「……やれやれ……」
火口にひとり残され、ビッグコンボイはゆっくりと身を起こした。
「我ながら、ずいぶんと世話を焼いたものだな……」
あまりにもらしくない――今までの自分からは考えられないお節介に思わず苦笑する。
「だが……今のヤツらなら問題もあるまい」
言って、ビッグコンボイは立ち上がり、
「さて、もう少し、お節介の焼き足しといこうか」
苦笑まじりにつぶやくと、ビッグコンボイはビッグキャノンを担ぎ直した。
第28話
「想いを伝える拳なの」
フレイムコンボイとの決戦を前に、ギャラクシーコンボイ達は一度地球に戻り、ファストエイドや月村姉妹以下メンテナンスクルーから万全のメンテナンスを受けていた。
「OK。問題なし。
準備万端よ、ギャラクシーコンボイ」
「すまない」
忍に礼を言うと、ギャラクシーコンボイは調子を確かめるかのように自分の右手を握りしめ、開いてみる。
と、そんな彼にドレッドロックが声をかけた。
「総司令官、くれぐれも、最悪の事態は避けてください」
「わかっている」
「………………?
『最悪の事態』って?」
答えるギャラクシーコンボイにすずかが尋ねると、それにはエクシリオンが答えた。
「戦争になるかもしれないんだ。
オレ達と、アニマトロスの間で……」
「せ………………っ!?」
「けど……考えてみれば当然かもしれないよ。
何しろ、コトはアニマトロスのシンボルに関わる問題なんだ――その上その交渉手段がリーダー同士の直接対決となれば、波風が立たない可能性の方が低いよ」
思わず絶句するアリサにユーノが答えると、そんな彼らをよそにギャラクシーコンボイはニトロコンボイへと声をかけた。
「ニトロコンボイ、我々と一緒に来てくれないか?
互いの星のリーダーが共に説得にあたれば、あるいは……」
「あぁ、もちろんだ。
事態は宇宙全体の問題だ。スピーディアとて、例外ではない」
「となると、リンディ提督にも同行をお願いしてみてはどうでしょう?
時空管理局の代表として」
「そうだな……」
ニトロコンボイのとなりで告げるドレッドロックにギャラクシーコンボイが考えていると、
「あー、ギャラクシーコンボイ、ちょっといいかしら?」
そんな彼らに声をかけたのは秋葉だった。
「地球人代表も、一緒に行くべきだと思うのだけど。
戦争ということになれば、セイバートロン星のトランスフォーマーを移住させているこの地球も、無関係というワケにはいきませんからね」
「それなら、なのは達に頼めば……」
「いえ、彼女達は避けるのが懸命ね。
あの子達はすでに何度もフレイムコンボイと対峙しています――向こうの認識としてはすでに“敵”として判断されているはずですもの」
答えかけたエクシリオンに秋葉が告げると、ギャラクシーコンボイは秋葉達に向き直り、
「つまり……キミ達の中の誰かが、アニマトロスに行くというのか?」
「まったく、何を言い出すかと思えば……
相手はフレイムコンボイなんだぞ。有効な戦闘手段のないキミ達に何ができるんだ。
秋葉、キミだってジンライ元司令から受けたケガがまだ完治していないだろ。危険すぎる」
ため息まじりに秋葉の提案を却下するドレッドロックだが――それに対する異論は意外なところから放たれた。
「いや……
意外と名案かもしれないぞ」
「ニトロコンボイ!?
あなたまでそんな……」
「彼女達の力は、お前達と競ったオレが一番良く知っている。
あの力を、忘れたワケではないだろう?」
「そ、それは……」
反論を封じられ、うめくドレッドロックを尻目に、ニトロコンボイはギャラクシーコンボイへと向き直り、
「心配はいらない。
誰が行くことになっても、安全はオレと耕介が保証する」
「ふむ……」
ニトロコンボイの言葉にしばし考え――ギャラクシーコンボイは尋ねた。
「だが……誰が行くんだ?
