ルーラ「さて、2013年版の年末年始番外編のお時間です」


  アコ「今年度もしっかりやるんだね…」


 ルーラ「前年度は26個のコアメダルにちなんだショートストーリー集だったワケだけど、

     今回は1本モノなストーリーでお送りします」


  アコ「それは楽しみだね。早速なんだけど、せめてボクやマジコは出られるようになっているのかい?」


 ルーラ「ご心配なく。それどころか、ルストやクラッズまで先行公開扱い?で登場するから」


  アコ「そ、そうなんだ、良かっt」


 ルーラ「ただし、本編への本格参戦前になってしまった為、各々の尺については一切保障できません♪」


  アコ「よろしくなかった!?」


















































「とある魔導師と守護者と機動六課の日常」異聞録






「とある旅人の気まぐれな日常」






番外編2013「緊急ミッション・情報屋追跡」



















































 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプター01:ここから始まった ―




 「あーもー!あーもー!ぁあーもぉーっ!!」


 「いきなりうるさいよっ!」








 イテンのモンモンとしすぎる故の?叫びに、恭文がついにキレた。まぁ、気持ちはわかる。

 両方な?

 だからフォローを入れようと、このスターさんがひと肌脱ぐワケだよ。








 「まぁ落ち着けや恭の字」


 「何その呼び方」


 「トラルーが行方不明になってから、こっちでもネガショッカーとのドンパチで捜索どころじゃなかっただろ?」


 「別に君ら活躍しt」


 本家とまコンに出れないオレらへのあてつけかお前!?」


 「す、すいません」


 「……でだな?イテン的には一刻も早くトラルーに再会してロケットダイブハグハグしたいんだよ。

  その衝動が暴走寸前なんだよ。愛し合ってからこんなに別行動状態になったことはないからな」


 《未練がましいですね》


 「アルトアイゼンはアルトアイゼンで勝手に失恋扱いすんなよ…」


 《そうだぞアルトアイゼン。恋する乙女の馬鹿力をもってすれば、たとえアルトアイゼンといえど粉微塵だろう》


 「バルゴラは何かあったのか…?」


 《大したことではないのだが、恋する乙女街道まっしぐらなクレア嬢に握り潰されかけたことがあってな》


 「お、おう」








 メタい挙げ足取りはメタい叫びで黙らせる。トラルーもやりそうな主砲…じゃない、手法だぜ。

 しっかし、アルトアイゼンにいきなり失恋扱いされるって酷いな。

 バルゴラのフォローが無かったら、今頃バーサークして修羅場突入だったぜ?斬り合うの恭文とイテンになるけど。

 ていうか握り潰されかけたって、バルゴラもバルゴラで挙げ足取りたがるっていうか、妙に茶化したがるんだっけな。

 悪質さではアルトアイゼンやジュンイチに譲るが、寧ろ譲りまくってくれないと修羅場要素が増えて困る。








 「大方、情報屋ルーラがあんまりにもトラルーにそっくりすぎて、悶々しすぎているというワケでおじゃるね」


 「確かに、そっくりさんどころか本人じゃないのかってツッコみたいわアレは」


 《幸い、彼はデザルトル・アーナというギルドに属していることが既に判明している。

  何らかの方法で出てきてもらい、トラルーだと確信できることを実践してもらえればいいが…》


 「問題はその方法…か」








 ビコナに対するジンの言うとおり、イテンのモンモンの理由はルーラ=トラルーの疑惑なんだよな。

 トリトーンとマスターコンボイの言葉をまとめると、

 ルーラの拠点はハッキリしているから、そこから引っ張り出してトラルーかどうかを確かめたい。

 問題なのは、確かめる為にどうすりゃいいのかってところだ。








 「それに、聞いてみるっていうのはナシ。

  仮にルーラ=トラルーだっていうなら、何らかの事情があって今の振る舞いをしているんだろうし、

  聞かれたってやんわりと否定されて終わりだと思う」


 《あとは暗示云々の要素も濃厚だろう。ここまで外観的・声色的な類似点が多いのに、誰も断言しきれない》


 「暗示の力で、強制的に別人として認識させられてるってところかな」


 「あず姉が実際にやってたんだよね」


 「私の場合は、伊達メガネを暗示効果の媒介にしてたんだけどね」








 リティの言うとおりなんだよな。別になんの問題もないなら、回復した時点で六課に顔出せばいいワケだし。

 聞かれても否定されるっていうのは、実際にイテンがやってそうなったから確定だ。

 レクセやあずさ、スバルのやり取りから考えると、やっぱし何かの暗示効果か?




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 ― チャプター02:その頃の情報屋 ―




 ――ぶぇぇっくしゅっ!ぶえっくしゅ、ぶええぇっくしゅっっあああああ!!!!








 「風邪ひきか…?というか、3回目のくしゃみに凄まじい怒気が混ざっていた気がするが」


 「あぁすまんね。くしゃみが止まらないとついイラついてしまって」


 《ストレスが漏れ出してる証拠ですよ。発散方法を増やさないと》


 「ま、まだ増やすの…?ボク的には勘弁してほしいねぇ…?」








 今僕は、ギルド仲間であるルストやクラッズと共に行動中。まぁ、何っていっても、クセルクセスの除雪作業の手伝いなんだけど。



 ルストやクラッズについて、少しふれておこう。番外編だからざっくばらんにね?



 ルストは、短めだが後ろになびく赤いハリネズミみたいな髪、黄色の瞳。

 服装はシンプルで、赤メインの半袖ジャケットに黄色メインのショートズボン。留め具が黄色の赤いブーツ。

 あとは両手に黒い手袋をはめていて、両足は黒タイツにしている。



 クラッズについては、ショート系の金髪に水色の瞳。ルストとは対照的に、まだ小中学生のようなあどけなさが残る。

 服装は、円柱状になっている薄茶色の帽子に同じ色のマントとブーツ。

 マントの下は白主体でオレンジのアクセントを含めた長袖の上着と、黒主体のショートズボンにソックス。



 この2名に僕とマジコを加え、アコをリーダーとしているのが砂漠ギルド「デザルトル・アーナ」の精鋭チーム。

 六課などでいうとフォワードチームってことになる。なお、(ここだけの話)第38話で初登場と相成るリアトはメカニックなのでフォワード的な扱いではない。

 リアトが収まりそうなポジションにはクラッズがいるのだけど、詳しいことは本編登場までお待ちください。








 「とはいえ、参ったですねぃ。到着早々に突発的な吹雪に見舞われるとは」


 「自然災害とはそういうことから起きる。あの程度で驚くようじゃ、やっていけないぞ」


 「ルーラが吹雪襲来早々に雪の塊に飲み込まれたりしなけりゃ、そんなこと言わないですってぇ先輩」


 「…………すまなかっt」


 「同じことを目を見て言えゴルァ」








 そうだ。きっとさっきのクシャミは雪まみれになって冷やされたせいだ。そう考えよう。

 除雪は終わったし、ギルド本部に戻ってアツアツのチャーハン食えば治るっしょ。

 そうさ、そうに決まっている。誰かが噂してたりとかいうワケじゃないだろう。




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 ― チャプター03:作戦会議 ―




 さて、どうしたものか。いっそのこと、ジュンイチさん引っ張り出す?








