「アンタの時代はとっくに終わってるんだって、気づけよな!」
 言って、ガスケットは引き金に指をかけ――
「やめろぉっ!」
 咆哮と共に飛び込んできた影が、ガスケット達をまとめて弾き飛ばす!
 そして、ロボットモードへとトランスフォームし――エクシリオンはオートランダー達へと向き直り、声をかけた。
「大丈夫か!?」
「あ、あぁ……
 だが、アンタは……?」
「あ………………」
 その問いに、エクシリオンはようやく自分が何をしたのかに思い至った。

 そう――彼らを助けに入ってしまった。
 『住民と不用意に接触してはならない』というギャラクシーコンボイの命令に背いて――

 

 


 

第7話
「最速の勇者!
ニトロコンボイさん登場なの」

 


 

 

「お、オレは……!」
 自らの素性を問うオートランダーの問いに、エクシリオンは答えることができずうめくしかない。
 その様子を、出遅れたブラーやファストエイド、そしてクロノ達は物陰からうかがっていた。
 出ていきたくてもそれはできない――彼らがギャラクシーコンボイから与えられた任務はプラネットフォースを持ち帰ることだが、同時にいくつか守らなければならない条件も言い渡されている。
 そのひとつが、『地元の住民との接触の禁止』――異邦人の来訪による無用な混乱を招くのを防ぐための命令である。
 だが、今エクシリオンはそれに背いてしまった。なのに自分達まで出ていってしまっては、余計に事態を混乱させてしまう可能性すらある。
 クロノ達に至ってはさらに深刻だ。何しろこの星には現時点で彼らのような人間タイプの住人は見かけておらず、トランスフォーマーしか確認されていない。エクシリオンならばまだ言い逃れはできるだろうが、彼らが出ていっては正体がバレるのは確実と思っていい。
 結果――どうすることもできず、彼らはただ見守るしかできなかった。

「くっそぉ……!」
「てめぇ……!」
 だが、そんなことはガスケット達には関係がない。再び立ち上がると、乱入してきたエクシリオンへと銃を向ける。
「くっ!」
 放たれた射撃をとっさにかわし、エクシリオンはビークルモードへとトランスフォーム。そのまま走り去っていく。
「逃がすか!」
「逃がすもんか!」
 そんなエクシリオンに、ガスケットとランドバレットはトランスフォームして彼を追う。
 エクシリオンの狙い通り、オートランダーを無視して――
「やれやれ……水差されちまったな」
 いや、ひとりだけ残っていた。パズソーはそう言ってオートランダーへと向き直り、
「さて、じーさん。
 こっちの聞きたいことに、さっさと答えてもらおうか」
「なんじゃと……!?」
 パズソーの言葉にうめき、オートランダーがブレードをかまえるが――
「抵抗すんなよ!」
 そんなオートランダーに、パズソーは至近距離からミサイルを撃ち込む。
 一応手加減はしたが、年老いたオートランダーを黙らせるには十分だった。倒れたオートランダーへとパズソーは再びミサイルを向け、
「さて、質問タイムだ。
 プラネッとぶしゃぁっ!?」
 言葉は途中から意味を失った――エクシリオンに続き、たまらず飛び出したブラーがその横っ面に飛び蹴りをくらわせたからだ。
 もちろん、その体内のライドスペースには美緒の姿がある。
「おいてめぇ! そんなじーさんより、オレの相手をしてもらおうか!」
(ああああああああああ……)
(なんであなたまで出ていくんですか!)
 エクシリオンに加えブラーまで――物陰でファストエイドとシオンは思わず頭を抱えていた。

