スタースクリームとの激闘の末、プラネットフォースを奪われたあの時から、時間は少しさかのぼる――

 なのは達がライブコンボイ達と出会っていた、その頃、アメリカではすでに事態が動こうとしていた。
 自国の上空を我が物顔で闊歩する地球デストロン達に向け、米軍がついに動いたのだ。
 地球デストロン達に向けての、無人戦闘機の発進――
 ギャラクシーコンボイ達の懸念する、地球人とトランスフォーマーの対立――それがついに、現実のものになろうとしていた。

 その最初の舞台となったのはアメリカでも屈指の主要都市ニューヨーク。
 地球デストロン達と無人戦闘機がにらみ合う、その眼下では市の消防局や警察が市民の避難誘導にあたっている。
 そして、その中に――
「まったく、なんでこんなところで……!」
 ニューヨークレスキュー所属のレスキュー隊員、セルフィ・アルバレッド――通称シェリーの姿があった。

 

 


 

第33話
「プロテクトボット、出場なの!」

 


 

 

 避難はほぼ完了した。だが、まだ残っている人がいないとも言い切れない――シェリーは周辺の建物をひとつひとつ確認し、住人の姿を探していた。
「ここも大丈夫ね……」
 つぶやき、ビルから出たシェリーが見上げた先では、すでに地球デストロンと無人戦闘機の交戦が始まっている。
 戦いの様子は一方的だった――ただし、一方が圧倒的に不利、という意味ではない。無人戦闘機が次々に攻撃を仕掛けているのだが、地球デストロンはダメージを受けるどころか完全に無視している。彼らの攻撃などまったく意に介していないのだ。
 技術力の差はシェリーの目から見ても歴然だ。さっさとあきらめればいいものを――そんなことを考えながらシェリーが次のビルに向かおうとした、その時――頭上で爆音が轟いた。
 無人攻撃機のミサイルを煩わしそうに地球デストロンのひとりが弾き――それが近くのビルに着弾したのだ。
「く――――――っ!」
 粉砕され、ガレキとなって崩れ落ちるビル――幸いこちらに振ってくるガレキは少ないが、それでも安全圏に逃れようと、シェリーはその場から駆け出し――
「――――――っ!?」
 その姿を発見した。
 親とはぐれたのだろうか――向かいのマンションの中から姿を現した、子供の姿を。
 その場所は――今まさにガレキが落下しようとしている真下だ。
「危ない!」
 思わず叫び――シェリーの背中に光の翼が生まれた。
 HGS能力者特有のリアーフィンである。
 瞬間移動テレポートによって一瞬にして子供のもとに駆けつけ、再び離脱しようとするが、
(――間に合わない!)
 背筋に冷たいものが走るシェリーと子供へと、ガレキは無情にも降り注ぎ――

「………………あれ?」
 だが、ガレキが彼女達に襲いかかることはなかった。
 不思議に思い、シェリーは顔を上げ――それを見た。
 自分達の頭上をまたぎ、降り注ぐガレキを受け止めたのは消防車のはしごを。
 その消防車には見覚えがある。自分達の所属する、ニューヨーク・レスキューの所有するものである。
 だが――運転席を見たシェリーは眉をひそめた。
 無人なのだ。
「一体、誰が……!?」
 状況が呑み込めず、シェリーは思わずつぶやき――
「大丈夫か? セルフィ」
 かけられた声は、やはり消防車の方から聞こえてきた。
「だ、誰!?
 どこにいるの!?」
 姿の見えない声の主に向けてシェリーが声を上げるが、
「キミの目の前にいる。ずっと以前からね」
 声がそう答えると、消防車はひとりでにはしごを動かし、ガレキを払いのける。
 そして――
「ホットスポット、トランスフォーム!」
 咆哮し、ホットスポットと名乗った消防車は人型のロボットモードへとトランスフォームした。
「ろ、ロボット……!?」
「『トランスフォーマー』だ。正確にはね」
 思わず声を上げるシェリーに答えると、ホットスポットは彼女の前にかがみ込み、
「それで……ケガはないか?」
「あ、うん……大丈夫――」
「キミじゃない」
 あっさりと答えるホットスポットのその言葉に、シェリーはようやく彼の言いたいことに気づいた。自分が抱きしめている子供の様子をチェックし、
「……うん、大丈夫。
 この子にも、ケガはないよ」
「そうか。よかった……」
 シェリーの言葉に安堵し、立ち上がるホットスポットにシェリーが声をかけた。
「何よ、私の心配はなし?」
「当然だ」
 だが、ホットスポットの言葉は簡潔明瞭だった。
「レスキューの現場において、仲間を信じるのは基本中の基本。
 もっとも危険なガレキを私が排除した以上、キミならば残る要素でケガをするはずはないと確信している」

