「どこで油を売っていた?」
「いや……なんか強いヤツが出てきましてね……」
「返り討ちにあっちまいました」
 ようやく戻ってきたパズソーとノイズメイズ――尋ねるスタースクリームに、二人は真っ黒に煤けたそのままの状態でそう答える。
(アイツのことか……)
 先の戦いで対峙したライブコンボイのことを思い出し、スタースクリームが胸中でつぶやくと、
「スタースクリーム!」
 そんなスタースクリームに対し、声を張り上げた者がいた。
 スタースクリームの作り出した、半透明のエネルギーボールの中に閉じ込められたフィアッセである。
「いい加減にここから出して!」
「出せと言われて誰が『はい、わかりました』と出すものか」
 至極もっともな反論を返し、スタースクリームは視線だけをフィアッセに向け、
「少しは大人しくしていろ。
 この間の貴様の連れといいあの守護騎士達といい、最近の地球の女は謹みというものがないぞ」
 そう告げて――
「………………ん?」
 そんな彼の脳裏に何かが引っかかった。
 何かが閃いたような気がしたが――そこから先が続かない。せっかくの引っかかりもすぐに頭の中からこぼれてしまった。
「……何だったんだ……?」
 眉をひそめるスタースクリームだったが――疑問は晴れなかった。

 

 


 

第32話
「大決戦! 海鳴市の攻防なの!」

 


 

 

「じゃあ、お前らのボスが捕まっちまったのか?」
「あぁ……
 くそっ、スタースクリームのヤツ……」
 話を聞き、確認する晶に、サンダークラッカーは傷の痛みに顔をしかめながらそう答える。
「オレはオレで、ヤツのワナをブッ壊そうとしてこのザマだし……ランドバレットは『助けを呼んでくる』ってどっか行っちまうし……」
 そう告げると、サンダークラッカーは空を見上げ、
「地球は地球で、このザマだしな……」
 上空を我が物顔で飛び回るデストロン達を見据え、忌々しげにつぶやく。
「くそっ、どうしたもんだかな……」
 うめくサンダークラッカーだが、彼の傷も軽くはない。そんな彼に対し、晶は告げた。
「焦るのはわかるけど、まずは傷を治すんだ。
 何をするにもそれからさ」
「け、けどな……!」
「今動いたって、そのケガじゃ何もできないだろ」
「う゛……っ」
 反論しかけたところに晶から手痛い反論を受け、サンダークラッカーは思わず言葉に詰まる。
 そんなサンダークラッカーに、晶は肩をすくめて告げた。
「わかったらおとなしくしてろ。
 こんな状態だからシュークリームなんかも用意してやれないけどさ」

 戦場を離れ、時空間に退避したアースラは、シャマルやフォートレスと合流すべくランデブーポイントへと向かっていた。

「確認しよう。
 スタースクリームの狙いは、地球のプラネットフォースなんだな?」
「あぁ。
 ヤツは確かにそう言っていた」
 尋ねるギャラクシーコンボイに、ライブコンボイがそう答える。
「それだけではないはずだ。
 お前達が持っているプラネットフォースや、チップスクェアも狙っているはずだ」
「そうだな……
 お前らの基地は、まだ連中には発見されてないんだよな?」
「あぁ。
 国守山のどこか、というところまでは把握されているようだが、あの山も広い。正確な位置までは知られていないはずだ」
 スターセイバーとジンライに答え、ドレッドロックはギャラクシーコンボイへと向き直り、
「念のため、無線から基地の場所を特定されないよう、移民トランスフォーマーとの連絡回線を一時的にシャットダウンしました」
「さすが副司令。手際がいい♪」
「それだけじゃない。
 今アニマトロスチームに地球に飛んでもらって、代用の回線も確保しているところだ」
 はやし立てるバックパックにドレッドロックが答えると、
「して、地球の様子は?」
「少なくとも、よくはないね……」
 尋ねるアトラスに答えたのは志貴だった。
「ブリッジで地球のニュース放送を確認してたけど……どこもピリピリしてるみたいだ。
 特にアメリカなんか血気にはやっちゃって、日本や周りの国が外交交渉で必死になってなだめてるところで……」
「地球の軍事技術ではトランスフォーマーには歯が立つまい。
 数で押すしかないだろうが、そうなったらどれほどの犠牲が出るか……」
「はや――マスターが無事だといいんだが……」
 志貴の言葉に不安を隠しきれず、スターセイバーとジンライは顔を見合わせてつぶやいた。

「何だって!?」
 ドレッドロックに同行してきていたアイリーンの話に、恭也は思わず声を上げた。
 そしてそれは、となりのシグナムも同様だった。驚愕を隠し切れず、アイリーンに尋ねる。
「フィアッセさんが捕まった、って……本当なんですか!?」
「う、うん……
 解放された地球デストロンと一緒に現れたスタースクリームに……」
「あの時か……!」
 “地球のへそ”でのことを思い出し、思わず恭也はうめき――それでも、少しでも事態を詳細に把握すべく、アイリーンに次の質問を向けた。
「けど、スタースクリームはなんでフィアッセを?」
「わかんないわよ、そんなの。
 前にアラスカで会った時から、アイツはフィアッセに興味を持ってたけど……」
 恭也に答え、アイリーンがため息をつくと、
「それにしても……」
 その傍らで、シグナムは恭也を思い切りにらみつけた。
「な、何だ……?」
「まさか、お前達がフィアッセさんの知り合いだったとはな……!」
 静かに告げるシグナムだが――目が笑っていない。
「それが……どうかしたのか?」
 思わず気圧されながら尋ねる恭也だったが――その一言がきっかけとなり、シグナムが爆発した。恭也の両肩をつかみ、ガクガクと揺さぶりながら声を張り上げる。
「なんてうらやましい環境にいるんだ、お前達は!
 私なんか、彼女のCDやDVDを買うのに日々四苦八苦しているというのに!」
「い、いや、それは、まぁ、偶然というか……」
 なんとか釈明しようとする恭也だが、シグナムの揺さぶりによってものすごい勢いで首が前後しているためそれもままならない。
「いや、別に嫉妬などしていないぞ!
 あぁしていないさ! していないとも!」
「あー、シグナムさん、そのくらいで……」
 なんとかなだめようとするアイリーンだが、今のシグナムの耳にその言葉が届くはずもなく――