 一方、エクシリオンの挑発に乗ったランドバレットとガスケットはしきりに攻撃を繰り返すが、エクシリオンはそれを巧みにかわしていく。
「くっそ! しっかり狙えよ!」
「ガスケットこそ当たってないじゃんか!」
「う、うるさい!
 こうなったら……!」
 反論するランドバレットに言い返し、ガスケットはランドバレットと二手に別れ――
「これで、どうだ!」
 地の利を活かしてエクシリオンの前方に回り込み、ランドバレットと共にエクシリオンへと接触、スピンさせる!
「ぅわぁぁぁぁぁっ!」
「へっ、回れ回れ!」
「ボク達二人に勝とうってのが間違いなんだよ!」
 スピンし、体勢を立て直せないエクシリオンへと、ランドバレットとガスケットが両側から迫る!
「あぁ、もうっ!
 シオンとクロノはここに!」
 ここに至ってはもう隠れていても無意味だろう――ファストエイドは救急車へとトランスフォームし、エクシリオンの元へと向かう。
 そして、間一髪でエクシリオンを押しのけ、体当たりを狙ったガスケット達は互いに激突して弾き飛ばされる。
「大丈夫か!? エクシリオン!」
「た、助かった……!」
 ファストエイドの言葉にエクシリオンが安堵のため息をもらすと、
『トランス、フォーム!』
 ガスケットとランドバレットがロボットモードにトランスフォーム。エクシリオンとファストエイドを狙う。
「ここは一旦引くぞ!」
 エクシリオンを救ったとはいえ、必要以上の干渉はマズい――撤退を促すファストエイドだったが、
「いや、戦うぜ!」
「待て、エクシリオン!」
 ファストエイドの制止も無視し、エクシリオンはガスケットとランドバレットへと走り出し――
『フォースチップ、イグニッション!』
 頭上でブラーと美緒の叫び声――次いで爆発。どうやらエヴォリューショナルブースターのビームガンをパズソーにお見舞いしたようだ。
 ブラーがイグニッションして攻撃したということは――そのことに考えが至り、エクシリオンはあわてて停止し、
「どわぁぁぁぁぁっ!?」
「でぇぇぇぇぇっ!?」
「のえぇぇぇぇぇっ!?」
 その彼の予感は的中した。墜落してきたパズソーがガスケットとランドバレットを直撃。3人はダンゴ状態で大地に転がる。
「お、落ちてくんなよなぁ……」
「わ、悪い……」
 うめくガスケットにパズソーが答えると、
「さて、どうする?」
「続けるっつーなら遠慮なく撃つけど」
 そんな彼らにそれぞれの武器を突きつけ、エクシリオンとブラーが告げる。
 その言葉にガスケット達は顔を見合わせ――
『覚えてろぉぉぉぉぉっ!』
 お決まりの捨てゼリフと共にビークルモードにトランスフォーム。逃げ去っていった。

「オートランダー、大丈夫!?」
 パズソーの一撃を受け、倒れたオートランダーにスキッズが声をかけると、
「心配ないよ。
 私に任せておきなさい」
 言って、ファストエイドがオートランダーの診察を始める。
「大丈夫だよ」
「彼は科学者で、医者だから」
 心配そうなスキッズをエクシリオンとブラーがなだめている間に、ファストエイドはすでに診察と応急手当を終えていた。
「スタビライザーが傷ついている。少しめまいがするかもしれない。
 しばらくは安静にしていた方がいいでしょう」
 ファストエイドの言葉に、オートランダーは彼へと向き直り、礼の言葉を口にした。
「アンタ達が助けてくれたのか……礼を言う。
 しかし、アンタ達は一体何者だ?」
『う゛っ………………』
 一番困る質問だ――ファストエイドは背後のエクシリオンやブラーと視線を交わし、エクシリオンが答えた。
「と、通りすがりの者さ。
 たまたま、ここを通りかかったもんで……」
「ワシもずいぶん長いこと生きとるが、お前さん達を見たことがないなぁ」
『う゛っ………………』
 再び3人は視線を交わし――今度はブラーが答える。
「ほ、ほら、オレ達目立たないし、アチコチ転々としてるから……」
『アハハハハ……』
『………………?』
 乾いた笑いでなんとかゴマかそうとする3人に、オートランダーとスキッズは思わず顔を見合わせた。

「まったく、ヒヤヒヤしましたよ……」
 オートランダー達が立ち去り、ようやく物陰から出てくることができたシオンはため息混じりにエクシリオンにそう告げた。
「だ、だってさぁ……」
「あんな場面に出くわしたら、普通は助けに行くだろう?」
「それがこの星の『普通』ならね」
 反論しようとするエクシリオンとブラーに答えたのはクロノだ。
「いいか?
 ボク達はまだこの星についたばかりで、この星の文化も歴史も何も知らないんだ。
 もしあれが、この星の正当なルールに則った勝負だったらどうするつもりだったんだ?」
「け、けど! 正当なものでも、老人と子供にあんなヒドいことして、許されるワケないのだ!」
「しかも2対3だ! あんなのが正当な戦いだなんて、オレには思えないね!」
「お前達がどう思うかは関係ない!」
 美緒とエクシリオンの言葉に、ファストエイドは彼らをぴしゃりと一喝するが、
「あれを見逃したら、サイバトロンの名が泣くぜ!
 なぁ、そうだろ!?」
「そ、それは……」
 エクシリオンの思わぬ反論に、ファストエイドは思わず口ごもる。
 確かに、人道的な観点から見れば、どんな風習があろうと弱者を見捨てずに助けに走ったエクシリオン達の行動は正解だろう。
 だが――だからと言って、正当な理由の元に下された命令に背いて許されるワケでもない。どちらを尊重するか、ファストエイドは迷いに囚われてしまい――
「……だ、だが、それでも我々の干渉は許されないんだ!」
 結果、ファストエイドにできたのはただがむしゃらに命令の優先権を主張することだけだった。
「言われたはずだ。この星に過剰に干渉してはいけないと!
 なぜなら我々は、ここの住民にとって、何の関係もない異星人なんだ――」
「えぇぇぇぇぇっ!?」
『え――――――?』
 ファストエイドの言葉をさえぎった声は彼らの誰のものでもなかった。思わず視線を向けた先にいたのは――
『スキッズ……!?』
「あ、あの……オートランダーが『改めてお礼をしたいから、いつもどの辺を走ってるか聞いてこい』って、あの……」
 声をそろえる一同に、スキッズはおどおどとそう答え――すぐに興味が勝ったようだ。目を輝かせて尋ねてくる。
「そ、それより! みんなが他の星から来たってホント!?
 どうやって? 何のために!?」
「……ファストエイドも、エクシリオンを怒れないのだ」
「………………言わないでくれ」
 美緒の言葉に、ファストエイドは――うめいて頭を抱えるしかなかった。

