「ふぇ〜、こりゃすごいな」
 トーナメント当日、会場整理や来賓の誘導など生徒に割り当てられた準備作業を終え、更衣室にやってきた鷲悟は、モニターに映し出された会場の様子を見て思わず声を上げた。
 まだ試合前ということで、モニターは観客席の様子を映し出しているのだが、そこにはニュースなどで何度も見た各国政府関係者や研究所員、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に会していた。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。
 一年には今のところ関係ないけど、それでもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入ると思うよ……あと、僕らみたいな“レアケース”にも」
「ふーん……」
 感心すれども興味なし、といった様子にこちらの心情を読み取ったらしい。シャルルはクスリと笑みをもらした。
「鷲悟はボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいだね」
「おぅ」
 あっさりとうなずき、鷲悟が思い出すのはセシリアと鈴のことだ。
 二人とも、ISの修復は交換パーツのならしを含めつい先日ようやく完了したばかり。ペア登録の締め切りには間に合わず、結局トーナメント参加は辞退せざるを得なかったのだ。
 普通の生徒ならともかく、国家代表候補生、さらにその中でも選りすぐりの専用機持ちの二人だ。トーナメントで結果を出すどころか参加できないというのは、間違いなく二人の立場を悪くするだろう。修復が終わっている以上、事情を知らない来賓には“ISが使えるのに参加しない”という第一印象を与えてしまうだろうからなおさらだ。
(姐さんの経歴を守るためなら、あいつら二人の経歴を踏みにじっても許されるのかよ……
 そう思っているなら、それは傲慢ごうまんだぞ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
 もし本当にそうなんだとしたら……)
「……オレは、その傲慢を踏みつぶす……」
 思わず口に出し、握りしめた手に力が入る――それに気づき、シャルルがさりげなく鷲悟の左手を取り、ほぐしてくれる。
「感情的にならないでね。
 彼女は、おそらく一年の中では現時点での最強だと思う」
「残念ながら、その願いは聞けないな。
 怒りはオレの“力”を最も強く引き出す……むしろブチキレてる方が、オレの場合は強いんだよ」
「くすっ、まるでスーパーサイヤ人だね」
「そのたとえはむしろ光栄だから否定しない。
 つか……」
 シャルルに答え、鷲悟が視線を向けるのは――
「本当に心配するべきは、オレよりも一夏だよ。
 何しろ、問題のラウラと組まされてるんだからな」
「フンッ、余計な心配だぜ、鷲悟」
 鷲悟の言葉に、一夏は不敵な笑みと共にそう答えた。
「正直、ラウラのやったことは許せないし、わだかまりはある。
 けど……」
「『真剣勝負に手を抜いていい理由にはならない』……だろ?」
「あぁ。
 鈴やセシリアみたいに出たくても出られないヤツだっているんだ。なのに、出場できるオレがぜいたくなんか言ってられないだろ。
 だからオレは全力で戦う――お前と当たっても、手加減なんかしないからな」
「そうこなくっちゃな」
「ここにもいたよ、サイヤ人……」
 応えて、鷲悟は一夏と固く握手を交わす――その光景にため息まじりにつぶやくと、シャルルは気を取り直して一夏に声をかけた。
「でも一夏、肝心のボーデヴィッヒさんは何て? あっちが納得してないなら、最悪……」
「とりあえず……『トーナメントに優勝するまでは休戦。だけどジャマだけはするな』だってさ」
「少なくとも、背中から撃たれる心配はしなくてもいいってことか……
 まぁ、一夏を途中で排除したが最後、それ以上トーナメント出れなくなっちまうからなー。優勝狙ってるなら、排除したくてもできないってことか。
 ………………まさか千冬さん、そこまで計算して一夏と組ませたんじゃないだろうな」
「あ、ありえる、千冬姉なら……」
 鷲悟の仮説は現実味がありすぎた。一夏がうめき、三人は乾いた笑いを浮かべるしかなくて――ふと、鷲悟の視界に時計の表示が入ってきた。
「……っと、そろそろ対戦表の発表の時間だな」
 なんでも、トーナメントを二人一組ツーマンセル方式に変更したはいいが、対戦表を作るシステムの方がそれに対応していなかったらしく、生徒達の手作りクジによる抽選というアナログ感あふれる抽選方法となっていた。その抽選結果が、そろそろ発表になる時間だ。
「あ、出るみたいだよ」
 シャルルの言う通り、モニターの画面がトーナメント表に切り替わる。三人は表示されたその名前を確認して――
『………………え?』
 目を丸くした。
 鷲悟とシャルロットの組は一回戦第一試合。対戦相手は箒・本音ペア。
 そして、彼らの試合の勝者とぶつかる形で――



 一夏・ラウラの組が、一回戦シードでエントリーされていた。

 

 


 

第11話

トーナメント開幕!
リベンジマッチの始まりだ

 


 

 

「まさか、いきなりお前達と当たるとはな」
「まさっち〜、しゃるるん、やっほ〜」
 一回戦第一試合――鷲悟達に対し、真剣な面持ちで告げる箒だったが、そのとなりの本音がそんなシリアスな空気を粉みじんにぶち壊してくれる。いろんな意味で凸凹コンビな二人である。
 しかし、シリアスクラッシャーは本音だけではなかった。ため息をつき、鷲悟が箒に申し訳なさそうに告げる。
「やる気になってるところ悪いんだけどさー、篠ノ之さん。
 ラウラとやる前に手の内さらしたくないからさ……速攻で決めさせてもらうわ」
「すでに勝ったつもりか?
 ずいぶんと――なめられたものだ!」
 箒の言葉と試合開始の合図が重なる――打鉄の近接ブレードを振りかざし、一気に間合いを詰める箒だったが、
「なめてないさ。剣道で何度しばき倒されたと思ってんのさ」
 そんな彼女の斬撃をかいくぐり、鷲悟はその背後に回り込み、
「だから……」
 鷲悟の全身の火器がすべて箒に向けられ――

「手の内を見せる間もなく――全力で、踏みつぶす!」

 フルパワーの一斉射撃が、離脱を許さず箒を直撃する!
 ――が、
「まだ――だぁっ!」
「――――――っ!?」
 爆煙の中から、箒が飛び出してきた。今度は彼女の斬撃が鷲悟を弾き飛ばす!
「く………………っ!
 驚いたね。さっきので撃墜確定かと思ったんだけど」
「貴様が速攻を狙ってくるからには、最初からフルパワーのフルバーストで来ると思っていたからな。
 防御力に優れる打鉄でのシールドフルパワー……これなら、貴様のフルバーストにもギリギリ耐えられる」
 体勢を立て直し、うめく鷲悟にそう答えると、箒は近接ブレードをかまえ、
「後は……初手を仕損じた貴様を、一気に押し切る!」
 そのまま再度鷲悟にしかける。かまえたグラヴィティランチャーの銃口を一閃で跳ね上げ、そこからの回し蹴りで鷲悟を蹴り飛ばす!
「もらった!」
 体勢の崩れた鷲悟に向けて、箒が突っ込んで――