 「それだけはやめておけ恭文。年末年始ですらスプラッタ描写をお届けする気か?」


 「ジュンイチ見ただけで敵意むき出しになっちまってるしな…」


 「それに、あの人だと絶対タチの悪いフザケするし……出会いがしらで殺されるかも」


 「そこまでいくか」








 マスターコンボイに即却下されたのでやめておく。確かに、新年早々にスプラッタもいただけないわ。

 そんでもってノーザン?スターに同意するのはいいけど、その五寸釘と藁人形はしまって?








 「そうでおじゃるよ?それにノーザンは間違いをしているでおじゃる。

  五寸釘ってことはおそらく『丑の刻参り』をやろうとしてるんだろうけど、ここじゃダメよ?」


 「ウシノコクマイリ?」


 《うし刻参こくまいり。地球で知られている呪いの儀式ですね》


 「そう。中でも結構古くから知られているタイプの1つでおじゃるね。


  相手の名前を書いたり顔写真を貼り付けたりした藁人形を、木や壁に五寸釘とトンカチで打ち付けることで相手を呪うんだけど、

  その光景を誰かに見られると呪いがかけてる人に逆転するんでダメでおじゃるよ?♪」


 「ん。じゃ、どこでやろう」


 「それこそ、六課隊舎どころかミッドの市街地からさえ離れたエリアでもないと…」


 「やめんか二人そろって!」








 アルトも知ってたのか丑の刻参り。

 ていうか、ノーザンだけでなくビコナまで危ないオーラ出してたけど、ジュンイチさんに何か恨みでもあるんか。

 まぁ、かくいう僕も恨みがないっていえばウソになるけど。ディケイドなジュンイチさんの件とか。


 ここでピータロスに怒鳴り込まれてなかったら、僕もあの二人に混ざっていたかもしれない。








 「やっぱやっちゃん、陰湿やろ…」


 「恭文も大概だよね…」


 「いぶき、なずな、なんか言った?」


 『なにも?』








 じゃあ、何故に頬をひきつらせてんの?








 「まぁまぁ。それより、ジュンイチを使うってのは案外良作かもしれないでおじゃるよ?」


 「スプラッタ趣味でもあるのか貴様…」


 「いやいや、呪いの件は冗談で、今度は真面目に」








 いや、さっきノーザンと話してた時の据わった目つきはマジだった。


 マスターコンボイが懐疑的になるのも無理はない。うん。


 それはそうと、どうする気?








 「それはね、ゴニョゴニョゴニョゴニョ…」


 「ほう、それはまた面白そうなことで」


 「まずは適当に理由つけてジュンイチを連れてくる。そしたら私と恭文でちゃっちゃっと仕上げて作戦開始でおじゃる」


 「本当に何する気だよ…」


 《おそらくマトモな作戦ではないだろうな》








 またしても怪しげなオーラを出して据わった目つきになっているビコナに、

 ジンとバルゴラが一抹の不安を覚えるのでした、まる。




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 ― チャプター04:不法侵入者は混沌を望む ―




 どうも読者の皆様、覚えていらっしゃいますか?

 アーツバトル連盟の審判団員 兼 諜報部員、一人二役やってえんやこら、ミソギでございます!

 前回は光学迷彩装置のバッテリー切れという初歩的なミスでプルトーネさんにタイーホ!されてしまいましたが、

 今回はいつもより多めにバッテリーを用意、更にゼロイクスさんから拝借した排熱システムを併用し、

 隠密性を徹底的に高めた上で六課隊舎に潜入してみようと思いまs








 「まるで某フライデーみたいなやり口になってきたな」


 「うひょっへぇぇいっ!?」








 そそそそそそそそ、その声はアストラルさん!?








 「奇遇だね、僕も六課関係の情報が欲しくて潜入を始めようとしていたところさ。

  ただし、光学迷彩じゃなくて、グリームニルによる偽装作戦だけどね」


 「つまりアストラルさんも人のこと言えないじゃないですか…」


 「新聞とか作ろうとしない分、君よりはマシだと思うけど」


 「ぐふっ」








 あ、プルトーネさんにシメられた記憶からか、吐血…ッ。








 「揃って何してんだよお前ら」


 『ヒィーハァーッ!!』


 「無駄なまでに息ピッタリだな…」








 背後から突然聞こえたジュンイチさんの声に、

 僕とアストラルさんは全く同時に全く同じ悲鳴を上げていた。








 「なんだいジュンイチ、もしや君も六課隊舎に不法侵入かい?」


 「お前らと一緒にすんじゃねぇよ」


 「ていうか不法侵入をしようっていう自覚あったんですか」








 開き直りっぷりがすごいですよ。堂々と言いきらないでください。


 僕の立場がなくなるじゃないですか。

 さっきフライデー呼ばわりされたばっかりで早くも心が折れかけてるというのに酷いですよ。








 「で?結局お前ら何しに来たんだ?場合によっちゃ今ここで焼き払うけど」


 「え、えっと、こそーっと新情報を拾ってそろーりと帰ろうってだけですよ?

  僕は諜報部員でもあるので、ちょいとノルマというものが」


 「へぇ」


 「そういえば、アストラルさんは…………って、いないっ!?」


 「あんにゃろ、グリームニルとかいうヤツ使って消えやがったな」








 僕がジュンイチさんに問い詰められている間に逃げた!?

 気づけば、アストラルさん逃亡を確認したジュンイチさんの両手には、見覚えのある猛々しい炎が。

 逃げ場?あっても逃げられないのが今目の前にいるあの男。

 こ、この気持ち、この気持ち……!








 助けてシュワちゃぁぁぁぁぁぁんッ!!




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 ― チャプター05:役作り ―




 「よぅ、恭文にビコナ。待たせたな」


 「いえいえ、こちらもちょうど準備できたところですから」


 「寧ろグッドタイミングでおじゃるよ」








 そう、グッドタイミング。作戦の為に必要な下ごしr……仕立ての準備は整った。

 あとは実行あるのみ、ってところにジュンイチが来たの。

 ちなみにこの部屋には、私と恭文とジュンイチの3人しかいない。いや、セリフありという意味ではアルトアイゼンや蜃気楼もいるけれど。



 え、理由づけはどうしたって?「協力してくれたらハムスターあげる」って言ったら即決でした。

 これに飼育用具云々の話はしてないんだけど、もらった後でどうするつもりなんだろう。

 当然だけど、あげるのはハムスター「だけ」。飼育云々についてはあくまでもジュンイチの自己責任ということで。








 「んで、情報屋ルーラを引っ張り出すんだっけ?