 結局、恭也が解放されたのはそれから十数分後のことだった。

「まさか、母さんがシックスナイトのパートナーだったなんて……」
「驚いたのは私もだよ」
 肩をすくめ、つぶやく美由希に、美沙斗もまた苦笑して告げる。
 彼女達もまた、この場を利用して互いの状況を確認していた――シックスショットやシックスナイトもその場に同席している。
「シックスショットも、シックスナイトも教えてくれればよかったのに……」
「拙者も聞いてはいなかった故、教えることなどできぬでござるよ」
「だいたい姓が違うんだ。親子だなんて普通は気づかないさ」
 なんだかのけ者にされているような気がして、口を尖らせる美由希だが、そんな彼女をシックスショット達はそう言ってなだめる。
「仲間の情報を与えぬためにも、任務を同じくする仲間のことには深入りしない――それが公儀隠密局の規則でござる」
「どんな情報も、知らなければ流出の心配はない――敵を調べて得た情報も、味方についての情報も、それは同じだということさ」
「なんとなく、言いたいことはわかるけど……」
 やはり釈然としないが、言いたいことはわかる。美由希はつぶやき、静かにため息をついた。

 一方、ミーティングルームでは、なのはとフェイトが進化を遂げた自らのデバイスに関する説明を受けていた。
「えっと、使ってみてわかったと思うけど、新しいレイジングハートとバルディッシュは、基本的な仕様はそのままだけど、実際の運用となると今までとはだいぶ違うの。
 ……違うか。同じことは同じなんだけど、新しくできるようになったことが多い、ってところかな」
 目の前に並べて置かれた、ウェイトモードのレイジングハートとバルディッシュ――そしてメインモニターに映し出した先の戦闘の映像を前に、エイミィはなのは達にそう説明する。
 そして、まずはフェイトへと視線を向け、
「バルディッシュ・リリィはリボルバー型のカートリッジシステムを搭載した“バルディッシュ・アサルト”とパワードデバイス“ジンジャー”、この二つによって構成されてるの。
 ジンジャーはフェイトちゃんの“できないことをフォローすること”を前提にしてる――たとえば、前の戦闘で使った新魔法“ファルコンランサー”。元々誘導系の操作が苦手だったフェイトちゃんに代わってジンジャーが誘導管制を行うことで、ディバインシューターに負けない操作性で扱っていけるの」
 続けて、今度はなのはへと視線を向ける。
「レイジングハート・ブローディアの構成はマガジン式のオートマチック型カートリッジシステムを組み込んだ“レイジングハート・エクセリオン”と、パワードデバイス“プリムラ”。
 プリムラについては、基本的になのはちゃんの、というかレイジングハートのサポートに重点をおいた仕様になってる――さっきの戦いでスタースクリームを相手にやってたみたいな、相手の死角を考慮した弾道の高速シミュレーションとか、なのはちゃんやカートリッジから供給される魔力の出力調整とかね。
 だから、今までと同じ魔法――ディバインバスターを例に挙げるけど、それも今までと同じ威力を保ったまま、今までよりも効率よく使っていけるはずだよ。スタースクリームに撃った“バスターレイ”も楽に撃てたでしょ?」
 そして、モニターの映像はなのはとフェイトの“フェザー”使用のシーンに切り替わった。
「で、二人の“フェザー”についてだけど……見ての通り、攻防一体のオールレンジツールだね。
 なのはちゃんのスケイルフェザーはバリア強化とエネルギー滞留による斬撃、フェイトちゃんのプラズマフェザーはエネルギー攻撃の反射と雷光をまとっての体当たり攻撃が可能な仕様になってるの。
 基本制御はプリムラやジンジャーがやってくれてるけど、結局のところ攻防どっちに使うかの判断は二人がしなくちゃいけない。そういう意味じゃ、慣れないうちに多用するのは避けた方がいいかもね。
 “フェザー”だって万能じゃない――使いどころを間違ったら、“フェザー”が全部出払って無防備なところに敵の攻撃くらっちゃうことだって十分にあり得るし。
 それから……」
 そう言うと、エイミィは再びデバイス達に向けて声をかけた。
「プリムラ、ジンジャー。
 出てきていいわよ」
《はいはーい♪》
《わかりました》
 エイミィのその言葉にデバイス達が応え――それぞれの中から、先の戦闘で発動した時に現れた、あの竜と鳳凰が姿を現した。
 ただ、先ほどのようにエネルギーに包まれた状態ではなく、明確な実体を持った状態である。
 同時に、なのは達は気づく――プリムラ達の身体は、あの時自分が装着した鎧が組み合わさって作られている。どうやら、装着の際はこれらのパーツが分離し、サイズシフトや変形を行うことで鎧となっているようだ。
《やっほ♪ なの姉♪》
《こんにちは、マスター》
「……とまぁ、こういうふうにプリムラ達だけが出てくることも可能、と。
 もうだいたい伝わってると思うけど、この子達の詳しいスペックについては本人達から聞いてね」
 あとはパートナーとの交流も兼ねてもらえればいい――それぞれのパートナーの胸へと飛び込むプリムラ達を微笑ましく見守り、エイミィはなのは達にそう告げて説明を締めくくった。

