トラルー「さぁさぁみなさん、今回はいったん本編を忘れて、特別番外編だよぉ〜!」
リティ「何故」
トラルー「いやね、せっかくの年末年始だし、『とたきま』でも何か特別なことしたいんよ。
本編の時系列を一切合財無視してお祭り騒ぎ。年末年始だしね!」
リティ「これ、投稿時期に間に合う……んだよね?」
トラルー「間に合わないワケがない!
これ書きあがるまでの間、最優先執筆対象が本編じゃなくてコレだから!!」
リティ「体裁よくお茶濁してるだけじゃないよな!?」
「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録
「とある旅人の気まぐれな日常」
番外編:どいつもこいつもいらっしゃ〜い! 〜26と年末とバレ〜
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―ケース01・エビ:黒歴史コンボ―
「ねぇねぇリティ」
「どしたのトラルー?」
「このメダルを君のオーメダルトレイサーで試してくれないかい?」
「黒って不吉そうだからヤダ」
「とらるーん」
以上、僕とリティのやり取り。
原作でもオー○が使わなかった3枚のメダルを、実際にコンボチェンジで使ったらどーなるのって疑問があってね。
ある程度独自の要素があるガン○ラ○ドでも扱えないし、どーなるんだろーねー。
ちなみにメタ情報として、玩具版ではサウンドだけでした。コンボが公式で設定されてないってことがよぉ〜くわかりましたとも。
「分かったよ、試せばいいんでしょ?どうせオリジンの俺が使う前に砕けちゃったから、よく分からないし。
ぶっつけ本番なんて全てのコンボがそうじゃないか」
「まぁ、紫のメダルでさえシステムには異常はないワケだし、大丈夫だとは思うけど」
結局自分も興味があるのか、すんなりとメダルを受け取って自分のトレイサーに装填し始めるリティ。
渡したのは、原作劇場版で知ってる人も多かろう、「エビ」「カニ」「サソリ」の3枚。
裏面のラインも含め、コアメダルであることには違いがないのだし、使えないワケじゃないだろうってのが予想。
某ファウンデーションでも、保管していたのがあの3枚だけだったのかは今でも微妙だ。
「じゃあ、いくよっ」
《エビ!カニ!サソリ!エカエカニーサ、エカニーサッ!!》
「んぁ〜?ここドコだぁ?」
『なんか出たァァァ!?』
ちょっと!?リティ自身が変身するんじゃなくて、なんかコンボの化身みたいなヤツ出た!
ていうか、君は何者!?
「オイラか?オイラの名は……ない」
「ない?」
「だってオイラ、原作じゃ存在しないしさ」
「ベルトが発した"エカニーサ"という単語すらスルーかい」
「ん〜、そ〜だな〜、さすがに名無しのままってのもアレだし……これならどうよ?
"不明"って意味の"アンノウン"からさ、"ノウン"って名前」
リティと僕のツッコミで刺激されたのか、自分で名前つけたよ。
ノウンって名乗った彼は、灰色の刺々しいショートヘアーに鋭角的な帽子をかぶっていて、
黒に黄色のラインの半袖ジャケット、両腕に灰色のカバーらしきもの、下は膝まで届く長さの灰色のショートズボン。
よく見ると腰に帯状のアクセサリーもつけているみたいだ。なんとなく黒い尻尾にも見える。
鮮血のような赤い瞳がどことなく不気味さも醸し出すけど、雰囲気はそんなに悪くないっぽい。
カテゴリー上はルアクたちと同類になるんだろうなー。
「アレ?また新入りくん?リティ君の人脈って結構興味深い子が多いから、歓迎したいところだけど」
『出たなッ、妖怪砲撃魔王!!』
「それってどういう意味!?」
ちなみに、妖怪砲撃魔王という単語は、かつて模擬戦でボコられたリティの発案です。
まぁ確かに、あの砲撃の嵐は人間じゃないね。ジュンイチほどじゃないけど。
「そこの姉さん、オイラに迂闊に触れると怪我するぜい?」
「ダメだノウン!彼女に迂闊に挑んだら、砲撃の雨に打たれまくるから!」
「砲撃?へー、面白いじゃん」
「やる気がある子は大歓迎だよ♪」
「寧ろあなたはやる気があり過ぎです!!」
ノウンはやる気だし、なのはがそれ以上にやる気だしで、リティがもうパンク寸前だ。
なんでリティが慌てるって、いつの間にかなのはがセットアップ済ませてるからに決まっているじゃないか。
挙句の果てにいきなりフル装備状態なのだからお手上げだ。
「頼むから、初登場早々なのはさんにケンカ売るとかいうマネしないd」
「この口か!この口から砲撃すんのか!?」
「ふぇぇぇぇっ!?」
「目から光か!?それともハンドパワーか!?」
「ちょっ、痛い痛い痛い!」
「第一よう、"不屈のエース・オブ・エース"っておま、一度柾木ジュンイチにノされて挫折したクセにエラソーに!」
「なんで知ってるの!?」
「世の中、砲撃で何でもかんでも解決するワケねーのにな!なんでコイツって砲撃で何とかしやがるんだろーな!」
「……えーっと…」
「さすが、"行動が早い節足動物"なだけはあるねー」
エビもカニもサソリも、一見違うようで実は節足動物の仲間。まぁ、あの系統のメダルってモチーフの定義が広いからなぁ。
サソリだけは浮いてるんだよね。甲殻類という分類ができない。
さて、他に共通することといえば、行動の速さ。エビは逃走時のバックステップ、カニは不安定な足場での横歩き、サソリは砂上での高速歩行。
どうやらノウンの思考も、先入観や本能でちゃっちゃと理論を構築して実行に移す傾向にあるらしい。
あっという間になのはをフルボッコにしたのは、本能的に身の危険を悟ったからだろうか。殺られる前に殺れ、みたいな。
なお、エビの頭みたいな帽子での頭突き、カニの鋏のような腕でのナックル、サソリの尻尾のような帯の全てを使ってのフルボッコ。
ナックルについては、ちょうどバン○ィのビームライフルと同じ方式で展開するシステムだと言っておく。
「あー、シャマルさーん。急患でーす」
ある意味仕方ないのかもしれないけど、ノウンのオーメダルトレイサーは非殺傷設定が機能していないらしい。
なのはが血の海に沈んでるのが、その何よりの証拠だね。
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―ケース02・カニ:パレサたちの服が黒いワケ―
「パレサさまー。ちょっと聞きたいんだけどー?」
「あら、どうかしたの?」
「相変わらず、敬語を使わないことはスルーなんですね」
フウマさんとパレサさんのやり取りは、なんだかちょっと特殊な感じがします。
だって、パレサ「さま」って呼ぶのに、しゃべり方自体は完全にタメ口じゃないですか。
普通の上下関係だったらまず怒られますよ。ヒドイ上司とかだったら即殴られるくらいの問題ですよ。
なのに誰もその辺で揉めないなんて、僕たちもだいぶ感化されているんでしょうか。
「リリエン、気にすることはないわ。だってフウマはバカだから」
「なるほど、既に諦めの領域に達しているというワケですね」
「ちょっと!?」
まぁ、そこは置いておきましょう。本題じゃないですし。
それで、いきなりどうしたんです?突拍子もなく。
「あのさー、パレサさまもリリエンもユウサも、アーツバトル連盟にいるルナ族ってみんな黒い服着てるじゃん。
でも、ウチらって制服とかないよね?なんで?」
なるほど、そういうことでしたか。
「そうねぇ、ハッキリ言って、今まで考えたこともなかったのだけど、
しいて言うなら、私たちルナ族の長の趣味ってところかしら」
「趣味!?」
「そう、趣味。私たちの長って女精霊なんだけどね?
ルナ族だってことがなるべくわかりやすいようにってことで定められた服なんだけど、
今じゃもう殆どの人が着てる、共通の私服みたいなものかしらね」
「私服…なのか?どっちかっていうと制服に近い気がするぞ?」
「制服でもあり私服でもあり…ってところね。
ほら、家の中でも学校のジャージ着てるみたいなものよ」
「つまりはジャージ扱いですか、この服」
私服でもあるとはいえ、一応伝統ある服装なんですけどねぇ、これ…。
まさかのジャージ扱いですか。そりゃあ、水洗いできるし予備いっぱいあるし伸縮性はいいし着心地も快適ですけど。
オマケに一式で地球価格2000円で済むというお手頃っぷり。
「一式って、パンツも含めてなのか!?」
「っ!?」
「もう少し恥じらい持ってくださいよ!」
―同時刻―
「ぶぇっくしゅっ!」
「なんだリティ、精霊なのに風邪でもひいたか?」
「なんか、誰かがどっかで噂してた気がする」
「いや、お前の場合、パンツの噂だろ」
「ちょっ、それひどくないか!?」
そりゃあ、ステンスもなんだかんだで俺と長い付き合いだけどさ。
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―ケース03・サソリ:年末年始の名物―
「ねんまつねんし?」
「そうだよー。早くも年の終わりと始まりが訪れようとしているんだよー」
《時が過ぎるのは早いというが、まさかこうも早いとは》
ユーリプテルスに、宇宙共通イベントである年末年始というものを教えようというとこ。
「末」と「始」なんて、対局な言葉が平然と連動しうる事象なんて、そうそうないからね。
実に素晴らしいじゃないか。終わる瞬間と始まる瞬間が全く同じ時っていうのは、宇宙広しといえどこれぐらいじゃないかい?
《……考えてみれば、割とそうでもない気もするが。卵からヒヨコが生まれる、とか》
「なんで?」
《卵である時間が終わり、同時にヒヨコである時間が始まるからだ》
「ピヨちゃんピヨちゃん」
《……聞いているか?》
ゼノン、ユーリプテルスの教育には時間と根気がいるぞ?
ほほえましいから止めないけど。
いやね、ユーリプテルスがあの一頭身な体でテコテコって音が鳴りそうな雰囲気でヒヨコのおもちゃを追いかける姿が…ねぇ?
「ポラリス〜。ピヨちゃんピヨちゃん」
「えっ」
《「えっ!?」》
ちょっと待て。ゼノンも驚いたし、取り敢えず言っておこう。
なぜここにポラリスがいるッ!?
「いや、プルトーネがゼノンのAI周波数を逆探知して、私を半ば無理矢理…」
《ゼノン、メリークリスマス!》
《あ、あぁ、メリークリスマス》
なんてこった…。つまりアレだ。
プルトーネが(いらない)気遣いをして、ポラリスをユーリプテルスと合わせる為に連れてきたんだ。
(わざわざ)ゼノンのAI周波数を逆探知するなんて芸当をしでかして。
「しかし、どうやって逆探知なんてマネを」
《詳しくは自分でも解析中ですが、取り敢えず破壊神パワーと言っておきましょうか》
「破壊神すげぇ!」
思わず叫んでしまった。
破壊神って、プルトーネの場合は間違いなくユニクロンのことだ。
更に具体的にいうと、AIの一部として完全に同化してしまったっていう、ユニクロン・プラネットフォースだったもの。
ダークコマンダーによれば、既にプラネットフォースとしての存在は消滅しているようだけど。
《今回はもう1つ、破壊神パワーをお見せしましょう。
ゼノン、手伝いなさい!》
《な、なぜ僕が》
《い・い・で・す・ね・?》
《……はい》
《どうです、我が道を貫く主義のゼノンを僅か10秒で曲げてやりましたとも》
「破壊神すげぇ!!」
さしずめ、"腐っても破壊神"って感じのデカいオーラを感じた。
プラネットフォースっていう欠片だけでも、とんでもないパワーを発揮するからなぁ。
スケールダウンしただけで、その異質さとか恐ろしさとかは変わってないだろうし。
……主人のレルネは苦労しないだろうか。
《では、このキネを持ちなさい。今からコレをあるべき姿に仕上げますので。
私がこねて手を離した直後に叩くのです。叩いたらすぐに離して、そこの水につけてくださいね。
でないとくっついてしまいますから》
「……プルトーネ、もしかしなくてもコレって、お餅なんじゃ…」
《お餅以外に何があると?ス○イムですか?メタ○ンですか?モ○モンですか?それとも…》
「わ、分かった、もういい」
《おや、釣れませんね》
とりあえずプルトーネ、3番目だけは名前的にもマズイと思う。ガチでそれじゃないか。ピンクだけど。
ポラリスがかなり引いてるし。
あと、性格的に狙ってボケれそうにないポラリスをネタで釣るのはどうかと。
「よしユーリプテルス、この際だからあなたも参加してみたらどう?
ただし、キネはアストラルの石頭で、だけど」
「ウェェェイツッ!?」
「アストラル、石頭なの?お餅ぺったんぺったんできるの?」
「騙されないで!石頭だからってお餅つけるワケじゃないのよ!?」
「安心していい。頭はちゃんとビニール袋で巻いてやるから」
「安心できそうでちっとも安心できない!」
ビニール袋!?よりにもよって!?
耐熱性皆無な上に、下手するとくっついて破けるんですけど!?
「頭が異様に熱いかもだけど」
「それがある意味で最も重大だからぁっ!!」
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―ケース04・タカ:リティの受難―
「そういえば、リティって元々旅人なんでしょ?」
「うん、メダルの力で戦える以外は普通の旅人のつもり」
「パンツだけは一張羅」
「そうそう」
さすがリティ、パラレル元が元なだけに、パンツにはしっかりとこだわってるね。
なんでそうもこだわれるんだろうって、たまに思うけど。
「ぶっちゃけ聞く。リティにとって、パンツって何?」
「う、うーん、いざそう聞かれるとちょっと困るんだけど……。
そうだなぁ……どれぐらい大事かっていうなら、恭文でいうフェイトさん、みたいな?」
間。
「ちょっと!恭文!待って!なんでアルトアイゼンをセットアップしてんの!
なんでそんな恐ろしい目で見てるの!」
「何いってんのさ。いたって普通の目でしょ?」
「ウソだ!絶対人殺しするような目だって!あとアルトアイゼンはしまって!説得力が全くないから!」
いや、大事ってレベルでフェイトと一緒にされたくない。
パンツと愛しの女の子を一緒にしないでほしい。たかがパンツの分際で。
「だから!恭文、目がもう艶消し通り越して漆黒だから!」
「やだなぁもう。そんなワケないって、何度も言ってるじゃないの」
「ウソだってぇ!!」
リティも案外、往生際が悪いんだねー。
まぁ、そうでもなきゃオー○なんてやってられないだろうし。
けどねぇ、それでも許されざることもあるんだよ。
「たとえ話だから!どれだけ大事なのかっていう、レベルのたとえだからぁぁぁ!!」
「僕の身長を馬鹿にされるのも許せないけど、フェイトのことをぞんざいに扱われるのは余計に許せないんだよねー」
「そんな気持ちとか、一切ないからぁぁぁぁ!!」
「まぁリティも、一度僕の流儀を知るといいよ」
「流儀じゃない!それもう肉体言語だから!」
《プテラ!トリケラ!ティラノ!プットッティラ〜ノザウル〜ス!!》
……あ、あれ?
「全く困ったものだな。見境なく刃を振りかざせば解決するなどと」
「いや、僕だってそんな考え持ってないし。ていうかなんでレクセが主人格になってんの」
「蒼凪恭文、アニマトロスのサイドスという男の言葉を教えてやろう。
『暴力は、暴力の連鎖を生むだけだ』
そう、今こうして私がプトティラとして出てきたようにな!」
以下、惨劇。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース05・クジャク:「まとめるもの」をあつめてみた―
「…………」
「えっと……どうしたんですか?」
「あぁ、今後の戦力評価の参考にでもなるかな、と、調べものを」
あぁ、そういうことでしたか。
てっきり僕は、ポラリスが武器収集家に目覚めたのかと思ってしまいましたよ。
「アレックス、私のことをそう思ってたの?
……まぁいい、問題はこれだ」
「コレ……タジャスピナーじゃないですか。よく借りれましたね」
「トラルーが購入してた、おもちゃだけど」
「そっちですか」
まぁ、サンプルとしてなら模倣品の方が扱いやすいでしょうし、
そもそもステンスがそう簡単に武器やメダルを貸してくれるとも思えませんし。
「アイスバーで釣れるとはいえ、性能ならトラルーやリティから教えてもらえばいいし」
「あ、あー…」
「それで、だけど……"まとめるもの"については、どれだけ知ってる?」
「はい?」
もしかして、調べものって……"まとめるもの"って、ことですか?
