


 ゼノンな、さっき極輝覚醒複胴艦にやってきたんよ。そしたらいきなり「レルネに合わせてほしい」ゆうから、ひとまず収容しとる。


 ユーリプテルスは歴史またいで古い付き合いのポラリスと要相談やな。







 《ユニクロンにケンカを売る、か。だが、それは今更なのかもしれない。

  その権化ともいえるダークコマンダーを首魁とするプレダコンズと敵対した時点で、そうなっているといえなくもない。

  特に機動六課、いや、管理局とトランスフォーマーたちは、全てユニクロンと敵対する者だといえる。

  アストラルについても、元々今回の件については懐疑的だったようだしな》


 「だから、迷わず恭文たちの援護をして、こうして情報までくれた、と?」


 《そうでもなければつじつまが合わない。演技しているという可能性もゼロではないが…》


 「その割には迷い無さすぎやしね…」








 演技だとしても、ユニクロンの権化相手にイグニッション技まで使ってケンカ売ると思うか?


 そこはやっぱアレやろ、「決意の砲火」とかそんな感じやろ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《リティ。こっからは地上戦に切り替えろ。

  アキレス・ディード以外に飛行戦力がないなら、その方が効率的だ》


 《んじゃあ、誰が行くんだ?相手は機動性重視みたいだし、オレの出番か!?》


 「……いや、ここはグラティで、サゴーゾでいく」


 《え?オレぇ?》


 「こういう時は、1体ずつ確実に潰した方がいい。

  それに攻撃も激しいし、防御力重視でも悪くないとは思う」






 タジャスピナーからメダルを出して、次に使うコンボを考える。


 ステンスの言うとおり、確認されてる戦力でアキレス・ディード以外に飛行できるヤツはない。


 あと、ブライのラトラーターの場合、スピードが凄い代わりに防御が手薄になるし、


 ガタキリバはブレンチシェイド使うと余計に体力消耗するし、


 ここは攻撃力と防御力を両立してるサゴーゾ。グラティに頑張ってもらう。







 《では、私たちはリティ様の援護をしましょう」


 「頼むよ」


 《じゃあグラティ、頑張ってね」


 《分かった!》







 アラリアを筆頭にスリアたちが実体化。彼らにとってメダルは核ではなく、絶対的な依代。


 だから壊れても彼らが消えたりはしないけど、力が出せなくなる。だから、やっぱりメダルを大事にする。


 さっきワンダフルブレイズを撃った時とかは、力を集中させる為にメダルに自分を宿らせていたんだ。


 その方がダイレクトに力を送れるんだそうで。







 「さ、いくよグラティ」


 <サイ!ゴリラ!ゾウ!サゴォーゾ……サゴォーゾォ!!>







 俺がサゴーゾコンボを使うと、まず頭にはサイの角をあしらった冠みたいなヘッドギアが。


 両腕にゴリバゴーンの他、肩から胴にかけて重厚なアーマーが追加。オーラングサークルと一体化する。


 下は黒いライダースーツ状のズボン、膝から下はその上にプロテクター兼用の濃いグレーのブーツ。


 ブラカワニの時は紫に、タジャドルの時は黄色に、ガタキリバの時はオレンジに変わる瞳の色は、真紅。


 髪は純白になり、全体が首ぐらいまでの長さに統一。



 そんでもって、このコンボを使ってやることといえば…!








 「ウォォォォォォ!」








 ゴリラのドラミング、アレと同じ動作で目の前の一定範囲の重力を操作してしまうこと。


 少し離れたところにいたインビットやオオカミ型ロボット数体を半重力でまとめて宙に浮かし、


 バランスを崩したところで通常重力に戻して落とす。で、畳み掛ける。




 ゴリバゴーンで強化されまくりな剛腕で、混乱しているロボットたちを次々と爆砕していく。


 ……んだけど、さすがにちょっとキツくなってきたかも…!