  オレはどういう役どころでいけばいい?」








 一応、最終目的である「ルーラがトラルーかどうかを確かめる」って部分、ジュンイチには最初はその裏付け役をお願いするつもりだった。

 というのも、どうやらジュンイチには暗示の類が効かないという話があったので、それを試そうというワケ。

 映像越しでもみんなルーラがトラルーだって断言できないので、いっそのことジュンイチに対面させて、直接裏付けてもらおうと。

 ただ、そもそもの話として「来るキッカケがなきゃ意味がない」ってことに思い当たった。



 今のところ、情報屋ルーラが私たちに姿を見せたケースから考えられる理由はそう多くない筈。

 1つはマイクロンパネルが絡んでいること。もう1つは、私たちや六課メンバーが危機的状況に陥っていること。

 とはいっても、マイクロンパネルが絡むアレコレは、ロブスターもどきの後もあった。けどそれらの時には確認されず。

 ならば後者、私たちの誰かが危機的状況に陥っているのを察知すれば現れるんじゃないか、ってね。

 ただし私たちや六課メンバー同士で芝居をしてもすぐバレるし、

 危機を招く強大な敵として想定できうる筈の隊長陣に演技力なんて期待できないので、


 かつて本気で世界を相手に(悪い意味で)大立ち回りをしていたというジュンイチにやってもらおうというワケなの。

 当然だけど、あまり周辺被害が伴うものは断固NGだということは呼ぶ時に口酸っぱく言ってあるけどね。








 「要するに、恭文たちが遭遇したロブスターもどきのポジションになればいいんだな」


 「そうですね。ただし、実行タイミングと場所が問題ですけど」


 「それなら、いっそのことデザルトル・アーナの連中をターゲットにして、そいつを襲っておびき出すのはどうよ」


 《さすがジュンイチさん、平然とよそ様に迷惑をかけようとしてますよ》


 《基本的に破壊大帝の方々、特にスカイクェイクには多大過ぎる苦労をおかげしているのは伊達ではないのです》


 「うるせぇぞデバイスども」








 あ、あはは…。アルトアイゼンと蜃気楼のダメ出しが現実味を帯びすぎていてなんとも…。

 ていうか、え、スカイクェイクって地球の破壊大帝の?…………ひくわぁー。








 「てめぇら、あとでおぼえてろ…。

  襲う候補としては、この二人。普段から結構一緒になってるみたいだし、同僚襲われて黙るヤツでもないだろ。

  情報屋がホントにトラルーだったら、な」








 ジュンイチが出してきた紙には、緑色のショートヘアーの子と赤い髪に紫の魔法使い風帽子をかぶっている子が写っていた。

 この二人が、情報屋ルーラの同僚?








 「あぁ。デルポイ側での調査情報によれば、この二人と一緒に行動している場面も何度となく目撃されているそうだ。

  ていうか、やっぱりポラリスたちも探してたりするのな」


 「そりゃあ古代ベルカ時代からのお付き合いでおじゃるからね。

  というより、お付き合い歴でいえば私からしても先輩でおじゃるよ?」


 「ヴィヴィオやマグナさん、ヴィータ師匠たちとタメ口で言い合えるんだよね…」


 「私たちトラルー御一行は、トラルー自身が上下関係大嫌いっていうのもあって先輩後輩というお付き合いじゃないけれど」


 「オフ会とかで親睦を深めたサークル状態だな」








 ジュンイチが形容した「親睦を深めたサークル状態」、まさにその通りだと思う。

 個人差こそあれど、大抵同じ話題でみんな通じるし。

 さて、それじゃあジュンイチの下ごs…仕立てを始めようかな。








 「じゃあとりあえず、変装でもすっか。またスバルたちにどやされるのは勘弁だしな」


 「どういうチョイスでいくか迷いますね。ほら、ジュンイチさんなら極道系とかも似合うワケだし」


 「ヲイ」


 「意匠も大事だけど、まずは私から提供する特殊装備を使わせてほしいでおじゃる」


 「特殊装備?」


 《その封筒の中身のことですか?》


 「中身はなんだい?」








 正体を割られない為に変装しようってことは私も賛成。けどその前に仕立てをキッチリやらないと。

 というワケで、懐から取り出した封筒の中身をみんなに披露する。








 ちゃりんっ♪








 《『…………』》


 「みなさんご存じ、日本通貨の五円玉♪

  これに糸を通して結んで…」


 《こ、古典的な催眠術じゃないですか…》


 「これを、ジュンイチに対して使うでおじゃるよ♪」


 「しかも対象はオレかよ」








 そう、光景としては一時的に話題になったっぽい「あなたは眠くな〜る」とかでお馴染みなアレ。

 ただし当然ながら、私の徳川マジックを加えているのであしからず。

 糸に結んだ五円玉をジュンイチの目の前に垂らして、右に左に振り子運動させる。








 「ゆ〜る、ゆ〜る、ゆ〜る、ゆ〜る、ゆ〜る、ゆ〜る……」


 「ったく、こんなのでオレに何があるって…………っ……うっ……うぉあっ…!?

  …………っ!!」








 揺らし始めてから10秒ほど、効果が出てきた。

 途中から頭を抱えて、小刻みに震えだして……数秒後、何かを吐き出したように勢いよく頭を振り下ろした。








 「ッヘハハ……ヒャハハハハハハハ!!

  なんてお人好しでバァカなジュンイチ様だ!こうも簡単に催眠術に引っかかるなんてな。
  アレだな、2012年ごろならオレオレ詐欺にでも引っかかりそうなぐらいのマヌケっぷりだ!」