 一方、その頃地球では――
「今からでも遅くはありません。
 彼らを呼び戻せ、とは言いませんが、せめて誰かと私を交代させてください」
「その話は前にもしたはずだ」
 廊下を二人で歩きながら、ドレッドロックの言葉をギャラクシーコンボイはあっさりと切り捨てた。
 二人が話しているのはスピーディア派遣メンバーのこと――ブラーが乱入するまでは順調に進んでいたと思われていたエクシリオン達のスピーディア行きだったが、水面下ではいろいろと紆余曲折があったようだ。
 ともあれ、彼らは指令室へと入るとそこにいた面々に声をかける。
「みんな、集まってくれ!
 緊急の作戦だ」
 その言葉に一同が集まる中――なのは達と共にしっかり彼らの会話を盗み聞きしていたアリサがホップに尋ねた。
「ドレッドロックは、エクシリオン達のことが信用できないの?」
「そうではありません。
 むしろ、心配しているらしいです」
「何が心配なんだい?」
 と、これはアルフの問いである。
「私が聞いた話では、彼らはそろってバラバラな性格をしているらしいのです」
 その言葉に、なのは達は顔を見合わせ、
「仲が……悪いってことかな?」
「っていうより……合わない、って感じじゃないかな?
 ほら、スピーディア行きが決まってから、何かとムチャしたがるエクシリオンにファストエイドはヤキモキしっぱなしだったし、ブラーはブラーでエクシリオンと似たり寄ったりだからファストエイドとは似たような関係だろうし……」
「ブラーとエクシリオンは、思い出すまでもないよね……
 それにクロノくんもファストエイドと同じで生真面目だし……」
「シオンだって似たようなものさ。
 感情的なエクシリオンやブラーとぶつかるのは、必至だろうね……」
「ドレッドロックは、きっとそれで任務に支障がないか、って心配してるんじゃないかな?」
 なのはの問いに、フェイトとすずか、そして志貴やユーノが答え――作戦を話し合うギャラクシーコンボイへと視線を戻す。
 そして――なのはは正直な感想をつぶやいた。
「司令官さんも、大変なんだね……」

「何!?
 他の星から来たと!?」
 スキッズからその話を聞き、オートランダーは思わず声を上げた。
 一瞬信じられない、という考えがよぎるが――それならば彼らを今まで見かけたことがなかったのにも説明がつく。
 それに、明らかに自分達トランスフォーマーと違うクロノ達を前にしては、オートランダーも信じるしかなかった。
「しかし、私達はあなた達に害を与えに来たワケではありません」
「わかっておるよ」
 弁明しようとしたファストエイドだが、オートランダーはあっさりとそう告げた。
「悪さをしようとしてやって来たのなら、そこの――」
「……エクシリオンだ」
「ブラーです」
「エクシリオンやブラーのようにワシらを助けたりはせんし、アンタ――」
「ファストエイドです」
「ファストエイドのように、ワシを手当てすることもないじゃろう。
 ましてや――」
 そして、視線を向けられ、クロノ達もそれぞれ名乗り、
「そこのオチビちゃん達も、周囲の目など気にせず堂々と姿を現したはずじゃ」
 好意的なその反応に、美緒は思わずクロノに向けてガッツポーズをとってみせる。
「しかし……一体何のために、この惑星スピーディアに?」
 そのオートランダーの問いに、一同は思わず顔を見合わせる。
「どうする……?」
「話すしか、ないだろうね……
 とりあえず、ボクが話すよ。異文明人との接触には慣れてる」
 エクシリオンに答え、クロノは見下ろす形になるオートランダー達の負担にならないよう、彼らの目線まで上昇して説明を始める。
「ボク達は、プラネットフォースと呼ばれるものを探して、この星に来たんです」
「ぷらねっとふぉーす?
 はて……聞いたことはないが……」
 しばし考え込み、オートランダーは改めて尋ねる。
「それは、一体どんな形をしておるのじゃ?」
「それは……ボクらにも……」
「色とか、大きさは?」
 今度はスキッズが尋ねる。
「それも……」
「では、一体何のために使うのかね?」
 その言葉に、クロノは今までとは違う理由で返答に困った。
 少なくともその問いには答えられる。グランドブラックホールから全宇宙、そして影響を受けるであろう近隣の次元世界を守るためだ。
 だが――それを話してしまうことには抵抗がある。うかつな説明が相手の強硬な協力要請を招きかねないのはなのはの時に思い知っている。だからこそ余計に。
 結局、クロノはこの問いにも言葉をにごすしかなかった。
「……すみません」
「まったく、雲をつかむような話じゃな」
「申し訳ありません。
 我々も、そう多くを知っているワケではないのです」
 ため息をつくオートランダーにシオンが言うと、突然スキッズが口を開いた。
「えっと……よかったら、ボクがそのプラネットフォース探しを手伝ってあげるよ」
「ホント?
 だったら助かるのだ!」
「おい、美緒」
 思わず喜びの声を上げる美緒をファストエイドがたしなめるが、
「みんな、まだこの星のこと何も知らないんでしょう?
 けどボクがいれば、この星のいろんなところを案内してあげられるよ」
「確かに、ボクらはこの星に明るくない。
 道案内はあれば助かるけど、あまり巻き込むワケには……」
 結局事情を話さなくても結果は同じだったか――内心でため息をつきながらもクロノはなんとかスキッズの説得を試みる。
 が――
「わかった。スキッズの言うことももっともじゃ」
「オートランダー……」
 よりにもよって一番当てにしていた人物までスキッズの側に回ってしまった。同意するオートランダーの言葉にクロノは思わず脱力するのだった。