「敵は、オレひとりだったっけ?」

「――――――っ!?」
 鷲悟の言葉の意味に、箒の中で警戒レベルが跳ね上がる――が、遅かった。彼女が反応するよりも速く銃弾の雨が箒に向けて降り注ぎ、鷲悟のフルバーストで撃墜判定寸前だった箒にトドメを刺した。
「バカな!?
 デュノアはこちらを狙っていなかったのに……!?」
 不意打ちを警戒してシャルルの様子にも気を配っていたのだ。そこは間違いない。だったら誰が――箒が銃弾の飛んできた方向を確認すると、
「しのっち、ごめ〜んっ!」
「布仏!?」
 そう。撃ったのはシャルルではなく、自らの相棒――ラファール・リヴァイヴを身にまとった本音だった。シャルルを狙ってアサルトライフルの銃弾をばらまいたまではよかったが、当のシャルルにはあっさりとかわされ、狙いの外れた銃弾がその射線上にいた箒に降り注いだのだ。
「……って、待て。
 さっきの言葉の先にコレということは……まさか、布仏は!?」
「そう……誘導させてもらったよ。
 オレのフルバーストに耐えられた場合の予備プランとしてね」
 気づき、声を上げる箒に、鷲悟はあっさりとそう答えた。
「と言っても、シャルルにずっと布仏さんとお前の間に居座り続けてもらってただけなんだけどね。
 これなら、布仏さんがシャルルを狙った銃弾をかわせば、篠ノ之さんへの味方撃ちフレンドリ・ファイアを狙えるし、フルバーストに耐えた後ならそれで撃墜だって不可能じゃない。
 もっとも、その狙いに気づいて撃たない、なんて可能性もないこともなかったけど、布仏さんの性格を考えると……」
「あー………………撃つな」
 “箒が墜ちてもかまわない”的な意味ではなく、“そこまで考えが回らない”的な意味で。実際撃ったし。
「しかし、また回りくどい手に出たものだ……最初からデュノアに狙わせればいいだろうに。
 それも、ボーデヴィッヒに情報を与えないためか?」
「それもあるけど……そんなことを言い出すからには、篠ノ之さんだって警戒してたんでしょ? シャルルのこと。
 それに……前に鈴とやり合った時、ロックオンアラートの有無をごまかしてだまし討ちにしてるからね……オレ達自身の変則攻撃は警戒されてると思ってた」
 尋ねる箒だが、鷲悟はあっさりと付け加えた。
「だから布仏さんに流れ弾をばらまいてもらったのさ。
 さすがのハイパーセンサーも、味方の誤射、しかも流れ弾となるとフォローが遅れるんじゃないかと思ってさ」
「何から何まで、計算ずくか……」
「でもないよ。
 篠ノ之さんと布仏さん、なんて意外な組み合わせだったからね。ひょっとしたら、ペアが見つからなくて抽選で決まった組なんじゃないか。だったら、連携もそれほどこなれてないんじゃないか……そんな、根拠のない仮説に基づいて試合前に即興で組んだ策だったからね。
 こんな準備不足もいいところで組み上げた策なんて博打と変わらないよ。そもそも“二人の連携がこなれてない”っていう前提が外れていたら、その時点で策自体が崩壊してた」
 うめく箒に答え、鷲悟はシャルルに翻弄ほんろうされている本音へと向き直り、
「布仏さんはどう控えめに考えても戦闘向きの性格じゃない。だから、あの子に負担をかけないように前に出る――篠ノ之さんのことだからそう考えたんだろうけど、その気遣いを逆に利用されることを考えるべきだったね。
 ……じゃ、布仏さん撃墜してくるから」
 言って、自分の前から飛び去っていく鷲悟の姿を見送りながら、箒は悔しさに唇をかんだ。
 ――弱い。
 そう思わずにはいられなかった。
 今度こそ――自分の弱さに打ち克ち、くだらないウワサに化けてしまった一夏との約束をあるべき形で果たす。そう意気込んで挑んでみれば、結果は突出したあげくの秒殺。しかも味方撃ちフレンドリ・ファイア
 本音には悪いが、彼女ひとりで鷲悟とシャルルの相手などまずムリだ。これで初戦敗退は確定だろう。
(何をしているんだ、私は……!)
 ――強くなりたい。
 そう思わずにはいられなかった。
 自分が強かったら、こうもたやすくは墜とされなかっただろう。本音を守ることもでき、まだまだ一夏との約束のために戦えたはずだ。
 それができなかった理由は。自分に欠けているものは――
(力が欲しい……
 何者にも負けず、何者をも守れる絶対的な力……それさえあれば……)
 強く、拳を握りしめる――求めるものが“強さ”から“力”にすり替わっていることに気づかないまま。
 在り方の見えない“強さ”より、目に見える“力”を求めている自分に気づかないまま――



 篠ノ之箒の中で、何かが狂い始めていた。





「う〜、負けちゃった〜。
 まさっちもしゃるるんも強すぎだよ〜」
「ハッハッハッ、どんなもんだい」
「ほめすぎだよ、布仏さん。
 ……というか、しゃるるんは、ちょっと……」
 大方の予想通り、間もなく本音も撃墜されて試合終了――ひとり沈む箒とは対照的に、他の三人は和気あいあいといった様子でピットに戻ってきた。
「お疲れさまです、みなさん。
 ……えっと、篠ノ之さんと布仏さんは残念でしたね」
「いえ……」
 そんな4人を出迎えたのは真耶だ。労いの言葉をかけられ、箒は気まずそうに視線をそらす。
「あ、でも……布仏さん、ちゃんとISの調整はしましたか?
 布仏さんの反応に、リヴァイヴがついて来れてませんでしたけど」
「う〜、ちゃんとしたと思うんだけどなぁ〜」
「でも、実際ついて来れてなかったよね? ボクも戦っていてそう思ったもの」
 真耶と本音の会話にシャルルが加わる一方、鷲悟はピット内を見回し、
「…………あれ? 一夏は?」
「あぁ、織斑くんなら、ボーデヴィッヒさんのところに行きましたよ?
 『試合前に、一度声をかけてくる』って……」
「一夏の方は、パートナーとしての自覚あり、か……ラウラの方はどうなんだか」
 答える真耶の言葉に鷲悟が苦笑していると、今度はシャルルが声をかけてきた。
「でも……鷲悟、ホントにいいの?」
「ん? 何が?」
「ほら、試合前に話したでしょ? このトーナメント、各方面から人が来てるって。
 鷲悟の“装重甲メタル・ブレスト”は、ISじゃないのにISと互角に渡り合えるだけの力を秘めている。それに技術的な観点から言っても、文字通り未知の技術の塊だし……
 何より、男の鷲悟が扱ってるっていうのが一番大きい。どの国も企業も研究機関も、ノドから手が出るほど手に入れたい存在のはずだよ。ある意味“ISを使える男ボクら”よりもね。
 それなのに、こんなところで全力出したりしたら……ボーデヴィッヒさんに勝っても、トーナメントが終わった後で間違いなく面倒なことになるよ」
「なんだ、そんなことか。
 かまうことないよ。勧誘とか研究協力の依頼とか来ても、全部断ればいいだけだ。
 第一、手なんか抜いてたらラウラには勝てないからな――開き直って、ラウラとの試合はハナから全開でいく」
 ごく当然のように、鷲悟はあっさりとそう言い切った。
「ま、それでもしつこいヤツはいるだろうけど……そんなヤツらのためにも、ここは全開で行く必要があるんだよ。
 よからぬ事を考えそうなヤツらに見せてやればいい……」