それによっても、状況はかなり変わってくると思うが……」
その問いには久遠が答えた。
「こはくと、しのぶが、まかせろって――」
――ぴしり。
指令室の空気が音を立てて凍結した。
「……あー、くーちゃん?」
「どうしたの、なのは?」
一同を代表し、声をかけるなのはに、久遠は事態を呑み込めていないのか、首をかしげて聞き返す。
「琥珀さんと忍さんが……何かするって?」
「うん」
あっさりと答えてくれる。
そんな久遠の言葉に一同は視線を交わし――
「逃げよう」
「待ちなさいって」
迷わず口を開いたバックパックだが、背後からかけられた声に思わず硬直した。
ぎぎぎぃっ、とでも擬音が聞こえてきそうな様子でゆっくりと振り向き――そこに忍と琥珀の姿を確認したとたん、悲鳴を上げて後ずさる。
そんなバックパックの姿に、忍は思わずため息をつき、
「まったく、人を何だと思ってるんだか……」
「日ごろの行いの賜物だと思うが……」
恭也が背後でつぶやくがスッパリと無視し、忍は一同を見回して告げた。
「私だってそうそういつもトンデモ発明してるワケじゃないんだから」
「確かにいつもではないけど……」
「確率はすさまじく高いよな……」
「何か言った?」
『イエ何モ』
忍ににらまれ、余計なことを口走ったロディマスブラーとエクシリオンは声をそろえてそう答える。
ともかく、このままでは話があさっての方向に脱線しかねないと判断した志貴は、忍に続きをうながすことにした。
「忍さん、それで、琥珀さんと何を準備してたんですか?」
「フフン、コレよ!」
「とくとご覧下さい!」
言って、忍と琥珀は背後の物体にかけてあったシーツをはがし――
「……ルーレット……?」
「これなら公平でしょ?」
姿を見せた、スロット式のルーレットマシンを前につぶやくロングラックに、忍は胸を張って答えるが、
「……このためだけに、わざわざ作ったのか?」
「ムダに余分な演出を……」
「……どうも、サイバトロンには命知らずさんが多いみたいね……」
真顔で告げるニトロコンボイとドレッドロックに、忍はスパナを片手に思わずうめく。
「ま、まぁ、せっかく作ってくれたんだし、これで決めようか」
そんな不穏極まりない空気を察したのか志貴がそう提案。彼の意図を察した一同の同意もあって、忍はルーレットをスタートさせる。
「地球の命運を左右する代表を選ぶのに運任せ、か……」
高速で回転するルーレットを前に、思わずつぶやくガードシェルだが――
「あら、運じゃないですよ」
そんな彼に、琥珀はあっさりと答えた。
「あのルーレットには、みなさんのパーソナルデータから技量から性格から、持ってるデータを全部詰め込んであるんですよ。
そのデータを元に、一番適任と思われる人を選出するんです」
「どうしてそんなデータを持ってるのか、とかツッコみたい部分は山ほどあるけど……」
「姉さん、それだとルーレットの意味がないんじゃないの?」
「演出♪」
ハイブロウと翡翠の言葉に琥珀が満面の笑みで答える間に、ルーレットはゆっくりと速度を落としていく。
もはや誰の名前が出ているか視認できるほどに速度は落ちている。
陣内美緒――通過。
クロノ・ハラオウン――通過。
遠野秋葉――通過。
リスティ・槙原――通過。
そして――止まった。
そこに挙がった名前は――
「………………ボク?」
一同の注目を受け、舞は自分を指さしながら聞き返した。
「………………何?」
話を聞き、シグナムは眉をひそめた。
「ギャラクシーコンボイとフレイムコンボイが、決闘だと……?」
「あぁ。
スカージの縄張りで部下を締め上げて得た情報だ」
聞き返すシグナムに、スターセイバーはそううなずいてみせる。
「あのスカージはともかく、部下の連中にウソをつくほどの知恵があるとも思えん。
事実と思っていいだろう」
「あぁ……」
本人達にかなり失礼なことを言っているスターセイバーに同意しながら、シグナムはしばし考え込む。
「どーすんだ?」
「決闘への割り込みは、我らの主義に反するが」
尋ねるヴィータとザフィーラに、シグナムは答えた。
「とにかく、フレイムコンボイの神殿に向かうぞ。
どう動くにせよ、現場に向かわなくては始まらない。
それに……」
つぶやくように付け加えた。
「デストロンが、黙って見ているとも思えないし、な……」
ゲートをくぐるとそこは大自然――アニマトロスに到着し、なのは達やアニマトロスメンバーは一路フレイムコンボイの神殿へと向かっていた。
結局同行者は舞に決定。ニトロコンボイに乗せてもらい、時空管理局代表として同行することになったリンディはクロノを護衛としてベクタープライムに乗り込んでいる。
さらに、今回はそれらのメンバーに加えロディマスブラーや美緒、エクシリオンとすずかも同行している。
「ぅわぁ……国守山に負けず劣らずの大自然だね……」
「あぁ……
宇宙にはこんな星もあったんだな」
ニトロコンボイのライドスペース――増設された後部座席でつぶやく舞の言葉に、ニトロコンボイは感嘆と共にそう答える。
「けど……アリサちゃんには悪いことしちゃったね」
「まぁ、バックパックには基地での仕事もあるし、仕方ないよ」
ルーレットの結果が出た瞬間のアリサの落胆振りを思い出し、耕介が舞に答えると、
「――――――っ!」
突然ニトロコンボイがスピードを落とし――目の前にビームが着弾、爆発を巻き起こす!
「何だ!?」
驚き、ライガージャックが足を止めると、
「オラよっと!」
彼やファングウルフ、スカイリンクス達に向け、パズソーが上空から網を放り投げる!
「ライガージャック!」
「先輩!」
あわててギャラクシーコンボイやロングラックが彼らを救いに向かうが――
「そうはさせん!」
その目の前に、ロボットモードへとトランスフォームしたスタースクリームが立ちふさがる。
そして、パズソーも彼の傍らに降り立ち、さらにサンダークラッカー、ラナバウト、そしてランドバレット達やインチアップまでもが姿を見せた。
「トランスフォーム!」
掛け声と共にトランスフォームし、上空から偵察していたテラシェーバーはフレイムコンボイの前に降り立った。
「フレイムコンボイ様、ギャラクシーコンボイ達の姿は見えません」
「むぅ……」
約束の時間まで、もうあまり時は残されていない――テラシェーバーの言葉に、フレイムコンボイは思わずうめいた。
「ギャラクシーコンボイめ……どこまで人を、コケにするつもりだ……!」
フレイムコンボイがつぶやくと、
「珍しいな。
あのカタブツが遅刻しそうだってのか……?」
その声に振り向くと、そこにはすでに合体を終えたゴッドジンライがスターセイバー達と共に立っていた。
「……貴様ら……!」
現れたヴォルケンリッターを前に警戒を強めるマスターメガトロンだが――
「お前達は……」
フレイムコンボイは、逆にスターセイバー達を見て眉をひそめていた。
一同を順に見回し――尋ねる。
「お前達……確かギャラクシーコンボイ達とは敵対していたな?」
「ライガージャックさん達を放して!」
「あいにくと、そういうワケにもいかんのでな」
告げるなのはの言葉にも、スタースクリームは淡々と答えるのみ――ライガージャック達を捕獲され、なのは達は完全に足を止められていた。
「スタースクリーム、どういうつもりだ!?」
「言わなくても、わかるだろう?」
ギャラクシーコンボイに答え、スタースクリームは笑みを浮かべてバーテックスブレードをかまえる。
それに呼応するかのようにパズソーもかまえるが――そんなデストロン組の中でただひとり、気乗りできないでいる人物がいた。
(こーゆーの、晶だったら怒るだろーなぁ……)
とはいえ命令である以上やらなければならない――サンダークラッカーは思わず心の中でため息をついていた。
一方で、ニトロコンボイとベクタープライムはランドバレット達に包囲されている――そのライドスペースで、舞は時計に目を落とした。
「このままじゃ、決闘の時間に間に合わないよ……!」
「それが狙いなんだ」
「ギャラクシーコンボイとフレイムコンボイを、決裂させるつもりね……」
つぶやく舞にクロノとリンディが答え――突然、ニトロコンボイが舞に尋ねた。
「ところで舞。車は好きかい?