「アースラの被害はバカにならないな……」
「ごめん、クロノくん……」
「いや、あの状況じゃ適切な判断だった」
 謝罪するエイミィの言葉に、未だ戻らぬリンディに代わりブリッジに詰めるクロノは肩をすくめてそう答える。
「とにかく、今は一刻も早く体勢を立て直さないと……」
「そうだね……」
 エイミィがそうクロノに同意すると、
「おい、クロ助!」
 突如上がった声は背後から――クロノは、その声にこめかみを押さえながら振り向いた。
「……その呼び方はなんとかならないのか?」
「しない!」
「『ならない』じゃないのか……」
 即答する声の主――ヴィータに答え、クロノは思わずため息をつき――
「ンなコトはどうでもいいんだ!」
 言うなり――ヴィータはクロノの眼前にグラーフアイゼンを突きつけた。
「相手しろ! クロ助!」
「スタースクリームをなんとかするまで決着は持ち越すんじゃないのか?」
「違うっ!」
 尋ねるクロノに言い返し、ヴィータはグラーフアイゼンを肩に担いだ。
「さっき、スタースクリームのヤツにラケーテンハンマー防がれたんだよ!
 このままじゃ収まりつかねぇ! 特訓するから相手しろ!」
「それはそれで、なぜボクなのかを問いただしたいんだが……」
 どうせ答えてくれないんだろうなー、などという根拠のない確信と共に、クロノは思わず肩を落とし――答えた。
「『クロ助』という呼び方をやめてくれるのならな」

「クロノ、地球デストロンの各地での動き、可能な限りまとめてみたのですが……」
 言って、シオンはブリッジへと顔を出し――
「……何をしてるんですか?」
「答えてもらいたいなら、彼女を引き剥がしてくれると助かるんだが……!」
 ヴィータと取っ組み合い――というより、ヴィータに見事なマウントポジションを決められているクロノは、次々に繰り出される打撃をガードしながらそう答えた。

「……ここはずいぶんと落ち着いたものだな」
「緊張してばっかりじゃ身がもたないだろう?」
 マキシマスとの合流に備え、準備は進んでいるがあまり緊張感は感じられない――アースラの格納庫の一角に座り込み、つぶやくザフィーラにアルフはそう答えた。
「焦る気持ちはわかるけど、今はこっちの体勢も整えないとね」
「うむ……」
 アルフの言いたいことはわかる。成り行きの結果、サイバトロンとヴォルケンリッター、対立していた両者が手を組むことになった――それまでの関係が関係だ。手を組んだからと言ってすぐに連携、というワケにはいかない。
 それに、ヴォルケンリッターとの共闘は、現時点では事実上アースラの独断で決まっただけの状態だ。他のチームから反対意見が出ないとは思えない。
 アースラ側がその辺りのことを折衝する時間も、自分達の折り合いをつける時間も必要だろう――そのためにも、今はアルフの言うとおり体勢を整えることを優先するのが正しい判断だ。
「……地球の者達や主には悪いが、今この時はこの平穏に身を委ねるとしよう」
「そういうこと♪」

「それにしても、相川くんがライブコンボイのパートナーだったなんて……」
「それを言うなら、こっちだって驚きですよ」
 レストルームで休息を取りながら、つぶやく耕介の言葉に真一郎は苦笑まじりにそう答える。
「えっと……どういう関係?」
「うーん、どこから話せばいいのやら……」
 耳打ちするように尋ねるアルクェイドにすずかが説明に困っていると、
「しんいちろーはあたし達の友達なのだ!」
「しんいちろうも、久遠たちのともだち♪」
 そう答えるのは美緒と久遠だ――そんな二人に苦笑し、那美が説明する。
「相川さんは、さざなみ寮のOGの人達とクラスメートだったんです。
 パティシエ志望で、桃子さんに教わっていたこともあって、その縁で今でもさざなみ寮や翠屋とお付き合いがあるんですよ」
「しんいちろうのおかしも、久遠だいすき♪」
「ふーん……」
 那美と久遠の言葉に、アルクェイドはしばし考え――
「……たからないであげてくださいね」
 そんな彼女の狙いに気づき、アリサはやんわりと釘を刺しておいた。

「地球のプラネットフォースはまだ見つからないようだな」
「みたいっスね。
 スナップドラゴン達からは何の連絡もないです」
 つぶやくように告げるスタースクリームの言葉に、ノイズメイズは肩をすくめてそう告げる。
「サイバトロンの持ってるプラネットフォースを奪った方が早くないですか?」
「そうは言うけど、ヤツらの基地の場所がわからなきゃ――」
 一方で尋ねるパズソーにそう答えかけ――ノイズメイズはふと思考を止め、スタースクリームに尋ねる。
「……確かサイバトロンの基地は、国守山のどこかなんですよね?」
「あぁ」
「で、その近くには……」
 その言葉に、スタースクリームは彼の言いたいことに気づいた。
「……なるほど」
 つぶやき、スタースクリームの口元に笑みが浮かび――フィアッセもまた、彼らの狙いに気づいた。
「あなた達……まさか!?」
 だが、かまわずスタースクリームは全軍に伝えた。
「各地に散ったスナップドラゴン達にはそのまま探索を続けさせろ。
 我々は――海鳴に向かうぞ!」

