「さて……大口叩いたはいいけど、これからどうする?」
ジュンイチに対し力強く勝利宣言したカレン――そんな彼女に、鷲悟は後ろから声をかけた。
「あの方相手にコンビネーションをしかけても、分断されて各個撃破されるだけ……なんですのよね?」
「とはいえ、これだけの人数がバラバラにかかっていっても、むしろ互いにジャマになるだけ……ヘタをすれば味方撃ちだ」
セシリアも、ラウラも慎重な意見だ、一同が思わず考え込み――
「……ねぇ、みんな」
そう口を開いたのはカレンだった。
「ひとつ、試してみたいことがあるの」
「何…………?」
「集団戦でも、彼に通用するかもしれない方法が、ひとつある」
眉をひそめる箒に、カレンはそう答えた。
「けど、それは私じゃなくてみんなにばかり負担を強いる――それでも、賭けてくれる?」
「……今さら、だな」
尋ねるカレンに対し、一夏は笑みを浮かべてそう答えた。
「仲間が、勝つために考えてくれた作戦だ。乗るに決まってるだろ」
「……ありがとう」
一夏の言葉に全員がうなずく――礼を言い、カレンは改めてジュンイチをにらみつけた。
「みんな、今だけは私を信じて、私の指示に従って!
さぁ……勝ちにいくわよ!」
『おぅっ!』
第26話
別れの時
いつかまた会うその日まで……
「吹っ切れたようだな、ヴィヴァルディめ……」
鷲悟達を背にジュンイチと対峙し、カレンは高らかにタンカを切る――その姿を観測室から見守り、千冬は笑みを浮かべてつぶやいた。
「うぅっ、ヴィヴァルディさん、立派になって……」
「こっちは何を母親のようなことを……」
その一方で、となりの真耶はむしろ空気をぶち壊す勢いで感涙状態――ため息をつき、千冬は彼女を現実に引き戻す。
「山田先生、それより撃墜された先生方に撤退指示を」
「あ、そうですね。
みなさんの戦いに巻き込まれちゃいますし」
「それもあるが……」
真耶の言葉に、千冬はため息をついた。
「おそらく……戦いが終わった後、さらに荒れるだろうからな……」
「え…………?」
「ふむ……どう出てくるつもりかね……?」
対峙するカレン達の様子を、ジュンイチは楽しそうに眺めていた――もちろん、いつしかけられても大丈夫なように、気楽なノリの裏で警戒は怠らない。
「そんじゃま――」
「いきますわよ!」
そんなジュンイチに向け、ついにカレン達が動いた。鷲悟の砲撃とセシリアの狙撃、それぞれがジュンイチへと襲いかかる。
どちらもエネルギー系の攻撃。自分の力場で難なく止められる――しかし、ジュンイチはそれをかわして上昇し、
「オォォォォォッ!」
「いっけぇぇぇぇぇっ!」
「ハァァァァァッ!」
「そう来るだろうと、思ったぜ!」
一夏、鈴、箒が突っ込んできた。三人の斬撃を次々にかわすと、続けて自分を狙ったシャルロット、ラウラの銃撃も回避する。
と、その時――ジュンイチの周りに大量の爆弾がばらまかれた。ジュンイチが離れるよりも早く炸裂、その姿を覆い隠す。
上空に回り込んだ、重装型の爆撃用オートクチュールを装備したあずさの仕業だ。
「あっはっはーっ! お兄ちゃんらしくない失敗だね!
この爆撃用オートクチュール、“吉影”のことを忘れてたかな!?」
直撃はなくとも、巻き込まれたのは間違いない。勝ち誇るあずさだったが、
「誰がっ!」
「――――っ!?」
「忘れるかよ!」
煙の中からジュンイチが飛び出してきた。あずさに向けて一気に距離を詰め、とっさに両腕で防御を固めたあずさをその防御の上から殴り飛ばす。
「その桜吹雪のオートクチュール、誰が名づけ親だと思ってるんだ?」
吹っ飛ぶあずさを追撃しようとするジュンイチだが、それは箒に阻まれた。斬りつけてきた箒の刃をかわし、ジュンイチは一旦距離をとる。
「どう挑んでくるかと思いきや、ただターゲットを下がらせてのチームプレイか……
オレに集団戦は通じないって……まだわからないみたいだな!」
言って、今度はジュンイチからしかけた。セシリアの狙撃を力場で防ぎながら距離を詰めると爆天剣で一夏に一撃。そのまま近接組との乱戦に突入する。
「一夏さん、みんな!