「くっ、引き離せない!」
「バカめ! 飛行スピードが違う!」
 うめき、なんとか離脱しようとするドレッドロックだが、スタースクリームはその後ろにピッタリと張りついて離れない。
「ドレッドロック、フォースチップを!」
「ダメだ。この状況で使えばさらに速度が落ちる!」
 提案する志貴だが、ドレッドロックはなんとかスタースクリームを振り切ろうと飛行する。
 だが、スタースクリームは余裕だ。どこまでもドレッドロックの後についていく。
(貴様などいつでも落とせるが、今回は……)
 すぐにドレッドロックに攻撃しないのは理由があった。スタースクリームは狙いを定めてエネルギーミサイルを放ち――ドレッドロックの主翼、その翼端に一撃を加える!
「ぐわっ!?」
 バランスを崩し、高度を下げるドレッドロックを追うスタースクリームだったが――
「させない!」
 その前に立ちふさがったのはフェイトだった。なのはと二人でスタースクリームへとデバイスを向ける。
「またお前達か……!」
 フェイトには前回の戦闘で苦渋を舐めさせられている――スタースクリームは舌打ちして停止、ロボットモードへとトランスフォームする。
「なのははドレッドロックと下がって!
 コイツのスピードは、重機動のなのはじゃとらえきれない!」
「う、うん!
 気をつけてね、フェイトちゃん!」
 フェイトに答え、なのはは後退。ドレッドロックと共に基地へと向かう。
 対して、スタースクリームはしばしフェイトと対峙していたが――やがて唐突にかまえを解いた。
「やめだ。
 余計なジャマで場が白けた。貴様との決着はまた今度つけてやる」
「逃げるつもり!?」
 言って離脱しようとするスタースクリームをフェイトが追い、二人はそのままドッグファイトへと移行する。
 だが――スタースクリームはフェイトを振り切るつもりはなかった。
(フンッ、正面から戦うしかないバカか……所詮は子供だな。
 今頃は――)

 その頃、ドレッドロックはなのはを回収し、無事基地の中へと逃げ込んでいた。
 だが――それを見ていた者がいた。
「へっ、バカが!
 トランスフォーム!」
 笑みを浮かべ、サンダークラッカーはロボットモードへとトランスフォーム。同じくトランスフォームしたラナバウトと二人で大地に降り立つ。
「見つけたな。ヤツらの基地……」
「おぅ。
 これで手柄はイタダキだ」
 サンダークラッカーの言葉にラナバウトはそう答え、
『フォースチップ、イグニッション!』
 二人はフォースチップをイグニッションし、それぞれの武器をかまえ、
「サンダー、ヘル!」
「バウトシューター!」

 サンダークラッカーが左手のビーム砲を発射。ラナバウトも両手に集めたエネルギーを腕部アーマーに込めて撃ち出し、二人の一撃は基地の入り口を粉々に粉砕した。
「へっ、バーカバーカ!
 しばらくは基地を作り直してろ!」
「その間に探し物はオレ達がいただくぜ!」
『なぁーっはっはっはっ!』
 言って高笑いを上げる二人だったが、彼らは気づいていなかった。
 飛び散る破片の中に、“装甲材が一切ない”ことに――