「た、大変だ……!」
 スタースクリーム達の動きは、アースラでもとらえていた。一斉に海鳴へと集結を始めた地球デストロン達の動きをレーダースクリームで確認し、エイミィは思わず息を呑んだ。
 ヴォルケンリッターと共同戦線を結び、戦力的な不足については少しはマシになったが――今度はその戦力の拡充が仇になった。今の戦力の両軍が真っ向からぶつかれば、もたらされる被害は尋常ならざるものとなるだろう。だが、だからといって自分達が出て行かなければ、それこそ海鳴は地球デストロンの総攻撃にさらされることになる。
「どうすれば……!」
 思わず歯噛みし、クロノがつぶやき――
〈クロノ、聞こえるか!?〉
 そこに、ギャラクシーコンボイが格納庫から連絡してきた。

「事情は聞いた。
 私に考えがある!」
 そう告げると、ギャラクシーコンボイはライブコンボイへと向き直り、
「ライブコンボイ、それから真一郎……だったか。
 すぐに地球に転送してもらい、北極に飛んでくれ」
「わかった」
「あぁ」
 二人の答えにギャラクシーコンボイがうなずくと、となりでなのはが尋ねた。
「えっと……どうするつもりなんですか?」
 その問いに、ギャラクシーコンボイはしばしの沈黙の末に答えた。
「地球から……撤退する」

 全員に作戦を指示するため、ギャラクシーコンボイはなのは達やアースラの主だったクルーを格納庫に集めてもらった。
「ライブコンボイが地球のプラネットフォースを持ってきてくれた時点で、我々はチップスクェアを持って別の星に移動する。
 撤退するように見せかけて、スタースクリーム達をそちらに誘導するんだ」
「で……どこに逃げるんだ?」
「スピーディアがいいと思う。
 あそこはハイウェイから離れてしまえば一面の荒野だ。思い切り戦っても、被害は最小限に食い止められる」
 尋ねる恭也に答えると、ギャラクシーコンボイはシグナム達へと向き直り、
「シックスショット、シックスナイト、そしてヴォルケンリッターの諸君は、それぞれのパートナーと共に一足先にマキシマスと合流。スピーディアに飛んで、迎撃体制を整えておいてくれ。
 そちらの作戦の総指揮はクロノに任せようと思う。すまないが彼の指揮下に入ってくれ」
「かまわない。
 我らは原則1対1を重んじる騎士――集団戦闘もできないワケではないが、どうしても単独戦闘に劣る。
 作戦指揮のできる人間が同行してくれるのなら、むしろありがたい」
 シグナムの答えにうなずき、ギャラクシーコンボイは改めて一同を見渡した。
「現在の敵の移動速度からして、最も早い予想接敵地点は国守山上空――スペースブリッジの入り口付近だ。
 海鳴の街を巻き込むワケにはいかない――それは、ここにいる全員に共通する認識のはずだ。
 各員、迅速に動いてくれ!」
『了解!』
『おぅっ!』

「もうすぐ海鳴ですね」
「うむ……」
 すでに海鳴は目と鼻の先。告げるノイズメイズにスタースクリームはうなずき――
「………………ん?」
 ふと、眼下を何者かが飛行しているのに気づいた。
 ライブコンボイである。
「あれは……」
「ヤツがライブコンボイです!」
 つぶやくスタースクリームに答えたのはパズソーだ。
「どうやら、プラネットフォースのことを知ってるみたいなんですよ!」
「何!?」
 その言葉に、スタースクリームの顔色が変わった。すぐに急降下し、ライブコンボイの前に立ちふさがる。
「お前は!?」
「ライブコンボイ。
 地球のプラネットフォースの在り処、教えてもらおうか――」
 停止し、迎撃すべくロボットモードとなるライブコンボイに告げ――気づいた。
 ライブコンボイが手にしている、青色に金縁のフォースチップ――
「それは……地球のプラネットフォースか!?」
「さてね。
 だったら、どうする?」
 ライドスペースから尋ねる真一郎の問いに、スタースクリームは彼らから距離を取り――
「奪うまで!」
 告げると同時に発砲、二人に向けて攻撃をしかける!
 しかし、ライブコンボイはビークルモードにトランスフォーム、素早くスタースクリームの攻撃をかわし、
『フォースチップ、イグニッション!』
 真一郎と共に地球のフォースチップをイグニッション、ホーミングミサイルを展開し、
『ジェットブースター!』
 その基部に姿を見せた新たなブースターで加速。一気にスタースクリーム達を引き離しにかかる!
「くっ……! 逃がすな!」
 うめくスタースクリームの言葉に、地球デストロンが一斉に攻撃を開始するが、ライブコンボイはそれらの攻撃をすべるようにかわしていく。
 そして、十分に距離を取ったところでスタースクリーム達へと向き直り、
『ホーミング、ミサイル!』
 今度こそホーミングミサイルを発射、放たれたミサイルは直前で拡散し、地球デストロン達に降り注ぐ!
「悪いな、急いでるんだ」
「く………………っ!」
 告げて、去っていくライブコンボイを追うべく――スタースクリームはビークルモードへとトランスフォームした。