「オレを飼い慣らせると思ってるなら、それは大きな間違いだ――ってね」





「……鷲悟とシャルル、勝ったみたいだな」
「当然だな」
 更衣室とは別に用意された控え室――声をかける一夏に、ラウラはただそれだけ答えた。
「見ておかなくてよかったのか?
 お前、鷲悟を倒すつもりだったんだろう?」
「専用機持ちが相手だったならともかく、大量生産の果てに没個性の塊と化した量産機など、織斑教官ほどの使い手でもなければ大した相手ではない。
 そんなザコを蹴散らす様など参考になるか」
 鷲悟(とシャルル)の一回戦の相手、ちなわち箒(と本音)のことをザコ呼ばわりされてムッとするが――ここでケンカをしても始まらない。グッと反論の言葉を押し留める。
「覚えておけ、織斑一夏。
 私の最終目標はあくまでも貴様だ。優勝の暁には織斑教官直々にジャマの入らない決着の場を用意してくれると言うから、仕方なく貴様と組んでいるにすぎん。
 教官の汚点である貴様の存在を、私は認めない」
「ホント、千冬姉のこと尊敬しているんだな、お前」
「当然だ。
 あの方以上のIS操縦者を、私は他に知らない。
 強く、気高く、美しい――あのようになりたいと心から思う」
「千冬姉のように、ね……」
 やはり千冬のこととなると食いつきが違う。いつになくよくしゃべるラウラの言葉に、一夏はラウラをつま先から頭のてっぺんまで観察し……
「千冬姉の……ように?」
「待て貴様! 私のどこを見た上で疑問形に言い直したのか言ってみろ!」
 どうやら、自分の“どこ”を判断基準にされたか自覚があるらしい。首をかしげる一夏に、ラウラは思わず食ってかかる。
「これでも毎日牛乳は飲んでいるし、特定部位のマッサージも毎日欠かしていないんだぞ!
 必ずなってみせる! あの人のように!」
「わかったわかった。
 きっとなれるから、とりあえず落ちつけ」
「ふーっ! ふーっ!」
 どうやらこの話題は(Notシリアスな意味で)地雷だったらしい。なだめる一夏だが、ラウラは荒々しく肩を上下させている。
「けどさ……マジメな話、あまり美化するも考えものだと思うぞ?
 オレだって千冬姉は世界で最高の姉さんだと思うけど……オレの場合、家での千冬姉を知ってるからなぁ……
 正直、あの千冬姉の姿を見てお前が幻滅しないか心配だぞ、オレは」
「………………何?」
 が――続く一夏の言葉に、ラウラの動きがピタリと止まった。
「家での……つまり、プライベートの織斑教官、ということか?」
「あぁ。
 …………知りたいのか?」
 ものすごく勢いで首を上下に振る。さっきまで敵対心むき出しの態度がウソのようだ。
(…………なんとなく、コイツの扱い方がわかってきた気がする)
 できればもっと早く――せめて先日の乱闘前に知りたかったとちょっとだけ後悔しながら、一夏は手ごろな話題を頭の中でピックアップしていく。
「そうだな……たとえば洗濯物なんk



 ごすっ。



 鈍い音と共に一夏の動きが止まった――数秒の間の後、その身体が崩れ落ちる。
「……出席簿?」
 その脇に落ちたそれを見て、ラウラは眉をひそめて――
「すまんな。手がすべった」
 現れた千冬が出席簿を拾って去っていった。
 しばしその後ろ姿を見送ると、ラウラは足元で目を回している一夏を見下ろし、
「……おい、織斑一夏。
 さっさと起きろ。そして教官のことを教えr
 その瞬間ラウラの脇を何かが駆け抜ける――見ると、背後の壁に“それ”が突き刺さっていて――
「……すまんな。また手がすべった」
 戻ってきた千冬が“出席簿それ”を回収して去っていった。
「……出席簿は、壁に刺さるようなものだったか……?」
 再度一夏を起こす気にはならなかった――いろいろと怖くて。



「フンッ、まさか初戦で貴様と当たるとはな。
 決勝でやりたかった貴様としては予定が狂ったか?」
「別に、そういうつもりであの“忠告”をしたワケじゃないんだけどね……」
 ラウラに放置された一夏が気がついた時には一回戦の試合はすべて終了。いよいよ2回戦第一試合――すなわち、鷲悟・シャルル組と一夏・ラウラ組の試合である。
 すでに鷲悟もラウラもやる気十分。アリーナ中央で対峙するなり、さっそくラウラが挑発してくる――適当に相手をしながら、鷲悟はシャルルに個人間秘匿通信プライベート・チャンネルで呼びかけた。
《シャルル》
《ん? 何?》
《ひとつ……お願いがある。
 悪いけど……アイツとの戦いでオレがラウラを“どういう方法でぶちのめしても”、決して手出しはしないでほしい》
《鷲悟……?》
《ちょっと、悪役ヒールを演じさせてもらおうと思ってね》
 シャルルに答えて、鷲悟は対峙するラウラへと視線を戻した。
《ラウラが“あんな”なのは、自分の力への絶対の自信と千冬の姐さんへの執着で周りが見えなくなってるせい……なんだと思う。
 ウチの弟があぁいうタイプと何度となくやり合ってるからわかるんだ――あぁいう手合いは、一度支えになっているものを根こそぎへし折ってやらなきゃ、何度だって同じことを繰り返す。
 だから、この戦いでアイツを支えてるもんを根っこから踏みつぶす……けど、その方法、けっこうえげつない方法しか思いつかないんだ。
 だから……》
《大丈夫だよ》
 一切の迷いなく、シャルルは鷲悟に同意してみせた。
《ボクは……鷲悟のこと、信じてるから》
《ありがと。
 ……千冬さんも、そういうことなんで》
《…………仕方あるまい。
 教師という立場上止めないワケにはいかないが……止めに入るタイミングを遅らせるくらいのことはしてやる。
 ……それから、『織斑先生』だ》
 次いで声をかけるのは、シャルルと並行してチャンネルをつなげていたこの人。鷲悟に話を振られて、教師だけが入ることを許可された観察室にいるはずの千冬が答える。
《……あぁ、それともうひとつ》
《はい?》
《………………ボーデヴィッヒを、頼む》
「……りょーかい」
 声に出してうなずいて、鷲悟は改めて意識をラウラに戻す。
 試合開始まで5秒、4秒、3、2、1……開始。
「シャルル!」
「一夏!」
 まず動いたのが一夏とシャルル――まるで示し合わせたかのように同時に上昇、上空でそれぞれの獲物を手に対峙する。
「……フンッ、むしろ好都合か。
 すぐそばでザコにウロチョロと飛び回られてもうっとうしい」
「二人ともオレの大事な友達なんだ。カトンボみたいに言わないでほしいな」
 ラウラに答えて、鷲悟は両手に握るグラヴィティランチャーを腰の両側にマウントして、
「けど……一夏もシャルルもわかってらっしゃる。
 開始早々オレから距離を取ってくれたのは“オレにとっても都合がいい”」
「フンッ、『お前を倒すのはこのオレだ』とでもお決まりのセリフをほざくつもりか?」
 鼻を鳴らして聞き返すラウラに対して――鷲悟は答えた。
「“思いっきりやれる”からさ!」
「何――――?」
 ラウラの疑問の声には行動で答えた。すかさず右手を彼女に向けてかざし――放たれた重力波の渦が、ラウラを巻き込んで荒れ狂う!
「く…………っ!
 抜き撃ちでこの威力とは……っ!」
 しかし、ラウラも負けてはいない。舌打ちしながらもすぐに体勢を立て直し、
「――そこだっ!」
 右手をかざし――発生した不可視の力が、飛び込んできた鷲悟の身体をからめ取り、動きを封じ込める。
「残念だったな。
 初手の攻撃を目くらましに、一気にたたみかけようとしていたようだが――」
 言って、ラウラは右肩のレールカノンを鷲悟に向け、
「そんな猪突猛進の策が、私に通じるものか!」
「……こないだの『有象無象』といい、オレら世代じゃ日本人すらあんま使わんような日本語平気で使うよな、お前」
「織斑教官の母国語だからな。当然勉強した……って、そんな話をする場か、ここはっ!」
 ツッコむと同時にレールカノンを発射。砲弾は鷲悟を直撃――せず、アリーナの壁に着弾した。
 発射の直前、鷲悟の姿が射線から消えたのだ。もっと言うと――逃げられた。
「バカなやり取りで集中を乱されたか!
 ヤツは――」
 目標の姿を探し、周囲を見回すラウラの背後に鷲悟が音もなく回り込む――が、
「――甘いっ!」
 ラウラはすぐに気づいて対応する。先ほど以上に強い集中と共に放たれた停止結界が、鷲悟の身体を確かに捉え――