「あぁ〜〜あ、やられちゃった」
「なんちゃって、ね」
 破壊された基地入り口の様子を見て、琥珀の言葉にアリサは気軽に相槌を打った。
「ニセの基地を破壊させて本物の基地を隠す作戦――うまくいきましたね」
「うむ。
 秋葉、キミの協力のおかげだ」
 告げる秋葉に答え、ギャラクシーコンボイは満足げにうなずいてみせる。
 そう。この作戦の発案は秋葉だった。チップスクェア探しのアドバンテージを握るためにも、敵の目を自分達からそらすべきだと提案。そのために今回の作戦が用意されたのだ。
 と――
「ただいまー」
 なのはを先頭に、ドレッドロックや志貴が帰ってきた。
「おかえり、なのはちゃん」
「お疲れさまです、なのは様」
「大変だったのはわたしよりドレッドロックさんですよ」
 すずかと翡翠に答え、なのははドレッドロックへと振り向き、
「まったくだ。
 ヤツらを倒すワケにもいかず、かといって逃げの一手では怪しまれる――適度に戦いながら逃げるしかなかったからな」
「わたしも、せっかく覚えた新技、試したかったんですけど……」
《ですが、そのおかげで彼らの頭から、そちらの基地は消えているはずです。
 お疲れさまです、二人とも》
 苦笑まじりに答えるドレッドロックと、覚えたてらしい新たな技を試せずに少し残念そうななのは――二人を労うのはアースラのリンディである。
「なんだ、戦わないの?
 私を出してくれれば速攻で決めてあげるのに」
「これも立派な戦いだ。アルクェイド」
 一方、直接の戦闘でなくて退屈気味なアルクェイドを恭也は肩をすくめながらなだめる。
 が――そんなもので戦いが大好きなアルクェイドが収まるワケがない。
「……あぁぁぁぁぁっ、もうっ!
 戦いたい暴れたい壊したぁぁぁぁぁいっ!」
「ヤバいっ! アルクェイドがキレた!」
「みんな、取り押さえろ!」
「ていっ!」
 バギィッ!
「ぅわぁぁぁぁぁっ!」
「あぁっ! バックパック――ッ!」
 アルクェイドの一撃でバックパックが宙を舞う光景を見ながら、ギャラクシーコンボイは(やや現実逃避気味に)つぶやいた。
「こちらと違って、スピーディアのメンバーはうまくやってくれているといいが……」
《むしろ、そっちの方が不安要素が多いですよねぇ……》
 そのつぶやきをしっかりと聞きつけ、エイミィはモニターの向こうでそう答えて苦笑した。

 舞台は戻ってスピーディア――
「じゃあ、そのニトロコンボイって人なら、何か知ってるかもしれない――って?」
「それはわからないけど……」
 ハイウェイを走りながら、エクシリオンに乗るクロノの問いにスキッズはそう答え、
「この星では何日かに一度、自分のものを賭けてレースをするんだ。
 ニトロコンボイはこの星では一番速くて、一番勝ってるから、ひょっとしたら持ってるかもしれない、っていうだけ」
「やれやれ、その程度か」
「まぁまぁ。地道に探しましょう」
 ボヤくブラーをファストエイドに乗るシオンがなだめると、
「………………む?」
 ファストエイドが、前方からやってくるそれに気づいた。
 巨大なメカの塊である。まるで下を走るトランスフォーマー達に道を譲るようにハイウェイをまたぎ、ゆっくりとこちらに向かってきている。
「な、何なのだ!? アレは!」
「あぁ、道路補修をするトランスフォーマーだよ。
 さっきの3人に壊された道路を直しに向かってるんだね、きっと」
 驚く美緒にスキッズが答え、彼らはその道路補修トランスフォーマーの下をくぐる。
「みんなの星にはいないの?」
「あぁ。
 オレ達の星にも地球にも、元々こんなにたくさんハイウェイはないからね」
「もちろん、ミッドチルダにもね」
 スキッズの問いにエクシリオンとクロノが答え、やがて一行は前方の巨大な山のふもとにさしかかる。
「な……なんて高い山ですか……」
「この星で一番高い山で、スターウォッチ山っていうんだ」
 圧倒され、つぶやくシオンにスキッズが答えるが、エクシリオン達走り屋組はそのスターウォッチ山に敷かれた道路に着目していた。
「あの道路のカーブ、イカシてるぜ」
「あんなコースを思いっきり走りてぇな!」
「バイク、持って来ればよかったのだ……」
 エクシリオン、ブラーに加え美緒まで同意するのを見て、スキッズは彼らに提案した。
「ねぇ、行ってみる?」
「もちろんさ!」
「行ってみようぜ!」
「思いっきりトバすのだ、ブラー!」
「おいおい。
 私達は観光をしに来たワケではないんだぞ」
 ファストエイドがたしなめるものの、そんな言葉が今の彼らに通じるワケもない。
「わかってるって!
 けど、辺りの地形を知っておくのも悪くないだろ!」
「それに、さっきみたいなヤツらと戦闘になった時は間違いなくカーチェイスだからな!
 その時に備えて、練習走行くらいはしとこうぜ!」
「そうそう、任務任務なのだ!」
 口々に言うと、エクシリオンとブラーは一気に加速、先行してスターウォッチ山のドライブウェイへと突入していく。
「やれやれ……」
 ため息をつくものの、だからと言って放っておくワケにもいかず、ファストエイドはその後を追って加速した。