あぁ、だからタジャスピナーも。
「そうなんだ。考えてもみて。
最大7枚のコアメダルのパワーを集束できるタジャスピナー、
最大4枚のセルメダルのパワーを圧縮して増幅できるメダガブリュー、
プラネットフォースを一点にまとめるチップスクエア、
4本のガイアメモリのパワーを集めて必殺技を放つプリズムビッカー、
周辺の魔力をかき集めて砲撃とするスターライトブレイカー、
カラクリボールを大量に格納し、射出もできるリボルバーマンモス、
3体のマイクロンが合体したものっていう意味では、神器もそうだと思うし…」
こうしてポラリスが出した名前の大半が特撮関係なのは、多分トラルーの影響ですね。
それはそうと、こうもたくさん出てくるとは。
ジャンルを限定せずに探せば、もっと大量に出てくるでしょうね。
……探し方が問題ですけど。
「しかし……武器同士をまとめる、というものも割とあるな。
レルネが製作元にしたっていうユニオンソードしかり、最近の戦隊ものの等身大武器しかり。
私たちの武器はどうかな?」
「ポラリス……頭、大丈夫ですか?」
「失礼な。今の双頭大蛇も炎帝翼剣も、デビルポセイドンが作ったものじゃないか。
だから、ひょっとしたら隠された合体ギミックとか…」
ポラリス、やっぱり武器マニアになりかけてません?
途中から目がキラキラ輝き始めているんですけど。
「あと、1ついいですか?」
「なに?」
「そういうのって、"まとめるもの"っていうよりは"まとまったもの"じゃないんですか?」
「…………えっ……」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース06・コンドル:ステンスも割とムキになる―
「ステンスってさぁ、いっつもアイスバー食べてるよね」
「だな。フリータイムだと大抵ふんぞりかえってアイスバー食ってるな」
ルアクとブライが、いきなりそんなことを言い出した。
ったく、なんのつもりなんだか…。
「大好物だからってことはわかってるつもりなんだけど、さすがに…ねぇ?」
「四六時中食ってるってのも、変な話だよな」
「そうか?
昆虫系だけにガチで樹液すすってるルアクに比べればマシだろ?」
「……あー」
「それってどういう意味!?ていうか、なんでステンスはそれを知ってるの!?」
なんで、か?そりゃあお前……。
「……ほー、確かに樹液すすってるなぁ。もっといえば、木とキスしてんな」
「〜〜〜〜〜ッ!?!!?!?」
「丸見えだからに決まってるだろ」
なりふり構わないってのも考えもんだなぁ?愛用の電子パッドに画像を出して、見せてやれば案の定だ。
ネットの掲示板で大暴露大会みたいな状態になってたぞ。
もちろん、変人扱いでな。
「こいつぁ、思わぬ弱み握っちまったか〜?まぁ、オイラも六課全員に弱み握られてるようなモンだけどよ」
「〜〜〜〜〜!!
そういうステンスだって、変人扱いされてるってマスターコンボイが言ってたよ!」
「はぁ?」
「これを見れば、一目瞭然だもんねっ!」
「あ」
ルアクがケータイに出した画像。
別に覚えがないワケじゃないが……どうやって見つけたんだよ、マスターコンボイのヤツ。
株取引だけやってるんじゃないのか。
「あー、なになに?
『低所恐怖症ワロスw』『1円玉でけぇww』『メダルに執着しすぎwwバロスww』『アイスバー食い過ぎww』
……ステンスはステンスで散々言われてるな。表記の仕方がいかにも現代チックだけどさ」
ほぉーう…。
「炎に弱い虫のくせに、随分とくいついてくるなぁ。ああ?」
「ヘルシーな食用にされちゃうくらいやわらかい鳥系のくせに、随分とえらそうじゃん?」
「あー、おーい」
面白い。こうなったら、鳥と虫のどっちが強いか勝負するか。
大自然のルールそのままでなぁ。
「大自然のルール……弱肉強食?」
「そうだ。腕っぷしが強いヤツだけが生き残る。シンプルで公平だ」
「いいよ……伊達に原作公式で最強コンボっていわれてないってこと、教えてあげるよ」
「はんっ、その最強の座もプトティラにとられた挙句、CG予算のせいでロクに出番もないくせに」
「よりにもよって同じ属性の相手にロクに戦えないくせに」
いってくれるな。虫のくせに。
知能も所詮は虫レベルだと思っていたが、あながちそうでもなさそうだなぁ?
さすがにリティが認めるだけはあるか。
「おまえらー。いい加減にしないと、そのリティが……」
「俺がどうかしたの?ステンスもルアクも何張り合ってるのさ?」
なんだ、お前も来たのか。
「鳥と虫のどっちが強いかで張り合ってるんだと」
「なんで?」
「あー……まー……ガキのケンカじゃね?」
「つまり、わかんないのね…。
まぁまぁ二人とも、どっちも甘い物好きってことでいいじゃん」
『良くない!!』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース07・クワガタ:ドバン家の稽古はシンプル・イズ・ベスト―
「は?体験学習っすか?」
「あぁ。ドバン家の強さってモンを、ちょいと盗ませてもらいたくてね。
それで門下生だっていうミナトかシズクに依頼すれば、お目通し願えるかなーと」
「師匠はどうせ歓迎するだろうから、いいと思うけど…」
あの柾木ジュンイチが突然私とミナトに会いに来たと思ったら、
要件はウチの道場の体験学習がしたいときた。
私は別にかまわないし、その手のことでバラン師匠が口出しするとも思えないし、問題はないと思うけど…。
「何か引っかかることでもあるのか?」
そりゃあもう。
「体験学習とはいうっすけど、直接手合せ願いたいって意味もあるっすか?」
「そりゃあな、技のキレとかはともかく、その勢いとかは実際に手合せしないとわからないモンだ。
当然、そっちの誰かと手合せも考えてる」
「じゃあ、おたくの蜃気楼ってデバイスはNGっすね」
《なんですと?理由を求めます》
「連盟登録データで見たけど、蜃気楼って他のデバイスをマネするデバイスでしょ?
それはつまり誰かの技や力であって、使用者独自のオリジナルや昇華させた技じゃない。
ドバン家はそういうのを認めないの」
「あくまでも自己流ってところを見せないと、師匠直々に叩き出されちゃうっすよ?
全身骨折のオマケ付きで」
「容赦ねぇな!」
私も武器はバラン師匠とかぶってるけど、錨っていう別要素もあるし、ギャラクシアン・テンペストも自分で編み出したし。
でも蜃気楼で使うデバイスは違う。あらかじめ登録されたデータを再現した、悪く言えばサルマネ。
ドバン家の掟として、そういうのは絶対禁止ってことになってるの。
「あー、そういうことか」
「だから、逆にいえばウイング・オブ・ゴッドとかは問題なくOKっす。
サルマネじゃなけりゃ、能力の出自とかは一切不問っすからね」
「寧ろそっちの方が威力高いんだけど…まぁいいか」
「やぁやぁ、遠からん者は音に聞け!近くば寄っt」
「すいません、尺とられるんで今回は自重してくださいっす」
「なぬっ!?」
「理由がメタだなオイ」
尺って何?
「あー、とりあえず、体験学習するからにはスケジュールは全部ウチに合わせてもらうっすよ?」
「おう、上等だ」
「じゃあスケジュールの大まかな説明をするっす。
まず朝4時に起きて体慣らしのラジオ体操、その後5時から道場近くの滝で耐水圧特訓、6時から朝飯と休憩。
8時から受け身、投げ技、寝技の特訓、10時から水汲み兼用の筋力トレーニング、12時から昼飯と休憩。
14時から薪割り兼用の居合訓練、16時から食材調達兼用の野外修行、18時から晩飯。
修行と休息のメリハリを利かせる為に、夜の修行はないっす。自主練してる人もいるっすね」
「なぁ、半分くらい生活資材が絡んでる気がするんだが」
「これは7代目当主の教えであり、日々の生活そのものを鍛錬とするスタイルの名残であるな。
心なしか生活リズムの効率化という効果もあったようでな、今もずっと続いておるのだ」
「どっかの猫さんでいう暮らしの中にsy」
「それ以上はよせ!なんとなく危ない!」
アレ?私、何かマズイこと言いかけた?
「まぁアレっすよ。"働かざる者食うべからず"を体現する修行なんすよ。
ドバン家の家訓にもあるし、実は修行=家訓ってくらい重要視されてるみたいっすね」
「つまり、"鍛えざる者食うべからず"ってか?」
「お、うまいことを言うではないか。ミナト、座布団を持ってまいれ!」
「師匠、笑○じゃないですから!」
バラン師匠のボケはともかく、修行内容としては割と普通…かもよ?
「あ、そうそう。師匠は知ってるっすか?
"影の当主"の発案で、新しい修行が入るっすよ。これがまた斬新らしいんすよねー」
「ほう、そのようなことが。少々旅が長すぎたかのう…」
「で、その修行なんですけどね、電力確保兼用の無限ループ式バケツリレーという…」
「もう何の修行だよっ!?」
しいて言うなら、連係プレーの精神を磨く修行……かな?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース08・カマキリ:括目せよ!ハリセン奥義!―
「姫様、本当にソレで"アレス"に出るでござるか」
「もちろん。長年親しんできた、古い付き合いでおじゃるからねっ」
それは、"アレス"開催の約一週間前。
エントリーの為にみんなで使う装備を吟味している時のことだった。
まぁ、結局、殆どの人は慣れ親しんだ装備で落ち着いたけど。今のビコナみたいに。
そんな彼女が手にするのは、いつもちゃっかり常用している扇子。やや黒みがかった青が印象的な、形状自体は一般的な扇子。
徳川家の家紋がまぶしい。あ、元ネタのデータカード、レジェンド(最高ランク)化おめでとう。と、心の中で言っておく。
「ふっふっふー。もちろんただの扇子じゃないでおじゃるよ?
これでも、れっきとした戦闘用でおじゃるからね!頑丈さは鋼をも上回るという」
「どんな材料使ったらそんなことに」
「しかも、見かけと質感は扇子そのものでござるからなぁ。
徳川家臣団からは"覇璃扇"と呼ばれていたでござる」
「当て字がすごいことになってる…」
まぁ、番外編の分際で詳しいこと言うんじゃねぇってことなのか、材料までは教えてもらえないのだなーコレが。
ただね、実際その覇璃扇とやらで攻撃の訓練してる姿は見たことがある。
10年前の出会いからは全く想像してなかったけど、キレはもちろん、意外とパワーもある。
多分、遠心力とかスナップとか、そーゆーのをきかせているんだと思うけど。
「今みたいにねっ!!」
「わぁぁ、ごめんなさい!」
調子に乗って振り回すからそーなる!
普段の口調も忘れて物凄い勢いで頭を下げるビコナを、とりあえずなだめることに。
しかし、ランクアップしたかと思いきや、まさか開いた時の大きさが自分の身長とほぼ同じっていう巨大化をするとはね。
扇子だけど突風起こせるんじゃないか?
「……考えてみたら、こんな風になでてもらうのって久しぶりでおじゃるね♪」
「っ!?」
「いや、さすがに他意はないでおじゃるよ?トラルーには既にイテン殿がおるし」
「そのイテンを巻き込んでエロ狸とつるんでシグナルランサーに制裁された子がよくもいう…」
「いやはや、お恥ずかしい…」
月影丸は不在だったしねぇ。
「ぐふぉ!?」
「あ、自覚はあったのでおじゃるね」
「現状、護衛であると同時にお目付け役でもあるからなぁ」
位置づけとしては、バカ殿でいうじいやポジションだろうか。
主様になんだかんだで振り回されてるところも含め、しっくりくるなぁ。
「おいそこ!戦闘訓練中だろ!なごんでる暇ねぇだろ!」
「あ、こいつぁ失礼。僕も訓練に戻らねば」
「今度こそお前に一発ぶちかましてやるから、覚悟しやがれ!」
「……ヴィータ殿…最近、やたらとトラルー殿に私闘を申し込んでいる節が見受けられるでござるが」
あー、そーいえばそうだっけ?
毎度のように秒殺してやってるから、悪く言えば害虫駆除のノリになってたなー。
ジュンイチじゃないけど、ハッキリ言って隊長陣の中では圧倒的に楽。ワンパターンで済むし。
「ほほぅ……上等じゃねぇか。今度ばかりはそうはいかねぇってことを思い知らせt」
「覇璃扇敏多!!」
「姫様!?」
それは、一瞬の出来事。
宣戦布告しようという真っ最中のヴィータの懐に瞬時に飛び込んで、体を思いっきり左にひねる。
伸ばしたゴムを手放すかのような勢いで体ごと高速回転し、手にした覇璃扇でヴィータを滅多打ち。
素早くバックステップでこっちに後退してきた後には、滅多打ちにされたヴィータがぐるぐる回っていた。
「……ら、らぃすんらよぉ〜…」
数秒後、バタンとぶっ倒れて、「チーンッ」なんて音が聞こえそうな感じで気絶した。
うわ、ほっぺパンパンじゃん。真っ赤で。
「今の技って…」
「あれこそ、姫様が最近習得なされた、扇を使った武術の奥義でござる。
その名も"覇璃扇敏多"!くらった者は痛みとめまいで卒倒してしまうという伝説が残っているでござるよ」
月影丸いわく、どうやらビコナの新技らしい。
かなりキレがあったし、威力も十分。ここに来る前にも訓練していたのかはわからないけれど…。
まぁ、それ以前に一言申したい。
「……最近、暴走コンビ並みにかませ犬だよね、ヴィータって」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース09・バッタ:ルアクは不器用ちゃん―
「ルアク、ちょっといいかしら?」
「いいけど…なに?」
ティアナから質問みたい。なんだろ?
私、何かしたっけ?
「いや、そうじゃないのよ。
アンタの能力……ブレンチシェイド、だっけ?アレについてね」
「ほへ」
ブレンチシェイドといえば、私……というより、昆虫系メダル3枚のコンボであるガタキリバの能力。
良くも悪くも自身を忠実にコピーした分身を複数作り出す能力なんだ。
まぁ、原作だとこの能力のせいでお金がかかりすぎて出番がなかったんだけど…。
……ヒドイよね、初登場と年末年始の戦闘だけとかね、ヒドイよね、ほぼバーゲンセール扱いだよね。
「バーゲンセールっていうのもどうかと思うけど…。
まぁ、それはそれとして、質問ってのは単純よ。だから単刀直入、ド直球で言わせてもらうわ」
「なんで、分身は2体しか作れないのよ」
!!!
「私と戦ってた時、ずっと疑問だったのよね。
普通、その手の能力だったら、もっとぶわわーって増えない?
私の幻術もそうだけど」
「あ、あー、それね、あはは」
「……どうかしたの?」
え、別に?なんてことないよ?
質問が本当にド直球だったから、ちょっと驚いただけだよ?何をバカな。
「……もしかして、自分じゃうまく使えないってことじゃないの?」
「イヤーッ!!!!」
言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで!!
「やっぱりそうだったのね。
考えてみたら、アンタってなんだかんだで他よりも不器用よね。
メダルよく落っことすわ、危険人物を寧ろ連れ出すわ、落とし穴に落ちるわ…」
「待って!最後の1つだけは違うから!パラレルの人だから!!」
「聞いたところによると、『おはよウ○ァ!』とか言っていたらしいわね、イベントとかで」
「それもパラレルの人ぉー!ていうか名前出てるー!」
ティアナって、なんだかんだでスバルとかに染まってない!?染まってるよね!?
しかも染めた人がかなり特定しやすいしっ!
他に考えられるのなんて、ジュンイチとかこなたとかしか候補がないよ!