桜吹雪、オートクチュール換装! “吉影”から“フレディ”へ!」
先の一撃から立て直したあずさの言葉に、桜吹雪が装備を変更。鉄色の重装型から真っ青な高速型へ。高速近接戦用オートクチュール“フレディ”でジュンイチへと襲いかかる。
ISアーマーの腕に仕込まれた実体刃が展開されてジュンイチを狙う――そのままあずさも一夏達と共に攻撃をしかけるが、ジュンイチは4対1というハンデをものともしないで一夏達と斬り結ぶ。
シャルロットやラウラ、鷲悟やセシリアも援護しようとジュンイチを狙うが、ジュンイチも一夏達からつかず離れず、巧みに彼らを楯にして鷲悟達に狙いを定めさせない。
そして――
「ぅわぁっ!?」
ついに一夏が一撃を受けた。あずさと衝突して吹っ飛ばされる。
すぐさま身をひるがえして箒と鈴も弾き飛ばし――だがそれすらも次の一撃の予備動作を兼ねていた。振りかぶる形になった左手に生み出した炎を一夏とあずさに向けて――
「今よ!」
カレンの声が響き――飛んできたグレネード弾が炸裂。爆発がジュンイチを飲み込んだ。
「く…………っ!
近接組との距離を開けすぎたか……!」
すぐに攻撃の主がシャルロットだと見抜く――爆発の中から飛び出し、ジュンイチはそこを狙ってきた一夏の雪片を受け流す。その後ろに回り込むとシャルロット達に対する楯にして、
「このぉっ!」
「甘いっ!」
右手の五指に実体刃を展開したあずさが斬りかかってきた。すかさずかわすとその背を蹴り飛ばし、反対側から迫ってきていた箒に衝突させる。
二人には目もくれず、先ほどいなした一夏の背中に体当たり。そのままシャルロット達に向け、一夏を楯にする形で突っ込んでくる。
「くっ……!」
「このっ……!」
これでは一夏を攻撃することになってしまう。シャルロットとラウラはやむなく突撃をかわそうとするが、
「そらよ、シャルロット――プレゼントだ!」
「どわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
ジュンイチはシャルロットのかわした先へと一夏を突き飛ばした。ジュンイチの狙い通り、一夏はシャルロットと正面から衝突する。
「シャルロット!?」
思わずラウラが声を上げ――その一瞬でジュンイチの姿を見失った。ハイパーセンサーで周囲を探るが、
「――――後ろっ!?」
「遅ぇっ!」
反応は自分の真後ろにあった。気づいたラウラに向け、ジュンイチが爆天剣を振りかぶり――
「鈴!」
「わかってる!」
「――――――っ!?」
気づき、とっさに防御――カレンの指示で飛び込んできた鈴が振り下ろした双天牙月を受け止める。
「くらえっ!」
「ちょっ!?」
そこからさらに“龍咆”で一撃。不可視の砲弾の直撃を受け、ジュンイチは大きく吹き飛ばされる。
「何だ、コイツら……っ!
さっきから、できたスキに対するカバーが異様に速い……っ!?」
さらに鷲悟とセシリアが同時にしかける。ビームの雨をかわしながら、ジュンイチは舌打ちまじりにうめく。
「連携を断っても、すぐにカバーが入ってスキを突ききれねぇ……っ!
原因があるとすれば……っ!」
すぐに思い至った。彼らの布陣、その一番奥をにらみつけ、叫ぶ。
「カレン・ヴィヴァルディ……お前、“気づきやがった”な!?」
「えぇ」
ジュンイチの言葉に対し、カレンは落ち着いた様子でうなずいた。
「さっきまでのあなたの戦いぶり、ずっと見させてもらっていたから……そのおかげでだいたい理解できたわ。
基本はごくごく単純なこと。ただ“スキを突くこと”――ただし、あなたが突くのは目に見えるスキだけじゃない。
目に見えるスキを突く動きに紛れて、あなたは相手の“思考のスキ”を突く」
「思考の、スキ……?」
聞き返す一夏に、カレンはうなずいてみせた。
「油断、驚き、怒り……様々な要因によって生まれる、意識の緩みや思考の一瞬の空白――彼はそこを狙ってくる。
ふざけた態度で油断や、バカにされていると思わせることで怒りを誘い、そうかと思えば意表を突いた動きで動揺をもたらし、驚かせる……
そうして生まれる意識の乱れに乗じて一気に攻め込む。それが彼のスタイル」
「そういえば……一対一だったけど、箒がやられたのがまさにそのパターンよね」
「う゛っ……」
思い出してつぶやく鈴の言葉に、傍らで箒が顔をしかめる。
「集団戦の場合、集団意識の働きでその効果はますます大きくなる。
そして集団戦の場合、集団側の“個々の状況判断の食い違い”もさらなる思考の乱れを引き起こす。
たとえば、連携を乱された時、カバーに入るにしても銃で撃つか剣で斬りかかるか、この二つだけでもだいぶ違う。
そうした“集団だからこその意識の乱れ”を突けるからこそ、彼は一対一より一対多においてより優位に立ち回ることができる」
言って、カレンはジュンイチへと視線を戻し、
「そこまでわかれば、攻略法は自然と見えてくる。
要するに“思考のスキ”を突かせなければいい――“思考のスキ”が生じた子をまずあなたは狙ってくる。それなら、スキの生まれていない子がそれをカバーすればいい。