 ライブコンボイとスタースクリーム達の交戦の光は、サイバトロン基地の“虹の橋”の入り口からも見えていた。一足先に基地に降り立ち、チップスクェアを持って出発の準備を整えていたギャラクシーコンボイ達は、ライブコンボイの到着を今か今かと待ちわびていた。
 と――
「――来ました!」
「ライブコンボイと相川さんよ!」
 望遠映像で様子を見ていたバックパックとライドスペースのアリサが、ライブコンボイの姿を発見して声を上げる。
「よし、みんな、行くぞ!」
『了解!』
 ギャラクシーコンボイの言葉に答え、一同は“虹の橋”を登っていく。
 堂々と行軍するのには理由がある――少なくとも、地球デストロンには発見されなくてはならないからだ。
 彼らには、スピーディアまで追ってきてもらわなければならないのだから。

 一方、ライブコンボイと真一郎はスタースクリームと熾烈な追撃戦を繰り広げていた――ライブコンボイは追撃をかわすべく急降下、スタースクリームもそれを追っていく。
「真一郎、大丈夫か……!?」
「なんの……これしき……!」
 強烈なGの中、尋ねるライブコンボイに真一郎が答え、二人は一直線に眼下の湖へと突っ込んでいき――直前で水平飛行にシフト、舞い上がる水しぶきがスタースクリームの視界を奪う。
「く………………っ!」
 引き離された――ひとまず姿勢を立て直し、舌打ちするスタースクリームだったが――
「む――――――っ!?」
 気づいた。
 国守山の上空に展開された、スペースブリッジに。
「アイツら、地球から逃げるみたいですよ!」
「言われなくても、わかっている!」
 ノイズメイズに答え、スタースクリームはパズソーと共にその後を追うが、
「ここから先へは――」
「行かせない!」
「ぅわぁっ!?」
「ぎゃあっ!?」
 その前には、足止めを引き受けたドレッドロックと志貴が立ちふさがった。機銃の直撃を受け、ノイズメイズとパズソーが脱落。スタースクリームも回避を余儀なくされる。
 そして、そのスキにライブコンボイは無事にギャラクシーコンボイへと合流する。
「待たせたね」
「いや」
 ライブコンボイに答え、ギャラクシーコンボイはドレッドロックへと通信し、
「ドレッドロック、準備完了だ。
 撤退するぞ!」
「了解!」
 答え、なのは達の元に戻ろうとするドレッドロックだが――
「逃がすと、思ったのか!」
 そんなドレッドロックの尾翼を――スタースクリームが捕まえる!
 そして、そのままドレッドロックを眼下の地上に投げ飛ばし――
「これで!」
 さらに機銃で追撃。ドレッドロックを大地に叩きつける!
「ぐ………………っ!」
 それでも、なんとか身を起こそうとするドレッドロックだが――
「はい、そこまで」
 そんな彼にマックスビーと共に銃口を突きつけ、ヘルスクリームが告げた。

「ドレッドロック!」
 その様子はなのは達のところからも見えていた――ベクタープライムのライドスペースで恭也が声を上げると、スタースクリームが彼らに告げる。
「ギャラクシーコンボイ。
 プラネットフォースを渡せ!」
「く………………っ!」
「ドレッドロック達が、人質ってワケか……!」
 うめくギャラクシーコンボイのとなりで、フェイトもまた思わずうめき――
「………………あれ?」
 なのはは気づいた。
 ドレッドロックのすぐ目の前に何かが――いや、“誰かが”現れた。
 あれは――

「返事はどうした!? ギャラクシーコンボイ」
 動きを見せないギャラクシーコンボイの姿に、スタースクリームはもう一度問いかける。
 だが――彼らは気づいていなかった。
 身を起こしかけたそのままの姿勢で銃を突きつけられているドレッドロック――その真下に出現した人物に。
 だが、志貴も、ドレッドロックも、それが誰なのかすぐにわかった。
「り、リスティさん……!?」
 つぶやく志貴に対し、リスティは「しっ!」と口元に人差し指を当て、
「それじゃ……いくよ!」
 告げると同時、ドレッドロックに触れ――その姿がその場から消えた。
「何っ!?」
 思わずヘルスクリームが声を上げると、
「悪いね!
 あたしだって、瞬間移動テレポートくらい使えるんだよ!」
 上空で体勢を立て直したドレッドロックの肩の上で、HGS能力者特有のリアーフィンを展開したリスティが勝ち誇って告げる。
 すでに、その右手には雷光がほとばしり――
「サンダー、ブレーク!」
 リスティの放った雷光が、ヘルスクリーム達の周りで大地を爆裂させる!

フォースチップ、イグニッション!』
 人質のドレッドロックが解放された今、遠慮はいらない――咆哮と同時、ギャラクシーコンボイはなのはのサポートでギャラクシーキャノンにフォースチップをイグニッションし、
「ギャラクシーキャノン、フルバースト!」
 照準をバラバラに散らし、広範囲に放ったフルバーストで地球デストロン達を薙ぎ払う!
「よぅし、わたしも!」
 言って、なのははレイジングハートをかまえ、
「レイジングハート、カートリッジ、ロード!」
〈Load cartridge!〉
 なのはの指示に従い、レイジングハートがマガジン内のカートリッジを1発、シリンダーに送り込んで炸裂させる。
 さらに――
フォースチップ、イグニッション!
〈Force-tip, Ignition!〉
 告げると同時、黄色いフォースチップがレイジングハートのコアへとまるで溶け込むように飛び込み、なのはの周囲で魔力の光が渦を巻く。
 どうせ敵だらけなのだ。狙いなどつける必要はない――なのはは反動に飛ばされないようレイジングハートをしっかりとかまえ、
「イグニッション――パニッシャー!」
 解き放った閃光が、地球デストロン達をまとめて吹き飛ばす!
「よぅし、このままスピーディアに向かうぞ!」
「させるかぁっ!」
 このまま逃がすワケにはいかない――ギャラクシーコンボイに言い返し、“虹の橋”に飛び乗り、その後を追うスタースクリームだが、
「『させるか』だって!?」
「そいつは、こっちのセリフだもん!」
 言い返し、エクシリオンとすずかがバックパックやアリサ、オートボルトと共にその前に立ちふさがり、
『フォースチップ、イグニッション!』
『エクス、ボルト!』
『グラウンド、ショット!』
「フォース、ミサイル!」