「いい眺めだな……」
 山頂に到着し、辺りを一望してエクシリオンがつぶやく。
 その後ろでは――
「大丈夫ですか?」
「……あまり……大丈夫じゃないかも……」
 エクシリオンの体内のシートで思い切り揺さぶられたクロノはすっかりグロッキーだった。尋ねるシオンに力なく答える。
「まったく、どういう運転だ……
 どうして慣性無効化機能のついてるシートであそこまで揺さぶられるんだ……? ムチャにもほどがあるぞ」
「はっはっはっ。情けないな。
 なのは達は平気だったぜ」
「なのは達にもやったのか!?」
 思わず声を上げるクロノだったが、エクシリオンは悪びれることもなくスキッズに尋ねる。
「で? ニトロコンボイってのは、どの辺りにいるんだ?」
「ほら、あっちに小高い山があるでしょ?」
 弱っているクロノの様子は気になったが、とりあえずエクシリオンにそう答えるとスキッズはその山を指さし、
「いつも、あそこのサーキットの辺りを走ってるんだ」

 その頃、そのサーキットでは――
「一体、プラネットフォースとは何だ?」
「この世界を救う力を持つものだ」
 尋ねるニトロコンボイに、マスターメガトロンはあっさりとそう答えた。
「この宇宙を救う、だと……?」
 いきなりスケールの大きな話を持ち出され、今までこの星の外に知的生命が存在することを知らなかったニトロコンボイは思わず眉をひそめる。
 だが、そんな彼にかまわず――いや、彼の動揺にたたみかけるように、マスターメガトロンは自らを指さし、
「そして、このオレこそが、この宇宙を救う者なのだ」
「フンッ、オレに挑む度胸といい、そんなことを言い出す自信といい……只者ではないと思ったぜ」
 だが、そんなマスターメガトロンの態度は、ニトロコンボイには過剰な自信と映ったようだ。元の調子を取り戻してそう答える。
「本当に知らないのか?」
「あぁ、すまないな。
 だが似た言葉なら知っている」
「何?」
 ニトロコンボイのその答えに、今度はマスターメガトロンが眉をひそめる番だった。
「何だ? それは」
「この星で一番速い者に贈られる、プラネットカップだ」
「……共通するの、『プラネット』の部分だけじゃんか」
 脇でつぶやくガスケットのツッコミは当然のように黙殺される。
「それは誰が持っている?」
 尋ねるマスターメガトロンに、ニトロコンボイは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「もちろん、このオレさ」

「よい、しょっと……」
 クロノにフローターフィールドで足場を作ってもらい、スキッズはサーキットの外壁によじ登る。
 同様にシオンや美緒も外壁の上に飛び乗り、エクシリオン達も外壁の上からサーキットを見渡す。
 最初に見つけたのはやはりスキッズだった。
「あ、いたいた。
 あれがニトロコンボイだよ」
 そう告げるスキッズだったが――ファストエイド達はそれどころではなかった。
「おい、となりにいるヤツを見ろ!」
「あれは……マスターメガトロン!
 横のヤツらは、ランドバレットとガスケット、パズソーとかいうヤツ!」
 ファストエイドの言葉にエクシリオンが声を上げ、
「彼が、デストロンの首領ですか……」
 マスターメガトロンを見るのが初めてなシオンはそうつぶやきつつ早速観察を始める。
「悠長に言ってる場合か!」
 そんな彼らに言って、ブラーが駆け出そうとするが、
「待つんだ、ブラー」
 それをクロノが制止した。
「今はもう少し、様子を見るんだ」
「わ、わかったよ……」