「話題のそらし方も不器用よね。
なんていうかこう、あからまさまって感じで。グラティっていう論外を除けば、メダル組でも特に話下手じゃないかしら」
「うわぁーん!」
なんか関係ないことまで否定されたぁーっ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース10・ライオン:ネメアのコダワリヘアーの正体?―
「〜〜♪〜〜〜♪♪」
あなたでしたか、ネメア。
「〜〜♪……って、どーした?リート?」
「いえ、どこからともなく、カラオケですらコンボ名が歌われるような歌のメロディが聞こえたものですから」
カラオケ云々は実話です。バックコーラスみたいな感じでラトラーター!って。
他のコンボソングはそんなことないんですけどね。不思議ですね。
ますます不遇なシャウタェ…。
「で、陽気なメロディ口ずさみながら、何してるんです?」
「あぁ、あたし自慢のコイツの手入れだよ」
「自慢の……なるほど、そりゃ確かに」
ネメアさんの自慢といえば、まるでライオンの鬣をイメージしたかのようなヘアスタイル。
まぁ、彼女の名前自体、ヘラクレスの難行で登場したライオンのことらしいですし、
創造主たる三元帥がそういう風にセッティングしたんでしょうね。
性別についてはこの際スルーしましょう。
「そういえば、ヘアスタイルのお手入れにはどれほどのお時間を?」
「あー、大体30分くらいか?湿気が強いともっとかかるけど」
ほう、結構丹念にお手入れなさってるんですねぇ。
正直なところ、ちょっと意外でした。
「なんだよソレ、あたしがズボラだとか思ってたのか?」
「いえ、所詮はユニゾンデバイスですから、地毛が既にその形なのだとばかり」
「アホか!」
「ぶべら!」
殴られました。てへぺろ☆
「お前、萌えキャラじゃねーだろ…?」
「一度やってみたかったんですよねー。
まぁ、それはもう忘れましょう。実は、あなたにマジメに1つ質問がありまして」
「は?」
実はアストラルさんから依頼されてましてね。
創造主である三元帥から聞き出せば早いんですけど、細かいことは知らないって取材拒否しちゃうんですよねー。
なので、ご本人からお答えいただこうと。
「あー、アイツら説明めんどくさがるからなぁ。
アビリメモリのことはベラベラしゃべってたくせにな」
「というワケで、質問です。
ネメアさんの凛々しい鬣ヘアー、その中に何かいるって噂を聞いたんですけど、どういうことでしょ?」
これは他のディフィカルター12のみなさんも不思議がっていましたよ。
リーダー格であるケルベロスさんでさえ把握できていないとか。
何か、秘密でもあるんじゃないんですか?
「というよりむしろ、何もない方が不思議ですけどねぇ?」
「よぉーし、そこに直れ。今度はハイキックかましてやるから。
じゃなくて、あたしの髪の毛だろ?別になんてことないんだけどさ…」
おや、おもむろに髪の毛をつかみましたよ?
まさかカツラってワケでもなさそうですし……ていうか、カツラだったらショックですよ。女子ですから。
……何か探ってますね。
「秘密があるとすりゃあ……"コイツ"ぐらいか?」
「……………………」
「ちなみに、名前は"ガブリーナ"な。なかなかカワイイもんだろ?」
「…………して、種類のほどは?」
「あんまし気にしてなかったんだけど……確か、ポメラニアンとかいうの?」
「ライオンはネコ科ぁーっ!!」
とりあえず、あの髪の毛の後ろ半分は、丸ごとワンちゃんでした。
顔が見えなかったのは、前髪と一体化するように顔と口を隠していたからみたいですね…。
しかも体は小さい方らしく、ネメアさんが片手で抱きかかえた状態で胴ぐらいってところですか。
毛が長いですけど、確かにこれはポメラニアン。
「よしガブリーナ、リートに挨拶してやんな」
「ギニャーッ!?」
うわーっ!なんかすごい大口開けてこっちきて……僕を食べちゃらめーっ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース11・トラ:なぜ「リュウ」ビなのに「ビャッコ」なのか―
《あの、イレイン。質問、いいかな?》
「んー?どうしたの?」
いや、これって原作の方でも常々疑問だったんだけど…。
《なんで僕の名前は"リュウビ"なのに、必殺技の名前が"ビャッコ"なんだろうなって》
わからない人は調べてみて。
「lbx リュウビ」ってやれば僕の原作のデータが分かるから。
それはともかく。
「ホントにどうしたの?突拍子もない」
《だって、リュウビだよ?"竜"だよ?
なのにビャッコって、"虎"じゃないか。
しかも三国志のリュウビって、虎とあまり関連性ないし》
「……何か悪い電波にでも感染したんじゃないの?」
ひどい!僕はいたって正常!そんな毒電波の発生源なんて近寄らないし!
ジュンイチさんの自宅とか六課隊舎とかじゃないんだから!
「アンタ、"アレス"で狙撃されたりとかしないでよ…?
それはそうと、竜なのに虎ってことでしょ?なんてことないわよ」
《というと?》
「自分で考えられないような難しい理由じゃないと思うんだけど」
それが分かったらこんなことにならないよ!
ガン!
考えれば考えるほどワケわかんなくなってきて、
ガン!
ナイトメアが都市伝説とか吹き込んでくるし、
ガン!
ハカイオー絶斗なんて元から歴史に興味ないだろうし、
ガン!
挙句の果てにジュンイチさんにワケわからない理由でホラー映像押し付けられるし、
ガン!
もう気になり過ぎて、人間でいう眠れない状態になっちゃってぇぇぇぇ!!
ガン!ガン!ガン!ガン!
「痛い!痛いったら!さっきから頭に蛍光灯がぶつかってるってば!
ていうか、いきなりフルサイズになってゆすらないでよ。しかも、なんで縦に」
《ごっ、ごめん、つい感情的に…》
「分かった、そこまでヒドイならちゃんと教えるわよ。
まぁ、身もふたもない言い方すると……」
《すると……》
「響き的な問題よ」
ワケわからないよ!
ガン!
いったいぜんたいどういうこと!?
ガン!
響き的って何!?
ガン!
聞こえ方とか語呂とか、もう少しマシな言い方ないの!?
ガン!
全然答えになってないからぁぁぁぁ!!
ガン!ガン!ガン!ガン!
「だから痛いったら!!ホントにそうとしかいえないのよ!
考えてもみてよ。虎は引き裂いたり打ち砕いたりするってイメージがあるけど、竜はどっちかというと雷とか破壊光線とか。
あとはもう、名前の響きよ。白虎とか猛虎とか、技の名前でもよく使われるでしょ?」
《そういうものかな…。あ、じゃあ、なんで僕には腰に尻尾がついているんだろう》
「そりゃあ、あなたがリュウビで、歴史上の劉備玄徳も竜がイメージされてるからに決まってるじゃない」
もうワケがわからないよ!
「取り敢えず、あんたの元ネタからして、そういう由来を深く考えることに意味なんてないじゃない」
《がーん!》
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース12・チーター:元気なブライ=暴走特急説―
「そういえば、初めてブライの力を使った頃は、苦労したなぁ」
「ブライの力…というと、らたらた♪らとらーたー♪ってアレでおじゃるね?」
リティ殿は、地球でもかなり旅を続けていて、私もちゃっかり知っていて。
なので思い出話を語ってもらおうとしたのでおじゃるよ。
話は自然と旅先でのメダル集めになってって……。詳しいことは本人いわくパラレル元の方とさほど変わらないそうで。
で、その途中。らとらーたー♪を初めて使った頃でおじゃるか。
「もうブライが暴れん坊でさー」
「いや、チーターメダルの力で加速して、止まれずにフェンスに激突したヤツの言うことじゃないって」
「ブライだって、未だにトラクロー使わないとブレーキかけられないクセに…。コンボなのに」
あー、パラレル元でも激突してたでおじゃるねぇ。
アレはなかなか笑わせてもらったでおじゃるよ。しかも減速し損なってっていうんだから…もう。
で、ブライはホントにらとらーたー♪なのにブレーキがきかないとはのぅ。
なんでこうも欠陥持ちなのでおじゃる?しかも、自分の長所で欠陥って。
「まったくだよなー。そこはオイラも疑問なんだよな。
リティのトレイサーで『ラッタララッタァ♪ラトラァータァー♪』って歌えば、縦横無尽自由自在に走りまくれるのにな」
「トレイサーの性能に違いとかあるのかな?
ほら、俺のヤツだけ他のメダルも使えるし、組み合わせの亜種形態もできるし。俺のだけ」
ふーみゅ、本人たちでさえ理解不能となると、それこそ迷宮入りで……
「取り敢えず、たった1つだけ、ある意味で確かなことがいえるよ」
「およ、トラルー」
確かなこと?
「作者の都合だよ」
『待ていっ!!』
いや、『大人の事情』みたいなノリで言わないで!
少なくともリティたちの今後の展開的にいろいろと問題でおじゃるから!
確かにある意味で最も信頼性高い結論でおじゃるけど!
「お茶濁さないで!」
「ちゃんと教えろよ!ひっかくぞ!」
「ほら、納得してもらえてないでおじゃるよ?」
「いやいや、そんな深くかかわることじゃないって」
でも、気になることは気になるでおじゃるよ?
早いとこ言わないとぉー……愛の覇璃扇敏多でおじゃるよ?
ほらほら〜。
「そうやって馬鹿でかい扇子を押し付けるな!
だってさぁ、作者の都合をざっくばらんに言わせてもらうと、
そうでなきゃ盛り上がりに欠けるからに決まってるじゃん」
『ホントに都合だぁーっ!?』
本当にご都合でおじゃるねぇ…。あはは…。
思わず勢い余って、すてーんっ!ってコケちゃったでおじゃるよ。
しかし、盛り上がりときましたか。
「それにさぁ、暴露させてもらうとリティでもブライでもトップスピードと加速性能は変わってないんだ。
違うのは、それこそ方向転換しやすいかどうかとか。
あとはブライの場合はパワーを抑えられてるってところだろうね。でもさー」
「ん?」
「仮にマタタビがなくたって、ブライは元気なら元から暴走してるようなモンじゃないか」
「にゃにおう!?」
そんな暴走キャラだったでおじゃるか?
「そりゃあもう。
初登場時、スバルとのバトル。
ルアクのフォロー忘れて、なんか『戦争はやっぱ、白兵でねぇーとなぁ!』とか叫びそうなノリだったし」
あぁー。
確かに、各個撃破された図式とはいえ、力任せに攻撃してスバルをはじいてティアナにぶつけるってこともできたでおじゃるね。
そういう意味じゃあ、フォロー忘れてるっているのかも。
でも、そんな戦闘狂なセリフ……吐きそうにないって言いきれないのがまたなんとも。
「ていうかオイラ、元から白兵戦装備しかねぇけど!?」
「熱戦放射で川の水干上がらせるクセにねー。プッ」
「しかもなんで笑った!?なんだよ今の『プッ』って!?
つーかなんだよさっきから!そういうトラルーだって、最近はツッコミ役なようでボケ役じゃんか!
行方不明になったかと思ったら色ボケネタかましやがってよ!?」
「それこそ待てい!?アレはボケじゃないから!寧ろボケ役なのって犯人のスリアだし!?」
「恭文の代理にされるっつー立派なボケじゃんよ!?」
「どう考えたらアレがボケ!?ただ理不尽に巻き込まれただけやん!?」
「ていうかさっきもビコナとイチャついてよぅ!?なんだおま、最近は色ネタ要員てかぁ!?」
「もはやボケツッコミの概念さえ消え失せてるし!?」
……あー、うん、とりあえず、暴走特急ではあるでおじゃるね。
「俺たちを置き去りにしてる辺りがね」
「そうそう」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース13・サイ:石頭とトゲ頭、最強のヘッドバットはどっち!?―
「突然なんだけど、最強の頭突きってなんだろうなって思う」
「はぁ?」
ホントに唐突だな。
しかも、最強の頭突きってなんだよ?
「だって、よぉ〜く見てみたら、オーディーンたちってロボットなワケだし、頭突きも案外強そうだな〜って」
「いや、やらせたらマズイだろ。フツー、ロボットの頭部ってセンサー類が集中してるだろうが。
ロボットバトルで頭突きって、見たことねぇし」
ガン○ムはもちろん、ザ○だろーがド○だろーがジン○スだろーが、
勇者ロボだってそうだろうが。頭突きさせるために固くしてるワケじゃないんだぞ。
「えー。オーディーンのトサカとか、いかにも頭突きでケーオーしてやるぜ!みたいなさー」
《勝手にそんな風に解釈しないで!》
「いや、案外イケそうですよ?トサカならセンサー類もないし」
《創主レルネもノらないで!》
イテンの世迷言にレルネが食いついた。
アレか、類は友を呼ぶってか。
いきなり引き合いに出されたオーディーンも大変だな。
「あるぇー?スターは未だに乗り気じゃないね〜?」
「スターたま、あなたともあろう方が珍しい〜」
「お前ら、俺のことなんだと思ってた?」
『ビコナ(たま)とイテン(ちゃん/たま)と一緒にボケトリオ』
『あいやっ、やめてっ、おうふっ、あべしっ、ふぎぇあっ、おひゅぇあああっ!?』
「ったく、ホントにお前らは揃いに揃って…ッ!!」
《うわぁ…》
お望みのようだから、ヘッドパーツだけで殴ってやったぜ。
グレン○ガンの頭だろ、ガ○ッゾの頭だろ、カブトムシ(の模型)の頭だろ、クワガ○ッダーだろ、ジェ○ブレ○カーの頭だろ、
シャ○ザ○の頭だろ、ガイコツだろ、モウギ○ウダ○オーの頭だろ、ゼ○シュ○イダーの頭だろ、
グル○リンだろ…
《グ○ドリンは頭ないから!》
「手ついてるけど頭だけみたいなモンだろ」
《仮にそうだとしても、物凄くとがっててあぶないじゃんか!》
「ドリルリーゼントよりはマシだろ」
《ドリルリーゼントって何!?》
名前そのままでググってみろ。
なんか胡散臭い白スーツの男が出たぞ。しかも金髪。
ポーズとか演出とかから見ると、ナルシストの気もあるな。
《しかも、もうトゲでも石頭でもないし》
「どっちかっていうとトゲだろうな。物凄く太いけど」
《でも、威力はなさそうだね》
「分からないぞ、髪型を維持するために液とか使ってガチガチに固めてるかも」
《あぁ、それは痛そう…》
「ふっ、甘いですねスターたま!」
「ちっ、打ち所が甘かったか」
「待って!いきなりぶとうとしないで!」
いや、せっかくだから、ガチガチに固めたドリルリーゼントの威力の実験台になってもらおうかと…。
「頭突きの威力がすごそうなのといえば、ウチからはプロトゼノンを推薦しますよ!」
《なんで》
「見てくださいよ、完成系のゼノンでは1本角だったのが、プロトゼノンは3本角ですよ?
しかも後頭部までトゲトゲ!前だけでなく後ろにだっt」
《本当に面倒な創造主だなっ!!》
「ぎゃいんっ!?」
あ、噂をしてたらプロトゼノンがホントに来た。
しかも今、頭突きしてツノが刺さらなかったか?3本全部。
《リクエスト通り、3本角で眉間を貫いてやったぞ》
《いや、してないよ。そんなリクエストはしてないよ。ただの頭突きだよ》
《頭突きのつもりだが》
「あー、あくまでも頭突きで突き刺したのな」
完全に眉間から血が出てるし。オマケに衝撃もすごかったのか、気絶してるし。
なんつうか…。
《そうだな、さしずめ今のは"頭突き刺し"とでもいってやろうか》
《技名にした!?》
「なんだかんだでノッてんな、アンタも…」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース14・ゴリラ:結局フォローされない乙女の純情―
「レェルネェーッ!!」
「うわらばっ!!」
何事ですかいったい。
飛び込んでくるなりラリアットぶちかますなんて、尋常じゃないですね。
ねぇ、ひより殿。
「主人ブッ飛ばされたのに、全然動じてないッスね…」
《いつものことですから》
「いつも…?」
えぇ、具体的な描写がないだけで、創主レルネがネタ的な意味でブッ飛ばされるのは珍しくないんですよ。
いえホントですから。嘘はついていませんから、みなみ殿もそんなジト目で見ないでくださいよ。
《具体的に言いますと、大体フェンリルに撃たれたり、パンドラにチョップされたり、
かがみ殿にどつかれたり…》
「柊先輩に何したんスか…」
《クーガーのシステムメンテでお預かりした際に、鳩時計ならぬ鳩鉄砲の機能を追加しようとしまして、その時に》
「しょうもないというか…」
《まぁ、かがみ殿もこなた殿に対するいつものノリと大して変わらなかったでしょうし》
実際、創主レルネがこなた殿のマネをしてハリセンくらいましたしね。
ギガントボム様についてはオールスルーでした。はい。
《それで、いったい何事ですか?》
「あぁそうだったッスね。実に今更なことなんスけど……」
「アイアンフィスターの形状について異議を申し立てたい!ッス!」
アイアンフィスターの形状?