 ともかく、今は避難が先決だ――助けた子供を避難所に送り届け、シェリーはビークルモードのホットスポットに乗り、車内で彼から説明を受けていた。
「じゃあ、キミはずっと、私達の消防車として一緒にレスキューをしていてくれたんだ」
「あぁ。
 だが、今回の事態は明らかに通常のレスキューの枠を超えている上、地球に生きるトランスフォーマーとして見過ごせる問題でもない。そのため、キミに対して正体を明かすことにした」
 話している間にも、ホットスポットは行く手の建物を次々にスキャンし、残っている住人の有無を確認していく。
「チームの仲間達とも連絡を取った。現在、全員こちらに向かっている。
 もっとも離れているメンバーでも、あと4、5分で合流できるだろう」
「チーム?
 仲間がいるの?」
「あぁ」
 ホットスポットがシェリーに答えた、その時――
「――――――っ!
 ホットスポット、止まって!」
「うむ」
 あっさりとうなずき、停車するホットスポットから降りると、シェリーは急いでそこに駆け寄った。
 怖がってガレキの下に隠れている、1匹の子犬――
「よしよし、もう大丈夫だからね」
 シェリーのその呼びかけに答え、ガレキの下から出てきた子犬を彼女は優しく抱きしめる。
「そんなところに……
 すまない。私にセンサーには何の反応もなかった」
「仕方ないよ。まだこんな子供じゃ、命の力も弱々しいし……」
 ロボットモードにトランスフォームし、つぶやくホットスポットにそう答えると、シェリーは怯える子犬の背中を撫でてやる。
 妹などは動物に嫌われているようで、こんな風に抱きしめようものなら手痛いしっぺ返しが来るのだが――自分は昔からそんな心配はいらないようだ。
「とにかく、どこかに逃がしてやらなければ……」
「そうだね」
 ホットスポットに答え、シェリーが立ち上がると――
「おやおや、懐かしい顔じゃないか」
『――――――っ!?』
 突然の声にシェリーとホットスポットが振り向くと、そこにいたのは――
「貴様……ワイルダー!?」
「知ってるの!?」
「上空の連中の仲間だ」
 シェリーの問いに答え、ホットスポットは彼女を守るように狼男型のモンスタートランスフォーマー、ワイルダーの前に立ちはだかる。
「ワイルダー! まさか貴様も解き放たれていたとはな!」
「まぁな。いろいろとこっちにも事情ってものがあるんだ。
 ワイルダー、トランスフォーム!」
 ホットスポットに答えて跳躍し、ワイルダーは上下逆さまになった状態からロボットモードへとトランスフォームする。
「お前やライブコンボイ達に封印されたお返しだ!
 痛めつけてやるから覚悟しやがれ!」
 告げると同時、ワイルダーはホットスポットに向けて発砲、ホットスポットもそれをかわそうとするが――
「――――――っ!」
 背後にはシェリーがいる――やむなく足を止め、彼女の盾となってワイルダーの放ったビームを受け止める。
「ホットスポット!?」
「私なら大丈夫だ!
 早くその子犬を!」
 声を上げるシェリーに答えるホットスポット――彼の言葉にうなずき、シェリーは子犬を連れてその場を離れようとするが、
「おっと、そうはいかないぜ」
 その前に、新たな地球デストロンが立ちふさがる――上空の探索隊ではなく、スタースクリームからワイルダーが預かった隊のメンバーだ。
「セルフィ!」
「あの女はお前のアキレス腱らしいからな。足止めさせてもらうぜ!」
 ホットスポットに答え、ワイルダーはホットスポットへの攻撃を繰り返す。
「くっ………………!
 フォースチップ、イグニッション!」
 対して、ホットスポットは青色のフォースチップをイグニッション。背中のはしごが右肩にセットされ、
「ラダー、パニッシャー!」
 キャノン砲となったはしごからビームを放つが、ワイルダーはやすやすとかわし、さらにホットスポットへと攻撃をしかける!