 《コンボの使い過ぎだ。これ以上は後退する余力さえ残らなくなる》


 「分かってる…!」








 レクセからの警告。わかり切っていたことだけど、やっぱり俺がコンボ使うと消耗が…!


 とはいえ、せめて取りこぼしたアイツらだけでも!








 《スキャニングチャージ!》


 <ATTACK-FUNCTION SAGOHZO QUAKE THREE.>








 オースキャナーをベルトにセタッチ。


 解放されたエネルギーの一部を右足に込めて、思いっきり地面を踏みつける。


 同時に半重力で敵のロボット数体をまとめて浮かせて、腕で重力操作してこっちに引き寄せる。


 集まってきたところを両腕でガッチリと抑え込み、数体が圧潰していくのをよそに残ったパワーを全部込めたヘッドバッド。


 真ん中にいたインビットに叩きつけられたヘッドギアの角部分から一気にエネルギーが炸裂、残っていた連中も全部粉砕。


 浮かせて、引き寄せて、圧砕する。"サゴーゾ・クエイク・スリー"の流れだ。








 「うっ……く…」


 《うぁ、戻っちゃった」


 「さすがにこれ以上はボウヤの命にかかわるわ、後は私たちで」


 「分かった」


 「た、頼むよ…」








 必殺技をやりぬいたのはいいけど、そこで遂に限界。


 もう、まともに立つだけでも厳しいくらい…。


 サゴーゾの解除と同時にまた実体化したグラティと、合流してきてくれたスリアに任せるしかなさそう…。


 レクセ、悪いけど…。








 《分かっている。この期に及んで"中"にいるだけというのも、さすがに話にならないしな」







 察してくれたレクセも俺の"中"から出てきて実体化。とりあえず、これで大丈夫そうだけど…。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ネガショッカーは引いたか…。


 とりあえず、ディセプティコンが出なかったのはデルポイが射程圏外だからか、あるいはミッドに潜伏しているままか…。


 ミスリルの安否が心配だが、形跡を残さない為にも通信は既にシャットアウトしている。


 それに、現在の潜伏場所はミッドではなく地球…。デルポイほどではないにしろ、マークはされにくいだろう。


 少なくとも、ネガショッカーであれディセプティコンであれ、主な戦場はミッドのようだしな。


 さて…。







 《私もそろそろ、おいとまさせてもらおうか。目的は達せられたようだしな》


 「何を、勝手なことを!」


 《そうだ!まさかパンドラやフェンリルのシグナルが途絶えたのも、お前のせいじゃないのか!?》


 《……やれやれ、貴様らの情報係は何をやっているのだ…。私の連れはその2体とは交戦していない。

  疑うなら、ネガショッカーのディフィカルター12辺りにでもするんだな》


 《なにぃ!?》








 大剣形態のデバイスで斬りかかってきたフェイトの攻撃をダークシールドで受け止め、


 ダークシューターの連射でオーディーンの足を止める。


 彼は友人が行方不明になったのを私のせいにしてきたが、あいにくそれは言いがかりというものだ。


 ハンター牙も鬼クノイチも、全てこのトランスポーター付近の場にしか展開していない。


 この辺から離れた場所で戦闘中だった者のことなど、知ったことか。


 さて、本気で終了させてもらうぞ。







 <DEMONIC MODE.>








 通常のデバイスでいうところのフルドライブ形態、我々でいうところの特殊モードにあたるデモニックモード。


 ただし、牽制だのなんだの、パワーは小出しにはしない。







 《フォースチップ、イグニッション!!》


 <ATTACK-FUNCTION BLACK STORM.>







 イグニッションと共にそのパワーを解放、頭上に浮かぶ大きな暗黒球と化す。


 私がするのは、その真下からダークシューターで暗黒球を撃ち抜く、トリガーの一撃のみ。


 一撃によって炸裂したエネルギーは嵐として荒れ狂い、周りにいた者全てを巻き込み、稲妻でズタズタにしつつ吹き飛ばす。


 誰が巻き込まれただの、そんなことは私からすればどうでもいい。








 聞いておかなければな…。アストラルめ、ちゃんと私の要望通りに済ませておいたのだろうな…?




