漆黒の宇宙を、それはかなりの速度で飛翔していた。
 隕石だ。
 そしてその上に――ランドバレットとフレイムコンボイの姿があった。

「あそこです!」
 ランドバレットの言葉に、フレイムコンボイは大きく身をそらし――
「デスフレイム!」
 両肩からデスフレイムを放ち、隕石の速度を落とし、マスターメガトロン達の閉じ込められた封印球の前で停止した。
「……スタースクリームに、裏切られたってか」
「まぁな」
 尋ねるフレイムコンボイにマスターメガトロンがうなずくと、フレイムコンボイはフレイムアックスをかまえ、
「どぉうりゃあっ!」
 渾身の力で叩きつけるが、封印球はビクともしない。
「ダメか……
 まぁ、この程度で壊れるようなワナだったら、お前さんもとっくに出ているか」
「しかし、スタースクリームとて永久にオレを閉じ込めておけるとは思っていまい。
 時間稼ぎのつもりだろうが、それならこちらも気長にやるさ」
 フレイムコンボイのつぶやきにそう答え――マスターメガトロンは雷撃をまとった拳を打ち放った。

 一方、舞台は海鳴に戻り――
「出現する座標を間違ったようだな……」
 展開したゲートをくぐり、大地に降り立ち――彼はそうつぶやいた。
「まさか、現地人の住宅街に出てしまうとはな……」
 住人達は皆避難しているようだが――スタースクリームのチップスクェア獲得により、すでに地球デストロンは撤退を始めている。避難勧告が解除されるのも時間の問題だろう。
「住人達が戻ってくる前に、消えた方がよさそうだな……」
 彼がつぶやいた、その時――
「あれ………………?」
「――――――っ!?」
 皆避難したのではなかったのか――突然聞こえた声に、彼は驚いて足元を見下ろし――
「トランス、フォーマー……!?」
「何………………?
 地球人が、なぜトランスフォーマーを知っている……?」
 庭に出てきたそのままの姿勢で、目を丸くしてつぶやく車椅子の少女――はやての言葉に、彼は――ビッグコンボイは眉をひそめて聞き返した。

 

 


 

第36話
「4大大帝、地球集結なの!」

 


 

 

「ち、知佳ちゃん……!?」
 現れた人物のあまりの意外性に、耕介は驚きのあまり、その名を呼ぶことしか出来ないでいた。
 リンディと共に自分達の前に姿を現したのは、真雪の妹である仁村知佳――耕介とは彼がさざなみ寮の管理人を引き受けた時からの付き合いである。
 それはいい。
 なぜリンディと共にいる?
 いや、リンディ達は“闇の書”事件の捜査本部をさざなみ寮においていた。そこに知佳が帰郷してきたとなれば出くわさない方がおかしい。
 だが――なぜここに現れる?
 状況が呑み込めず、目を白黒させる耕介だが――
「知佳!」
 そんな彼の脇から、真雪が声を上げた。そのまま知佳へと駆け寄り――
「お前いつ日本に!?
 休暇とったならちゃんと連絡しろよな、もう!」
「って、それよりどうしてここに来たのかにツッコみましょうよ!」
 知佳に告げる真雪の言葉に、耕介は思わずツッコみを入れる。
 だが――それに対し、真雪はあっけらかんと答えた。
「ん? そりゃ、トランスフォーマーのこと知ってたからに決まってんだろ?」
「………………はい?」
 思わず間の抜けた声を上げる耕介だが――
「本当ですよ、耕介さん」
 そう答えたのはリンディだった。
「彼女、どういうワケか話してもいないのにトランスフォーマーのことを知ってて……
 それで、真雪さんなら詳しい事情を知ってるかも、と思って……」
「ここに連れてきたワケですか……」
 リンディの言葉に納得し、耕介は視線を知佳へと戻した。
 そんな耕介に対し、知佳は笑って肩をすくめ、
「『説明してくれ』って顔だね、お兄ちゃん……
 心配しなくても、ちゃんと話すから――そのためにリンディさんに連れてきてもらったんだし」
 そう前置きし、知佳は話し始めた。

 それは10年くらい前――真雪と川に釣りに行った時のことだった。
 河原で遊んでいた知佳はうっかり足を滑らせて川の中へと転落してしまった。
 川の流れは速く、知佳の能力も安定しておらず、ただなす術もなく流されるしかなかった。
 だが――力尽き、水中に沈んだ知佳は、気がつくと1機のヘリコプターに救助されていた。
 文字通り九死に一生の出来事――しかし、知佳は見ていた。
 水中に沈む瞬間――河原に立っていた何者かがヘリコプターへとその姿を変えたのを。

「そんなことがあったのか……」
「うん……
 お兄ちゃんになら話してもいいかな、って思ってはいたんだけど……話題にできるようなきっかけもなかったし……」
 納得し、ため息をつく耕介に知佳は肩をすくめてそう答える。
 と――
「あー、ちょっといいかな?」
 手を挙げ、口を開いたのは美沙斗だった。
「その話だと、知佳ちゃんを助けたトランスフォーマーというのは、ヘリコプターにトランスフォームしたんだよね?
 ということは、ひょっとして……」
 その言葉に、一同は振り向き――注目を受けたのはライブコンボイだった。
 一同の言いたいことはわかる。ライブコンボイはしばし記憶を探り――
「……そうか……キミがあの時の……
 見違えたよ」
「あの時は助かりました。ありがとうございます。
 おかげで、今でもこうして元気です!」
「いいよ、そんなの」
 謝辞を述べる知佳に笑顔で答えるライブコンボイ――彼らのやり取りを前に、ギャラクシーコンボイはうなずき、なのはに告げた。
「なのは。
 やはり、私は正式にこれまでの考え方を改めなければならないようだ」
「え………………?」
「私は最初、その星の住人と接触してはいけないと、みんなに言ってきた……
 しかし、スピーディアでも、アニマトロスでも、その星の人々の協力があってこそプラネットフォースを手に入れることができた。
 だったらそうすべきだし、実際、キミ達には何度となく助けられてきた」
 なのはにそう答えると、ギャラクシーコンボイは一同を見回し、
「すでに我々は地球人に気づかれることなく社会に浸透してしまっている。
 混乱を避ける、という意味ではやはり地球の行政部との接触はできないが……可能な限り、キミ達の協力を仰ぎたい。
 キミ達の人脈で、力になってくれそうな人達を集めてほしい」
「任せてくれ!」
「頼れる知り合いならたくさんいるからね」
「それに、オレ達自身にも、まだできることは多いだろうしな」
 耕介と志貴の言葉に恭也がうなずくと、
「じゃ、わたし達もこうしちゃいられないわよ!」
 そう言って年少組を鼓舞するのはアリサである。
「アースラに戻って、ネットワークでスタースクリームの居場所を探さないと!」
「うん!」
 アリサの言葉になのはがうなずくと、
〈それなら任せてください!〉
 通信モニターを開き、告げるのは琥珀だ。
〈ちょうど、そっちのアメリカ軍が追ってた追跡データを入手できたんです。
 それによると……〉
 そして――琥珀は告げた。
〈南太平洋です!〉