“だから、私は一歩下がった”。後ろに下がって、このプリマヴェーラを起動させた」
「……なるほど、な。
プリマヴェーラは“そういう能力”か……道理で今までの対戦で使われなかったはずだぜ。“一対一では何の意味もない装備なんだから”」
「まぁ、そういうことよ」
ジュンイチの言葉に対し、カレンは肩をすくめてそう答えた。
「このプリマヴェーラは、“指揮・管制特化型”のオートクチュール……集団を率いることで、初めてその真価を発揮する。
このエスターテ・プリマヴェーラを身にまとった上で、後方に下がり、広い視野をもって冷静に戦場を観察、距離をおいて全体を見れば、あなたの突拍子もない動きに惑わされることもある程度は抑えられる。
だから、あなたが誰かにスキを生じさせても動揺していない子に素早くカバーをお願いできる……まぁ、そういうことよ」
言って、カレンは一夏達を見回し、
「心と思考は似ているようで違う。心をひとつに、結束して挑んだとしても、それぞれが判断して動けば思考のズレはどうしても生まれる……あなたが突いてくるのは、まさにその思考のズレ。
なら、誰かひとりにすべての判断を委ね、その指示によって動けば……心だけでなく思考をひとつに束ねることができれば、そのウィークポイントは消滅することになる。
心だけじゃない。考えもひとつにした……より高みでひとつとなった私達は、あなたなんかには絶対負けない!
私を信じて、私の指示にすべてを託してくれたみんなと一緒に……柾木ジュンイチ! 私はあなたを倒す!」
「…………言い切るじゃないのさ」
力強く宣言するカレンに対し、ジュンイチは息をつき――
「……けど、それでもオレにはまだ遠い」
そう告げるジュンイチは――“カレンの目の前にいた”。
『――――――っ!?』
その動きを誰ひとり――鷲悟ですらもまったく捉えることができなかった。驚愕する一同にかまわず、ジュンイチは流れるような動作で右手を上げた。
「なぜなら――」
ヘビににらまれたカエルのように動けないカレンに対し、その右手は――
「もう、ギブアップさせてもらうから」
ぽむっ、とカレンの頭の上に置かれていた。
『………………は?』
「倒す、倒されるの前にギブアップとなれば、もうそこで終わり――倒すも何もないだろう?」
予想外の一言に、一同の思考が停止する。そんな彼らにかまわず、ジュンイチはカレンの頭をなでてやる。
「……え? ち、ちょっと待って!?」
そんな中、真っ先に我に返ったのは鈴だった。
「ギブアップって、どういうことよ!?」
「もう戦う理由はないからな」
あっさりとジュンイチは答えた。
「オレの目的は達成された。もうこれ以上戦う理由はない。
だからギブアップ……おわかり?」
「わかるワケないでしょうがっ!
アンタ、カレンのお父さんの依頼でカレンを倒しに来たんじゃないの!?」
「あぁ、そうだな」
「それがどうして、カレンが健在なのに『目的は果たした』なんてことになってんのよ!?
カレンのお父さんがアンタにカレンの撃墜を依頼したのは、カレンがジャマだったからじゃないの!?
カレンの実家でアレコレやろうとしてる連中のトップがお父さんで、そのためにカレンがジャマになって、それで……」
「『アレコレ』……あぁ、“一夏・鷲悟誘拐計画”?」
「な……っ!? 鈴さん!?」
「聞いていないぞ、そんな話!」
「そ、それは、その……」
あっさりバラしたジュンイチの言葉に、当事者である一夏や鷲悟よりも周りの方がいきり立った。詰め寄ってきたセシリアや箒に鈴が回答に困っていると、
「あのさぁ……鈴」
そんなドタバタを楽しそうに見物しながら、ジュンイチは口を開いた。
「お前、何カン違いしてるのさ?」
「…………へ?」
「確かに、オレはカレンをブッ飛ばしにここへ来た。
オレの依頼人がカレンの親父さんであることも否定しない。
けど……」
「カレンの親父さんが“誘拐計画”の黒幕だって……一言でも言ったっけ?」
『………………』
ジュンイチの言葉に、一同は一連のジュンイチの言葉を思い返してみる。
『大方、私の“本当の目的”を知った実家の人間の差し金でしょう!?』
『んー、間違っちゃいないな』
『今回のオレの依頼人はお前の親父さんだよ。
「バカやらかしてる娘を、しばき倒して目ェ覚まさせてくれ」ってな』
確かに……彼の言葉からわかるのは、“ジュンイチの依頼人がカレンの実家の人間=カレンの父親であること”、“カレンの父親は、カレンの本当の目的を知っていた”ということだけ。依頼人と“誘拐計画”の首謀者が同一人物だとは、彼自身は一言も言及していない。
つまり――
「…………別口?」
「そゆこと」
問い返す鈴に、ジュンイチはあっさりと答えた。
「それを、お前らが勝手にカン違いしただけだよ。
思い返してみろ。オレの依頼人がカレンの親父さんだとわかったとたん、お前らが勝手に“誘拐計画”の首謀者とお前の親父さんを同一視し始めたんだろうが」
その言葉に、一同は再び今までのやり取りを思い返してみる。
『パパが、あなたを差し向けた……!?