 《なんと!?》


 《ジュンイチさんが粗暴極まりない性格に豹変し……元からですか》


 「アルト、それは待とうか。ていうかビコナ、どゆこと?」








 んっふっふ〜、大成功でおじゃるね。








 「五円玉にちょっと魔法を仕込んで、催眠術の動作によって相手の精神年齢を巻き戻すようにしておいた。

  巻き戻す年数は約10年……今よりも更に傍若無人との声も高い頃でおじゃるね」


 「ディケイドなジュンイチさんと同程度ってところか」


 「それにしても凄いでおじゃるね……未来の自分をこうもバカにできるとは」


 「まァいいさ、久しぶりに暴れられそうなイベントだ……新しいシャバの空気でも吸いに行くとすっか」


 《刑務所から出所したばかりの犯罪者みたいなセリフですね》


 《我がマスターながら、深層心理が理解不能です》


 「蜃気楼自分のデバイスにまで見捨てられてるよ」








 うぅ〜ん、これはイイ感じでいけそうでおじゃるね♪








 「我ながら人選に間違いはなかったようで一安心♪
  さ、私たちの作戦に協力してもらうでおじゃるよ、ジュンイt」


 「ケンカ番長だッ!!」


 「……なぬ?」


 「役作りだよ。ケンカの為に生き、ケンカをして死んでいく。

  そうさ。オレがなりきるのは、ケンカの中のケンカ王。すなわち、ケンカ番長だッ!!」








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 「……頼もしいね」


 《その役作りに、意味があるとは思えませんけどね》


 「…ま、まさか、魔法だけじゃなくホントの催眠術に…!?」








 アルトアイゼンの指摘に、恭文が気づいた。

 一応、様式としてはホントに古典的だけど催眠術のもの。まさか本当に…








 「ハハハハ!オレぁケンカ番長だぜぇっ!!」








 ……かかってるんだ…。




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 ― チャプター06:作戦発動(ただし半分事故)―




 マスターコンボイ(ヒューマンフォーム)と共に、催眠術かかって見事なケンカ番長と化したジュンイチを引き連れてデルポイへ移動。

 デザルトル・アーナがあるという砂漠の国・ボビビットの中にあるとある街にて、作戦決行の時を今か今かと待っている状態。



 本当はマスターコンボイじゃなくて恭文と一緒に行く筈だったんだけど、

 どこからともなく現れた万蟲姫にとっ捕まって……








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 「恭文ぃ〜。今度こそ離さぬぞよ!今日という今日こそは、わらわと愛を誓ってもらうのじゃぁ〜!」


 「断るッ!!」


 「だが断るのじゃ!」


 「取り敢えず離せぇ!いろいろくっついてるから!胸とか!」


 「恭文の運命は既にわらわにゆだねられておる!逃がしはしないのじゃ〜!」


 「聞いてる!?聞いてないよねこのバカ姫!!アルトからも何か言ってやってよ!」


 《ていうか、なんでこんなことに?》


 「あぁそれね、私が恭文に惚れるようにちょちょいっと調教してあげただけよ…♪うっふふ♪」



 《スリアさん、最近見ないと思ったら何してるんですか…》


 「だって、見てられないでしょう?欲求不満に駆られ続ける乙女の純情って。

  ならいっそのこと軽く暴走させて、既成事実の1つでも作らせれば落ち着くんじゃないかしらね?」


 「くそっ、おぼえてろエロリスト!後で3枚におろしてやるからなっ!?」


 「逆に調教して、メガーヌさんにお届けしてあげるわ♪」


 「うだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


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 ――とまぁ、そういう感じで修羅場モードに入っちゃったので取り下げました。

 そういえばスリア、"アレス"で全然見かけなかったなぁと思ったら…。

 またリティに怒られても知らないでおじゃるよ?








 「事情は道中で把握させてもらったが……本当にうまくいくのか?

  あの柾木ジュンイチが催眠術にかかったことも驚きだが」


 「情報屋ルーラが本当にトラルーなら、身内襲われたらジュンイチや恭文と同様に相手を徹底的に破壊しにかかる筈。

  その場面さえ見れれば確証を得られたも同然でおじゃるよ」


 《ミス・ビコナ、役者はちゃんと揃うのか?下手すりゃ1日以上待ちぼうけとかあるぜ?》


 「そこは心配ご無用。月影丸のみならずイテンやレルネ、更にゴッドアイズの二人に声かけて、事前に隠密調査してもらったでおじゃる。

  今日のこの時間帯にギルド本部、つまりあの建物に戻ってくるという確定情報は得られたので無問題♪」







 具体的には、月影丸にはお得意の忍びスキルフル活用でギルド本部に対する諜報活動、

 イテンとレルネにはそれぞれで無機物潜行能力を使ってもらっての潜入調査、

 ゴッドアイズの二人には柾木ネットワークも駆使しての情報収集という形で協力してもらった。

 特にアリシアとあずさのコンビだから、柾木ネットワークをフル活用できて大変助かったでおじゃるよ。

 ていうか、デルポイのギルドのスケジュールまで調査できる柾木ネットワークがすごすぎる。








 「お前たち、声のボリュームを下げろ。その役者がお出ましだ」


 「およ」








 ケンカ番長ジュンイチとは別々に建物の影に隠れて、役者ことアコとマジコのお出ましを確認。

 そう、作戦会議の時に出された写真に写っていたのはこの二人。

 この二人をケンカ番長ジュンイチに襲わせて、ルーラの登場を待つって寸法でおじゃる。

 できれば登場後そのまま、ルーラ=トラルーという裏付けが取れれば完璧なんだけど……








 《裏付け役を想定してたミスタ・ジュンイチがケンカ番長化してるからなー》


 「ディケイドに変身した柾木ジュンイチと同程度というなら、作戦のことは頭に入っていると思うが…」


 「それを見越して、巻き戻し年数を10年にしたんだけど……ちょっと心配でおじゃるね」








 よもや、あそこまで豹変するとは思わなかったというのが正直な感想。さじ加減ミスったかも…。

 そんな私たちに気づくことはないまま、アコとマジコはギルド本部らしい建物へ向かって歩いていく。

 ただ、さすがに入り口付近で騒ぎとなるとマズそうなので、なるべく離れたところで作戦決行。

 あの二人とギルド本部入口までの距離が300メートルほどになったところで、ゲッコウサクヤを展開。

 魔力コーティングで光沢を作って、鏡のように使って太陽光を一瞬だけ反射。それを3回連続で。つまりチカッチカッチカッ、といった感じでおじゃるね。

 これがケンカ番長ジュンイチに対する、作戦決行の合図。

 ちなみに彼には、何かあっても簡単には正体を割られないよう、いかついリーゼント男に変装させておいた。

 ただし、相手にAMFのようなアンチ系能力がある可能性が想定されて変身魔法が使えなかったので、顔立ちだけは変えようがなかったけれど。








 「今回のミッションも問題なくクリア。みんなイイ感じになってきてるね」


 「特に驚いたのはルーラだよなー。半月もしない内にアタシらとの連携訓練クリアしたし」


 「かなり戦い慣れてる、っていうのが大きいだろうね。戦闘経験が豊富で、知識が自然と身についてるんだ。

  だから、他の味方の能力特性とかもすぐに推理できるし、そこにあの尋常じゃない速さを加えれば、まさに天下無双の活躍もできる」


 「無双されたアタシらからすると、二度と相手にはしたくないんだけどなー」


 「アレで本来の力を出し切れてないっていうんだから、頼もしさと恐ろしさが同居してるよね」








 かなり戦い慣れてる、尋常じゃないスピード、天下無双…。ますますトラルーっぽいでおじゃるね。

 ついでにいうと、マジコが言った「二度と相手にしたくない」って部分も。

 実際に模擬戦した中で、六課メンバー内でそんな意見が出なかったのは負けず嫌いなシグナムやヴィータ、超戦闘狂のブレードだけでした。

 そう、ジュンイチでさえ同じ意見だった。まぁ、いざ模擬戦始まればトラルーの方からジュンイチを潰しにかかってたんだけどね…?








