始まりはいつだって突然訪れるもので――
「はぁ…………?
大樹……もう一回言ってくれるか?」
「だから、親父が失踪したんだって!」 |
きっかけは、友人からのいきなりの相談。
「で……オレはお前の親父さんを探せばいいのか?」
「あんなクソ親父はどーでもいいんだよ!」
「は………………?」
「とにかく、このことを妹の小雪に知らせたいんだけど……」「連絡が、取れないんだ」 |
友人、天ヶ瀬大樹の頼みとは、
全寮制の学園に進学した妹との接触。
学園は領海内のとある島にあるらしい、とのコトで、
さっそくボートを拝借。潜入を試みてみれば――
「何だ……?」
(この感じ……
ちょっと待て! なんでこんなところに“結界”が!?)
「待て、大樹! 止まれ!」
「待ってろ小雪!
お兄ちゃんが今行くぞぉっ!」
「人の話を聞けぇっ!」 |
シスコン兄貴の大暴走により、
ボートは結界に激突して木っ端微塵。
それでもなんとか浜辺にたどり着くものの――
「あ、あれ? 私……」
「何者サンだ? お前」
「え、えっと……」
「………………?」
「私は……」 |
大樹とはぐれた上に、
出会った女の子は記憶喪失!
しかも――
「ほほぉ、なかなかやるもんじゃのう」
(何だ!? アイツの攻撃は……!?
見たところ魔法だけど……)
「オレの知ってる魔法とは、術式が根本から違う!?」 |
不法侵入者であるジュンイチ達を狙ったのは、
見たことのない術式の魔法――
そして、ジュンイチと、無事合流できた大樹は知らされる。
「まどろっこしいことはキライだから、単刀直入に言うわね。
この島は……今から3年ほど前に、こことは違う世界からやってきた、少し変わった島なの」
「少しか!? 少し変わってるだけなのか!?
島が丸ごと転移した時点でじゅーぶん大事だろうが!」 |
この島が、住民もろとも異世界から転移してきたこと。
「つまり……さっきの力は……」
「お前さん達の世界の魔法、か……
道理で、オレが知ってる“こっち”の魔法と術式が違うはずだぜ」
「ひとつ訂正があるわ。
適性さえあれば、私達の魔法はこちらの世界の人間にも使えるの。
そう――大樹さん、あなたの妹さんのようにね」 |
その“異世界”の人間達が独自の魔法技術を持つこと。
「あー、確認するけど……このことを知るヤツは外部にもいるんだよな?」
「当然。
領海にいきなり島が現れれば、普通は大騒ぎになるでしょ?」
「けど、その情報は秘匿されている……
なるほど、ウチの国やら“AEGIS”やらが一枚かんでるワケね、この一件には……」 |
この島と魔法の存在が世間から秘匿されていること。
「けど……いつまでもこのままというワケにはいかないわ。
こちらの世界の人達に私達のことを知ってもらうために――」
「魔法を使える素質のある人間をスカウトして、留学生として招いている、か――」
「そうか……
小雪のヤツも、そのスカウトに引っかかったひとり、ってワケか……」 |
文化交流として、留学生を招いて魔法を教えていること。
「貴方達は選ぶことができるわ。
外の世界に戻って、この島でのことをすべて忘れるか。
もしくは――」「この島で学園に通って、みんなと一緒に卒業を目指してもらうか」 |
無事に島を出る方法はたったの二つ。
すべてを忘れるか、魔法を学ぶか。
「ジュンイチ……お前まで付き合う必要はねぇんだぞ。
龍牙さんとかあずさちゃんとかはどうするんだよ?」
「まー、少なくとも心配はしないんじゃね?
オレが何かしらトラブった挙句唐突に行方をくらますなんていつものことなんだし」
「い、いつものことなんですか……?」 |
ことは二つの世界の接触という大事。
黙視するワケにもいかず、ジュンイチは介入を決意する。
そびえ立つ世界樹の下で繰り広げられる、様々な出会い――
「ホントに……私は誰なんでしょう?」
「知るか」
「………うぅ………」
「う゛っ…………
……え、ええいっ! 子犬みたいな泣きそうなツラされたってわからんもんはわからんわ!」
「あぁ〜あ。
泣ぁ〜かした、泣ぁ〜かした♪」
「大樹、てめぇまで!」 |
アリシア・インファンス
高い魔力秘めた、記憶喪失の女の子
「……私も、お兄ちゃんがいてくれるとうれしいな♪」
「えっと……オレは?」
「ジュンイチはどーでもいいんだろ?」
「いや、オレもそうだろうとは思うけどさ……」 |
天ヶ瀬小雪
寂しがり屋でお兄ちゃん大好きの義妹
「貴方達には、絶対に負けませんから」
「いや……オレは小雪と違って魔法は使えないし……」
「そんなことないはずよ!