「早く見せてもらいたいものだな」
「何をそんなに急ぐんだ……?」
 先ほどからしきりに『プラネットカップを見せろ』とせがむマスターメガトロンの言葉に、ニトロコンボイは不思議そうに尋ねる。
 そしてその問いに、マスターメガトロンは答えた。
「サイバトロンだ」
「さい、ばとろん……?」
「あぁ。
 ヤツらサイバトロンは“悪のトランスフォーマー達だ”。この宇宙を支配しようと企んでいる」
 そのサイバトロンのメンバーが聞いているとも知らずに言いたい放題である。
「ヤツらもプラネットフォースを狙っている」
「それで、そいつらよりも先に手に入れたい、ってワケか……
 それなら、レースでオレに勝つことだな。
 勝たない限り、そのサイバトロンはもちろん、アンタにも譲るつもりはない」
「……よかろう」
 マスターメガトロンの答えを合図に、二人はビークルモードへとトランスフォームし、スタート位置につく。
「くっ……!」
「アイツ……!」
 一方、エクシリオンとブラーはその様子を苦々しく見守る――それを見て、クロノは一応釘を刺しておくことにした。
「おいおい、まさかレースに参加したいんじゃないだろうな?」
「ま、まさか!」
「そんなことないさ!
 マスターメガトロンが勝てるワケないしな!」
『アハハハハ……』
 から笑いする二人を見て、ファストエイドはシオンと顔を見合わせ、思わずため息をつく。
 だが――
「レースは3周だ。
 勝てばお前が欲しがっているものをやろう」
『え………………っ!?』
 その言葉に、一同は目を丸くした。
「ね、ねぇ、マスターメガトロンが欲しがってるものって……!」
「あぁ……!
 間違いなく、プラネットフォースだ……!」
 尋ねる美緒に、クロノはうめいた。
「なんてことだ……
 プラネットフォースを手に入れるには、あのニトロコンボイにレースで勝つしかないっていうのか……!?」
「……こうなったら!
 いくぞ、ブラー!」
「おぅともよ!」
 クロノの言葉が引き金になった。エクシリオンとブラーはサーキットへと飛び込み、スタート位置へと急ぐ。
「お、おい、二人とも!」
 あわててファストエイドが声を上げるが、その瞬間にニトロコンボイ達はスタート。エクシリオン達もトランスフォームしてその後を追っていった。

「あんたがニトロコンボイだな!」
「何だ、お前らは?」
 追いつき、声をかけるエクシリオンにも、ニトロコンボイは乱入を咎めることもなく冷静に聞き返す。
「オレはエクシリオン! 向こうはブラー!
 アンタにプラネットフォースのことを聞きたい!」
 だが――その会話に割り込んだのはマスターメガトロンだった。
「話すな!
 そいつらはさっき話した悪の組織、サイバトロンだ!」
「サイバトロンが悪の組織だぁ!?」
「悪はそっちだろうが! マスターメガトロン!」
 マスターメガトロンの言葉に言い返すエクシリオンとブラーだが、そんなことはニトロコンボイには些事でしかなかった。
「どっちが悪でも関係ない。
 すべてはオレとのレースに、勝ってからだ!」
「負けるかよ!」
「勝つのはオレだ!」
 加速するニトロコンボイを追い、エクシリオンとブラーもさらに加速。マスターメガトロンだけが取り残される形になる。
「へっ、そんなデカい図体で、レースをしようってのが間違いなんだよ!」
「オトトイ来やがれってんだ!」
 出遅れたマスターメガトロンをあざ笑う二人だったが――
「フォースチップ、イグニッション!」
 マスターメガトロンがフォースチップを使った。デストロンマークの刻まれたフォースチップがチップスロットへと飛び込み、車体後部のブースターが起動。すさまじいスピードで加速し、彼らとの差を詰めていく!
 だが――
『バーカ!』
 エクシリオンとブラーはあっさりと道を譲り――その先のカーブでマスターメガトロンは曲がりきれず、クラッシュしてしまう。
 その後も何度も加速し、追い抜くものの、やはりカーブを曲がりきれずに順位を下げてしまう。
 一方、エクシリオンとブラーはニトロコンボイに懸命にくらいついていく。
 現時点ではニトロコンボイを先頭にエクシリオン、ブラー、マスターメガトロンという順位である。
「す、スゴい……!
 この星で一番速いニトロコンボイと互角だ……!」
 もはやはしゃぐのも忘れ、レースを見守るスキッズだったが、
「問題は……」
 つぶやき、ファストエイドはガスケット達へと視線を向けた。
 彼の言いたいことはわかる――クロノとシオンがその懸念を口にした。
「アイツらがどう出るか、か……」
「このままマスターメガトロンに負けさせるとは、思えませんからね……」