たとえばレーシングカーとか」
「え………………?」
思わず聞き返す舞だが――耕介は彼の意図に気づいた。舞にニトロコンボイの言葉を補足する。
「少し、“揺れるかもしれない”からね」
「………………あぁ、なるほど。
いいよ。思いっきりやっちゃって!」
言って、舞はいつでも衝撃に耐えられるようセーフティバーを握る手に力を込め――ニトロコンボイはランドバレット達に声をかけた。
「おい、お前達!」
「ん? 何だ?」
「命乞いなら、聞いてやってもいいぜ」
「いやいや、そうじゃなくてな」
ロボットモードにトランスフォームし、聞き返すランドバレットとガスケットに答え、ニトロコンボイは告げた。
「マスターメガトロンの下で、ずいぶんな出世じゃないか。
見直したぞ」
「そ、そうか?」
「こっちの方が性に合ってた、ってことだな♪」
ニトロコンボイの言葉にインチアップとガスケットが照れ――ニトロコンボイは続けた。
「よかったじゃないか。
お前達は、スピードには格別難があったからな」
「何だと!?」
「所詮お前達では、スピーディアでは通用しなかった――まさに適材適所というヤツだ」
ムキになるランドバレットに、ニトロコンボイはさらに告げる――明らかにそうとわかる挑発だが、レーサーとしてのプライドにケチをつけられたランドバレット達は完全に我を忘れていた。
「勝負しろ、ニトロコンボイ!」
「オレ達が遅いかどうか、確かめてみろ!」
「ギャフンと言わせてやるから、覚悟しろ!」
「いいだろう――来い!」
簡単に挑発に乗ってくれた――してやったりと声を弾ませるニトロコンボイだが、ランドバレット達は気づかずにビークルモードへとトランスフォーム。ニトロコンボイの左右に並ぶ。
「いくぞ――3!」
ニトロコンボイの言葉に、その場の全員がアクセルを吹かす。
「2!」
「ん………………?
おい、何やってるんだ!?」
彼らの様子に気づき、パズソーが声を上げる。
「1!」
「アイツら、仕事を忘れやがって……!」
思わずうめいて――サンダークラッカーの脳裏をある可能性がよぎった。
(もしかして……)
「GO!」
その瞬間、彼らは一斉にスタートした。
“ランドバレット達だけが”。
スタートの合図と同時、ニトロコンボイは勢いよく後退。そのままジャングルの中に消えていくランドバレット達を完全に無視、進路を変えてスタースクリーム達の方へと――正確にはその後ろで囚われているライガージャック達の方へと――突進する!
「でぇっ!?」
まずラナバウトをはね飛ばし、ニトロコンボイはさらに加速するが、
「やっぱりかよ!」
その前にはサンダークラッカーが立ちふさがり――
「気づいてた!?」
「サンダークラッカーのクセに!?」
「やかましい!」
本気で驚愕するニトロコンボイと舞の言葉に、サンダークラッカーは力いっぱい言い返す。
「気は進まないけど、これもお仕事でね!」
言って、左手のビームを放つサンダークラッカーだが――ニトロコンボイは耕介と共に咆哮する。
『フォースチップ、イグニッション!』
真紅の色合いに金色の縁取り、そしてスピーディアの紋章――リーダーにのみ使うことを許されたスピーディアのプラネットフォースと同じ意匠のフォースチップがニトロコンボイのチップスロットに飛び込み、
『マッハショット!』
「どわぁっ!」
車体上部に展開されたマッハショットから放たれたビームがサンダークラッカーを吹っ飛ばす!
しかも、それは思いもよらない二次効果を生んだ。吹っ飛ばされ、宙を舞うサンダークラッカーの放ったビームが、ライガージャック達を閉じ込めていた網の一角を薙ぎ払い、彼らを解放する!