デザインに何か不備でもございましたか?
ロールアウト直後から当たり前のように使っているクセに。
「大ありッスよ!あなた、私が前に言われたことのある悪口をご存じないッスか!?」
《ありませんね》
「サラッと言わないでほしいッス!」
《いいですから、さっさと文句の要件を言ってくださいよ》
「さっきからさり気なく刺々しくないッスか!?」
「あの、ひより、落ち着いて…」
刺々しくなんてないですよ?実にいつも通りです。
「あの、文句の要件ってのは、デザイン……というより、装着位置も含めてッスよ。
なんでわざわざ、腕だけゴツくしたんスか?
ゴッドオン時にゴリラ呼ばわりされて乙女のプライド傷ついたのに、それに拍車かけてどーすんスか!?」
《あぁ、そういえばそんなこともありましたっけねぇ?》
「軽いッスよ!乙女型のAIなんスから、もう少し親身に接してほしいッスよ!」
「なんか、微妙にやる気なさそうな雰囲気が漂うんだけど…」
え?やる気がなさそう?
何言ってるんですか。
《ないに決まってるじゃないですか》
『待って!!』
待ちませんよ。だって、理由なんて本編の時点で語られているじゃありませんか。
自分たちのデバイス初登場時の話読み返してくださいよ。
具体的には「とたきま」第19話。
「そんなこといわずに!」
《じゃあ仕方ないですから、さっさとおさらいしましょう。
創主レルネは、新しいデバイスを作るにあたって注意したことがあります。
それは持ち主の戦闘技術の熟練度》
「確かに、私たちのデバイスは戦い方がゴッドオンと殆ど一緒ですけど」
《そう、それが答えです。
トランステクターが導き出した、貴女がたにもっとも適した戦闘スタイル。
とどのつまり、トランステクターにも認められたお似合いの姿ってことですよ。
ねぇ、ゴリラ腕さん?》
「はぐぅあっ!?」
あ、ショック受けてぶっ倒れましたね。
耐えて殴るという戦闘スタイルの関係上、防御力の向上が急務。
その上で攻撃力も高める、つまり攻撃力も防御力も同時に高められる理想のパーツこそが腕。
ゴッドオン形態のブレイクアームだって、強化外装は腕の大型化じゃないですか。
まったく、何を今更ほざいておられるんでしょう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース15・ゾウ:グラティの3大欲望―
《リイン、バッチリおさえとるな?》
「はいです、抜かりはないですよー」
《……何やってんだよ、アンタら》
そりゃあもう、はたから見たらすげぇ間抜けな光景だよな。
迷彩服を着てるリイン曹長がさ、ミニサイズの双眼鏡で何を観察してるって、
いつものよーにお菓子食ってるグラティなんだよな。
「フェンリル!間抜けとは失礼なのです!
これも立派な、はやてちゃんの職務の一環なのですよ!」
《バレバレなデバガメがかよ?》
《デバガメちゃう!ストーキングや!》
《余計タチ悪いじゃんかよ!?》
何やってんだよ、ホントに…。
創主レルネの噂以上にアレな性格してるよなー、六課の上層部って。
エリオとかグリフィスとかシグナルランサーとかいなかったら、今頃どーなってんだコレ。
「今、リインたちはグラティの欲望を調査しているのです」
《はぁ?アイツの欲望だぁ?》
「はい。リティさんという例外を除けば、他のメダル組の方々はある程度欲望がハッキリしていますけど、
グラティだけはパッとしないものですから」
《……アンタら、本気で頭ラリってんじゃねぇの?》
《「なにおー!?」》
いや、グラティの欲望って、なぁ?
寧ろ誰よりもシンプルでストレートだろうが。
何か悪いモンでも食ったのか?
「グラティの欲望かい?」
《あぁ。めっちゃストレートだと思うんだけどなぁ》
「あぁ、確かにねー」
噂をしていれば何とやら、リティが来た。
「ほーらグラティ、この前の旅で見つけたお菓子。好きだろ?」
「あ、わぁーい、このお菓子、俺、好きだ〜」
《……お菓子、ですか?》
《……お菓子、やね》
《お菓子だろ》
伊達に原作でことあるごとにお菓子食ってるワケじゃねぇんだよ。
でも、怪人体だとどうやって食ってるのか微妙に謎だよな。
まぁ、いっか。寧ろさ、細いけどガタイのいい青年の姿なのにさ、完璧に弟キャラなんだもんな。
ギャップすげぇな。
「ん?今はスリアと一緒じゃないのか?」
「スリア、今はビコナと出かけてる。でも、俺も行きたかった!」
「まぁまぁ、女の子同士の付き合いだってあるんだよ。わかってやりな?」
「うー」
《……フェンリル、これはどう見る?》
《そりゃあ、どう考えたってスリアと一緒にいたいってことだろ。
独占欲……っていうよりは、共生欲?》
「まるで、お母さんを探し求める子供みたいですね」
はやてさんからの疑問にはそう答えておく。
ある意味、スリアと一緒にお菓子くってる時間がアイツにとっての至福じゃねぇかって、前にリティが言ってたな。
敵対してた頃から、ずっと続いてる関係なんだと。
原作だと、最後らへんで一方的にフラれちまうけどな。そこはいい意味で改変されてるってことか?
「グラティにとっては、お菓子とスリアの存在が大事ですか?」
「というより、多分それらしか眼中にないんだよ。世界情勢どころか、敵味方のことだってあまり興味ないし。
スリアに手を出すヤツは敵とみなして襲い掛かるけどね」
《はーっ、ホンマにシンプルかつストレートやなー》
「お菓子とスリア"だけ"っていうのも、なんか複雑というか、微妙な感じですね」
「厳密には自分のメダルにもそれなりに執着はあるけど、最優先はスリアなんだよね。
自分のメダルよりスリアのメダル優先するぐらいでさ」
《じゃあ、逆に自分に無頓着なんかいな?》
《いや、そーゆーことでもないっぽいぜ?》
さすがリティ、だいぶ詳しい説明だな。
はやてさんが無頓着っていうけど、案外自分……ていうか、まぁ、なぁ?
「あら、また変わった組み合わせでご歓談かしら?」
「スリア〜、おかえり〜」
「ただいま、グラティ。寂しかったのかしら?」
スリアの声を聞くなり、アイツの方へ飛びつく。
ホントにアイツのこと好きなんだなー、グラティって。
リティいわく、これがいつもの光景らしいけど。
「今、はやてさんとリインさんが、グラティの欲望について知りたがってるみたいでさ」
「グラティの欲望?またまたぁ、随分とわかり切ったことを聞いてくるのね」
「面識浅いし、仕方ないとは思うけどね。でさ、お菓子と君、他に何かあったっけ?」
「そうねぇ……坊やでも思い当たらないことっていえば、1つだけあるわね」
《お、まだあるんか?気になるやん》
リティでも把握できてない、グラティの欲望か。
それは俺も気になるな。教えてくれよ。
「まぁ、ある意味で簡単よ。グラティはね、自分の楽しいことにしか興味がないの。
私と一緒にいるのも、お菓子を食べるのも、あの子が楽しいって思うからこそなのよ」
楽しいって思うから?
つまり、アレか?笑うとかはしゃぐとか、とにかく楽しいって思うことだから執着するってか?
コント番組見て笑うのを毎週の楽しみにする、みたいな。
「そんなところかしらね。
逆に、楽しくないって思うことにはとことん興味を持たないわ。メダルとか絡まない限りはね。
とにかく『やりたい』って思うことにだけやる気を起こす、ある意味で最も自分の欲望に忠実なのよ」
「そう、かなぁ?」
「えぇそうよ。でも悪いことじゃないわ。寧ろ、ハッキリしている分、素敵よ?」
「えへへ〜」
《……バカップルやな》
「はやてちゃん、しーっ!」
ある意味、かなりお似合いだとは思うぜ。
……面白いことなぁ。グラティがはしゃぎそうなことっていうと…。
《おーい、グラティ。面白いモン見せてやるぜ?》
「ぉん?」
《あー、まずはドミニオンライフルを持ちましてー、リイン曹長を装填しまぁーす》
「ちょっと!?何するですか!?」
《そして頭にスーパーボールをくっつけたら、
狙いを定めてぇー……バァン!》
「うひゃあああああああああああっ!?」
スーパーボールくっつけたのは、安全にはねてもらう為な。
適当に天井に発射して、頭にくっついたスーパーボールでバウンドして跳ね返って、
真下の机でまたはねて、天井でまたはねて、机でまたはねて、天井でまだはねて、机でまだはねて……
「へびゅっ!?」
天井でまだはねて、戻ってきたところで顔面から激突。これでようやく停止。
ちょっとしたホッケー状態だな。机と天井で。
「机と天井、どっちが勝った?」
《あー、机にぶつかって止まったから、天井の勝ちだなー》
「おー。ていうか、リインが上いって下いって、べちんべちんっていって、おもしろー♪
俺もやるっ!」
「や、やめてくらさい〜!?」
あ、結構面白かったのな。
自分でリイン曹長掴んで、ブンブン振り回して……あ。
「なんでこうなるですか〜!?」
勢い余って放り出されたら、その辺の壁や床や天井にぶつかりまくって、ピンボールみたいになった。
いやー、勢いよく跳ね回るなー。固いスーパーボールだったからか?
「いいぞいいぞ〜、もっともっと〜」
「やめてぇぇぇぇ、くださぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ〜」
なんか、空力抵抗無視しまくった軌道になってねぇか?
「グラティのメダルは、コンボになると重力操作できるんだよ。
多分、リインさんの重力を操作して、おもちゃみたいに振り回して遊んでるんだ」
《止める方法は?》
「ん〜、ないっ」
《放置プレイ!?》
俺の質問に、リティはシンプルな答えをくれた。
はやてさんには悪いが、とりあえず諦めるしかなさそうだぜ?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース16・シャチ:ディープトリオ結成!?―
「セインでーす」
「イテンでーす」
「レルネでーす」
『我ら、ディープトリオぅ!!』
「は?」
なんかいきなり、セインたち3人が漫才トリオみたいな名乗りをし始めた。
イテンとレルネのススメで観客にされた僕は、なんだか当たり前のように間抜けな声を上げた。
いやぁ〜、まさかここまで血迷うとはねぇ。
「いやいや、血迷ってなんていませんですよ!?
ボクたちみんな、バリバリの正気ですからね!?」
「そぉ〜んなこと、言われてもねぇ〜?」
「またまたぁ〜。私たちがトリオを名乗れる理由なんて、トラルーがいっちばん知ってるじゃん?」
「まぁねぇ。偶然にも立ち会ってるしねぇ」
「知っているなら話は早い。私たちが特技を使って出たり入ったりするから、
最後の一歩前に出てきたのが誰か当ててもらおーか!」
「なんだ、間違い探しか」
『違うっ!!』
うん。ワザとボケた。
あながち間違っているワケでもなさそうだけどね〜。
イテンといいレルネといい、派生型なワケだし。
「じゃー、さっさとやっておくれよ。
どうせ密集してわらわら動くことで誰が使ってるかを特定しづらくするトリックだろーし」
「なんかさっきからトラルーたまが冷めてっ!?」
「ならば、お見せしようじゃないの!」
「んじゃ、せーのっ!」
とりあえず、3人が一列に並んで同時に床に入る。
もちろん、ディープダイバー系列の能力を使って、溶け込んでいるって状態だけど。
さーて、ここからどう出るかな?
エフェクトだけならセインだし、かまいたちが出ればイテンのカリーシュダイブだ。
…………レルネ……なんだっけ?ていうか……。
「しまったぁぁぁ!考えてみたら、レルネだけ能力を知らねーじゃんっ!?」
《何やってんですか、マスター!?》
生々しい話すると、レルネのISって本編(29話時点)で全く語られてないし!?
せいぜい「あるよ」って話を、九尾さんへの内密レスで語ってるだけだし!?
《その話だけは生々しすぎますからね!?》
くそー、ぬかったわ。レルネだけはトリックどころか能力の傾向すらわからないじゃないか。
難易度が上がったなー、イテン以外。
《イテンさんだけは簡単だと》
「だって、かまいたちが出ない時点であの子が出るって可能性は消えるから」
《あー》
今更悔いても仕方ない。後悔先に立たずってね。
というワケで、かかってこいや!
「といやっ」
「ほあちゃーっ」
「ちょるなーっ」
ふんふん、まず3人が同時に出てきて、まずはイテンがドボン。
今度はセインとレルネがクロスしながらちょっとズラして時間差でドボン。
またイテンが飛び出して、レルネが飛び出したらドボン。
セインが飛び出してレルネと一緒にドボン。
…………終わったかな?
『さんみぃーっ!いったぁーいっ!』
《どこの栄養ドリンクのCMですか》
また3人一緒に飛び出した……けど、なんかすごい形に絡み合ってる。
くそう、軌道を見切らせない作戦かっ。
だが、本気を出せば光速すらも超える機動力を発揮できる身の上、
動体視力には自分でも底知れない自信があるの○ぃっつぅ!
《それ、サークル名じゃないですか》
「いいの」
知らない人はとことん知らないっていうのが、同人誌作家の哀しいサガかね。
『ちょぉう、ぶんしんさっぽぉうっ!』
《勇者パクりましたよ》
「いいじゃん、この世界自体がそんなモンだし」
「さぁ〜て、誰が最後の一歩手前に飛び込んだか、わかるかなっ!?」
で、だ。同時にはじけたかと思うと、カリーシュダイブのかまいたちで隠してドボン。
はははっ、無駄だ。なぜなら、ドボンする時の波紋までは隠せないからなっ!
あと、かまいたちで隠した時点で、既に正解はバレているぞっ!
「セインよ、答えはイテンではないかなっ!?」
「ぶっぶー」
「なぁにぃ!?」
ハズレ……だと…!?