 「それよかさ、アコ。そろそろ昼飯だし、またお前の手料理作ってくれよー」


 「待ち侘びてくれるのは嬉しいけど、ボクの食事当番は明日だからもうちょっと我慢してね」


 「ちぇー」








 むむ、アコは料理が得意とな…?それはそれで気になる。








 「だぁ〜んだだ〜ん♪だ〜だ〜だ〜だぁ〜んだだ〜ん♪」








 ケンカ番長ジュンイチ、行動開始。けど、登場BGMを自分で口ずさむのはどうなの?

 なお、リズムからするにトランザムでお馴染みな「fight」だと思われます、まる。








 「武力介入。仲がよろしくていいな、えぇ?お二人さんよぅ」


 「あの、どなたかな?」


 「あ、アンタ、まさか……ケンカ番長かっ!?」


 「はいな」


 「え、マジコの知り合い?」


 「いや?ただの勘だけど」


 「鋭すぎでしょ」








 ケンカ番長ジュンイチ?初めから武力行使前提で行かないで?

 あくまでもあの二人に接触するのはルーラに来てもらう為であって、物理的に襲うワケじゃないよ?

 ていうか、デルポイにもケンカ番長という言葉はあったんだ…。








 「ケンカ番長は、ケンカの中でだけ生きる男。

  愛だの、恋だの、デリケートにスキしてだの、そういうの見ると、体中に虫唾が走るんだよ!」


 「だったら見なきゃいいだろー?」


 「ちょ、マジコ…」


 「なぁるほどぉ。その手があったか。アンタおりこうさんだなぁ。しかぁしっ!!

  オレはケンカしかできないただのバカでよぉ!今の話は聞かなかったことにする!」


 「いや、聞いてるじゃん!」


 「あぁ?生意気な女だなぁ」


 「ま、まぁまぁ、ここは二人とも落ち着いて…」


 「ヤだねぇ!オレぁ生きるぜ?他人の生き血をすすってでもなァ!!」


 「そういう状況じゃないよ!?」








 むむ、さすがは演技派。たとえケンカ番長となろうとも、やりきる精神は感服ものでおじゃるね。

 状況的には、ケンカを吹っ掛けてきたケンカ番長ジュンイチにマジコが噛みついて、アコがなんとか場を収めようとしてるけど…ってところ。

 とりあえずアコさん、巻き込んでゴメンナサイ。








 「古典的なピンチだな」


 《それこそよく見るジャンプマンガ的な》


 「だからこそ効果があるのでおじゃる」


 《けど、今のところ情報屋が出てくる気配はないぜ?》


 「うーん、人も少し集まり始めてるし、これは作戦を中止するしかないでおじゃるね」


 「どうやって」


 「…………しまった!」








 今のジュンイチは催眠術にかかって、自分をケンカ番長だと(心の底から)思い込んでる!








 「この街がどういう街かわかってるか?ここで暴れたりしたら、アタシらのお仲間が黙っちゃいないぜ?」


 「ほぉう、そいつぁ楽しみだな。つまりアンタらを叩けば、もっとスゲェ極上のケンカができるってワケだ!」


 「あぁもう、マジコってば火に油を……」


 「まずはテメェらからだっ!!」


 「やるならやってやるぜ!」


 「やっちゃマズイんだけど!?」








 「待てやオンドゥラァッ!!」








 アコの言葉もむなしく、ケンカ番長ジュンイチとマジコが徹底抗戦の構え。

 一触即発、まさに両者がファーストアタックを仕掛けようとしたところに、何やら聞き覚えがあるハウリングボイス。








 「誰だっ!?」


 「あ、あれは…」


 『ルーラ!?』








 ハウリングボイスにもれなく反応した3名。先に気づいたアコとマジコがその声の主の名を呼んだ。

 やっぱりトラルーそっくりで、けど深緑で踊る○捜○線の主人公が着てるのと似ているパーカーを着ている人。

 情報屋ルーラが、本当にやってきた!ここまでは狙い通り!









 「ケンカ番長とかいったな、一部始終、しっかりと見させてもらったぞ」


 「なら早く出てこいよ…」


 「マジコ、しーっ」


 「何モンだてめぇは」


 「デザルトル・アーナが誇る精鋭部隊、"ファスターズ"所属。情報屋ルーラだ。

  別に階級とかあるワケじゃないが、少なくともこのアラビアナートにおいては警察みたいなこともしている」


 「なんだぁ?この調子くれたバカは。ケンカ売ってんのか?あ?」


 「まぁそうなるね。KY、すなわち空気を読まずにこの場に飛び込み、フェードインで名乗りを上げてすこぶる調子に乗っている。

  そんでもって我慢弱く、何かイベントがあるとフラフラとそこへ近づいてしまう。

  俗にいうボンクラってヤツだ」


 「そこまで言う?」








 なおもケンカ番長節全開なジュンイチに対し、ルーラは淡々とした口調を崩さない。

 アコもツッコんだけど、自分のことを自らボンクラ呼ばわりするっていうのはどうなの…?

 気づけば、マスターコンボイも目が点になったまま硬直してるし。








 「しかしッ!こんなボンクラでも、吐き気がするようなゲス行為がどういうものかぐらいはわかる!

  そして、それを見て見ぬフリなど誰が許しても自分が許さない……退治させてもらうぞ、エセケンカ番長ッ!」


 「自分に酔ってるんじゃねぇぞこのボンクラがっ!

  第一セリフと外見が全然マッチングしてねぇんだよ!ドチビが!!」


 「どこぞの嘱託魔導師みたいな手は通じない!ショタ万歳自分ッ!」








 とりあえず、ケンカ番長ジュンイチの発した「ドチビ」という言葉に反応したマスターコンボイはゲッコウサクヤから発した魔法で黙らせる。

 まぁ、どうやってかというと彼の周辺の風圧だけ操作して、首から上だけ圧迫してるんだけどね。

 ていうか、ショタ体系な自分を寧ろ万歳とかいう人……たぶん、銀河広しといえどトラルーしかいないんじゃ…。








 「だからぁっ!!」


 「ルラ、パァァァンチッ!!」


 「どぼっ」


 「ルラ、キィィィックッ!!」


 「げふっ」


 「ルラチョップチョップ、チョォップゥッ!!」


 「ぶべしっ」








 殴り掛かってきたケンカ番長ジュンイチをルーラは真っ向から右ストレートで殴り飛ばし、

 追いかけて続けざまに右ライダーキック、

 更にワンツー、スリー!といった感じのリズムの連続チョップで畳み掛けた。



 なん……だと……?