じゃあ、まさか急進派のトップって……』
『そこはまぁ、ご想像にお任せするよ』
『そこまで覚悟決めといて、父親が黒幕だったぐらいで崩れてんじゃないわよ』
『むしろ、父親が黒幕だったからこそ、アンタが起たなくてどうするのよ?
娘として、父親止めなきゃダメでしょうが』
『………………』
「う゛っ…………」
「そ、それは……」
一同の視線が突き刺さり、鈴とカレンは思わず後ずさりする――確かに、ジュンイチの言う通り勝手に同一視してカン違いしたのは自分達だ。
「っていうかっ! そもそもアンタがハッキリ肯定も否定もしないのが悪いんでしょうがっ!
アンタの目的が“誘拐計画”と無関係だってわかってれば……」
「たりめーだ。
依頼内容をそんなベラベラ話せるか。ホントなら、依頼人がカレンの親父さんだって教えたのだってアウトなんだぞ」
反論する鈴に答えると、ジュンイチは息をつき、
「とはいえ……まぁ、こうなったら話さなきゃ引っ込みつかないだろうから教えてやる。
オレがカレンの親父さんから受けた依頼は二つ。
ひとつ。“一夏・鷲悟誘拐計画”の存在の真偽を確かめること。そして真実だった場合はその阻止と首謀者の特定」
「パパも、気づいてたの……!?」
「そういうことだ。
そして……計画つぶして、首謀者だった傘下ファミリーの幹部を親父さんに引き渡したところで、二つ目の依頼を受けた。
それがこの襲撃だ。すなわち――『今回の件で誰にも頼らず、ひとりで勝手に暴走してる娘の目を覚まさせてやってくれ』ってな」
『あ………………』
その時、全員が気づいた。
ジュンイチが何をもって“目的を果たした”と判断したのか。
「お前自身、自覚してることだろうが。自分が将来ヴィヴァルディ・ファミリーを背負って立つ人間だってことは。
リーダーってのは何だよ? みんなを率いて、導く者だろうが。そのリーダーが率いなきゃならない、導かなきゃならない人間ほったらかしてフラフラしてんじゃねぇよ――オレみたいに実家の相続権放棄したって言うならまだしもさぁ」
「で、でも、誰が“敵”かわからなかった中で……」
「それは理由にならねぇな。
誰が敵かわからない――それは逆に言えば“それでも味方だと信じられる相手がいなかった”ってことだろ。未来のリーダーとしてはそっちの方が問題だ」
反論したカレンの言葉も、ジュンイチには迷うことなく一刀両断される。
「確かに、ウチの鷲悟兄を、織斑一夏を、そして実家の連中をもまとめて守ろうとしたお前の心がけは立派だよ。
けどな……リーダーであるお前はそれだけじゃダメなんだ。“守る”だけなら、実力さえあれば一兵卒でもできることだ。
お前はな、リーダーとしてみんなを“信じなくちゃ”ならなかったんだよ――もちろん、それで“敵”かもしれないっていう疑いを捨てろって言ってるワケじゃない。
“信じた上で、疑わなきゃならなかった”」
「信じた、上で……?」
「あぁ。
『コイツは“敵”かもしれない。だから信じられない』じゃない。『コイツを信じてる。だから“敵”であってほしくない』っていう形で疑わなきゃならなかったんだ。
信じているからこそ、疑いが生まれた時その真偽を確かめる行動に力が入る――もちろん、それが必ず報われるワケじゃない。ホントにアウトなことだってある。
それでも、まず最初に“信じる”ことを持ってこなくちゃいけない――リーダーとして必要なそれを、お前は忘れていた」
カレンに答え、ジュンイチは息をつき、
「だからオレが送り込まれたのさ。
お前を追い込み、独力の限界を突きつけ……仲間と協力する、仲間の力を借りることを思い出させるために。
そして……お前はその親父さんの期待にちゃんと応えた」
「あ…………」
ジュンイチの言葉に、カレンは振り向いた。
そこにいる、鈴や、一夏や……このIS学園で出逢った“仲間”達へと。
「お前はISの天才なだけじゃない。ヴィヴァルディ・ファミリーを率いてきた一族の、リーダーとしての資質がある。
オレの役目はそれを目覚めさせること――それが果たされた以上、オレの今回のミッションは終了だ」
「柾木ジュンイチ……
……ありがとう。あなたのおかげで、大切なことに気づくことができたわ」
「なんのなんの。
オレも偉そうなコトぁ言えないさ。今の話だって、ほとんどお前の親父さんの受け売りだしな」
言って、頭を下げるカレンに対し、ジュンイチは手をパタパタと振ってそう答え、
「じゃ、オレはこれで――」
〈何をきれいに終わらせようとしている?〉
無線越しのその言葉と同時――ジャキンッ、とジュンイチの後頭部に銃口が突きつけられた。
〈貴様……自分が学園に侵入し、あまつさえ試験試合に乱入したことを忘れていないか?〉
「す、すみません……
一応、その辺のお話、事情聴取しなければならないので……」