「ひぃーかかったぁ、ひぃーかかったぁ!」
「正解はボクですよ〜、トラルーたま」
「レルネ……だと……!?」
一杯食わされたぜぇ。でも、いつの間に。
たぶん、最後に飛び込んだのはセインなんだ。で、正解がレルネなら、イテンがはじけた後の1発目のドボン。
でも、ハッキリ言って姿が見えなかったけど。
「これぞ、ボクのIS。その名も"メルツダイバー"でございます!」
《溶け込み潜るからメルツダイバー、"メルツ"とは"It melts"、"溶け込む"という意味があります。
それに、どうやらかまいたちの代わりに光学迷彩が発生するようですね》
「まさか光学迷彩併用とは恐れ入った」
こりゃあ、トリックを知ってても難易度そこそこあるなぁ。
飛び込む時に透明になられたんじゃ、波紋を見たところで紛らわしいし。
イテンからほんの少しだけ遅れて飛び込むことで、波紋で見極めるというテクも封じたワケで。
理屈で当てられたらすごい気もする。
「ふっふ〜ん、どうトラルー?イテンちゃん考案のトリック!」
「これは実戦で使っても一定の効果がありそうだね。たださ」
『?』
僕の言葉の続きに、3人そろって気にしているようなので続ける。
「室内でやるモンじゃあないよね」
《どうするんですコレ?後でイレインさん辺りに怒られますよ?》
『!!!』
だって、主にカリーシュダイブを多用したせいで、
あたりの壁やら天井やらがズタボロなんだもの。
しかもマックスフリゲートのとある一室だから、監視カメラで筒抜けだしね。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース17・ウナギ:華麗なムチには刃がある―
《アストラル、1つ知りたいことがある》
「?」
《ムチはなぜ、平成の世の中でさえ武器として通るのか》
「え、えぇ〜…?」
ゼノンのヤツ、たまにこうやって知識人殺しな質問投げてくるからなぁ。
『なんで武器として通じるか』じゃなくて『なんで今でも通じるか』っていう話で、
知識よりも雰囲気とか流行とか、そういうものが大きく影響する話題であって、ある意味で僕の管轄外だ。
どんなに多くの知識を持っていようが、それが流行を素早く察知できるかといえば無関係だ。
寧ろ流行事情を知りたいならギルドの情報屋にでも頼りなさいよ。まったく。
《今でも通じているということは、それだけ武器としての性能が良いということだ。
だから、性能がどれほど高いのか、どれほど有効的なのか、それを知りたくてアストラルに聞いたんだ》
あー、そういうことか。
つまりまぁ、僕は今まで通り、性能についてベラベラと語ればいいワケだ。
なるほど、それなら僕の管轄内だ。
「ムチの有効的な面といえば、なんといってもリーチを自在に変えられることだろうなぁ。
振り方、伸ばし方、回し方なんてのもあるか?やり方1つでリーチを変えられるから、長さ次第では遠距離攻撃もできる。
レヴァンティンのシュランゲフォルムしかり、双頭大蛇の展開状態・テンペスターフォルムしかり」
特にシュランゲフォルムについては、完全に質量保存の法則を超越しています。
まぁ、デバイスの殆どが質量保存の法則を無視しているからなぁ。今更か。
寧ろ逆にテンペスターフォルムが質量保存の法則に従っていることの方が珍しいかもしれない。
割と生真面目な設計をしたんだな、デビルポセイドン。
《他にも利点があると思うが》
「ふむ、打ち付けるだけじゃなく、縛り上げて動きを封じたり、いざとなればロープ替わりになるな。
あとは……女王様プレイができる?」
《女王様プレイ?なんだそれは》
「あー、まー、端的にいえば……ムチ振り回して手近な下々を服従させる遊び?」
《悪趣味だな》
うわぁ、即答で一刀両断されたよ。
こりゃあ、色恋沙汰にはとことん鈍いだろうなぁ。
それが不幸な時もあれば幸いな時もあるんだけど……この世界だと不幸な時の方が圧倒的に多い気がするのはなぜだ。
「まぁ、話を戻そうか。
性能自体については、関節攻撃系の武器としては高い部類だろうなぁ。
素材にもよるけど、女の子が少しスナップを利かせて振り回すだけで腫れるくらい痛いし。
打ち付けられたところがアザになるようなことも珍しくないみたいよ?
もっとも、君らのような機械系相手となると、威力はないようなものだけど」
《生身限定か》
「だろうね。厳密にいえば有機生命体?
大昔から馬やら牛やらを従わせるためにムチを使っていたくらいだし、有機的な生き物になら効果は高い。
無機物でも、縛り上げたりすることはできるワケだから、使えないってこともないね。
特に、一部で取り入れられたという電気ムチは君らにも笑えないシロモノだろうし」
電気ムチ。その名の通り、当てた相手に電撃の追加効果があるビリビリするムチ。
持ち手だけは素材が特殊で、持ち主が感電しないようにはなっているけど、もちろん良い子のみんなはマネしちゃダメよ。
まぁ、いまどき売っているような店とかもなさそうだけど。
《一番手近な存在としては、ウナギメダルが危険か》
「あぁ、顕現する武器がちょうど電気ムチだもんね」
《しかし、なぜウナギで電気ムチになるんだ》
「そりゃあ、正式名称が"電気ウナギメダル"だからだよ。
ウナギはウナギでも、放電体質を持つ電気ウナギが元なんだよ」
ドライバーでさえ「ウナギ!」で通しちゃってるから、下手するとそうとは知らない人もいるかもしれない。
なお、どれほどの放電を起こすかというと、帯電性で有名なゴム製の手袋をしても痛いくらいだ。
市販ならゴムさえ貫くほどの放電だ。生息域に踏み入るなら注意した方がいいだろう。
《ところでアストラル。最後に1ついいだろうか》
「なんだい?」
そろそろムチについては多少は理解してもらえただろうか。
まぁ、ゼノンにムチを持たせるようなことはないけど。
《この話はどうオチるんだ?》
「知るかっ!!」
話振っておいて、最後の最後でそれかいっ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース18・タコ:スリアもまたエロリスト―
「た、助けて〜!」
《うわっ、ある意味で一番その手のセリフを聞きたくなかった人が来ましたよ!》
「珍しいっちゃあ珍しいんだろうけどさ」
部屋のドアをバァン!と開けられたかと思うと、
物凄い勢いで恭文が駆け込んできた。
完全に真っ青になってね。
どうしたんだか。
「いやね……ぜぇ……その……ぜぇ……」
《マスター、息切れがすさまじいですね》
《全速力で長時間ダッシュしたんでしょうね》
「それこそ、ドアをブチ破らんほどの勢いでねぇ」
アルトアイゼンとイグナイテッドにダブルでツッコまれ、僕も混ざる。
もちろん、かなり本気でダッシュしたんだろう。
しかし、助けてと言われたからには、何かから逃げてきたとみるのが大筋だろうけど、
何から逃げてきたのさ。
「ぜぇ……ス……ぜぇ……スリアから……」
《端的にいえば、まぁ性的な意味で襲われたんですよ。
脱がされる前に脱出できましたけど》
「……リティの忠告、無視したんだ」
《まぁ、何度叩き落とされてもジンさんを狙い続けるレヴィアタンもエロリストですし、
やはりエロリストというのは死んでも直らないものなのでしょう》
だよねぇ……ビコナあたりがその内影響されたりしないか、ひっじょーに心配なんだけど。
アルトアイゼンの補足のおかげで、大体の事情は分かった。
なんだかんだで、メガーヌさんからの依頼になってるんだよね…。
恭文にベタ惚れしたからって、そこまでいくか。さすがは天然系エロリスト。
「だって……ねぇ……霞澄さんとかメガーヌさんとか……」
《特にメガーヌさんに至っては、こっそりとマスターを狙っている節もありますからね》
《それで、さながら前菜の如くうちのマスターがスリアさんに羞恥プレイをさせられたと。
……おや、マスター?》
やめろぉぉぉぉぉ!!そのことを思い出させるんじゃなぁぁぁぁぁいっ!!
「あぁ〜ら、誰かが噂しているかと思ったら、恭文も発見。
それに、懐かしい感触が今でも思い出せるわよぉ、ト・ラ・ルー♪」
来るなぁぁぁぁぁぁ!!せめて、その電気ウナギムチをしまえぇぇぇぇぇっ!!
あと、腰のロープ類を捨てやがれぇぇぇぇ!!
「うわっ、トラルーの言葉遣いが普段と違う!」
《寧ろ、いつぞやの暴走時とかジュンイチさんを抹殺した時とかの雰囲気ですよ》
《完ッ全にトラウマになってますよ。イテンさんという甘ぁい癒しをもってしても、復帰するまでに半日かかりましたし》
「あー、恋仲だから最大の癒し効果があるって見込みだったっけ」
《スリアさんが全く懲りていないので、いつかはこんなことも起こるだろうとは思いましたけどね。
しかし、お笑いとしてオイシイ存在になられましたね!》
「やかましいわっ!!」
恭文とアルトアイゼンのリアクションに始まり、
イグナイテッドの解説からなんか脱線しやがった。
いらぬことほざきやがった相棒に、力いっぱい怒鳴りつける僕。
「恭文もぉ、メガーヌさんに引き渡す前に少しホネヌキにしとかないとねぇ。
私が拉致した時のトラルーみたいにねぇ?」
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
「僕だってお断りじゃボケっ!!」
あぁぁぁぁぁぁぁっ!!あの拘束プレイの光景と感覚がよみがえるぅぅぅ!!
そりゃぁ、欲求不満がたたり始めていた体にはキモチよかったけどさぁ?
それでも公衆施設でやるのはイケナイに決まってるだろがいっ!!
「んもぅ、釣れないわねぇ。最近はリティの坊やも付き合い悪くって、欲求不満なのよ。
だからぁ、恭文をメガーヌさんに届けるついでに味見させてもらっちゃおうかなー?なぁんちゃってね!」
「お断りだって言ってるでしょーが!」
《ダメですね、完璧に霞澄さんとかと同じスイッチが入っちゃってますよ》
《このままだと、いずれ恭文さんも拉致されてしまうおそれが…。
そして、ゆくゆくはメガーヌさんの快楽の虜に》
「イグナイテッドもしばしまていっ!!」
あ、恭文がイグナイテッドにまでツッコみ始めた。
相手がスリアだしなー。普通に追い返すのも難しそうだし……。
「さぁて……私のテクニックでホネヌキになる覚悟はできたかしらぁ?
できてなくても、このムチで無理矢理ヤっちゃうけどねぇ?ウフフフフフフッ」
「断固拒否っ!僕にそんな趣味はないっ!」
「愛しのフェイトさんが男側拘束プレイマニアでも?」
「…………」
「いや、否定しろよ」
《完全にフェイトさんに泥酔してますからねー。ツッコむところはツッコむクセに》
《別な世界では散々フラグを立てているって噂、棚に上げてますよね》
スリアからの質問は、とどのつまりフェイトがエロリストだったらってこと。
相手がフェイトだったらってなると、愚直なまでに受け身に走るからなぁ。
きっと今の沈黙も、フェイトに性的な意味でイジめられる光景を想像しているんだろう。
なんたって、年頃の男子なワケだし。
あと、イグナイテッドが漏らした通り、別な世界においてはジュンイチ並みにフラグメイカーらしい。
クロス先の主要ヒロインの大半とフラグ立てるって、どんだけだよ。ジュンイチのことバカにできないじゃん。
「あ、もしかして、恭文はオプション付きの方がいいのかしら?
それなら心配ないわ。ローションでしょ?ロー○ーでしょ?バ○ブでしょ?極めつけに、エネ○グラなんてのもあるわよ?」
《完全にマスターを落としてから連れていく気ですよ》
《しかもエ○マ○ラなんて、完全にア○ル攻めすること確定で持参しているようにしか見えませんし》
「なるほど、恭文は抵抗力を限りなくそぎ落とす為にアナ○攻めで陥落させてから献上すると」
「お前ら一旦トークとまれ!!」
スリアが、胸の谷間からなんかイロイロ出してきた。
決して巨乳とか爆乳とかみたいなダイナマイトな胸じゃないけど、小さいワケでもない、まさに美乳というべきサイズだからか。
それとも、あの服の裏側に忍ばせるための細工でもしてるんだろうか。
余談だけど、スリアは胸が着痩せするタイプであることが判明。直接揉んだというはやてから聞いたビコナが言っていた。
シグナルランサーが阿修羅を凌駕する存在へ変貌した、放送室占拠事件の時に揉んでいたらしい。
なお、恭文の「トークとまれ」とかいうツッコミは誰もがスルー。
「よくもまぁ、これだけのものを胸に隠していたなぁ」
「うふふ、トラルーになら特別に揉ませてあげてもいいけど?」
「ヤるならイテンとの3Pでね」
「それはそれで大丈夫なの?」
「ビコナが混ざった3Pを寧ろ歓迎していたような子だから、大丈夫でしょ」
もちろん、3Pプレイの詳しい経緯は語れない。
あくまでも、この作品は全年齢なのだ。伏字が多くなろうとも。
ていうか、僕、イテン、スリアの3Pって、青系統の色ばっかり使う絵になりそうだ。
少なくとも、絵の具には優しくない。
「何勝手に和んでんの。今の問題は、僕がスリアに追われているってことでしょうが。
寧ろトラウマ持ちなら警戒の1つぐらいしてよ。僕だけ哀れみたいじゃないか」
「まぁ、ここまで追い詰められてしまったら、ある意味で諦めてしまえばいい。
出入り口は1つ、その前にエロリスト、残る男は片や追われる身、片や快楽を知った身。
だったら、逃げ切れるワケないわな」
《確かに、うちのマスターがスリアさんによって快楽を感じていた時の状況に似てますね。
大きな相違点としては、ターゲットである恭文さんが未だ自由の身であるということですか》
「味見されてしまうがいいさ……フェイトに愛を誓いながら」
「それはそれでどうしろと!?」
どうすることもないよ。観念しろってことさ。
冷たい意見でしょ?人ってね、一線を超えると諦めが良くなるんだ。
「もう逃げられないわよ。さぁ、おとなしく私の手で導かれる快楽にオボッ!」
「ここにいたのか……恭文、大丈夫だった?」
「……タイミングにツッコむべき?リティの手刀の威力にツッコむべき?」
完全にスリアの不意をつく形で、リティの手刀……というか、当て身が炸裂していた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース19・プテラ:頭に羽という出で立ちのススメ―
「ねぇエリオくん」
「どうしたの?」
「頭に羽があるのって、どんな気分なのかな?」
えっと……返答に困るのもそうなんだけど…。
「なんでまた、そんな疑問を?」
「だって、トラルーさんは暴走した時に頭に光の羽が生えたでしょ?
そうでなくてもイグナイテッドを頭にかぶせて、似たようなシルエットになってるし」
「言われてみれば確かに」
「それにね?リティさんも頭のメダルはタカで羽の装飾があるし、
ステンスさんもそうだし、レクセさんなんてエクスターナルフィンを展開したら頭に翼があるし」
「なるほど」
「ミス○ィックデー○スハイ○ーなんて頭にプロペラだし、ゴー○ス○ーズのラビットもアニマルモードがそれだし」
「なんかたとえが偏ってるよ?」
誰に影響されちゃったんだろう…。キャロのたとえも全部わかるけど…。
それで、頭に羽があるのはどんな気分なのかってことだよね?
でも、今当事者いないし…。
「頭に羽を持つ個体か……確かに、宇宙広しといえど珍しい部類ではあるな」
「やはりそう思いますか」
「俺のような体格のヤツらでさえ、珍しい部類であることには変わりないからな。
動物の耳ならまだ長いということで羽替わりにできそうなものだが、純粋に羽となるとそうそういないものだ」
カナヤゴさんなら、その手の人たちも結構知っていると思ったんですけど。
「人脈なら、トラルーも詳しい筈だ。
何しろ、千年以上は単身で宇宙を旅し続けているからな」
「その経験によって、多くの人と知り合っているから、
自然と心当たりも見つかる……ということですか?」
「俺はカフェ運営での人脈だが、トラルーは旅や冒険による人脈だ。
よりバラエティ豊かな人材が隠れているだろう」
「肝心の刀をいきなり忘れてきたマキトさんみたいな?」
確かに、カナヤゴさんの言うとおりかも。
特にトラルーさんやスターさんに尋ねたら、それこそキャロが引き合いに出したマキトさんみたいな人がいっぱいいそうだし。
頭に羽を持つ人っていうのも、結構知ってそう。
「勝手に知恵袋扱いすな」
「どこから出てきたんですか!!」
「失礼な、カウンター席の端っこにずっといたじゃないか」
「わざわざ端っこですか」
ていうか、なんでそんな深緑色のパーカー着てるんですか。
大きめのサイズってせいもあるけど、トラルーだって気づかなかったんだけど。
「そーかそーか、気づかなかったか。
ちっ、踊る大○査線は知らないか…。
僕だって、ファッションの1つや2つくらい楽しみたいっての。どこぞの改造柔道着依存症と一緒にすんな」
「あ、それあずささんが言ってましたね。ジュンイチさんがあの服以外にオシャレしないって」
「依存症って……」
「暗器とか仕込めるからって、それしか選ばないんだと。バカめ。
本当の芸達者ってのは、どんな外観の服にだって仕掛けを仕込めることをいうのさ。
昨今のくノ一とかホント謎だよね。どこに仕込んでるんだって」
仕込むことにはツッコまないんだ…?
「だってさ、アイツは末期だから修正できんだろ。
それよか、頭に羽が生えた人ね。
僕も案外知らないなぁ。まぁ、宇宙だけでなく次元世界っていうとらえ方もできるし、それこそキリがないじゃん。
考えるだけ無駄ってね」
そうサラッと言い切って、手元にあったドリンクを一口。
この前に来た時はコーヒーだったけど、今回は違う?