 かまわず鷲悟の振り抜いた拳が、ラウラの脳天にゲンコツを落としていた。



「な――――っ!?」
 思い切り殴り飛ばされ、なんとか体勢を立て直す――しかし、ラウラは今自分の身に起きたことが正直信じられなかった。驚愕もあらわに対峙する鷲悟に視線を向ける。
 シールドバリアに守られ、彼女自身にダメージはない――が、問題はそんなことではない。
 何しろ、今停止結界は“確かに発動し、鷲悟の身体を捕らえていたのだから”。
 つまり、鷲悟は停止結界をものともせずに自分に一撃を入れたことになる。
「バカな……
 停止結界を、どうやって!?」
 驚いている間にも鷲悟が次の動きを見せる。ラウラも負けじとその姿を追い――その視界から鷲悟の姿が消え失せ、
「自分の切り札が、いつまでも絶対だと思うな」
「――――――っ!?」
 姿を見失った一瞬の間に、鷲悟は彼女の眼前に飛び込んでいた。反射的に展開した停止結界が鷲悟の身体を捕らえるが、やはり動きを止められず、サッカーボールキックの要領で上空に蹴り上げられる。
 すぐに上空で立て直すが――追撃が来た。停止したことで逆に後を追ってきた鷲悟に間合いを詰められてしまい、ヒザ蹴りを叩き込まれた上に地上に向けて叩き落とされる。
「絶対だと、破られないと思っているから、いざ攻略された時に立て直せない。
 どんな強力な攻撃も、どんなに強固な防御も、原理さえわかれば攻略法はどこかに見えてくる」
「原理、だと……?」
「あぁ」
 うめくラウラに対し警戒を緩めぬまま、鷲悟は続ける。
「その停止結界のことはセシリア達から聞かせてもらった。
 正式名称はアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。ISの飛行システムの根幹を成しているパッシブ・イナーシャル・キャンセラーの発展版で、展開したフィールドに触れた対象の慣性、つまり運動エネルギーを打ち消すことで、あらゆる動きを封じ込める。
 フィールド自体の完成度はきわめて高い――現状の課題は展開範囲の狭さと制御の困難さ。だから狙った対象にピンポイントでぶつけるしかないし、前にも言った通り維持するには高い集中力が要求される。
 そこまでわかれば、攻略は簡単だ――もっとも、オレにしかできない攻略法だけどな」
「何……!?」
「とっくにご存知なんだろう? おだやかな心を持ちながら……ゲフンゲフンッ。
 オレの能力……“装重甲メタル・ブレスト”じゃない、“オレ自身の能力”」
 鷲悟の言葉に――思わずボケた後に続いた本命のその言葉に、ラウラの目が見開かれるのがハッキリとわかった。どうやらそれだけでこちらの言いたいことを察してくれたらしい。
「オレは、オレ自身の能力として重力に干渉、制御することができる。
 そして――重力を“対象にかかる運動エネルギー”として見た場合、オレの重力制御は“運動エネルギー制御”と言い換えることができる。
 そう……“慣性という運動エネルギー”を操るAICと、やってることは同じなんだよ。
 やってることが同じなら――自分の“力”を制御するように、お前のAICに干渉し、無効化することも不可能な話じゃない」
「バカな……
 仮にやっていることが同じでも、AICと貴様とではその手段はまるで違う……
 干渉する、しない以前に、こちらがどうやって慣性を停止させているかを解析する必要がある――それが可能となるほどのデータを、貴様はどこで手に入れた!?」
「はぁ? 何言ってるのさ?」
 反論するラウラに対し、鷲悟は不思議そうに聞き返した。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ――“データはお前が提供してくれた”んだぜ」
「何だと……!?」
 思わず声を上げるラウラに、鷲悟は笑みを浮かべ、
「忘れた?
 お前、さんざんAIC使いまくってるだろ――“ブルー・ティアーズや甲龍シェンロン、白式に向けて”」
「――――――っ!?
 貴様……ヤツらの稼動データから!?」
「そういうこと。アイツらの観測したAICのフィールドエネルギーの構築データを見せてもらったんだよ。
 同じことができるオレがようやく理解できるくらい……その程度ではあったけど、AICがどうやって慣性を打ち消しているのかを知るには十分すぎるくらいのデータ量だったよ。
 アイツらとの戦いで無闇に使いすぎたこと、そして、独りでいるのが当たり前のお前にはその際に得られたデータをオレ達で共有するという発想ができなかったこと……二つの意味でうかつだったんだよ、お前はな」
 気づいたラウラに答え、鷲悟は彼女に向けて一歩を踏み出す。
「ISバトルは戦場での戦いとは違う。どれだけ場外乱闘で勝ちまくろうと、アリーナでの公式試合に勝てなくちゃ意味がない。
 けど、お前はそれを忘れていた。あの場を戦場と捉え、あの場で勝つために、あの場でオレ達を仕留めようとして……その結果、本番の戦いの前にオレに手の内を明かしてしまった。
 あれが戦場だったならそれでもよかった。あの場でオレ達を始末してしまえば、それでオレ達はくたばって The end.……“次”はないからな。
 けど、ここは戦場じゃない。オレ達を倒してもオレ達は死なず、その“次”がある……そのことをお前は忘れていた。軍人としての気質が裏目に出たな」
 そして――鷲悟はラウラに向けて力強く宣言する。
「覚えとけ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
 このオレに……」