「悪いな。お前を逃がすなってワイルダーの旦那に言われてんだ」
「ってなワケで、おとなしく捕まってもらうぜ」
 シェリーの行く手に立ちふさがり、地球デストロン達は口々にそう告げる。
「く………………っ!」
 背後ではホットスポットがワイルダーから攻撃を受け続けている――やはり自分を守るためにその場から動けずにいるようだ。
 なんとかこの場を離れなければならない。もっとも確実なのは瞬間移動テレポートでこの場から離脱すること――しかし、現状ではホットスポットは多勢に無勢だ。この場に残せば袋叩きは必定だ。
 逃げなければならない。だがただ逃げるワケにもいかない。一体どうすれば――
 打開策を見出せず、シェリーの頬を冷や汗が伝った、その時――彼女の耳にそれは聞こえてきた。
 パトカーのサイレンだ。
 ここはすでに住人の避難は完了したという扱いになっているはず――なぜこの場にパトカーが?
 シェリーと同様にサイレンを聞きつけた地球デストロン達にも動揺が走り――近くの大通りを大きくドリフトし、問題のパトカーが飛び出してくる!
「な、何だ、てめぇは!?」
 声を上げ、地球デストロンのひとりがライフルをかまえ――“パトカーが”答えた。
「お前らの、天敵さ!
 ストラトス、トランスフォーム!」
 咆哮と同時にパトカーは近くのガレキを踏み台に大きく跳躍。ロボットモードへとトランスフォームし、地球デストロン達のライフルを手にした拳銃で撃ち落とす!
「ストラトス!
 すまない、助かった!」
「おいおい、しっかりしてくれよ。
 チームリーダーのアンタがやられたらたまったもんじゃない」
 声を上げるホットスポットに答え、ストラトスと呼ばれたそのトランスフォーマーは警棒を抜き放ち、シェリーを囲んでいた地球デストロンを殴り倒す。
「フォースチップ、イグニッション!」
 さらに、ストラトスは間髪入れず背中のスロットに地球のフォースチップをイグニッション。背中に配置されたビークルモードの後輪部分が展開。頭上をまたぐ形で砲門となり、
「アラート、バズーカ!」
 放たれたミサイルが、間合いの外にいた地球デストロンを吹き飛ばす!
「くそっ、ストラトスまで出やがったか!」
 できれば援軍が来る前に片づけたかった――ストラトスの登場にワイルダーが舌打ちし――
「どっせぇいっ!」
 次の瞬間、真横から衝撃が襲ってきた。思い切り振られたクレーンアームが、ワイルダーを渾身の力で殴り飛ばす!
 その打撃の主は1台のレッカー車。もちろん――
「レッカーフック、トランスフォーム!」
 咆哮し、ロボット形態にトランスフォームしたそのレッカー車――レッカーフックは、着地と同時にワイルダーの引き連れていた別の地球デストロンにつかみかかると力任せに投げ飛ばし、
「フォースチップ、イグニッション!」
 クレーンに配置されたチップスロットにフォースチップをイグニッション、クレーンが伸び、巨大なキャノン砲となる。
「クレーン、キャノン!」
 咆哮と同時にレッカーフックが発砲し、さらに地球デストロン達の包囲陣形の一角が吹き飛ばされる。
「くっそぉ! やってくれたな!」
 そんな彼らに対し、立ち上がったワイルダーがうめくが、対するレッカーフックは口元に笑みを浮かべて告げた。
「悪いな。
 まだまだやるぞ」
「何っ!?」
「だが、その前に――」
 ワイルダーに答え、レッカーフックは軽く足元を蹴り――次の瞬間、彼らの周囲が陥没。レッカーフックだけでなく、ストラトス、そしてホットスポットやシェリー達もその中に消えていった。