告げるのは千冬、銃口を突きつけているのはラファール・リヴァイヴを身にまとった真耶である。
「……やれやれ」
一方、後頭部に銃口を突きつけられたジュンイチは素直に両手を上げ、
「このまま、平穏無事に終わってくれればよかったのに」
〈これだけハデに暴れた後で『平穏無事』とぬかすか〉
「“終わりよければすべてよし”って言葉、知ってる?」
〈ここで適用するつもりはない〉
「そいつぁ残念」
千冬と言葉を交わし――その瞬間、ジュンイチの腰のツールボックスから何かがこぼれ――その瞬間、突如視界が閉ざされた。
ジュンイチが落としたそれから煙幕が吹き出したのだ。しかも煙にはハイパーセンサーに対するジャマーも仕込まれていたらしく、ハイパーセンサーでジュンイチの居場所を探ることもできない。
「何、何!?」
至近距離にいたことが災いし、煙で何も見えなくなった周囲をキョロキョロと見回し、カレンが思わず声を上げ――
「これからがんばれよ――カレン」
ポンッ、とその肩が叩かれた。
「え――――?」
思わず声がした方向を見るが、そこに人影はなく、
「どわぁっ!?」
「ふにゃっ!?」
「でぇっ!?」
「きゃあっ!?」
悲鳴は四つ。一夏、あずさ、鷲悟、真耶――やがて、煙が晴れていき、
『………………え?』
悲鳴を上げた四人を除く、残りの面々が固まった。
「いてて……何が……へ?」
「くそっ、ジュンイチのヤツ……は?」
そして、一夏や鷲悟もまた状況を理解した。
ジュンイチの姿はもちろんない。今の煙にまぎれて逃げてしまったのだろう。
おそらくはそのジュンイチの仕業であろうが、はね飛ばされた一夏と鷲悟は――
一夏があずさに、鷲悟が真耶に激突。押し倒す形で倒れていた。
「あ、いや、えっと……」
「これは、その、ジュンイチが……」
驚きのあまり、四人とも身動きひとつできない――それでもかろうじて働く思考でなんとか弁明を試みる一夏と鷲悟だったが、あずさも真耶も真っ赤になってフリーズしたままで、
『………………』
そんな彼らの背後に、強大すぎる怒りの塊が多数。
そして――
『一夏ぁっ!』
『鷲悟(さん)っ!』
怒りの叫びと共に爆発の嵐が巻き起こり――その光景を前に、千冬はつぶやいた。
「……やはり、終わった後の方が荒れたか」
「うー、まだ顔熱いよ……」
「え、えっと……」
すっかり日も沈み、夕食時――まだ赤い頬をごまかすようにぺしぺしと叩きながらつぶやくあずさに、簪はコメントに困って苦笑するしかない。
騒動の後、ジュンイチとの戦いに加わった面々は先生方から事情聴取。それも終わってこうして待ってくれていた簪と共に夕食をとっているのだが――あずさにとっては、その事情聴取そのものが曲者だった。
何しろ、彼女の視点で言うならば今回の一件は一夏に押し倒されて終わったのだから。事情聴取でそれについて話そうとすればどうしても思い出されてしまう。おかげで熱暴走した頭で何を答えたのか今でもまったく思い出せない。
「けど、結局今回はお兄ちゃんのひとり勝ちかぁ……
箒ちゃん墜として、先生達墜として、あたし達に負けなくて、言いたい放題言って帰っちゃったワケで」
「すごい人だったね……」
「すごいというかムチャクチャというか……
けど、悪い人じゃないよ? 今回だって、結局はカレンちゃんのために乱入してきたワケだし」
「………………」
つぶやく簪に兄へのフォローも忘れないあずさだったが、当の簪はむしろそのあずさの言葉に何やら考え込んでしまう。
「…………簪ちゃん?」
「……あの人は……カレンさんに“仲間と一緒にがんばれ”ってことを、教えに来たんだよね……?」
「んー、まぁ、途中の話を全部すっ飛ばして、結論だけ言っちゃえば、そうだね。
けど、それがどうかしたの?」
「ん……
なんだか、私に向けても、言われている気がして……」
簪が何の話をしているのかはすぐにわかった。
「ひょっとして……専用機、ひとりで作ってること?」
コクリ、と簪はうなずいた。
「倉持技研から打鉄弐式の開発凍結を聞かされた時は、ショックだった……
けど、同時にチャンスだと思ったの」
「チャンス……?」
「ん……
あずさには、話してなかったよね……? 私には、お姉ちゃんがいるの」
聞き返すあずさに答え、簪は話し始めた。
「代表候補生で、専用機持ちで……けど、お姉ちゃんはその専用機を自分ひとりで組み上げたの」
最後の一言で、あずさはピンときた。
「ひょっとして……そのお姉ちゃんに負けたくなくて……?」
「うん……
だから私も、ひとりで打鉄弐式を組み上げよう、って……」
なるほど、誰が申し出ても頑なにひとりで組み上げることに固執していた理由はこれかと納得する。
だが……
「簪ちゃん……それは違うよ」
うつむいた簪の手を取り、あずさはそう告げた。
「お姉ちゃんだって、本当に全部ひとりでISを組み上げたワケじゃないんじゃないかな?