「同じ手が、いつまでも通用すると思うな!」





「すごい自信ですね……言い切っちゃいましたよ」
「まぁ、それだけの実績を見せているからな、アイツは」
 観察室でモニターを見ながらつぶやく真耶に、千冬はあっさりとそう答えた。
「オルコットのブルー・ティアーズ、凰の衝撃砲、そして今回、ボーデヴィッヒのAIC……これまでヤツは、相対する第三世代兵器のすべてを、特性を見切り、付け入るスキを見出すことで戦いを優位に進めている」
「あ……そういえば……」
「一見するとその火力にばかり目が向いてしまうが、私に言わせればあの分析能力と応用力の方がよほど厄介だ。
 手の内を見せれば見せるほど、戦う相手は不利になっていくのだからな」
「なるほど……」
「あの器用さの半分でも、織斑にあればな……」
「織斑くんには織斑くんの良さがあるじゃないですか。
 あの突破力は、正直うらやましいですよ、私」
「現状、デュノアにあしらわれているがな」
 鷲悟達の戦いに隠れてしまっているが、一夏とシャルルも上空で目まぐるしく飛び回り、幾度となく交錯している――が、なんとか間合いを詰めたい一夏に対し、シャルルはその突撃をうまくいなして、なかなか一夏に得意な間合いを取らせないでいる。
「それにしても……学年別トーナメントのいきなりの形式変更は、やっぱりクラス対抗戦の時の“事件”が原因ですか?」
 問題の“事件”――クラス対抗戦に黒い全身装甲のISが乱入、鷲悟や一夏達と交戦したあの一件は、一般的には『反政府組織の仕業』ということになっている。
 IS学園を襲撃したという事実だけでも大事だというのに、それが無人機だとわかればますます事態は危うい方向へと流れてしまう……そのくらい、この一件はデリケートな問題なのだ。
 今でも各国が敵対国の仕業ではないかと互いを探っている状態。特に自国の代表候補生が直接巻き込まれた中国などはこちらも見当のつかない首謀者の情報を再三に渡って求めてきているほどだ。
「詳しくは聞いていないが、おそらくそうなのだろう。
 より実戦的な戦闘経験を積ませるために、二人一組ツーマンセルになったのだろうな」
「でも、一年生は入学してまだ3ヶ月ですよ?
 戦争が起こるワケでもないのに、今の状況で実戦的な戦闘訓練は必要ない気がしますけど……」
「誰もがそう思っていたところに、あのクラス対抗戦の事件だ。
 特に今年の一年には第三世代型兵器のテストモデルが多い。そこへ謎の敵対者が現れたら、何を心配すべきだ?」
「――あ! つまり、自衛のためですね?」
「そうだ。
 操縦者は当然のこととして、それに加えて第三世代型兵器を積んだISも守らなくてはならない。
 しかし教師の数が有限である以上、それらは原則各自の手に委ねられる……そのための実戦的な戦闘経験なのさ」
「ははぁ、なるほど」
 納得する真耶をよそに、千冬はモニターへと視線を戻す。
 そこには体勢を立て直し、再び鷲悟に挑みかかるラウラの姿があった。
「まだまだやる気ですね、ボーデヴィッヒさん」
「ふんっ」
 しみじみつぶやく真耶とは対照的に、千冬はつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「変わらないな。強さを攻撃力と同一だと思っている。
 だが、それでは柾木どころか――」
 一夏にも勝てないだろう――そう続けようとした千冬の言葉を、モニター越しに観客席から聞こえてきた歓声がさえぎった。
 ラウラをあしらい続けていた鷲悟が、新たな動きを見せたからだ。
 飛び込んできたラウラを地上に向けて蹴り落とし――その次にとった鷲悟の行動に、真耶どころか千冬までもが驚き、目を見開いた。
「ま、柾木くん!?」
「あのバカ……何を考えている……!?」



「カラミティキャノン!?」
「鷲悟のヤツ、カラミティバスターを使うつもりか!?」
 “ラウラとはトーナメントで対戦したヤツがケリをつける”――元々ラウラ自身が望んでいないことに加えてその約束もあり、一夏は鷲悟とラウラの戦いに横槍を入れるつもりはなかった。
 だからこそ、シャルルと共に巻き添えを避け、離れたところで戦っていたのだが――この鷲悟の行動には一夏もシャルルも自分の目を疑った。
 なぜなら――鷲悟は背中に装備された主砲にして最強の切り札、カラミティキャノンを二門とも展開、眼下のラウラに向けたからだ。
「……フンッ、二門のカラミティキャノン……“ツインカラミティバスター”か」
 だが、そんな鷲悟の行動は、逆にラウラを冷静にさせていた。
「ヘタな脅しだな。
 そんなものを、この位置取りで撃てるものか――そんなことをすれば、観客までもが巻き添えだ」
 そう。一夏達をあわてさせ、ラウラが「脅し」と断じたその理由、それはひとえに、カラミティキャノンの“強力すぎる”火力にあった。
 周囲の空間に漂う熱エネルギーやビーム攻撃の残滓など、あらゆるエネルギーを取り込んで自らの火力に転化する“カラミティシステム”、そこから得られたエネルギーを用いての、カラミティキャノン二門によるフルパワー砲撃――それが今鷲悟が放とうとしている“ツインカラミティバスター”だ。
 だが――繰り返しになるが、このツインカラミティバスターはとにかく“強力すぎる”。単発ですらアリーナの遮断シールドを難なく撃ち貫き、二門の火力を重ねたならその威力は二乗化され、ISを絶対防御もろとも消し飛ばすことすら可能となる 。
 軍用ならともかく、競技用ISに搭載しようものならぶっちぎりでレギュレーション違反になるであろうことは確実。レギュレーション適用外の“装重甲メタル・ブレスト”だからこそかろうじて見逃されている、それほどまでに凶悪無比な武装なのだ。
 それを、自分よりも下方に位置する、すなわち“観客席を背にした”ラウラに向けて放とうというのだ。ラウラに命中しようがしまいが、確実に観客席は巻き添えを受けることになる。
 そして――鷲悟の性格上、そんなマネをするとは思えない。だからこそラウラはこの鷲悟の行動を「脅し」と判断したのだ。
「AICを破ってみせたのは大したものだが……そんな脅しに出たところを見ると、それが精一杯だったようだな。
 撃てるものなら撃つがいい。無関係の観客を巻き込む覚悟があるのなら――」

「……カラミティシステム、起動」

「――って、お、おい……!?」
 かまわずカラミティシステムを起動させた鷲悟の姿に、初めてラウラの顔から血の気が引いた。





「じ、冗談じゃないわよ!
 アイツ、撃つつもりじゃないでしょうね!?」
 そんな鷲悟の行動は、当然観客席からも見えている。鷲悟がカラミティシステムの起動を示す光翼を展開したのを見て、セシリアと共に観客席から戦いを見守っていた鈴は思わず声を上げた。
「まさか、ラウラさんへの怒りで周りが見えなくなってる……!?」
 鷲悟のラウラへの怒りぶりを考えるとありえない話ではない――信じたくない可能性が脳裏をよぎり、セシリアがつぶやくと、