 彼らの一斉攻撃がスタースクリームへと降り注ぐ!
 だが――
「なめるなぁっ!」
 爆発の中から飛び出してきたスタースクリームが、バーテックスブレードでエクシリオン達を薙ぎ払い、“虹の橋”の下へと叩き落す!
『トルネード、カッター!』
「デス、ブリザード!」

 そこへガードシェルと真雪の放ったトルネードカッターがスカイリンクスのデスブリザードを巻き込んで襲いかかり、
『フォトン、ビーム!』
 凍結し、動きの鈍ったスタースクリームにファストエイドとシオンがフォトンビームで追い討ちをかける。
 しかし、それでもスタースクリームは止まらない。一気に間合いを詰め、突破する!
『ドレッドキャノン、バーストアタック!』
『デュアル、ローターキャノン!』

 次に対峙するのはドレッドロックと志貴、そしてノエルとハイブロウ――4人の攻撃が直撃するが、かまわず発砲したスタースクリームのビームが彼らを吹き飛ばす。
「わ、私の、未来……!」
「こいつ!」
「いい加減、あきらめなよ!」
「たぁぁぁぁぁっ!」
 すでにボロボロになりながら、それでも進撃をやめないスタースクリームにファングウルフとアルフ、そしてロングラックが襲いかかるが、
「ジャマを……するなぁっ!」
 スタースクリームは、彼らをバーテックスブレードで弾き返す!
「プラネットフォースを……渡せ……!」
「あきらめろ、スタースクリーム!」
 スタースクリームに言い返し、ライブコンボイは棍棒形態のジャイロソーサーをかまえてスタースクリームと対峙する。
 先制したのはライブコンボイ。大上段から振り下ろした一撃をかわすスタースクリームだが――それは囮だった。続く第2撃で姿勢の崩れたスタースクリームを突き倒す。
 だが、スタースクリームもそこからの追撃を転がってかわし、逆にライブコンボイの足を払って転ばせ、
「どけぇっ!」
 ライブコンボイを“虹の橋”から蹴落とし、その場に落ちたそれを――彼の持っていた地球のプラネットフォースを拾い上げる。
「宇宙を破滅から救うため――」
「チップスクェアは渡さない!」
 そんなスタースクリームに告げ、斬りかかる恭也とベクタープライムだが――
「そうは――いかねぇんだよぉっ!」
 スタースクリームもすでに必死だ。いつもの冷静さをも捨て去り、獣のごとき咆哮と共に地を蹴る。
 迫るベクタープライムの剣をバーテックスブレードで弾き、続いて恭也を体重差に物を言わせてガードの上から殴り飛ばす。
 そして――
「チップスクェアを――渡せぇっ!」
 そのままベクタープライムも殴り倒し、チップスクェアを奪い取る!
「オレの……未来……!」
 これで今現在確認されているすべてのプラネットフォースがそろった――チップスクェアを手にしようとするスタースクリームだが、
「そこまでだ! スタースクリーム!」
 その前に、ギャラクシーコンボイとライガージャック、ニトロコンボイとロディマスブラー、そしてなのは達が立ちふさがる。
「プライマスのスパークを、マスターメガトロンの野望のためになんか使わせない!」
「そういうこと!
 覚悟しなさい、スタースクリーム!」
 “御架月”をかまえ、告げる耕介にアルクェイドが同意するが――
「フッ……」
 その言葉に、スタースクリームの口元に笑みが浮かんだ。
「マスターメガトロンになど使わせない……!
 プライマスのスパークはオレが使う!
 オレの、野望のために!」
「え………………!?
 どういうことなのだ!? マスターメガトロンは!?」
 その言葉に思わず尋ねる美緒だが、スタースクリームは答えない。
 だが――その自信に満ちた笑みを前に、ギャラクシーコンボイはだいたいの事情を察した。
「そういうことか……!
 マスターメガトロンを裏切ったのか」
「えぇっ!?」
 ギャラクシーコンボイの言葉に思わず声を上げるなのは――そんな彼らにスタースクリームは告げた。
「オレの野望をジャマする者は、すべて叩きつぶす!
 かかって来い!」
「やるしか、ないんだね……!
 フェイトちゃん!」
「うん!」
 スタースクリームの覚悟は本物だ。戦うしかあるまい――なのはの言葉にうなずき、フェイトはバルディッシュをかまえ、
〈Link up Navigator, Get set!〉
 リンクアップ・ナビゲータを起動させた。

「いくよ――みんな!」
 言って、フェイトがバルディッシュ・アサルトをかざし――その中枢部から光が放たれる。
 その中で、ギャラクシーコンボイとライガージャック、二人のスパークがさらなる輝きを放つ。
『ギャラクシー、コンボイ!』
 なのはとギャラクシーコンボイが叫び、ギャラクシーキャノンを分離させたギャラクシーコンボイが右腕を後方にたたむ。
『ライガー、ジャック!』
 次いでアルクェイドとライガージャックの叫びが響き、ライガージャックは両腕を分離、両足を折りたたむとそこに分離していた両腕が合体し、巨大な右腕に変形する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 フェイトを加えた5人の叫びと共に、右腕となったライガージャックがギャラクシーコンボイに合体する!
 背中に分離していたギャラクシーキャノンが合体。最後にライガージャックの変形した右腕に拳が作り出され、5人が高らかに名乗りを上げる。
『ライガァァァァァ、コンボイ!』