「大丈夫か?」
「な、なんとか……」
 尋ねるホットスポットの言葉に、子犬を抱きかかえたシェリーは彼の手の中でそう答える。
「ここは……?」
 ともかく立ち上がり、シェリーが周囲を――自分達の降り立った地下空洞を見回してつぶやくと、
「突貫でオレが作った退避スペースさ」
 そう答えたのは、レッカーフックでもストラトスでもない新たな声だった。
 振り向いた先にあった――いや、“いた”のはドリル削岩車と救急車。今の声はドリル削岩車から放たれたものだ。
「あなた達も、トランスフォーマーなの?」
「そういうこと。
 スクリューモール、トランスフォーム!」
 シェリーに答え、ドリル削岩車――スクリューモールがロボットモードへとトランスフォームし、
「レッドクロス、トランスフォーム!」
 そのとなりで、救急車のレッドクロスも同様にロボットモードとなる。
「大丈夫ですか? 隊長」
「問題ない。心配をかけたな」
 尋ねるレッドクロスに答え、ホットスポットは一同を見回し、
「ストラトス、レッカーフック、スクリューモール、レッドクロス……
 “プロテクトボット”、全員集合だな」
「プロテクトボット……それがあなた達のチーム名?」
「あぁ、そうさ」
 尋ねるシェリーに答えたのはストラトスだった。
「オレはストラトス、よろしくな」
「あ、よろしく。
 セルフィ・アルバレット。シェリーでいいわ。
 あ、ホットスポットもね」
 名乗るストラトスにシェリーが答えると、
「では、シェリー。
 これから私の言うことをよく聞いてほしい」
 居住まいを正したホットスポットの言葉に、シェリーもまた表情を引き締めて彼と正面から向き合った。
「私がキミに対して正体を明かした理由は、先程話したね?」
「うん。
 『自分達だけじゃ手に負えないから』……だったよね?」
「そうだ。
 そして、それは文字通りの意味だ。レスキュー以外の場――すなわち、今回のようなモンスタートランスフォーマーとの戦いにおいて、我々プロテクトボットが全力を発揮するには、地球人の助けが必要なのだ」
「どういうこと?」
 ホットスポットの言葉にシェリーが聞き返すと、
「見つけたぜ!」
 そう告げながら、ワイルダーが天井の穴を伝って降下してきた。続いて、地球デストロン達も何体か降下してくる。
「コソコソ逃げ回りやがって! もう逃がしゃしねぇぞ!」
 ホットスポットを力いっぱい指さし、告げるワイルダーだが――
「スクリューモール、天井の強度は十分か?」
「もちろんだぜ。
 強度もちゃんと計算したし、高さだって問題ない」
「――って、聞けよ!」
 こちらを完全に無視して話すホットスポットとスクリューモールの態度に、ワイルダーは思わず声を荒らげる。
 だが――ホットスポットはそれすら無視し、シェリーへと向き直り、
「シェリー」
「な、何?」
 聞き返すシェリーに、ホットスポットは告げた。

 

「“我々に、合体命令を!”」

 

「合体、命令……!?」
 意外な言葉に聞き返すシェリーに、ホットスポットは告げた。
「我々プロテクトボットは、“コンビネーション・スパーク”の力によって合体することが可能だ。
 だが、その強大すぎる、危険な力を振るうにあたり、我々は自らに制約を設けた――人間のパートナーを持ち、そのパートナーから合体の許可を受けることが必要なんだ」
「それで、私を……」
 つぶやくシェリーに、ホットスポットは静かにうなずく。
「私は、ニューヨーク・レスキューの消防車としてキミ達のレスキューにずっと同行してきた。
 その中で、我々のパートナーとしてもっとも相応しい資質を持っていたのは――シェリー、キミだったんだ。
 命を重んじるだけではなく、命を脅かすものに対する、絶対的な闘志――それを持つキミこそ、我々の知る中でパートナーにもっともふさわしい人物だ。
 我々のパートナーとして、共に戦ってほしい。
 この星の多くの命を、守るために」
「………………うん」
 ホットスポットの言葉にうなずき、シェリーはワイルダーへと向き直った。
 周りでプロテクトボットの面々が意気込むのを気配で感じつつ――告げる。
「ホットスポット、ストラトス、レッカーフック、スクリューモール、レッドクロス……
 セルフィ・アルバレットの名において――あなた達の合体を、許可します!」
『了解!』