「そんなワケないじゃない」



 そうセシリアに答えたのは鈴……ではなかった。
 すぐそばの席に座っていた少女だ――私服ということは、来賓として招かれた民間人の身内だろうか。
 見たところ年下のようだ。茶色がかった黒髪をポニーテールにまとめ、白いカチューシャで前髪を上げている。
 それはともかく――問題は彼女の言葉の方だ。
「あそこから撃ったらあたし達も危ない――そんなことわかってるはずだよ。
 今見えている状況だけでものを言ってると、後で予想が外れた時に恥かくよ〜」
「ずいぶんと自身がおありのようですわね。
 あなた、鷲悟さんのいったい何を知っているというんですの?」
「百聞は一見にしかず……ってね。
 見てて。もうチャージが終わるよ」
 セシリアに答えた少女の言葉に見上げると、鷲悟の“装重甲メタル・ブレスト”のヘッドギアが彼の両目を覆い、照準システムとしてラウラに狙いを定めているところだった。
 もう完全に発射態勢だ。少女は大丈夫だと確信しているようだが、もし鷲悟が本気でアレを撃ったりしたら――



「鷲悟さんっ!」



 セシリアが思わず彼の名を叫んだ、その時――



 鷲悟が“落ちた”。



 突然、まるで“真上から叩き落とされたかのように”その身体が落下したのだ。そのまま、中空に佇んでいたラウラの脇を駆け抜け、地上に叩きつけられる。
「何だ――――っ!?」
 思わず声を上げ――ラウラは気づいた。
 背中を大地に叩きつけ、苦悶に顔をしかめながら――



 “こちらにカラミティキャノンの砲口を向けている鷲悟に”。



「しまっ
おせぇっ!
 ツイン、カラミティ、バスタァァァァァッ!」
 しかし、すでに手遅れ――鷲悟の放ったツインカラミティバスター閃光は、一瞬にしてラウラを飲み込み、その先の遮断シールドを貫いて上空へと光の軌跡を描き出す。
 閃光は空の彼方に消えていき――アリーナ内は試合中とは思えない静寂に満たされた。
 そんな中――口を開いたのは鈴だった。
「……そ、そうか! 超重力!
 アイツ、発射の直前に自分に重力をかけて、ラウラの下まで“自分自身を叩き落とした”のよっ!」
「そうすることで、自分の方がラウラさんよりも下に位置することになる――それに、自らの機動による移動ではないから、ラウラさんの意表をつくこともできる……
 なるほど、考えましたわね」
 今の一連の流れ、鷲悟がいきなり落下したのは何だったのか――そのカラクリに気づき、鈴だけでなくセシリアも感嘆の声を上げる。
「あなたが言っていたのはこのことでしたのね。
 でも……どうしてわかったんですの?」
 しかし、自分達よりも早く、おそらく最初から気づいていたと思われる人物もいる――自分達に口をはさんできた少女へとセシリアが声をかけ――
「……って、あら……?」
 少女は、座っていた席から忽然と姿を消していた。



「…………ふぅっ。
 ジュンイチから借りた『ドラゴンボール』、熟読しておいて正解だったな……
 孫悟空VS完全体セル戦での瞬間移動かめはめ波のアイデアが、まさかこんなところで再現の機会に恵まれるとはね」
 自分の中に取り込まれたエネルギーを残らず吐き出し、身を起こす――カラミティキャノンを二門とも背中に戻すと、鷲悟はツインカラミティバスターの火力を目の当たりにしてどよめき始めた会場を尻目に上空を見上げた。
「とりあえず、命まで奪うつもりはないからな……絶対防御は抜かないように“手加減してやったぜ”。
 来いよ。まだやれるんだろう?」
「く…………っ!」
 鷲悟の言葉とほとんど同じタイミングで、ラウラが爆煙の中から姿を現す――が、彼女のIS“シュヴァルツェア・レーゲン”は、カラミティバスターを受けてボロボロに傷ついている。
「さっさとかかって来いよ。
 それとも、もう降参する?」
「余裕のつもりか……ふざけるな!」
 言い返し、ラウラが突撃。繰り出されたプラズマ手刀やワイヤーブレードを、鷲悟は冷静にかわしていく。
「私は、負けるワケにはいかない!
 このトーナメントに勝ち残り、織斑一夏を叩きつぶす!
 あの人の――教官のために!」
 言って、ラウラが左のプラズマ手刀で鷲悟の顔面を狙い――
「『織斑先生のため』ね……」
 鷲悟は、右手で彼女の腕をつかんでその一撃を止めていた。
「言葉が足りないな。
 『“自分の理想の”織斑先生のため』だろうが!」
 ラウラがワイヤーブレードを放とうとするが、それよりも早く彼女の腹に左拳を叩き込み、頭上に向けて蹴り上げる。
「お前と一夏や千冬さんの間に何があったか……聞いた」
「何…………?」
 空中で体勢を立て直したラウラが眉をひそめるが、鷲悟はかまわず両腰にマウントしたままだったグラヴィティランチャーを手に取り、
「だがな、ラウラ……あの人が一夏のために“モンド・グロッソ”の決勝戦を放り出したのは、あの人自身が決めたことだ。
 ドイツに義理を通してお前らを鍛えたのも、このIS学園で教師をしているのも、全部あの人が自分で決めたことだ。オレ達外野が口をはさんでいい問題じゃない。
 それを今さら、済んだことに対してもグチグチグチグチ……」
「う、うるさいっ!」
 言い返し、ラウラが鷲悟に向けて突撃し――
「てめぇの理想を……」



「相手にまで押し付けるな!」



 カウンターの右足の蹴りが、ラウラの腹にまともに突き刺さる!
 絶対防御すら発動するほどの一撃、蹴りそのものは絶対防御が止めたが、衝撃が彼女の身体を貫いた。身体を「く」の字に折り曲げたラウラの腹に、蹴り足を引っ込めた鷲悟が左右のグラヴィティランチャーを押し当てた。
 それだけではない。バスターシールドやグラヴィティキャノンもまた、ラウラに向けて砲撃をチャージし始める。
「バカな……!?
 単発ならともかく、それだけの数の砲をこの密着同然の距離から撃てば、貴様もタダでは済まんぞ!」
 この後起きる事態を察し、ラウラが声を上げるが――
「残念だったな」
 かまわず鷲悟が引き金を引き――至近距離よりもさらに近い間合い、零距離の密着間合いから放たれた砲撃は閃光を世にさらすことなく爆発を巻き起こし、二人を飲み込んでいく。
 爆煙の中から飛び出し――いや、放り出されて、ラウラは受け身もままならないまま地面を転がり、
「おかしいと思わなかったのか?
 オレのG・ジェノサイダーは徹底的な砲戦仕様――距離を取ってバカスカ撃つのが本分、相手の攻撃が飛んでこない距離で戦うのが大前提とも言える仕様なのに、どうしてこうも重装甲になっているのか。
 離れて戦うのが砲手バスターの本分なのに、どうしてオレがガチの前衛でいられるのか」
 爆煙の中からの声がラウラにそう告げて――
「コイツの重装甲はな……ただ単に、相手の攻撃に耐えること“だけ”を想定したものじゃない。
 相手の攻撃だけじゃない――“自分の零距離砲撃によって起きる爆発からも”身を守るためなんだよ!」
 今の大爆発にもほとんどダメージを受けていない鷲悟が、“フルバーストの態勢で”姿を現した。再び放たれた一斉砲撃が、倒れ伏すラウラを直撃する。
 まともに砲撃を受け、絶対防御が発動――それはシュヴァルツェア・レーゲンに残されていたシールドエネルギーをごっそりと削り取った。ゲージがあっという間に0を示し、エネルギー切れを示すアラームが鳴る。
「…………フンッ、良かったな。
 貴様の勝ちだぞ」
 正真正銘、誰の目にも明らかな敗北。悔しさをにじませ、ラウラが吐き捨てるように言い放った、その時――