『ニトロコンボイ!』
 耕介とニトロコンボイが叫び、背中のニトロブーストで勢いよく上昇、頭上にマッハショットを放り投げ、
『ロディマス、ブラー!』
 次いで美緒とロディマスブラーの叫びが響き、ロディマスブラーはビークルモードのドラッグカーにトランスフォーム、両腕にあたる後輪の駆動ユニットが分離する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、ロディマスブラー本体がニトロコンボイの背中に、そして分離した駆動ユニット部分が両足の外側に合体する。
 ロディマスブラーの両足にあたる前輪部分が二つに分かれて展開され、両肩をカバーする追加装甲となり、落下してきたマッハショットを手にした4人が高らかに名乗りを上げる。
『ロディマァス、コンボイ!』

「いくぞ! スタースクリーム!」
 咆哮し、突撃したライガーコンボイの拳がスタースクリームを殴り飛ばし、
「まだまだ!」
 続いて、ロディマスコンボイがスタースクリームの足を払う。
 そのままトドメとばかりに拳を叩きつけるライガーコンボイだが、スタースクリームもそれをかわし、
「まずは貴様だ!」
 スタースクリームの放ったビームをかわし、ロディマスコンボイは着地し――
「そこだ!」
 スタースクリームはその足元を狙った。放たれたビームが彼らの着地地点を粉砕、転落しかけたロディマスコンボイを大地に向けて殴り落とす!
「ロディマスコンボイ!
 ――ジンジャー!」
《はい!》
 フェイトの指示を受け、ジンジャーはフェイトから分離するとサイズシフトで大型化し、
《ジンジャー、ビークルモード!》
 咆哮し、翼をカウルに、その下部に設置されたエネルギープールをタイヤとしたバイク形態へと変形、フェイトを乗せてスタースクリームと対峙する。
 そして――
《「フォースチップ、イグニッション!」》
 二人の叫びが交錯。ジンジャーの背中から車体後部に移ったチップスロットへと黄色のフォースチップが飛び込み、一気に加速したフェイトとジンジャーは雷光に包まれ、スタースクリームへと突っ込む。
「させるか!」
 迎撃すべく、バーテックスブレードを振るうスタースクリームだが――
《「ライトニング、ラム!」》
 ビークルモードのジンジャー、その先端のラムに雷光を収束したフェイト達の一撃が、スタースクリームのバーテックスブレードを叩き折る!
 しかし――
「小娘がぁっ!」
 バーテックスブレードはもう一振りあった。スタースクリームはもう1本のバーテックスブレードでフェイトとジンジャーを弾き飛ばし、そのままなのはに襲いかかる!
「プリムラ!」
《お任せ!》
 なのはに答え、高速で離脱するプリムラだったが、
「逃がすものか!」
 放たれた弾幕で機動を制限され、そのスキに間合いを詰めたスタースクリームがなのはを大地に叩き落とす!
「きゃあっ!」
《なの姉!》
 とっさに分離し、サイズシフトで大型化――なのはを受け止めて落下の勢いを殺すプリムラだが、彼女達に幾度となく苦渋をなめさせられているスタースクリームは、油断も容赦もなく追い討ちをかけた。両肩から放つナル光線でなのは達を今度こそ大地に叩き落す。
「よくも――」
「なのは達を!」
 そんなスタースクリームに向け、今度はアルクェイドと耕介が襲いかかるが、スタースクリームは二人の攻撃を受け止め、逆にその腕をつかむと“虹の橋”に叩きつけて意識を奪う。
 だが――
「むんっ!」
 まだライガーコンボイが残っていた。咆哮と共に繰り出した拳が、まともにスタースクリームの胸部を痛打する。
「もうあきらめろ、スタースクリーム!」
 告げるライガーコンボイだが――
「まだだ……!」
 それでも、スタースクリームは退かない。告げると共に、その“力”が高まっていく。
「まだ……終われねぇんだよ!」
「く………………っ!」
 告げるスタースクリームを前に、ライガーコンボイは静かにかまえる。
 なのはも、フェイトも、アルクェイドも欠けた。果たして、自分とライガージャックだけでどこまで“力”を引き出せるか――
「……やるしか、ないか!
 フォースチップ、イグニッション!」
 それでも、今は賭けるしかない。ライガーコンボイはフォースチップをイグニッション、プラティナムクローを展開する。
 そして、ライガーコンボイは右腕を天高く掲げ――その全身がフォースチップの“力”の輝きに包まれる!
 渦巻くエネルギーに導かれ、浮き上がったライガーコンボイは一気にスタースクリームへと突っ込み、スタースクリームもまたライガーコンボイに向けて跳躍、バーテックスブレードを振るう。
 そして――
「ライガー、グランド、ブレェイク!」
「バーテックス、スラッシュ!」
 ライガーコンボイとスタースクリーム、両者の一撃が激突し――大爆発が巻き起こる!
「キャアッ!」
 すさまじい衝撃に、フェイトはバルディッシュを支えに何とか耐えしのぎ――
「――――――あれは!」
 スタースクリームと共に、地球のプラネットフォースやチップスクェアもまた吹き飛ばされ、落下していくのに気づいた。
「ライガーコンボイ!」
「わかった!」
 自分はダメージが大きく動けない――フェイトの言葉に答え、ライガーコンボイは急降下し、チップスクェアを追う。
 だが――
「オレの……!
 オレの、未来……!」
 スタースクリームは未だ闘志を失ってはいなかった。落下しながらビークルモードへとトランスフォーム、ライガーコンボイの後を追う。
 プラネットフォースも、チップスクェアも手に入れる――執念のままにミサイルの照準を合わせ、撃つ。
 ライガーコンボイに――ではなく――