「なはは……結果オーライ――ぶぎゃっ!?」
大地に頭から突っ込み、目を回しながらつぶやくサンダークラッカーを踏みつけ、ライガージャック達はギャラクシーコンボイと合流を果たす。
「このぉっ! やってくれたな!」
一方、最初にニトロコンボイにブッ飛ばされたラナバウトが復活した。ぶつけた頭をさすりながら立ち上がるが、
「それはこっちのセリフです!」
那美が告げ、ロングラックと共にその前に立ちはだかり、
『フォースチップ、イグニッション!』
その言葉と同時、飛来した青色のフォースチップがロングラックの右腕のチップスロットに飛び込み、彼の右腕のショベルが大きく展開される。
「ロング、パワーアーム!」
咆哮し、ロングラックはそのショベルアームでラナバウトを捕まえ、
「空の彼方に――」
「とんじゃえぇっ!」
那美と久遠の号令で、ラナバウトを思い切り投げ飛ばす!
「ど、どうするんスか、スタースクリーム!?」
「チッ……」
こちらも合流し、うめくパズソーの言葉に、スタースクリームは舌打ちしながら頭上を見上げた。
太陽はもうかなり昇っている――決闘の時間は『太陽が南中した時』という話だったから、十分に時間は稼げたはずだ。
ならば、もうここには用はない。
「……まぁ、このくらいでいいだろう。
撤退するぞ!」
「あ、ちょっ、待ってくださいよぉっ!」
言うなり、スタースクリームはビークルモードへとトランスフォームして離脱。ラナバウト達もあわててその後に続いて撤退していった。
その様子を、ノイズメイズは茂みの中に紛れてうかがっていた。
「……まったく、使えないな……
こうなったら、フレイムコンボイに期待するしかないか……」
つぶやき、ノイズメイズはビークルモードにトランスフォームするといずこかへと飛び去っていった。
一方、ジャングルの別の一角では――
「急げよ、野郎ども!」
部下達に檄を飛ばし、スカージはフレイムコンボイの神殿への道を駆けていた。
リーダー同士の決闘ともなれば、全員の注意がそっちに向く――そのスキにプラネットフォースを掠め取ってやろうというのだ。
だが――
「………………む?」
前方に誰かいるのに気づき、スカージは眉をひそめた。
その人物はスカージ達に向き直るとロボットモードにトランスフォーム。両手に獲物をかまえる。
そして、
「悪いが、せっかくの大一番に水を差すのもつまらないんでな……
貴様らは、ここで立ち往生してもらうぞ」
告げると同時――ビッグコンボイは地を蹴った。
「太陽が真上に来ました。
決闘の時間です」
テラシェーバーの言葉に、フレイムコンボイは苛立ちもあらわに顔をしかめた。
「ギャラクシーコンボイめ……許さん!」
フレイムコンボイがうめいた、その時――
「フレイムコンボイ!」
その名を呼びながら、ようやくギャラクシーコンボイ達が姿を見せた。
だが――
「何でいるの?」
「うるせぇ。あたしらだってワケわかんねぇんだ」
なぜか戦うでもなくその場に平然と居合わせているヴォルケンリッターを見て、尋ねるなのはにヴィータが答える。
と、同様に困惑しているのか、ジンライが代表してギャラクシーコンボイに答える。
「お前らが決闘するって聞いて、とりあえずこっちに来てみたんだが……なぜかフレイムコンボイに歓迎されてな」
「フレイムコンボイに……?」
ジンライの言葉にギャラクシーコンボイが眉をひそめると、
「遅いぞ、ギャラクシーコンボイ!」
そんなギャラクシーコンボイに向けて一歩を踏み出し、フレイムコンボイが告げる。
ギリギリまで焦らされ、そうとう気が立っているようだが――
「遅れてきたことは謝ろう。
だが――」
「どうして遅れたかは、後ろのヤツに聞け!」
ギャラクシーコンボイとライガージャックの言葉に――全員の視線がマスターメガトロンに集まった。
「どういうことだ? マスターメガトロン」
「むぅ……?」
尋ねるフレイムコンボイの言葉に、マスターメガトロンは眉をひそめ――ふと気づいた。
そういえば先ほどからスタースクリームの姿が見えない。まさか――
「アイツら……!」
思わずうめくが、それで彼らのしでかしたことがチャラになるワケではない。このままここにいて糾弾を受ければ、フレイムコンボイの印象を害しかねない。
「……フンッ、つまらん」
ここは退散した方がよさそうだ――マスターメガトロンは舌打ちしながらその場を後にし、フレイムコンボイは改めてギャラクシーコンボイへと向き直った。
「フンッ、つまらん横槍が入ったようだが……始めようか」
「それはいいが……」
フレイムコンボイの言葉に、ギャラクシーコンボイはシグナム以下ヴォルケンリッターの面々へと視線を向けた。
なぜフレイムコンボイが彼らを歓迎したのか、その真意がわからない。もし彼らと協力してこちらと相対するつもりなら――
だが、そんなギャラクシーコンボイの意図を察したのか、フレイムコンボイは豪快に笑い声を上げ、答えた。
「心配するな。
そいつらはただの立会いだ――こちら側でも貴様ら側でもないんだ。適任だろう?」
「なるほど、そういうことか……」
ようやく合点がいった。つぶやき、シグナムと視線を交わしたスターセイバーはフレイムコンボイとギャラクシーコンボイの間へと進み出た。
「そういうことならば、第3者であるこの私がこの決闘の立会いを務めよう」
「いいのか?」
「勝った方に改めて勝負を挑み、プラネットフォースを奪わせてもらうまで。
戦いが終わればまた敵同士。余計な気遣いは無用だ」
尋ねるギャラクシーコンボイに答え、スターセイバーは改めて宣言した。
「ヴォルケンリッター“雷光の将”スターセイバーの名にかけて誓おう――この勝負、誰にもジャマはさせん。心置きなく闘うがいい」
「いよいよね……」
ついに対峙する二人のコンボイ――彼らを前にして、さすがのリンディも緊張を隠し切れずにつぶやく。
「何か言うなら、今のうちだぞ」
「う、うん……」
一方、緊張しているのはこちらも同じだった。告げるニトロコンボイの言葉に、彼のライドスペースの中で舞がうなずく。
確かに、今がフレイムコンボイを説得できる最後のチャンスだろう。闘いが始まれば、それこそ外からの声など届くまい。
だが――
(……怖い……!