「よっ、と……」
 岩陰から顔を出し、そのトランスフォーマーは周囲を見回した。
 背中に大型のバックユニットを背負った、“女性型の”トランスフォーマーである。
 と――そんな彼女の視界にそれが飛び込んできた。
 アメリカ海軍の警備艇である。
「……あれにしよっと♪」
 決断はすぐだった――彼女は目からスキャニングレーザーを放ち、警備艇のデータをスキャンし、
「クロミア、トランスフォーム!」
 バックユニットを展開、自分の身体を包み込むようにして警備艇へとトランスフォームする。
「青い空、青い海!
 気持ちいい♪」
 天気はすがすがしいほどの快晴――上機嫌でクロミアと名乗ったトランスフォーマーは海上を駆けていく。
 と――そんな彼女の気分を害するものが現れた。上空に飛来した何者かの影が、クロミアの周辺をすっぽりと覆い隠してしまう。
「何………………?」
 怪訝に思い、クロミアが声を上げると、影の主――先行調査に赴いていたドレッドロックが尋ねた。
「北極に封印されていたヤツだな!?」
「だったら何よ!?」
「な――――――っ!?」
 ムキになって言い返すクロミアの声に、ドレッドロックは思わず驚きの声を上げていた。
「女…………!?」
 だが、ドレッドロックが驚くのもムリはない。トランスフォーマーにも男女の別はあるが、人間と同様に女性型のボディはお世辞にも戦闘向きとは言いがたいものがある。
 したがって、セイバートロン星でも従軍している女性トランスフォーマーの比率は極めて少なかった――それがこの地球で封印されるほど暴れ回っていた女性トランスフォーマーに出会うことになろうとは――
 しかし、そんなドレッドロックの困惑にかまわず、クロミアは彼に言い放つ。
「そんなことより、私の青空を返してよ!」
「いてっ! いててっ!」
 苦情と同時に機銃での手痛いご挨拶――たまらずドレッドロックは上空へと逃れる。
「ったく、とんだじゃじゃ馬だ!」
「失礼ね!」
 うめくドレッドロックに言い返し、クロミアは船体上部のランチャーを彼に向け、
「マドモアゼル・クロミアとお呼びなさい!」
 叫んで、放たれたミサイルがドレッドロックへと襲いかかる!
「く………………っ!」
 なんとかかわそうとするドレッドロックだが、元々軍用機とはいえ輸送機にトランスフォームするドレッドロックにかわしきれるものではなかった。最後の1発を翼に受け、墜落してしまう。
「ごめんあそばせ♪ オーッホッホッホッ!」
 高笑いしながらクロミアはそのまま去っていき――海面に顔を出したドレッドロックはアースラへと通信した。
「ドレッドロックからアースラ――エイミィ!
 見失った……追尾できるか?」
〈………………ダメ。
 カモフラージュシールドの中に入られちゃったわ〉
「そうか……」
〈それより、ドレッドロックも戻って。
 そろそろ、マキシマスとのランデブーの時間よ〉
「了解だ」

 時空間に待機しているアースラ――艦内の展望室には、ゆらめくように流れる時空間の光の流れを見つめる恭也とシグナムの姿があった。
「正直、キミ達がなのは達を傷つけたことを許したワケじゃない。
 だが、キミ達の助力がなければこの局面を乗り切れないことは理解している」
「それはこちらも同じだ。
 そちらがプラネットフォースを持っていたさっきまでなら、この場を足がかりにそれを奪うのがもっとも我らの目的に近かった。
 だが――それはこの事態に対するための力を失うことを意味する。プラネットフォースを奪うのはまたの機会だ」
 告げる恭也に対し、シグナムは迷いのない口調でそう答える。
 そのまま、しばし互いに沈黙したまま時間が流れ――
「……それからもうひとつ」
 口を開いたのはシグナムだった。
「お前の剣、なかなかのものだ。
 プラネットフォースも“闇の書”も関係なく、一度手合わせ願いたい」
「喜んで」

〈そうか……あの時の体験がきっかけで、国際救助隊に……〉
「はい。
 他にも、いろんなきっかけはあったんですけど……やっぱり、あの時のことが一番の原因だったと思います」
 アースラのレストルーム――体格の都合上同席できず、通信モニター上の会話となっているが、ライブコンボイの言葉に知佳は笑顔でうなずいた。
 一方、先程から会話に入っていけないでいる真一郎は複雑な表情だ。コーヒーを飲みながらポツリとつぶやく。
「けど、まさかライブコンボイがオレよりも前に知佳ちゃんと会ってたなんてね……」
〈人の縁なんて、どこでつながってるものかわからないものだよ、真一郎〉
「それにしたって狭すぎだろ……」
 答えるライブコンボイに真一郎が答え、まったくもって同感である知佳もまた苦笑し――
〈艦内の全クルーに通達。
 マキシマスとのランデブーに入ります。所定の持ち場でドッキングに備えてください。繰り返します――〉
 艦内全域に、マキシマスが到着したことを知らせるエイミィのアナウンスが流れた。

「お疲れさま、シグナム」
「そっちも大変だったようだな、シャマル」
 マキシマスからアースラに移り、告げるシャマルに対し、シグナムもまた苦笑して告げる。
「ともかくこれで、こちらが今集められる戦力はそろったと思っていい」
「管理局の方は?」
「今リンディ提督が折衝している。
 少なくとも我らの立場は保障してくれるそうだが――武装局員の増員は期待できないだろう。
 もっとも……増員が来たところで、トランスフォーマー相手ではあちらでいうAAクラス以上でなければ歯が立つまい」
「そうね……
 犠牲が増えるよりは、今の戦力で戦う方がまだいいかも……」
 シグナムの言葉にシャマルがつぶやくと、
「シグナムさん、シャマルさんは到着したんですか?」
「ならちょうどいい。
 今後のことを話し合いたい」
 言って、志貴が帰艦したドレッドロックと共にその場に現れ――シャマルの顔色が変わった。
「あ、あなた……!?」
 覚えがある――確か、はやてが図書館で出会ったというあの少年だ。
 一方、志貴はシャマルの驚きの意味を量りかねている。同時にかつてシャマルの映像を見た時に感じた既視感がよみがえり、しばし考え込み――
「あぁっ!」
 思い出した。思わず大声を上げる。
「そうだ! 確かはや――」
 しかし、そこから先を告げることは出来なかった。シャマルがものすごい勢いで志貴の首に腕をからめ、これまたすさまじい力で連れ去ったからだ。
「し、シャマル!?」
「ちょっと二人で話して来まぁぁぁぁぁす!」
 シグナムに答え、走り去っていくシャマル――その後ろ姿を見送り、シグナムはドレッドロックを見上げ、尋ねた。
「……遠野、気絶してなかったか?」
見事なラリアットだったからな……」

「な、何なんですか……?」
 シャマルに痛烈な一撃を受けたのどをさすり、尋ねる志貴だったが――
「お願いです!」
 志貴の反論すら許さず、シャマルは彼に対して深々と頭を下げた。
「はやてちゃんと私達のことは、どうか内密にしてください!」
「え?
 そ、それは、どういう――」
 シャマルに聞き返し――志貴は気づいた。
「まさか……“闇の書”の主って……!?」
 つぶやく志貴だったが――そんな彼の両肩にすがりつき、シャマルは告げた。
「はやてちゃんは……蒐集のことを知らないんです」
「え………………?」
「蒐集のことは、はやてちゃんは何も知りません……私達が、勝手にやってるんです。
 はやてちゃんは悪くない……だから……!」
 必死に懇願するシャマルだが――志貴は告げた。
「話しますよ、はやてちゃんのこと」
「志貴さん!」
 声を上げかけたシャマルを軽く手を挙げて制し、志貴は告げた。
「要するに……はやてちゃんが“闇の書”の主だってバレなきゃいいんでしょう?」
「え………………?」
「たぶん、はやてちゃんの存在を隠し続けるのは難しいと思うんです。秋葉とか、うちの連中とももう会っちゃってますし。
 だったら、ヘタに隠すより、こっちから紹介しちゃうんです。“闇の書”のことだけ話さずに。
 ごまかすのは“闇の書”にからむ部分だけ、後は本当のことを話せばいい――真実の中に隠したウソって、意外とバレないものなんですよ」
 シャマルに答え、志貴は「秋葉にもよく通じる手ですし」と肩をすくめてみせる。
「それに……いい子じゃないですか、はやてちゃん。
 なのはちゃん達と仲良くなれば、きっといざって時は力になってくれますよ、みんな」
 言って、志貴はシャマルに向けて苦笑し、
「なんとなく、わかります――シャマルさん達は悪い人じゃない。あなた達が蒐集をしてるのは、何か……そうするしかない、特別な事情みたいなものがあるんじゃないかって……
 誰にも言わないのも、蒐集が本当は悪いことだってわかってるから……その罪にはやてちゃんや、他のみんなを巻き込みたくないからじゃないんですか?」
「……志貴さんには、かないませんね……」
 志貴の言葉につぶやくと、シャマルは姿勢を正し、志貴に対して告げる。
「確かに……私達の蒐集には理由があります。
 けれど――その理由は、まだ話すことはできません。志貴さんの言うとおり、あなた達を巻き込むワケにはいきませんから」
「はい…………」
「いずれその時が来れば、きっと話します。
 だから――」
「わかってます」
 シャマルに答え、志貴は彼女に手を差し出した。
「その時は……きっと力になります」
「お願いします」
 志貴の言葉に一礼し、シャマルは彼と握手を交わした。