 “かまわず放たれた鷲悟の砲撃が、ラウラを直撃した”。

「何終わった気になってるんだ、お前?」
 宙を舞い、ラウラの身体が地面に叩きつけられる――そんなラウラに、鷲悟は恐ろしく冷めた口調でそう告げる。
「『シールドエネルギーが0になったら終わり』? バカかお前は。
 そう言うお前は……“シールドエネルギーの尽きたセシリアと鈴への攻撃の手を止めたのか”?」
 言うなり、再びの砲撃――アリーナの壁に叩きつけられたラウラに向けて、砲撃の雨が降り注ぐ。
「どうだ!? 圧倒的な力による暴虐に、何もできずにただ命をすり減らしていく感覚はっ!
 悔しいか? 怖いか? けどな……お前はそんな思いを、あの二人にさせたんだ!」
「鷲悟……何やってるんだ、アイツ!」
 いくら何でもやりすぎだ――暴走と言っても過言ではない鷲悟の追い討ちに、一夏がたまらず乱入しようとするが、
「待って、一夏!」
 そんな一夏の前に飛び出したのはシャルルだった。
「何で止めるんだよ、シャルル!
 あんなの、もう戦いじゃないだろ!」
「ボクだってそんなことはわかってる!
 けど……鷲悟、言ってたんだ。
 『ボーデヴィッヒさんの目を覚まさせてあげるために、あえて悪役になる』って……
 ほら、見てよ、鷲悟の顔……」
「え…………?」
 シャルルに促され、一夏はハイパーセンサーを駆使して鷲悟の表情をうかがい――
「――――っ、アイツ……!」
「ボクは信じるよ。
 友達を何よりも大切にする鷲悟が……事情を知らずにこの光景を見た人達から嫌われるのを覚悟してまで……“あんな顔”をしてまで、“悪役”を演じてるんだから……
 ボーデヴィッヒさんにやられたオルコットさんや凰さんだけじゃない……ボーデヴィッヒさんのためにも、鷲悟はがんばってる……それがわかっちゃうから……止められないよ……」



《セシリアや鈴を踏みにじった罪……その恐怖をもって償え、ラウラ・ボーデヴィッヒ!》
「柾木くん……」
「まったく……あの大根役者が……」
 一方、シャルルの気づいたことは観察室のこの二人も気づいていた。真耶のとなりで、千冬は深くため息をつき、
「どうせやるなら、もっと悪役面をしてやれと言うんだ……
 “あんな顔”では、本意でないのが丸わかりだ」
 辛そうに歯がみして、哀しそうな、訴えかけるような目をして攻撃を繰り返している鷲悟を見ながらもう一度つぶやく。
 自分達と同様、気づいているのだろう。万一のトラブルに備えて待機している教師陣からも、観客席にいるはずのセシリアや鈴からも、鷲悟を止めるべきだという声は上がらない。
「多分に荒療治だが……ボーデヴィッヒのあの態度が“私に鍛え上げられた”あの実力に対する自信に起因している以上、あのプライドを打ち砕かなければどうにもならん。
 かと言って、私がラウラを打ちのめしたところで、アイツの中での私の絶対性を強め、アイツの私に対する執着を強めてしまうだけ。誰かに託さなければならない役目だったとは言え……柾木にはイヤな役割をやらせてしまったな」
 できれば、こんなことはこれっきりで終わってほしい――そんなことを千冬が思っていた、その時、



 異変が起きた。





(こんな……こんなところで終わってしまうのか、私は……)
 砲火の雨にさらされ、ハイパーセンサーのアラームが鳴り止まない中、ラウラはそんなことを考えていた。
 確かに、相手の力量を見誤った。それは疑う余地のない自分のミスだ。
 しかし、それでも……
(私は負けられない! 負けるワケにはいかない……!)
 千冬の名誉を守るために――千冬の汚点を否定するために。
 そのために――
(それを阻むあの男を、排除しなければならないのに……)
 あの男は、あれは、まだ動いているのだ。動かなくなるまで、徹底的に壊さなくてはならない。
 だから……
(力が欲しい)
 ドクン……ッ、と、ラウラの中で“何か”がうごめいた。
【――願うか……? 汝自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?】
 “何か”からの問いかけ――答えなど決まっていた。
(言うまでもない。
 力があるのなら、それを得られるのなら、私など……空っぽの私など、何から何までくれてやる!)
【ならば……力をやろう】

 Damage Level …… D.

【戦い……奪え】

 Mind Condition …… Uplift.

【空っぽなら……喰らって満たせ】

 Certification …… Clear.

【さぁ……】



《Valkyrie Trace System》



【破壊を始めよう】





 …… boot.