さすが、アニマトロスのリーダーだよ……)
実際に相対したフレイムコンボイの迫力は桁違いだった。忍達のルーレットのおかげで半ば巻き込まれ的に代表に抜擢されてしまった舞には、少々荷が重い相手かもしれない。
ライドスペースから降りるのも忘れ、震える舞だったが――
「大丈夫」
そんな舞に告げたのは耕介だった。
「舞ちゃんには指1本触れさせないよ。
さざなみ寮の管理人として、寮生はちゃんと守ってあげなくちゃならないからね」
「耕介さん……」
耕介の言葉に、舞は改めてフレイムコンボイへと視線を戻した。
正直に言えばまだ怖い。だが――
(耕介さんが……いてくれる……)
それだけで、なぜか安心できた。
気がつくと――すでに舞はニトロコンボイから降りていた。
「いくぞ、ギャラクシーコンボイ!」
もはや空気は時間一杯、待ったなし――フレイムアックスをかまえ、フレイムコンボイがギャラクシーコンボイに告げ――
「ま、待って!」
いざリンクアップしようとしたギャラクシーコンボイの背後から声が上がった。
舞である。
「何だ? 貴様……」
「ぜんぜん強そうに見えねぇな」
「何の用だ? てめぇ」
その姿を見とめ、フレイムコンボイやダイノシャウト、テラシェーバーが眉をひそめるが、そんな彼らの前に耕介が、そしてロボットモードにトランスフォームしたニトロコンボイが立ちふさがる。
「そこまでだ、お前ら!」
「彼女への手出しは、オレ達が許さん!」
「なんだと、てめぇ!」
二人の言葉にダイノシャウトがムキになり――
「待て!」
そんな彼らを止めたのはフレイムコンボイだった。
舞をじっくりと観察し――次いでギャラクシーコンボイの傍らにたたずむなのはやフェイト、アルクェイド、恭也、そしてハラオウン親子や那美、久遠へと順に見渡していく。
「……人間か……
以前から気になっていたが……お前ら、ギャラクシーコンボイ達と同郷ではあるまい。どこの星のモンだ?」
その言葉に、一同は顔を見合わせ――その視線が舞に集まる。
地球人代表として答えろ、とでも言うのだろう――意を決し、舞はフレイムコンボイに答えた。
「私は……我那覇舞といいます。
地球という星から来ました」
「地球、だと……?」
「そうだ」
フレイムコンボイにうなずき、ギャラクシーコンボイはニトロコンボイへと向き直り、
「そして彼はニトロコンボイ。惑星スピーディアのリーダーだ」
「一度会いたいと思っていたぜ、フレイムコンボイ」
軽く手を挙げ、告げるニトロコンボイのとなりで、リンディもまた前に出て名乗る。
「多次元世界の交流を監督する、時空管理局を代表してきました、リンディ・ハラオウン。ミッドチルダの出身です。
初めまして、フレイムコンボイさん」
だが――その言葉にフレイムコンボイの後ろでダイノシャウトやテラシェーバーは顔を見合わせた。
「スピーディアに、ミッドチルダ……?
違う星の種族ではないか」
「仲間になどなれるものか!」
「どうして……?」
だが、その言葉に舞は思わず疑問の声を上げていた。
「どうして仲間になれない、なんて思うの?
みんな、同じ人間じゃない」
「オレ達が、人間と同じ、だと……?」
フレイムコンボイは舞のその言葉に眉をひそめた。
「なかなかおもしろい事を言う」
言って、踏み出すフレイムコンボイだが、その前にはニトロコンボイと耕介が立ちふさがる。
「やめろ! 彼女は闘いに来たのではない!」
「フンッ、ギャラクシーコンボイの、死に様でも見に来たか?」
耕介の言葉に、フレイムコンボイは余裕の笑みと共に聞き返すが、そんな彼に舞は怯えながらも告げた。
「う、宇宙には、戦いを望んでいない種族だっているんです!」
「ほぉ……
地球人は戦わない、というのだな?」
「そういうワケじゃないけど……
ケンカが強いだけじゃ――ガキ大将と一緒だよ!」
「な………………っ!?」
よりにもよって『ガキ大将』――舞の放った痛烈な一言に、フレイムコンボイは思わず言葉を失った。
「きっ、貴様!
今何て言った!」
「無礼な!」
「やめろ!
舞さんに手を出すな!」
当然、ダイノシャウトやテラシェーバーも怒りの声を上げ、そんな彼らの前にクロノが立ちふさがるが――
「黙れ!」
一触即発の一同を止めたのはフレイムコンボイだった。改めて舞に向き直り、告げる。
「強い者が勝ち、弱い者が従う――それが、この星の掟だ。秩序なのだ。
いたずらに殺し合うワケではない」
「でも……ケンカが弱くてもメカに強い人だっているし、誰かのためにがんばってあげられる人だっている!