 「な、なんだ、この、理不尽な強さは…ッ!?」


 「ふっ、これこそが、人呼んで戦う情報屋の実力だ」



 「わ、ワケ、わかんねぇ、ぞっ…………ぉぁっ」








 怒涛の連続攻撃(しかもエネルギー付与までされていたのか、直撃の度に物凄く鈍い音がした)によるダメージは甚大らしく、

 ケンカ番長ジュンイチは戦う情報屋の前に成す術無く倒れ伏した…。

 …………って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?



 そんなバナn…バカな……理不尽の代名詞であるあのジュンイチが秒殺…だと…?








 「ルーラ!あぁそっか、除雪ミッション終わって戻ってくるって言ってたっけな」


 「助かったよ。もう少し遅かったら危うく…」


 「ちょっと待っててね。トドメ刺してくる」


 『え?』








 え?








 「でりゃっ!!」


 「ぉぁああぁぁぁぁぁぉぉっ!?」


 「る、ルーラぁ〜…?」


 「やりすぎだよ…」








 倒れ伏してピクリとも動かないケンカ番長ジュンイチに歩み寄ると、その背骨辺りに容赦など微塵もなく右拳を振り下ろした。

 私もマジコもアコも、あぜんぼーぜんd








 「あ、危ないところだったな…」


 「ルスト。クラッズもおかえりー」


 「ただいまだよぉマジコ。運よく僕らが通りかかってよかったねぇ。

  さっ、ここは自分に酔って変なスイッチが入っちゃったルーラに任せて、立ち去ろう。

  知り合いだとでも思われたら面倒だからねぇ」


 「……そーだなクラッズ。アコ、いこうぜ?」


 「え、いや、ケンカ番長とかいう人……大丈夫かなぁ?」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプター07:情報屋は首尾を確実に取る主義 ―

   注:ここから先は同時展開を楽しんでいただく為、モノローグ無しでお送りします。ご注意くださいm(_ _)m




 「堪忍袋の緒が切れたぁッ!」


 「どぁっ!」




 
まったく、いきなりやってくれおって…。ビコナ」   



 
「う、うん…」   





 「今の僕はッ!」


 「どぅぶっ」


 「阿修羅すらも凌駕する存在だッ!!」


 「だぉぉぁおっ!」




 
《徹底的だよなアレ》   



 
「気持ちはわからなくもないが、そこじゃない」   





 「ニコルの仇ッ!」


 「どぎっ」




 
「柾木ジュンイチをも上回るほどの身のこなし…」   





 「クルーゼの仇ッ!」


 「ぐはぉっ」




 
「卓越どころかチートくさい気さえする戦闘力…」   





 「ミゲルの仇ッ!」


 「うはぁぁぉおっ」




 
「とても一介の情報屋が持ちうる戦闘力ではないぞ」   





 「アイシャの仇ッ!」


 「どぅぐっ」




 
「だよねぇ…」   





 「ステラの分ッ!」


 「どぉあぁぉっ」




 
「というより、どう考えてもトラルーだろう、アレは」   





 「ギルバートさんの分ッ!」


 「ぶっしゅっ」




 
「うん、暗示とかそういうの効いているのか分かんないくらい確信持てた」  





 「ちょりぃっすっ!!」


 「ぶっしすっ」




 
《ところでさ、二人とも…》   



 
「あぁ、どうやって柾木ジュンイチを回収する?」   









 「そしてこれはァ、僕の分ッッ!!」








 
「…………しまったっ」   









 「ぅぉぁああぁぁぁぁぁぁ…ッ」


 (この間、ジュンイチはルーラにボコられ続けて何リットルも出血しました)




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプター08:作戦終了 ―




 「ただいまでおじゃる〜…」


 「お、帰ってきたか」


 「おかえりなさい」


 「おぉ、ノーザンもここにいたでおじゃるか」








 お昼ごはん食べ終わって、恭文とおしゃべりしてたらビコナが戻ってきた。

 イテンやレルネ、月影丸、果てにはゴッドアイズの人たちにまで念入りに情報集めさせてたけど、作戦うまくいったのかな?

 ちなみに、当事者であるビコナとマスターコンボイ、私、恭文、月影丸、はやて部隊長以外の人には、今回の作戦はトップシークレットにされてる。

 部隊長さんについては報告義務に近いけど、私はたまたま話を聞いちゃったので詳しく教えてもらった。内緒にすること前提で。

 だってルーラの正体がホントにトラルーだったら、イテンとか大パニックだから黙秘でもしょうがないよね。








 「姫様、ご苦労でござる。早速で悪いでござるが、首尾は?」


 「ん、ん〜…、まぁ成功…かなぁ」


 「歯切れ悪いね。作戦中に何かあった?」


 「まぁ、年始早々にスプラッタ見てきたっていうか…」


 「それは縁起が悪いでござるな…」








 今回は情報収集後の後処理(提供者にお礼言ったりとか)の為に同行はしなかった月影丸。

 やっぱり自分の姫様の実績は気になるんだ。

 ただ、ビコナはあんましテンション高くないので恭文にまで心配された。

 その理由が年始早々のスプラッタとなると、こっちとしてはなんとも言えなくなっちゃうんだけど…。

 ていうかスプラッタって。








 「スプラッタってことは、もしかして…」


 「私やマスターコンボイは目の前の惨劇のショックでわかったんだろうけど、ルーラはきっとトラルーでおじゃるね」


 《惨劇って、作戦中に緊急事態が?》


 「…………ごめん、その元凶は下手すると私でおじゃる…」


 「ケンカ番長、だっけ?」


 「うん……ノーザンにも教えたでおじゃるね、そういえば」








 恭文やアルトアイゼンがなんとなく気づいた通りの結果だったみたい。

 あとね、催眠術の話も聞いた。ジュンイチでも催眠術かかるんだ…。

 ケンカ番長そのものの話は、ビコナが出た後で万蟲姫の騒ぎが落ち着いた恭文に聞いてみた。そしたらすごい顔された。

 言葉なく渡されたゲーム、ガメッセ利用してやってみたけど……いつものジュンイチと似てるね。








 《……そういえば、そのジュンイチさんはどうしました?マスターコンボイもいませんが》


 「ジュンイチがね……その……スプラッてね……マスターコンボイに医務室送りにしてもらってる」








 改造実験帝国SHA○に?SHA○先生には事情話したの?