いくらひとりで組み立てたって言っても、ネジの一本から削り出したワケじゃないよね? 鉱石採取してきて、自分で資材を精製したワケじゃないよね? 何より、ISコア作れないよね?
屁理屈かもしれないけど……絶対どこかで誰かの手は入ってる。そういう意味じゃ、カレンちゃんも、束お姉ちゃんですらも、ひとりでISを作れるワケじゃない」
簪がうなずいたのを確かめた上で、あずさは続ける。
「カレンちゃんも、簪ちゃんのお姉ちゃんも、目に見えるところで人の手を借りる機会がなかっただけ。見えないところで、みんなの気づかないところで、誰かに助けてもらってる。
だから、簪ちゃんが誰かに手伝ってもらったって、それは恥ずかしいことじゃないし、お姉ちゃんに負けたワケでもない」
「うん……そうだよね。
独りでできることには限界がある……けど、みんなとなら……」
あずさの言葉に同意して、簪は改めてあずさに尋ねた。
「あずさ……
私のISを作るの、手伝ってくれる?」
「もちろんっ!」
「……そっか。
イタリア、帰っちゃうんだ……」
「う、うん……
パパの依頼で、ジュンイチくんが首謀者を引きずり出したことで、今回の件は明るみに出た。
事件になる前に止めたから、首謀者も含めて事件については不問。IS開発の認可が取り消されることもなかった……理想的とも言える終わりかただけど、それでも、国の知るところとなった以上、政府への正式な報告は必要になる。
そして……単独で動いていた私もそれは一緒。学園が不可侵である以上強制ではないけれど、関わった者の責任として……ね」
自室でカレンから帰国の話を聞かされ、鈴は「なるほど」と相槌を打った。
「それに……学園へは短期留学枠で転入してきているから。
学園に居残るには、一度本国に戻って、正式な転入手続きを済ませないと……
これについては本当に不便よね。学園で手続きさせてくれればいいのに」
「いや、そこはしょうがないでしょ。本国に出す書類とかもあるんだし」
ぷぅと頬をふくらませるカレンに対し、鈴は肩をすくめてそう答える。
「せっかく鈴ちゃん達と“仲間”になれたのに、しばらくお別れか……寂しいなぁ」
「そりゃ、あたしだって……つか、『鈴ちゃん』って何よ?
いきなり『ちゃん』付けに移行? アンタ、なんかさっきから急に態度が砕けてない?」
「だ、ダメだった?
もうみんなにも全部バレちゃったんだし、猫被ってる必要もないかな、って思ったんだけど……」
「つまり、それが完全な素のアンタ、ってワケね……
なるほど、今まではあたしと二人きりの時ですら少しは気ぃ張ってたワケだ」
カレンの言葉に納得し、鈴は軽く肩をすくめる。
「や、やっぱりみんな驚く……かな?」
「そりゃ、今までの“表の顔”とのギャップすごいしね……
けど、最初の内だけなんじゃない? この学園の連中のノリのよさと順応性のムダな高さは、アンタも知ってるでしょ?」
「そ、そうかも……」
苦笑するカレンの姿に、鈴は軽くため息をつき――
「鈴ちゃん」
不意に、鈴は柔らかな暖かさに包まれた。
「か、カレン……?」
それが、カレンに抱きしめられたからだとすぐに気づく――戸惑う鈴に対し、カレンは彼女を抱きしめたまま告げる。
「鈴ちゃん……本当にありがとう。
あなたがいなかったら……私、きっとどこかで心が折れてたと思う」
「あ、あたしは別に……」
「ううん、鈴ちゃんのおかげ。
私……鈴ちゃんに会えて、本当によかった……」
鈴を抱きしめる腕に力がこもる――やれやれと鈴が息をついたその時、消灯を告げるチャイムが鳴った。
「はいはい、ハグはそこまで。
もう寝るわよ」
「う、うん……」
言って、鈴はカレンの腕から脱出すると、部屋の電気を消してベッドにもぐり込――
「…………じー……」
「………………何?」
――めなかった。こちらをじっと見つめるカレンに、鈴は思わず聞き返す。
「あ、あのね、鈴ちゃん。
えっと、あの、そのね……
………………一緒に寝ちゃ、ダメかな……?」
「ホントに砕けたわね、アンタ……」
どうやら、ようやく人に甘えられるようになったカレンが満足するには、まだしばらくかかりそうであった。
「じゃあね、カレン」
「うん。
鈴ちゃん、本当にありがとう――それに、みんなも」
空港のターミナルで、カレンが鈴を始め、見送りに来てくれた鷲悟達に対して頭を下げる――ドラマや映画のエピローグでおなじみの1シーンである。
時は一気に流れて一学期終了。終業式が終わるなり帰国の途に着くカレンを、鷲悟達はみんなで見送りに来たのだ。