「トラルーは生粋のレモンティー好きだからな。
気まぐれでコーヒーを飲むこともあるが、大抵はレモンティーだ。
しかも、最近は味の違いにまで気づき始めた」
「個人的には、リ○トンがイチバンだね。主張がハッキリしていながら後を引かない甘さ。
それでいてしつこくない。他の会社のじゃそうもいかないよ」
そんなに飲んでたんだ…。
確かに、フリーの時間の時によく片手に持ってたくらいよく見かけたけど、そこまでだなんて。
リプ○ン以外にはお気に入りはないの?
「エリオくん、なんか本題が…」
「あ、ごめん」
「今思い出したけど、あとはラー○フォンとかいるね。
ケ○ロ○曹のア○サも、協力者が必要とはいえ頭に羽をはやしているようなもんだ。
イ○フィ○ット・ス○ラ○スのシ○バリ○・ゴ○ペルも、覚醒時はエネルギーの羽をはやしていた。
あとは……モンスターには意外と多いんじゃないかな?名前は出さないけれど」
「それで、トラルーさん的にはどうなんですか?頭に羽があるのって」
あ、キャロが切り込んできた。トラルーはどう返してくるんだろ…。
「結構便利だよ?大きければ飛べるし、小さくてもオシャレだし。
あとは人によるけど腕みたいに使うこともできるし、その気になれば羽でビンタとかできるし。
寝る時に邪魔なくらいかな?僕はイグナイテッドを外せば済むけど。
背中や腰じゃなくて頭にあるっていうのは、一種の新たな個性だとは思わないか?
新しい価値観の誕生だよ、気分はまさにハッピィバースデー」
「か、価値観……ですか?」
「そうだよ。背中や腰というのは、まぁそれでも普通に個性となりうる。
けど、ポピュラーだから逆に没個性だ。なら、いっそのこと頭とか斬新じゃないか?
個人的には腕に羽っていうのもバッチコイさ」
「じゃあ、足に羽というのはどうです?スバルさんのギア・セカンドとか」
「ふむ、アレもいいものだ。靴のデザインに羽をあしらう例もある。いいものだ」
結構マトモな答えが返ってきたよ?
オチはつきそうにないかな。
「ちなみに僕の場合、頭に羽があることで多芸になった。
そうだね、たとえば……ゲロビ撃てるよ」
「ゲロビ?」
「ゲロビーム。ゲロみたいに極太かつ長射程のビームのことをいう。多分。
やり方は簡単。ヘッドウィングモードの状態でマルチフェザーを前ならえの状態にして、エネルギーを充填。
この時、羽と羽の間ぐらいの位置に集中させるのがポイントだ。
エネルギーを溜めながらターゲットを見定めて……くたばれやゴミクズやろぉぉぉ!!」
『ひゃあああああああああ!?』
本当に物凄いビームが出たぁぁ!!
ていうか今、誰狙ったの!?運よく開けっ放しだった扉に撃っちゃったけど!?
僕もキャロもビックリしちゃったよ!
「お……オレが、何した……!?」
「うるせぇよ盗撮野郎」
《マスター、ナイスコントロール》
ビームが撃たれた方向にいたのは、真っ黒焦げになっていたジュンイチさん。
えっと……ごめんなさい、ジュンイチさんが撃たれる理由の心当たりがありすぎて困るんですが…。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース20・トリケラ:ネガタロス、一世一代の大発明―
「傑作だ……これは大いに利用できそうだ……」
「へぇ……完成したのか」
ネガタロスが珍しく機材を提供してほしいというので、
メルクリウスのジャンクパーツ保管庫に適当に招待してやる。
アンテナやらバッテリーボックスやらインチキ外人が売り込んでそうなジュークボックスやら、いろいろかっさらっていった。
何を作るつもりなのやら。そう思ってから1時間後、完成品と思しきものを持ってきたのが今。
「名付けて"毒電波マインダー"だ。
コイツの毒電波を電子制御されている機械に当ててやれば、こちらの意のままに操作できる」
「電子制御されている、ねぇ。それはゼノンみたいな相手でも有効なのかい?」
「それを試す為に、わざわざ連絡して連れてきてもらったワケじゃないか」
《アストラル……なんでこんな話に乗ったんだ》
なんで?決まってるじゃん。
ジャンクパーツの在庫一掃セールをしたかったからだよ。
倉庫が埋まってきたし。
《せめて、売る相手ぐらいは選んでくれ…》
「何を言う、ネガタロスは同盟相手なんだから、ジャンクの1つや2つぐらい売りさばいてもいいだろうに」
《自分のトランステクターを作るとか、そういう道はなかったのか?》
「レリックケースがないからね。人工トランステクターという手もあるけど、ジャンクだけでは組めないね」
パワードスーツ的なシロモノとはいえ、ちゃんとコアパーツは必要。
ジャンクの中に、それをまかなえるようなものはなかったんだ。
「では、少しばかり試させてもらうぞ。
毒電波マインダー、起動」
なんか某64のコントローラーにパラボラアンテナつけたみたいな形状をした毒電波マインダーから、
いかにも毒電波って感じの紫の波紋が放たれ、ゼノンへ。
見かけは変化ないね……まぁ当然だろうけど。
「ゼノン、どうだい?」
《……今のところ、異常らしきことは…》
「アイーン」
《!?》
あ、ゼノンがアイーンした。
アレだ、志○けんのお得意芸だよ。ロボがやるとなんかシュールだな。
持ち主のネガタロスのセリフで操作できるのか。
スティックとボタンは飾りか。
《お、おい……》
「コマネチ」
《っ!?》
「あ、いのちっ」
《〜!?》
「シェーッ」
《おい!?》
「ま゛ーっ」
《いい加減にしろ!!》
おうおう、ゼノンが完全にネガタロスにコントロールされている。
順番にビー○た○し、T○Mのゴ○ゴ、お○松くんのイ○ミ、○崎邦○か。
なんで揃いに揃って古いネタなんだよ。
特に山○については、カットされるネタ第10位になっていたんだけど。某格付けチェックスタッフ調べで。
《ネガタロス、貴様……っ!!》
「まぁそういきりたつな。これだけ自在にコントロールできるとあれば、さぞかし便利だろう。
機動六課の戦力もかなり増えているからな……活用させてもらう。
デバイスも無力化できるしな」
「なるほど、そういう魂胆か」
すごいな。まるでブレ○ンジャックだ。ゼノンの元ネタ的に。
確かに、レルネお手製デバイス組は優秀な個体ばかりだ。味方につければ頼もしい。
それに加えて、たとえば高町なのはのレイジングハートなどもジャックできれば……。
なるほど、確かにいいものだ。
《えぇい、僕にこんなふざけたマネをさせて…。
デビル三銃士にでもやらせればいいだろう!》
「ヤツらは不在だ。第一、連中は機獣であった機械ではないからな。
毒電波マインダーの対象外だ」
「で、手ごろかつネタにできそうなヤツってことでゼノンを選んだと」
《ふざけるな!》
あちゃー、こりゃ本気で怒らせちゃったみたいだ。
まぁ、やることなすこと全部芸人ネタじゃねぇ。
特に○崎の「ま゛ー」とか、意味不明すぎてカット候補にされてたし。
《いくらネガタロスといえど、許しがたい行為というものがだな……!》
「それをキャイーン!のポーズで言われても説得力がないな」
《貴様がやらせているんだろうが!!》
「いつの間に」
ネガタロスの言うとおり、キャイーン!のポーズで言われても説得力はない。
って、だからネタが古いってば。
「せいぜいあがいてみるんだな。検証材料にはなる。
ブレイクゲイザーでも撃ってみ……」
<ATTACK-FUNCTION BRAKE GAZER.>
「あ」
毒電波マインダーの電源は入ったまま。
ついでに顔をマイクに近づけていたまま。
そしてブレイクゲイザーはゼノンのアタックファンクション。
はい、もうわかりましたね?
《……策士、策に溺れるという言葉があったか》
「うん」
方向転換することなく放たれたブレイクゲイザーは、
真っ直ぐにネガタロスを直撃。
ゼノンの引用した言葉が、実に当てはまる事例だった。でもコレ…………ふふふふふ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース21・ティラノ:レクセ流アバレ学習講座―
「ようこそ、レクセ流アバレ学習講座へー!」
「よろしく」
ルアクでーす。
今日は、ちょっと混乱しかけてるメダルの現状を的確に把握する為に、
「とたきま」におけるコアメダルの状況を知りなおそうっていう魂胆で、
レクセを講師役にして学習講座なんてやるんだって。
タイトルコールはリティがやってた。
参加者は、僕、ブライ、ステンス、アラリア。グラティとスリアはショッピングに行っちゃって不在でした。
ステンスが「逃げやがったな」とか言ってたけど、コレ、抜き打ちだよ?
珍しくリティがけしかけたらしいけど。
「じゃあ、早速始めようか。
この世界における俺たちのコアメダルがどういうものか」
「端的に行くぞ。尺が無いからな。
基本的な性質はパラレル元の『仮○ラ○ダー○ーズ』と同様だ。
大きな違いとしては、各コンボに必要最低枚数しかないことが挙げられる」
「オイラたちが今メダルトレイサーに入れてるヤツだけ、なんだろ?」
「そうだ。残りのメダルについては既に存在していない。
よって基本的に各種1枚ずつだが、主殿が使うようにタトバコンボの3枚だけは4枚目がある」
「タカ、トラ、バッタ。しかも、よりにもよってパラレル元と同様に暴走した王が使った3枚。
リティは大量のセルを持ってないから壊れないが、元の方は壊れたな」
もっと簡単にいうと、オー○のコンボを構築するメダルだけが存在してるってこと。
元々存在していた各系統合計10枚の内、コンボに必要な3種1枚ずつ。
それ以外は全部なくなってるんだ。
リティのメダルについてはステンスが解説したとおり。
「主殿は電王でいうところの特異点である為除外するとして、
現時点で我々は自分の系統のメダルが存在しているからこそ、コンボの力を扱い、存在も確立している。
だが、"アレス"予選から確認できたように、紫のメダルによるヤミーの存在も確認されている。
詳しい出現要因は未確定だが、恐竜系以外のメダルを無力化する特殊攻撃がパワーアップしていることも確認された」
「予選でフリジットダガーが消されてしまったように、魔力攻撃さえ無力化してしまっていることですね」
「影響力自体はパラレル元と同等であると思われるが、コアメダルによるパワー供給が顕著である貴様たちの場合、
主殿以上に深刻なダメージになる恐れがある。それこそ、丸一日行動不能になる、とかな」
ひえぇぇぇ……恐ろしい。アラリアが言ってた例が、パワーアップぶりを明確に。
死にはしないだろうけど、くらいたくないなぁ…。
やっぱり、紫に対してはあまりいい感じ、しないかも…。
「いい感じがしなくて結構だ。
所詮我々も、力関係はメダルの優位性に依存している。
爬虫類系のアラリアだけはなんともないようだが、貴様ら他系統のメダルは総じて紫の波動に弱いだろう」
「ちぇーっ、自分がその紫のメダルのヤツだからって威張りやがって」
「その考え、異議ありです!」
『おぉう…』
レクセの自慢話に、さっそくブライが恨み節。ごめん、私も同じこと考えてた。
そこに、何故かアラリアが逆転○判ばりにレクセを指さしてセリフ発動。
振袖とスカートがなびいてカッコいい〜。
「紫の波動が他のメダルを弱らせてしまうなら、
鳥系コアの力で発動するタジャスピナーに恐竜系コアが装填されるなど、まずありえない筈です。
ましてや、原作では7枚全てを装填してギガスキャンを発動させ、戦いの終止符を打ったではありませんか。
優位性があるのは、あくまで変身に影響する時のみです!」
『おぉ〜っ』
「ほう……合流当初、全くメダルを持っていなかった挙句、
そのメダルの持ち主が○○○だったという、劇中○現極まりない顛末だったような貴様がよくもいう……」
「変身者をバッドエンドに導きかねない欠陥品よりはマシですよ。
他のメダルみたいに保管できず、直接変身者の中に入り込んでしまうなんて、私たちからすれば御法度ですよ」
『〜〜…っ!!』
「お、おーい、レクセー?アラリアー?」
あれれ、なんかアラリアとレクセがケンカ腰になっちゃった…。
なんかバチバチって火花散ってるし…。
さすがのリティも困り顔。
でもさ、レクセはともかく、アラリアは……。
「仕方ありませんね、かくなる上は先行公開として…」
「面白い!見せてみろ!」
<プテラ!トリケラ!ティラノ!プットッティラ〜ノザウル〜ス!!>
ちょっと!?
なんでプトティラ起動させてんの!?ガチでやっちゃう気!?
「ご丁寧にメダガブリューも使ってくれるわ!」
「なんでそーなる!?」
ホントに出してるし!振り回してるし!リティまでパニクってるし!
「コアメダル破壊能力は恐竜系コアの特権!
破壊力においても圧倒的優位!違うか!」
「本当に圧倒的なら、原作でグリード倒すのに手こずりませんよ!」
<コブラ!カメ!ワニ!ブラカ〜ワニッ!!>
「おいおい、こっちも本気か…」
うわー!アラリアまで対抗してブラカワニ起動したしー!
本当に先行登場させちゃったよー!
「だが、これは番外編だからな。詳細情報は語れないぞ」
「そんなことは問題ではありません!」
「チッ」
さっき呆れたステンスにツッコまれたけど、即答で一蹴される。
あぁもう、どうやって収拾つけるのコレ?
「ちょっと!ここは六課の訓練所の一角だよ!?
何してるの!?」
「あ、なのはさん」
魔王キターッ!?
「魔王じゃないもんっ!
とにかく!レクセもアラリアも、さっさと変身解除!さもないと、オシオキだよ!?」
『(貴様/貴女)にやられる筋合いはないっ!!』
あ、当の二人にブッ飛ばされた。
とりあえず、レイジングハート起動してバリアジャケット着てたのが幸いだったねー。
完全生身でくらったら、絶対耐えられないから。
「我らの目の前から失せろ!魔王気取りふぜいが!」
「呼んでもいないんですよ!魔王気取りふぜいなんて!」
《《スキャニングチャージ!》》
<ATTACK-FUNCTION BLASTING FREEZER.>
<ATTACK-FUNCTION WARNING RIDE.>
レクセの尻尾状に変形したテイルディバイダーで弾き飛ばされ、
アラリアのワニの顎みたいなオーラをまとった左回し蹴りで弾き飛ばされた。
更にトドメといわんばかりに二人そろってスキャニングチャージ。
必殺技で退場させちゃった。
「……結構、仲はいいんじゃないの?」
「む、そうか?」
「変ですね、さっきまで武力行使上等な勢いで言い争いしていた筈なんですが」
『……まぁ、いいか』
「うん、それでいいよ…」
リティからの言葉で止まったけど、勝手にケンカ腰になっておいて勝手に仲直り。
同じことを同時に口にする辺り、やっぱり仲はいいよね。
あと、リティだけじゃなくて、僕ら全員これでいいと思う。
……ブッ飛ばされた魔王には悪いけどね?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース22・コブラ:藪から蛇ならぬ藪からネタバレ―
「おーい、アコー。アタシにも新聞見せてくれよー」
「うん、いいよ。"アレス"の特集だもんね」
みなさん、はじめまして。
特別に番外編で初登場します。ボクはアコ。新聞をねだってきたのはマジコ。
ボクたちは……
「ごめん、あくまでも番外編だから、詳しく語っちゃイカンのよ」
えー?それじゃ読者のみなさんに伝わらないじゃないか。
まだ名前しか発表してないし。
「ていうか、どうせあと10話ぐらいやったら出てくるんだから」
「その10話の間にどれだけの時間がかかるか考えろっ!」
「でもさー、アタシらって第4クール以降の新レギュラーじゃんよ」
そうだよ。だって、偉い人の中では新レギュラー確定なんだし、今更しぶったって…。
最近の仮面ライダーのネットムービーだって、外観ぐらいは教えてくれるんだよ?