 「一応、通りすがりの情報屋に駆逐されたとだけ言って、納得してもらった」


 《納得したんですか》


 「あの人も"情報屋"って部分で大体察したみたいでおじゃる」


 「やっぱ同じこと思ってたか、シャマルさんも。

  ていうかノーザン、字幕やめい」








 んーん、やめない。とっても偉い人モリビトさんが本田忠勝と聞いてロボ忠勝を連想するのと同じくらいやめない。








 「比較基準がよく分からないんだけど…まぁいいか。

  じゃあ今頃ジュンイチさんは…って、ノーザン?どしたの?」








 会話しながら、ビコナのゲッコウサクヤから送られてきた記録映像は見てた。だから、感想とかは大体決まった。

 目指す場所はもちろん、行動不能なジュンイチがいる筈の、改造実験帝国SHA○。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプター09:血だまりからの帰還 ―




 シャマルによる手当が終わり、ひとまずオレは柾木ジュンイチを見る。

 全身包帯だらけ…というか、生きているという点を除けばミイラそのものとしか言えない姿になっている。

 原因など、もはや言うまでもあるまい。寧ろ、よくもまぁ生きて帰れたものだ。

 もちろんマトモに動けるワケがないので、医療ベッドに完全固定。回復中に抜け出されても騒ぎの元だからな。








 「おじゃまします」


 「あら、ノーザンもジュンイチさんのお見舞い?」


 「ん、そんなとこ」


 「じゃあ、私は書類関係作る為に席を外すから、ジュンイチさんの方はお願いね。さすがに動けないとは思うけど」


 「あぁ、オレとノーザンで見といてやる」








 そういえば、ビコナは真っ直ぐに食堂方面に向かったのだから、情報を得た頃だろうな。

 治療したのは間違いないので、シャマルは関係書類等の処理で退室。

 ここに残っているのは、オレとオメガ、今やってきたノーザン、そしてミイラ状態の柾木ジュンイチのみ。

 とりあえず、ツッコミ四面楚歌の図式はできた。








 「お、おぉ、お前ら……なんかもう、体中ズキズキ痛んで、まいってるところさ…。

  こいつぁ日頃の天罰ってヤツかねぇ…?詳しいことは覚えてないんだけど」


 「端的にいうと、すこぶる調子に乗った小さなバーサーカーにボコボコにされただけだ」



 《記録映像を主ともども見せてもらいましたが、昼間なのにホラー映画さながらの光景でしたよジュンイチ殿》








 どうにか顔回りは無事だった為か、こうして話す分にはまだマシな方だ。

 ただしギッタギタにされた時にケンカ番長と化していた間の記憶が飛んだらしく、今のような有様だ。

 言葉はないが、ノーザンの顔もどことなく憐れむ顔に見える。








 「偉い人作者の悪ふざけ、いや、世界の悪意が見えるようだぜ…」


 「どっちかというと、善意の方にられたワケなんだけど」








 ノーザンの言うとおり、ケース的にいうと寧ろ善意だ。特にアコとマジコとかいう2名については、こちらで勝手にターゲッティングしただけだからな。

 人格設定をケンカ番長にしてしまったのが間違いだった。止めるべきだった。

 今頃は催眠術をかけた張本人であるビコナと、そこに立ち会った恭文辺りがそういう理由で後悔しているところだろうか。

 アルトアイゼン?ヤツは寧ろそれを楽しむ側だろうに。








 「あ……花畑見える…。ちょっと寝るわ…」


 「永眠しないように気をつけてね」


 《ミス・ノーザン?それは本気でシャレになってない》




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプター10:後始末はキッチリ済ませました ―




 「や、やぁルーラ。首尾はどうだい?」








 自分でもわかるくらいに調子のってエセケンカ番長ことジュンイチを血祭りにあげ、

 近場の影で見ていたと思われるビコナやマスターコンボイにインパクトを与えた上でギルド本部に帰投。

 で、アコちゃんからの質問に対する答えは決まっている。








 「血だまりの掃除はしてきたから安心だネ」


 《土ごと処理したので、DNA採取すらできないほどの徹底清掃となりましたけどね》


 「そ、そう」








 答えを聞くアコちゃんの顔はひきつっている。まぁ、理由はわかるのでツッコまないことにする。

 ストラナが言うとおり、DNA採取されることを警戒して血だまり周辺の土まで除去させていただきました。

 もちろん、除去した分は他の場所からいただいて埋めてきたけど。なにせボビビットは砂漠国家。

 埋めなおす為の代わりの土、というか砂には一切困りません。








 「それにしても、えらく徹底的だったよねぇ。あのケンカ番長とかいうのに恨みでもあるの?」


 「恨みというか積年の怒りみたいな?」


 「あー……これ以上は聞かないことにするよぉ」








 クラッズとしても思うところはあったらしい。とはいえ、六課滞在中のことを言ってもややこしくなるので、軽くぼかしておく。

 自ら追及をやめてくれて助かるよクラッズ。








 「しかし、身柄を拘束しなくて本当によかったのか?」


 「アイツは地球の人間だからねー。下手に身柄拘束して失踪事件みたいになっても、何かあった時面倒でしょ?」


 「よく分かるなー、あんな数分の出来事で」


 「ちょいとこっちの事情で接触してたヤツなんでね。一度会っていれば、僕の能力で変装とかは意味を無くす」


 「えーと、相手の魂を可視化っていうか探知できるんだっけ。その応用でわかるんだよな」


 「その通り」








 ルストの懸念もとりこし苦労とかいうヤツだ。相手が異世界人なら、出身世界に追い返すに限る。

 今回の場合は血だまりに一旦放置して、ビコナたちが回収してから改めて血だまりの処理をしていったワケなんだけど、

 下手に異世界の人をとっ捕まえるとややこしくなるんだよ。地球で言えば北○鮮の拉致問題ぐらいややこしくなることもある。

 さすがにあれほど年季入りな投獄とかはないけどね?



 僕が古くから持っている特殊能力の1つ。マジコが指摘したのはそれ。

 ざっくばらんにいうと、僕は他の人物の魂が見えたりする。霊感とかそういうの抜きで。

 ちゃんと体に宿っているものは球体で、抜けちゃうと漫画チックなお化けみたいな形で見えます。

 親切な見え方だよね。オカルトマニアとかじゃないぞ?








 さて、クセルクセスの除雪ミッションが終わると僕はフリーとなる。

 ビコナを通じて僕のことについての大ヒントが六課側に流れただろうし、またミッドに出向くとしようかな?

 そろそろ、イテン辺りが天元突破しちゃう気がするし。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプターEX01:とある女たちの末路 ―




 「何してくれてんのかな。とうとう霞澄さんからの指示ですらなくなってるんだけど」


 「ごめんなさい…」








 紫の波動を放ちながら仁王立ちのリティ。正座して縮こまっているスリア。

 万蟲姫を暴走させた元凶ということで、ただいま怒り心頭なリティによるスーパー説教タイム。

 ……イテンちゃんは同情しないからね?