「プロテクトボット、スーパーモード!
 スクランブル、クロス!」
 ホットスポットの言葉と同時、プロテクトボット達は一斉に飛び立ち、合体体勢に入る。
 ビークルモードにトランスフォームし、四方に散る仲間達の中央に飛び込んだのはホットスポット――両足がたたまれ、両腕がボディに固定され、大腿部を含めたより巨大な胴体部となる。
 続いてストラトスとレッドクロスの車体後部が展開され、ホットスポットの両側に合体、両腕となる。
 レッカーフックとスクリューモールは後部で連結するようにホットスポットの大腿部に合体、それぞれの前部、ドリルや運転席が起き上がり両足となる。
 両腕にエネルギーが収束し拳が形成、本体内部から新たな頭部が迫り出し、合体を完了し新たな姿となったプロテクトボットが咆哮する。
「合体勇者――ガーディオン!」

「くそっ、合体しやがったか!」
 目の前で合体し、その巨体を現したガーディオンを前に、ワイルダーは歯噛みしてうめく。
「もう一度、封印させてもらう。
 覚悟するがいい、ワイルダー!」
「ほざくんじゃねぇ!」
 だが、だからと言って退くワケにはいかない。告げるガーディオンに言い返し、ワイルダーは配下の地球デストロン達をけしかけるが、
「合体戦士でもないのに――パワーで私に勝てると思うな!」
 そんな地球デストロンの一団を、ガーディオンは腕の一振りで振り払う!
「す、すごい……!」
「トランスフォーマー5人分のスパークだ。これで非力なら問題だろう?」
 つぶやくシェリーに答え、ガーディオンはワイルダーへと向き直り、
「シェリー! パートナー・イグニッションだ!」
「オッケー!」
 ガーディオンのその言葉にシェリーがうなずき、
『フォースチップ、イグニッション!』
 シェリーと共に咆哮、飛来した青色のフォースチップが背中のチップスロットに飛び込み、ホットスポットのはしごが右肩にセットされる。
『ガード、パニッシャー!』
 気合一閃、二人の放った閃光はワイルダーのすぐ脇を掠め、背後の岩壁を吹き飛ばす!
「今のは威嚇だ。
 素直に投降しないなら、次は当てるぞ!」
「く………………っ!」
 ガーディオンの言葉にうめき――ワイルダーはすぐに決断した。
「悪いが――お断りだ!」
 告げると同時、頭上の天井に向けて発砲。崩れ落ちるガレキに紛れて離脱していった。

「……逃がしたようだな」
 周囲一帯をスキャン、ワイルダーの離脱を確認し、ガーディオンは息をついてつぶやいた。
「大丈夫?」
「問題ない」
 尋ねるシェリーに答え、ガーディオンは彼女を手に乗せ、ボディ中央――ホットスポットのライドスペースに招き入れる。
「それに、これで終わりではない――こんなところで問題など抱えてはいられない。
 ワイルダーにも逃げられたし、他のモンスター達も捕らえなくては……」
「そうなんだ……
 それで、これからどうするの?」
「そうだな……」
 尋ねるシェリーの問いに、ガーディオンはしばし考え、
「とりあえず……ここから出ることから始めようか」

「………………何?」
 報告を受け、フレイムコンボイは眉をひそめた。
「……どういうことだ?」
「わかりません」
 尋ねるフレイムコンボイだが――ダイノシャウトもまた事態を呑み込みきれていなかったようだ。肩をすくめて答える。
「いきなりやってきて、『大変だ、フレイムコンボイ様に会わせろ』と……」
「ふむ……」
 その説明に、フレイムコンボイはしばし考え――
「よし、通せ」
「はっ」
 答え、ダイノシャウトが奥に消えてしばし――彼はフレイムコンボイの前へと通された。
「さて、事情を説明してもらおうか」
「へ、へぇ……」
 尋ねるフレイムコンボイのその言葉に、彼は――ランドバレットは一礼して説明を始めた。


 

(初版:2006/08/13)