地球人は弱くて小さいけど……力を合わせて文明を築いてきたの!」
その言葉を、フレイムコンボイはただ黙って聞いている。
この星の掟に則すなら、弱く、発言権などないに等しい彼女――だが、そんな彼女が自分に意見を述べている。その姿に、フレイムコンボイはある種の興味を抱いていた。
「大事なのは誰かのためにがんばること、そのために力を合わせることで、勝ち負けなんかじゃない――
だから、決闘なんかで簡単に答えを出したりしないで!」
「なるほど……」
舞のその訴えに、フレイムコンボイは息をつき、
「ではお前は、このオレが間違っている、というのだな?」
「え……?」
その言葉に思わず声を上げる舞に対し、フレイムコンボイはビーストモードへとトランスフォームし、
「ブルァァァァァッ!」
「ひゃあっ!?」
舞に向けて吠えかかり、舞はあわてて耕介の背後に隠れる。
「このオレがその気になれば、貴様の命など奪うことはたやすい。
それでもまだ、そんな口が叩けるか!」
告げて、再び吠えるフレイムコンボイだが――
「叩くさ。何度でも」
そう答えたのは耕介だった。
「確かにオレ達の力はちっぽけなものさ。
だけど……舞ちゃんが言ったように、力を合わせて大きなことを成し遂げてきたんだ!」
「仲間を信じる力……それが我々の力なのだ!」
耕介に同意するギャラクシーコンボイだが、フレイムコンボイはそんな彼らの言葉をあざ笑い、
「仲間を信じる力だと……笑わせるな!
それがお前達の力なら――それこそが正しいと信じるなら、その力でオレを倒してみろ!」
「いいだろう!
では、今ここで決着をつけよう!」
ロボットモードになって告げるフレイムコンボイの言葉に同意し、ギャラクシーコンボイはなのは達と共に叫んだ。
『リンク、アップ!』
「始まったようだな……」
フレイムコンボイの神殿から放たれるリンクアップの光――その気配に気づき、ビッグコンボイはつぶやき、
「ぬぉおりゃあっ!」
飛び込んできたバッタ型トランスフォーマー、キックバックの蹴りをマンモストンファーで真っ向から打ち返す。
「ちぃっ! ジャマをするな!」
うめいて、スカージが右腕のT-REXの頭部からビームを放つが、ビッグコンボイはそれをかわし、
「悪いが、オレの弟子の晴れ舞台なんでな――遠慮なくジャマさせてもらう!
フォースチップ、イグニッション!」
着地と同時にアニマトロスのフォースチップをイグニッション、ビッグキャノンをかまえ、
「ビッグキャノン――GO!」
放たれたビームが、スカージの足元を爆砕する!
「いくぞ! ライガーコンボイ!
フォースチップ、イグニッション!」
先手を打ったのはフレイムコンボイ――フォースチップをイグニッションし、両肩に出現した竜の首からデスフレイムを放つ。
だが、ライガーコンボイもその炎を吹き飛ばしてフレイムコンボイに肉迫、フレイムアックスとライガーコンボイの拳が激突する!
「ライガーコンボイさん、フルパワー!」
「そのまま押し切って!」
「あぁ!」
なのはとフェイトに答え、ライガーコンボイは右腕に力を込め――フレイムコンボイを押し返す!
「よぅし! 一気に決めるわよ!」
「おぅっ!」
アルクェイドの言葉にライガージャックが答え、
『フォース――』
『――チップ!』
「イグニッション!」
ライガーコンボイとなのは、ライガージャックとアルクェイド、そしてフェイト――3組の声が響き、飛来したアニマトロスのフォースチップがライガーコンボイの右腕のチップスロットに飛び込む。
そして、右腕のプラティナムクローを展開したライガーコンボイはそれを天高く掲げ――その全身がフォースチップの“力”の輝きに包まれる!
渦巻くエネルギーに導かれ、浮き上がったライガーコンボイは一気にフレイムコンボイへと突っ込み、
『ライガー、グランド、ブレェイク!』
渾身の力で振るった一撃がフレイムコンボイへと迫り――
「甘いわぁっ!」
フレイムコンボイは顔面を狙ったその一撃の軌道にフレイムアックスを沿わせ、受け流す!
そして――素早く刃を返し、
「フレイム、ストライク!」
渾身の力で放ったフレイムアックスの一撃で、ライガーコンボイを吹き飛ばす!
「ぐわぁっ!」
大地に叩きつけられ、ライガーコンボイがうめき――
「まだまだぁっ!」
そんなライガーコンボイの“右肩”に、フレイムコンボイがフレイムアックスを叩きつける!
「マズい……合体のジョイントを狙われた!」
「リンクアップが!」
その光景にクロノと舞が声を上げ――彼らの言葉の通り、ライガーコンボイのリンクアップが解けてしまう!
「……これで決着はついたな」
「あぁ……
スーパーモードのギャラクシーコンボイは、火力に特化していて接近戦には向いていない――近距離を得意とするフレイムコンボイを相手にしては、勝ち目はあるまい」
見届け人として戦いを見守り、つぶやくザフィーラの言葉にシグナムがつぶやくが――
「…………まだだ」
そんな彼女達の言葉を、ヴィータは否定した。
自分でもよくわからない確信に導かれ、告げる。
「アイツら……たぶん、あの程度じゃ終わらない」
「勝負あったな、ギャラクシーコンボイ――その右腕では、もはや合体もできまい!