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《いったい何の用だ…?話次第じゃ容赦しねぇぞ!》


 「イリアス、まだ早いよ」






 忘れかけていたので、撃たれない内にやることをやってしまおう。


 そう思って、クレア・ランスロットを探し出し、その目の前にやってきたワケだ。


 まったく、こちとら"拾い者"のことも見ておかなきゃならないってのに。


 しかし、依頼主があのアキレス・ディードだし、依頼されたブツや関連情報は興味深い。


 その興味をそそる情報を更に深く調べ上げるには、クレアたちの力も必要になるってことはわかった。


 まぁ、必要っていうより、あった方がとても効率がいいっていうべきなんだろうけど。







 《今度はいったい、何のつもりだい?

  アキレス・ディードも絡んでいるというから、攻撃せずに話を聞いているのだけど》


 「リュウビ、君も落ち着いて…」


 「なぁに、僕がやることは単にブツを君たちに渡すだけさ。

  一応、関連情報も知っている限りは教えるように依頼されているけども」


 《《「ブツ?」》》







 そう、ブツ。こう言うとなんか裏社会のヤクザか何かの取引のように見えるかもしれないが、んなこたぁない。


 ただ、かといって管理局に「はいどうぞ」って手渡しできるシロモノでもないんだ。


 まぁ何かっていうと、ロストロギア候補?







 「渡すのはこの地図さ。

  あと、その地図で探してもらいたいものがあるそうなんだけど、それがだね……」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 《く、くそ……待て……》


 《追いかけられるなら、追いかけてくればいい。もっとも、そんなボディで動けるのなら、な》


 《ぐっ……!》






 ……ダメ、だ、アキレス・ディードに逃げられた…。


 追いかけたい、けど……俺のボディ、もう動かない…。






 「だ、大丈夫!?オーディーン!」


 《な、なのは、さん…!》






 さっきのアキレス・ディードの攻撃……アレの中で、助かってたみたいだ。


 あまりダメージを受けてなさそうな感じのなのはさんが、血相を変えてこっちに駆け寄ってきた。






 《右の下腕部、左腕全体、右足全体、左足の膝から下、背部バインダーが損失。

  他のパーツも損傷甚大、戦闘不能どころか再起不能のダメージであると思われます。

  大至急AIユニットを切り離すべきかと》







 今の俺のダメージは、レイジングハートが分析した通り。


 そして、駆動部のどこにもパワーが伝わってない。出力もかなり落ちてる…。


 エクストリームモードを発動している間に、アイツを仕留められていれば、こんなことには…!







 「オーディーンのせいじゃないよ…。

  あの嵐を止められなかったのは、多分アキレス・ディードと戦っていた私たち全員のミス。

  彼がすぐに撤収していったのが、不幸中の幸いだった」







 くそぉ…!