 その頃、カモフラージュシールドの中に逃れたクロミアは、その内部に位置する火山島へと戻ってきた。
 巧妙に隠された洞窟の中に足を踏み入れ、奥へと進み――そこには、モンスタートランスフォーマー達が一堂に会する巨大な地下空洞が広がっていた。
「よかった……間に合ったみたいね」
 つぶやき、クロミアが見つめるのは空洞の中央――エネルギー球に閉じ込めたフィアッセと、それを抱えるノイズメイズを従えたスタースクリームの姿だった。

「私の、未来……!」
 ついにこの時が来た――つぶやき、スタースクリームはライブコンボイから奪った地球のプラネットフォースを頭上に掲げた。
 配下に加わったモンスタートランスフォーマー達が歓声を上げる中、ゆっくりとチップスクェアへと向き直る。
「プライマスよ……貴様のスパークの力、見せてもらうぞ」
 言いながら、スタースクリームはプラネットフォースをチップスクェアに差し込み――チップスクェアが反応した。流し込まれた“力”に反応し、天空に向けて巨大な光の柱を作り出す!

 プラネットフォースの発動による影響が及んだのは、地球だけではなかった――アースラやマキシマスの停泊している時空間にも、その衝撃は届いていた。
「な、何が起きたの、バックパック!?」
「そ、そんなのボクにも――ぅわぁっ!」
 アリサの問いに答えようとするバックパックだが、彼の手元の端末も火を吹いてしまいそれどころではない。
 だが――そんな彼に代わって答えた者がいた。
「発動したのだ……チップスクェアが」
 ベクタープライムである。

 一方、チップスクェアから放たれた光は、スタースクリーム達のカモフラージュシールドを突き抜け、天空へと吸い込まれ――そこにスペースブリッジを展開した。
 しかし――そのサイズが半端ではない。間違いなく数百m級の大きさがある。
 そして、その向こうに見えるのは、周囲のものを次々に呑み込んでいる無限の暗黒――

 

グランドブラックホールだった。

 

「あれが……グランドブラックホール……!?」
「そうだ」
 その様子は、アースラのモニターにも映し出されていた。尋ねるなのはの問いに、ギャラクシーコンボイが答える。
「どうしよう……
 あんなのが空に見えたら、また地球は大騒ぎになっちゃうよ……」
 だが、だからと言ってどうすることもできない――悔しさをかみしめ、フェイトがつぶやくと、
〈みんな、大変!〉
 艦内放送でエイミィの声が響いた。
〈今、本局から連絡があったんだけど……
 ミッドチルダの行政府からの連絡で、向こうからもスペースブリッジとグランドブラックホールが観測されたって!〉

「な、何が起きているの……!?」
 つぶやくクロミアの前で、チップスクェアから流れ出る“力”はスタースクリームの中へと吸い込まれていく。
 スタースクリームがチップスクェアの――プラネットフォースを吸収しているのだ。
「感じる……!
 感じるぞ……プライマスのスパークを……!」
「だ、大丈夫なの……!?」
「無論だ。
 貴様に心配してもらう要素などない」
 ノイズメイズの手の中で尋ねるフィアッセに答えると、スタースクリームは天を仰いでつぶやいた。
「見ていろ……
 この力で、私は……!」

「スペースブリッジが、レンズの役目を果たしているんだ。
 そのために、セイバートロン星近辺の宙域にあるグランドブラックホールの姿を地球や、新たにスペースブリッジがつながったミッドチルダからも観測できた――おそらく、アニマトロスやスピーディアでも観測しているはずだ」
 状況を分析し、ファストエイドが一同に説明する。
「じゃあ、グランドブラックホールが地球の近くにまで広がったワケじゃないんだ……」
「大丈夫ですよ、美緒ちゃん。
 ブラックホールは縮小するものなの。広がることはないわ」
 安堵のため息をつき、つぶやく美緒にシャマルが言うと、
「ただのブラックホールならね」
 そんな彼女に告げたのはハイブロウだ――そして、となりでロングラックが付け加える。
「けど……あれは違う。
 ただのブラックホールなら、ボク達の科学力で消滅させることだってできたんです」
「そんなことができるの!?」
「簡単さ。
 ……こっちも修理完了、と♪」
 声を上げるアイリーンに答え、バックパックは修理の終わったコンソールのふたを閉じる。
 そして再びシステムを立ち上げ――
「……あれ?」
 それに気づいた。
「エイミィ、この信号……」
〈あぁ、それ?
 さっきから観測してて、こっちでも解析してるんだけど……〉
「どうした?」
「あ、いえ……」
 尋ねるスターセイバーの問いに、バックパックはモニターへとそのデータを表示した。
「おそらく、スペースブリッジのようなものを介していると思われますが……グランドブラックホールの中から、何かが発せられているんです」
 そして、バックパックはマキシマスへと通信し、
「フォートレス。あなたも科学者でしたね?
 このデータ……どう見ますか?」
 その問いに、モニターの向こうでフォートレスはしばし考え、
〈……以前、キミ達がチップスクェアにスピーディアのプラネットフォースを差し込んだ時、全宇宙に向けて放たれたものがあっただろう?〉
「あったな」
「結局、何かはわからずじまいだったんだよな?」
 答えるニトロコンボイと耕介にうなずき、フォートレスは告げた。
〈あの時の波動と、波形パターンが酷似している。
 あの信号が、帰ってきたものだということは考えられないだろうか?〉
「グランドブラックホールの中からか!?」
〈可能性は……なくはない。
 先程もそちらで話題になったばかりではないか。『グランドブラックホールはただのブラックホールではない』と〉
 声を上げるオートボルトにフォートレスが答えると、
「けど、この波形……」
 そんな中、忍は自分の端末に表示されたデータに目を通してつぶやいた。
「……配列に規則性がある。メッセージかも。
 すずか、それにみんなも手伝って。解析してみよう」
 忍のその言葉に、一同はそろってうなずいた。

 その頃――
「はぁぁぁぁぁっ!」
「ブルァアァァァァァッ!」
 マスターメガトロンとフレイムコンボイの咆哮が、そして拳が交錯し――内と外、同時に衝撃を受けた封印球は粉々に粉砕される!
「大丈夫か、みんな!」
「おぉっ! 助かったぜ!」
 尋ねるランドバレットにガスケットが飛びつくのを見ながら、フレイムコンボイはマスターメガトロンへと視線を向け、尋ねた。
「これから、裏切り者のスタースクリームに報復、か?」
「報復もだが……本物のマップを取り戻さなくてはな」
「プラネットフォースを、手に入れるんだろう?」
「まぁな」
 マスターメガトロンがうなずき――フレイムコンボイは笑みを浮かべて告げた。
「付き合うぜ」
「お前も欲しくなったのか?」
「そんなんじゃない。
 ライガーコンボイに負けたのに、アニマトロスのリーダーを続けるのが、自分でも納得できなくてな。
 スカイリンクスもサイバトロンに同行したと聞いているし、いっそ外の世界にでも出てみようかと、思ってな」
 そう告げるフレイムコンボイだったが――マスターメガトロンはあっさりと聞き返した。
「本音は戦う相手がいなくなって寂しいだけなんじゃないのか?」
「バレたか。はっはっはっ!」
 最初から隠すつもりもなかったようだ――笑い声を上げるフレイムコンボイにうなずくと、マスターメガトロンは振り向き、
「よし、ついて来い」
 言うと同時――目の前にワープゲートを開いた。
 目的地は――
「地球に向かうぞ!」
『おぅっ!』