この学園に通うからには、魔法の素質は必ずあるはずだもの!
そこまでして力を隠す理由は何!?」
「って言われても……
ジュンイチ、お前からも何か言ってやってくれ」
「そうだな……
『負けない』とか言われても、お前らの火力じゃそもそもオレと勝負にならねぇし」
「言ってくれるじゃない……!」
「まぜっかえすなよ!」 |
セーラ・フィニス・ヴィクトリア
名門出身のプライドが高いお嬢様
「大樹くん、ダメだよ、そんなことしちゃ」
「………………
なぁ、大樹。
このちみっ子はお前の知り合いか何かか?」
「じ、ジュンイチ!
その人、先輩だぞ!?」
「何っ!?
こんなちみっちゃいのにか!? うちのあずさと大して変わらんぞ!?
後輩どころか中学生でも通用するぞ!?」
「あ、あはは……」 |
九条優花
花壇の世話が好きなちっちゃい先輩
「……は、はじめまして……」
「小雪のお兄さんとそのお友達、だよね?
よろしくお願いします!」
「………………なぁ、大樹」
「何だよ?」
「『双子の性格が正反対』ってのは、もう覆すことのできない定番なのか?」
「オレに聞くなよ……」 |
レナ・ジェミニスと
ニナ・ジェミニス
対照的な性格の双子の姉妹
「ジュンイチ、その“力”……!?」
「魔法……じゃないですよね?」
「あぁ、魔法じゃねぇぞ。
そーいやお前らには精霊力を使うところを見せたことなかったっけ」 |
魔法学園に投じられた二つの“異端”。
魔法を使えない大樹と異質の“力”を振るうジュンイチ。
「さぁ、ジュンイチ!
この魔法試験で勝負よ!」
「上等だ!
ゼロブラック――」
「待て待て待てぇっ!
セーラは『試験で勝負』って言っただろうが!
勝負となったらガチバトルしかないのか、お前には!?」
「ないけど?」
「心底不思議そうに答えるな!」 |
「た、体力測定……?
まさか、魔法学園で体力測定をやるハメになるとは思わなかったぜ……」
「まー、ここで教える魔法は距離を置いての運用が基本みたいだからな……
万一敵に接近を許しても、問題なく殴り倒すための力が必要だ、ってコトなんだろ?」
「…………少なくとも、ジュンイチが思ってるような理由からじゃないと思うわよ」 |
「世界樹祭?」
「うん。
まぁ、わかりやすく言えば文化祭みたいなものね。
けど……この学園の場合、やっぱり魔法とかも使うから、トラブルも多いの。
だから、二人の体力を見込んで、トラブル収拾をお願いしたいんだけど……」
「んー……どうする? ジュンイチ」
「いいぜ、オレは」
「あれ?
意外だな。即答か」
「まぁな。
だって……トラブルを黙らせればいいんだろ?」
「…………余計物騒な事態になりそうだから、お前は却下な」 |
彼らが魔法学園で繰り広げる、ドタバタな日常と――
「大樹さん……!
会えないでいる間、ずっと大樹さんのことばっかり考えてました……!」
「アリシア……」「…………あいつら……完全に相手のことしか見えてねぇな」
「何のぞき見してるのよ?
シュミ悪いわよ、そういうの」
「だったらセーラは帰れよ」 |
つながっていく絆。
「………………?」
「ん? どうした、ジュンイチ?」
「この感じ……」 |
しかし、そんな彼らのもとに忍び寄る――
「そりゃ、隔離されてるだけでオレ達の世界の一角なんだもんな……
瘴魔の1体や2体、出てくるか!」 |
戦いの影。
「みんなは下がってろ。
お前らの使う魔力の質じゃ、瘴魔力と対消滅できねぇ。
つまり……」「正反対の力を持つオレが、一番楽にアイツをぶん殴れるってワケだ」 |
みんなの学び舎を――
「こいつ……外のヤツより強い!?
この島の魔力を取り込んで、パワーアップしてるってのかよ!?」
「ジュンイチ!」
「心配すんな、大樹!
確かに強いが――オレよりゃ弱いっ!」 |
そこで出会った友人達を――
「大樹さん……
私、大樹さんと一緒に出会えて、幸せでした……!」
「アリシア……!」
「ざけんな……!
おいアリシア! 大樹のとなりにいてやれるのは、お前しかいねぇんだぞ!
そのお前が、簡単にあきらめてんじゃねぇ!」 |
大切な絆を守るため――
「炭になるまで、焼き尽くす!」
今、熱き勇気が燃え上がる!
MagusBreaker
〜世界樹と精霊と恋する魔法使い〜
――想いの魔法が、奇跡を起こす――
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