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




























 ―ネガショッカーの大襲撃から2日後―



























 そんなこんなで、僕が覚えていない間にいろいろありすぎて収拾がついたようでついてない1日は終わっていた。


 いや、バグジェネラルを通じてダークコマンダーにマインドコントロールされたらしいんだけど、


 それは不完全で、三大神器から発せられる膨大過ぎるパワーまで作用して僕は見事に大暴走。


 オマケに暴走して大暴れしていた間のことは、何1つ覚えてないんだ。今までとは明らかに違ってたってことだね。


 しかも、気がついた時にはメルクリウスとかいうアストラルの母艦にいたワケで、「何があったかわからねーと思うが」状態だったよ。


 うん、言っておいてなんだけど、今でもそんな状態だよ。







 「本当は大体のことはわかってるくせに…」


 「ちっ、バレたか」


 「超久々の対面だというのに自分の感性が衰えてないことが分かって複雑だよ」


 「ははは、そりゃスマンね」







 で、現在はアストラルとの2人ぼっちでメルクリウスの中ってワケ。








 《把握できた分でいきますと、まずパンドラとフェンリルがネガショッカーに拉致され消息不明。

  オーディーンもアキレス・ディードとの戦闘で大破、再起不能との話も。

  ネガショッカー側に、リヴァイブ及びヒリングと名乗る新戦力。

  クレアさんが例の地図を受け取り、現在は六課でその解析中。

  ネガタロス組はミッドへ完全撤収、プレダコンズはあの後から動きなし。

  そして、マッハたち神器のマイクロンも、あの日以来消息不明である、と》








 ちなみに、バグジェネラルとの接触融合に巻き込まれたイグナイテッドも無事だった。


 とはいっても、システムがところどころ書き換えられている、というか変質しているみたいだったけど。


 多分、バグジェネラルのエヴォリューション効果である"変調"が生じたせいかも。


 まぁこれは、後ほどルマトスを呼んで調整してもらおうかと思ってる。アストラルに連絡とってもらったら、快諾だった。








 「あ、バグジェネラル……」


 「気にしてどうするよ。もういないモンはいないんだ。最期を見届けられなかったのが残念だけど」







 バグジェネラルについては、ある意味で当然だけどオダブツになる以外になかった。


 僕とイグナイテッド、そして三大神器の接触融合を解除する代わりに、その存在自体が完全消滅することになった。


 そうでもなければ、元々あったこの体がそのまま残っているなんて、多分ないもの。


 アイツには悪いとしか言えないが、せめて成仏してくれていることを願う。








 あぁーあ、結局六課には戻りそびれてるし、しかも迂闊にミッドに戻れないってゆーんだろ?


 暗黙の了解的な意味で、主にプレダコンズから見てお尋ね者になっちゃってるから。


 まったく、とりあえず僕のことを一番に心配しているであろうイテンたちにも顔見せできないのはヤだなぁ。








 「とりあえず、しばらくは身なりも考えた方がいいだろうね。

  変身魔法は逆に魔力痕跡とかから判別される可能性があるからおすすめはしないけど…」


 「しっかし、デルポイで潜伏生活、ねぇ…。…………あ、イケそうだわ」


 「え?」








 一応、読者のみなさんにだけ教えちゃうと、僕は以前にも旅の途中でデルポイ大陸に立ち寄ったことがある。


 それも、年単位で長い間。だから人脈もないわけじゃないし、それに、すっごく手助けになりそうな人を知っている。


 ある意味、デルポイが潜伏場所候補になったのはグッドなことかもしれない。








 「よーし、そうと決まれば早速行動!

  頼んだワケでもないのに世話になっちゃったね」


 「いや、別に世話するのは構わないんだけど、ぶっちゃけどうする気?何なら僕とコンビを組むとか…。

  ほら、僕もなんだかんだでユニクロンから見てお尋ね者になっていることだろうし」


 「アストラルとは敢えて距離を置いておきたいかな?その方が都合がよさそうなんでね」


 「そうかい……」








 まぁそうしょんぼりしないでよ。別に連絡しなくなるとか、そーゆーワケじゃないんだから。


 それに、そう遠くない内にまた手助け借りたくなるだろうしさ。








 《では、騒々しい気もしますが参りますか、マスター》


 「だね。じゃあまた会おう、アストラルよぉ〜」








 ブリッジを出て、そのまま下部ハッチへ。そしてレッツ・スカイダイビング!


 目指す先は――デルポイの砂漠の都、"アラビアナート"だ!




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 いやはや、冗談じゃないですよ?


 トラルーたまは未だに行方不明、それだけでも気が気でないのに、


 オーディーンは変形機構まで含め大破しちゃうし、パンドラとフェンリルは消息不明だし…。


 スターたま達のバーストモードだって改良しなきゃいけないし、これはまた大赤字です。


 もっとも、ある意味そのおかげで日の目を見ることになるものもあるんですけど…。







 《創主レルネ、本気でロールアウトするつもりですか?