「解析完了!
 スクリーンに表示するわよ!」
 言って、忍はアースラの、そしてマキシマスのモニターに解析の終わったメッセージデータを表示した。
 信号の羅列が徐々に形を変え、その中から浮かび上がってきたのは――
「あれは……セイバートロン星!?」
「あれが!?」
「あぁ。間違いない」
 尋ねるフェイトに、ギャラクシーコンボイはうなずいてそう答える。
「機械みたいな星だな」
「まぁ、トランスフォーマーの故郷だしね……」
 率直過ぎる感想をつぶやくヴィータにクロノが答える間にも、メッセージは続く。
 映像にはチップスクェアが、そして5つのプラネットフォースが映し出され、それらはひとつとなり、セイバートロン星に示された座標へと消えていった。
「……これで終わりよ」
「どういう意味だ?」
「ぜんぜんわかんねぇよ」
 忍に尋ねるエクシリオンとロディマスブラーだったが、
「単純」
 そう答えたのはアトラスだった。となりでジンライもうんうんとうなずいている。
 だが、エクシリオンとロディマスブラーはやはり理解が追いつかず――そんな二人にスターセイバーが告げた。
「チップスクェアとプラネットフォースがセイバートロン星、それもメッセージにあった座標にそろった時、何かが起きるということだ」
「あ、なるほど……」
 その言葉にようやくエクシリオンが納得すると、
「はーい、しつもーん」
 手を挙げ、舞が一同に尋ねた。
「それはいいんだけど……そもそもこのメッセージって、誰からのメッセージなの?」
「グランドブラックホールの中から放たれた……そこから考えれば、わかるさ」
 答えるのはジンライ――だがその謎めいたヒントに、なのは達は思わず顔を見合わせる。
「グランドブラックホールの中にあるもの、だよね……」
「けど、セイバートロン星の人達はみんな地球に逃げてきてるし……」
「ってことは、グランドブラックホールの中に残ってるのは……」
 なのは、フェイト、そしてヴィータが順につぶやき――
「……せいばーとろんせい……」
『――――――っ!?』
 ぽつりとつぶやいた久遠の言葉に、一同は思わず彼女へと視線を向ける。
 だが――確かに言われてみればそうだ。並みの惑星ならばグランドブラックホールの超重力に負けて崩壊してしまう。あの中でもその超重力に耐えられる存在があるとすれば、マシーン惑星であるセイバートロン星以外には考えられない。
「セイバートロン星そのものが、我々にメッセージを……」
「住人であるボクらが逃げてしまった後でも、シールドシステムでずっと耐えていたんですね……」
 ガードシェルとロングラックがつぶやくと、エクシリオンがギャラクシーコンボイに詰め寄り、
「総司令官! すぐにセイバートロン星に戻りましょう!」
「だが、チップスクェアもプラネットフォースも、スタースクリームの手にある」
 ギャラクシーコンボイがそう答えた、その時――
「た、大変だ!」
 突然、バックパックが声を上げた。
「どうしたの? バックパック」
 尋ねるアリサに――バックパックは答えた。
「ワープゲートの予兆を確認!
 マスターメガトロンです」
「えぇっ!?」
 その言葉になのはが声を上げ――
「それだけじゃありません!」
 さらに、ハイブロウもまた声を上げた。
「アニマトロスからのワープゲートの予兆を確認!
 エネルギー波形――スカージ、“並びにオーバーライド”のデータと一致!」
『えぇぇぇぇぇっ!?』

「奇しくも、どちらのゲートも同じ飛騨山中か……」
「いくら地球人の軍事力が脅威でなくても、出現したそばから襲撃されたくはなかろう」
「どっちも人目を避けた結果、ゲートの開放位置が重なった、ってことか……」
 飛騨山中上空に展開された二つのゲート――その様子を格納庫に設置されたモニターで確認し、ギャラクシーコンボイ、スターセイバー、ジンライが順につぶやく。
「スタースクリーム達と、ハデにドンパチやらかすつもりか?」
「そんなことになれば、地上に甚大な被害が出るぞ」
「極めて深刻」
 ライガージャックとファングウルフの言葉にアトラスがつぶやくと、
「移民トランスフォーマーに緊急連絡! 周辺の地球人を避難させてくれ!」
 さすがというか何と言うか、すぐに動いたのはドレッドロックだった。ハイブロウに指示を下し、地球人を避難させてもらう。
「バックパック、二つのゲートの中間地点を中心にカモフラージュシールドを張ってくれ。
 マスターメガトロンをその中で迎撃する!」
「了解!」
 バックパックがうなずくのを確認し、ギャラクシーコンボイは一同を見回し――スターセイバーと視線を交わすと二人で告げた。
『総員、出動!』

「………………む?」
 ワープゲートを抜けて大地に降り立ち――マスターメガトロンは周囲を見回した。
 確かに人気のないところを選んでワープしたが――いくらなんでも人気がなさ過ぎる。
「どういうことだ……?」
 マスターメガトロンがつぶやくと、
「ほぉ……
 誰かと思えばマスターメガトロンか」
「久しぶりだな! お前ら!」
 その言葉に振り向くと、そこには見たことのないトランスフォーマーが2体。
 だが――その背後に視線を向けたマスターメガトロンは眉をひそめた。
 背後に控えているのはスタントロンのメナゾール、そしてバンディットロンのウィアードウルフ、スカル、ワイプの3名だ。ということは――
「お前達――オーバーライドと、スカージか!?」
「その通り!
 だが、もう我々はオーバーライドとスカージなどという名前ではない!」
 フレイムコンボイの言葉にそう答えると、オーバーライドが姿を変えたそのトランスフォーマーはスカージだったトランスフォーマーと共に名乗りを上げた。
「我が名は爆走大帝、オーバーロード!」
「暴虐大帝、ギガストーム様だぁっ!」

「フンッ! 転生したというワケか……」
「そういうことだ!
 フレイムコンボイともども、貴様らもブッつぶしてやる!」
 マスターメガトロンの言葉にギガストームが言い返すと、
「………………?
 ギガストームの旦那――どうやら相手が増えそうだぜ」
 気づいたメナゾールが告げると、上空に新たなゲートが開き――その中からギャラクシーコンボイ達やなのは達、そしてスターセイバー達ヴォルケンリッターが姿を現した。
「……そうか。
 この人気のなさはそういうことか……」
 おそらく、自分達が現れるのに気づいて人間達を避難させていたのだろう――つぶやくマスターメガトロン達の目の前で、ギャラクシーコンボイ達はロボットモードとなって着地。すでにバリアジャケットや騎士服を装着しているなのは達、シグナム達と共に彼らと対峙する。
「久しぶりだな、ギャラクシーコンボイ!」
「フレイムコンボイさん!?」
「マスターメガトロンだけかと思ったら、お前までもが一緒とはな!」
 フレイムコンボイの言葉になのはとギャラクシーコンボイが声を上げると、
「――――――!?
 マスターメガトロン様、アレ!」
「む………………?」
 いち早く気づいたガスケットの言葉にマスターメガトロンは空を見上げ――上空に見えるスペースブリッジ、その向こうに見えるグランドブラックホールに気づいた。
「宇宙の破滅は刻一刻と迫っているのだ!
 プラネットフォースを使って、なんとか止めねば!」
「お前達の相手をしてるヒマなどない! すぐに地球から引き上げろ!」
「フンッ、こっちもお前達の相手をしているヒマなどないわ!」
 ベクタープライムとスターセイバーの言葉にマスターメガトロンが答え――気づいたアトラスがつぶやいた。
「……スタースクリーム」
「そのとおり。
 オレには宇宙の破滅など興味はない。やりたいようにやらせてもらうだけだ。
 お前達はそっちのバカ二人と遊んでいろ!」
「ちょっと待てコラぁっ!」
「オレ様達を、よりにもよってバカ扱いか!?」
 マスターメガトロンの言葉にオーバーライドとギガストームが言い返すが、マスターメガトロンはかまわずワープゲートを展開する。
 スタースクリームの元へと再度ワープするつもりなのだろうが――
「そうはさせるか!
 ジンライ、スーパーモード! トランスフォーム!」
 そもそもあの二人を鉢合わせさせないために迎撃に出たのだ。ワープなどさせるものか――ジンライはすぐさまスーパーモード、スーパージンライへとトランスフォームし、
『フォースチップ、イグニッション!
 マックス、バーニング!』