 「ココアちゃんがなんかむごいことになってる…」


 「危うく本気で3枚に下ろされるところだったし、まだマシじゃないかしら…」








 メープルとミシオが見やる先には、鎖でがんじがらめにされた上に、口に電マを突っ込まれて最大レベルで振動させられてる万蟲姫が。

 拷問だよね?コレ…。

 万蟲姫は未遂で済んだけど、スリアは本気で3枚に下ろされた。……オーメダルトレイサー以外の装飾品全部。

 そんでもってガムテープで両腕ごと胸から股間にかけての範囲を縛り上げられて、スーパー説教タイム。

 ちなみに、例外としてブラジャーとパンツだけは無事だった。マンガとかだとよくあるけど、どうしてアレだけ無事になるんだろうね?

 イテンちゃんにはわからない、分からないよ…。








 「さっきからホーネットさんが物凄いオーラ出してる気がする…」


 「ほっとけ。迂闊に触れると巻き添えくうぞ。どうせ標的は恭文だろうし」








 そんな中、サニーとゴエモンが見る先には、ドス黒いオーラを漂わせるホーネットがいたりして。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ― チャプターEX02:狩りは待つもの、蜘蛛は忍ぶもの ―




 《結局、出番なかったわね》


 《言うなよ。どーせ楽屋裏で同じ理由で泣いてるヤツいるしさ》


 《ウエスタン系二丁拳銃のアイツとか?》


 《それこそ言ってやるなよ…。この話書かれてる時、本編じゃまだ微塵も出てきてないし。

  ていうかオレらだって37話の次回予告で伏字だったし》








 読者のみなさーん!タランスっす〜♪

 できればこの番外編でもコイツらを出したかったんすけどね〜。

 せっかくなので読者のみなさんにだけヒントをあげちゃうと、コイツらは36話である理由でフェードアウトしちゃったヤツらなんすよ。

 それをアタチが修理・改造して、いよいよ第38話でお披露目になるんす。

 あとはー、人型デバイス二人組ってことまでしか言えないっすね〜。でも鋭い人ならわかっちゃったかも〜。








 《このパートだけ妙にメタいわね》


 《言うなよ…》




















 (番外編、終わり)



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 ―ステンスの「知識はあるに越したことはない」―




 ステンス「とまぁ、こんな感じで2013年度特別番外編となったワケだが」


  リティ「年越し前に書ききれなかったことを作者が心底悔しがってたね…。

      それはそれとして、このコーナーは通常営業なんだね。去年と同じく」


 ステンス「楽屋裏ってヤツでレルネが泣いてたな。『出番ない』ってな」


  リティ「名前すら出なかった人も多いんだから、まだ贅沢な気もする…」


 ステンス「というワケで、今回はビコナとマスターコンボイも出向いた"ボビビット国"について少し教えてやる」




 ステンス「ルーラたちデザルトル・アーナのメンツもいる国だな。

      デルポイの南〜南東のエリアを占める、正真正銘の砂漠国家と観光パンフにあった。

      クセルクセスに通じる直通ルートは、国土の北にある火山の脇道を通るらしい。

      デザルトル・アーナがあるアラビアナートとはまた別に、

      パステルップのファスムがいるような都市部がちゃんとある。もちろんボビビット国王もそこにいる。

      噂によれば、少なくとも声のトーンは妙に高いというか軽いヤツらしいがな」




  リティ「近い内にクレアたちが会うことになるかもしれないんだよなぁ」


 ステンス「噂を聞く限り、気難しいワケじゃないが声のトーンが独特で振り回されるヤツもいるらしい」


  リティ「それではみなさん、また本編で!」




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 <第4クールの「とたきま」は!>




  ルーラ「六課メンバーからすれば失踪状態なトラルーだが、その行方が語られる時は意外と近い!」


   アコ「ていうか、これ読んで気づけなかったら…」


  ルーラ「それ以上は言うな!」


   アコ「う、うん、わかったよ…。ところで、デルポイとミッド、両方でスターストーンの情報が出るんだって?」


  ルーラ「そう。実はスターストーンはミッドにもあったりする。

      どうしてそんなことになっているのか、どんな力を持っているのか…。

      第37話でクレアたちがゲットできた"ダイヤモンドスター"にもスペシャルな力が秘められているので、お楽しみに!」


   アコ「で、ボクたちの本編での出番はいつになるの?さすがにそろそろ…」


  ルーラ「アコたちも含めたデザルトル・アーナの活躍は、ちょっと間を置いた第39話〜40話にて描かれる予定だ。

      同時に、クレアたちは第3のスターストーンを追いかけ始めることになる」


 ストラナ《しかして偉い人作者は現在、第38話の執筆で四苦八苦。

      もう少々お待ちください》


   アコ「ようやく希望が見えてきたね。マジコにもいい話ができそう」


  ルーラ「初登場するまでは出番に関する衝動が落ち着かなそうなアコはともかく、

      本年もこの"とたきま"をよろしくお願いします!」















































 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 <あとがき>



 今年度は年末休み突入が遅かったこともあって執筆が遅れましたが、2013年度の番外編としてはかろうじて成立しました(´・ω・`)



 そんな事情を抱えさせてしまった今回のお話ですが、今回はとあるドラマCDの一部を元にして、アレンジしたものとなります。

 ルーラの正体バレイベントもそう遠くない内にやっちゃおうということで、ルーラの扱いが更に開き直ったものに。

 ていうかもう、ほぼ答えです。ビコナ他数名には先行で気づいてもらいましたが、本編での正体バレイベントで少し活かしてみようかなーと計画中。



 前年度のものがショートストーリー集だったのに対してこちらは一本ものなので、登場人物は結構絞られていたり。

 でないと収拾つかないですし(オイ)



 新年早々にスプラッタされてしまったジュンイチですが、まぁ番外編ということで出血量が割増しになってます(酷)

 なお、フルボッコ中にルーラが挙げた仇の名前については、ジュンイチのイメージCVから「本当にその人が担当したキャラに殺された人物」になっています(マテ)

 元ネタでもそういった感じで名前が出ていたので、それに合わせてみました。



 昨年は思ったよりも執筆ペースが上がらず行き詰まってましたが、今年はもう少しスムーズに書きたいものです。

 そんな自分と「とたきま」を、今年もよろしくお願いしますm(_ _)m



管理人感想

 放浪人テンクウさんからいただきました!

 ジュンイチ……合掌。まぁ楽しかったからいいけど(ちょっと待て生みの親
 しかし、生物学的なレベルで暗示が効かないジュンイチに催眠術をかけるとは……徳川マジック恐るべし。

 …………あと、とりあえずスリアは自重しよう。
 万蟲姫を暴走させるとか、ヴィヴィオ、ホクトと並ぶ『とまコン』純真三巨頭の一角に何してくれてんのキミわ(苦笑)。