  彼らはまだAIの教育プログラムが完全には終わっていないんですよ?》


 「ならば現地で学習してもらうまでですよ。実戦形式で」


 《ていうか、また機動六課に送りつけるつもりですか?》


 「あそこは実にいい研修場所ですからねぇ」


 《完璧にダシにしてますね…》








 パンドラやフェンリルの代わり、とは言いませんが……実戦訓練を積ませるにはいい機会やもしれません。


 オーディーンはオーディーンで弔い合戦をしたいことでしょうし。


 あぁそうだ、彼もだけどゼノン、君のボディも新調しておかないといけませんね。







 《すまない、創主レルネ。手間をかける》








 いえいえ、せっかく自分の意思で戻ってきてくれたんです。


 新型ボディでまた働いてもらいたいのですよ、こちらとしては。どうせオルタナティブモードのダメージでガタがきているでしょうし。


 アストラルさんのデータ提供にも感謝しておかねば〜。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「なんか、拍子抜けしちゃうほど静かになっちゃったね」


 「そうだね。あの後あったことって…」


 「主、これも次元の隔たりのせいでしょうか」


 「多分な」







 なのはちゃんとフェイトちゃんがホントに拍子抜けしてるんだけど、それはうちも同じ。


 けど、そうなる原因もわかってたりする。


 今シグナムが言った、次元の隔たりがその原因や。


 デルポイで経過する時間は、ミッドでの体感時間の何十倍もある。


 せやから、たとえば今回みたいにデルポイで4日過ごしたとすると、ミッドでは4時間も経ってないんよ。




 ちなみに"アレス"に参加していた期間は、ミッドでいうとミシオが本格的に万蟲姫の仲間になってすぐ後のこと。


 で、帰ってからは、いぶきがスバルみたいな雰囲気を出しながら報告書に手を焼いてるっちゅーところやね。




 ミシオが万蟲姫の仲間になった!

 ↓

 デルポイ出張、"アレス"でいろいろあった!

 ↓

 ミッド帰還、いぶきが報告書でマイッチング ←今ここ





 って感じなんよ。






 「そういえば、スター君たちは?今日も朝から姿が見えないんだけど」


 「アイツらなら、またデルポイで情報収集中だよ。時差が激しいのを利用して、かなりどっぷりやってるみたいだな〜」


 「今回の件、冗談抜きにショックだったらしいな…」


 「けど、全員が出払うってマネはせんのよね。

  こっち側にはアレックスやポラリスも残ってるし、可能性の模索を繰り返してるんやろうけど」








 具体的には、スター、イテン、ビコナの3人がデルポイに滞在中や。


 さっき言った通り、ミッドでの数時間はデルポイでの数日分になるから、情報収集の時間もタップリあるっちゅーわけや。


 せやかて、朝礼に出た後すぐにっていうのも、そろそろやめてほしいんやけどねー。


 朝練の付き合いにだけは復帰してほしいわぁ。


 いや、気持ちはわかるで?なにせ、あのトラルーが行方不明とあれば、あの3人は血眼になって探すやろうし。








 せめて、連絡の1つでも、つけばえぇんやけどなぁ…。



















 (第37話へ続く)