「できれば、また学園の仲間として再会できることを願ってますわ」
「敗れた分のリベンジもしたいしな。
勝ち逃げなど許さんからな」
「今度は負けないよ!」
「フフフ、私だって負けないわよ?」
セシリアやラウラ、シャルロットのリベンジ宣言にカレンが笑いながら答えると、
「ほら」
言って、一夏がカレンに手渡したのは、ここまで運んできてあげた彼女の荷物だ。
「ありがとう、一夏くん」
「オレ達が手伝えるのはここまでだけど……イタリアまで大丈夫か?」
「もちろんよ。
一夏くんってけっこう心配性なのね」
「……猫被りやめたその日の内にここにいる全員をドジっ子スキルの餌食にしてりゃ、一夏じゃなくても心配になるだろ」
『うん』
「………………」
ツッコむ鷲悟の言葉に全員で力いっぱいうなずかれ、カレンは思わず視線をそらす――と、ちょうどカレンの乗る飛行機の搭乗手続きが始まったことを知らせるアナウンスが流れた。
「ほら、今言ってたのアンタの乗る便でしょう?
ドジっ子なアンタは人一倍時間がかかるんだから、早く行きなさい」
「うぅっ、鈴ちゃんまで私をドジっ子って言う〜……」
鈴の言葉にすねるカレンだったが、彼女とてやられっぱなしでは終わらない。鈴の耳元に顔を寄せ、耳打ちするように告げる。
「けどね、鈴ちゃん」
「ん?」
「そう言う鈴ちゃんは、一夏くんとジュンイチくん、“どっちにする”か早く決めた方がいいと思うな」
「な…………っ!?」
「でないと……」
と、カレンは鈴の耳元から離れ、雑踏の中に向けて声をかけた。
「それはそうと……いるんでしょう?
コソコソ見送るなんて、あなたらしくないと思うのだけど」
「おや、そう?
じゃあ、お言葉に甘えて……」
答える声は雑踏の中から――人波を巧みにすり抜けて現れたその声の主に一同は目を丸くして、あずさが声を上げる。
「お、おお、お兄ちゃん!?」
「よっ」
そう、ジュンイチだ――あずさの声に、右手をシュタッと上げて応える。
「貴様、どうしてここに……っ!?」
「おいおい、つれないこと言うなよ。
オレだって、今回の件にはガッツリからんでるんだぜ――見送りに加わる権利くらい、あると思うんだがね。
それでもカレンに呼ばれなきゃ出てくるつもりはなかったんだぜ。お前らを刺激しないように配慮した心遣いに、むしろ感謝してもらいたいね」
「いけしゃあしゃあと……!」
答えるジュンイチに、箒は待機状態の紅椿、左手に交差するように巻かれた、先端に鈴のあしらわれた真紅の紐飾りをかまえ――
「ダメ」
それを止めたのは簪だった。
「この間の一件は、ヴィヴァルディ・ファミリーが正式に謝罪して和解してる」
そう。
先日の期末試験の際の騒動は、ヴィヴァルディ・ファミリーのボス、すなわちカレンの父がジュンイチを雇い、送り込んだのが自分であることを正式に認め、謝罪と賠償の支払いを行なうことですでに示談が成立していた。
もちろん、当事者としては箒のように納得しかねるものがある(襲われた怒り的な意味でも、決着が流れた不完全燃焼的な意味でも)のだが、上の方ですでに決着しているこの状況でジュンイチにかみつけば、それは学園とヴィヴァルディ・ファミリー、双方の顔に泥をぬることになる。簪にそのことを指摘されては、箒も引き下がるしかなかった。
「にしても、よくオレがいるってわかったな。
完璧に気配を消してたと思ったのに」
「わかってたワケじゃないわ。
ただ、あなたの試験の時の言動から、見送りに来るだろうと予想していただけ。
むしろ、いてくれて本当に助かったわ。これでいなかったら私、エア友達に話しかけるアブナイ人になってたところよ。隣人部作るつもりはないわよ、私は」
「ハハハ、いい意味でブラフに引っかかったワケだ、オレは」
ジュンイチが苦笑すると、カレンは改めてジュンイチと正対し、
「ジュンイチくん……あなたには本当に感謝しているわ。
あの時にも言ったことだけど、あなたのおかげで、私は大切なことに気づくことができた」
「オレは大したコトぁしてないさ。
オレを送り込んできたのはお前の親父さんだし、お前を支えたのは今お前の周りにいる連中だ。
それに、お前だったら今回の介入がなくてもゆくゆくは気づいてたと思うしな。オレ達はただそれをほんの少し早めただけさ」
「それでも、よ――あなたが背中を押してくれたことには変わりないもの。
あなたは私の恩人。できることなら、このままウチに迎え入れたいくらい」
「ヴィヴァルディ・ファミリーに入れってか?