 ヴィータと二人でフォースチップをイグニッション。マックスバーニングでワープゲートを吹き飛ばす!
「クッ、ジャマをするな!」
 咆哮し、スーパージンライへと突っ込むマスターメガトロンだが――
「そうは――」
「させない!」
 スーパーモードのギャラクシーコンボイとなのはがその前に立ちふさがった。ギャラクシーコンボイがマスターメガトロンの拳を受け止め、
《ナビゲートはお任せ!》
「ブリッツ、シューター!」
 プリムラとなのはが、ブリッツシューターを降り注がせる!
「いいぞ、いいぞ!
 ふははははっ!」
 激しく激突する両雄の姿に、フレイムコンボイは楽しそうにフレイムアックスを振り上げ、
「まずは、お前だぁっ!」
「なんの!」
 振り下ろされた一撃を、スーパージンライは白刃取りで受け止め、
「いっけぇっ!」
「ファルコンランサー!」
 そこにヴィータとフェイトの魔力弾が降り注ぐ!
 さらにライガージャックとファングウルフが襲いかかるが、フレイムコンボイはそれを弾き飛ばし、再びフェイトへと向き直る。
「バルディッシュ!」
〈Ax form!〉
 対して、フェイトの言葉にバルディッシュは自身の先端に斧の形をした光の刃を生み出し、
「はぁぁぁぁぁっ!」
「ブルァアァァァァァッ!」
 フェイトとフレイムコンボイ――両者の刃がぶつかり合う。
「フレイムコンボイ――どうしてまたデストロンに!?」
「お前達と――戦うためだぁっ!」
 フェイトに言い返し――フレイムコンボイは力ずくでフェイトを弾き飛ばす!

「待て待て、待てぇっ!」
「オレ達を無視して、話を進めないでもらいたいな!」
 戦いが始まり、黙っていなかったのがギガストームとオーバーロードだった。口々に言って戦場へと飛び込んでいくが、
「ここから先は、通さない!」
「通行禁止!」
 その前に立ちふさがったのはスターセイバーとダイアトラスだ。それぞれのパートナーと共にギガストーム達と対峙する。
「スカージ――いや、ギガストーム!
 なぜプラネットフォースを狙う!」
「知れたこと……!」
 スターセイバーに言い返し、ギガストームはスターセイバーやシグナムと対峙し、告げる。
 だが――その言葉はシグナムにとってもスターセイバーにとっても、まさに予想外といえるものだった。
「我が手でグランドブラックホールを消滅させ、宇宙を救うためだ!」
「何………………っ!?
 ならばなぜ、サイバトロンと敵対する!? 目的は同じだろう!?」
 ギガストームのその宣言に、思わず声を上げるシグナム。
 だが、彼女の驚愕ももっともだ。グランドブラックホールを消滅させて宇宙を救う――それは紛れもなく、なのは達やサイバトロンの悲願だ。同じ目的を持ちながら、なぜ敵対するのか――
 しかし、そんな彼女の疑問など意にも介さず、ギガストームはあっさりと答えた。
「今オレ様が言ったのを聞いてなかったのか?
 オレは――『我が手で』と言ったんだぞ」
「………………?」
 なおも意図が読めないシグナムに対し、ギガストームは「まだわからないのか」とムキになって告げる。
「グランドブラックホールの脅威から全宇宙を救う――成し遂げれば間違いなく全宇宙に名を轟かせる大手柄だろうが!
 英雄になるのはオレ様だ! サイバトロンなんて仲良し軍団に手柄横取りされてたまるかぁっ!」
「………………それだけ?」
「十分すぎる理由だろうが!
 ギガストーム、ビーストモード!」
 思わず尋ねるシグナムだが、ギガストームは迷わず断言し、ビーストモードに――背中に翼を、両肩に巨大なアーマーをそなえたドラゴン形態へとトランスフォームする。
「油断するな、シグナム!」
 一方でシグナムを一喝し、スターセイバーはスターブレードをかまえ、
「理由はどうあれ――本気で来るぞ!」
 告げると同時――ギガストームがスターセイバーに襲いかかる!

「となれば……貴様の相手はお前達か」
「当然の展開」
「ここから先に、行かせるワケにはいかん!」
 オーバーロードの言葉に答え、ダイアトラスとザフィーラが彼に向けてかまえる。
「ひとつ聞かせてもらおうか、オーバーロード。
 ギガストームの目的は聞かせてもらったが――貴様はなぜプラネットフォースを狙う?」
「心配するな。宇宙なら救ってやる。
 オレの目的はその後――スペースブリッジをすべて開通させ、それを独占することさ」
 ザフィーラに答え、オーバーロードは拳を握り締め、
「オレが元々何なのか、忘れたワケではあるまい?」
「……バトルレースのコースにするつもりか」
「そういうことだ。
 バトルレーサーにとって、思う存分戦えるスペースブリッジのコースは理想的なのでな」
 言いながら、オーバーロードは両肩に新たに装備されたエネルギー砲の照準もザフィーラやダイアトラスへと向ける。
「ギガストームは宇宙を救えればそれでいい。
 オレ様はスペースブリッジを得られればいい――うまく利害が一致したというワケだ。
 貴様らは安心して――スクラップになっていろ!」
 咆哮と同時――放たれた閃光がザフィーラ達へと襲いかかる!

「いっくぞぉっ!」
「ブッ飛ばしてやる!」
「やれるもんなら、やってみろ!」
 美緒とロディマスブラーの言葉にガスケットが言い返し、他の面々も戦闘体制に突入する。
 ランドバレット、ガスケットがニトロコンボイと耕介、ロディマスブラーと美緒を追ってカーチェイスに突入し、
「はぁぁぁぁぁっ!」
「なんのっ!」
 スカイリンクスの振るったスカイアックスを、メナゾールは愛用のライフルで受け止め、弾き飛ばす!
「覚悟!」
「そっちこそ!」
 ロングラックとインチアップが互いに組み合い、力比べに突入すると、
「背後はもらった!」
 そんなインチアップの背後に降り立ち、ドレッドロックがライフルを向け――
「ぅわぁっ!」
 突然、ドレッドロックの周りで爆発が巻き起こる!
「何だ!?」
 うめいて、志貴が見上げると、上空で新たなワープゲートが展開されている。
 その前に集結しているのは――
「パズソー!?」
「それに、ヘルスクリーム達も!」
 そこにいたパズソーとヘルスクリーム以下サイボーグビーストの4人を見て、シックスショットと美由希が声を上げる。
「スタースクリームの旦那の命令でな!」
「あなた達は、ここでサヨナラよ!」
 パズソーとヘルスクリームが告げ、彼らもまた臨戦態勢に突入する――スタースクリームの命令で、ギャラクシーコンボイ達やマスターメガトロン達の足止めに現れたのだ。
「フンッ、返り討ちにしてくれる!
 いくぞ、美沙斗!」
「あぁ!」
 対して、シックスナイトの言葉に美沙斗が答え、ヘルスクリームと対峙する。
「マックス、ラジャー!」
 そんなヘルスクリームを援護しようとマックスビーが降下し――
「おっと、そこまで!」
「あなたの相手は、私達がしましょう」
 言って、ハイブロウとノエルが彼らの前に立ちふさがり、
『フォースチップ、イグニッション!
 デュアルローター、キャノン!』