 そうこうしている間に、すでにレースは終盤。3周目も最終コーナーを残すのみとなった。
 そして――この最終コーナーこそがエクシリオン達の狙い目だった。
「この最終コーナーが勝負だ!」
「おぅ!」
 言って、ニトロコンボイのスリップストリームに入るエクシリオンに答え、ブラーは体内に乗る美緒に告げる。
「美緒、いくぞ!」
「おぅなのだ!」
『フォースチップ、イグニッション!』
 その叫びと同時、ブラーの背中――車体後部のチップスロットに青色のフォースチップが飛び込み、車体後部が展開、ビームガンを装備した主翼が現れる。
『エヴォリューショナル、ブースター!』
 そして、ブラーはそのままエヴォリューショナルブースターで加速。最終コーナーも下向きにブースターを噴射することで強引にダウンフォースを起こしてクリアしていく。
 エクシリオンもニトロコンボイのスリップストリームに入ったことで加速していた。コーナーが終わるなりニトロコンボイの後ろから飛び出していく。
「確かにパワーはお前が上だ!
 けど――接戦ってヤツをしばらくしてなかったみたいだな! 駆け引きが甘いぜ!」
「そういうことだ!
 テクニックと経験の質なら、オレ達が上だ!」
 そのまま、エクシリオンとブラーはニトロコンボイを抜き、勝利する――かに見えたが、
「フォースチップ、イグニッション!」
 言うなり、真紅のフォースチップをイグニッションしたランドバレットが両肩にキャノンを装備し、
「ランドバズーカ!」
 咆哮と共に放った攻撃が、エクシリオンとブラーに迫る!
「危ない!」
「よけろ、二人とも!」
 とっさに声を上げるクロノとファストエイドだが――
「ダメだ! ここで避けたら、減速しちまう!」
 その言葉を拒絶し、エクシリオンはブラーに告げた。
「ブラー! 後は任せてお前は下がれ!」
「バカ言うな! なんでオレだけ!」
 反論するブラーだったが、エクシリオンはかまわず言い放つ。
「美緒を乗せてるだろうが!
 彼女を危険にさらすつもりか!? 何かあったら耕介さんに何て言うつもりだ!」
「く………………っ!
 わかった! 後は任せるぜ!」
 言って、ブラーが後退すると同時――ランドバレットのエネルギーミサイルがエクシリオンを襲う!
「このっ!」
 なんとか直撃だけは避けるエクシリオンだったが――最小限の回避でもこの接戦では致命的だった。直前でニトロコンボイに抜かれ、僅差でのゴールとなる。
「へっ、ざまぁみろ!」
 少なくともマスターメガトロンを勝たせることはできなかったが、エクシリオンの敗北で少しは溜飲が下がったらしい。ランドバレットが喜びの声を上げるが――
「貴様らぁっ!
 よくもオレのレースを台無しにしてくれたな!」
「よくもエクシリオンを!」
 そんな彼らに向け、ニトロコンボイとブラーが怒りの突進をしかける!
『ぅわわわわっ!』
 そんな二人から逃げようとするランドバレット達だったが、そんな彼らの前にマスターメガトロンが停車した。
「もうここには用はない。
 行くぞ」
『は、はい!』
 マスターメガトロンの言葉に、ランドバレット達はトランスフォームし、そのままマスターメガトロン達と共に去っていく。
 その道すがら、マスターメガトロンは部下達に指示を下す。
「お前達。ニトロコンボイが持っているというプラネットフォースの在り処を探り出せ」
『へいっ!』

「大丈夫? エクシリオンさん」
「あ、あぁ……」
 身を案じ、尋ねるスキッズにエクシリオンが答えると、その脇にニトロコンボイが停車した。
「いいレースだった。
 最後の妨害がなければ、勝負はわからなかった」
「ニトロコンボイ……
 頼む、オレの話を聞いてくれ!」
「オレとのレースに、勝ったらな」
 とりあえず事情の説明だけでも――口を開くエクシリオンだが、ニトロコンボイはあっさりと切り捨てる。
「調子が戻ったら、またやろう」
 そう言うと、ニトロコンボイはなおも声をかけようとするエクシリオンを振り切って走り去っていった。

「どうして、私の言うことが聞けないんだ」
 しばし誰も口を開けなかった中、口を開いたのはファストエイドだった。
「お前達も言っていただろう。
 マスターメガトロンがこのレース場でニトロコンボイに勝てないと」
「けど……マスターメガトロンが負けても、ニトロコンボイに勝てなければプラネットフォースは手に入らない……さっきアイツ自身がそう言ってただろ!」
 エクシリオンが答えるが、ファストエイドも引かない。
「ニトロコンボイだって、話せばわかってくれる!」
「その話自体無視されただろうが、今ここで!」
 ブラーの反論に、さすがのファストエイドも思わずムッとし、
「それは結果論にすぎないだろ!
 そんなにレースがしたかったのか!?」
「ち、違う!」
 思わず言い返すエクシリオンだったが、上ずった声ではファストエイドに優位な材料を与えただけだった。
「いいや、違わないね!」
 だが、そのファストエイドにしても今回ばかりはいつもと違った。先のエクシリオンの先走りに始まる一連の事態で、彼もまた命令を遵守しようとする理性と人道的な感情との対立で自分を見失っていた。つい感情的に言い放ってしまう。
 そんな両者はしばし無言で対立し――最初に動いたのはエクシリオンだった。
「オレ達はオレ達のやり方で、ニトロコンボイからプラネットフォースのことを聞き出してやるぜ!
 いくぞ、ブラー、美緒!」
「お、おい、エクシリオン!?」
「エクシリオン、ちょっと待つのだ!」
 走り去っていくエクシリオンを追おうと、ブラーと美緒も踏み出しかけ――それでもためらいを覚え、ファストエイドへと振り向く。
 そんな彼らの視線に耐え切れず、ファストエイドは思わず視線を伏せる。
 そして再び顔を上げた時、すでに二人の姿もそこにはなかった。


 

(初版:2006/02/05)