よしてくれ。オレはどっかに根を下ろすつもりはねぇよ」
「違うわ。
“ヴィヴァルディ・ファミリー”としてでなく、“カレン・ヴィヴァルディ”として、私はあなたを迎えたい」
「………………?
どういうことだよ?」
首をかしげるジュンイチに対して、カレンは彼の前に進み出て――
その唇を奪った。
ジュンイチの顔に両手を添え、背伸びして唇を重ねる――いきなりの、どっかで誰かがやらかしたことがあるような光景に固まる一同をよそに、カレンはジュンイチから離れた。
驚きのあまり口をパクパクさせている鈴のもとへと戻ると、先ほどのように耳打ちする。
「でないと……」
「私が、ジュンイチくん取っちゃうよ?」
「な…………っ!?」
顔を真っ赤にして完全にフリーズ――鈴が我に返った時には、すでにカレンの姿はどこにもなかった。
「か、カレンは!?」
「アイツなら、お前が固まっている間にさっさと行っちまったぞ」
周囲を見回す鈴に答えるのはジュンイチだ。
「じ、ジュンイチ、アンタ……!?」
「…………? 何どもってんだ?」
未だ落ち着かないながらも言葉をしぼり出す鈴だったが、対するジュンイチは平然としたものだ。
「ひょっとして今のキスか?
他人のキスでフリーズしててどうするんだよ? 自分がされたならともかくさ」
「………………」
だからだろうか――鈴は、自分の中で動揺が急速に収まっていくのを感じていた。
代わりにわき上がってくるのは、形容しがたい怒りの感情――
「――むんっ!」
「どわぁっ!?」
次の瞬間には、鈴の限定展開した双天牙月が、とっさにかわしたジュンイチの鼻先をかすめていた。
「ちょっ、待っ、鈴!?」
「フフ……フフフ……
ジュンイチ……アンタよくも、あたしの目の前で平然と……」
あわてて距離を取るジュンイチに、鈴は双天牙月を手に危険な笑みを浮かべる。これにはジュンイチのみならず鷲悟達もドン引きだ。
「フフフ……今宵の双天牙月は血に飢えておるわ」
「…………今、昼間だぞ?」
箒の、明らかにツッコみどころを間違ったツッコミが最後の引き金であった。
「死、ねぇぇぇぇぇっ!」
「でぇぇぇぇぇっ!?」
かくて刃は振り下ろされる――鈴の振り下ろした双天牙月を、ジュンイチは白刃取りで受け止める。
「まっ、待て!
せめてISはやめろ! ここ空港っ!」
「問答無用ぉっ!」
「あー、もうっ!」
怒りに燃える鈴に対し、ジュンイチは双天牙月の刃と柄の境目に蹴りを一発。鈴の手から弾かれた双天牙月は限定展開だったこともあり量子化、消滅する。
「今だっ!」
「逃がすかぁっ!」
そのまま180度反転。逃げ出すジュンイチを鈴が追いかける――それを見送り、一夏は鷲悟に尋ねた。
「……止めなくていいのか?」
「止めたきゃお前行けよ」
「……オレが悪かった」
きっと、ジュンイチは逃げ切るんだろーなぁ、そしてその後自分達も一緒になって怒られるんだろーなぁ……と、したくもない確信と共に、二人は同時にため息をつき――
彼らの長い夏休みは、概ねこんな感じで幕を上げたのだった。
一区切り
何はともあれ
夏休み
次回予告
鷲悟 | 「おぅ、鷲悟だ。 鈴のヤツ、夏休みに入ってから元気ないな……カレンが帰って寂しいのか?」 |
鈴 | 「うっさいわね! そんなんじゃないわよ! それもこれもアンタの弟が……」 |
鷲悟 | 「は? ジュンイチがどうかしたのか?」 |
鈴 | 「な、何でもない、何でも! あー、もうっ! なんであたしがモヤモヤしないといけないのよ!?」 |
薫子 | 「そんな時は私にお任せっ!」 |
鈴 | 「黛先輩!?」 |
鷲悟 | 「次回、IB〈インフィニット・ブレイカー〉! |
『恋する乙女の大勝負!? 真夏のデート大作戦!』」 | |
鈴 | 「今こそ、あたしの魅力を見せてやるわ!」 |
(初版:2011/09/20)