「そりゃ映画にちゃんと出るからだよ。
少なくともマジコは"アレス編"の間は関与のしようがないんだから諦めてよ」
「じゃあアコ」
「姿は結局第4クールからじゃないと出ないからダメっ!」
『ケチー』
さっきからボクとマジコにツッコんでくるのは、仲間のルーラ。
仲間の中では情報屋のポジションなんだ。
ちなみにマジコは魔法使い、ボクは総合リーダー。
しかし、ルーラってその深緑のパーカーが映えるね。どっかの有名な刑事ドラマみたいだよ。
ほら、やってみてよ。レインボーブリッジだっけ?
「レインボーブリッジ、封鎖できません!
……って、何やらせてんだよ!」
「そういうルーラだってノリノリじゃん♪やっぱアタシの舎弟が見込んだ仲間なだけはある!うんうん」
「判定基準が物凄く微妙臭いんだけど」
「どういう意味かなぁ…?」
「泣くな」
だって、マジコがいう舎弟ってボクのことだもん。
つまりルーラはボクのことが微妙だって言いたいんじゃないかい?
そう思うと、なんだかむなしくてかなしくて…。
「悪かった。ツッコミ優先にした僕が悪かった。
だから本当の女の子みたいな泣き顔はやめなさい。元ネタの君の絵に発狂コメントがついてるんだから」
あ、さり気なく女装だってバラしたね?
「…………しまったぁ!!」
「やった、ボクの作戦大当たり!ルーラからネタバレさせてやったよ!」
「さっすが、アタシの舎弟だな!」
あれあれー?これはもしかするとルーラに一泡吹かせたことになるかなー?
ざっくばらんに言うと、ボクは緑色のショートヘアーに金色の瞳、黒主体のノースリーブな上着とスカート。
ちょっとスカートが短い…かな?
マジコは、ピンク色のロングヘアーに赤い瞳。紫主体の服装で、肘から下の振袖、スカート状の服、紫の帽子。
帽子がまたいかにも魔法使いって感じなんだ。あと、帽子の後ろや腰に大きなリボンをつけてる。結構オシャレでしょ?
ルーラは、水色のショートヘアーにコバルトグリーンの瞳、深緑色のパーカー、中には黒の半袖インナーとスパッツ。
実は頭に1本、水色のエクステをつけていたりするんだ。ちょっとピ○ミンっぽいね。
そして、マジコは女の子、ルーラは男の子だけど、実はボクも男の子。正体は……
「ネタバレフィルターッ!!」
「ぶぎゃん!?」
「デカッ!?」
うう、いきなりルーラに顔にフィルターをかけられた。
掃除機のヤツの割に大きいフィルターだなぁ……顔が全部隠れてしまうんだけど。
あぁ、結局、正体についても本編未登場だもんね。これ以上はマズイか。
「でもな、実はアタシらの仲間はまだいるんだぞ?
アタシにアコにルーラ、それに……」
「ネタバレフィルター2ゥーッ!!」
「あべし!」
2もあるんだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース23・カメ:ヤツらにとっての盾の意味―
「はぁ……」
「どうしたんですか、ヒルメ?」
「いつになく落ち込んでいるようだけど」
「あぁ、あなたたちか…」
モノローグとしては初になるな、カナヤゴだ。
ここは俺が経営するカフェ「ヤタノカガミ」のカウンター席。
目の前にいる今日のお客は、現役時代に同僚だったヒルメ、ツクヨミ、タケハヤ。
珍しく、我々だけが一室にいるという状況だ。
それはつまり、他の者には漏らしたくないようなグチを誰かが抱え込んできていることを意味する。
今回はヒルメのようだが。
「まぁ、まずは何か飲みながら落ち着こうか。
何にする?」
「カフェラテ、お願いできるかな。ホットで」
「私はアイスジンジャーティーを」
「ウーロン茶で。アイスでよろしく」
「分かった」
ヒルメがカフェラテ、ツクヨミがジンジャーティー、タケハヤがウーロン茶。
それぞれを手早くこしらえ、彼らの目の前に差し出す。
しかし、タケハヤはとことんウーロン茶だな。仕事場にも1.5リットルのボトルで持ち込んだほどだしな。
「これが1番落ち着くんで」
「そうか」
相変わらず緊迫感だけは感じられそうにない声だが、リラックスしているのだと考えるようにしている。
良くも悪くも、タケハヤの個性だからな。
「さて、ヒルメはどうした?ため息などついて」
「あぁ、実は、ちょっと悩んでいることがあって」
「ほう」
「……アイツらに盾って、本当にいるのかなぁって…」
『?』
盾?
「"アレス"開催の少し前に、オーディーンに新規装備として盾を作ったんだ」
「ビームガーターですね」
「そう。でも、直後の模擬戦早々に不屈のなんたらなアンチクショウに壊される。
それに、偉い人から見せてもらった台本じゃなに?第3クールであと2回も壊されるっていうじゃんか。
オマケに最後に壊れたら、第4クール以降はシステム移植って形でミ○ル○に移された挙句形骸化するし、
使うようになったかと思ったら面積小さすぎて防御効果が低めって。
あんな小さなビームシールドじゃ、殆ど無いのと一緒だよ!ミ○ル○を盾にしてるのと一緒だよ!」
「まぁまぁ…」
そうか……そういえばあったな、台本に。
ビームガーターも、盾として高性能な筈なんだが…。相手と場面に恵まれないということか。
挙句の果てに、とある合体機能の為だけに搭載された上に合体前の状態では使えないと。
……確かに、必要性を考えたくもなるか。
「まぁ、そのオーディーンも第4クール以降は姿を変えつつも盾を持つじゃないか。
ちゃんと盾の有用性が評価されているということだ。疑問はいらない」
「それだけじゃないよ。ていうか、特に問いたいのは六課の面々だよ。
別に物理的な盾がなくたって、バリア系の魔法で全部代用できるんだから。
武装関係のメンテナンスなどを請け負う身としては、小型でもいいから盾を持たなくていいのかと心配で…」
「魔力が無ければ使えないし、結界破壊効果などで貫通されてはどうしようもないですからね。
確かに、物理的な盾も持つに越したことはないのでしょうけど…」
「ザフィーラでさえ、"盾の"守護獣という割には魔法防御だし」
「だろ!?」
俺のフォローとはまた別な方向で問題があったようだ。
ツクヨミやタケハヤも懸念事項にしているようだし、いささか問題か。
実際、ガジェット相手に撃ち合うだけですら、魔導師側の負傷率がかなり高いからな。
もっとも、原因の1つは基本的な使用デバイスが杖型だというせいもあるだろうが。
「近接型ならスピードと威力を重点的に高めることで、
射撃型なら連射性や威力、射程距離などをサポートすることで、相手の攻撃を受けにくくする工夫はなされている。
それにバリアジャケットを身にまとうことで、見た目からは考えづらい防御力もある。
だからこそ、敢えて盾を撤廃しているのだろうが…」
「マスターギガトロンの"支配者の領域"影響下だと、全く意味がなくなるからなぁ」
「フェイトさんに至ってはバリアジャケットですら無いも同然だし。
ソニックなんてなに、あのスク水だかレオタードだかわからない服。
スピードの徹底的な向上の為とはいえ、ボディラインも相まってかなりきわどい服装じゃないか。
同じ超高機動型といっても、トラルーの方がよっぽど健全的な上に効率的だよ。守るとこ守ってるよ。
見た目的な意味で」
こちらの世界での本人は恥ずかしがっているようだが、確かにあの服装はきわどいな。
ほぼ水着ともいえるな。男子メンバー、特にエリオ辺りは陰で苦悩しているに違いない。青少年としての苦悩を。
「アレか、この世界では寧ろ盾は邪魔ってか?
専守防衛の概念なんざありませんてか。随分と攻撃的な世界だな!」
「酔ってもいないのにエキサイトしてる…」
「相当、彼女の心に影を落としているのでしょうか」
「近接系のスタイルを持つ者は数あれど、盾らしい盾を持つ者はまずいないからな」
ただ、その傾向については公式がソレなのでどうにもできない。
もっとも、本格的な盾まで持ち出したら、それこそ魔法少女の概念が消え失せるしな。
仕方ないということで諦めてほしい。
「せめて胸ぐらいの大きさのバックラーとかさぁ…」
「役割という意味では恭文さんのジガンスクードがそれに当たりますが」
「魔法以外の戦い方が満ちている世界なのに、他のメンバーの防御概念の無さといったら…」
「ジュンイチさんも盾は持っていないけど」
「あの人は比較対象にならないからいいよ」
『あぁ……』
確かに、ジュンイチを比較対象にするというのは間違いだというが、もはや定説だな。
だが納得できてしまうあたり、彼の普段からの無双っぷりがいかに強烈かがうかがい知れる。
盾などいらないほどに。
「やっぱり、魔導師組には盾はいらないかなぁ…。
あと、オーディーンは例外にしても、彼らって片手が空いていても盾を持たないよね。
ハカイオー絶斗とかは装備しやすそうなんだけど」
ふむ、いわれてみれば確かに。
もっとも、ヒルメが言ったハカイオーの場合は元から防御力が高い上に武器が防具にもなるからな。
そう考えると、ハンマー系のゼノンやナイトメアか。
「フェンリルは両手銃だから実質上無理だし、パンドラはダガーの二刀流だし。
ゼノンといいナイトメアといい、片手でハンマーを振り回す割には盾を使わない」
遠心力の概念もあるし、扱いやすくするには両手が必要なのだろう。
特にゼノンについては、刃の数が4枚ということもあって重い部類だからな。
ナイトメアの武器は全体的にやや重いが、細身のフレームであることを考えればちょうどいいのだろう。
話によれば、あの系統のフレームでは最大限にパワー出力を高めていると聞く。
「考えれば考えるほど、盾を持つ必要性が分からなくなるなぁ…」
「バトルスタイルのせいだと思いますが」
「……あ」
彼女の一言で、ヒルメが間の抜けた声を上げた。
ツクヨミ……なぜそれにもっと早く気づかなかった。
わざわざバトルスタイルに合わない装備をする必要などないだろうに。
つまり…だ。盾を持たないのは、あくまでもバトルスタイルの都合だ。
「……すいません、カフェラテおかわり」
「分かった」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース24・ワニ:アラリアの深すぎ占い―
「おや、リティ様。少し見ていきませんか」
「…………何、してるの?」
「占い師というヤツです。我流ですけど」
「占いかどうかもわからないけどね、俺としては」
香り控えめな線香を焚いて、簡素な机の上にテーブルクロスをかけ、その上に水晶玉をおいて。
その元からのファッションも相まって、占い師……みたいな感じを漂わせるアラリア。
アラリアに未来予知とかの能力はない筈だけど…?
「そこは認めましょう。ここだけの話、適当に切り貼りした映像を水晶玉に映すだけですから」
「完全にインチキじゃないか!」
「失礼な。バリエーション豊富、その人の雰囲気の察知、そして巧妙過ぎて誰も気づかないトリックで…」
「だから、それがインチキなんだってば」
毒吐きキャラの次はインチキ占い師だなんて…。
誰に影響されればそんな趣味を持つようになるんだか…。
「目標は柾木ジュンイチをだまして一泡吹かせることです」
「うん、まずできそうにないから諦めな?」
ジュンイチさんは寧ろみんなをだます側なんだから、できるワケないって。
とりあえず、自分からインチキの仕掛けをバラすようじゃ無理だと思う。
まぁ、やられる方からすれば迷惑極まりないから、マネしなくていいけどさ。ていうかしないでお願いだから。
「それよりもリティ様、だまされたと思って1回立ち会ってみませんか。
お代はとりませんから」
「寧ろお金取る気だったの!?」
「まぁまぁ、お気になさらず。どんなテーマで見てみます?
今なら特別、第31話〜第35話までの中から特別にネタバレしてさしあげますよ」
「しかもただの情報漏えい!?」
なんでそんな情報仕入れているの!?
台本を見たワケでもあるまいし!
「台本どころか以後のお話のあらすじ的なデータさえ見ていますからね。
ある意味でネタバレもやりたい放題ですよ」
「いったい、何してるの…」
どうして、そんなことができたんだか…。
「偉い人が勤務時間中の暇つぶしで書き連ねたら、
いつの間にか100話以降の部分まで書いてしまったという伝説付き!
まさに禁断の情報解禁コーナーですよ。番外編ですからね!」
「なんかいろいろと聞き捨てならない言葉が出てきたぞ!?」
何があったんだろ…。アラリアはもちろん、偉い人も。
「……えっと…じゃあ、1つだけ聞いてみるね。
"アレス"の決勝、ファイナルバトルだっけ。アレに出る人っていうのは……ネタバレされるの?」
「さすがはリティ様、やはり底知れぬ欲望の片鱗がうかがえますね。
お任せあれ。この水晶玉に映してみせましょう。
……えっと、確か"アレス"決勝の映像データのチップは…。
さぁ、少しずつ見えてきますよ〜…」
今、絶対にデータチップ探してたでしょ。水晶にかざしてない左手がゴソゴソしてたよ。
「ほぉ〜ら、見えてきました…」
「……あ、ホントだ。お、恭文が出てる。それにトラルーもいるし……うわ、ディフィカルター12からも?
キャプテン強いなぁ〜…………この赤い人、誰!?」
「今、時空管理局の本局でエージェントやっていますね。画面の前のみなさんにはわかりましたか?」
「う〜ん、会ったことないよなぁ、赤い人とは…。ていうか、本編でいたっけ?」
「裏方ポジションにいますからねぇ。ですが、読み返せば絶対見つかりますよ」
い、いるのか、そんな人が。うわー、誰だろう!
「おっと、尺がもうありませんね。
アラリアのネタバレ占いのコーナー、また機会があればお会いしましょう〜!」
「それもう占いじゃないって!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース25・カンガルー:"アレス"会場の舞台裏―
「はいはーい!整理券を持ってない人は下がってー!」
「でないと撃ち落すよー」
「もしくはぶたれるぞー?」
『そんな殺生なっ!?』
どうもみなさん、はじめまして。
自分、デルポイ大陸の闘技場を切り盛りする身分にある、レリィっていいます。
闘技場とは、"アレス"の本戦トーナメント及びファイナルバトルの会場となる場所さ。
もっとも、通常営業なら参加者フリーのバトル大会開いてるけどな。
あ、自分は赤い丸みを帯びた髪の毛にオレンジの瞳、
サックスブルーのボディスーツの上にオレンジのジャケットと黒い短パンってことで覚えてくれれば。
「ほらほら、整理券売り場はあっちだってばっ」
一方で整理券売り場を教えているのは、自分の同僚のシアン。
長いアホ毛を前後に1本ずつ備えた、水色の髪が特徴的。後ろ側は根元で結っている。瞳も水色。
あとは半袖短パン一体型の黒いボディスーツに、明るい黄色のリボンと腰ローブというシンプルな服装。
実は彼女もルナ族だけど、一族伝統の服装じゃない珍しい例だ。
「整理券なしで受付きたら……怒るから」
もう一方で、シアンとはまた違うベクトルで客の群れをけん制しているのは、もう一人の同僚のヘイル。
左右に張り出したようなシルエットと1本のアホ毛を持つグレーの髪、オレンジの瞳。
服装はライン、胸のアクセ、肘から下の振袖がオレンジの、アーツバトル連盟所属のルナ族共通衣装。
彼女もルナ族。でもリリエンによると、別にシアンが他のルナ族と価値観が違っているワケではないらしい。
「さぁさぁ、本戦進出チームもそろそろ決まるから、整理券買うなら今のうちだぞー!」
自分、シアン、ヘイルの3人で闘技場の切り盛りをしているワケなんだが、
さすがに"アレス"のようなお祭りごとにもなると忙しさが尋常じゃない。
そのおかげで……
「こっちだって予選の中継見たいってのに……ブツブツ……」
ヘイルが愚痴ってくれたような有様になっていると。
まぁ、だからといって仕事の手を抜かないのはありがたいことだ。
同僚としても、人としても。
自分らデルポイ生まれデルポイ育ちの精霊だけど。
「おい!お前横入りすんじゃねぇよ!」
「んだと!?おめぇがとろいだけじゃねーか!」
「はぁ!?そういうてめーがとろくてはじかれただけだろ!?なにいってんだよバカ!」
「よく見れば、俺のこと押しのけたヤツじゃねぇか!バカはてめぇだよ!」
「やるってんならやってやるぜ!?」
「上等だコラ!」
あーあー。始まった。
お祭りごとに限らず、闘技場のバトルを見に来る客の中には、あんなガラの悪い連中もいるんだ。
当然、受付もする自分らはそんな連中とも向き合わなきゃならない。
ただし、デルポイ大陸には種族概念を超越した、単純にして唯一無二の掟がある。
それはズバリ……"弱肉強食"だ。
「モメるなら外でやってくれる?