 放たれたビームをマックスビーがかわし――ダージガンを直撃する!
「ってぇっ!」
「だ、大丈夫かいな!?」
 墜落するダージガンにスラストールが駆け寄ると――ロボットモードとなって倒れるダージガンへと手が差し伸べられた。
「あ、あんがとな……」
 言って、ダージガンがその手を取って立ち上がり――ダージガンとスラストールは顔色を変えた。
 彼に手を差し伸べたのは――
「キミ達の相手は――」
「オレ達だ!」
『マヂですか!?』
 よりにもよってコンボイ級――ライブコンボイと真一郎の言葉に、二人は声をそろえて絶叫した。

「これでも――」
「くらえっ!」
「なんのっ!」
 ドレッドロックと志貴が叫び、放たれたエネルギーミサイルをパズソーがかわし、
「3対1でござるか……」
「怖い?」
「冗談」
 ウィアードウルフ達バンディットロンの3人を前に、シックスショットと美由希が言う。
 そして――
「たぁっ!」
「むんっ!」
 振り下ろされたベクタープライムの剣を受け止め、デモリッシャーが彼を弾き飛ばすと、
「な………………っ!?」
 そんな彼の背後から驚きの声が上がった。
 怪訝に思い、デモリッシャーは振り向き――
「――――――っ!?」
 顔色が変わった。
 そこにいたのは――
「デモリッシャー!? デモリッシャーじゃないか!」
 ガードシェルだった。

「戦場は混乱してるみたいね……」
「4勢力入り乱れ。まさに大混戦ですね……」
 アースラのブリッジで戦いの様子をモニターし、つぶやくリンディにエイミィがうなずく。
「私も、ブロードキャストがいてくれれば戦えるのに……!」
「アイリーンさん……今は、私達にできることを考えよう」
 戦場に出られない苛立ちからうめくアイリーンを知佳がなだめていると、
〈リンディ提督〉
 アースラから通信をつなぎ、シャマルが告げる。
〈私達も現場に向かいます。
 アースラはここでバックアップの体勢を整えておいてください〉
「けど、あなた達だけじゃ……」
「そうは言うけど、アースラはさっきのプラネットフォース発動の影響で転送ポートを始め各部の調子が悪いわ。
 さっきのギャラクシーコンボイ達の転送はうまくいったけど――今はバックアップ体勢を復旧するのが最善よ」
 シャマルの身を案じ、声を上げかけたランディを制すると、リンディはシャマルに告げた。
「決して……無理はしないでくださいね。
 あなたが傷つけば……きっとあなたの主は悲しみます」
〈………………はい〉
 その言葉に、シャマルは視線を落としてうなずく。
 いずれはまた敵対することになる相手――そんな彼女の気遣いが、事情を話せない自分達の立場が辛かった。

「どういうことだ、デモリッシャー!?
 なぜお前が、デストロンに!?」
「こんな星に隠れ住むなんて、もうガマンできねぇんだよ!」
 信じられない、といった表情で尋ねるガードシェルに、デモリッシャーは吐き捨てるようにそう答える。
「オレは、オレのやり方で宇宙を救ってやる!
 フォースチップ、イグニッション!」
 言って、デモリッシャーは地球のフォースチップをイグニッション。左腕のクレーンにメガクレーンブレードを展開する。
「やめろ! お前とは戦いたくない!」
「お、おい、ガードシェル!?」
 ガードシェルの言葉に声を上げる真雪だが――
「うるせぇっ!」
 デモリッシャーはかまわない。ガードシェルに向かって斬りかかり、それがかわされるや否やメガクレーンブレードを支点に跳躍、続けて蹴りを放つが――
「く………………っ!」
 そんなデモリッシャーをかばい、ベクタープライムがその蹴りを受け止める。
「どうしたんだ、ガードシェル!?」
「お前、さっきからおかしいぞ!」
 ベクタープライムと真雪が言うと、ガードシェルは答えた。
「あ、アイツは……オレの親友なんだ……!」
「何……!?」
「ダチだって……いうのかよ……!?」

「地球に来て、足鈍ったんじゃねぇか!」
「地球には、速度制限があるんだよ!」
 後を追ってくるガスケットに答え、ニトロコンボイはロディマスブラーと共に山道を駆け抜けていく。
 と、そんな彼のとなりにランドバレットが追いつき、
「こんのぉっ!」
 ニトロコンボイへと体当たり、弾き飛ばすことに成功するが、
「どわぁっ!?」
 弾かれたニトロコンボイは玉突き式にガスケットを弾き飛ばした。ガスケットは道路から弾き飛ばされ、ガケ下に転落していく。
「よくも相棒を!」
「よく言うぜ!」
「やったのはお前なのだ!」
 うめくランドバレットに答え、美緒とロディマスブラーは彼の後ろにつき、サイドに回ったニトロコンボイと共にランドバレットの動きを封じる。
 そして、本命は――
「いくぜ、お嬢さん!」
「えぇ!」
 言って、リスティを乗せて先回りしていたオートボルトが前方から駆けつけてくる。
『フォースチップ、イグニッション!』
 そして二人同時に咆哮。地球のフォースチップがオートボルトのチップスロットに飛び込み、車体の上部にミサイルランチャーが展開され――
『フォース、ミサイル!』
「どわぁっ!?」
 放たれたミサイルが、ランドバレットを吹き飛ばす!
 そして――
『トランスフォーム!』
 声を上げ、ニトロコンボイ達はロボットモードとなってその場に着地した。
「お見事!」
「なぁに♪」
 耕介の言葉に笑顔でうなずくが――オートボルトはすぐに表情を引き締めた。
 その意味はわかる――ニトロコンボイはうなずき、一同に告げた。
「他のみんなが気になる、すぐに戻ろう」
『おぅっ!』

「このぉっ!」
「たぁっ!」
「いっけぇっ!」
 飛びかかるライガージャックとファングウルフ、そしてアルクェイドの攻撃を、フレイムコンボイは次々にさばき、
「これなら――」
「どうだ!」
 アルフのフォトンランサー、ヴィータのシュワルベフリーゲンの同時攻撃も、フレイムコンボイはガードしてしのぐ。
 そして――
「たぁぁぁぁぁっ!」
 上空から襲いかかるフェイトの斬撃を、フレイムアックスで弾き飛ばす。
「下がれ、フェイト!」
「――――――っ!」
 突然の声に、フェイトはすかさず後退し――
「いっけぇっ!」
 そこにゴッドジンライの一斉射撃が降り注ぐ!
 イグニッションするヒマがなかったためにマックスバーニングではなかったが、これなら少しは効いたはず――だったが、
「やってくれるな……」
 爆煙の中から現れたフレイムコンボイのダメージは思ったよりも軽かった。
「くそっ、さすがはアニマトロスのリーダーだ……!
 一筋縄じゃいかないってか……!」
「当たり前だ! そう簡単にやられるものか!」
 うめくゴッドジンライに答えると、フレイムコンボイは跳躍し、
「トランス、フォーム!」
 咆哮し、ビーストモードとなってフェイト達と相対する。そして――
「フォースチップ、イグニッション!
 デスフレイム!」

 間髪入れずにイグニッション。放たれたデスフレイムがフェイト達を襲う!