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―




  リティ「急展開だなぁ」


 ステンス「戦場が広範囲、かつ対戦カードが多すぎて、最後は活躍させられなかったメンバーも多いって作者が嘆いてたぞ」


  リティ「あー、予定ではミアキとか一般参加メンバーの活躍も書きたかったとか」


 ステンス「書こうと思えば書けるが、そうすると容量がいよいよマンモス化するから断念したそうだ。

      そんな今回は、最後に出てきた"ミッドとデルポイの時差"を、もう少し説明してやる」




 ステンス「八神が触れていた通り、ミッドとデルポイには数十倍にもなる時差がある。

      単純計算して、デルポイの1日はミッドの1時間程度。

      "アレス"の4日間のスケジュールも、ミッドだと4時間で終わる。

      似たような話として、某デジタルワールドと現実世界の時差の話もあるが、アレとはまた別物だ。

      その時差が生じる原因は、キャロがヴォルテールを召喚できなかった原因でもある、

      ミッドとデルポイの次元を隔たる特殊な壁だ。あの壁を境目に、時間の流れが大きく変わっているらしい。

      何故そうなるのか、そもそもどうして次元空間に壁があるのか、詳細を解き明かした者はまだいない」





  リティ「世界の時差かぁ…。ミッドと地球じゃ、あまりそういうことはないみたいだけど」


 ステンス「次元の隔たりのせいだろうなぁ。デルポイだけ隔絶されている、というワケでもないらしいんだがな」


  リティ「では、また次回!」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 <次回の「とたきま」は!>



  アコ「やぁ読者のみなさん、アコです。次回からはいよいよ新章へ突入だよ!」


 マジコ「番外編でチラッと出ただけのアタシらも、やっと…!」


  アコ「番外編掲載からざっと半年……長かったねマジコ!」


 ルーラ「あー、盛り上がっているとこ申し訳ないんだけどさぁ…」


  2人『?』


 ルーラ「次回は諸事情により、僕が主役だ」


 マジコ「マジで!?」





 第37話「無色星:神出鬼没な情報屋」





 マジコ「うわー!タイトルまでルーラ主役じゃんかぁー!」


  アコ「僕らが活躍するの、いつだろうね?」


 ルーラ「下手すると冬までおあずけ?」


  2人『うっそぉ!?』










































 あとがき



 というワケで、ようやくケリがつきました第36話です。

 さすがに時間かかりすぎた……ッ!!



 一応ネコイマジンことゴエモンも出そうかと思ったんですが、

 ミッドとデルポイの時差という設定を考えている内に、恭文たちがミッドに戻ってからの展開のつじつまが合わなくなる為、

 急遽メープルのリベンジチャンスへと方針転換しました。おあずけくわすハメにしてしまってスマヌ、ゴエモン…!

 ゴエモンが万蟲姫の仲間として加わり、かつデルポイに移動している余裕がある、となると、どうしてもローズイマジンの件の事後になるワケで、

 そうなるとジュンイチたちが子供化していないことの説明ができなくなったんです…。

 (アストラル辺りのトンデモマジックで何か、とも考えたものの、さすがにチートと化すのでボツになりました…)



 名前でバレバレだろうけど、新規参戦のリヴァイブとヒリングは某イノベイターなアイツらが元ネタです。

 フェンリルとパンドラへの奇襲要員兼トドメ役として参戦させましたが、次回以降は普通にバトってもらう予定です。

 一方、アストロブラスターの痛手で中断されたジュンイチと"Xカイ"のバトルですが、

 作中でやんわりと?触れたとおり、"アレス"開催中のことは「とコ電」24話の終わりから25話の冒頭の間の出来事となっている為、

 「とコ電」側で勃発しても多分問題ないと思います(ぇー)




 さて、次回からは新章突入。

 次回以降のタイトル「○○星」は、作中に登場するキーアイテムをからめたものになっています。

 第4クールもお楽しみに。


管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 あっちこっちで大決戦。全編通して盛り上がってましたね。
 特にネガ電王VS万蟲姫組。詳細描写こそ割愛されたものの、『とコ電』では実現しそうにない対戦カードなだけにやってくれて大感謝……つか、ネガタロスの連れてる戦力、デスイマジンと他メンツの戦力的落差がデカイなオイ(笑)。

 戦い自体は終結したものの、神器なマイクロンのみなさんは行方不明。トラルーも(六課組側からの視点では)行方不明。
 次回からはそれぞれの視点からの新展開、といったところですか。次回のメインはルーラ(某有名RPGの移動呪文にあらず)として、マジコやアコは……うん、がんばれ(苦笑)。