とどめだぁっ!」
これで決まりだ――再びフレイムストライクを叩き込むべく突撃するフレイムコンボイだが、ギャラクシーコンボイとライガージャックは左右に跳んでそれをかわし――
「ギャラクシーコンボイ! ライガージャック!」
そんな彼らに、フェイトが声をかけた。
「もう一度――“左腕に”!」
「いくよ――みんな!」
言って、フェイトがストレージデバイスをかざし――その中枢部から光が放たれる。
その中で、ギャラクシーコンボイとライガージャック、二人のスパークがさらなる輝きを放つ。
『ギャラクシー、コンボイ!』
なのはとギャラクシーコンボイが叫び、ギャラクシーキャノンを分離させたギャラクシーコンボイが左腕を後方にたたむ。
『ライガー、ジャック!』
次いでアルクェイドとライガージャックの叫びが響き、ライガージャックは両腕を分離、両足を折りたたむとそこに分離していた両腕が合体し、巨大な左腕に変形する。
そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
フェイトを加えた5人の叫びと共に、左腕となったライガージャックがギャラクシーコンボイに合体する!
背中に分離していたギャラクシーキャノンが合体。最後にライガージャックの変形した左腕に拳が作り出され、5人が高らかに名乗りを上げる。
『ライガァァァァァ、コンボイ!』
「バカな!?
左腕だとぉ!?」
まさか両腕にリンクアップできるとは思っていなかった。再びのリンクアップを遂げたライガーコンボイを前に、フレイムコンボイは思わず声を上げる。
だが――それでも状況が変わったワケではない。フレイムコンボイはすぐに気持ちを切り替え、
「デス、フレイム!」
咆哮し、フレイムコンボイの放った火炎がライガーコンボイをとらえ――大爆発を巻き起こす!
「なのは、フェイト!」
「アルクェイド!」
「ライガーコンボイさん!」
それを見て、恭也、クロノ、那美が声を上げるが――
『フォースチップ、イグニッション!』
爆煙の中から声が響き――ライガーコンボイの周囲に巻き起こったエネルギーが煙を吹き飛ばす!
「またその技か!」
プラティナムクローが展開されている。来るのはおそらくライガーグランドブレイク――咆哮し、フレイムコンボイはフレイムアックスをかまえる。
そして、ライガーコンボイは地を蹴り、フレイムコンボイへと間合いを詰め、左腕を振りかぶる!
「甘いわ!」
対して、フレイムコンボイはそれを再びさばくべくフレイムアックスをその軌道に沿わせ――
止まった。
こちらに向けて繰り出されようとしていたライガーコンボイの左腕が停止したのだ。
(フェ)
狙いに気づき、フレイムコンボイは視線を動かし、
(イ)
こちらに向けて放たれたライガーコンボイの“右拳”に気づく。
(ン)
とっさに反応しようとするが、かまえたフレイムアックスを戻すには時間が足らず、
(ト)
ライガーコンボイの拳が、フレイムコンボイの顔面を打ち抜く!
(だと――!?)
ようやく思考が追いつき、フレイムコンボイはたたらを踏むが――すぐに気づいた。
こんな一撃が決定打になるとは、おそらく向こうも思ってはいまい。すぐに本命が――今度こそグランドブレイクが来る。
そして、その読みは正しかった。フレイムコンボイに向け、今度こそライガーコンボイが左手のプラティナムクローを振るう。
だが、この一撃さえくらわなければ勝機はある。フレイムコンボイはなんとかフレイムアックスをプラティナムクローの軌道に合わせ――その一撃を受け流す!
「もらったぁっ!」
今度こそ決着をつけるべく、フレイムコンボイはガラ空きのライガーコンボイの腹に向けてフレイムアックスを振るい――
「何――――――っ!?」
金属同士がぶつかり合う鈍い音と共に、その一撃が止められた。
発射形態に展開された、“ギャラクシーキャノンによって”。
おそらく、先のデスフレイムの爆発――その際にイグニッションした時、プラティナムクローと同時にギャラクシーキャノンのイグニッションも同時に行っていたのだろう。
その銃口の向く先は――
(本命は――こいつか!)
しかし、気づいた時には遅かった。零距離から放たれたギャラクシーキャノン・フルバーストがフレイムコンボイを直撃。巻き起こった爆発がフレイムコンボイを吹き飛ばす!
「お、おのれぇっ!」
衝撃でフレイムアックスは手放してしまったが、それでもなんとか意識を持っていかれることは避けられた。フレイムコンボイは着地すべくバランスをとり――
「そう――お前は飛べない」
「――――――っ!」
告げたライガーコンボイの言葉に、フレイムコンボイは戦慄した。
見ると、眼下の地上でライガーコンボイが今にも飛び立とうとバーニアの推力を上げている。
その左手には未だ力を失っていないプラティナムクロー。
そこに至って、フレイムコンボイは気づいた。
ただ受け流しただけなのだから、プラティナムクローに宿ったフォースチップの力は失われてはいない――先のギャラクシーキャノンに耐えても、次の一撃が待っていたのだ。
「飛べないフレイムコンボイ――」
ライガージャックが告げ、ライガーコンボイは力強く拳を握り締め、
「フレイムアックスももうない!」
アルクェイドの精神力が、プラティナムクローに宿したフォースチップの力を高めていく。
「もう、次の一撃は防げない!」
フェイトの言葉と同時、ライガーコンボイはフレイムコンボイへと跳ぶ。
ギャラクシーキャノン・フルバーストとライガーグランドブレイク、どちらでも決定打を狙える、必殺技による連携攻撃――これがなのは達が考え出した、対フレイムコンボイ用の新必殺コンビネーション。
その名も――
『ライガー、バーストブレイク!』
なのはとライガーコンボイの咆哮が交錯し――繰り出された一撃は、フレイムコンボイをまともにとらえていた。
轟音と共にフレイムコンボイの巨体が大地に叩きつけられ――数秒の後、スターセイバーはうなずき、告げた。
「――それまで!