「むんっ!」
「おぉぉぉぉぉっ!」
 咆哮し、ギャラクシーコンボイとマスターメガトロンはガッチリと組み合い――すぐに離れ、両者の拳が激突する。
「プリムラ!」
《オッケー!》
 なのはの指示に従い、プリムラはマスターメガトロンへと照準を合わせ、
「バスターレイ、Shoot!」
〈Baster ray!〉
 なのはとレイジングハートの一撃がマスターメガトロンを直撃。爆風で大きく後退させる。
 と――
「そこまでだ、マスターメガトロン!」
 バックパックが告げ、ファストエイドと共にマスターメガトロンの前に立ちふさがる。
「ザコどもが――引っ込んでいろ!」
 バックパック達など相手になるものか――そう言い放つマスターメガトロンだったが、
「誰がザコどもだぁっ!」
 そんなマスターメガトロンに、エクシリオンが飛びつく。
「ここは私達に任せて、総司令官達はライガージャックやフェイト達を!」
「フレイムコンボイに押されて、かなり危ない状況です!」
「フェイトちゃん達が!?」
 ファストエイドとシオンの言葉になのはが声を上げると、
「わかった。
 ここは頼むぞ!」
 言って、ギャラクシーコンボイはなのはに先駆けてフレイムコンボイの元へと跳んだ。
「なのは、キミも早く」
「はい!
 じゃあ、ここはよろしくお願いします!」
 ファストエイドに言われ、なのはもまた一礼するとその場を離脱した。

「エクシリオン達が!?」
 エイミィから連絡を受け、ロングラックは思わず声を上げた。
 エクシリオン達がマスターメガトロンと戦っている――いかに3人がかりでも、楽には勝てない、どころか明らかに不利な対戦カードだ。
〈そうなの!
 できればロングラックも向かってほしいんだけど……大丈夫!?〉
「いけるものならそうしたいけど……!」
 うめいて、ロングラックは自分と力比べに興じているインチアップへと視線を向けた。
 さすがはモンスタートラックをスキャンしているだけの事はある。ショベルカーをスキャニングした自分とまともに力比べをして互角とは――
 そんなことをロングラックが考えていると、
「ロングラックさん、離れて!」
「――――――っ!」
 那美の声に、とっさにロングラックは後退し――
「えぇいっ!」
「あばびぶべばびばぁっ!?」
 そこに久遠の雷撃が直撃。インチアップが感電する。
「ナイスです、那美さん、久遠ちゃん!」
 言って、ロングラックはインチアップをパワーアームでつかみ、
「いっけぇっ!」
 ダイアトラスと殴り合っていたオーバーロードに向け、力任せに投げつける!
「今のうちに!」
「はい!
 那美さん達は下がって――マスターメガトロン相手じゃ付いてきたら危険です!」
 告げる那美に答え、ロングラックは激突して転がるインチアップやオーバーロードを無視してエクシリオン達の援護に向かう。
「ってぇ! やってくれたな!」
 一方、インチアップはなんとか身を起こしてロングラックに告げ――その肩が突然つかまれた。
「え………………?」
 イヤな予感がする――インチアップは恐る恐る振り向き――そこにいたオーバーロードが怒りの形相で告げた。
「貴様こそ、いい度胸だ。
 このオレ様のジャマをしたからには、覚悟はできているんだろうな?」
「ィヤァァァァァッ!」
 インチアップの絶叫が響いた。

「ロングラックが援護に向かったようです」
「ボク達も行きたいところだけ――どっ!」
 ノエルの言葉にうめくように答え、ハイブロウは素早く飛翔し、かみついてきたビーストモードのマックスビーを回避する。
 と――
「行くんだ!」
「ここは私達が引き受ける!」
 そんなハイブロウに告げ、美沙斗をライドスペースに乗せたシックスナイトがマックスビーの前に立ちふさがる。
「シックスナイト!?
 ヘルスクリームは!?」
「まだ片付けてないが――まとめて相手してやるさ。
 さ、早く!」
 そのシックスナイトの言葉に、ハイブロウはしばし迷い――
「――すみません!」
 言って、ハイブロウは急降下。彼もまたマスターメガトロンと戦うエクシリオン達の援護に向かう。
「……さて、と……頼まれてしまったね」
「引き受けるつもりだったんだ。悲観することもあるまい」
 美沙斗にそう答えると、シックスナイトは合流したヘルスクリームとマックスビーへと向き直り、
「義弟が3人を相手にしているんだ――私も、このくらいは切り抜けられなくてはな!」
 咆哮と同時――刃が閃いた。

「この……! 離れろ!」
 自分にしがみついて動きを止めているエクシリオンとバックパックに対し、マスターメガトロンは上からヒジ打ちをお見舞いするが、二人はしっかりとしがみついて離れない。
「がんばれ、エクシリオン!」
「そのまま放すんじゃないわよ!」
 その様子を離れたところに避難して見守り、応援するすずかとアリサだったが――
「――――――っ!?
 前言撤回! すぐに離れて!」
 気づいたアリサが指示を下し、エクシリオン達がマスターメガトロンから離れ、
「はぁぁぁぁぁっ!」
 ファストエイドが左手の電磁棒を叩きつけ、強烈な電撃をお見舞いする。
 さらに――
「ロング、パワーアーム!」
 那美にイグニッションしてもらったロングラックが、右手のロングパワーアームをマスターメガトロンに叩きつける!
「く………………っ!
 トランスフォーム!」
 さすがにこの連携にはマスターメガトロンもたまらず後退。メガジェットモードにトランスフォームして上空に逃れるが、
「アリサちゃん!」
「お任せ!
 エクシリオン、バックパック!」
 逃がしはしない――すずかの言葉にアリサはエクシリオン達へと声をかけ、
『フォースチップ、イグニッション!』
 咆哮し、二人にフォースチップをイグニッションさせる。
 そして――
「グラウンド、ショット!」
「エクス、ボルト!」

 バックパックとエクシリオンの対空砲火が、マスターメガトロンを撃ち落とし、
『デュアルローター、キャノン!』
 上空から急降下してきたハイブロウとノエルが、真上からデュアルローターキャノンをお見舞いする!
「『ザコ』にやられちゃ、ざまぁないな!」
 大地に叩きつけられたマスターメガトロンに対し、余裕で告げるエクシリオンだったが、
「ザコどもが……!」
 うめいて、マスターメガトロンはゆっくりと立ち上がった。
 その全身から怒りのオーラが立ち上り――吼えた。

 

「……なめるなぁっ!」

 

その咆哮に――それは反応した。

 

「な、何だ!?」
 突然の事態に、ノイズメイズは思わず声を上げた。
 スタースクリームの目の前に置かれたチップスクェアが、突然光を放ち始めたのだ。
「の、ノイズメイズ、これって……!?」
「知るか!」
 フィアッセの問いにノイズメイズが答えると――光は収束。一直線に上空へと飛び立っていった。

 光が向かったのは飛騨山脈――なのは達の戦う戦場だった。マスターメガトロンを包み込み――周囲に強烈な衝撃をまき散らす!
「ぅわぁっ!?
 な、何だよ、コレ!?」
 その様子に思わずエクシリオンが声を上げると――
「フォースチップ、イグニッション!」
 煙の向こうでマスターメガトロンが咆哮。飛来したフォースチップがマスターメガトロンの右肩のチップスロットに飛び込み――右肩のバックユニットが分離。4連装のガトリングガンとなってマスターメガトロンの手に収まった。
 その名も――
「デス、マシンガン!」