 なのはに。

「いたた……!」
 ぶつけた頭をさすり、なのはが身を起こし――
《な、なの姉!》
「え――――――っ?」
 突然上がったプリムラの声に顔を上げ――そんな彼女の元へ、スタースクリームの放ったエネルギーミサイルが迫る!
 とっさに防御しようと、なのははレイジングハートをかまえ――ようとしたが、
「あ、あれ……!?」
 そこでようやく、レイジングハートが手元にないことに気づいた。
 あわてて見回すと、大地に叩きつけられた時に手放してしまったのだろうか、少し離れたところにデバイスモードのまま転がっている。
 取りに行っているヒマも、プリムラを再装着する時間もない。そうしている間にもエネルギーミサイルはなのはに襲いかかり――

 

「なのはぁぁぁぁぁっ!」

 

 絶叫と共に――爆発が巻き起こった。

「………………あれ?」
 しかし、なのは達は無事だった――自分達を襲わなかった爆発を前に、恐る恐る目を開けて――
「――ライガーコンボイさん!?」
 自分の目の前に佇んでいたライガーコンボイに気づいた。
 そして、同時に悟る――彼がかばってくれたのだと。
「なのは……プリムラ……
 ケガは、ないか……?」
 ダメージは決して軽くはなかった――息をつき、ライガーコンボイが尋ねるが、
「フ、フハハ……!」
 背後で上がった声に振り向くと――そこにはスタースクリームの姿があった。
「ついに手に入れたぞ……プライマスのスパークを……!」
 地球のプラネットフォース、そしてチップスクェアを手にして。
「待て、スタースクリーム!」
 すぐに取り戻そうと動くライガーコンボイだが――彼が接近するよりも早く、スタースクリームはワープゲートを展開し、その向こうに消えていった。

「そうか……
 プラネットフォースは、スタースクリームに……」
「すまない……」
 スタースクリームが離脱したことで、地球デストロン達も引き上げていった――作戦の失敗を知らされ、駆けつけたスターセイバーにギャラクシーコンボイが謝罪する。
「ギャラクシーコンボイさんは、悪くないよ……」
《ごめんなさい……
 私が、きちんとなの姉を守れていれば……》
 そんなギャラクシーコンボイをかばい、なのはが、そしてプリムラがそれぞれに謝罪するが――
「気にするな、なのは、プリムラ」
 そんななのはに告げたのは恭也だった。
「チップスクェアとプラネットフォースは、また奪い返せばいい。
 それより、お前達が無事で本当によかった」
「恭也さんの言うとおりだよ。
 今はヤツらに預けているだけ。いずれ返してもらうさ」
 恭也の言葉に志貴が同意すると、
〈あー、みなさん、ちょっといいですか?〉
 突然基地から通信が入った――秋葉からだ。
「どうしたの? 秋葉さん」
〈今から、リンディ提督がそちらに向かいますけど……〉
 尋ねるアリサに、秋葉はなぜか歯切れの悪い口調で告げた。
〈……驚かないでくださいね。
 特に、真雪さん……〉
「は? あたしか?」
 その言葉に真雪が聞き返した、ちょうどその時、彼らの目の前に魔法陣が展開された。
 描かれているのは転送魔法の術式――すぐにその中からリンディが姿を現した。
 だが――その後に続いてきた人物を前に、一同は驚いて目を見張った。
 特に、さざなみ寮の面々の驚きは群を抜いていた――口をパクパクさせている真雪に代わり、耕介は呆然とその名を呼んだ。

 

「……知佳、ちゃん……!?」

 

 一方、その頃アニマトロスでは――
「何……?
 スピーディアから来た、と?」
「そうだ」
 眉をひそめ、尋ねるスカージに彼は静かにうなずいた。
「何のために?」
「プラネットフォースだ。
 サイバトロンどもの手に入れたものの他に、持っているそうだな」
「まぁ、な」
 答えて、スカージは背後の玉座の上に飾られた、ガンメタルに染め抜かれたプラネットフォースへと視線を向ける。
「………………で、どうするつもりだ?
 まさかこのオレ様から、奪うつもりじゃないだろうな?」
「まさか。
 サイバトロンにすでに二つも奪われている現状で、我らが争ってどうする」
 スカージにそう答え――彼は告げた。
「手を組まないか? アニマトロスの大帝よ。
 このオレ――スピーディアの暴走大帝、オーバーライドとな」

 そして、舞台は再び地球。
 北極に残された封印の地の跡で、その異変は始まっていた。

〈アプリケーション・エラー。封印システムに異常発生〉
 システムの警告が告げるその場には、未だ解放されないカプセルがひとつ。
 見ると、基部に火花が散っている――どうやらハード面のトラブルによって、スタースクリームが解放したあの時も難を逃れていたようだ。
 だが、すでに制御ユニットはスタースクリームによって破壊された後である。
 すなわち――
〈電圧低下。封印維持率低下。スパーク活性化を確認。
 カプセル――解放〉

 システムが告げるが――目覚めた中の人物は待たなかった。
 次の瞬間――

 カプセルは、内部から破壊されていた。


 

(初版:2006/08/06)