この勝負――サイバトロン組の勝利と認める!」
「とどめを刺せ……」
意識を取り戻し、ギャラクシーコンボイとライガージャックを前にしたフレイムコンボイの第一声がそれだった。
「とどめを刺せ。情けなどいらん!」
その言葉に、ライガージャックはあっさりと答えた。
「イヤだね」
「何………………?」
「この星の掟に従っただけですよ」
うめくフレイムコンボイに、リンディは笑って答えた。
「戦いで決着はつけるけど、むやみに命を奪ったりは、しないんですよね?」
「む………………」
その言葉に、フレイムコンボイは思わずうめいた。
向こうはこちらの掟に従った。ならば――自分が従わないワケにはいかない。
大きく息をつき――告げた。
「……勝者に従う。それがこの星の、掟だ」
「アニマトロスのリーダーの証――この星のプラネットフォースだ。
受け取るがいい」
神殿の中心部、玉座の間――
神獣像から姿を変えた、金色の縁取りを持つアニマトロスのフォースチップ――“生育”のプラネットフォースを、フレイムコンボイはギャラクシーコンボイへと差し出した。
と――
「ねぇねぇ、ギャラクシーコンボイ」
「ん………………?」
小声で手招きしている舞に、ギャラクシーコンボイはかがみ込むと彼女から何やら耳打ちされる。
「……なるほど……」
そして、納得すると立ち上がり、フレイムコンボイに告げた。
「では、アニマトロスの新リーダーとしての命令を伝えよう。
私はこの星のリーダーとしての全権を前リーダー、フレイムコンボイに委任し、グランドブラックホール消滅の際にはプラネットフォースと共にリーダーの座も返還することを誓約する」
「何………………?」
「私がリーダーを務めずとも、すでにこの星には立派にリーダーがいる、ということだ」
ギャラクシーコンボイのその答えに、フレイムコンボイは舞へと視線を向けた。
「……貴様の入れ知恵か?」
「あなた自身がどう思ってるかはわからないけど、立派にリーダーをやっていけると思うよ、フレイムコンボイなら♪」
尋ねるフレイムコンボイに答えるその態度に、すでに先ほどの怯えは見られなかった。
「だって、力を合わせる、って部分はともかく、誰かのために、って想いは……もう持ってるじゃない。
だから『民のために』ってアニマトロスのリーダーになったんでしょう?」
「む………………」
思わず反論に詰まるフレイムコンボイへと、ギャラクシーコンボイは右手を差し出した。
その手とギャラクシーコンボイの顔を、フレイムコンボイはしばし交互に見て――
「――フンッ、馴れ合いはせん」
プイとそっぽを向くと、ダイノシャウト達と共に玉座の間を後にしようときびすを返す。
「どこ行くの? フレイムコンボイさん」
「そうだよ。
もう決着はついたんだし、意地張ることもないんだよ」
なのはと共に尋ねる舞の言葉に、フレイムコンボイはチラリと彼女の方へと振り向き、告げた。
「今日はいい勉強をさせてもらった。
礼を言うぞ。地球人の、お嬢さん方」
「お、お嬢さん!?」
思わず声を上げる舞だが、フレイムコンボイはかまわず玉座の間を後にしていった。
「……お嬢さん、だって……」
「フレイムコンボイなりに、敬意を表したんだろうな」
自分を指さし、つぶやく舞に、ニトロコンボイは肩をすくめてそう答えた。
「……で、どーすんだ? シグナム」
「結局、プラネットフォースはまたサイバトロンの手に渡っちまったぜ」
「わかっている」
マキシマスへと戻り、尋ねるヴィータとジンライに、シグナムはそう答えた。
「だが、彼らはまだアニマトロスに留まっている――
基地に戻られる前なら、まだ奪うチャンスはあるだろう」
「じゃあ……」
「あぁ」
シャマルに答え、シグナムは宣言した。
「ヤツらがアニマトロスにいる内に攻撃をしかけ――プラネットフォースを手に入れる」
一方、ジャングルの一角、とある火山の火口の中――
「あー、えっと……
マスターメガトロン様……?」
神殿から戻ってきてからずっと機嫌が悪い――恐る恐る声をかけるサンダークラッカーだが、
「ちぃっ!」
マスターメガトロンはかまいはしない。八つ当たりとばかりに溶岩の海に雷撃を叩きつける。
そして――告げた。
「もう、ガマンできん……!
総攻撃だ!」
「……やれやれ、ご立腹みたいだね」
火口の外でマスターメガトロン達の様子をうかがい、ノイズメイズはため息まじりにつぶやいた。
そして、通信回線を開き、呼びかける。
「ランページ、聞こえるか?」
〈おぅ、バッチリじゃ〉
「“ブツ”の在り処は……本当に“あそこ”なんだな?」
〈その辺りは問題なしじゃ。
さっきヤツらがプラネットフォースを手に入れた時、わずかじゃが共鳴しとった〉
「そうか……」
ランページの答えに、ノイズメイズは改めて告げた。
「なら、マスターメガトロン達が明日にでも総攻撃をかける。
当然、サイバトロン達も迎撃に出るだろう――お前はそのスキにでも」
〈了解じゃい〉
そして、ノイズメイズは通信を切るとひとりつぶやいた。
「さて……マスターメガトロン達には、もう少しがんばってもらうとしようかね……」
(初版:2006/07/09)