「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
 突然、ラウラの絶叫が響く――同時、シュヴァルツェア・レーゲンから激しいエネルギーの渦が発生。鷲悟の砲撃を吹き散らした。
「何だ!?」
「これって!?」
「な――――っ!?」
 対峙していた鷲悟はもちろん、シャルルや一夏の口からも驚きの声がもれる。
 そんな彼らの注目の先で、ラウラが……そのISが、変形していた。
 いや……『変形』などという生やさしいものではない。文字通り『変わって』いた。
 装甲はまるで強烈な熱に溶かされたかのようにぐにゃりと形を崩し、ラウラの全身を飲み込んでいく――それは、さながら粘土人形を一度叩きつぶし、もう一度別の何か別の形に作り直しているようにも見えた。
 ラウラを飲み込んだ、シュヴァルツェア・レーゲン“だったもの”は、まるで何者の接近も拒むかのように紫電をまき散らし、その間に自らの身体を変化、成形していく。
 そして姿を現したのは、黒い全身装甲フルスキンのISに似た――“ナニカ”だった。しかし、その姿は先日のクラス対抗戦に乱入した機体とは似ても似つかない別物だった。
 ボディラインはラウラのそれをそのまま表面化した少女のそれであり、最小限のアーマーが腕と脚に着けられている。
 頭部はフルフェイスのアーマーに覆われ、目の箇所にはラインアイ・センサーが赤い光をもらしていた。
 そして何より目を引いたのがその手の武器である。
 日本刀にパーツが取り付けられ、大型化したようなそれは――
「……“雪片”……!?」
 一夏が呆然とつぶやく――そう。一夏の“雪片弐型”の前身、かつて千冬が振るっていた、初代雪片にそれは酷似していた。
 そして――黒いISが動いた。一瞬にして鷲悟との間合いを詰めると、居合いに見立てたかまえからの一閃で両手のグラヴィティランチャーを叩き斬る。
 敵はそのまま刀を上段のかまえに。反撃に転ずるべく、鷲悟も両断されたグラヴィティランチャーを放り出してバスターシールドをかまえ――
「下がれ、鷲悟!」
「――――っ!?」
 一夏の声にとっさに身体が動く――後退した鷲悟の眼前を、振り下ろされた刃がかすめていく。
 いや――かわしきれなかった。“装重甲メタル・ブレスト”のヘッドギアが真っ二つに割れ、額から噴き出した鮮血が鷲悟の顔に赤い筋を描く。
「鷲悟! 血が!」
「大丈夫! デコ浅く切っただけ!」
 声を上げるシャルルに答え、鷲悟は黒いISに向けてかまえ――
「オォォォォォッ!」
『一夏!?』
 咆哮と共に黒いISへと突っ込んでいったのは一夏だった。
 振り下ろした一閃を黒いISが受ける。二つの“雪片”がぶつかり合い――しかし、攻防は一瞬で終わった。刀をかたむけ、一夏の一撃を受け流すと返す刀で一夏を弾き飛ばす。
「一夏!」
 そんな一夏のカバーに入ったのはシャルルだ。吹っ飛ぶ一夏の身体を受け止め、鷲悟も彼女の元に合流する。
「一夏、大丈夫!?」
「ったく、ムチャするな、お前!」
「ムチャだろうが何だろうが関係ねぇっ!」
 シャルルや鷲悟の言葉に、かなり荒れた様子で一夏が答える。その様は、どうひいき目に見ても落ち着いているとは思えない。
「アイツ、ふざけやがって! ブッ飛ばしてやる!」
「ち、ちょっと、一夏!? どうしちゃったの!?」
 完全に頭に血が上っている一夏に、シャルルは困惑するしかなくて――
「……千冬さんか」
 鷲悟の言葉に、今にも飛び出さんばかりの勢いだった一夏の動きがピタリと止まった。
「……やっぱりか。
 お前がそこまで取り乱すとしたらそれしかないと思ったけど」
「あぁ……そうだよ!
 アイツの動きは千冬姉の動きだ。あれは、千冬姉のデータだ。
 それは千冬姉のものだ。千冬姉だけのものなんだよ。それを……くそっ」
「千冬さんの動き、か……
 だから、さっきのオレへの攻撃の時、お前には二撃目が読めたのか」
 吐き捨てるようにうめく一夏に鷲悟がつぶやと、
《非常事態発生! トーナメントの全試合は中止! 状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む! 来賓、生徒はすぐに避難すること! 繰り返す――》
「…………ふむ」
 響く館内放送に、鷲悟はしばし考えた後に口を開いた。
「織斑先生。
 教師部隊の投入はなし。その分の人員を観客席の避難誘導に回してください」
《柾木!?》
「今先生方が優先すべきなのはコイツをしばき倒すことじゃなくて、現状で戦うことのできない観客の安全確保でしょ?
 コイツの相手は、オレと一夏でしますから」
「鷲悟!?」
「元々オレ達の試合だからな。
 オレは対戦相手として、一夏はタッグパートナーとしてラウラの暴走を止めるため……それぞれ戦う理由がある」
 自分の名前も挙がり、思わず声を上げる一夏に鷲悟が答えて――シャルルは気づいた。
 いや、むしろ気づいて当然。“こう”なった彼を、シャルルはつい先日目にしたばかりなのだから。
「あー、えっと……
 鷲悟……もしかして、怒ってる?」
「怒ってますよ〜、怒ってますとも。
 あんなワケのわからない力に振り回されているラウラもそうだし……一夏」
「ん?」
「千冬さんをあんな風にけがされて、頭に来てるのはお前だけじゃないんだぜ」
 突然話を振られた一夏に、鷲悟は拳をゴキゴキと鳴らしながらそう答える。
「忘れた? ここでのオレの法的な保護者をしてくれているのは千冬さんだぜ?
 つまり……お前だけじゃない。オレにとっても、千冬さんは義姉ねえさんなんだ。
 自分の姉ちゃんをあんな贋作に使われて、ムカつかないワケないよな? 一緒に踏みつぶすぜ、アイツを」
「……あぁ!」
「ち、ちょっと待ってよ!」
 一夏も力強くうなずき、鷲悟と共に並び立つ――そんな二人に待ったをかけるのはシャルルだ。
「止めてもムダだぜ、シャルル。
 アイツだけはオレ達の手で――って、痛たたたたたっ!? 耳引っ張んなよ!?」
「そ、う、じゃ、な、く、てっ!
 何タッグパートナー無視して話進めちゃってるのかな!?
 鷲悟が戦うなら、パートナーのボクがカバーに回るのは当然でしょ?」
「手伝ってくれるのか!?」
「もちろん。
 友達二人のお姉さんの名誉がかかってるんだからね」
 聞き返す一夏にシャルルが答えると、鷲悟は彼女に思い切り引っ張られた耳をさすりながら、
「だったらさ……お前らも参加するか?――セシリア、鈴」
『えぇっ!?』
「当ったり前よ。
 アイツに借りを返さないまま再起不能リタイアになんてさせてたまるものですか」
「鷲悟さんの力になるつもりがなければ、こんなところまで来ませんわ」
 驚く二人をよそに鷲悟に答えるのは、いつの間にかこの場に足を踏み入れていた鈴とセシリアだ。
 タイミングから察して、事態の急変に気づくと同時に駆けつけてきてくれたのだろう。二人とも修復が終わったばかりのISを展開してやる気は十分だ。
「じゃあ、さっさとアイツをぶちのめして、ラウラを助けるとしましょうかね」
 これで役者はそろった――改めてラウラを取り込んだ黒いISをにらみつけ、鷲悟が宣言する。
「さぁ……」



「踏みつぶすか、みんな!」



『おぅっ!』





“あね”のため
  アイツのために
    ここに起つ


次回予告

鷲悟 「おぅ、鷲悟だ。
 あの黒いISをぶちのめして、ラウラを助けてやらないとな」
セシリア 「しかし、さすが織斑先生のデータを使っているだけあって手ごわいですわね」
「しかも、千冬さんだけじゃなくて他の“モンド・グロッソ”上位入賞者のデータも使ってるみたいね」
一夏 「だからどうした!
 相手がどれだけ強かろうが、あんなヤツに負けてたまるか!」
シャルル 「そうだね。
 みんなで力を合わせて、ボーデヴィッヒさんを助けよう!」
鷲悟 「次回、IB〈インフィニット・ブレイカー〉!
   『ラウラ救出作戦! ホントの強さを見せてやれ』
   
一夏 「ところで……誰か忘れてないか?」
全員 『………………え?』
   
「……くすん」

 

(初版:2011/06/09)