『――――――っ!?』
 突如目覚めたマスターメガトロンの新たな力、デスマシンガンを前にして、エクシリオン達の間に緊張が走る。
 一方、新たな力を得たマスターメガトロンは完全に余裕を取り戻していた。悠々とエクシリオン達に告げる。
「地球のプラネットフォースの力で得た、デスマシンガン――とくと味わえ!」
 言うと同時に引き金を引き――
「どわぁぁぁぁぁっ!」
 放たれたデスマシンガンの銃弾の雨を前に、真っ先に反応したのがエクシリオンだった。あわててファストエイドとバックパックの首根っこをつかみ、射線上から離脱する。
 そして――放たれた銃弾は彼らが一瞬前までいた地点へと殺到。瞬く間に大地を穿ち、穴だらけにしてしまう。
「な、なんて威力だ……!
 あんなのくらったら、ひとたまりもないぞ!」
 想像をはるかに超えるデスマシンガンの威力に、ファストエイドが思わずうめく。
「ノエル、キミは下がって。
 あの火力が相手だ――ライドスペースにいる方が危険だ」
 一方、ハイブロウもまたすぐに動いた――少し離れた場所に着地すると、ノエルを自分のライドスペースから退避させる。
 彼女を当てにしていないワケではない。彼女を気遣うあまり自分の動きが制約されてしまうのは現状ではリスクが大きすぎるからだ――そんなハイブロウの心情をノエルも察し、素直に後退しアリサ達の元へと向かう。
「あれじゃうかつに飛び込めない……どうする!?」
「どうするって言われても……!」
 尋ねるエクシリオンの言葉に、ロングラックがうめき――
〈みんな、気をつけて!〉
 突然、エイミィからの通信がオープン回線で響き渡った。

「今、こっちのレーダーがその戦場に向けて高速で飛翔するトランスフォーマーを発見したの!
 あと数秒でカモフラージュシールドに突入するわ!」
 アースラのブリッジでデータを分析しながら、エイミィが告げる。
「何なのよ、コイツ……!」
 そして弾き出された対象のスペックデータ――それを前にして、エイミィは自分の顔から血の気が引いていくのをハッキリと感じていた。
(ボディのスペックデータはギャラクシーコンボイとどっこいどっこいだけど……スパークの出力はマスターメガトロンの倍!?
 どういうバケモノよ、コイツ!)

「………………?
 どうした。怖気づいたか?」
 エイミィからの通信を受けたエクシリオン達を前に、マスターメガトロンが余裕で告げるが――
「――――――む?」
 彼も気づいた。感じ取った“力”の出所を探り、上空を見渡す。
「お前達の援軍か……?」
「何……!?
 マスターメガトロン、お前の仲間じゃないのか!?」
 尋ねるマスターメガトロンの言葉にエクシリオンが聞き返すと、
「――――来るぞ!」
 ファストエイドの言葉と同時――それはカモフラージュシールドを突き破り、すさまじい衝撃と共に着地した。
 もうもうと立ち込める土煙の中――乱入者はゆっくりと立ち上がった。
 胸に竜の頭部の意匠をあしらい、背中に巨大な翼をそなえた大型のトランスフォーマーだ。
 ボディの意匠からどうやら地球デストロンだと察することができるが、スタースクリームの軍勢の中にはいなかった顔だ。
 だが、しかし――“あの時”“北極に”誰かいたならば、きっとその姿を見ていただろう。
 地球デストロン封印の地にひとつだけ残されていたカプセル――その中から彼が姿を現すのを。

「貴様……何者だ!?」
 思わずデスマシンガンを向け、尋ねるマスターメガトロンだが――その手の中からデスマシンガンが消え、数秒後、彼の背後に落下した。
 トランスフォーマーの振るった鞭によって、一瞬のうちに弾かれたのだ。
「人に名を尋ねる時は、自分から名乗るものだぞ」
 淡々と告げると、トランスフォーマーは悠然とマスターメガトロンを見返す。
「何を……!?
 なめるな!」
 だが、そんな態度はマスターメガトロンの神経を逆なでした。怒りのままに殴りかかり――
「力任せか。
 ぬるいな」
 トランスフォーマーはその拳を難なくさばき、逆にマスターメガトロンの肩関節を極める。
 力に任せたものではない――巧みにマスターメガトロンの力を利用した高度な関節技サブミッションだ。そのままマスターメガトロンを投げ飛ばし、大地に叩きつける!
「つ、強い……!?」
「何者だ、アイツ……!?」
 マスターメガトロンを易々と翻弄するトランスフォーマーの姿に、バックパックとエクシリオンがつぶやくと、
「………………ふむ」
 そんな彼らにトランスフォーマーが気づいた。静かに彼らへと視線を向ける。
「ライブコンボイと同じ識別信号か……」
 勝手に納得し、静かにつぶやき――
「なら……敵だな」
 その言葉と同時――強烈な殺気がエクシリオン達に向けて放たれる!
『――――――っ!?』
 突然の殺気に、エクシリオン達があわてて身がまえるが、トランスフォーマーは悠然と告げる。
「冥土の土産に、オレの名を教えてやろう。
 モンスタートランスフォーマーが一派、“ホラートロン”総帥――恐怖大帝、スカイクェイク様だ!
 フォースチップ、イグニッション!」

 咆哮と共に、スカイクェイクの背中のチップスロットに青紫色のフォースチップが飛び込み――チップスロットごと、背中の翼が分離する。
 そして、翼の基部がスカイクェイクの右腕に合体すると翼が前方へと向けられ――スカイクェイクが吼えた。
「デス、シザース!」

「何っ!?」
 イグニッションによってスカイクェイクの右腕に装備された巨大な凶器デスシザース――その威容を前に、エクシリオンは思わず声を上げ――そんな彼に向け、スカイクェイクはすさまじい加速と共に突っ込む!
「く…………っ!」
 とっさにエクスボルトをかまえるエクシリオンだが――すでにスカイクェイクはエクスボルトの間合いの内側にすべり込んでいた。
 エクシリオンに回避すら許さずデスシザースではさみ込み、そして――
「デス、ヴォルテック!」
「ぐあぁぁぁぁぁっ!」
 強烈な電撃が流し込まれ、回路をズタズタに破壊されたエクシリオンの全身で内部からの爆発が巻き起こる!
「エクシリオン!」
 致命的な一撃を受けるエクシリオンを救おうと、とっさに展開したフォトンビームでスカイクェイクを狙うファストエイドだが――
「そんなもので!
 デスシザース、シールドモード!」
 エクシリオンを振りほどくと、スカイクェイクはデスシザースをシールド形態に変形させてファストエイドの攻撃を防ぐ。
「今度は、こっちの番だ!
 アーチャーモード!」
 そして、スカイクェイクはデスシザースを弓形態に変形させ――放たれた光の矢がファストエイドのボディを撃ち抜く!
「くっそぉっ!
 グラウンド、ショット!」
「デュアルローター、キャノン!」
 エクシリオン、そしてファストエイド――仲間を次々に倒され、バックパックとハイブロウがスカイクェイクを狙うが、スカイクェイクはそれをあっさりかわし、
「バスターモード!」
 今度はデスシザースを銃形態のバスターモードへと変形させ、
「射撃ってのは――こうやるんだよ!」
 咆哮と同時、バックパックとハイブロウの身体を、強力なビームが貫く!
「よくもみんなを!」
 そんなスカイクェイクへとロングラックが突っ込み――しかし、それよりも速くスカイクェイクは動いていた。
「ブレードモード!」
 デスシザースを大剣へと変形させ、刀身にエネルギーを集中させ――
「デス、スラッシュ!」
 薙ぎ払うように放たれた斬撃が、防御にかまえたロングパワーアームごとロングラックを斬り裂く!
 時間にして1分足らず。機動を止め、スカイクェイクがかまえを解き――蹴散らされた5人がその場に倒れ伏した。

「え………………?」
 最初はそれが信じられなかった――アリサは目の前の光景に言葉を失っていた。
「ウソ……だよね……?」
 となりでつぶやくすずかだが――それが単なる願いでしかないことは彼女自身、どこか冷静な部分で自覚していた。
 バックパックも、エクシリオンも、ハイブロウも、そしてファストエイドやロングラックも――
 全員が受けた攻撃は、紛れもなく――

 

致命傷だった。

 

 

 

 

「……イヤァァァァァァァァァァッ!」

 

 

 すずかの絶叫が響いたのは、その次の瞬間のことだった。


 

(初版:2006/09/03)
(第2版:2006/09/10)
(誤植修正)