他の客の迷惑だし、つっかえちゃうし」
『受付でちっこいお嬢ちゃんはすっこんでな!』
「むっかーっ!あったまきた!そーゆー悪いヤツは退場だよ!」
<ATTACK-FUNCTION HUNTING GODDESS.>
「あーあ、バカな客」
「まぁそういうな」
事態の収拾に乗り出したけど心外な一言で一蹴されてしまったシアン。
そう、闘技場を切り盛りするからには自分らも上級以上のクラスに君臨する一端のファイター。
ナメてかかられちゃ、かえって火をつけてしまうようなもんだ。
というワケで、時間も混雑っぷりも押しているので早急に退場させる為か、いきなり必殺技。
シアンの十八番、その名も"ハンティングガッデス"だ。
炸裂式の誘導弾で、狙った相手だけを撃ち抜くことができるのだ。しかもホーミング機能付き。
で、ブッ飛ばされる光景を見てヘイルがため息交じりに漏らすが、なだめておく。
「さぁ、さっきの客みたいな目に遭いたくなければ、おとなしく整理券売場に並ぶことだ。
このデルポイにおける唯一無二の掟を、忘れたワケじゃないだろう?」
自分のこの言葉で、一部ヒートアップしていた客もおとなしくなった。
言い方とかやり口とかはアレだが、分からせるには見せしめも必要なのだ。
え、なんでデルポイでは弱肉強食を国民的ルールとして強調してるのかって?
それは、本編第4クール以降で誰かが説明してくれるだろう。
「だよね。台本によれば、第4クール以降はデルポイ大陸も主な舞台になるし」
「ホントだー。第4クールの台本にそんなことが書いてあるよー」
「ほほう、さすが自分の同僚。台本による予習にも余念がないな!」
台本があるって、いいなぁ。
おかげで、少し暇を見て眺めるだけでも後のことを連想しやすいしな。
人生エンジョイするにゃあ、多少の予備知識は必要なんだ。台本はともかくとしてな。
「……あなたたち、いくらなんでも台本台本って言い過ぎですよ。
お願いですからメタ発言は控えてくださいよ。腐っても連盟の一員なんですから」
「いやぁ、失敬失敬。以後、気をつけよう。ここが番外編なだけだからな」
「まったく……お願いしますよ。本編でそんなこと言ったら、機密保持のルールに抵触しますからね?」
ふぅむ、さすがにリリエン殿に注意されてしまった。
さすがは連盟ナンバー2にして最強の中間管理職。
「誰が中間管理職ですか、誰が」
「実質上、パレサ殿のお目付け役はあなたしかいないだろうに」
「お目付け役ですか!?」
え、違うのか?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ケース26・パンダ:先行公開!トランステクターを手にするのは、だぁれ?―
えー、こちらはブレイカーベースの特設スペース。
とはいっても、ぶっちゃけ開発室だけど。
ここから先は、画面の前のみなさんも少し気にしているかもしれないトランステクター保有の可能性。
それが誰に対してあるのか、そしてどんなものになりそうなのか、このミソギがこぉ〜っそりとレポートしてみたいと思います。
実は僕、アーツバトル連盟の審判団であると同時に、諜報部でもあるんですよ。
本編でもその一面が活かせるといいですね。
教育・厚生施設として使われることになったマックスフリゲートから移されたトランステクターたちが並んでいます。
デプスマリナー、スラッシュウルフ、エリアルファイター、ガードフローターまでありますねぇ。
いわゆる柾木一門が保有しているトランステクターがあるワケですが、今回は耳寄りな情報を入手いたしました。
なんと、あの人型パワードデバイスを多数生み出したレルネさんが開発した、新型トランステクターが調整の為にお目見えになるとか。
どうやら、トランステクターに幾分詳しい柾木霞澄さんや、開発権威であるマグナさんの意見を伺いたいようです。
おっと、搬送されてくる機影が見えましたね。では、光学迷彩で隠れま〜す。
「これが、レルネの方で開発しているトランステクターね。
3機……のようだけど」
「はい、トラルーたま達から預かった2つ分に加え、偶然発見した1つを加えた合計3機。
いずれも試験稼働寸前のところまではいきましたが、安定しているかどうかのシステム面のチェックをいただきたく」
「じゃあ、さっそく見せてもらっていい?」
「もちろんです」
3機ですか…。同時に開発されていたとなると、なんとなく合体を連想してしまいますね。
さて、その風貌やいかに。
「まずは、スターたま専用機として開発した"スカイミラー"です。
こちらは更に3機のサポートマシンと合体してヘッドオンすることで"スカイファントム"になります。
もちろん、スターたまに合わせて飛行能力あり、格闘戦主体の設計です」
「3機のサポートマシン…。そっちはできてるの?」
「えぇ。システムの最終調整中ですが、それさえ済めばすぐにでも」
まずライトを当てられたのは、黒主体のカラーリングが施されたステルス爆撃機。
スターさんの背中にあるものとは違い、スッキリしたフォルムになっていますが、面影は見えますね。
ですが、ヘッドオンには更に3機のサポートマシンが必要、と。これは整備効率を高めた設計でしょうか。
万が一どこかが破損しても、予備を投入することで復帰できる、とか。
「現在、基本の3機とジョイントを同一規格にした、拡張タイプも製作中です。
状況に応じて装備を切り替えられるようになっています」
「なるほどね。ロボットものの王道をいっているわね。特にスターくんの中の人的な意味で」
「合体システムの元ネタが二重になってますからねー」
どうやら拡張性を高める設計だったようです。
これはバリエーションの出現が楽しみですね〜。
それにしても、合体システムはちょうどマ○トカ○ザーと○オガイ○ーを足して2で割った感じですね。
ひとえにスターさんの中の人の影響でしょうか。霞澄さんが語る通り。
「もう1つは、イテンたま専用機"デプスソナー"です。
イテンたまのヘッドオンによる変形で"デプスウェイバー"になります。
こちらはイレインさんから提供していただいたセインさんのトランステクターの設計データを参考にしつつ、
イテンたまのバトルスタイルを考慮した設計にさせていただいています」
「確かに、デプスフロートやデプスマリナーの面影があるわね。それって…」
「イテンたまがセインさんと同じタイプであることを考慮しています」
なるほど、イテンさんのバトルスタイルや適正を考慮した結果、似たような機体になったと。
セインさんの登録データにあったデプスフロートとシルエットが似ています。
おそらく、ヘッドオン形態もゴッドオン形態のデプスダイバーと似たシルエットになるのでしょう。
「主な相違点としては、ロボットモード時に両肩のシールドとなる耐圧殻や推進ユニットに装甲強度を集中。
更に推進ユニットことスクリューポッドも分割しての着脱が可能で、実は耐圧殻とスクリューポッドは後付け式。
それらと交換する形で装備できる換装パーツも試作中です」
合体はないようですが、どうやら換装可能という点で共通項があるようです。
これは実に拡張性の高い機体が並び立ちそうですね。
どうやら、換装パーツの製作は間に合っていないようですが、期待していいでしょう。
「さて……残りの1機が少し大きいわね」
「こちらは多段変形機構を搭載していますので」
「なるほど。で、名前は?誰が使う予定なの?」
「こちらは"ステーレス"。あずささんに提供する予定で調整中です。
多段変形機構も、元々は彼女のスタイルに合わせてのものですので」
……これは、装甲車型でしょうか。その割には、装甲版にいくつもラインがありますが。
フルドライブモードの際に装甲が展開する関係……だけでもなさそうです。
それに、装甲車型とはいっても、マスターコンボイさんとはまた違った形状ですし。
おそらく、変形機構の関係でそうなっているのでしょう。
「武装のチューニングも大体終わっていますし、
あずささんは器用ですから、どの装備も問題なく使いこなしてくれるでしょう」
「ふむふむ……射撃形態の武器がライフルである点と、近接形態の武器がダガーであることが気がかりかしら。
デバイスの関係上、あの子の得意武器は長柄武器なんだけども」
「ライフルについてはイカヅチのタイラントスマッシャーのノウハウを応用していただければ。
ダガーは……レッコウをハンドアックスで使うのと同程度のリーチですね」
変形することによって、武器も大きく変わるようです。
少なくとも、ライフルとダガーという2つが分かりました。遠近両方に対応しているようですね。
それに、あずささんが使うとなれば、おそらく彼女のデバイスである四神と連動すると見ていいでしょう。
話から考えるに、ロボットモードが複数存在するということですかね。
これはこれは、かなりのスクープですよ?
いきなり3人分のトランステクター情報が手に入りましたからね。
これを諜報部に持ち替えれば、実にいいネタとなるでしょう。
予告新聞の作成にも実に力が入ることでしょう!
《予告新聞でございますか……アーツバトル連盟も粋なものを作っているんですねぇ…》
「そ、そうなんですよ〜、あははは〜……」
何やら首筋に殺気。なんか鋭いものを当てられている気が。
いや待ちましょう落ち着きましょうミソギさん、僕は連盟特性チューンナップ済みの光学迷彩でカモフラージュ中。
完全に周囲の景色に溶け込み、かつ柱の陰という移動経路からも外れた場所で隠密撮影。
誰かとぶつかってしまうなどというハプニングも起きず、現に一切衝撃はなかった。さっきまで。
《おやおや、光学迷彩を使っていながらその欠点に気づいていないとは…。
ならば特別に教えてさしあげましょう。光学迷彩は、熱源までは隠せないのですよ。どうしても》
「えっと……あなたはどちら様で……」
《申し遅れました。私は創主レルネの専属秘書、プロトと申します。
今回は創主レルネのお付きということで来たのですが、とんだ曲者がいましたねぇ。
よもやアーツバトル連盟からの無断取材とは》
「おかしいですね〜、誰かの見間違いでは?」
《そうでしょうか?私のメインカメラは何の変哲もありませんが、見据えてますよ?
アーツバトル連盟、審判団及び諜報部所属、ミソギさんのお姿をバッチリと》
え、そんなバカないじぇりあ。
なんで光学迷彩使っている筈なのに僕の姿が見えているんですか。
仮に熱源を探知されてしまったのだとしても、視覚でとらえるのは不可能の筈…。
ましてや、僕の名前や素性を明かすデータなんて……
《これでお分かりですか?》
「……ほぉぉぉぇぇぇぁぁぁぉぇぁぇぁおぉぁぁぁぁ」
目の前に差し出されたのは、ショップで売っている普通の鏡。
そこには、バッチリ僕の顔が。光学迷彩が解けてる!?
まさか!
「…………バッテリー切れですかぁぁぁぁぁぁぁ」
《では、詳しいことは地下倉庫で聞きます。かつ丼ぐらいは出しますよ》
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―
ステンス「今回もやるのか」
リティ「やるんだって。まぁ、語るネタならまだあるだろうし」
ステンス「仕方ないな。今回は尺が長いらしいから、"オーメダルトレイサー"について教えてやろう」
リティ「他のコーナーで散々尺が無いって言われてたのって、まさか…」
ステンス「オーメダルトレイサーは、オレたちパラレルオーズの共通装備だ。
基本的な部分はオーズドライバーと変わらず、メダルを装填するベルト、
その左側に簡易型のメダル保管庫であるオーカテドラル、右側にメダルをスキャンするオースキャナー。
本体はオースキャナーだが、分類上はバリアジャケット式にあたる。
メダルに応じてバリアジャケットや武装が展開されるが、バリアジャケットは私服としても利用している。
スキャン前と後の大きな違いは、腕や足の武装の有無、胸のオーラングサークルだな。
メダルをスキャンして起動させることで、武装が新たに転送装着され、オーラングサークルも絵柄が出て立体的になる。
逆に起動前はバリアジャケットだけで、オーラングサークルも薄い簡素なものになっているから、判別は簡単だ。
リティのものは特に名前がないが、オレたちコンボ組はそれぞれのコンボと同じ名前がついてる。
理由は、アイツがオレたちの中で唯一、他系統のメダルを組み合わせた亜種形態に変身できることと、
タトバ以外のコンボも使えることだ。もっとも、タトバ以外は長時間使用するとぶっ倒れるけどな。
ベルト部分のラインにも違いがあって、リティのヤツは水色だが、コンボ組はコンボに応じた色になっている。
識別できると同時に、そのコンボしか使えないってことにもなる。
アラリアはそれ以外に、何かしらリミッターがかかる仕組みがあるかもしれないって言ってたなぁ」
リティ「俺にはなくて、ステンスたちにはあるリミッター?」
ステンス「リティがコンボ使ってぶっ倒れるのは、そのリミッターがなくなるせいかもなぁ」
リティ「では、本編もお楽しみください!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
次回、ではなく、次クール予告!
トラルー「えー、第4クールからは物語の舞台がデルポイに移ります!
でもミッドでも騒動が起きます!主にプレダコンズとデビル三銃士のせいで!」
スター「新たな敵"夢魔獣"が襲い掛かるらしいな」
トラルー「デルポイ大陸の方では、大陸に元から住んでいる珍妙なモンスターたちが物語にアクセントを。
更に、デルポイにおける属性概念なんかも出てくるよ」
イテン「魔導師やブレイカーともまた違うところがあるんだって。気になるねー」
トラルー「極めつけに、第4クールからは新たなキーアイテムも出現。
しかし、その存在を六課メンバーに伝えるのは、ある意味で予想外な黒いアイツらしい」
ビコナ「黒いアイツとな?黒いヤツって意外といるような…」
トラルー「実は"アレス"予選前からちゃっかり絡んできてるよ。
一方で、新レギュラーは敵じゃないけど管理局とはつるまない!」
アコ「どんな活躍をするのか、楽しみに待っててね!マジコや未だ語られない仲間も出るし!」
トラルー「第3クールも折り返し地点、"アレス"も予選が終わるところ。
誰が勝ち進んでいくのか、栄光をつかみ取るのは誰か、そして本当にネガショッカーはおとなしいままなのか?
いろいろと考えながらお待ちくださいませ〜。
2013年も、"とある旅人の気まぐれな日常"をよろしくお願いいたします!」
〜続報を、待て〜
あとがき
年末年始のお祭りムードにあやかって、やってみました番外編。
通常のストーリー形式ではなく、26のミニコーナーの集合体みたいにしてみました。
コーナーごとのタイトルのつけ方で、この話のスタイルが何をもとにしたのかはわかると思います。面白くてやりたくなったんです(苦笑)
時系列ガン無視でやった挙句、本編未登場キャラまで出てきましたが、もちろん本編にも登場します。
特にケース22〜26で登場した連中については、本編第30話以降で登場させることが確定しているメンツです。
これぞまさにネタバレのバーゲンセールッ!
本当は元旦辺りにはお届けしたかったんですが。執筆が早いコルタタさんは本当にすごいですね…。
自分もペースを上げたいところですが、1話ごとのボリュームが凄まじい第3クール中は無理かも(´・ω・`)
余談ですが、スタイルの候補としては「絶対に笑ってはいけない」シリーズも考えていました。
毎年本気で大爆笑させていただいているだけに、その内書いてみたいですね。
それでは、今年もこの「とたきま」と放浪人テンクウをよろしくお願いしますm(_ _)m
管理人感想
放浪人テンクウさんからいただきました!
短編集ということでいろんなものが大盤振る舞い。ネガタロスまで何してんの(爆)。
まぁ、話のスタイルが違うだけでみんないつも通りなんですが……ウチの馬鹿息子含めて。
ともあれ今年もお互いがんばりましょう!